説明

スクロール部構造及び過給機

【課題】十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができるスクロール部構造及び過給機を提供する。
【解決手段】本発明のスクロール部構造は、流体Gと動翼の間でエネルギーを交換する流体機械の動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部1の構造であって、スクロール部1は、断面形状が角丸四角形状から円形状に移行しながら面積が漸減する第一移行部2を有し、第一移行部2の角部の曲率半径Cは同一の大きさに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体と動翼の間でエネルギーを交換する流体機械の動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部の構造及びかかるスクロール部構造を備えた過給機に関し、特に、圧力損失を低減することができるスクロール部構造及び過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
流体と動翼の間でエネルギーを交換する流体機械の一つにタービンがある。タービンは、流体を動翼に供給して、流体の運動エネルギーを回転運動に変換して動力を得る流体機械である。かかるタービンを利用した装置の一つに過給機がある。例えば、車両用の過給機(ターボチャージャー)は、排気ガスの供給によりタービン動翼を回転させるガスタービンと、前記タービン動翼と同軸に連結された羽根車により空気を吸入するコンプレッサと、を備えている。前記コンプレッサにより吸入された空気は、圧縮されてエンジンに供給され、燃料と混合されて燃焼される。燃焼後の排気ガスは、前記タービンに送られて仕事をした後、最終的に大気中に放出される。前記排気ガスを前記タービン動翼に供給する流路は、排気ガスを加速させるために、前記タービン動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部を有し、前記タービン動翼の周方向端面から前記排気ガスを供給するように構成されている。
【0003】
かかる過給機等に使用されるタービンは、上述したようにスクロール部を有するが、その断面形状は、一般に、角部にRを付けた矩形形状(角丸四角形状)か円形状のいずれかである。また、かかる断面形状は、周方向に同一形状を拡大又は縮小した相似形状に構成されていることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−206427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、過給機等に使用されるタービンは設置場所のスペース上の制約から、スクロール部の形成可能範囲が制限され、かかる形成可能範囲はフレームサイズとして設計上付与される。したがって、スクロール部を円形状に形成した場合には、十分な流路断面積を確保することができず、矩形形状では角部にコーナー渦を生じ圧力損失が大きくなってしまうという問題がある。また、周方向の全体を角丸四角形の相似形状で形成した場合には、断面積の小さいスクロール部では角部のRも小さくなってしまい、十分な流路断面積を確保することができない、コーナー渦が生じて圧力損失が大きくなってしまう、という問題がある。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができるスクロール部構造及び過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、流体と動翼の間でエネルギーを交換する流体機械の前記動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部の構造であって、前記スクロール部は、断面形状が角丸四角形状から円形状に移行しながら面積が漸減する第一移行部を有し、該第一移行部の角部の曲率半径は実質的に同一の大きさに構成されている、ことを特徴とするスクロール部構造が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、排気ガスの供給によりタービン動翼を回転させるガスタービンと、前記タービン動翼と同軸に連結された羽根車により空気を吸入するコンプレッサと、を備えた過給機であって、前記ガスタービンは、前記タービン動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部を有し、該スクロール部は、断面形状が角丸四角形状から円形状に移行しながら面積が漸減する第一移行部を有し、該第一移行部の角部の曲率半径は実質的に同一の大きさに構成されている、ことを特徴とする過給機が提供される。
【0009】
また、上述したスクロール部構造及び過給機のスクロール部において、前記曲率半径は、前記スクロール部の形成可能範囲として付与されるフレームサイズ内に設定される最大正方形の内接円の半径に対して、0.1〜0.9倍の大きさ、好ましくは、0.2〜0.8倍の大きさ、さらに好ましくは、0.4〜0.6倍の大きさである。
【0010】
また、前記スクロール部は、前記第一移行部の円形状が徐々に縮径した第二移行部を有していてもよいし、前記スクロール部の外縁は、半径が一定に形成された円弧部と、該円弧部から前記スクロール部の終点に向かって半径が漸減した漸減部と、を有していてもよい。
【0011】
さらに、前記流体機械又は前記タービンは、前記スクロール部から前記動翼に流体を供給する導入路に複数の回動可能なベーンを配置した可変ノズル機構を備え、該可変ノズル機構の一部が前記スクロール部に突出するように配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明のスクロール部構造及び過給機によれば、第一移行部を形成したことにより、フレームサイズの面積が大きい位相では角丸四角形状とし、フレームサイズの面積が小さい位相では円形状とすることができ、各位相において十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができる。特に、第一移行部の角部の曲率半径を同一の大きさに形成したことにより、角丸四角形状から円形状の移行区間において、効果的に本発明の効果を発揮させることができる。
【0013】
また、角部の曲率半径をフレームサイズの内接円の半径に対して所定の大きさに設定することにより、水力直径を大きく取ることができ、十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができる。
【0014】
また、第二移行部を付加することにより、スクロール部の出口部を円滑に構成することができ、スクロール部の外縁に円弧部と漸減部を形成することにより、十分な流路断面積を確保することができ、流体の圧力損失を低減することができる。
【0015】
さらに、本発明は、可変ノズル機構を備えた流体機械にも適用することができ、可変ノズル機構の一部がスクロール部に突出するように配置されている場合であっても、十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスクロール部構造に係る第一実施形態を示す図であり、(A)は図1(B)における断面S1〜S10を積層して表示した断層図、(B)は平面図、である。
【図2】図1(A)における断層図を部分的に抽出した図であり、(A)は断面S1、(B)は断面S3、(C)は断面S5、(D)は断面S6、(E)は断面S8、を示している。
【図3】本発明のスクロール部構造に係る第二実施形態を示す図であり、(A)は図3(B)における断面S1〜S11を積層して表示した断層図であり、(B)は平面図である。
【図4】本発明のスクロール部構造に係る第三実施形態を示す図であり、(A)は図4(B)における断面S1〜S11を積層して表示した断層図であり、(B)は平面図である。
【図5】第二実施形態における曲率半径の設定範囲及びその効果を示す図であり、(A)は半径比と水力直径比の関係、(B)は半径比と圧力損失改善比の関係、を示している。
【図6】本発明のスクロール部構造を採用した過給機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明のスクロール部構造に係る第一実施形態を示す図であり、(A)は図1(B)における断面S1〜S11を積層して表示した断層図、(B)は平面図、である。
【0018】
図1(A)に示すように、本発明のスクロール部構造は、流体Gと動翼の間でエネルギーを交換する流体機械の動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部1の構造であって、スクロール部1は、断面形状が角丸四角形状から円形状に移行しながら面積が漸減する第一移行部2を有し、第一移行部2の角部の曲率半径Cは実質的に同一の大きさに構成されている。また、スクロール部1は、第一移行部2の円形状が徐々に縮径した第二移行部3を有している。なお、実質的に同一とは、第一移行部2の角部の曲率半径Cが同一の大きさとなるように意図的に設計している場合を含み、製作上の公差や誤差を許容する趣旨である。
【0019】
また、図1(B)に示すように、スクロール部1は、外縁11の半径Rが始点P1から終点P3に向けて漸減するように形成されており、内縁12の半径rが始点Q1から終点P3に向けて漸増するように形成されている。すなわち、スクロール部1は、同位相における外縁11と内縁12の中心点の軌跡が終点P3を通る円Mと一致するように形成されている。かかるスクロール部1の外縁11及び内縁12の形状は、タービン等の流体機械において一般的に使用されている形状である。なお、始点P1は、外縁11の接線方向とスクロール部1の入口における流体Gの流れ方向と一致する点であり、説明の便宜上、始点P1の位置を0°と規定する。したがって、スクロール部1の終点P3の位相は、ここでは約310°に設定されていることになるが、かかる数値に限定されるものではない。
【0020】
前記流体機械は、例えば、流体Gを動翼に供給して動力を得るタービンであり、図1(A)に示したように、スクロール部1から動翼に流体を供給する導入路4に複数の回動可能なベーン51を配置した可変ノズル機構5を備え、可変ノズル機構5の一部がスクロール部1に突出した突出部52が形成されている。なお、図1(B)において点線で示す構成部品は、タービンの動翼が立設されるタービンディスク6を示している。
【0021】
ところで、過給機等に使用されるタービンは設置場所のスペース上の制約から、スクロール部1の形成可能範囲が制限され、かかる形成可能範囲はフレームサイズFとして設計上付与される。ここで、図2は、図1(A)における断層図を部分的に抽出した図であり、(A)は断面S1、(B)は断面S3、(C)は断面S5、(D)は断面S7、(E)は断面S8、を示している。
【0022】
図2(A)において、フレームサイズFは、点線で囲んだ矩形形状に付与される。ここで、フレームサイズFの横幅Xをx、縦幅Yをy、断面S1の角部の曲率半径Cをc、断面積をA、周長をL、水力直径をDとすれば、断面積A=(π−4)c+x、周長L=2{(π−4)c+x+y}、水力直径D=4A/L=2{(π−4)c+x}/{(π−4)c+x+y}、と表現することができる。なお、ここでは、スクロール部1の径方向の幅(横幅X)が規制されている場合を想定しているため、横幅X>縦幅YのフレームサイズFが付与された場合を図示しているが、スクロール部1の中心軸方向の幅(縦幅Y)が規制されているような場合には、縦幅Y>横幅XのフレームサイズFが付与される場合もある。
【0023】
水力直径とは、ある流路の断面と等価な円管の直径を意味しており、断面S1は、水力直径Dの円形断面の流路と等価であると評価することができる。したがって、水力直径Dが大きいほど送流できる流量を増大させることができ、圧力損失を低減することができる。水力直径Dは、上述したように、曲率半径CとフレームサイズFの横幅X及び縦幅Yの関数により表現され、フレームサイズFは物によって固定される。すなわち、曲率半径Cを変化させることにより、水力直径Dを調整することができる。そこで、断面S1における曲率半径C=cは、フレームサイズF内において、できるだけ水力直径Dが大きくなるように設定される。この曲率半径Cの設定方法については後述する。
【0024】
そして、本発明のスクロール部構造では、断面S1で設定された曲率半径C=cを維持したまま、各断面におけるフレームサイズFに合わせて、各断面の形状が設定される。すなわち、図2(B)に示すように、断面S3の形状は、横幅X=x、縦幅Y=y、曲率半径C=cに設定される。このとき、断面Sは、横幅X=x>2c、縦幅Y=y>2cの関係を有し、角丸四角形状をなしている。
【0025】
また、図2(C)に示すように、断面S5の形状は、横幅X=x、縦幅Y=y、曲率半径C=cに設定される。このとき、断面Sは、横幅X=x>2c、縦幅Y=y=2cの関係を有し、半径cの半円形状の間に縦幅2c、横幅(x−2c)の長方形状を組み合わせた形状(いわば、カプセル形状)をなしている。
【0026】
また、図2(D)に示すように、断面S6の形状は、横幅X=x、縦幅Y=y、曲率半径C=cに設定される。このとき、断面S6は、横幅X=x=2c、縦幅Y=y=2cの関係を有し、半径cの円形状をなしている。本実施形態では、曲率半径cの角丸四角形状をなしている断面S1から、半径cの円形状をなしている断面S6までが第一移行部2を構成している。
【0027】
そして、図2(E)に示すように、断面S8は、横幅X=x=2c、縦幅Y=y=2cの関係を有し、半径cの円形状をなしている。かかる断面S8は、第二移行部3の一部を構成し、円形状を維持したまま徐々に縮径されている。なお、図2では、断面S1を基準にして曲率半径Cを設定するようにしたが、他の断面(例えば、断面S2〜S6)を基準にして曲率半径Cを設定してもよい。
【0028】
次に、本発明に係るスクロール部構造の第二実施形態について説明する。ここで、図3は、本発明のスクロール部構造に係る第二実施形態を示す図であり、(A)は図3(B)における断面S1〜S11を積層して表示した断層図であり、(B)は平面図である。なお、図1に示した第一実施形態と同じ部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0029】
図3(A)及び(B)に示した第二実施形態は、スクロール部1の断面形状の推移は第一実施形態と同様に第一移行部2と第二移行部3とを有しつつ、スクロール部1の外縁11及び内縁12の形状を改良したものである。すなわち、第二実施形態におけるスクロール部1の外縁11は、半径Rが一定に形成された円弧部11aと、円弧部11aからスクロール部1の終点P3に向かって半径Rが漸減した漸減部11bと、を有する。
【0030】
また、スクロール部1の内縁12は、第一実施形態と同様に、外縁11の始点P1に対応する始点Q1からスクロール部1の終点P3に向けて半径rが漸増するように形成されている。なお、図示しないが、外縁11の円弧部11aに対応する内縁12の半径rを漸増させ、外縁11の漸減部11bに対応する内縁12の半径rを一定となるように構成してもよい。
【0031】
前記円弧部11aは、外縁11の接線方向とスクロール部1の入口における流体Gの流れ方向と一致する点である始点P1から形成されている。ここで、始点P1の位置を0°と規定すれば、円弧部11aの終点P2の位相は約250°に設定され、スクロール部1の終点P3の位相は約310°に設定されている。すなわち、ここでは円弧部11aの中心角は、約250°に設定されていることとなる。そして、かかる第二実施形態では、始点P1から終点P2の間における外縁11の半径Rが一定の大きさに形成されている。
【0032】
前記漸減部11bは、円弧部11aの終点P2からスクロール部1の終点P3を結ぶ曲線であり、外縁11の半径Rが徐々に減っていくように形成されている。この漸減部11bの半径Rの変化量は、円弧部11aの終点P2の位相によって変化するものであるが、変化量が大きくなるとスクロール部1を流れる流体Gの流れを阻害する抵抗となり易い。一方で、円弧部11aを長く(終点P2の位相を大きく)した方が圧力損失を低減し易い。そこで、かかる第二実施形態を採用する場合には、適用されるタービン又は過給機の種類や出力に応じて円弧部11aの終点P2の位相を設定する必要がある。種々のタービンや過給機を想定したうえで、円弧部11aの終点P2の位相を設定する際の指針を経験的に示すとすれば、好ましくは180°以上であり、好ましくは180°以上270°以下であり、好ましくは225°以上270°以下である。
【0033】
上述した第二実施形態のスクロール部構造によれば、外縁11及び内縁12が、第一実施形態の外縁11及び内縁12よりもフレームサイズの外形に接近するように形成されている。したがって、第二実施形態のスクロール部1では、流体Gは外縁11の円弧部11aに沿って円滑に流れ、漸減部11bで徐々に終点P3に向かって流れることとなり、十分な流路断面積を確保することができる。
【0034】
また、第二実施形態のスクロール部1は、流路断面S1〜S8における外縁11が半径一定に形成された円弧部11aを形成しているため、図3(A)に示すように、外縁11が図の上側に寄せられた状態となる。同様に、内縁12も図の上側に寄せられることとなる。したがって、流路断面S1〜S11の中心点の軌跡Lは、図示したように、外縁11に向かって上側に凸な曲線となる。したがって、流体Gがスクロール部1から導入路4に流入するときの流入角度θを小さくすることができ、突出部52の表面に負圧となる部分が形成され難い。また、第二実施形態のスクロール部1では、流路が外側に寄せられているため、流路断面S5の時点において、内縁12は既に突出部52と略同じ位置に設定されており、流路断面S5〜S11を流れる流体Gに対して突出部52が流れを阻害することがなく、圧力損失を低減することができる。
【0035】
なお、第二移行部3の断面S7〜S11は、外縁11側に寄せられていることから、所定の円形状から導入路4に向かって接線を引いた形状に形成されるが、これは本発明により形成された断面形状と導入路4とを円滑に連結するための処理に過ぎない。すなわち、第二実施形態における各断面S1〜S11は、第一実施形態と同様に設定される。
【0036】
次に、本発明に係るスクロール部構造の第三実施形態について説明する。ここで、図4は、本発明のスクロール部構造に係る第三実施形態を示す図であり、(A)は図4(B)における断面S1〜S11を積層して表示した断層図であり、(B)は平面図である。なお、図1に示した第一実施形態と同じ部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0037】
図4(A)及び(B)に示した第三実施形態は、突出部52のないスクロール部1に本発明のスクロール部構造を適用したものである。したがって、断面形状の推移は第一実施形態と同様に第一移行部2と第二移行部3とを有する。かかる第三実施形態におけるスクロール部1の外縁11は、始点P1から終点P3に向かって半径Rが漸減するように形成されており、スクロール部1の内縁12は、始点Q1から終点P3まで半径rが一定となるように形成されている。かかる構成によっても、各位相において十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができる。
【0038】
ここで、図5は、上述した第二実施形態における曲率半径の設定範囲及びその効果を示す図であり、(A)は半径比と水力直径比の関係、(B)は半径比と圧力損失改善比の関係、を示している。
【0039】
図5(A)の横軸は、スクロール部1の形成可能範囲として付与されるフレームサイズF内に設定される最大正方形の内接円の半径Csに対する断面形状の角部の曲率半径Cの比率を示しており、1に近づくほど円形状に近くなり、0に近づくほど矩形形状に近くなることを意味している。また、図5(A)の縦軸は、円形断面又は矩形断面の水力直径Dsに対する断面形状の水力直径Dの比率を示している。
【0040】
図5(A)に示すように、断面形状が角丸四角形状の場合、すなわち、0<半径比(C/Cs)<1の場合、半径比(C/Cs)が0.5の場合に水力直径比(D/Ds)が最大となる。すなわち、断面形状の角部の曲率半径Cが、フレームサイズF内に設定される最大正方形の内接円の半径Csの半分の値の場合に水力直径Dが最大となる。したがって、かかる場合に水力直径Dを最も大きく取ることができ、十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができる。
【0041】
また、曲率半径Cが半径Csの0.5倍の前後において、水力直径比(D/Ds)の変化は少ないため、曲率半径Cは半径Csに対して0.4〜0.6倍の大きさであれば、本発明の効果を効率的に発揮させることができる。勿論、水力直径比(D/Ds)が1より大きい値であれば、断面形状の水力直径Dを円形断面よりも大きくすることができ、曲率半径Csの大きさは上述した数値に限定されるものではない。例えば、水力直径比(D/Ds)の基準値を1.02とすれば、曲率半径Cは半径Csに対して約0.1〜約0.9倍の大きさであればよいし、水力直径比(D/Ds)の基準値を1.04とすれば、曲率半径Cは半径Csに対して約0.2〜約0.8倍の大きさであればよい。
【0042】
図5(B)の横軸は、図5(A)の横軸と同様に、半径Csに対する曲率半径Cの比率を示している。また、図5(B)の縦軸は、円形断面又は矩形断面の断面形状に対する角丸四角形状の圧力損失改善比を示している。
【0043】
図5(B)に示すように、断面形状が角丸四角形状の場合、すなわち、0<半径比(C/Cs)<1の場合、円形断面又は矩形断面の断面形状に対して圧力損失を低減することができ、半径比(C/Cs)が0.5の場合に圧力損失改善比が最大となる。すなわち、断面形状の角部の曲率半径Cが、フレームサイズF内に設定される最大正方形の内接円の半径Csの半分の値の場合に圧力損失を最も低減することができる。
【0044】
また、曲率半径Cを半径Csの0.4〜0.6倍の大きさに設定した場合には圧力損失改善比を約0.20以上にすることができ、曲率半径Cを半径Csの0.2〜0.8倍の大きさに設定した場合には圧力損失改善比を約0.15以上にすることができ、曲率半径Cを半径Csの0.1〜0.9倍の大きさに設定した場合には圧力損失改善比を約0.10以上にすることができ、いずれの範囲で設定しても圧力損失を低減することができることがわかる。
【0045】
最後に、本発明のスクロール部構造を採用した過給機について図6を参照しつつ説明する。ここで、図6は、本発明のスクロール部構造を採用した過給機の断面図である。なお、上述した本発明のスクロール部構造と同じ部品には同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0046】
本発明の過給機は、排気ガスの供給によりタービン動翼61を回転させるガスタービン7と、タービン動翼61と同軸に連結された羽根車81により空気を吸入するコンプレッサ8と、を備えた過給機であり、ガスタービン7は、タービン動翼61の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部1を有し、スクロール部1は、第一実施形態〜第三実施形態に示したように、断面形状が角丸四角形状から円形状に移行しながら面積が漸減する第一移行部2を有し、第一移行部2の角部の曲率半径Cは同一の大きさに構成されている。なお、タービン動翼61は、タービンディスク6に立設されており、タービン動翼61及びタービンディスク6によりガスタービン7の羽根車が構成されている。
【0047】
かかる過給機の外形は、ガスタービン7の筐体を構成するタービンハウジング71と、コンプレッサ8の筐体を構成するコンプレッサハウジング82と、タービンディスク6と羽根車81を連結する回転軸9を支持するセンターハウジング91と、により構成されている。そして、スクロール部1は、タービンハウジング71の一部を構成している。また、図示した過給機は、いわゆる車両用過給機であり、車両のエンジンの回転数に合わせて適切なガスタービン7の出力を得るために、スクロール部1とタービン動翼61との間の導入路4に複数の回動可能なベーン51を配置した可変ノズル機構5を備えた可変容量過給機である。
【0048】
ここで、可変ノズル機構5は、タービンハウジング71に固定された環状のシュラウド53と、タービンハウジング71及びセンターハウジング91の間に支持された環状の支持リング54と、シュラウド53及び支持リング54の間で回動可能に支持された複数のベーン51と、ベーン51を回動させる駆動機構55と、シュラウド53と支持リング54との間隔を保持するピン56と、から構成されている。したがって、シュラウド53と支持リング54とにより囲まれた部分が、スクロール部1を流れる排気ガスをタービン動翼61に供給する導入路4を構成し、シュラウド53の一部がスクロール部1に突出した突出部52を構成している。また、駆動機構55は、例えば、リンク機構により構成されており、過給機の外部に配置されたアクチュエータ(図示せず)により動力が与えられ、複数のベーン51を同期させながら角度を変更できるように構成されている。
【0049】
上述した本発明の過給機では、スクロール部1に上述した本発明のスクロール部構造を採用しているため、スクロール部1の各位相において十分な流路断面積を確保することができるとともに、流体の圧力損失を低減することができる。
【0050】
なお、本発明の過給機は、図示した構造のものに限定されるものではなく、可変ノズル機構5の構成が異なる過給機や可変ノズル機構5を有しない過給機であってもよいし、車両用以外の過給機であってもよいし、排気ガス以外の気体や水等の液体により駆動されるタービンを有するものであってもよい。
【0051】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 スクロール部
2 第一移行部
3 第二移行部
4 導入路
5 可変ノズル機構
6 タービンディスク
7 ガスタービン
8 コンプレッサ
9 回転軸
11 外縁
11a 円弧部
11b 漸減部
12 内縁
51 ベーン
52 突出部
53 シュラウド
54 支持リング
55 駆動機構
56 ピン
61 タービン動翼
71 タービンハウジング
81 羽根車
82 コンプレッサハウジング
91 センターハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体と動翼の間でエネルギーを交換する流体機械の前記動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部の構造であって、
前記スクロール部は、断面形状が角丸四角形状から円形状に移行しながら面積が漸減する第一移行部を有し、該第一移行部の角部の曲率半径は実質的に同一の大きさに構成されている、ことを特徴とするスクロール部構造。
【請求項2】
前記曲率半径は、前記スクロール部の形成可能範囲として付与されるフレームサイズ内に設定される最大正方形の内接円の半径に対して、0.1〜0.9倍の大きさである、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール部構造。
【請求項3】
前記曲率半径は、前記スクロール部の形成可能範囲として付与されるフレームサイズ内に設定される最大正方形の内接円の半径に対して、0.2〜0.8倍の大きさである、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール部構造。
【請求項4】
前記曲率半径は、前記スクロール部の形成可能範囲として付与されるフレームサイズ内に設定される最大正方形の内接円の半径に対して、0.4〜0.6倍の大きさである、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール部構造。
【請求項5】
前記スクロール部は、前記第一移行部の円形状が徐々に縮径した第二移行部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール部構造。
【請求項6】
前記スクロール部の外縁は、半径が一定に形成された円弧部と、該円弧部から前記スクロール部の終点に向かって半径が漸減した漸減部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のスクロール部構造。
【請求項7】
前記流体機械は、前記スクロール部から前記動翼に流体を供給する導入路に複数の回動可能なベーンを配置した可変ノズル機構を備え、該可変ノズル機構の一部が前記スクロール部に突出するように配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール部構造。
【請求項8】
排気ガスの供給によりタービン動翼を回転させるガスタービンと、前記タービン動翼と同軸に連結された羽根車により空気を吸入するコンプレッサと、を備えた過給機であって、前記ガスタービンは、前記タービン動翼の回転軸周りに渦巻き形状に形成された流路を構成するスクロール部を有し、該スクロール部は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスクロール部構造を備えている、ことを特徴とする過給機。
【請求項9】
前記タービンは、前記スクロール部から前記動翼に流体を供給する導入路に複数の回動可能なベーンを配置した可変ノズル機構を備え、該可変ノズル機構の一部が前記スクロール部に突出するように配置されている、ことを特徴とする請求項8に記載の過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−209824(P2010−209824A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57808(P2009−57808)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】