説明

スケール検知用センサ及びスケール検知方法

【課題】僅か二本の水位センサによって、センサの故障を正確に判定することができ、故障の原因がスケールの付着であることが分かるスケール検知用センサ及びスケール検知方法を提供する。
【解決手段】電極を備えた二つの水位センサでタンク1内のスケール発生を検出するスケール検知用センサを設ける。水位センサの電極に導電性の樹脂をコーティングして耐スケールセンサ2を設ける。電極に導電性の樹脂がコーティングされていない水位センサをスケール検知用センサ3として使用する。耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3とをタンク1内部の同じ高さに設置する。スケール検知用センサ3における電気的導通の低下で水位センサの異常とタンク1内のスケール発生とを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電気温水器の水位センサや電極表面等に付着したスケールを検出することが可能なスケール検知用センサ及びスケール検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器には、貯湯槽内の水位を検出する水位センサなど、電極を有する機器が多数装備されている。水中に電極が設置されていると、電気分解作用によって生じるスケール由来成分(イオン状シリカ・硬度成分等)が、(−)電極へ電気泳動し、析出・沈降する過程でその一部が電極にスケールとして固着することが知られている。
【0003】
このスケールが水位センサに付着すると、水位測定の精度が落ちるなど、各種機器の動作不良や異常停止などの故障が生じる。そこで、従来では、水位センサの故障を判定するために、複数の水位センサを上下にずらして配置し、全てのセンサからの信号を基にして各水位センサの異常を判定する判定方法や装置などが提案されている。
【0004】
特許文献1の判定方法は、複数の水位検出棒を高さが異なるように設定し、いずれかの水位検出棒が、ON→OFFまたはOFF→ONの出力信号の変化があったとき、この水位検出棒を正常と判定し、この正常な水位検出棒を基準水位検出棒として、基準水位検出棒より上位の水位検出棒からON信号が出力されている場合は、その上位の水位検出棒を異常と判定する方法である。
【0005】
また、特許文献2の確認装置は、3本以上の水位検出棒において各水位検出棒の出力信号が矛盾しているとき、水位検出棒のいずれかが故障していると判断する装置である。すなわち、低い水位検出棒がOFF信号を出力しているにもかかわらず、それより上位の水位検出棒がON信号を出力している場合、故障であると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2885086号公報
【特許文献2】特開昭58−9029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これら従来の判定方法や装置は、少なくとも3本以上の水位センサを必要とするものであるから、水位センサの設置やメンテナンス等に多くの手間やコストを要するものであった。
【0008】
しかも、3本以上の水位センサを設置しても、スケールの付着率が同じであると、全ての水位センサが、ある同時期に一斉に故障することも想定される。このように全ての水位センサが故障していると、一部の水位センサを異常と判断することができなくなるので、故障の判定手段として正確ではなかった。
【0009】
更に、従来の判定方法や装置は、一部の水位センサに故障が発生したか否かについて判定できるとしても、故障した原因がスケールの付着か別の原因であるかを直ちに判断することはできない。すなわち、スケールが原因で水位センサが故障した場合には、他の電極を有する機器にも、スケールの付着について注意を払う必要が生じる。ところが、従来の判定方法や装置では、同じ材質の水位センサを使用するため、故障の原因がスケールであると直ちに判定することは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、僅か二本の水位センサによって、センサの故障を正確に判定することができ、しかも、故障の原因がスケールの付着であることが分かり、他の電極を有する機器にも注意を払うことができるスケール検知用センサ及びスケール検知方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、電極を備えた二つの水位センサでタンク1内のスケール発生を検出するスケール検知用センサであって、水位センサの電極に導電性の樹脂をコーティングした耐スケールセンサ2と、水位センサの電極に導電性の樹脂がコーティングされていないスケール検知用センサ3とを設け、耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3とをタンク1内部の同じ高さに設置し、スケール検知用センサ3における電気的導通の低下により、水位センサの異常とタンク1内のスケール発生とを検出するように設けたことにある。
【0012】
第2の手段の前記耐スケールセンサ2は、導電性を備えたフッ素樹脂をコーティングした電極を有するものとする。
【0013】
第3の手段のスケール検知方法は、電極を備えた水位センサでタンク1内のスケール発生を検出するスケールの検知方法であって、水位センサの電極に導電性の樹脂をコーティングした耐スケールセンサ2と、水位センサの電極に導電性の樹脂がコーティングされていないスケール検知用センサ3とをタンク1内に設置し、スケール検知用センサ3における導電性の低下から水位センサの異常とタンク内のスケール発生とを検知することを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の如く、スケール検知用センサ3と耐スケールセンサ2とをタンク1内部の同じ高さに設置し、スケール検知用センサ3における電気的導通が低下すると水位センサの異常を検出したことになる。このとき、耐スケールセンサ2は、導電性の樹脂がコーティングされており、スケールの付着を抑制しているので、従来のように、同じ材質の水位センサに同時期にスケールが付着して誤った判定をするようなおそれはなくなった。
【0015】
しかも、耐スケールセンサ2は、スケールの付着を抑制して水位センサとしての寿命を延ばすことができる上、この耐スケールセンサ2との比較から、スケール検知用センサ3の異常はスケールが原因であることの蓋然性が高くなる。この結果、他の電極を有する機器にもスケール付着の注意を払うことができる。
【0016】
また、請求項2の如く、導電性の樹脂として導電性を備えたフッ素樹脂を使用することで、安定度の高い導電性能を維持することができる。
【0017】
更に、請求項3のスケールの検知方法によると、スケール検知用センサ3における導電性の低下からスケール検知用センサ3の異常とタンク内のスケール発生とを検知する方法であるから、タンク1内の各種機器に対するスケール発生の時期を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明センサの一実施例を示す概略図である。
【図2】本発明センサの検知工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によると、僅か二本の水位センサによって、センサの故障を正確に判定することができ、しかも、故障の原因がスケールの付着であることが分かり、他の電極を有する機器にも注意を払うことができるなどといった当初の目的を実現した。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。本発明センサは、例えば電気温水器の給湯タンク内に設置される水位センサとして使用される。
【0021】
すなわち、基本的に、電極を備えた二つの水位センサでタンク1内の水位を検知するセンサである。更に、水位の検知と同時に、水位センサの異常及びタンク1内のスケール発生を検知するものである。
【0022】
本発明センサに使用する水位センサは、耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3とで構成される。
【0023】
耐スケールセンサ2は、水位センサの電極に導電性の樹脂をコーティングした耐スケールセンサ2である。この導電性の樹脂として、導電性を備えたフッ素樹脂の使用が信頼性に富む。
【0024】
一方、スケール検知用センサ3は、水位センサの電極に導電性の樹脂がコーティングされていないものをスケール検知用センサ3とする。すなわち、一般の水位センサをスケール検知用センサ3として使用するものである。
【0025】
これらの水位センサは、タンク1内に電極を有するタイプであればどのようなセンサでもよく、その形状や使用態様などは状況に応じて変更可能である。
【0026】
そして、耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3とをタンク1内部の同じ高さに設置する(図1参照)。図示例では、電気温水器の給湯タンクを示しており、タンク1の内部にヒーター4を設置し、これらヒーター4や耐スケールセンサ2、スケール検知用センサ3をコントローラ5が制御している。
【0027】
このように設置したスケール検知用センサ3の電気的導通が低下すると、コントローラ5は、水位センサの異常と判定する。また、同時にタンク1内にスケールが発生したと検出するものである。
【0028】
図2は、耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3との検知工程を示している。すなわち、耐スケールセンサ2が水位を検知しない場合は、「異常低水位検出」となり、コントローラ5は温水器の運転を停止する。一方、スケール検知用センサ3が水位を検知しない場合は、「スケール検出」となり、コントローラ5はアラームを発信する。
【0029】
本発明検知方法は、本発明センサを使用する方法であり、スケール検知用センサ3における導電性の低下から水位センサの異常とタンク内のスケール発生とを検知する方法である。したがって、本発明センサの耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3との設置位置は、本発明センサと同様に、タンク1内の同一高さに設置しても良いが、設置位置を任意に変更することも可能である。例えば、スケール検知用センサ3の位置を耐スケールセンサ2の位置よりもスケールが発生し易い位置に設置することで、スケール発生を早期に検知することができる。また、図示のように、耐スケールセンサ2とスケール検知用センサ3とを別々に設けたセンサを使用するほか、これらを一体に設けたセンサを使用する検知方法も可能である。
【0030】
尚、本発明温度制御装置は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によると、主に電気温水器の給湯タンク内に設置される水位センサとして説明しているが、タンク1の種類や水位センサの用途は実施例に限定されるものではなく、他の用途にも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 タンク
2 耐スケールセンサ
3 スケール検知用センサ
4 ヒーター
5 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備えた二つの水位センサでタンク内のスケール発生を検出するスケール検知用センサであって、水位センサの電極に導電性の樹脂をコーティングした耐スケールセンサと、水位センサの電極に導電性の樹脂がコーティングされていないスケール検知用センサとを設け、耐スケールセンサとスケール検知用センサとをタンク内部の同じ高さに設置し、スケール検知用センサにおける電気的導通の低下により、水位センサの異常とタンク内のスケール発生とを検出するように設けたことを特長とするスケール検知用センサ。
【請求項2】
前記耐スケールセンサは、導電性を備えたフッ素樹脂をコーティングした電極を有する請求項1記載のスケール検知用センサ。
【請求項3】
電極を備えた水位センサでタンク内のスケール発生を検出するスケールの検知方法であって、水位センサの電極に導電性の樹脂をコーティングした耐スケールセンサと、水位センサの電極に導電性の樹脂がコーティングされていないスケール検知用センサとをタンク内に設置し、スケール検知用センサにおける導電性の低下から水位センサの異常とタンク内のスケール発生とを検知することを特長とするスケール検知方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−237240(P2011−237240A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108008(P2010−108008)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(390019666)株式会社日本イトミック (9)
【Fターム(参考)】