説明

スケール、それを有する変位検出装置、及びそれを有する撮像装置

【課題】 スケールの基材の裏面に反射防止膜を設けたり、乱反射面を形成しなくても基材の裏面での反射を抑えることができる変位検出装置用のスケールを提供する。
【解決手段】 基材21と、基材の上に形成されている格子状の反射層22と、を有し、発光波長が1000nm以下である発光素子1と発光素子から発し反射層で反射した光を受光する受光素子3に対して相対的に変位可能な部材として用いられる変位検出装置用のスケール2において、基材はシリコンで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の移動量や回転量等の変位を検出する変位検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の移動量や回転量等の変位を検出する変位検出装置として、反射型光学式エンコーダが知られている。反射型光学式エンコーダは、発光素子と、発光素子から発する光を反射し、発光素子に対して相対的に変位可能なスケールと、スケールで反射した光を受光する受光素子と、から構成されている。スケールには、光を反射する反射層が格子状に形成されており、スケールの相対的な変位によって受光素子で受光する光の光量が変化する。そして、受光素子で光量の変化によって生み出される検出信号に基づいて変位を検出する。
【0003】
特許文献1には、このような反射型光学式エンコーダが開示されており、スケールの基材としては一般的にガラスや樹脂が用いられる旨が開示されている。そして、特許文献1では、反射層が形成されていないガラスや樹脂製のスケールの基材の裏面において入射光が反射すると、この反射光がノイズ成分となって受光素子に入射し、検出信号のS/N比が低下することを課題としている。その解決手段として、基材の裏面に反射防止膜あるいは光吸収膜を形成する構成(構成1)、基材の裏面を粗面仕上げして乱反射面を形成する構成(構成2)について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−028862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、構成1の場合、基材の裏面に反射防止膜を形成するため、その分スケールの厚みが厚くなる。また、スケールの裏面を変位検出の対象部材に取り付ける場合、取り付けの際や取り付け後に反射防止膜と基材とが剥がれる恐れがある。また、構成2では粗面仕上げ処理が必要になるため、生産性、生産コストで劣る。
【0006】
さらに、特許文献1のようにスケールの基材にガラスを用いた場合、強度が不足するため厚みを薄くできず、スケールがさらに厚くなる問題もある。また、樹脂を用いた場合、熱膨張係数が大きいため、照射される光やその他の部材さらには外部環境からの熱の影響によりスケールが変形し、測定精度が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、スケールの基材の裏面に反射防止膜を設けたり、基材の裏面に乱反射面を形成しなくても基材の裏面での反射を抑えることができる変位検出装置用のスケールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るスケールは、基材と、前記基材の上に形成されている格子状の反射層と、を有し、発光波長が1000nm以下である発光素子と前記発光素子から発し前記反射層で反射した光を受光する受光素子に対して相対的に変位可能な部材として用いられる変位検出装置用のスケールであって、前記基材はシリコンで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、スケールの基材の裏面に反射防止膜を設けたり、基材の裏面に乱反射面を形成しなくても基材の裏面での反射を抑えることができる。その結果、受光素子に入射する光のノイズが減り、検出信号のS/N比を高めることができるため、より高精度な変位検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のスケールを用いた変位検出装置の概略構成図。
【図2】本発明の変位検出装置を構成する検出ヘッドの平面模式図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るスケールの断面模式図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るスケールを用いた変位検出装置の断面模式図。
【図5】シリコンの光吸収特性及び光透過率特性を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るスケールの断面模式図。
【図7】基材の表面に反射抑制層を形成した場合のスケール表面での反射率のシミュレーション結果を示す図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る撮像装置の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の変位検出装置用のスケールは、基材と、基材の上に形成されている格子状の反射層と、を有する。スケールは、反射層と、隣り合う反射層の間の部分(非反射部)とが交互に形成されて格子構造を形成しており、変位検出装置が有する発光素子及び受光素子に対してスケールの相対的に格子方向に移動するようになる。実際に移動するのはスケールであっても良いし、発光素子及び受光素子であってもよい。
【0012】
そして本発明のスケールは、基材がシリコンで構成されている。シリコンとは、単結晶シリコン、多結晶シリコン、金属シリコンを指すものとし、アモルファス(非結晶)シリコンを含まないものとする。そしてホウ素やリンなど不純物や、その他製造過程で混入する不純物が数%程度含まれていてもよいものとする。
【0013】
シリコンは、1000nmより大きいの波長の光は透過するため、スケールに入射した光は、スケールの裏面、つまり反射層が形成されている面の反対側の面に到達し、そこで反射する。しかしながら、1000nm以下の波長の光はほとんど透過しないため、スケールに入射した光は、シリコンの基材内部で吸収され、スケールの裏面にはほとんど到達しない。スケールの裏面に到達したとしてもスケールの表面に戻ってくるまでにシリコンの基材で吸収され、非反射部からはスケールの外にほとんど光は出てこない。そのため、本発明のスケールによると、受光素子に入射する光のノイズが減り、検出信号のS/N比を高めることができる。
【0014】
また、シリコンは、ガラスに比べて強度が高いため、より薄くすることができる上、樹脂に比べて極端に熱膨張係数が小さいため、変形を起こして検出精度が低下することにもなりにくい。
【0015】
さらに、スケールを変位検出の対象部材に取り付ける際、スケール部分の厚みを薄くするために、裏面を対象部材に取り付けることが好ましい。この場合従来のように裏面に反射防止膜を設けた構成では、反射防止膜の対象部材側の界面での反射が問題になり、また取り付けの際や取り付け後に反射防止膜と基材とが剥がれる恐れがある。しかしながら、本発明のスケールは、基材の裏面側での反射はほとんどなく、また基材を直接取り付けることができるため、膜剥がれの問題も回避できる。
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1乃至図5を用いて本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明のスケールを用いた変位検出装置の概略構成図である。図1において、1は発光素子、2はスケール、3は受光素子、4は基板であり、スケールの相対移動方向をX方向、スケール面内のX方向と垂直な方向をY方向、スケール面に垂直な方向をZ方向としている。以下の各図面における座標軸も同じものとする。
【0019】
発光素子1は、スケールの基材に吸収される1000nm以下の波長の光をスケール2に向けて出射する。発光素子としてLEDが用いられる。そして、発光素子1から出射された光は発光素子1に対して相対的に変位するスケール2で反射し、受光素子3に入射する。受光素子3は、入射した光を電気信号に変換する。受光素子としてフォトダイオードアレイが用いられる。
【0020】
本実施の形態では、発光素子1と受光素子3は、受光素子3で発生する信号を処理する信号処理部を内蔵したフォトICチップからなる半導体素子と共に1つの基板上に一体的に形成され、検出ヘッドを構成している。
【0021】
図2は検出ヘッドの平面模式図であり、31は受光領域、32は信号処理部である。
【0022】
図2に示すように、発光素子1の近傍には受光素子3が配置されている。受光素子3は、発光素子1に近い側に配設された受光領域31と信号処理部32とを有する。受光領域31には水平方向に16個のフォトダイオード31a,31b,31c,31d,・・・,31m,31n,31o,31pが等間隔に配列されている。フォトダイオード31a,31e,31i,31mは電気的に接続されていて、この組をa相、フォトダイオード31b,31f,31j,31nの組をb相、以下同様にc相、d相としている。
【0023】
a相、b相、c相、d相の各フォトダイオード群は光を受けると、その光量に応じた光電流を出力する。スケール2のX方向への変位と共にa相〜d相の各相のフォトダイオード群に入射する光量が変化するため、スケールの変位に伴って出力電流は変化する。そして、a相〜d相のフォトダイオード群はa相を基準に、b相は90度、c相は180度、d相は270度の位相関係で変動する電流が出力される。
【0024】
信号処理回路部32では、この出力電流を電流電圧変換器で電圧値に変換した後に、差動増幅器によりそれぞれa相とc相の差動成分、及びb相とd相の差動成分を求め、互いに90°位相のずれたA、B相の変位信号を出力する。
【0025】
得られたA相又はB相の変位信号は、不図示の位置演算部に出力される。位置演算部はA相又はB相の変位信号から、信号のピークを計数して、スケール2からの反射回折光により受光領域31上に形成された干渉縞の通過した本数を得る。干渉縞のピッチに計数した本数を乗ずれば、スケール2のおおまかな変位が算出され、測定対象物の変位情報が検知される。さらに、A相またはB相の信号のピーク間を両信号のアークタンジェントを計算するなどによって信号ピーク間のより詳細な変位を算出することができる。
【0026】
次に本実施の形態に係る変位検出装置用のスケールについて説明する。
【0027】
図3は本実施の形態に係るスケールを示す断面模式図であり、図4は本実施の形態に係るスケールを用いた変位検出装置の断面模式図である。
【0028】
スケール2は、基材21と基材21の上に形成されている格子状の反射層22とを有する。そして基材21はシリコンで構成されている。一方、基板4の上に形成された発光素子1と受光素子3は、その上部を樹脂5で覆われていて、さらに樹脂5の上にガラス板6が配置されている。
【0029】
発光素子1から出射し反射層22に入射した光は反射されるが、反射層22の間に露出している基材21の部分に入射した光はその大部分が基材の内部で吸収される。そのため、受光素子3で受光される光は、スケール2の変位により明暗の差が大きくなり、よりノイズの少ない検出信号を得ることができる。
【0030】
次に、シリコンの光吸収特性及び光透過率について図5を用いて説明する。
【0031】
入射光強度をI、媒質中の進行距離をxとすると、光強度Iは吸収係数αを用いて以下のように表される。
I=I×exp(−αx) ・・・(1)
図5(a)は、シリコン(単結晶シリコン)の吸収係数αと波長λとの関係を示すものである。シリコンは可視光を含む波長1000nm以下の波長の光を吸収することが知られており、発光素子1の発光波長が1000nm以下の場合、シリコンは光を吸収する特性を持つ。
【0032】
例えば、xを一般的な反射型光学式エンコーダ用スケールの厚みである1mmとし、発光素子1から発せられる光の波長λを850nmとすると吸収係数αは600〜700[cm−1]程度であるため、(1)式より、I/Iは10−26程度とスケール裏面まで到達する光は極少量である。
【0033】
図5(b)は、シリコンの光透過率と入射する光の波長との関係を示すものである。図5(a)で説明したように、波長1000nm以下の場合、シリコンは光を吸収するため、スケールの基材にシリコンを用いるとスケール裏面まで光はほとんど透過しない。このため、スケールを保持する部材とスケール裏面とを接着剤を介して接着しても、接着剤からの迷光は極少量である。
【0034】
なお、シリコンは、集積素子などの半導体素子に用いられる単結晶シリコンを用いるのが望ましい。太陽電池などに使用される多結晶シリコンや、単結晶シリコンの原材料となる金属シリコンなども単結晶シリコンと同等の光吸収特性、光透過特性を有するため用いることができる。その他、単結晶シリコンをもとに製造されるポリッシュト・ウエーハや、その延長生成物であるアニール・ウエーハ、エビタキシャル・ウエーハなども上記光吸収特性、光透過特性を示すため、用いることができる。
【0035】
基材21の厚みは、より薄い方がスケールの薄型化にとって好ましいが、スケールの強度を確保し、光吸収をより確実に行うために0.3mm以上が好ましい。なお、従来スケールの基材に用いていたガラスでは、シリコンと同等の強度を持たせるためには、1.0mmよりも厚くする必要がある。つまり、基材の厚みは、従来の記載に対して、薄型化、光吸収の観点から0.3mm以上1.0mm以下にすることが好ましい。
【0036】
このように、本発明のスケールの基材に用いることができるシリコンは加工性に優れ、機械的強度も強いため、小型・薄型のスケール製造に向いている。そのため、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどに搭載される超小型光学式エンコーダ用のスケールを作製する用途に好適である。
【0037】
また、従来の反射型光学式エンコーダ用スケールのように、スケールの裏面に反射防止膜や光吸収膜(∵ここ以外の部分の文言が「光吸収“膜”」となっているため、統一)などの薄膜を形成しなくてもよいため、スケールを保持部材などに接着する際に膜剥がれの心配もなく、接着剤からの迷光が発生する懸念がない。
【0038】
一方、反射層22には、発光素子1から発せられる光の波長において反射率が高い材料を用いることが好ましく、アルミニウム、またはアルミニウム合金を用いることが好ましい。アルミニウム合金としては、建築用パネルなどの材料となるAl−Si合金、または純アルミニウムやジュラルミンの材料となるAl−Cu合金などを用いることが好ましい。Al−Si合金は下地となるシリコンとの親和性が良く、また耐磨耗性に優れているためであり、Al−Cu合金は、形成プロセスで高熱下に置かれる場合においても表面平坦性を保つことができるためである。
【0039】
反射層の格子ピッチは、a相〜d相のフォトダイオード群を1周期としたときのフォトダイオードのピッチ(フォトダイオード31aの左端からフォトダイオード31eの左端までの距離)の1/2となっている。
【0040】
反射層22の厚みは、発光素子1から発せられる光の波長をλ、反射層22の厚みをdとすると、
2d=mλ (mは自然数) ・・・(2)
となるように設定することが好ましい。
【0041】
なお、本発明のスケールは例えば以下の方法で製造することができる。
【0042】
まず、市販の研磨されたシリコンウエハ(ポリッシュドウエハ)を用意し、それを洗浄する。洗浄後、ウエハ上にスパッタ法などで反射層の材料(例えばアルミニウム)を成膜する。その後、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離等の工程を順に行うフォトリソグラフィ法により格子状の反射層を形成する。
【0043】
(第2の実施の形態)
図6、図7及び表1を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0044】
本実施の形態における変位検出装置用のスケールは、第1の実施の形態のスケールにおいて反射層の間に露出する基材の表面での反射を抑えるために、反射抑制層を設けたものである。
【0045】
図6は本発明の第2の実施の形態におけるスケールの断面模式図であり、第1の実施の形態と同じ構成については同じ符号を用いている。23は反射抑制層である。
【0046】
反射抑制層23は、少なくとも反射部22の間に露出している基材21の上に設けられており、露出している基材表面で反射する光を抑えることができる。反射抑制層23の材料には、基材の最良であるシリコンと膜の親和性が高く、安定した膜形成が可能な酸化シリコン(SiO)や、窒化シリコン(SiN)を用いることが好ましいが、これらに限られるものではない。例えば、アクリル、ポリイミド、シリコーンなどの樹脂や酸窒化シリコン(SiON)等を用いることができる。
【0047】
反射抑制層23の厚みは、発光素子1から発せられる光の波長をλ、反射抑制層23の厚みをd、反射抑制層23の屈折率をnとすると、
4nd=(2m−1)λ (mは自然数) ・・・(3)
となるように設定することが好ましい。反射抑制層23の厚みを(3)式を満たすように設定することで、反射抑制層23の表面で反射する光と、裏面で反射する光との干渉により打ち消し合うようにすることができるためである。ただし、厚みが厚い(例えば1μm以上の)場合、厚みにムラが発生したり、生産コストアップ、生産性の低下に繋がるため、m=1にすることが好ましい。
【0048】
なお、図6では、反射抑制層23が反射層22の上にも形成されているため、反射層22の上での反射も抑えてしまうが、基材表面での反射が抑えられるため、S/N比は向上する。
【0049】
以下、反射抑制層23による効果を具体的な構成例に基づいて説明する。
【0050】
まず、反射抑制層23を形成しない場合、基材表面での反射率は以下のように求められる。つまり、基材の屈折率をn、基材の界面に接する媒質の屈折率をnとすると、光がその面に垂直に入射するときの反射率Rは、
【0051】
【数1】

【0052】
で表される。また、シリコンの波長毎の屈折率は表1に示す値となるので、光源の波長が850nmの場合、基材(シリコン)の表面で反射する反射率Rは33%程度と算出される。
【0053】
一方、基材21の表面に反射抑制層23を形成した場合のスケール表面での反射率のシミュレーション結果は、図7に示すようになる。図7(a)は、酸化シリコン(SiO)で構成される反射抑制層23を形成した場合の結果であり、図7(b)は、窒化シリコン(SiN)で構成される反射抑制層23を形成した場合の結果である。
【0054】
図7において光源の波長が850nmとし、横軸は反射抑制層の厚み、縦軸は反射率を表している。図中の点線は反射層部に光が照射された場合の反射率(⇒Aとする)、実線は反射層部以外に光が照射された場合の反射率(⇒Bとする)であり、破線はその比率(=(A−B)/(A+B))である。
【0055】
図7(a)及び図7(b)において、反射抑制層の厚みが0nm、つまり反射抑制層を形成しない場合に比べて反射抑制層を設ける方が、実線で示す反射率が低下することが分かる。そして、図7(a)においては反射抑制層の厚みが(3)式を満たす厚み、具体的には146nmの場合、実線で示される反射率が最小となり、破線で示される比率が最大となる。また、図7(b)においても同様に(3)式を満たす厚み、具体的には104nmの場合、実線で示される反射率が最小となり、破線で示される比率が最大となる。
【0056】
このように、破線で示される値が最大、或いは極大となるように反射抑制層の厚みを設定することにより、検出信号のS/N比を大きく改善することができる。
【0057】
【表1】

【0058】
(第3の実施の形態)
図8を用いて、本発明による変位検出装置を撮像装置のレンズ鏡筒へ搭載した例を説明する。
【0059】
図8は本発明による変位検出装置を有する撮像装置の断面模式図である。41はレンズ群、42は駆動レンズ、43は発光素子と受光素子とで構成される検出ヘッド、44はCPU、45は撮像素子であり、レンズ群41、駆動レンズ42、CPU44、撮像素子45が撮像手段を構成している。
【0060】
レンズ群41を構成する駆動レンズ42は、例えばオートフォーカス用のレンズであり、光軸方向に変位可能である。駆動レンズ42は、ズーム調整レンズなど、駆動されるレンズであればその他のものでも構わない。本発明による変位検出装置のスケールは、駆動レンズ42を駆動するアクチュエータに保持されており(不図示)、検出ヘッド43に対して相対的に変位可能である。そして、検出ヘッド43から得られる駆動レンズ42の変位に応じた信号は、CPU44に出力される。CPU44からは、駆動レンズ42が所望の位置へと移動されるための駆動信号が生成され、駆動レンズ42はその信号に基づいて駆動される。
【0061】
また、撮像素子45に発光素子からの光が入射した場合、発光素子からの発光が撮像素子で検出されてしまうため、撮影した像にノイズが含まれることになる。そのため、検出ヘッド43に搭載されている発光素子の発光波長が撮像素子で検出されない波長、具体的には800nm以上1000nm以下である近赤外光源を用いることが望ましい。
【0062】
なお、本発明のスケールを有する変位検出装置は、撮像装置以外にも様々な装置に適用することができる。例えば、電子写真技術を用いた画像形成装置の走査光学系や搬送系やインクジェットプリンタの紙搬送系、露光装置のステージ、ロボットアームなどの変位を検出するために適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 発光素子
2 スケール
3 受光素子
4 基板
21 基材
22 反射層
23 反射抑制層
31 受光領域
32 信号処理回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の上に形成されている格子状の反射層と、を有し、
発光波長が1000nm以下である発光素子と前記発光素子から発し前記反射層で反射した光を受光する受光素子に対して相対的に変位可能な部材として用いられる変位検出装置用のスケールにおいて、
前記基材はシリコンで構成されていることを特徴とする変位検出装置用のスケール。
【請求項2】
前記スケールは、少なくとも前記反射層の間に露出している前記基材の上に、前記基材の表面での反射を抑える反射抑制層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスケール。
【請求項3】
前記反射抑制層は、酸化シリコンまたは窒化シリコンで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のスケール。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスケールと、前記発光素子と、前記受光素子と、を有することを特徴とする変位検出装置。
【請求項5】
光軸方向に変位可能なレンズを有する撮像手段と、
前記レンズの変位を検出するための請求項4に記載の変位検出装置と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
前記発光素子の発光波長が800nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181181(P2010−181181A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22722(P2009−22722)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】