説明

スクロール圧縮機の調芯装置およびその調芯方法

【課題】 調芯精度を落とすことなく、調芯(芯出し)を短時間で行う。
【解決手段】 固定スクロール11と旋回スクロール12の相対的な位置決め(芯出し)を行うに当たり、1回の計測で回転補正と並進補正の両方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機の調芯装置に関し、さらに詳しく言えば、調芯精度を落とすことなく、調芯(芯出し)を短時間で行うことができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、固定スクロールおよび旋回スクロールの各鏡板上に渦巻状に形成された各スクロールラップ同士を互いに噛み合わせて内部に密閉作動室を形成し、旋回スクロールを旋回運動させることによって、各スクロールラップの間に形成される三日月状の空間が外周から中央に向かって容積を小さくしながら移動することを利用して、冷媒を圧縮している。
【0003】
ところで、上述したスクロール圧縮機においては、固定スクロールと旋回スクロールとを噛み合わせた状態の位置関係、すなわち固定スクロールのスクロールラップと旋回スクロールのスクロールラップとのラップクリアランスなどの組立精度が冷媒の圧縮性能や耐久性に大きく影響してくる。
【0004】
そこで、固定スクロールと旋回スクロールを適正な位置に調芯(芯出し)する必要がある。通常、スクロール圧縮機の調芯作業に当たっては、専用の調芯装置がよく用いられる。この調芯装置の一例としては、例えば特許文献1がある。
【0005】
特許文献1のスクロール圧縮機の調芯装置は、固定スクロールをX−Y方向へ移動させる固定スクロール移動手段と、メインフレームをθ方向に回転させるθ回転手段と、駆動軸を介して旋回スクロールを回転駆動する駆動部と、固定スクロールのX−Y変位量を測定する変位センサとを備えている。
【0006】
まず、旋回スクロールを駆動部にて駆動軸を介して回転させながら、メインフレームをθ回転手段にてθ方向に所定角度θ°回転させて、その変位量を変位センサにて読み取り、固定スクロールと旋回スクロールの相対的な回転方向の位置決め(θ回転補正)を行った後、次に、固定スクロール移動手段にて固定スクロールを強制的にX−Y方向に移動させて、その振り幅を変位センサにて測定し、固定スクロールのX−Y方向の最小変位値を位置決め(並進補正)することで、固定スクロールと旋回スクロールとの相対的な位置決め(調芯)を行っている。
【0007】
しかしながら、従来の調芯装置においては、高い調芯精度を確保するため、θ回転補正時と並進補正時の各工程においてX軸方向およびY軸方向の変位量の測定を行っており、位置決め位置の算出に時間がかかっていた。そのため、生産効率が悪く、大量生産する上での課題となっている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−70763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、1回の測定で得た移動変位量を基にθ回転補正と並進補正の両方を行うことができるスクロール圧縮機の調芯装置およびその調芯方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明は、固定スクロールおよび旋回スクロールの各スクロールラップ同士を互いに噛み合わせて内部に密閉作動室を形成してなる圧縮部と、上記圧縮部を支持するメインフレームと、上端に上記旋回スクロールと連結されるクランク軸を有し、上記メインフレームによって軸支される駆動軸とを含むスクロール圧縮機の上記スクロールラップ同士の位置決めを上記駆動軸を介して上記旋回スクロールを回転させながら行うスクロール圧縮機の調芯装置において、Z軸を中心とするθ回転が拘束され、上記メインフレームまたは上記固定スクロールをX方向およびY方向に移動可能に支持するX−Y移動手段と、X軸方向およびY軸方向の移動が拘束され、上記メインフレームを介して上記旋回スクロール、または上記固定スクロールをZ軸を中心とするθ方向に回転可能に支持するθ回転補正手段と、上記駆動軸に連結され、上記旋回スクロールを駆動する旋回スクロール駆動手段と、上記旋回スクロールの旋回運動に伴う、上記固定スクロールまたは上記メインフレームのX軸方向およびY軸方向の移動変位量を検出するX−Y変位測定手段と、少なくとも上記X−Y移動手段、上記θ回転補正手段、上記旋回スクロール駆動手段および上記X−Y変位測定手段を制御する制御手段とを含み、上記制御手段は、上記旋回スクロール駆動手段にて上記駆動軸を回転駆動させ、上記駆動軸が所定回転する毎に上記θ回転補正手段にて上記旋回スクロールまたは上記固定スクロールを所定角度θ°ずつ回転させて、上記X−Y変位測定手段によって上記駆動軸の回転に伴う上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量を測定し、得られた測定値により、上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量が最小となるように上記θ回転補正手段を制御して回転補正を行い、さらに、上記測定値からX軸方向およびY軸方向の変位量成分に基づいて上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置を割り出し、上記固定スクロールまたは上記メーンフレームを上記適正位置に移動させて並進補正を行うことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記駆動軸が1回転したときに得られる上記固定スクロールまたは上記メインフレームの軌跡のX軸方向の最大点をXmax、最小点をXminとし、Y軸方向の最大点をYmax、最小点をYminとしたとき、上記制御手段は、以下の式1に記載の演算処理を行い上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置(Xc,Yc)を割り出し、上記適正位置に基づき並進補正を行うことを特徴としている。
【数4】

【0012】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記駆動軸が1回転したときに得られる上記固定スクロールまたは上記メインフレームのX軸方向およびY軸方向の軌跡の全サンプリング数をnとしたとき、上記制御手段は、以下の式2に記載の演算処理を行い上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置(Xc,Yc)を割り出し、上記適正位置に基づき並進補正を行うことを特徴としている。
【数5】

【0013】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、上記固定スクロールまたは上記旋回スクロールの最適補正角をθとし、上記最適補正角θを挟んで上記固定スクロールまたは上記旋回スクロールの回転角がθ1のときの最大変位差をGap1、そのときのX軸方向およびY軸方向の軌跡の中心を(XC1、YC1)とし、回転角がθ2のときの最大変位差をGap2、そのときのX軸方向およびY軸方向の軌跡の中心を(XC2、YC2)とし、上記最大変位差にGap1≒Gap2の関係が成り立つとき、上記制御手段は、以下の式3に記載の演算処理を行い上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置(Xc,Yc)を割り出し、上記適正位置に基づき並進補正を行うことを特徴としている。
【数6】

【0014】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項において、上記駆動軸に連結され、上記旋回スクロールを駆動する旋回スクロール駆動手段の異常を検出する異常検出手段をさらに備えることを特徴としている。
【0015】
本発明には、これらスクロール圧縮機の調芯方法も含まれる。すなわち、請求項6に記載の発明は、固定スクロールおよび旋回スクロールの各スクロールラップ同士を互いに噛み合わせて内部に密閉作動室を形成してなる圧縮部と、上記圧縮部を支持するメインフレームと、上端に上記旋回スクロールと連結されるクランク軸を有し、上記メインフレームによって軸支される駆動軸とを含むスクロール圧縮機の上記スクロールラップ同士の位置決めを上記駆動軸を介して上記旋回スクロールを回転させながら行うスクロール圧縮機の調芯方法において、Z軸を中心とするθ回転が拘束され、上記メインフレームまたは上記固定スクロールをX方向およびY方向に移動可能に支持するX−Y移動手段と、
X軸方向およびY軸方向の移動が拘束され、上記メインフレームを介して上記旋回スクロール、または上記固定スクロールをZ軸を中心とするθ方向に回転可能に支持するθ回転補正手段と、上記駆動軸に連結され、上記旋回スクロールを駆動する旋回スクロール駆動手段と、上記旋回スクロールの旋回運動に伴う、上記固定スクロールまたは上記メインフレームのX軸方向およびY軸方向の移動変位量を検出するX−Y変位測定手段と、少なくとも上記X−Y移動手段、上記θ回転補正手段、上記旋回スクロール駆動手段および上記X−Y変位測定手段を制御する制御手段とを含み、上記旋回スクロール駆動手段にて上記駆動軸を回転駆動させ、上記駆動軸が所定回転する毎に上記θ回転補正手段にて上記旋回スクロールまたは上記固定スクロールを所定角度θ°ずつ回転させて、上記X−Y変位測定手段によって上記駆動軸の回転に伴う上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量を測定する変位量測定ステップと、得られた測定値により、上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量が最小となるように上記θ回転補正手段を制御して回転補正を行う回転補正ステップと、上記測定値からX軸方向およびY軸方向の変位量成分に基づいて上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置を割り出し、上記固定スクロールまたは上記メーンフレームを上記適正位置に移動させて並進補正を行う並進補正ステップとを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、旋回スクロールと固定スクロールの相対的な回転方向の芯出し(θ回転補正)と、X軸方向とY軸方向の芯出し(並進補正)の両方をθ回転補正時に測定した移動変位量を基に一度に調整することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、位置決め中心位置(Xc,Yc)をX軸方向、Y軸方向それぞれの最大変位値と最小変位値の中心を中心位置として算出することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、全サンプリング数nの座標点の中心を積分計算によって平均化して算出し、その中心を固定スクロール(またはメインフレーム)の適正位置(Xc,Yc)としたことにより、サンプリングミスによる特異なデータが含まれていても、積分することによって平滑化されるため、より安定した位置決めができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、固定スクロール(または旋回スクロール)の極小点を最適補正角をθとしたときに、左右対称に現れる二次曲線のほぼ同じ変位差となる回転角θ1、θ2の軌跡中心から固定スクロールの適正位置(Xc,Yc)としたことで、安定した位置決めが行える。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、調芯作業中にワークに異常な負荷が加わりワークが破損するのを防止することができるとともに、調芯装置自体が破損することを確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、一度の移動変位量を測定するだけで、旋回スクロールと固定スクロールの相対的な回転方向の芯出し(θ回転補正)と、X軸方向とY軸方向の芯出し(並進補正)の両方を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明においては、駆動軸の軸方向をZ軸、X軸およびY軸は、Z軸に直交する任意の直交座標系とし、Z軸を中心とする回転方向をθとする。
【0023】
図1に示すように、本発明の調芯装置100は、金属などの頑丈なフレーム構造を有するベース200を備え、同ベース200は、床などの水平面上に設置される台座201と、同台座201の一端からほぼ直角に立設されたL字状の支持フレーム202とから構成されている。
【0024】
支持フレーム202の側壁面には、後述する固定スクロール移動手段300を支持する支持板310が固定されており、さらに支持フレーム202の先端には、組立手段700をZ軸方向に移動する第2のZ軸リニアレール205が設けられている。なお、リニアレール以外に通常の油圧アクチュエータなどを用いてもよい。
【0025】
支持フレーム202にはさらに、各検出手段から送られた検出データを測定、演算および出力する制御コンソール4(制御手段)が設けられている。制御コンソール4には、表示用モニターや各種操作パネル類などが一体的に組み込まれており、各種設定値を入力することで、調芯精度や時間などが設定できるようになっている。
【0026】
この実施形態において、制御コンソール4は、検出データのデータ処理だけでなく、各種手段の制御やスイッチ制御など、本発明の調芯装置に係る一切の指令系統を担っている。この例において、制御コンソール4は、専用の調芯制御ソフトがインストールされたコンピュータである。
【0027】
次に、圧縮部1について説明する。図2に示すように、圧縮部1は、互いのスクロールラップ同士が噛み合わされた固定スクロール11と旋回スクロール12とを備え、旋回スクロール12は、メインフレーム13内に自転防止用のオルダムリング14を介して保持されている。
【0028】
メインフレーム13には、旋回スクロール12を旋回運動させるための駆動軸2を支持する軸受部13aが中央に設けられており、この軸受部13aを挟んで、駆動軸2は、メインフレーム13の旋回スクロール12の支持面側(図2では上面側)に駆動軸2のクランク軸21が引き出され、メインフレーム13の背面側(図2では、下面側)に駆動軸2の主軸22が引き出されている。
【0029】
図2に示すように、固定スクロール11およびメインフレーム13には、固定スクロール11とメインフレーム13との相対的な初期位置を位置決めするための位置決め孔111,131が設けられている。
【0030】
固定スクロール11側の位置決め孔111は固定スクロール11の鏡板を軸方向に沿って貫通する円孔である。メインフレーム13側の位置決め孔131は円孔からなり、その内径には所定ピッチの雌ねじ山が形成されている。
【0031】
位置決め孔111,131はそれぞれ円周方向に沿って所定間隔で複数箇所(この例では120°間隔で3カ所)設けられており、各位置決め孔111,131を同軸的に配置した状態で仮止めピン15が挿入されている。
【0032】
図1および図2を参照して、台座201の上には、実質的に圧縮部1の調芯作業を行うための作業台206が支柱206a、206bによって所定高さに設けられている。作業台206には、メインフレーム13の背面側から引き出された主軸22を作業台206の下側に引き出すための挿通孔207が設けられている。
【0033】
支柱206a,206bには作業台206を圧縮部1を取付位置と調芯位置とに上下に移動させる昇降手段203が設けられている。昇降手段203は例えば油圧アクチュエータなどからなり、制御コンソール4によって制御されている。この例では、昇降手段203を設けているが、例えば支持フレーム202の一部に回転コラムなどを設けてもよい。
【0034】
作業台206上には、圧縮部1のメインフレーム13をθ回転可能に支持し、制御コンソール4の指令に応じてメインフレーム13を介して旋回スクロール12をθ方向に回転させるθ回転補正手段としての旋回スクロール回転補正手段400が設置されている。
【0035】
この例において、θ回転補正手段はメインフレーム13を介して旋回スクロール12をθ方向に回転させるようにしているが、逆に固定スクロール11側を回転させるようにしてもよい。その場合、メインフレーム13のZ軸を中心とするθ回転が拘束される。
【0036】
台座201上には、カップリング手段500を介して旋回スクロール12の駆動軸2に選択的に連結されるモータ3が設けられている。この実施形態において、モータ3は、信号線を介して制御コンソール4に接続されており、制御コンソール4の指令に応じて制御される。
【0037】
モータ3には、カップリング手段500を介して接続された駆動軸2に例えばスクロールラップ同士の接触などによって異常なトルクなどがかかった場合に調芯の異常を検知する異常検出手段31が設けられている。この異常検出手段31も同様に、信号線を介して制御コンソール4に接続されており、制御コンソール4に測定信号を送出する。
【0038】
再び図1を参照して、固定スクロール移動手段300は、支持板310,X−Y移動手段320およびZ軸許容支持手段330を備え、Z軸許容支持手段330の先端には、実質的に固定スクロール11に接触して固定する固定スクロール固定手段340が設けられている。
【0039】
なお、固定スクロール移動手段300は、Z軸を中心とするθ回転が拘束され、固定スクロール11をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向について任意に移動させることができる。
【0040】
この実施形態において、X−Y移動手段320およびZ軸許容支持手段330は固定スクロール11を移動するように設けられているが、メインフレーム13を移動するように設けてもよく、その場合、固定スクロール11のX−Y方向への移動が規制される。
【0041】
支持板310は一端が支持フレーム202に固定されたL字状フレームからなり、その一部にX−Y移動手段320およびZ軸許容支持手段330が設けられている。この例において、支持板310は、支持フレーム202に一体的に固定されているが、例えば図示しない昇降手段を介してX−Y移動手段320およびZ軸許容支持手段330を上下に昇降させるようにしてもよい。
【0042】
X−Y移動手段320は、固定スクロール11をX軸方向にのみ移動させるX軸支持板321と、固定スクロール11をY軸方向にのみ移動させるY軸支持板322とを備えている。
【0043】
X軸支持板321は支持板310とX軸支持板321との間に形成されたリニアガイドレール(図示しない)によってスライド可能に取り付けられており、制御コンソール4の指令に応じて駆動される。
【0044】
Y軸支持板322は、X軸支持板321とY軸支持板322との間に形成されたリニアガイドレール(図示しない)によってスライド可能に取り付けられており、同様に制御コンソール4の指令に応じて駆動される。
【0045】
Y軸支持板322の上面側には、支持ステー323が設けられており、支持ステー323の先端側には、Z軸フリーレール330が設けられている。Z軸フリーレール330は、Z軸方向に対して常に移動可能ないわゆるフリーレール機構を有し、固定スクロール11のZ軸方向の移動を許容するZ軸許容手段として機能する。
【0046】
固定スクロール固定手段340は、Z軸フリーレール330の下端側に一体的に設けられており、固定スクロール11の上側に被さる用にして取り付けられる。固定スクロール固定手段340には、固定スクロール11を固定するためのクランパー341が、この実施形態では120°間隔で3カ所設けられており、各クランパー341は、図示しない駆動手段によって固定スクロール11をクランプ固定する。
【0047】
この実施形態において、固定スクロール固定手段340は、クランパー341によるクランプ機構によって固定スクロール11を固定するようにしているが、これ以外に、電磁石などによって吸着固定してもよく、固定スクロール11の移動を拘束可能なものであれば、その構成は任意に選択できる。
【0048】
支持板310にはさらに、固定スクロール11をZ軸方向から押さえ付けて固定する固定スクロール押付手段350が設けられている。固定スクロール押付手段350は、X軸方向に平行に並んだ2本の固定用シリンダ351を有し、固定用シリンダ351の先端が固定スクロール11の上面に向けて出没することにより、固定スクロール11を固定する。この固定用シリンダ351も、制御コンソール4によって制御される。
【0049】
図1および図2に示すように、旋回スクロール回転補正手段400は、メインフレーム13を保持するメインフレーム保持部410と、同メインフレーム保持部410をZ軸を中心としてθ方向に回転可能なθ回転手段420とを備え、ともに作業台206上に設置されている。
【0050】
旋回スクロール回転補正手段400は、X軸方向およびY軸方向の移動が規制され、θ回転方向の回転のみが可能となっている。θ回転手段420は、信号線を介して制御コンソール4に接続されており、制御コンソール4の指令によって駆動される。
【0051】
θ回転手段420は、モータなどの駆動手段が一般的に用いられるが、より好ましくは、ロータリーアクチュエータが好ましい。これによれば、高分解能で移動速度が速く、また、中央に駆動軸2を挿通する挿通孔421を形成しても機能的に支障がない。
【0052】
メインフレーム保持部410の被メインフレーム設置面(図1では上面)には、メインフレーム13を固定するためのクランプ部430が設けられている。クランプ部430は、Z軸を中心に所定角度間隔で複数、この実施形態では120°間隔で3カ所形成されている。
【0053】
3カ所のクランプ部430のうち、1カ所のクランプ部430には、油圧や空圧、またはソレノイドなどによって押し出されるシリンダ431が設けられている。これによれば、シリンダ431が出没することで、メインフレーム13が他のクランプ部430に押し付けられることで、動きを拘束することができる。
【0054】
支持板310およびクランプ部340にはさらに、固定スクロール11のX軸方向およびY軸方向の移動変位量を測定するための変位センサー610,620がそれぞれ設けられている。
【0055】
各変位センサ610,620は、それぞれ信号線を介して制御コンソール4に接続されており、各変位センサ610,620で検出された検出データを制御コンソール4に出力する。変位センサ610,620は、非接触式変位センサであることが好ましく、より具体的な態様としては、レーザ変位計もしくは渦電流式変位計によって固定スクロール11の移動変位量を測定する距離センサが上げられる。
【0056】
これ以外に、X−Y移動手段320のX軸方法およびY軸方向のリニアステップ数をカウントして、そのカウント数を基に変位量を計測するようにしてもよい。
【0057】
カップリング手段500は、モータ3の出力軸と駆動軸2の主軸22とを同軸的に連結する連結手段であり、この実施形態ではコレットチャック方式のカップリング手段が設けられている。なお、本発明においてカップリング手段500の具体的な構造は任意であるため、その説明を省略する。
【0058】
再び図1を参照して、本発明の調芯装置100には、芯出しした圧縮部1を一体的に組み付けるための組立手段700が搭載されている。組立手段700は、第2のZ軸リニアガイドレール205に沿って上下に昇降可能に取り付けられている。
【0059】
組立手段700は、Z軸リニアレール205に沿って移動可能に取り付けられたZ軸リニアガイド710と、同Z軸リニアガイド710から一体的に延設された支持板720とを備え、支持板720には、固定スクロール1とメインフレーム13とを一体的に締め付ける締め付け手段730が搭載されている。
【0060】
Z軸リニアガイド710は、組立手段700全体をZ軸に沿って上下方向に移動させる、いわば昇降手段であり、信号線を介して制御コンソール4に接続され、制御コンソール4からの指令によって駆動される。
【0061】
締め付け手段730は、支持板720の上面側に突設された3本の締付用シリンダ731を備え、各締付用シリンダ731は、Z軸を中心に120°間隔で3カ所に立設されている。各締付用シリンダ731内には、図示しない締付治具供給手段などが内蔵されているが、本発明において組立手段は任意的な構成要素であるため、その具体的な説明は省略する。
【0062】
次に、図3に示すフローチャートにしたがって、本発明の調芯装置100の具体的な調芯方法について説明する。
【0063】
まず、実質的な調芯作業を始める前に、ステップST1において調芯装置100に圧縮部1を設置する。図1に示す初期位置の作業台206に圧縮部1を載せたのち、図示しないセットボタンを押す。これにより、支柱206a,206bの昇降手段203を介して支持台206を上方に向かって移動させ、調芯作業の初期位置へと持ち上げられる。
【0064】
セッティングが終了した後、図示しない入力部からスタート信号が送信されると、制御コンソール4は全システムを一旦初期化する(ステップST2)。
【0065】
初期化したのち、制御コンソール4は固定スクロール押付手段350に指令を出し、これを受けて、固定スクロール押付手段350は、固定用シリンダ351を降下させて、固定スクロール11の上面を押圧する(ステップST3)。
【0066】
次に、制御コンソール4はクランプ部430に指令を出し、指令を受けたクランプ部430は、クランパー431を突出させて、メインフレーム13(MF)をメインフレーム保持部410に固定して、メインフレーム13のX−Y方向およびθ回転を拘束する(ステップST4)。
【0067】
さらに、制御コンソール4は固定スクロール固定手段340に指令を出し、これを受けて、固定スクロール固定手段340は、各クランパー341を駆動して、固定スクロール11を側面から固定し、X−Y移動手段320に固定スクロール11を連結する(ステップST5)。この前処理ステップを経て、制御コンソール4は調芯ステップに取りかかる。
【0068】
圧縮部1を固定したのち、制御コンソール4はカップリング手段500に指令を出し、これを受けたカップリング手段500は図示しない昇降手段によって駆動軸2まで持ち上げられ、駆動軸2をチャックする(ステップST6)。これにより、調芯装置100への圧縮部1の設置が完了する。
【0069】
設置完了後、作業者は図示しない作業再開ボタンを押すことで調芯作業が再開される。調芯作業においては、まず、制御コンソール4はモータ3に指令を出し、これを受けて、モータ3が回転駆動を開始し、駆動軸2を介して旋回スクロール12が回転を始める(ステップST7)。
【0070】
駆動軸の回転開始直後は、スクロールラップ間や軸受部の誤差がデータに入り込みやすい。そこで、ステップST9にて、制御コンソール4はモータ3の回転数、すなわち駆動軸2の回転数(n)をカウントし、駆動軸2が少なくともn回転目(n>3:nは正数)した後、制御コンソール4は変位センサ610,620から送られてくる測定値の本サンプリングを開始する(ステップST8)。この実施形態において、測定値のサンプリングは、回転開始から行われている。
【0071】
芯出しは、回転補正と並進補正の2段階に分けて行われるが、まず最初に固定スクロール11と旋回スクロール12の相対角度を補正する回転補正が行われる。
【0072】
駆動軸2が3回転し終え、4回転目に入ると同時に、制御コンソール4は、旋回スクロール回転補正手段400に指令を出し、これを受けて、旋回スクロール回転補正手段400がΔθ°ずつ回転し、旋回スクロール12を回転させる(ステップST10)。なお、固定スクロール11と旋回スクロール12の理想相対角は180°である。
【0073】
図4(a)に示すように、初期状態において固定スクロール11および旋回スクロール12は、理想相対角から大きく外れているため、旋回スクロール12の旋回運動に伴い、各スクロールラップ同士が干渉し、固定スクロール11の中心が移動(回転)してしまうため、X軸方向およびY軸方向の変位量が大きくなる。
【0074】
そこで、回転補正では、まずX−Y移動手段320をオフ(フリーレール状態)とし、旋回スクロール12を回転させながら、ステップST10にて旋回スクロール12をΔθ°ずつ回転させてゆくことにより、図4(b)に示すように、X−Y軸方向の変位量(変位差)が徐々に収束し始め、最適補正角θc(図4(b)では、送り角1.0°)のときに変位量が最小となる。そのままさらにΔθ°ずつ回転を続けると、相対角が互いにずれ始め、再びその変位差が大きくなりはじめる。
【0075】
そこで、制御コンソール4は、ステップST11にて得たサンプリングデータを基に最適補正角θcを算出可能かどうかを判断し、サンプリングデータで算出可能と判断した場合には、次のステップST12に移行し、図4(b)で示された2次曲線の原点を最適補正角θcとして判断し、旋回スクロール回転補正手段400を駆動して、メインフレーム13を介して旋回スクロール12を最適補正角θcの位置にまで回転移動させて回転補正を終了する(ステップST13)。なお、算出不可と判断した場合には、ステップST7に戻り算出可能なデータが得れるまでサンプリングを繰り返し行う。この例において、Δθは0.1°刻みでメインフレーム13を回転させてゆき、変位差が40μm以上となる位置で回転補正を停止する。
【0076】
なお、この実施形態では、変位量を表す2次曲線の原点を最適補正角θcと認識しているが、図5に示すように、変位差を表す2次曲線の底が船底上にフラットに現れる場合もある。このような場合、制御コンソール4は、X軸方向およびY軸方向の変位量が等しい2点θ1、θ2を求め、
θc=(θ1+θ2)/2
として、回転角の平均値を算出し、この平均角を最適補正角θcと判断するようにしてもよく。制御コンソール4は、得られたサンプリングデータに応じてステップST11にていずれかの最適補正角θcの算出方法を判断する。
【0077】
次に、並進補正を行うが、本発明においては、並進補正は上記回転補正時に得られたサンプリングデータを用いて行う。駆動軸が1回転する間に得られた固定スクロール11のX軸方向およびY軸方向の変位量をプロットすると図6に示すように環状に表れる。
【0078】
これによれば、送り角がθaのときは、まだ変位量が大きく、表れるプロット形状も大きな環状となる。次に送り角がθbのときは、変位量はやや収束するがそれでもまだ大きな環状となる。送り角がθcのときは、最も変位量が小さく収縮するため、小さな環状に表れる。
【0079】
そこで、ステップST14にて制御コンソール4は、固定スクロール11の軌跡のX軸方向の最大点をXmax、最小点をXminとし、Y軸方向の最大点をYmax、最小点をYminとしたとき、以下の式1に記載の演算処理を行い固定スクロールの適正位置(Xc,Yc)を割り出す。
【数7】

【0080】
これによれば、各スクロール11,12の最適位置(Xc、Yc)をサンプリングデータの中心位置を求める要領で簡単に算出でき、中心精度も高い。なお、サンプリングデータは、変位量が最も収束した状態での送り角θcのときが、最も好ましいが、これ以外の送り角θaやθbのときでもよい。
【0081】
測定データによっては、変位量がθcのように収束するとは限らない、そこで、第2の測定方法としては、駆動軸2が1回転したときに得られる固定スクロール11のX軸方向およびY軸方向の軌跡の全サンプリング数をnとしたとき、制御コンソール4は、以下の式2に記載の演算処理を行い上記固定スクロールの適正位置(Xc,Yc)を割り出す。
【数8】

【0082】
これによれば、全サンプリング数nの座標点の中心を積分計算によって平均化して算出し、その中心を固定スクロールの適正位置(Xc,Yc)としたことにより、サンプリングミスによる特異なデータが含まれていても、積分することによって平滑化されるため、より安定した位置決めができる。
【0083】
さらに、第3の方法として、図7に示すように、旋回スクロール12の最適補正角をθとし、最適補正角θを挟んで旋回スクロール12の回転角がθ1のときの最大変位差をGap1、そのときのX軸方向およびY軸方向の軌跡の中心を(XC1、YC1)とし、回転角がθ2のときの最大変位差をGap2、そのときのX軸方向およびY軸方向の軌跡の中心を(XC2、YC2)とし、最大変位差にGap1≒Gap2の関係が成り立つとき、制御コンソール4は、以下の式3に記載の演算処理を行い固定スクロール11の適正位置(Xc,Yc)を割り出す。
【数9】

【0084】
これによれば、旋回スクロール12の極小点を最適補正角をθとしたときに、左右対称に現れる二次曲線のほぼ同じ変位差となる回転角θ1、θ2の軌跡中心から固定スクロールの適正位置(Xc,Yc)ことで、安定した位置決めが行える。
【0085】
制御コンソール14は、ステップST11で上記第1から第3の演算方法をサンプリングデータの状態を併せて判断し、最適な演算方法を選択して並進補正を行う。
【0086】
並進補正の最適位置(Xc,Yc)が確定した後、制御コンソール4は、ステップST15において、X−Y移動手段320に指令を出し、これを受けてX−Y移動手段320は、固定スクロール11を最適位置(Xc,Yc)に強制的に移動させる。以上で、芯出し作業は完了する。
【0087】
次に、制御コンソール4は、組立手段700およびZ軸リニアガイド710に指令を出し、これを受けて、まずZ軸リニアガイド710が降下を開始し、固定スクロール11の直上まで降りる。
【0088】
次に、組立手段700内に搭載された締付手段のガイドシリンダ(ともに図示しない)を下降させて、ボルトネジを固定スクロール11の固定孔に供給した後、締付治具(図示しない)を介してボルトネジを締め付ける。このとき、制御コンソール4は固定スクロール固定手段340に指令を出し、固定スクロール11に対する押圧力をさらに上げてボルト締め付け時に固定スクロール11の位置がずれないようにする。なお、本発明において、組立手段700の組立手順は任意であるため、具体的な説明は省略する。
【0089】
最後に、組み立てられた状態の圧縮部1を回転駆動させて、その回転駆動状態(例えばトルクや振動など)に異常がないかどうか異常検出手段31で検出し、問題がなければ、モータ3を停止して調芯作業を終える(ステップST17)。異常が発生した場合には、同様にモータ3を停止し、同時に制御コンソール4の表示部に異常が発生したことを告げる警告表示を行う(ステップ18)。なお、異常検出手段は31は調芯作業時においても、異常を発見した場合には、作業を一旦停止するようにプログラムしてもよい。以上により、一連の調芯作業および組立作業が終了する。
【0090】
この実施形態において、調芯装置100は、調芯作業および組立作業までを一貫して行うことが可能な装置であるが、例えば圧縮部10の基本的な組立および供給工程を含む前組立装置をさらに組み込んでもよいし、調芯完了後の圧縮部10を梱包する工程やスクロール圧縮機としての組立工程を含む梱包装置や組立装置に一体に組み込んでもよい。
【0091】
以上説明したように、本発明によれば、固定スクロールと旋回スクロールの相対的な位置決め(芯出し)を回転補正と並進補正で行うとともに、回転補正時に得られた測定値を用いて並進補正を行うことにより、調芯精度を落とすことなく、調芯(芯出し)を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機の調芯装置の正面図。
【図2】圧縮部の内部構造を示す模式図。
【図3】調芯作業の流れを説明するフローチャート。
【図4】固定スクロールのX軸方向およびY軸方向の変位差を示すグラフ。
【図5】変位差の変形例を模式的に示す模式図。
【図6】固定スクロールのX軸方向およびY軸方向の変位量をプロットした状態のグラフ。
【図7】並進補正の適正位置の算出方法を説明する説明図。
【符号の説明】
【0093】
1 圧縮部
11 固定スクロール
12 旋回スクロール
13 メインフレーム
2 駆動軸
3 モータ
31 異常検出手段
4 制御コンソール
100 調芯装置
200 ベース
300 固定スクロール移動手段
400 旋回スクロール回転補正手段
500 カップリング手段
610,620 変位検出手段
700 組立手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールおよび旋回スクロールの各スクロールラップ同士を互いに噛み合わせて内部に密閉作動室を形成してなる圧縮部と、上記圧縮部を支持するメインフレームと、上端に上記旋回スクロールと連結されるクランク軸を有し、上記メインフレームによって軸支される駆動軸とを含むスクロール圧縮機の上記スクロールラップ同士の位置決めを上記駆動軸を介して上記旋回スクロールを回転させながら行うスクロール圧縮機の調芯装置において、
Z軸を中心とするθ回転が拘束され、上記メインフレームまたは上記固定スクロールをX方向およびY方向に移動可能に支持するX−Y移動手段と、
X軸方向およびY軸方向の移動が拘束され、上記メインフレームを介して上記旋回スクロール、または上記固定スクロールをZ軸を中心とするθ方向に回転可能に支持するθ回転補正手段と、
上記駆動軸に連結され、上記旋回スクロールを駆動する旋回スクロール駆動手段と、
上記旋回スクロールの旋回運動に伴う、上記固定スクロールまたは上記メインフレームのX軸方向およびY軸方向の移動変位量を検出するX−Y変位測定手段と、
少なくとも上記X−Y移動手段、上記θ回転補正手段、上記旋回スクロール駆動手段および上記X−Y変位測定手段を制御する制御手段とを含み、
上記制御手段は、上記旋回スクロール駆動手段にて上記駆動軸を回転駆動させ、上記駆動軸が所定回転する毎に上記θ回転補正手段にて上記旋回スクロールまたは上記固定スクロールを所定角度θ°ずつ回転させて、上記X−Y変位測定手段によって上記駆動軸の回転に伴う上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量を測定し、
得られた測定値により、上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量が最小となるように上記θ回転補正手段を制御して回転補正を行い、
さらに、上記測定値からX軸方向およびY軸方向の変位量成分に基づいて上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置を割り出し、上記固定スクロールまたは上記メーンフレームを上記適正位置に移動させて並進補正を行うことを特徴とするスクロール圧縮機の調芯装置。
【請求項2】
上記駆動軸が1回転したときに得られる上記固定スクロールまたは上記メインフレームの軌跡のX軸方向の最大点をXmax、最小点をXminとし、Y軸方向の最大点をYmax、最小点をYminとしたとき、
上記制御手段は、以下の式1に記載の演算処理を行い上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置(Xc,Yc)を割り出し、上記適正位置に基づき並進補正を行うことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機の調芯装置。
【数1】

【請求項3】
上記駆動軸が1回転したときに得られる上記固定スクロールまたは上記メインフレームのX軸方向およびY軸方向の軌跡の全サンプリング数をnとしたとき、
上記制御手段は、以下の式2に記載の演算処理を行い上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置(Xc,Yc)を割り出し、上記適正位置に基づき並進補正を行う請求項1に記載のスクロール圧縮機の調芯装置。
【数2】

【請求項4】
上記旋回スクロールまたは上記固定スクロールの最適補正角をθとし、上記最適補正角θを挟んで上記旋回スクロールまたは上記固定スクロール回転角がθ1のときの最大変位差をGap1、そのときのX軸方向およびY軸方向の軌跡の中心を(XC1、YC1)とし、回転角がθ2のときの最大変位差をGap2、そのときのX軸方向およびY軸方向の軌跡の中心を(XC2、YC2)とし、上記最大変位差にGap1≒Gap2の関係が成り立つとき、
上記制御手段は、以下の式3に記載の演算処理を行い上記メインフレームまたは上記固定スクロールの適正位置(Xc,Yc)を割り出し、上記適正位置に基づき並進補正を行う請求項1に記載のスクロール圧縮機の調芯装置。
【数3】

【請求項5】
上記駆動軸に連結され、上記旋回スクロールを駆動する旋回スクロール駆動手段の異常を検出する異常検出手段をさらに備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機の調芯装置。
【請求項6】
固定スクロールおよび旋回スクロールの各スクロールラップ同士を互いに噛み合わせて内部に密閉作動室を形成してなる圧縮部と、上記圧縮部を支持するメインフレームと、上端に上記旋回スクロールと連結されるクランク軸を有し、上記メインフレームによって軸支される駆動軸とを含むスクロール圧縮機の上記スクロールラップ同士の位置決めを上記駆動軸を介して上記旋回スクロールを回転させながら行うスクロール圧縮機の調芯方法において、
Z軸を中心とするθ回転が拘束され、上記メインフレームまたは上記固定スクロールをX方向およびY方向に移動可能に支持するX−Y移動手段と、
X軸方向およびY軸方向の移動が拘束され、上記メインフレームを介して上記旋回スクロール、または上記固定スクロールをZ軸を中心とするθ方向に回転可能に支持するθ回転補正手段と、
上記駆動軸に連結され、上記旋回スクロールを駆動する旋回スクロール駆動手段と、
上記旋回スクロールの旋回運動に伴う、上記固定スクロールまたは上記メインフレームのX軸方向およびY軸方向の移動変位量を検出するX−Y変位測定手段と、
少なくとも上記X−Y移動手段、上記θ回転補正手段、上記旋回スクロール駆動手段および上記X−Y変位測定手段を制御する制御手段とを含み、
上記旋回スクロール駆動手段にて上記駆動軸を回転駆動させ、上記駆動軸が所定回転する毎に上記θ回転補正手段にて上記旋回スクロールまたは上記固定スクロールを所定角度θ°ずつ回転させて、上記X−Y変位測定手段によって上記駆動軸の回転に伴う上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量を測定する変位量測定ステップと、
得られた測定値により、上記固定スクロールまたは上記メインフレームの移動変位量が最小となるように上記θ回転補正手段を制御して回転補正を行う回転補正ステップと、
上記測定値からX軸方向およびY軸方向の変位量成分に基づいて上記固定スクロールまたは上記メインフレームの適正位置を割り出し、上記固定スクロールまたは上記メーンフレームを上記適正位置に移動させて並進補正を行う並進補正ステップとを備えていることを特徴とするスクロール圧縮機の調芯方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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