説明

スチレンアクリル樹脂を分解する微生物培養物

【課題】樹脂をより高い効率で、より安定的に、CO2の発生を実質的に伴わずに該樹脂を分解でき、該樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすることができる手段を提供すること。
【解決手段】シュードモナス ボレオポリスに属する微生物を含有した、スチレンアクリル化合物の生分解能を少なくとも呈する微生物培養物;該微生物培養物を含有した、スチレンアクリル化合物の分解用組成物;スチレンアクリル化合物を含む生産物若しくは廃棄物と、該微生物培養物又は分解用組成物とを接触させる、スチレンアクリル化合物の分解方法;並びに、スチレンアクリル化合物と金属若しくは色素とを含む廃棄物と、該微生物培養物又は分解用組成物とを接触させ、廃棄物中のスチレンアクリル化合物を分解させ、それにより、廃棄物中の金属又は色素を分離する、廃棄物中の金属又は色素の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレンアクリル樹脂の生分解能を呈する微生物培養物、該樹脂の分解用組成物、並びに廃棄物中の金属又は色素の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂を含有する廃棄物、例えば、トナー等は、焼却炉等での焼却等により処理されている。しかしながら、前記焼却による処理を行なった場合、廃棄物中に含まれる有用資源の回収が困難になる場合があるという欠点がある。また、前記焼却による処理には、石油資源等を要し、CO2等の排気ガスの発生を伴うという欠点もある。
【0003】
一方、加水分解反応により分解されやすいポリエステル樹脂については、特定の微生物により生分解させることができることが報告されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。しかしながら、ポリエステル樹脂を生分解することができる微生物では、ポリエステル樹脂以外の樹脂の生分解は困難であるのが現状である。
【非特許文献1】ユタカ トキワ(Yutaka Tokiwa)、Sen’iGakkaishi、第7巻、第521頁〜第526頁(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、1つの側面では、樹脂、例えば、スチレンアクリル樹脂をより高い効率で分解すること、該樹脂をより安定的に分解すること、CO2の発生を実質的に伴わずに該樹脂を分解すること、該樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすること、分解により生じた産物を実質的に資化すること等の少なくとも1つを達成しうる、スチレンアクリル樹脂の生分解能を呈する微生物培養物を提供することにある。さらに、本発明は、他の側面では、前記樹脂をより高い効率で分解すること、該樹脂をより安定的に分解すること、CO2の発生を実質的に伴わずに該樹脂を分解すること、該樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすること等の少なくとも1つを達成しうる、前記スチレンアクリル樹脂の分解用組成物を提供することにある。また、本発明は、別の側面では、前記樹脂を効率よく分解すること、該樹脂を安定的に分解すること、前記樹脂を安価に分解すること、前記樹脂を周辺環境に対し低影響で分解すること、CO2の発生を実質的に伴わずに該樹脂を分解すること等の少なくとも1つを達成しうる、スチレンアクリル樹脂の分解方法を提供することにある。本発明のさらに他の側面は、前記樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすること、該廃棄物から有用金属、有用化合物等を安価に回収すること、廃棄物中の有用金属、有用化合物等を、周辺環境に対し低影響で回収すること等の少なくとも1つを達成しうる、廃棄物中の金属又は色素の回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)に属する微生物を含有してなる、スチレンアクリル樹脂の生分解能を呈する微生物培養物、
〔2〕 シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)に属する微生物が、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5(受託番号:NITE P−80)である、前記〔1〕記載の微生物培養物、
〔3〕 ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.)に属する微生物と、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)に属する微生物と、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)に属する微生物と、アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.)に属する微生物とをさらに含有してなる、前記〔1〕又は〔2〕記載の微生物培養物、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の微生物培養物を含有してなる、スチレンアクリル樹脂の分解用組成物、
〔5〕 微生物培養物を保持するに適した固定用担体をさらに含有してなる、前記〔4〕記載のスチレンアクリル樹脂の分解用組成物、
〔6〕 微生物の培養に適した培地をさらに含有してなる、前記〔4〕又は〔5〕記載のスチレンアクリル樹脂の分解用組成物、
〔7〕 (A)スチレンアクリル樹脂を含む生産物若しくは廃棄物と、(B)前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の微生物培養物又は前記〔4〕〜〔6〕いずれか1項に記載の分解用組成物とを接触させることを特徴とする、スチレンアクリル樹脂の分解方法、並びに
〔8〕 (a)スチレンアクリル樹脂と金属若しくは色素とを含む廃棄物と、(b)前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の微生物培養物又は前記〔4〕〜〔6〕いずれか1項に記載の分解用組成物とを接触させ、廃棄物中のスチレンアクリル樹脂を分解させ、それにより、廃棄物中の金属又は色素を分離することを特徴とする、廃棄物中の金属又は色素の回収方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の微生物培養物によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を、CO2の発生を実質的に伴わずに、より高い効率で、より安定的に分解することができ、かつ分解により生じた産物を実質的に資化することができ、樹脂、特にスチレンアクリル樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすることができるという優れた効果を奏する。本発明のスチレンアクリル樹脂の分解用組成物によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を、CO2の発生を実質的に伴わずに、より高い効率で、より安定的に分解することができ、樹脂、特にスチレンアクリル樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすることができるという優れた効果を奏する。また、本発明のスチレンアクリル樹脂の分解方法によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を、CO2の発生を実質的に伴わずに、高い効率で、安定的に分解することができ、該樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルを容易にすることができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の廃棄物中の金属又は色素の回収方法によれば、前記樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にし、該有用金属、有用化合物等を、周辺環境に対し低影響で安価に回収することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の1つの側面は、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)に属する微生物を含有した、スチレンアクリル樹脂の生分解能を少なくとも呈する微生物培養物である。
【0008】
なお、本明細書において、「スチレンアクリル樹脂の生分解能を少なくとも呈する」とは、後述の分解活性の評価方法により、スチレンアクリル樹脂の生分解能が検出されることを意味し、他の化合物に対する分解活性の有無により限定されないことを意図する。したがって、別の側面では、本発明の微生物培養物には、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂等の化学合成樹脂等に対する分解活性をさらに呈するものも含まれる。
【0009】
本発明の微生物培養物は、前記微生物を含有しているため、従来、生分解することが困難であったスチレンアクリル樹脂を効率よく、安定的に生分解することができるという優れた効果を発揮する。したがって、本発明の微生物培養物によれば、コピー機やプリンターのトナーに使用されている難分解性樹脂であるスチレンアクリル樹脂を生分解することができる。
【0010】
また、本発明の微生物培養物は、前記微生物を含有しているため、前記樹脂の分解に基づくCO2の発生が、実質的に抑制される。したがって、本発明の微生物培養物によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を含有する廃棄物を処理する際、大気中へのCO2の放出を実質的に抑制することができるため、環境保護の点で優れた効果を発揮する。
【0011】
さらに、本発明の微生物培養物によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を含有する廃棄物中の樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を分解することができ、該廃棄物中の未使用の有用金属又は有用色素の回収の容易化を図ることができる。したがって、本発明の微生物培養物によれば、廃棄物中の未使用の有用金属又は有用色素のリサイクルをより容易にすることができるため、資源の有効利用、環境保護等の点で優れた効果を発揮する。
【0012】
また、本発明の微生物培養物は、分解により生じた産物を実質的に資化することができるという優れた性質を発現する。したがって、分解により生じた産物の蓄積が実質的に抑制されるため、環境保護等の点で優れた効果を発揮する。
【0013】
なお、本明細書において、前記廃棄物とは、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を含む廃棄物をいい、具体的には、例えば、トナー、缶ラミネート、電子機器類の絶縁体、家電の廃棄物、自動車の廃棄物、産業廃棄物等が挙げられる。
【0014】
前記スチレンアクリル樹脂としては、アクリル酸 n−ブチルエステル等のアクリル酸化合物とスチレンとを重縮合させて得られる化合物等が挙げられる。具体的には、前記スチレンアクリル樹脂としては、特に限定されないが、アクリロニトリルアクリレートスチレン、スチレンブチルアクリレート等が挙げられる。なお、前記スチレンアクリル樹脂の平均分子量、重合度等は、本発明の微生物培養物による生分解能(スチレンアクリル樹脂の分解活性)を呈する範囲であればよい。
【0015】
なお、本発明の微生物培養物によるスチレンアクリル樹脂の分解活性の評価法としては、例えば、
1) 終濃度5g/Lのスチレンアクリル樹脂を含有したFY培地〔組成:1重量% NH4Cl、0.1重量% KH2PO4、0.05重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.2重量% NaCl、0.001重量% ZnCl2、0.001重量% FeSO4・7H2O、0.001重量% CaCl2、0.1重量% 酵母エキス〕に、微生物培養物を接種し、37℃で7日間、125ストローク/分で振とう培養するステップ、
2) 得られた培養液に残存する樹脂成分を、ジクロロメタンで抽出し、ヘキサトリアコンタンを添加し、エバポレーターで減圧乾固させるステップ、
3) 得られた乾固物を、n−ヘキサン:トルエン/2:8(体積比) 5mLに溶解し、得られた試料 1μLを、例えば、商品名:クロマロッドSIII(0.1×10cm)(株式会社三菱化学ヤトロン製)を用いた薄層クロマトグラフィーに供し、n−ヘキサンで展開させるステップ、及び
4) 例えば、商品名:イアトロスキャンMk−6s(株式会社三菱化学ヤトロン製)を用いて、検出器:FID、水素ガス:160mL/分、空気:2.0L/分、スキャン速度:30秒/スキャンの条件で、培養液中のスチレンアクリル樹脂及びスチレンアクリル樹脂の分解産物それぞれに対応するピークを検出するステップ、
を含む方法等が挙がられる。
【0016】
前記ステップ1)において、前記スチレンアクリル樹脂を含有したFY培地は、ジクロロメタンに溶解したスチレンアクリル樹脂を終濃度5g/Lになるように試験管に分注し、風乾させ、FY培地 5mLを添加し、121℃20分間高圧滅菌することにより調製されうる。
【0017】
前記ステップ3)において、薄層クロマトグラフィーは、恒湿槽(条件:65%RH)で10分間インキュベーションし、ついで、n−ヘキサンが入った展開槽内で、37℃で展開することにより行なわれうる。
【0018】
なお、前記分解活性の評価において、対照として、微生物培養物非存在下の場合について同様に行なえばよい。前記分解活性は、微生物培養物存在下の場合の各ピークの面積と、対照の場合の各ピークの面積とを比較することにより評価される。スチレンアクリル樹脂に対応するピークの面積がゼロの場合、当該スチレンアクリル樹脂が100%分解されたことの指標となり、前記分解活性は、〔{(コントロールのスチレンアクリル樹脂に対応するピーク面積)−(培養液のスチレンアクリル樹脂に対応するピーク面積)}/(コントロールのスチレンアクリル樹脂に対応するピーク面積)〕×100(%)として算出された値で示される。
【0019】
なお、前記スチレンアクリル樹脂の分解活性の評価において、スチレンアクリル樹脂の代わりに、他の樹脂化合物を適切な溶媒に溶解させて用いることにより、当該樹脂化合物に対する分解活性を評価することができる。
【0020】
前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)に属する微生物としては、上記スチレンアクリル樹脂の分解活性の評価方法によりスチレンアクリル樹脂に対して分解活性を示すものであればよく、具体的には、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5等が挙げられる。なお、前記シュードモナス ボレオポリス Q−5は、「Pseudomonas boreopolis Q−5」と命名・表示され、受託番号:NITE P−80(受託日:2005年2月28日)の下、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター〔郵便番号292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8〕に寄託されている。
【0021】
前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5は、DDBJに登録されている16S rDNAライブラリーに基づき、16S rDNA解析をした場合、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)との相同性が、99.5%である。また、前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5は、グラム陰性の運動性を有する短桿菌であり、コロニーの特徴:粘質であり、オキシダーゼ 有、β−ガラクトシダーゼ 有、アルギニンジヒドロラーゼ 有、リジンデカルボキシラーゼ 有、オルニチンデカルボキシラーゼ 有、ウレアーゼ 有、トリプトファンデアミナーゼ 有、ゲラチナーゼ 有、クエン酸の利用 有、H2Sの産生 無、インドールの産生 無、アセトインの産生 無、グルコース資化性 無、D−マンニトール資化性 無、イノシトール資化性 無、L−ラムノース資化性 無、D−ソルビトール資化性 無、サッカロース資化性 無、D−メリビオース資化性 無、D−アミグダリン資化性 無、L−アラビノース資化性 無である。
【0022】
なお、前記16S rDNA解析は、Blast(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズム(条件:検索対象Division(バクテリア、GAP計算あり、期待値10)に基づき、デフォルトの条件で、例えば、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)のデータを用いて、対象となる16S rDNAの塩基配列と、既知の16S rDNAの塩基配列とを比較することにより行なわれうる。
【0023】
前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5によれば、前記分解活性の評価方法により、スチレンアクリル樹脂〔三笠産業株式会社供給〕の分解活性を測定した生分解率として、約40%の生分解率を達成することができ、当該シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5非存在下の場合に比べ、安定的に、例えば、約2.0mg/5mL/7日の生分解率を達成するという優れた性質を示す。
【0024】
なお、本発明においては、前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5に代えて、該シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5と進化系統樹上近い位置にある微生物であって、前記分解活性の評価方法により、スチレンアクリル樹脂の分解活性が検出される微生物を用いることもできる。
【0025】
かかるシュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5を含有した本発明の微生物培養物は、該シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5によりスチレンアクリル樹脂が分解され生成した分解産物を捕捉若しくは資化しうる他の微生物をさらに含有していてもよい。また、本発明の微生物培養物は、別の側面では、前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5と協調的に、樹脂、例えば、スチレンアクリル樹脂等を分解しうる他の微生物をさらに含有していてもよい。
【0026】
本発明の微生物培養物は、好ましくは、ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.)に属する微生物と、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)に属する微生物と、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)に属する微生物と、アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.)に属する微生物とをさらに含有した微生物培養物である。かかる微生物培養物によれば、前記微生物が一群として、協調的に作用しうるため、スチレンアクリル樹脂に対して、より安定的に、より高い生分解能が維持されるという優れた効果を発揮する。また、本発明の微生物培養物によれば、前記微生物が一群として、協調的に前記スチレンアクリル樹脂を分解し、それぞれの生育における栄養素として用いることができる。したがって、本発明の微生物培養物によれば、周辺環境に対し低影響で前記スチレンアクリル樹脂を分解することができる。
【0027】
より具体的には、混合微生物群AMOC2の微生物培養物が挙げられる。
【0028】
なお、前記AMOC2は、AMOC2と命名・表示され、独立行政法人製品評価技術基盤機構〔郵便番号292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8〕に安全寄託されている。また、前記AMOC2は、近畿大学農学部農芸化学科応用微生物研究室(郵便番号:631−8505 奈良県奈良市中町3327−204)に保存されており、必要に応じ、「独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター」における分譲に関する取り扱いに準じて、特許法施行規則第27条の3に規定される分譲が行なわれ、入手可能である。
【0029】
前記AMOC2の微生物培養物によれば、前記分解活性の評価方法により、スチレンアクリル樹脂〔三笠産業株式会社供給〕の分解活性を測定した生分解率として、約45%の生分解率を達成することができ、当該微生物培養物非存在下の場合に比べ、安定的に、少なくとも約2.3mg/5mL/7日の生分解率を達成するという優れた性質を示す。
【0030】
前記AMOC2は、適切な希釈率で滅菌生理食塩水に希釈し、例えば、R2A平板培地〔組成:0.05重量% 酵母エキス、0.05重量% ペプトン、0.05重量% カザミノ酸、0.05重量% グルコース、0.05重量% 可溶性スターチ、0.03重量% K2HPO4、0.005重量% MgSO4・7H2O、0.03重量% ピルビン酸ナトリウム、1.5重量% 寒天;ディフコラボラトリーズ(Difco Laboratories)社製〕に塗布し、37℃で7〜14日間培養し、生じたコロニーを均一になるまで選択することにより、ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.) Q−1、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti) Q−2、Q−3株、Q−4株、前記シュードモナス ボレオポリス Q−5〔Pseudomonas boreopolis Q−5(受託番号:NITE P−80、受託日:2005年2月28日)〕及びアルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.) Q−6を含有することが確認される混合微生物の培養物である。
【0031】
なお、本発明においては、前記AMOC2に含まれる各微生物に代えて、該微生物と進化系統樹上近い位置にある微生物であって、前記分解活性の評価方法により、スチレンアクリル樹脂の分解活性が検出される微生物を用いることもできる。
【0032】
ここで、前記ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.) Q−1は、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)に登録されている16S rDNAライブラリーに基づき、ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.) TUT1238との相同性が、98.6%である。また、前記ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.) Q−1は、グラム陰性の運動性を有する短桿菌であり、コロニーの特徴:粘質であり、オキシダーゼ 有、β−ガラクトシダーゼ 有、アルギニンジヒドロラーゼ 有、リジンデカルボキシラーゼ 無、オルニチンデカルボキシラーゼ 無、ウレアーゼ 無、トリプトファンデアミナーゼ 有、ゲラチナーゼ 有、クエン酸の利用 無、H2Sの産生 無、インドールの産生 無、アセトインの産生 有、グルコース資化性 無、D−マンニトール資化性 無、イノシトール資化性 無、L−ラムノース資化性 無、D−ソルビトール資化性 無、サッカロース資化性 無、D−メリビオース資化性 無、D−アミグダリン資化性 無、L−アラビノース資化性 無である。
【0033】
前記メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti) Q−2は、DDBJに登録されている16S rDNAライブラリーに基づき、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)との相同性が、98.6%である。また、前記メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti) Q−2は、グラム陰性の運動性を有する短桿菌であり、コロニーの特徴:赤色であり、オキシダーゼ 有、β−ガラクトシダーゼ 無、アルギニンジヒドロラーゼ 有、リジンデカルボキシラーゼ 無、オルニチンデカルボキシラーゼ 無、ウレアーゼ 有、トリプトファンデアミナーゼ 有、ゲラチナーゼ 無、クエン酸の利用 無、H2Sの産生 無、インドールの産生 無、アセトインの産生 有、グルコース資化性 無、D−マンニトール資化性 無、イノシトール資化性 無、L−ラムノース資化性 無、D−ソルビトール資化性 無、サッカロース資化性 無、D−メリビオース資化性 無、D−アミグダリン資化性 無、L−アラビノース資化性 無である。
【0034】
前記Q−3は、DDBJに登録されている16S rDNAライブラリーに基づき、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)との相同性が、96.5%である。また、前記Q−3は、グラム陰性の運動性を有する短桿菌であり、コロニーの特徴:周縁部が緑色であり、オキシダーゼ 有、β−ガラクトシダーゼ 無、アルギニンジヒドロラーゼ 有、リジンデカルボキシラーゼ 無、オルニチンデカルボキシラーゼ 無、ウレアーゼ 無、トリプトファンデアミナーゼ 有、ゲラチナーゼ 無、クエン酸の利用 有、H2Sの産生 無、インドールの産生 無、アセトインの産生 有、グルコース資化性 無、D−マンニトール資化性 無、イノシトール資化性 無、L−ラムノース資化性 無、D−ソルビトール資化性 無、サッカロース資化性 無、D−メリビオース資化性 無、D−アミグダリン資化性 無、L−アラビノース資化性 無である。
【0035】
前記Q−4は、DDBJに登録されている16S rDNAライブラリーに基づき、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)との相同性が、96.6%である。また、前記Q−4は、グラム陰性の運動性を有する短桿菌であり、コロニーの特徴:周縁部が赤色であり、オキシダーゼ 有、β−ガラクトシダーゼ 無、アルギニンジヒドロラーゼ 有、リジンデカルボキシラーゼ 無、オルニチンデカルボキシラーゼ 無、ウレアーゼ 無、トリプトファンデアミナーゼ 有、ゲラチナーゼ 無、クエン酸の利用 有、H2Sの産生 無、インドールの産生 無、アセトインの産生 有、グルコース資化性 無、D−マンニトール資化性 無、イノシトール資化性 無、L−ラムノース資化性 無、D−ソルビトール資化性 無、サッカロース資化性 無、D−メリビオース資化性 無、D−アミグダリン資化性 無、L−アラビノース資化性 無である。
【0036】
前記シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5は、前記と同様である。
【0037】
前記アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.) Q−6は、DDBJに登録されている16S rDNAライブラリーに基づき、アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.) mp−2との相同性が、99.6%である。また、前記アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.) Q−6は、グラム陰性の運動性を有する短桿菌であり、コロニーの特徴:無色であり、オキシダーゼ 有、β−ガラクトシダーゼ 無、アルギニンジヒドロラーゼ 有、リジンデカルボキシラーゼ 無、オルニチンデカルボキシラーゼ 有、ウレアーゼ 有、トリプトファンデアミナーゼ 有、ゲラチナーゼ 無、クエン酸の利用 有、H2Sの産生 無、インドールの産生 無、アセトインの産生 有、グルコース資化性 無、D−マンニトール資化性 無、イノシトール資化性 無、L−ラムノース資化性 無、D−ソルビトール資化性 無、サッカロース資化性 無、D−メリビオース資化性 無、D−アミグダリン資化性 無、L−アラビノース資化性 無である。
【0038】
本発明の微生物培養物は、炭素源として、前記スチレンアクリル樹脂等を含有し、窒素源として、例えば、NH4Cl、(NHSO、NHNO、(NHCO、(NHHPO、(NH)HPO等の存在下に維持されうる。前記窒素源は、微生物を生育させるに十分な窒素源を供給する観点から、好ましくは、0.5重量%以上、より好ましくは、0.6 重量%以上、さらに好ましくは、1.0重量%以上であり、微生物に十分な生育能を発揮させる観点から、好ましくは、3.0重量%以下、より好ましくは、1.7重量%以下、さらに好ましくは、1.2重量%以下であることが望ましい。また、炭素源/窒素源重量比(C/N比)は、炭素源と窒素源とのバランスを調整する観点から、好ましくは、40以上、より好ましくは、43以上、さらに好ましくは、48以上であり、微生物に十分な生育能を発揮させる観点から、好ましくは、60以下、より好ましくは、55以下、さらに好ましくは、50以下であることが望ましい。また、培地のpHは、好ましくは、pH6.5〜7.5、より好ましくは、pH6.9〜7.1であることが望ましい。本発明の微生物培養物は、前記の条件下、好ましくは、30〜40℃、より好ましくは、35〜37℃で、100〜150ストローク/分、好ましくは、110〜130ストローク/分培養することにより維持されうる。
【0039】
本発明の微生物培養物は、具体的には、前記FY培地、スチレンアクリル樹脂添加FY培地(組成:0.5重量%スチレンアクリル樹脂、1重量% NH4Cl、0.1重量% KH2PO4、0.05重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.2重量% NaCl、0.001重量% ZnCl2、0.001重量% FeSO4・7H2O、0.001重量% CaCl2、0.1重量% 酵母エキス)等により維持されうる。
【0040】
本発明は、別の側面では、スチレンアクリル樹脂の分解用組成物に関する。
【0041】
本発明の分解用組成物は、本発明の微生物培養物を含有する。したがって、本発明の分解用組成物によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を、CO2の発生を実質的に伴わずに、より高い効率で、より安定的に分解することができ、樹脂、特にスチレンアクリル樹脂を含む廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易にすることができる。
【0042】
本発明の分解用組成物は、長期にわたって、微生物培養物を安定に保持させる観点から、微生物培養物を保持するに適した固定用担体をさらに含有してもよい。
【0043】
前記固定用担体としては、微生物培養物に含まれる各微生物の生育を安定的に維持し、該生分解能を阻害しない担体であることが望ましく、長期にわたって、微生物培養物を安定に保持させる観点から、好ましくは、前記微生物により実質的に分解されない担体であることが望ましい。前記固定用担体としては、例えば、多孔質担体、不織布,活性炭、セラミックス、セルロース等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の分解用組成物は、微生物の培養に適した培地をさらに含有していてもよい。
【0045】
本発明の分解用組成物においては、本発明の微生物培養物を前記不溶性担体の表面に固定化してもよく、内部に固定化若しくは保持させてもよい。本発明の微生物培養物を、かかる担体の内部に固定化若しくは保持させる場合、前記微生物の生育に必要な各種栄養素、分解対象の樹脂、例えば、スチレンアクリル樹脂等の授受が可能な担体であることが望ましい。
【0046】
本発明の分解用組成物中に含まれる微生物細胞の数には、特に限定されるものではなく、微生物の生育状態、生分解能の発現の程度、当該分解用組成物の取り扱い方法等に応じて適宜設定されうる。
【0047】
本発明は、他の側面では、(A)スチレンアクリル樹脂を含む生産物若しくは廃棄物と、(B)本発明の微生物培養物又は本発明の分解用組成物とを接触させることを特徴とする、スチレンアクリル樹脂の分解方法に関する。
【0048】
なお、本明細書において、前記生産物は、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を含む生産物をいい、具体的には、成型ようの型枠等が挙げられる。
【0049】
本発明の分解方法は、本発明の微生物培養物又は本発明の分解用組成物が用いられていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の分解方法によれば、樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を、CO2の発生を実質的に伴わずに、より高い効率で、より安定的に分解することができる。また、本発明の分解方法によれば、樹脂、特にスチレンアクリル樹脂を含む廃棄物の処理に適用することにより、該廃棄物中の樹脂、特にスチレンアクリル樹脂を優先的に生分解し、残存する未使用の有用金属、有用化合物等を回収しやすい状態で分離及び/又は露呈させることができる。そのため、前記廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易に行なうことが可能になる。
【0050】
本発明の分解方法においては、具体的には、本発明の微生物培養物又は本発明の分解用組成物を、前記生産物又は廃棄物の存在下に、スチレンアクリル樹脂の分解活性を発現させるに適した条件、例えば、本発明の微生物培養物に含まれる各微生物の維持に適した条件下に維持すること;本発明の微生物培養物又は本発明の分解用組成物を、前記生産物又は廃棄物に散布又は混合し、スチレンアクリル樹脂の分解活性を発現させるに適した条件、例えば、本発明の微生物培養物に含まれる各微生物の維持に適した条件下に維持すること等を行なえばよい。
【0051】
前記廃棄物は、必要に応じ、適切な手段で粉砕して粉末状にしてもよく、本発明の微生物培養物の生育を妨げない適切な溶媒に溶解させてもよい。
【0052】
本発明の分解方法の適用の具体例としては、トナー、缶ラミネート、電子機器類の絶縁体、家電・自動車の廃棄物、産業廃棄物等の廃棄物の処理;樹脂、特に、スチレンアクリル樹脂を含む廃液の処理;前記廃棄物中からの有用金属や有用化合物の回収;スチレンアクリル樹脂等の樹脂を成型加工等の際に利用した場合、例えば、スチレンアクリル樹脂等の樹脂から製造された型枠に材料を入れ、成型させした場合の目的の成型物の回収の容易化等が挙げられる。
【0053】
本発明は、他の側面では、(a)スチレンアクリル樹脂と金属若しくは色素とを含む廃棄物と、(b)本発明の微生物培養物又は分解用組成物とを接触させ、廃棄物中のスチレンアクリル樹脂を分解させ、それにより、廃棄物中の金属又は色素を分離することを特徴とする、廃棄物中の金属又は色素の回収方法に関する。
【0054】
本発明の回収方法によれば、本発明の微生物培養物又は分解用組成物が用いられているため、スチレンアクリル樹脂と金属若しくは色素とを含む廃棄物中の樹脂、特にスチレンアクリル樹脂を優先的に生分解し、残存する未使用の有用金属、有用化合物等を回収しやすい状態で分離及び/又は露呈させることができる。そのため、前記廃棄物中の未使用の有用金属、有用化合物等を、周辺環境に対し低影響で、容易に、安価に回収することができ、前記有用金属、有用化合物等のリサイクルをより容易に行なうことが可能になる。
前記(a)の廃棄物と、前記(b)の微生物培養物又は分解用組成物との接触は、
1) 必要に応じ、廃棄物を適切な手段で粉砕して粉末状にし、あるいは本発明の微生物培養物の生育を妨げない適切な溶媒に廃棄物を溶解させるステップ、及び
2) 本発明の微生物培養物又は分解用組成物を、前記廃棄物の存在下に、スチレンアクリル樹脂の分解活性を発現させるに適した条件、例えば、本発明の微生物培養物に含まれる各微生物の維持に適した条件下に維持するステップ、又は、
2’)本発明の微生物培養物又は分解用組成物を、前記廃棄物に散布又は混合し、スチレンアクリル樹脂の分解活性を発現させるに適した条件、例えば、本発明の微生物培養物に含まれる各微生物の維持に適した条件下に維持するステップ、
により行なわれうる。
【0055】
廃棄物中に含まれるスチレンアクリル樹脂の分解後の産物は、スチレンアクリル樹脂から構成される成分が実質的に除去されている。したがって、前記産物から、回収対象の金属又は色素を、慣用の分画法、酸アルカリ処理、沈殿、有機溶媒抽出、遠心分離、各種クロマトグラフィー等で容易に回収することができる。
【0056】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
スチレンアクリル樹脂分解微生物のスクリーニング
終濃度5g/Lになるようにジクロロメタンにスチレンアクリル樹脂〔三笠産業株式会社、トナーインク用スチレンアクリル樹脂〕を溶解し、得られた溶液 1mLを試験管に分注した。その後、ドラフト内で前記試験管を風乾させた。
【0058】
前記試験管に、FY培地〔組成:1重量% NH4Cl、0.1重量% KH2PO4、0.05重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.2重量% NaCl、0.001重量% ZnCl2、0.001重量% FeSO4・7H2O、0.001重量% CaCl2、0.1重量% 酵母エキス〕 5mLを添加し、121℃20分間高圧滅菌した。
【0059】
近畿大学農学部構内土壌、奈良県山中の土壌、石川県内の土壌、和歌山県から採取した海水、大阪府沿岸から採取した海水、近畿大学農学部応用微生物学研究室保存の重油分解微生物群及びコンポストのそれぞれを試料として用いた。前記土壌は、生理食塩水に懸濁後、超音波処理〔28kHz〕で均一に分散させて、試料とした。また、海水は、そのまま試料として用いた。さらに、コンポストは、生理食塩水に懸濁後、超音波処理〔28kHz〕で均一に分散させて、試料とした。
【0060】
各試料を、前記高圧滅菌後の試験管に接種し、37℃、125ストローク/分で振とう培養を行なった。なお、スチレンアクリル樹脂を分解する微生物を含む試料は、培養前において試験管壁にフィルム状に付着していたスチレンアクリル樹脂が培養液中に均一に分散し、菌が良好に生育して培養液が白濁することを指標として選抜した。スチレンアクリル樹脂を分解する微生物を含む試料の集積培養液の一部を新たなFY培地に移し、継代培養を重ねた。
【0061】
その結果、スクリーニングした試料のうち、コンポストに由来する試料について、図1に示されるように、試験管壁面に付着していたスチレンアクリル樹脂が、培養液中に均一に分散され、培養液が白濁した。かかる安定してスチレンアクリル樹脂を分解する微生物を含む培養物を、AMOC2という。なお、前記AMOC2は、AMOC2と命名・表示され、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター〔郵便番号292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8〕において、受託番号:NITE P−80として、2005年2月28日(受託日)に寄託されている。
【0062】
得られたAMOC2を、滅菌生理食塩水で10倍段階希釈し、R2A平板培地〔組成:0.05重量% 酵母エキス、0.05重量% ペプトン、0.05重量% カザミノ酸、0.05重量% グルコース、0.05重量% 可溶性スターチ、0.03重量% K2HPO4、0.005重量% MgSO4・7H2O、0.03重量% ピルビン酸ナトリウム、1.5重量% 寒天;ディフコラボラトリーズ(Difco Laboratories)社製〕に塗布し、37℃で7〜14日間培養した。その後、生じたコロニーの中から形態の異なるコロニーを選抜し、さらに、均一になるまで選抜した。
【0063】
その結果、図2に示される6種類のコロニーの微生物が得られた。
【実施例2】
【0064】
AMOC2の性質検討
前記実施例1で得られた各微生物を、終濃度5g/Lのスチレンアクリル樹脂を含有したFY培地〔組成:1重量% NH4Cl、0.1重量% KH2PO4、0.05重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.2重量% NaCl、0.001重量% ZnCl2、0.001重量% FeSO4・7H2O、0.001重量% CaCl2、0.1重量% 酵母エキス〕に接種し、37℃で7日間培養した。
【0065】
培養後の各微生物を集菌し、滅菌水で洗浄した。その後、凍結融解により、各菌体を破砕し、破砕した菌体をTE緩衝液〔組成:100mM Tris−HCl、40mM EDTA(pH8.0)〕 500μLに懸濁した。得られた懸濁液に、ドデシル硫酸ナトリウム(200g/L,和光純薬株式会社)溶液 50μLと塩化ベンジル 300μLとを添加し、攪拌した。
【0066】
その後、得られた産物を、50℃ウォーターバス中で5分毎に攪拌しがら60分間インキュベーションした。インキュベーション後に得られた産物に、ジルコニア/シリカ混合ビーズ〔外径0.1mm、バイオスペック プロダクツ インコーポレーティッド(BIOSPEC PRODUCTS INC.)〕 100mgを添加し、ボルテックスで10秒間攪拌した。得られた産物に、3.0M NaOAc(pH5.0) 300μLを添加し、氷水中で30分間静置し、その後、17400×g、20℃で10分間遠心分離し、上清を回収した。
【0067】
得られた上清に、TE飽和フェノール溶液 600μLを添加し、17400×g、20℃で10分間遠心分離して、フェノール層を除去した。得られた水層にフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール(50:49:1)(以下、PCI) 600μLを添加し、17400×g、20℃で10分間遠心分離し、上層(水層)を回収した。回収した水層に、クロロホルム:イソアミルアルコール/24:1(v/v)(CIA) 600μLを添加し、17400×g、20℃で10分間遠心分離して、その上清を回収した。
【0068】
得られた上清に、2−プロパノール 600μLを添加し、4℃で10分間静置した。その後、得られた産物を、17400×g、20℃で20分間遠心分離して、上清を除去した。得られた沈殿物を、70%(v/v) エタノール 800μLで洗浄後、該エタノールを除去して沈殿物を風乾させた。得られた産物を滅菌水 20mLに溶解し、DNA溶液を得た。得られたDNA溶液を、滅菌水で50倍希釈し、得られた溶液について、260nmにおける吸光度を、分光光度計〔商品名:DU.Series 650、ベックマン(BECKMAN)社製〕で測定し、DNA濃度を求めた。得られたDNAを、鋳型DNAを用いた。
【0069】
前記鋳型DNAを用い、PCR法により、16S rDNAのV3領域(大腸菌の16S rDNAの341位〜536位に相当)にあたる200bpの塩基配列を増幅した。具体的には、商品名:MyCycler Thermal Cycler〔バイオラッド(BIO RAD)社製〕を用い、10×Gold Taq buffer〔商品名、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)製〕 5μLと、2.0mM dNTP混合物〔アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕 5μLと、25mM MgCl2〔アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕 6μLと、フォワードプライマー GC−341F:5'-CGCCCGCCGCGCCCCGCGCCCGTCCCGCCGCCCCCGCCCGCCTACGGGAGGCAGCAG-3'(10pmol/μL、シグマジェノシス社製、配列番号:1) 1μLとリバースプライマー 534R〔5'-ATTACCGCGGCTGCTGG-3'(10pmol/μL、シグマジェノシス社製、配列番号:2) 1μLと、50ng相当量の鋳型DNAと、商品名:AmpliTaq Gold〔5U/μL、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕 0.2μLと、滅菌水 残部とを含む反応液 50μL中でPCRを行なった。
【0070】
PCRのサーマルプロファイルは、95℃で10分間のインキュベーション後、93℃で60秒の熱変性と48℃で70秒のアニーリングと、72℃で70秒の伸長とを1サイクルとする25サイクル、72℃で5分のインキュベーションとした。
【0071】
得られた産物を、アガロースゲル電気泳動に供し、目的配列の増幅を確認した。得られた産物を、商品名:QIAEXII Gel Extraction Kit〔キアジェン(QIAGEN)社製〕に供して濃縮し、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)解析対象試料を得た。
【0072】
ついで、得られたDGGE解析対象試料について、商品名:Dcode system 6〔バイオラッドラボラトリー(Bio−Rad Lab.)製〕を用いて、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動を行なった。
【0073】
変性剤濃度勾配は、7.0M 尿素〔バイオラッドラボラトリー(Bio−Rad Lab.)製〕と40%(v/v) ホルムアミド〔バイオラッドラボラトリー(Bio−Rad Lab.)製〕とを含む変性剤を、濃度100%として、電気泳動方向に20%〜50%となるように調整した。また、アクリルアミド〔バイオラッドラボラトリー(Bio−Rad Lab.)製〕濃度が、電気泳動方向に6〜9%(v/v)となるように勾配させたポリアクリルアミドゲルを用いた。泳動条件は、電圧200V、泳動時間6時間、泳動温度61℃とし、泳動用緩衝液として、0.5×TAE緩衝液を用いた。
【0074】
泳動終了後、ゲルを、商品名:Syber Gold(タカラバイオ株式会社製)で30分間染色した。その後、ゲルに、紫外線(310nm)を照射し、染色されたDNAに基づく励起光を、商品名:Kodak Gel Logic 200 Imaging System〔コダック(Kodak)社製〕と商品名:KODAK GL Filter〔SYBR Green/SYBR Gold用、コダック(Kodak)社製〕とを用いて撮影した。結果を図3に示す。
【0075】
図3に示されるように、AMOC2から、複数のDNAバンドが確認され、Q−1〜Q−6のDNAバンドは、AMOC2に由来するDNAバンドにそれぞれ帰属することができた。
【0076】
また、前記Q−1〜Q−6に由来する鋳型DNAを用い、以下のように、PCRにより、16S rDNAの塩基配列の解析を行なった。
【0077】
商品名:MyCycler Thermal Cycler〔バイオラッド(BIO RAD)社製〕を用い、10×Gold Taq buffer〔商品名、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)製〕 5μLと、各2.0mMのdNTP混合物 5μLと、25mM MgCl2 6μLと、フォワードプライマー27f:5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'(10pmol/μL、東亜合成株式会社製、配列番号:3) 1μLと、リバースプライマー1525r:5'-AAAGGAGGTGATCCAGCC-3'(10pmol/μL、東亜合成株式会社製、配列番号:4) 1μLと、50ng相当量の前記鋳型DNAと、商品名:AmpliTaq Gold〔5U/μL、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕 0.5μLと、滅菌水 残部とを含む反応液 50μL中でPCR反応液とした。
【0078】
PCRのサーマルプロファイルは、94℃で7分間のインキュベーション後、94℃で45秒の熱変性と55℃で45秒のアニーリングと、72℃で45秒の伸長とを1サイクルとする25サイクル、72℃で10分のインキュベーションとした。得られた産物を、アガロースゲル電気泳動に供し、目的配列の増幅を確認した。得られた産物を、1.5重量% 低融点アガロースゲル〔バイオプロダクツ(BioProducts)製〕を用いて精製し、滅菌水 20μLに溶解し、シークエンス用試料を得た。
【0079】
前記シークエンス用試料を用い、ダイレクトシーケンスを行なった。伸長反応には、商品名:DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit〔アマシャムバイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)社製〕を用い、下記16S rDNAシークエンスプライマー:
f1L フォワードプライマー 9−27 5'-GAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'(配列番号:5)、
f2L フォワードプライマー 518−536 5'-CCAGCAGCCGCGGTAATAC-3'(配列番号:6)、
f2.5L フォワードプライマー 776−795 5'-AGCAAACAGGATTAGATACC-3'(配列番号:7)、
f3L フォワードプライマー 1093−1111 5'-GTCCCGCAACGAGCGCAAC-3'(配列番号:8)、
r1L リバースプライマー 535−517 5'-GTATTACCGCGGCTGCTGG-3'(配列番号:9)、
r2L リバースプライマー 804−785 5'-GACTACCAGGGTATCTAATC-3'(配列番号:10)、
r3L リバースプライマー 1110−1092 5'-TTGCGCTCGTTGCGGGACT-3'(配列番号:11)、
r4L リバースプライマー 1405−1388 5'-ACGGGCGGTGTGTACAAG-3'(配列番号:12)、
rE1L リバースプライマー 344−326 5'-GTAGGAGTCTGGACCGTGT-3'(配列番号:13)、
を用いた。なお、シークエンス反応の条件は、95℃20秒と50℃15秒と60℃1分とを1サイクルとする30サイクルとした。ついで、DNAシーケンサー〔商品名:ABI PRISM 3100 DNA Sequencer、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製〕を用いて、各試料を解析した。
【0080】
得られた解析対象の16S rDNAの塩基配列について、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)のデータベースに登録されている16S rDNAライブラリーについて、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用い、検索対象Division バクテリア、GAP計算あり、期待値10、その他パラメータ デフォルト値の条件で、相同性の高い菌株を検索した。
【0081】
その結果、前記Q−1は、ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.) TUT1238と98.6%の相同性、前記Q−2は、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)と98.6%の相同性、前記Q−3は、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)と96.5%の相同性、前記Q−4は、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)と96.6%の相同性、前記Q−5は、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)と99.5%の相同性、前記Q−6は、アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.) mp−2と99.6%の相同性を示した。
【0082】
そこで、前記Q−1を、ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.) Q−1、前記Q−2を、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti) Q−2、前記Q−5を、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5、前記Q−6を、アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.) Q−6とした。
【0083】
ついで、前記Q−1〜Q−6について、慣用の手法により、形態学的、生理生化学的特徴を調べた。前記Q−1〜Q−6について、位相差顕微鏡〔株式会社ニコン製〕で観察して、運動性を検討した。また、グラム染色とオキシターゼテストは、ホルムス(B.Holmes)ら〔International Journal of Systematic Bacteriology、第38巻、第406頁〜第416頁、(1988)〕に従って行なった。
【0084】
その結果、Q−1、Q−2、Q−3、Q−4、Q−5及びQ−6は、全て運動性を有するグラム陰性の短桿菌であった。
【0085】
また、その他の生理・生化学的性状は、商品名:Api 20E同定キット〔バイオメリオ(BioMerieux)製〕を用いて検討した。表1に生理・生化学的性質を示す。
【0086】
【表1】

【実施例3】
【0087】
スチレンアクリル樹脂の分解活性
終濃度5g/Lになるようにジクロロメタンに、前記スチレンアクリル樹脂〔三笠産業株式会社、トナーインク用スチレンアクリル樹脂〕を溶解し、得られた溶液 1mLを試験管に分注した。その後、ドラフト内で前記試験管を風乾させた。
【0088】
前記試験管に、FY培地〔組成:1重量% NH4Cl、0.1重量% KH2PO4、0.05重量% K2HPO4、0.05重量% MgSO4・7H2O、0.2重量% NaCl、0.001重量% ZnCl2、0.001重量% FeSO4・7H2O、0.001重量% CaCl2、0.1重量% 酵母エキス〕 5mLを添加し、121℃20分間高圧滅菌した。
【0089】
ついで、AMOC2、Q−1〜Q−6のそれぞれを前記高圧滅菌後の試験管に接種し、37℃、125ストローク/分で振とう培養を行なった。なお、対照として、近畿大学農学部応用微生物学研究室に保存されているポリエステル化合物分解微生物群AMOC001を用いた。
【0090】
7日間培養後に得られた培養液に残存するスチレンアクリル樹脂及びそれに由来する分解生成物をジクロロメタンで抽出し、ヘキサトリアコンタン〔内部標準物質、シグマ−アルドリッヒ(Sigma−Aldrich)社製〕を添加し、エバポレーターで減圧乾固させた。得られた乾固物を、ヘキサン:トルエン/2:8(体積比) 5mLに溶解した。
【0091】
得られた試料 1μLを、の石英ガラスの周りにシリカゲルを薄くコーティングしたロッド(商品名:クロマロッドSIII 株式会社三菱化学ヤトロン製)にスポットし、そのロッドを恒湿槽(条件:65%RH)で10分間インキュベーションした。その後、n−ヘキサンが入った展開槽内で10分間ハンギングしてから、10cm展開させた。なお、ハンギング及び展開は37℃の恒温槽内で行った。
【0092】
展開が終わったロッドは、溶媒を除去させるため室温で乾燥させ、まず10cm展開したロッドをFID分析して内部標準ピークを検出した。
【0093】
その後、部分測定が終了したロッドを、再び10分間恒湿槽に保った。トルエンで10cm展開させた。除去させるため室温で乾燥させて溶媒を除去した。展開後のロッドを、商品名:イアトロスキャンMk−6s(株式会社三菱化学ヤトロン製)を用いて、検出器:FID、水素ガス:160mL/分、空気:2.0L/分、スキャン速度:30秒/スキャンの条件で分析し、スチレンアクリル樹脂に対応するピークと、それに由来する分解生成物に対応するピークとを検出した。また、継代培養は7日毎に行い分解率の経時変化も求めた。
【0094】
なお、陰性対照として、微生物培養物非存在下の場合について同様に行なった。
【0095】
前記分解活性は、微生物培養物存在下の場合の各ピークの面積と、対照の場合の各ピークの面積とを比較し、スチレンアクリル樹脂に対応するピークの面積がゼロの場合、当該スチレンアクリル樹脂が100%分解されたことの指標として算出した。その結果を図4及び図5に示す。
【0096】
その結果、図4に示されるように、AMOC2は、3代以上継代培養しても、安定して、分解率は、約45%であり、スチレンアクリル樹脂を分解できることがわかる。また、生育も良好であった。しかしながら、図4に示されるように、ポリエステル分解微生物群AMOC001は、スチレンアクリル樹脂の分解率は継代回数が増加するにつれて低下し、継代回数3回目(7日/回)で樹脂の分解も菌の生育が認められなくなった。
【0097】
また、図5に示されるように、 Q−1〜Q−4株及びQ−6株は、単独では、分解率は、25%であったが、Q−5株は、安定して、分解率は、約40%であった。したがって、AMOC2において、Q−5は、Q−1〜Q−4及びQ−6と協調的に、互いに機能を補完しあって、高い分解率を維持していることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、スチレンアクリル樹脂を含む廃棄物を、安価で、かつ環境に対して低影響で処理することができ、廃棄物中の金属又は色素の安価でかつ環境に対して低影響で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、微生物培養物によるスチレンアクリルの分解を示す図である。レーン1は、対照であり、レーン2は、微生物培養物存在下のスチレンアクリルの分解を示す。
【0100】
【図2】図2は、Q−1〜Q−6のコロニーの形状を示す図である。
【0101】
【図3】図3は、AMOC2及びQ−1〜Q−6それぞれの16S rDNA V3領域の変性剤濃度勾配ゲル電気泳動解析の結果を示す図である。レーン1は、AMOC2、レーン2〜レーン7は、それぞれQ−1〜Q−6である。
【0102】
【図4】図4は、AMOC2及びAMOC001によるスチレンアクリル樹脂の分解活性を調べた結果を示す図である。図中、四角が、AMOC2、三角が、AMOC001である。
【0103】
【図5】図5は、AMOC2及びQ−1〜Q−6それぞれによるスチレンアクリル樹脂の分解活性を調べた結果を示す図である。図中、四角が、AMOC2、星印が、Q−1、十字印が、Q−2、五角形が、Q−3、六角形が、Q−4、ひし形が、Q−5、三角が、Q−6である。
【配列表フリーテキスト】
【0104】
配列番号:1は、プライマーの配列である。
【0105】
配列番号:2は、プライマーの配列である。
【0106】
配列番号:3は、プライマーの配列である。
【0107】
配列番号:4は、プライマーの配列である。
【0108】
配列番号:5は、プライマーの配列である。
【0109】
配列番号:6は、プライマーの配列である。
【0110】
配列番号:7は、プライマーの配列である。
【0111】
配列番号:8は、プライマーの配列である。
【0112】
配列番号:9は、プライマーの配列である。
【0113】
配列番号:10は、プライマーの配列である。
【0114】
配列番号:11は、プライマーの配列である。
【0115】
配列番号:12は、プライマーの配列である。
【0116】
配列番号:13は、プライマーの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)に属する微生物を含有してなる、スチレンアクリル樹脂の生分解能を呈する微生物培養物。
【請求項2】
シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)に属する微生物が、シュードモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis) Q−5(受託番号:NITE P−80)である、請求項1記載の微生物培養物。
【請求項3】
ルテイモナス スピーシーズ(Luteimonas sp.)に属する微生物と、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)に属する微生物と、ロシャリメア エリザベザエ(Rochalimaea elizabethae)に属する微生物と、アルカリジェネス スピーシーズ(Alcaligenes sp.)に属する微生物とをさらに含有してなる、請求項1又は2記載の微生物培養物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の微生物培養物を含有してなる、スチレンアクリル樹脂の分解用組成物。
【請求項5】
微生物培養物を保持するに適した固定用担体をさらに含有してなる、請求項4記載のスチレンアクリル樹脂の分解用組成物。
【請求項6】
微生物の培養に適した培地をさらに含有してなる、請求項4又は5記載のスチレンアクリル樹脂の分解用組成物。
【請求項7】
(A)スチレンアクリル樹脂を含む生産物若しくは廃棄物と、(B)請求項1〜3いずれか1項に記載の微生物培養物又は請求項4〜6いずれか1項に記載の分解用組成物とを接触させることを特徴とする、スチレンアクリル樹脂の分解方法。
【請求項8】
(a)スチレンアクリル樹脂と金属若しくは色素とを含む廃棄物と、(b)請求項1〜3いずれか1項に記載の微生物培養物又は請求項4〜6いずれか1項に記載の分解用組成物とを接触させ、廃棄物中のスチレンアクリル樹脂を分解させ、それにより、廃棄物中の金属又は色素を分離することを特徴とする、廃棄物中の金属又は色素の回収方法。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−340668(P2006−340668A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169877(P2005−169877)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会 2005年度(平成17年度)大会講演要旨集」に発表
【出願人】(504005035)三笠産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】