説明

スクロール圧縮機

【課題】
スクロール圧縮機において、吐出圧力よりも高圧になった圧縮室内の冷媒をリリース穴からリリース制御弁を経由して密閉容器内の吐出圧力空間へ放出させる場合に、リリース制御弁における流路抵抗と吐出圧損を低減する。
【解決手段】
スクロール圧縮機50では、固定スクロールラップ2bと旋回スクロールラップ3bとで圧縮室23が形成される。冷媒ガスが過圧縮されるのを防止するリリース弁装置30は、固定スクロールラップ間に形成されたリリース穴31と、リリース穴に接続しリリース穴より大径の弁室32と、弁室に接続するガイド部33と、ガイド部に嵌合するストッパ37と、このストッパの突起部に係合する弾性体と、弾性体とリリース穴間に配置されたバルブシート35とを有する。弁室とガイド部の境界近傍から固定スクロールの吐出穴までを連通する連通路40aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍空調機器や給湯機等に用いられるスクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回スクロールのラップと固定スクロールのラップを組み合わせて圧縮室を形成するスクロール圧縮機では、ラップの形状により吸込行程終了時の最大密閉空間容積である吸入容積と、圧縮室が吐出穴に開口する直前の最小密閉空間容積である最終圧縮室容積とが決定される。スクロール圧縮機をルームエアコンなどに使用する場合は、可変速運転や空調負荷の変動により、冷媒の吸込圧力と吐出圧力が広範囲に亘り変化する。そのため、許容圧縮比に対し設定容積比が過大となる過圧縮運転が生じる場合がある。
【0003】
そこで従来、圧縮機での過圧縮による動力ロスを低減し、圧縮効率を向上させるために、スクロール圧縮機の固定スクロールにリリース弁装置を設け、リリース弁装置から圧縮室内の高圧の冷媒ガスあるいは液冷媒を密閉容器内の吐出圧力空間に導くようにしている。例えば特許文献1においては、固定スクロールの台板にリリース穴と弁室を連続して形成し、弁室内にリリース制御弁を設けてリリース弁装置を構成している。そして、圧縮室内の圧力が設定圧力を超えたらリリース制御弁が開口し、リリース穴から密閉容器内の吐出圧力空間に冷媒を逃がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−221171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の従来のスクロール圧縮機では、吐出圧力よりも高圧の圧縮室内の冷媒を、固定スクロールのラップ間溝、すなわち圧縮室に連通するリリース穴からリリース制御弁を経由して吐出圧力空間へ放出している。この公報に記載のリリース制御弁装置では、リリース穴の容積は圧縮されない空間、いわゆるデッドボリューム(死容積)であり、再膨張損失となることから、できるだけリリース穴の容積を小さくしている。
【0006】
また、リリース穴に連通する弁室に収容されるストッパに吐出空間への逃し流路を形成するが、応答性を向上させるためストッパそのものが小さく、さらに加工上の制限から逃し流路の断面形状を大きくできない。その結果、スクロール圧縮機の圧縮室が過圧縮になるのを必ずしも回避できないおそれがあり、入力増加の一因となる。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、吐出圧力よりも高圧になった圧縮室内の冷媒をリリース穴からリリース制御弁を通過して密閉容器内の吐出圧力空間へ放出させるリリース制御弁装置を備えたスクロール圧縮機において、リリース制御弁における吐出圧損を低減することにある。また、上記構成のスクロール圧縮機において過圧縮運転時の圧縮効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、固定スクロールに立設した渦巻状の固定スクロールラップと旋回スクロールに立設した渦巻状の旋回スクロールラップとで形成される圧縮室で冷媒ガスが過圧縮されるのを防止するリリース弁装置を備えたスクロール圧縮機において、前記リリース弁装置は、前記渦巻状の固定スクロールラップ間に形成されたリリース穴とこのリリース穴に接続しリリース穴より大径の弁室とこの弁室に接続し弁室よりも大径のガイド部とで形成され、前記固定スクロールが有する台板の厚さ方向に貫通して設けられた貫通孔と、この貫通孔に嵌合し突起部を有するストッパと、このストッパの突起部に係合する弾性体と、前記弾性体と前記リリース穴間に配置されたバルブシートを有し、前記弁室と前記ガイド部の境界近傍から前記固定スクロールの中心部に設けた吐出穴までを連通する連通路を形成したことにある。
【0009】
そしてこの特徴において、連通路は、前記弁室と前記ガイド部の境界近傍と、前記吐出穴とを連通し、前記固定スクロールラップに垂直な方向に延びる連通孔であってもよく、連通路は、前記弁室と前記ガイド部の境界近傍までの深さを有し、前記ガイド部と前記吐出穴とを連通する連通溝であってもよい。
【0010】
また上記特徴において、前記連通溝は、前記ガイド部の径よりも幅の狭い溝であるのが好ましく、前記連通路は、前記固定スクロールラップの高さ方向に軸を有する円筒形であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リリース弁装置の冷媒流路を拡大することができ、吐出圧損が低減されるため、過圧縮運転時の圧縮効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るスクロール圧縮機の一実施例の縦断面図である。
【図2】本発明に係るリリース弁装置の一実施例の詳細縦断面図である。
【図3】本発明に係るリリース弁装置の変形例の詳細縦断面図である。
【図4】本発明に係るリリース弁装置のさらに他の実施例における閉路状態を説明する詳細縦断面図である。
【図5】図4に示したリリース弁装置の開路状態を説明する詳細縦断面図である。
【図6】図1に示したスクロール圧縮機の固定スクロール部における上面図である。
【図7】本発明に係るスクロール圧縮機のさらに他の実施例の固定スクロール部における上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るスクロール圧縮機のいくつかの実施例について、図面を用いて説明する。各図面における同一符号は、同一物または相当物を示す。
【実施例1】
【0014】
本発明に係るスクロール圧縮機50の一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、スクロール圧縮機50の縦断面図を示す。スクロール圧縮機50では、密閉容器1内の上部に圧縮機構部が、その下部に電動機部が収納されている。圧縮機構部は渦巻状の旋回スクロールラップ3bが台板に立設された旋回スクロール3と、渦巻状の固定スクロールラップ2bが台板上に立設された固定スクロール2と、旋回スクロール3の自転防止手段であるオルダムリング4とを主要構成品としている。旋回スクロールラップ3bと固定スクロールラップ2bとは、噛み合わされて圧縮室を形成する。
【0015】
固定スクロール2は、フレーム5にボルト8により締結されている。旋回スクロール3の反ラップ面側の下部には、フレーム5が配置されている。フレーム5は、その外周部で密閉容器1に固定されている。フレーム5と旋回スクロール3の間には、背圧室6が形成されている。背圧室6は、吸込室22の圧力より高い圧力に設定されている。ここで、吸込室22は、機外から冷媒ガスをこのスクロール圧縮機50に導く吸込パイプ20に連通し、固定スクロールラップ2bの最外周側に形成される。
【0016】
旋回スクロール3には、この旋回スクロール3を回転駆動するために、下方に垂直に延びるクランク軸7が旋回軸受3aを介して嵌合している。すなわち、クランク軸7の上端部に形成した偏心部7aを、旋回スクロール3の中央部のボス部に保持された旋回軸受3aが回動自在に支承している。さらに、クランク軸7の軸方向中間部を、フレーム5に保持された主軸受5aが、回転自在に支承している。これにより、電動機部からの回転動力が旋回スクロール3へ伝達される。クランク軸の偏心部7aと反対側の下端部は、密閉容器1に仕切板14を介して保持された副軸受9で、回転自在に支承されている。
【0017】
電動機部は、クランク軸7に圧入などにより固定された回転子11と、焼嵌めなどにより密閉容器1に固定された固定子12とから構成される。電動機部の下方は、仕切板14で区画されており、このスクロール圧縮機50の摺動部位に潤滑油を供給するための油溜まりが形成されている。クランク軸7の内部には、図1において破線で示すように潤滑油通路が形成されており、吐出圧力と背圧室6との圧力差により潤滑油は潤滑油通路を経由して各摺動部位に供給される。
【0018】
このように構成したスクロール圧縮機50内の冷媒ガスの流れについて、以下に説明する。本実施例に示すスクロール圧縮機50は、密閉容器1の内部が吐出圧力空間となるいわゆる高圧チャンバ方式である。電動機部が回転するとクランク軸7が回転し、旋回スクロール3が固定スクロール2に対して旋回運動する。これにより、密閉容器1の天板部に固定された吸込パイプ20から吸い込まれた冷媒は、固定スクロール2の台板2aに形成された吸込口21を通って、固定スクロール2の最外周溝部に形成した吸込室22へ流入する。
【0019】
次いで、固定スクロール2のラップ2bと旋回スクロール3のラップ3bが噛み合わされて形成される圧縮室23に、冷媒ガスが閉じ込まれる。旋回スクロール3の旋回運動とともに圧縮室が中心部に移行し、それに連れて圧縮室の容積が縮小されて冷媒ガスは圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、固定スクロール2の台板2aの中心部に設けられた吐出穴24から密閉容器1内の上部に形成される吐出圧力空間25に吐出される。その後、固定スクロール2の外周部と密閉容器1の内周面間に形成される隙間等を経て、フレーム8の上部近傍であって密閉容器2の側面部に固定された吐出パイプ26からスクロール圧縮機50の外部へ吐出される。
【0020】
上述したように、本実施例に示すスクロール圧縮機50には、過圧縮を回避するために、リリース弁装置30が設けられている。このリリース弁装置30について、以下に説明する。図2は、リリース弁装置30の一実施例の図であり、リリース弁装置30の周りだけを拡大して示した縦断面図である。リリース弁装置30は、圧縮室23内の圧力が吐出圧力以上になったとき、圧縮室23から密閉容器1の内部であって天井部付近に形成される吐出圧力空間25に、冷媒ガスを放出する。
【0021】
圧縮室23は一対形成されるので、後述するように圧縮室23ごとにリリース弁装置30は設けられている。固定スクロール2のスクロールラップ2b間(溝部)の台板2aに、この台板2aを上下方向に貫通する円筒形のリリース穴31が形成されている。リリース穴31は軸方向(上下方向)の中間部から大径の円筒穴に変わって弁室32になっており、この弁室32のさらに上部には、弁室32の径より僅かに径の大きな円筒穴のガイド部33が形成されている。このリリース穴31は、圧縮室23と密閉容器1内に形成される吐出圧力空間25を連通している。
【0022】
最も大径のガイド部33の壁面をガイドとして、断面凸型の焼結金属製のストッパ37がガイド部33内に収容されている。ストッパ37をガイド部33内に収容するときは、凸部を下向きにして収容する。ストッパ37の凸部は、先端側に行くに連れ僅かに径の小さなテーパ形状となっている。このストッパ37の凸部を利用して、弾性体であるコイルばね36が巻回されている。コイルばね36の下端側と弁室32の上表面との間には、この弁室32の内径より小さく、リリース穴31の径より大径の薄鉄板からなるバルブシート35が配設されている。弁室32の底面には、リリース穴31側から外周側にかけて断面が上に凸となるように弁座が形成されている。バルブシート35およびコイルばね36、ストッパ37は、リリース制御弁34を構成する。
【0023】
ここで、本実施例の特徴として、ガイド部33と弁室32の境界部近傍に、固定スクロール2の中心部付近に形成される吐出穴24に連通する連通穴40aを形成している。なお、ストッパ37の抜け防止等のため、ガイド部33の上面にはリテーナ39が配設されており、ボルト41でリテーナ39は固定スクロール2に固定されている。
【0024】
図3に、図2に示した実施例の変形例を示す。本変形例では、連通穴40aの代わりに、固定スクロール2の上面から弁室32とガイド部33の境界付近までの連通溝40を形成している。これは、連通穴40aを形成するよりも連通溝40を形成する方が製作性に富むためである。なお、連通溝は僅かの部分なので、固定スクロール2の強度に対する影響はほとんどない。連通穴40aの場合であっても連通溝40の場合であっても、穴径または溝幅はリリース穴31の断面積以上になる大きさとすることが、冷媒ガスの流動抵抗(圧損)を低減するために望ましい。
【0025】
このように構成したリリース制御弁装置30の動作を、図4および図5に示した縦断面図を用いて説明する。なお、この図4および図5ではストッパ37aおよび連通溝(穴)40、40aの形状が本実施例と相違しているが、この相違点については後述する。図4はスクロール圧縮機50で過圧縮が発生していない通常運転状態を示しており、図5はスクロール圧縮機50の圧縮室23内で過圧縮が発生した状態を示している。
【0026】
通常運転状態では、圧縮室23内の圧力Pは吐出圧力Pcrより低い。その結果、リリース穴31を介してバルブシート35に加わる力Fは、リリース穴31の断面積をAとすると、F=AP、F<APcrとなる。このとき、バルブシート35はリリース穴31の上面に形成された弁座に押し付けられる。
【0027】
なお、ストッパ37aの突起部を除く高さは、ガイド部33の深さより僅かに低くしておけば、ストッパ37aは通常運転時に、リテーナ39と干渉することなく上下方向に移動できる。また、ストッパ37aがガイド部33をガイドとして円滑に動くために、ストッパ37aを焼結金属製として自己潤滑性を有するようにしている。リリース穴31の上面の弁座にバルブシート35が密着しているので、固定スクロールラップ2bと旋回スクロールラップ3bとで構成される圧縮室23内の冷媒ガスは、端面(チップ)からの漏れを除いてすべて固定スクロール2の中心部に移動し、吐出穴24から吐出圧力空間25へ特別な圧損を生じることなく流動する。
【0028】
一方、過圧縮が発生した図5に示す状態では、リリース穴31での圧力Pは圧縮室23の圧力Pと等しく、P>Pcrである。この場合リリース穴31からバルブシート35に加わる力Fは、F=AP>APcrとなる。その結果、コイルばね36は上方に押し戻されそれとともにストッパ37aも上方に移動するが、リテーナ39にその移動を制限される。そのため、コイルばね36が縮む。バルブシート35は弁座から離れ、弁室32とガイド部33の境界付近に形成された吐出穴40への連通穴40aまたは連通溝40が開口する。圧縮室23の冷媒ガスの一部は、リリース穴31、弁室32から連通穴40aまたは連通溝40を経て、吐出穴24へバイパスし、吐出圧力空間25へと流れ込む。圧縮室23内の冷媒ガスの一部がバイパスしたので、圧縮室23内の圧力は低下し、過圧縮が回避される。なお、連通穴40aまたは連通溝40の深さは、コイルばね36が全圧縮しても浮上したバルブシート35が溝40に引っ掛かってリリース穴31を閉じられないという不具合を防止すため、コイルばね36の下端が溝40に届かない深さとしている。
【0029】
ここで図5では、矢印により冷媒の流れを示している。溝40を付加したので、リリース弁装置30が作動すると、圧縮室23から吐出圧力空間25に一部の冷媒ガスが流出する。その際後述するように流出する冷媒ガスの一部は、ストッパ37に設けられた貫通孔38a、38bを通って吐出圧力空間25に流出するが、流出する冷媒ガスの残りは溝40を通って吐出穴24に流出する。すなわち、冷媒ガスの流出流路面積が増大する。これにより、吐出圧力損失が低減される。特に過圧縮運転での圧縮効率を高めることができる。
【0030】
ところで、図4および図5に示した実施例では、ストッパ37aにも上下に貫通する貫通孔38a、38bが形成されている。貫通孔38aはストッパ37aの中心部を貫通する丸孔であり、貫通孔38bはストッパ37aの中心軸から偏心した位置に周方向に沿う長孔形状に形成された孔であり、図6、7に示すように周方向に3個形成されている。このストッパ37aの形状は、従来用いられているものをそのまま使用したものである。
【0031】
従来は、コイルばね36の軸方向の隙間から、過圧縮状態の圧縮室23の冷媒ガスをこれらの貫通孔38a、38bに導き、その冷媒ガスを吐出穴24を介さずに、直接吐出圧力空間25に導くようにしていた。従来のリリース弁装置30では、これらの貫通孔38a、38bだけであったので、十分な流路面積が確保できなかったこと、およびコイルばね36が完全に収縮するとコイルばね36の軸方向隙間が失われ、流路がバルブシート35で塞がれてバイパス流路が閉じられること等のため、過圧縮を必ずしも回避できなかった。本実施例では、従来の過圧縮回避方法に加え、さらに過圧縮を回避できるバイパス流路を確保しているので確実に過圧縮を回避できる。
【0032】
なお、図2に示した実施例では、吐出穴24に連通穴40を連通させることにより、過圧縮時のバイパス流路を確保している。この連通穴40は固定スクロール2を鋳物等で作成したり、2分割にすることにより作成可能であるが、製作上の容易さを考慮して、図4、5に示す例では、固定スクロールの上端面から弁室32およびガイド部33との境界付近まで切り込んだ溝40aとしている。この溝40aでも、連通穴40と同じ作用・効果が得られる。すなわち、通常運転時にはバルブシート35が弁座に密着してリリース穴31が塞がれるので、圧縮室23内の冷媒ガスがバイパスするおそれはない。また、過圧縮時には、連通溝40aがバイパス流路として作用し、過圧縮を回避できる。したがって、図2に示す実施例でも、図4、5に示す実施例でも同様に、スクロール圧縮機50における過圧縮を回避できる。
【0033】
図6に、固定スクロール2の上面図を示す。固定スクロール2の下面側には、固定スクロールラップ2bが形成されているが、上面側の中心部には吐出穴24が形成されている。また、旋回スクロールラップ3bと固定スクロールラップ2bにより複数の圧縮室23が形成されるので、これらの複数の圧縮室23に対応して固定スクロールの台板2aにリリース弁装置30が複数個設けられている。
【0034】
4個のリリース弁装置30のうち2個は、吸込室22に連通するリリース弁装置30a、30bである。他の2個は、吐出圧力空間25に連通するリリース弁装置30c、30dである。吸込室22に連通するリリース弁装置30a、30bは、吸込口21から液冷媒が吸い込まれて液圧縮運転になった場合に、リリース制御弁34が開いて液圧縮を回避する。
【0035】
一方、吐出圧力空間25に連通するリリース弁装置30c、30dは、圧縮行程の途中で圧縮室23内の圧力が吐出圧力以上になる過圧縮運転の際に、リリース制御弁34を開き、冷媒ガスを吐出圧力空間25に逃す。ここで図6に示すように、圧縮室23に連通する弁室32と吐出穴24とを連通する連通溝40は、ガイド部33の径よりも幅が狭くなっている。その結果、ガイド部33が連通溝40を通って吐出穴24側に抜けることを防止できる。
【実施例2】
【0036】
本発明に係るスクロール圧縮機50の他の実施例を、図7を用いて説明する。本実施例は上記実施例と連通溝40bの溝幅が相違している。圧縮室23に連通するリリース弁装置30dの弁室32と吐出穴24とを、弁室32よりも径が小さい上下方向に軸を持つ円筒形の溝40で連通している。円筒形の溝40であっても、上記実施例と同様に吐出圧力損失の低減が可能になる。それとともに、円筒形の連通溝40を加工するときは、工具をXY方向に移動させることなくZ軸(X−Y平面に垂直方向)方向にだけ移動させればよく、加工時間を短縮できる。
【0037】
上記各実施例においては、連通溝または連通孔を高さ方向に変化させていないが、リリース制御弁側の高ささえ確保されていれば、吐出穴に向けて下向きまたは上向きの斜めの連通路であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…密閉容器、2…固定スクロール、2a…固定スクロール台板、2b…固定スクロールラップ、3…旋回スクロール、3a…旋回軸受、3b…旋回スクロールラップ、4…オルダムリング、5…フレーム、5a…主軸受、6…背圧室、7…クランク軸、7a…クランク軸偏心部、8…ボルト、9…副軸受、11…回転子、12…固定子、14…仕切板、20…吸込パイプ、21…吸込口、22…吸込室、23…圧縮室、24…吐出穴、25…吐出圧力空間、26…吐出パイプ、30、30a〜30d…リリース弁装置、31…リリース穴、32…弁室、33…ガイド部、34…リリース制御弁、35…バルブシート、36…コイルばね(弾性体、37、37a…ストッパ、38a、38b…貫通孔、39…リテーナ、40…連通溝(連通路)、40a…連通孔(連通路)、41…ボルト、50…スクロール圧縮機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールに立設した渦巻状の固定スクロールラップと旋回スクロールに立設した渦巻状の旋回スクロールラップとで形成される圧縮室で冷媒ガスが過圧縮されるのを防止するリリース弁装置を備えたスクロール圧縮機において、
前記リリース弁装置は、前記渦巻状の固定スクロールラップ間に形成されたリリース穴とこのリリース穴に接続しリリース穴より大径の弁室とこの弁室に接続し弁室よりも大径のガイド部とで形成され、前記固定スクロールが有する台板の厚さ方向に貫通して設けられた貫通孔と、この貫通孔に嵌合し突起部を有するストッパと、このストッパの突起部に係合する弾性体と、前記弾性体と前記リリース穴間に配置されたバルブシートを有し、前記弁室と前記ガイド部の境界近傍から前記固定スクロールの中心部に設けた吐出穴までを連通する連通路を形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記連通路は、前記弁室と前記ガイド部の境界近傍と、前記吐出穴とを連通し、前記固定スクロールラップに垂直な方向に延びる連通孔であることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記連通路は、前記弁室と前記ガイド部の境界近傍までの深さを有し、前記ガイド部と前記吐出穴とを連通する連通溝であることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記連通溝は、前記ガイド部の径よりも幅の狭い溝であることを特徴とする請求項1または3に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記連通路は、前記固定スクロールラップの高さ方向に軸を有する円筒形であることを特徴とする請求項1または3、4の何れか1項に記載のスクロール圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate