説明

スケジューリング方法およびそれを利用した基地局装置

【課題】 空間分割多重を行う複数の端末装置の選定にさいし、システム容量を低減させることなく、かつ、不公平とならないように端末装置を選定する。
【解決手段】 基地局装置10は、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第4アンテナ12d、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、処理部22と総称される第1処理部22a、第2処理部22b、第4処理部22d、変復調部24と総称される第1変復調部24a、第2変復調部24b、第4変復調部24d、インタフェース部26を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケジューリング技術に関し、特に通信対象の端末装置に対するスケジューリング方法およびそれを利用した基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス通信において、一般的に限りある周波数資源の有効利用が望まれている。特に、携帯電話や第二世代コードレス電話システムの普及に伴い、その要請はさらに高まっている。この要請に応えるための技術のひとつが、空間多重方式である。空間多重方式とは、複数の端末装置のそれぞれに対して、アンテナの指向性パターンを調節することによって、同一周波数かつ同一タイミングにおいて、複数の端末装置と通信する技術である。このような空間多重方式は、アンテナの指向性パターンによって、複数の端末装置との間の信号を分離することに相当する。このような指向性パターンの形成には、アダプティブアレイアンテナ技術が適用される。
【0003】
一般的に、アダプティブアレイアンテナ技術では、以下のふたつの場合に、アンテナ指向性パターンによる複数の端末装置の分離が不十分になるので、通信品質が悪化する。ひとつ目は、少なくともふたつの端末装置が略同方向に存在する場合である。この場合、指向性パターンの差異による両者の信号の分離が困難になる。ふたつ目は、少なくともふたつの端末装置からの受信信号の強度比がある程度大きくなってしまう場合である。この場合、両者の信号の強度比がアンテナの利得比を上回ってしまうことによって、両者の信号の分離が困難になる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−77980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者はこうした状況下、以下の課題を認識するに至った。すなわち、空間多重方式において多重することのできる端末装置の個数よりも多くの端末装置から通信要求を受けた場合、多重できない端末装置は、通信を行うことができない。また、空間多重する複数の端末装置が受信側で分離しがたい組み合わせであった場合、システム容量が低減してしまう。また、システム容量が低減しないように、多重する端末装置の分離が容易となる端末装置の組み合わせを決定した場合、いつまでたっても通信を行うことができない端末装置が存在することになり、不公平となってしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、空間分割多重を行う複数の端末装置の選定にさいし、システム容量の低減を抑制しつつ、かつ、不公平とならないように端末装置を選定するスケジューリング方法およびそれを利用した基地局装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の基地局装置は、複数の端末装置からの通信要求をそれぞれ受信する受信部と、受信部が通信要求を受信してからの経過時間を端末装置ごとに計測する待時間計測部と、複数の端末装置に対する信号品質をそれぞれ取得する品質取得部と、待時間計測部で計測された経過時間と、品質取得部において取得された信号品質とにもとづいて、複数の端末装置のうち、空間分割多重を行う端末装置を決定する決定部と、を備える。
【0007】
この態様によると、経過時間と信号品質の双方にもとづいて、空間分割多重を行う端末装置を決定するために、システムに与える影響を低減し、また、不公平性を低減して、端末装置を選定することができる。
【0008】
ここで、「通信要求」とは、たとえば、端末装置から送られた、基地局装置との間で通信を開始したい旨を示す情報などをいい、また、現在の通信にかかるサービスの形態を変更したい旨を示す要求であってもよい。「サービスの形態」とは、音声通信や画像通信などのサービスの種別に限らず、通信レート、他の基地局装置へのハンドオーバ、変復調方式、アクセス方式などであってもよい。また、「経過時間」とは、たとえば、端末装置から送られた通信要求を基地局装置が認識してから、当該端末装置が通信対象として決定され呼を確立するまでの待ち時間などをいう。また、「信号品質」とは、たとえば、基地局装置で測定した上りの信号品質などをいい、また、信号電力や信号電力対雑音比、下りの送信電力などであってもよい。また、端末装置において測定した下り受信電力などであってもよい。また、「取得する」とは、基地局装置の内部において測定することによって信号品質を取得することなどを含み、また、端末装置において測定した信号品質を示す情報を無線回線を通じて基地局装置が取得してもよい。
【0009】
決定部は、経過時間が長い順に、空間分割多重を行うべき第1の端末装置を順次選択する第1選択部と、第1の端末装置より短い経過時間を有する少なくとも1以上の端末装置を第2の端末装置の候補とし、第2の端末装置の候補の信号品質のそれぞれと、第1の端末装置の信号品質との差異を導出する導出部と、導出部によって導出された差異のそれぞれのうち、所定のしきい値よりも小さい差異を選択し、当該差異に対応した第2の端末装置の候補を、第2の端末装置として限定する第2選択部と、を有してもよい。
【0010】
この態様によると、第1の端末装置、すなわち、空間分割多重する一方の端末装置を、経過時間の長い端末装置とすることで、公平性を図ることができる。また、第1の端末装置と多重する第2の端末装置の選択において、第1の端末装置と第2の端末装置のの信号品質の差異が所定のしきい値より低い端末装置を選択することによって、分離の容易な端末装置の組み合わせを選定できる。また、この選定にさいし、第2の端末装置の候補は、経過時間の長い端末装置から順に選定されるので、公平性も担保できる。
【0011】
ここで、「空間分割多重をおこなうべき第1の端末装置」とは、空間分割多重する一方の端末装置などを含み、経過時間が最も長い端末装置でなくともよい。「第2の端末装置の候補」とは、第1の端末装置と多重される第2の端末装置の選定にさいし、選定の対象となる端末装置を含む。「限定する」とは、第2の端末装置の選定にさいし、複数の第2の端末装置の候補について信号品質にもとづいて選定した結果、複数の第2の端末装置の候補に含まれるいずれかの第2の端末装置の候補を限定することを含む。また、限定された結果、複数の第2の端末装置が選定されてもよい。
【0012】
また、決定部は、複数の端末装置のうち、経過時間に関するしきい値より大きい経過時間を有する端末装置が存在している場合、第2選択部によって第2の端末装置が限定されるか否かにかかわらず、少なくとも該端末装置を第1の端末装置として決定してもよい。
【0013】
この態様によると、すでに相当の時間経過している第1の端末装置を、空間多重するしないにかかわらず、通信を行う対象の端末装置として決定することによって、端末装置において、経過時間に関するしきい値を大幅に超えて待つような状態が低減される。これにより、端末装置を使用するユーザに対し、つながりやすい端末装置、もしくは、端末装置と基地局装置を含むシステムを提供することができる。
【0014】
第1選択部は、第2選択部において第2の端末装置が存在しなかった場合、すでに選択した第1の端末装置を、第1の端末装置より短い経過時間を有する端末装置に置き換え、導出部は、置き換えられた第1の端末装置に関し、信号品質の差異を導出し、第2選択部は、第2の端末装置を限定するための処理を再度実行してもよい。
【0015】
この態様によると、経過時間が最も長い端末装置であっても、空間多重すべき端末装置がなかった場合は、経過時間が2番目に長い端末装置を第1の端末装置として、その第1の端末装置と多重すべき端末装置を同様に決定することによって、より多くの端末装置に対して同時に呼を確立させることができる。
【0016】
ここで、「第2の端末装置が存在しなかった場合」とは、第1の端末装置との組み合わせに適した端末装置がなかった場合などをいい、たとえば、第1の端末装置の信号品質と、他の端末装置の信号品質との差異が、いずれもしきい値を超えていた場合などを含み、また、第1の端末装置の経過時間が、経過時間に関するしきい値より小さい場合なども含む。「第2の端末装置を限定するための処理」とは、置き換えられた第1の端末装置の信号品質と、第2の端末装置の候補の信号品質の差異を求め、その差異が所定のしきい値より小さい場合は、第2の端末装置の候補から第2の端末装置を限定することなどを含む。
【0017】
決定部は、空間分割多重を行うべき第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせが存在しなかった場合、最も長い経過時間を有する端末装置のみに対して通信を行うことを決定してもよい。
【0018】
この態様によると、空間分割多重する端末装置の組み合わせが存在しなかった場合は、空間分割多重することなしに、最も長い経過時間を有する端末装置のみを通信対象として呼を確立させることによって、リソースを有効に活用することができ、また、公平性も向上できる。
【0019】
ここで、「空間分割多重を行うべき第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせが存在しなかった場合」とは、通信要求を行った複数の端末装置のいずれの組み合わせにおいても、組み合わせにかかる端末装置の信号品質の差異が所定のしきい値より大きかった場合などを含む。
【0020】
本発明の別の態様は、スケジューリング方法である。この方法は、複数の端末装置からの通信要求を受信するステップと、受信するステップで通信要求を受信してからの経過時間を端末装置ごとに計測するステップと、複数の端末装置に対する信号品質をそれぞれ取得するステップと、計測するステップにおいて計測された経過時間と、取得するステップにおいて取得された信号品質とにもとづいて、複数の端末装置のうち、空間分割多重を行う端末装置を選択するステップと、を含む。
【0021】
この態様によると、経過時間と信号品質の双方にもとづいて、空間分割多重を行う端末装置を決定するために、システムへの影響を低減しつつ、かつ、不公平性を低減して、端末装置を選定することができる。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、コンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、無線ネットワークを介して、複数の端末装置からの通信要求を受信するステップと、受信するステップで通信要求を受信してからの経過時間を端末装置ごとに計測するステップと、複数の端末装置に対する信号品質をそれぞれ取得するステップと、計測するステップにおいて計測された経過時間と、取得するステップにおいて取得された信号品質とにもとづいて、複数の端末装置のうち、空間分割多重を行う端末装置を決定し、その結果を記憶するステップと、を含む。
【0023】
この態様によると、経過時間と信号品質の双方にもとづいて、空間分割多重を行う端末装置を決定するために、システムに与える影響を低減し、または、不公平性を低減して、端末装置を選定することができる。
【0024】
空間分割多重を行う端末装置を決定し、その結果を記憶するステップは、経過時間が長い順に、空間分割多重を行うべき第1の端末装置を順次選択する第1選択ステップと、第1の端末装置より短い経過時間を有する少なくとも1以上の端末装置を第2の端末装置の候補とし、第2の端末装置の候補の信号品質のそれぞれと、第1の端末装置の信号品質との差異を導出する導出ステップと、導出ステップによって導出された差異のそれぞれのうち、所定のしきい値よりも小さい差異を選択し、当該差異に対応した第2の端末装置の候補を、第2の端末装置として限定する第2選択ステップと、を有してもよい。
【0025】
また、空間分割多重を行う端末装置を決定し、その結果を記憶するステップは、複数の端末装置のうち、経過時間に関するしきい値より大きい経過時間を有する端末装置が存在している場合、第2選択ステップによって第2の端末装置が限定されるか否かにかかわらず、少なくとも該端末装置を第1の端末装置として決定してもよい。
【0026】
第2選択ステップは、第2の端末装置が存在しなかった場合、第1端末装置選択ステップにおける第1の端末装置を、第1の端末装置より短い経過時間を有する端末装置に置き換えて、再度、第2の端末装置を限定するための処理を実行してもよい。
【0027】
空間分割多重を行う端末装置を決定し、その結果を記憶するステップは、空間分割多重を行うべき第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせが存在しなかった場合、最も長い経過時間を有する端末装置のみを決定してもよい。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、空間分割多重を行う複数の端末装置の選定にさいし、システムに与える影響を低減しつつ、不公平性を低減して端末装置を選定できると共に、無線リソースの有効活用、さらに、周波数利用効率が向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、第二世代コードレス電話システムのごとく、TDMA(Time Division Multiple Access)によって複数の端末装置を接続する基地局装置である。第二世代コードレス電話システムのひとつのフレームは、8つのタイムスロットによって構成され、さらにフレームが連続して配置されている。ひとつの端末装置に対して、フレーム単位にひとつのタイムスロットが割り当てられることによって、32kbpsのデータレートが実現される。なお、上下回線を考慮すれば、ひとつの端末装置に対して、フレーム単位にふたつのタイムスロットが割り当てられる。
【0031】
本実施例に係る基地局装置は、さらにSDMA(Space Division Multiple Access)も適用し、ひとつのタイムスロットに複数の端末装置を割り当てる。その際、それぞれの端末装置からの通信要求を契機とした待ち時間を考慮して、ひとつのタイムスロットに割り当てる複数の端末装置を決定する。割り当てる端末装置の個数は、2以上でもよい。また、待ち時間だけでなく、2以上の端末装置の信号品質の差異をもとにして、割り当てる端末装置の組み合わせを決定する。その結果、所定のフレームに含まれたタイムスロットにおいて、原則として、待ち時間の長い端末装置と、該端末装置の信号品質との差異が小さい信号品質を有する端末装置とが空間多重される。待ち時間の長い端末装置の信号品質との差異が小さい信号品質を有する端末装置は、その待ち時間が比較的短い場合であっても、多重する端末装置として選択される場合がある。
【0032】
本実施例に係る基地局装置は、待ち時間を考慮して空間分割多重を行うので、全ての端末装置が平等に割り当てられる。また、信号品質の差異をもとにして、空間分割多重する端末装置の組み合わせを決定するので、多重された複数の端末装置を容易に分離ができる。
【0033】
図1は、本発明の実施例に係る基地局装置10の構成例を示す図である。基地局装置10は、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第4アンテナ12d、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、処理部22と総称される第1処理部22a、第2処理部22b、第4処理部22d、変復調部24と総称される第1変復調部24a、第2変復調部24b、第4変復調部24d、インタフェース部26(InterFace部。以下、「IF部26」と略称する。)、品質取得部28、制御部30、管理部32を含む。また信号として、無線部側信号200と総称される第1無線部側信号200a、第2無線部側信号200b、第4無線部側信号200d、変復調部側信号202と総称される第1変復調部側信号202a、第2変復調部側信号202b、第4変復調部側信号202dを含む。
【0034】
アンテナ12は、受信動作として、図示しない端末装置から無線周波数の信号を受信する。また、アンテナ12は、送信動作として、図示しない端末装置へ無線周波数の信号を送信する。なお、受信動作と送信動作のタイミングは、後述の制御部30によって制御される。アンテナ12は、アダプティブアレイアンテナ技術に対応しており、アンテナの指向性は、後述の処理部22によって制御される。ここで、アンテナ12の数を「4」とするが、これ以外の数であってもよい。
【0035】
無線部20は、受信動作として、アンテナ12において受信した無線周波数の信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。無線部20は、ベースバンドの信号を無線部側信号200として処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、自動利得制御装置(Automatic Gain Controller。以下、「AGC」と略称する。)やアナログデジタル変換部(Analog Digital変換部。以下、「A/D変換部」と略称する。)も含まれる。無線部20は、送信動作として、処理部22からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、処理部22からのベースバンドの信号も無線部側信号200として示す。無線部20は、無線周波数の信号をアンテナ12に出力する。また、電力増幅器(Power Amplifier。以下、「PA」と略称する。)、デジタルアナログ変換部(Digital Analog変換部。以下、「D/A変換部」と略称する。)も含まれる。
【0036】
処理部22は、受信動作として、複数の無線部側信号200に対して、アダプティブアレイ信号処理を実行する。処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を変復調部側信号202として出力する。ひとつの変復調部側信号202が、空間多重された複数の端末装置のうちのひとつに対応した信号に相当する。処理部22は、送信動作として、変復調部24から入力した変復調部側信号202に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。さらに、処理部22は、アダプティブアレイ信号処理した信号を無線部側信号200として出力する。
【0037】
具体的には、処理部22は、受信処理として、受信信号から導出した受信ウエイトベクトルによって、無線部20から送られた受信信号のそれぞれを重み付けし加算する。受信ウエイトベクトルの導出方法は、任意のものでよく、そのひとつはLMS(Least Mean Squeare)アルゴリズムによる導出である。ここで、加算された信号が、変復調部側信号202として示される。なお、乗算部56と加算部60の処理が、重み付けを行いながらの合成に相当する。また、トレーニング信号の期間中において予め記憶したトレーニング信号を参照信号として出力する。またこれらの期間以外は、予め規定しているしきい値によって、受信信号を判定し、その結果を参照信号として出力する。なお、判定は硬判定でなく、軟判定でもよい。ここで、端末装置との通信は、所定のタイムスロットにおいてなされる。そのため、バースト信号によって通信が実行される。第二世代コードレス電話システムでは、バースト信号の先頭部分にプリアンブルが配置される。プリアンブルは、既知の信号であるので、トレーニング信号に相当する。
【0038】
また、処理部22は、送信処理として、受信ウエイトベクトルから、送信信号の重み付けに必要な送信ウエイトベクトルを推定する。送信ウエイトベクトルの推定方法は、任意とするが、最も簡易な方法として、受信ウエイトベクトルをそのまま使用すればよい。あるいは、受信処理と送信処理との時間差によって生じる伝搬環境のドップラー周波数変動を考慮し、従来の技術によって、受信ウエイトベクトルを補正してもよい。なお、ここでは、受信ウエイトベクトルをそのまま送信ウエイトベクトルに使用するものとする。さらに、送信ウエイトベクトルによって、送信ベクトルを重み付けし、その結果のバースト信号の先頭部分に、プリアンブルを付加する。なお、以上の動作は、前述のごとく、図1の制御部30によって制御されるものとする。
【0039】
変復調部24は、受信処理として、処理部22からの変復調部側信号202に対して、復調を実行する。変復調部24は、復調した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を変復調部側信号202として処理部22に出力する。ここで、変調方式には、第二世代コードレス電話システムに対応したπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を使用してもよい。一方、復調は、遅延検波、同期検波を行う。
【0040】
IF部26は、図示しないネットワークと接続し、受信処理として、変復調部24において復調した個々の端末装置の信号を図示しないネットワークに出力する。また、IF部26は、復調した個々の端末装置の信号のいずれかに通信要求情報が含まれていた場合、制御部30に対し、通信要求情報にかかる端末装置を示す情報を通知する。また、IF部26は、送信処理として、ネットワークからデータを入力し、これを変復調部24に出力する。以上のごとく、アンテナ12、無線部20、処理部22、変復調部24は、図示しない複数の端末装置との通信を実現する。通信を実現するために、連続して配置されるフレームのそれぞれに含まれる複数のタイムスロットが使用される。
【0041】
品質取得部28は、複数の端末装置のそれぞれの信号品質を取得して、制御部30に出力する。ここでは、複数の端末装置からそれぞれ受信した信号の強度を測定し、信号品質とする。なお、前述のごとく、SDMAを使用しているので、無線周波数の信号や無線部側信号200には、ひとつのタイムスロットに割り当てられた複数の端末装置からの信号が含まれている。そのため、品質取得部28は、第1処理部22aから第4処理部22dにおいてそれぞれ導出された受信ウエイトベクトルにもとづいて、信号品質を導出してもよい。受信ウエイトベクトルのそれぞれは、複数の端末装置のそれぞれに対応するように計算されるからである。品質取得部28は、ひとつの端末装置に対応した受信ウエイトベクトルの各成分を積算することによって、当該端末装置に対応した信号の強度を導出する。なお、SDMAを実行していない場合に、品質取得部28は、無線周波数の信号や無線部側信号200から信号の強度を導出してもよい。また、品質取得部28は、端末装置の内部で測定した下り信号品質を、無線回線を介して、取得しても良い。
【0042】
制御部30は、IF部26から通知された通信要求と、品質取得部28から送られた信号品質を入力として、基地局装置10と通信すべき複数の端末装置に対して、無線チャネルを割り当てる。いいかえると、制御部30は、空間分割多重を行うべき複数の端末装置を決定する。また、基地局装置10に含まれる構成要素のタイミングを制御する。なお、TDMAにおいては、端末装置と通信するために、端末装置に対してタイムスロットを割り当てるので、無線チャネルはタイムスロットに相当する。ここでは、TDMAに加えてSDMAも対象とするので、ひとつのタイムスロットに、複数の無線チャネルが配置される。そのため、ひとつのタイムスロットに、複数の端末装置が割り当てられる。なお、制御部30は、タイムスロットを割り当てる際に、管理部32において管理されているデータを参照してもよい。
【0043】
図2は、図1の制御部30によって実現されるフレームの構造例を示す図である。図2は、制御部30が複数の端末装置にタイムスロットを割り当てた場合に相当する。図2は、横軸の方向に、時間軸上のタイムスロットの配置、すなわち無線チャネルの配置を示し、縦軸の方向に、空間軸上の無線チャネルの配置を示す。すなわち、横軸がTDMAに相当し、縦軸がSDMAに相当する。
【0044】
また、図2には、ふたつの連続したフレームが、「第iフレーム」、「第(i+1)フレーム」として示されている。また、それぞれのフレームには、「第1タイムスロット」から「第4タイムスロット」が含まれている。ここでは、上り回線あるいは下り回線の一方を示しているので、ひとつのフレームに含まれたタイムスロットの数を「4」としたが、実際には「8」つのタイムスロットが含まれているので、図示しない「第5タイムスロット」から「第8タイムスロット」も含まれている。なお、フレームには、所定の番号が付与されている。「タイムスロット」は、端末装置に割り当てるタイムスロットを示す。前述のごとく、ひとつのフレームには、8つのタイムスロットが含まれているが、上り回線あるいは下り回線に対して、4つのタイムスロットのそれぞれが端末装置に割り当てられる。ここでは、フレーム内の先頭から順に、第1タイムスロット、第2タイムスロット、第3タイムスロット、第4タイムスロットとする。そのため、異なるフレームであっても、第1タイムスロット同士は、フレーム内での相対的なタイミングが一致しているといえる。
【0045】
しかしながら、「第1タイムスロット」に割り当てられた端末装置には、「第5タイムスロット」も割り当てられるように、上り回線用のタイムスロットと下り回線用のタイムスロットは、一般的に1対1で対応している。そのため、以下において、図示のごとく、「4」つのタイムスロットのみを説明の対象とする。
【0046】
また、図2においては、別個の端末装置が多重されていることを示すために、図2中の各スロットに端末装置A34(以下、「ユーザA」と称する。)、端末装置B36(以下、「ユーザB」と称する。)、端末装置C38(以下、「ユーザC」と称する。)が割り当てられている様子を示した。なお、このような表示は説明を明瞭にするために行っているものであり、実際には、端末装置に対して、これら以外の識別番号が付与されていてもよい。制御部30は、「第iフレーム」、「第(i+1)フレーム」の「第1タイムスロット」に、ユーザAを割り当てる。また、制御部30は、「第1タイムスロット」に、ユーザAと多重する端末装置として、ユーザBとユーザCをフレーム単位で切り替えて割り当てる。そのため、制御部30は、「第iフレーム」において、ユーザAとユーザBを空間多重し、「第(i+1)フレーム」において、ユーザAとユーザCを空間多重する。
【0047】
ここで、図3を用いて制御部30について詳細に説明する。図3は、図1の制御部30の構成例を示す図である。制御部30は、待時間計測部70と決定部72を含む。本実施例において、制御部30は、複数の端末装置にタイムスロットを割り当てる際に、以下の通り動作する。すなわち、制御部30は、複数の端末装置のうち、待ち時間が長くなっており、かつ、信号品質の差異が小さくなっている1組の端末装置を優先的に選択し、これらに対して所定の関係を有したタイムスロットを割り当てる。信号品質間の差異が小さくなっているとは、他の差異に比べて差異が小さくなっているという程度でよく、必ずしも最小でなくてもよい。所定の関係を有したタイムスロットとは、連続して配置されるフレームのうちの異なったフレームにそれぞれ含まれるタイムスロットであって、かつフレーム内での相対的なタイミングが一致するタイムスロットである。これは、図2において、「第iフレーム」の「第1タイムスロット」と、「第(i+1)フレーム」の「第1タイムスロット」との関係に対応する。すなわち、これらは、端末装置Aに割り当てられているタイムスロットに含まれるタイムスロットである。
【0048】
待時間計測部70は、IF部26から通知された個々の端末装置から通信要求を契機として、当該端末装置の待ち時間を計測する。計測された端末装置ごとの待ち時間は、決定部72に通知される。待ち時間の計測は、端末装置から通信要求を受けた時に、当該端末装置にかかるカウンタの値を0とし、決定部72によって当該端末装置が割り当てられることが決定されるまで、カウンタの値を増加し続けることによっておこなってもよい。決定部72によって当該端末装置が割り当てられることが決定された場合、待時間計測部70は、当該カウンタの値を0に初期化してもよい。待時間計測部70は、基地局装置10が収容することのできる端末装置の台数以上のカウンタを設ける。いいかえると、待時間計測部70は、通信要求があった端末装置に対して、待ち時間を計測するためのカウンタを割り当てて計測を行っている。
【0049】
また、待時間計測部70は、複数の端末装置の待ち時間を管理するために、待ち行列メモリを有していてもよい。待ち行列メモリは、仮想的な巡回FIFOバッファであってもよい。待ち行列メモリは、端末装置から通信要求がくるごとに、当該端末装置を示す情報が待ち行列の最後尾に追加される。また、待ち行列メモリは、決定部72によって当該端末装置が割り当てられることが決定された場合、待ち行列中に存在する当該端末装置を示す情報を最後尾に移し替える。このような構成をとることにより、待ち行列の先頭には、常に待ち時間の長い端末装置が存在することとなる。
【0050】
決定部72は、待時間計測部70によって計測された個々の端末装置の待ち時間と、品質取得部28より通知された個々の端末装置の信号品質とを用いて、空間多重する複数の端末装置を決定する。図4は、図3の決定部72の構成例を示す図である。決定部72は、第1選択部74と、導出部76と、第2選択部78とを含む。第1選択部74は、経過時間が長い順に、空間分割多重を行うべき第1の端末装置を順次選択する。導出部76は、第1の端末装置より短い経過時間を有する少なくとも1以上の端末装置を第2の端末装置の候補とし、第2の端末装置の候補の信号品質のそれぞれと、第1の端末装置の信号品質との差異を導出する。第2選択部78は、導出部76によって導出された差異のそれぞれのうち、所定のしきい値よりも小さい差異を選択し、当該差異に対応した第2の端末装置の候補を、第2の端末装置として限定し、空間分割多重する第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせを決定する。なお、信号品質間の差異を導出するために、導出部76は、複数の端末装置の信号強度間の減算を実行する。この場合、減算でなく、除算を実行し、信号強度間の比を計算し、これを信号強度間の差異とみなしてもよい。
【0051】
また、第1選択部74は、複数の端末装置のうち、経過時間に関するしきい値より大きい経過時間を有する端末装置が存在している場合、第2選択部78によって第2の端末装置が限定されるか否かにかかわらず、少なくとも該端末装置を第1の端末装置として決定する。また、第1選択部は、第2選択部において第2の端末装置が存在しなかった場合、すでに選択した第1の端末装置を、第1の端末装置より短い経過時間を有する端末装置に置き換える。導出部は、置き換えられた第1の端末装置に関し、信号品質の差異を導出し、第2選択部は、第2の端末装置を限定するための処理を再度実行する。また、決定部72は、空間分割多重を行うべき第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせが存在しなかった場合、最も長い経過時間を有する端末装置のみに対して通信を行うことを決定する。
【0052】
これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされた予約管理機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0053】
ここで、図5〜図7を用いて、決定部72の動作について詳細に説明する。なお、動作開始時点において、4つの端末装置から通信要求をうけており、待時間計測部70の待ち行列メモリには、ユーザA、ユーザB、ユーザC、ユーザDの順で待ち行列が形成されていると仮定する。また、説明を簡易なものとするために、以下の動作中においては、上記4つのユーザ以外からの通信要求はないものとして説明する。
【0054】
図5は、図4の決定部72の第1の動作フローチャートを示す図である。まず、第1選択部74は、待ち行列メモリ(以下、「キュー」と略称する。)の先頭から第1の端末装置としてユーザAを取り出す。また、導出部76は、第1の端末装置と多重する第2の端末装置の候補として、ユーザBを取り出す(S02)。つぎに、決定部72は、処理部22、無線部20を介して、ユーザAとユーザBに対し、リソース割り当て要求を送信する(S04)。つぎに、決定部72は、処理部22、無線部20を介して、ユーザAとユーザBのそれぞれからリソース割り当て応答を受信する(S06)。つぎに、導出部76は、ユーザAとユーザBの信号品質の差をもとめる。さらに、第2選択部78は、信号品質の差と所定のしきい値とを比較する(S08)。第2選択部78は、しきい値と比較し、信号品質の差のほうが小さい場合(S08のY)、ユーザBを第2の端末装置として決定し、ユーザAとユーザBを空間多重して通信を開始するために呼を確立する(S10)。
【0055】
一方、信号品質の差としきい値とを比較した結果、信号品質の差のほうが大きい場合(S08のN)、導出部76、第2選択部78は、第2の端末装置の候補として、ユーザBのかわりにユーザCを選択する。また、決定部72は、ユーザBに対し、リソース割り当て拒否送信を行うと共に、ユーザCに対し、リソース割り当て応答を送信する(S12)。さらに、ユーザCからリソース割り当て応答を受信する(S14)。導出部76は、ユーザAとユーザCの信号品質の差をもとめる。第2選択部78は、しきい値と比較し(S16)、信号品質の差のほうが小さい場合(S16のY)、ユーザCを第2の端末装置として決定し、ユーザAとユーザCを空間多重して通信を開始するために呼を確立する(S18)。
【0056】
S16において、信号品質の差としきい値とを比較した結果、信号品質の差のほうが大きい場合(S16のN)、図6に示す動作に移る。図6は、図4の決定部72の第2の動作フローチャートを示す図である。まず、導出部76、第2選択部78は、第2の端末装置の候補として、ユーザCのかわりにユーザDを選択する。以下、ユーザB、ユーザCを第2の端末装置の候補とした場合と同様に、ユーザDとリソース割り当てに関するやりとりを行った後(S20)、ユーザAとユーザDの信号品質の差と、所定のしきい値とを比較して(S22)、信号品質の差のほうが小さい場合(S22のY)、ユーザDを第2の端末装置として決定し、ユーザAとユーザDを空間多重して通信を開始するために呼を確立する(S24)。
【0057】
S22において、信号品質の差としきい値とを比較した結果、信号品質の差のほうが大きい場合(S22のN)、すなわち、ユーザAの信号品質と、ユーザB,ユーザC、ユーザDそれぞれの信号品質との差異のいずれもがしきい値より大きかった場合、ユーザAと空間多重すべきユーザは存在しないこととなる。この場合、決定部72は、ユーザAにかかる待ち時間と、所定の待ち時間に関するしきい値とを比較して(S30)、ユーザAにかかる待ち時間のほうが長い場合(S30のY)、タイムアウトによる呼切断を防ぐために、あるいは、公平性を担保させるために、空間多重せずにユーザAのみで呼を確立する(S32)。
【0058】
S30において、ユーザAにかかる待ち時間と、所定の待ち時間に関するしきい値とを比較した結果、信号品質の差のほうが大きい場合(S30のN)、図7に示す動作に移る。図7は、図4の決定部72の第3の動作フローチャートを示す図である。第3のフローチャートでは、第1の端末装置としてのユーザAと多重すべき第2の端末装置が存在しなかった場合に、第1選択部における第1の端末装置を、第1の端末装置より短い経過時間を有する端末装置に置き換えて、再度、第2の端末装置を限定するための処理を実行する。まず、第1選択部74は、キューの先頭から第1の端末装置として、前回選択したユーザAよりも待ち時間の短いユーザBを第1の端末装置として取り出す。また、導出部76は、第1の端末装置と多重する第2の端末装置の候補として、ユーザC、もしくはユーザDを取り出し、S02〜S18と同様に、信号品質の差異をもとに、ユーザBと多重すべき第2の端末装置を決定する(S34〜S38)。ここで、ユーザBと多重すべき第2の端末装置が存在しなかった場合、すなわち、ユーザBの信号品質と、ユーザC、ユーザDのそれぞれの信号品質との差異が所定のしきい値よりいずれも大きかった場合(S36のN)、ユーザCを第1の端末装置と置き換えて、同様に、ユーザDと多重できるか否かを決定する(S40〜S44)。
【0059】
しかしながら、いずれの端末装置の組み合わせにおいても、多重すべき第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせとなる1組の端末装置が存在しなかった場合(S42のN)、決定部72は、空間多重せずに、最も長い経過時間を有するユーザAを第1の端末装置として、呼を確立する(S46)。また、決定部72は、いずれかの端末装置と呼を確立した(S10、S18、S24、S32、S38、S44、または、S46)後、キューに存在する、呼を確立した端末装置を示す情報を最後尾に移し替える。このような構成をとることにより、待ち行列の先頭には、常に待ち時間の長い端末装置が存在することとなる。
【0060】
本発明の実施例によれば、待ち時間を考慮して空間分割多重を行うので、全ての端末装置が順に割り当てられる。また、信号品質の差異をもとにして、空間分割多重する端末装置の組み合わせを決定するので、多重された複数の端末装置を容易に分離ができる。まず、第1の端末装置、すなわち、空間分割多重する一方の端末装置を、経過時間の長い端末装置とすることで、公平性を図ることができる。また、第1の端末装置と多重する第2の端末装置の選択において、第1の端末装置と第2の端末装置のの信号品質の差異が所定のしきい値より低い端末装置を選択することによって、分離しやすい端末装置の組み合わせを選定できる。また、この選定にさいし、第2の端末装置の候補は、経過時間の長い端末装置から順に選定されるので、公平性も担保できる。
【0061】
また、すでに相当の時間経過している第1の端末装置を、空間多重するしないにかかわらず、通信を行う対象の端末装置として決定することによって、端末装置は経過時間に関するしきい値を大幅に超えて待つことがなくなる。これにより、端末装置を使用するユーザに対し、つながりやすい端末装置、もしくは、端末装置と基地局装置を含むシステムを提供することができる。また、経過時間が最も長い端末装置であっても、空間多重すべき端末装置がなかった場合は、経過時間が2番目に長い端末装置を第1の端末装置として、その第1の端末装置と多重すべき端末装置を同様に決定することによって、より多くの端末装置と同時に呼を確立させることができる。また、空間分割多重する端末装置の組み合わせが存在しなかった場合は、空間分割多重することなしに、最も長い経過時間を有する端末装置のみを通信対象として呼を確立させることによって、リソースを有効に活用することができ、また、公平性も向上できる。
【0062】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
本発明の実施例において、空間分割多重を行う第1の端末装置と第2の端末装置を決定するとして説明した。しかしながらこれに限らず例えば、3以上の端末装置を空間分割多重する端末装置としてもよい。その場合、まず、導出部76、第2選択部78において、第1の端末装置の信号品質と、複数の端末装置の信号品質とのそれぞれの差異と、所定のしきい値として、複数の第2の端末装置を決定すればよい。たとえば、ユーザA、ユーザB、ユーザC、ユーザDの4つの端末装置のうち、3つの端末装置を多重するような場合でユーザAを第1の端末装置と仮定する。この場合、ユーザAとユーザBの信号品質の差異と、ユーザAとユーザCの信号品質の差異、ユーザAとユーザDの信号品質の差異の3つの差異のうち、しきい値より小さい組み合わせを選択すればよい。3つの差異ともしきい値より小さければ、経過時間の短い端末装置との組み合わせが優先される。この場合であっても、前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、しきい値より小さい組み合わせを選択する際に、前記3つの差異のうち、もっとも大きな差異をもつ組み合わせを選択し、その組み合わせにかかる差異がしきい値より小さいか否かを判別するようにしてもよい。また、本発明の実施例におけるアクセス方式は、図2に示すように、空間分割多重アクセス方式と時分割多重アクセス方式(Time Division Multiple Access)を組み合わせた方式として説明した。しかしながらこれに限らず、空間分割多重アクセス方式と周波数分割多重アクセス方式(Frequency Division Multiple Access)を組み合わせてもよく、また、空間分割多重アクセス方式と符号分割多重アクセス方式(Code Division Multiple Access)と組み合わせた方式であっても、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例に係る基地局装置の構成例を示す図である。
【図2】図1の制御部によって実現されるフレームの構造例を示す図である。
【図3】図1の制御部の構成例を示す図である。
【図4】図3の決定部の構成例を示す図である。
【図5】図4の決定部の第1の動作フローチャートを示す図である。
【図6】図4の決定部の第2の動作フローチャートを示す図である。
【図7】図4の決定部の第3の動作フローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 基地局装置、 28 品質取得部、 70 待時間計測部、 72 決定部、 74 第1選択部、 76 導出部、 78 第2選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置からの通信要求をそれぞれ受信する受信部と、
前記受信部において通信要求を受信してからの経過時間を端末装置ごとに計測する待時間計測部と、
前記複数の端末装置に対する信号品質をそれぞれ取得する品質取得部と、
前記待時間計測部で計測された経過時間と、前記品質取得部において取得された信号品質とにもとづいて、前記複数の端末装置のうち、空間分割多重を行う端末装置を決定する決定部と、
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記決定部は、
前記経過時間が長い順に、空間分割多重を行うべき第1の端末装置を順次選択する第1選択部と、
前記第1の端末装置より短い経過時間を有する少なくとも1以上の端末装置を第2の端末装置の候補とし、前記第2の端末装置の候補の信号品質のそれぞれと、前記第1の端末装置の信号品質との差異を導出する導出部と、
前記導出部によって導出された差異のそれぞれのうち、所定のしきい値よりも小さい差異を選択し、当該差異に対応した第2の端末装置の候補を、第2の端末装置として限定する第2選択部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記複数の端末装置のうち、経過時間に関するしきい値より大きい経過時間を有する端末装置が存在している場合、前記第2選択部によって第2の端末装置が限定されるか否かにかかわらず、少なくとも該端末装置を第1の端末装置として決定することを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記第1選択部は、前記第2選択部において第2の端末装置が存在しなかった場合、すでに選択した第1の端末装置を、前記第1の端末装置より短い経過時間を有する端末装置に置き換え、
前記導出部は、前記置き換えられた第1の端末装置に関し、信号品質の差異を導出し、 前記第2選択部は、第2の端末装置を限定するための処理を再度実行することを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の基地局装置。
【請求項5】
前記決定部は、空間分割多重を行うべき第1の端末装置と第2の端末装置の組み合わせが存在しなかった場合、最も長い経過時間を有する端末装置のみに対して通信を行うことを決定することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の基地局装置。
【請求項6】
複数の端末装置からの通信要求を受信するステップと、
前記受信するステップで通信要求を受信してからの経過時間を端末装置ごとに計測するステップと、
前記複数の端末装置に対する信号品質をそれぞれ取得するステップと、
前記計測するステップにおいて計測された経過時間と、前記取得するステップにおいて取得された信号品質とにもとづいて、前記複数の端末装置のうち、空間分割多重を行う端末装置を選択するステップと、
を含むことを特徴とするスケジューリング方法。
【請求項7】
無線ネットワークを介して、複数の端末装置からの通信要求を受信するステップと、
前記受信するステップで通信要求を受信してからの経過時間を端末装置ごとに計測するステップと、
前記複数の端末装置に対する信号品質をそれぞれ取得するステップと、
前記計測するステップにおいて計測された経過時間と、前記取得するステップにおいて取得された信号品質とにもとづいて、前記複数の端末装置のうち、空間分割多重を行う端末装置を決定し、その結果を記憶するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−333199(P2006−333199A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155488(P2005−155488)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】