説明

スチレン系エラストマー含有導電性樹脂組成物

【課題】表面光沢度を低減し、かつ、引張強さや折り曲げに対する耐久性などの機械的物性に優れたシート及びフィルム状材料を得ることができる導電性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が1〜10質量部、(C)成分が1〜10質量部であり、かつ、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対し、(D)成分が5〜20質量部であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
(A)メルトフローレート(MFR)が2〜50g/10分の熱可塑性芳香族ポリカーボネート
(B)熱可塑性ポリアルキレンフタレート
(C)スチレン比が10〜20のスチレン系エラストマー
(D)n−ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100〜400ml/100gである導電性カーボンブラック

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品包装容器用部材として適した表面光沢度の低い熱可塑性導電性樹脂組成物に関する。詳しくは、スチレン系エラストマーを含有することにより、得られるシート状材料表面の光沢度を低減できる導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気又は電子部品包装容器用部材には導電性(帯電防止性、電磁シールド性など)が要求されるものが多く、該部材を構成する材料としては、電気絶縁性である芳香族ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂に導電性カーボンブラックなどの導電材の配合されたものが一般に使用されている。
芳香族ポリカーボネートを主成分とする熱可塑性導電性樹脂組成物としては、導電材である導電性カーボンブラックの分散性を向上するために熱可塑性芳香族ポリカーボネートに熱可塑性ポリアルキレンフタレートを特定量配合した組成物が開示されている(特許文献1)。
このような芳香族ポリカーボネートを主成分とする熱可塑性導電性樹脂組成物を電子部材のキャリアテープ等の包装材に使用した場合、包装材自体の光沢度が高いと、CCDカメラ等による画像認識検査などの光学的な検査において、包装材内の電子部材の正確な画像が得られないなどの問題が発生する。
ポリカーボネート樹脂含有組成物から製造される包装材の表面光沢度を低減するために、ポリカーボネート樹脂と導電性カーボンブラックからなる組成物に加硫した共役ジエン重合体ゴムを配合することが知られている(特許文献2)。しかし、表面光沢度の低減と導電性や引張強さや折り曲げに対する耐久性などの機械的物性を両立する点では十分とはいえない。
【0003】
【特許文献1】特開2001−323150(ライオン)
【特許文献2】特開2004−203993(電気化学工業)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明は、表面光沢度を低減し、かつ、引張強さや折り曲げに対する耐久性などの機械的物性に優れたシート及びフィルム状材料を得ることができる導電性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定のスチレン比を有するスチレン系エラストマーを配合することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が1〜10質量部、(C)成分が1〜10質量部であり、かつ、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対し、(D)成分が5〜20質量部であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
(A)メルトフローレート(MFR)が2〜50g/10分の熱可塑性芳香族ポリカーボネート
(B)熱可塑性ポリアルキレンフタレート
(C)スチレン比が10〜20のスチレン系エラストマー
(D)n−ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100〜400ml/100gである導電性カーボンブラックを提供する。
本発明はまた、上記導電性樹脂組成物を含有する電子部品包装容器用導電性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カーボンブラックを含有する導電性ポリカーボネート樹脂組成物の引張り強度や耐久性などの機械物性や成型加工性、更には導電性を損なうことなく、表面の光沢度が低減された導電性樹脂組成物が提供される。
本組成物は特に電子部品のキャリアテープ等、導電性と、フィルムやシートとしての耐久性が求められると共に、CCDカメラ等による画像認識検査などの光学的な検査が行なわれる電子部品包装容器への使用に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
成分(A):熱可塑性芳香族ポリカーボネート
本発明における熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、MFR(メルトフローレート)が2〜50g/10分のものである。ここで、MFRは、JIS K−7210の方法に準拠して温度300℃、荷重11.77N(1.2kg)で測定される値である。MFRが2g/10分以上の場合、混練時の樹脂粘度が高くなりすぎず、カーボンブラックの分散性を良好にすることができる。また成型加工性も良好とすることができる。他方、MFRが50g/10分以下の場合、引張強さや耐久性などの機械強度を保ちながら、樹脂粘度が成形加工に適したものとなる。MFRは、上記効果がより発揮されることから、3〜30g/10分であるのが好ましい。
本発明において使用する熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体とを、界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換重合法、および環状カーボネート化合物の開環重合法により反応させて得られるものである。
【0008】
原料となる二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0009】
このうち、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる重合体が好ましい。
特に、耐衝撃性に優れるため、ビスフェノールAが好ましい。
【0010】
もう一方の原料のカーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
更に、芳香族ポリカーボネートの製造に際し、適当な分子量調整剤、分岐剤、触媒、酸化防止剤等が使用できる。
【0011】
本発明の成分(A)は、単独で使用してもよいが、引張り特性およびフィルムまたはシートしての耐久性の向上を目的として、MFRの異なるグレードを2種類以上混合しても良い。例えば2種類を組み合わせる場合には、
A1:MFR=10〜50g/10分、好ましくは、15〜30g/10分
A2:MFR=2〜8g/10分、好ましくは、3〜6g/10分
のものをA2/A1質量比=1〜9、特には1.5〜4とすることが好ましい。
A2が多いと、混練時の樹脂粘度が高いためにカーボンブラックの分散性が劣ることがある。A1が多いと、樹脂組成物の引張強さなどの機械強度が低下すると共に、樹脂粘度が低すぎて成形加工がしにくくなることがある。
【0012】
成分(B):熱可塑性ポリアルキレンフタレート
本発明において熱可塑性ポリアルキレンフタレートとは、各種フタル酸またはそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとを主成分として重縮合して生成されるものであり、主たる構成が飽和ポリアルキレンフタレートよりなる樹脂であって、他の成分を含有した共重合体であってもよい。熱可塑性ポリアルキレンフタレートは、成分(D)導電性カーボンブラックの導電性樹脂組成物中における分散性を向上させる。
本発明において使用できる熱可塑性ポリアルキレンフタレートとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート共重合物体などのポリアルキレンフタレートホモポリマー、コポリマーなどが挙げられる。熱可塑性ポリアルキレンフタレートの分子構造は特に制限はなく、コポリマーの場合にはランダム体、ブロック体においても、さらには分子が線状、分岐、架橋などいずれの分子構造であってもよい。これらは単独でも、2種類以上混合しても用いることができる。このうち、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0013】
熱可塑性ポリアルキレンフタレートは、JIS K−7367に準拠して25℃,オルト−クロロフェノール中での測定から算出される固有粘度が、0.5〜1.5、好ましくは0.8〜1.2であるのが好ましい。
本発明の組成物において、熱可塑性ポリアルキレンフタレートは、(a)成分の熱可塑性芳香族ポリカーボネート100質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部の量で含まれる。熱可塑性ポリアルキレンフタレートの配合量が10質量部を超えると、樹脂組成物の引張り破壊歪みやフィルムまたはシートとしての耐久性などの機械物性に劣り、熱可塑性ポリアルキレンフタレートの配合量が1質量部未満であると、カーボンブラックの分散性が劣ることとなり、好ましくない。
【0014】
成分(C):スチレン系エラストマー
本発明で使用できるスチレン系エラストマーは、スチレン比で規定される。ここで、スチレン比とは、スチレン系エラストマー100質量部中の、ハードセグメントであるポリスチレン相の含有量を質量部で表した測定値である。
本発明で使用できるスチレン系エラストマーのスチレン比は、10〜20、好ましくは12〜15の範囲内である。スチレン比を20以下とすることにより、光沢度の低減効果が十分に発揮される。また、引張り強さも良好となりフィルムまたはシートとして用途に好適なものとなる。他方、スチレン比が10以下のものはエラストマーの形態でない。
【0015】
後述するように、本発明の組成物は各成分を加熱溶融した状態で混練することにより製造することができるが、スチレン系エラストマーは、本発明の組成物中で粒子の状態で分散する。導電性樹脂組成物から製造されるシート状材料の表面光沢度は、一般にはエンボス加工を施すことにより低減されるが、本発明では、スチレン系エラストマーから形成される粒子により、シート状材料の表面に凹凸を発生させることにより、光を乱反射させて表面光沢度を低減させることができる。本発明の導電性樹脂組成物から製造されるシート状材料の表面粗さは、通常85nm以上、好ましくは85〜120nm、より好ましくは85〜110nmである。表面粗さが85nm以上であれば表面光沢度が目標の50%以下になるので好ましい。(C)成分の添加量を増やしていくと光沢度は低下していくが、引張り強度も低下してしまい、フィルム等の表面平滑性が損なわれることから、(C)成分の添加量の上限を、後述するように通常10重量部とすることで表面粗さの上限値が制御される。
スチレン系エラストマーがシート状材料の表面及び内部において粒子の状態で分散していることは、SPM(Scanning Probe Microscope)分析結果の解析より得られるシート状材料の表面粗さ(凸凹の程度)と弾性像を観察することにより、表面上に観察される凸部分が粒状形態であり、その凸部分と弾性部分とが一致することにより確認できる。
本発明の組成であれば、このような表面粗さを有するシート状材料を、特別の手段を用いなくても公知の方法で製造することができる。
なお、本明細書において、表面粗さは、SPM(Scanning Probe Microscope)分析結果の解析より得られる算術平均表面粗さRaを意味する。
本発明において、スチレン系エラストマーは、表面光沢度を下げる(艶消し)のに加えて、得られるシート状材料の耐折強度(耐久性)向上に寄与することができる。
なお、本明細書において、シート状材料とは、JIS包装用語規格(JIS Z0108)に記載のフィルム及びシートを指し、厚さが200μm未満のプラスチックの膜状のものをフィルムといい、厚さが200μm以上のプラスチックの薄い板状のものをシートという。
【0016】
本発明において使用するスチレン系エラストマーは、両末端相にハードセグメントであるポリスチレン相と、中間相にソフトセグメントであるエラストマー相とを含むブロックコポリマーである。具体的には、エラストマー相が、ポリブタジエンであるSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、ポリイソプレンであるSIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、そして水素添加型のポリオレフィンであるSEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体)、やSEPS(スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体)等を使用することができる。このうち、エラストマー相のガラス転移温度(Tg)が−85〜−50℃のものであるのが好ましい。このうち、耐熱性、対候性に優れることから、SEBSとSEPSが好ましい。ベースポリマーであるポリカーボネートとの親和性が高く、剥離しにくいことから、SEBSがより好ましい。
スチレン系エラストマーは、温度230℃、荷重21.18N(2.16kg)におけるMFRが1〜150g/10分、好ましくは3〜11g/10分、更に好ましくは4〜9g/10分であるのが好ましい。上記範囲内とすることにより光沢度の低減効果が十分に得られる。
本発明の組成物において、スチレン系エラストマーは、(A)成分の熱可塑性芳香族ポリカーボネート100質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部の量で含まれる。スチレン系エラストマーの量を1質量部以上とすることにより、光沢度の低減効果が十分に得られ、引張り強度などのフィルムまたはシートとしての特性も良好となる。スチレン系エラストマーの量を10質量部以下とすることにより、樹脂が柔らかくなりすぎて引張り強度が低下することを防止することができる。
【0017】
成分(D):導電性カーボンブラック
導電性カーボンブラックは、本発明の組成物から得られるシート状材料等の成型体の表面抵抗率を低下(導電性能を向上)させる。
本発明において使用する導電性カーボンブラックは、n−ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100〜400ml/100g、好ましくは170〜210cm3/100gのカーボンブラックである。このDBP吸油量が400ml/100gより大きい場合、カーボンの分散状態が悪化し、樹脂組成物を成形した際に凝集塊が多量に存在することとなり、また、DBP吸油量が100ml/100g未満の場合、導電性付与効果に劣ることとなる。なお、DBP吸油量は、ASTM D2414に従い、DBPアブソープトメーターを使用して測定することができる。
このような特性を有するカーボンブラックとしては、導電性カーボンブラックとして市販されているもの、例えば、ライオン社製ケッチェンブラックEC、キャボット社製バルカンXC-72、電気化学工業社デンカブラックなどが挙げられ、その他、ナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生する上記特性のカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理した上記特性のカーボンブラックなどが挙げられる。
(D)成分である導電性カーボンブラックの配合量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対し、5〜20質量部、好ましくは10〜20質量部である。導電性カーボンブラックの配合量が5質量部未満であると、成形体に導電性を付与する効果が低下し、導電性カーボンブラックの配合量が20質量部を超えると、凝集物の量が増加し、導電性カーボンブラックを樹脂中に均一に分散することが困難になる。
【0018】
本発明の組成物は、その効果を損なわない範囲で所望の物性を付与できる公知の添加物、例えば、酸化防止剤及び金属封鎖剤等の安定剤、潤滑剤、滑剤、核剤、染・顔料、離型剤、他の熱可塑性樹脂、強化剤、充填剤などの添加剤を配合することができる。
製造時の熱酸化劣化の防止とフィルムまたはシートの成型時の加工安定性のために、酸化防止剤を含有するのが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤があげられる。本発明の樹脂組成物中で、0.01〜0.1質量%の量で含まれるのが好ましい。特に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤をそれぞれ0.03〜0.05質量%するのが好ましい。
カーボンブラック中のアルカリ金属分、あるいはベース樹脂中に含まれる微量の触媒による芳香族ポリカーボネートの分解促進防止や芳香族ポリカーボネートと熱可塑性ポリアルキレンフタレートとのエステル交換防止のために、金属封鎖剤を含有するのが、特に上記酸化防止剤と併有するのが好ましい。金属封鎖剤としては、ヒドラジン系金属封鎖剤があげられる。本発明の組成物中、0.03〜0.1重量%、好ましくは0.04〜0.06重量%の量で含まれるのが好ましい。
【0019】
本発明の導電性樹脂組成物の調製法としては、例えば、公知の種々の方法で可能であるが、少なくとも前記の(A)〜(D)成分が全て共存し、かつ(A)〜(C)成分が加熱溶融された状態で、30秒以上混練することにより行われる。この際、上記の条件を満たすものであれば、上記(A)成分〜(D)成分の配合順序は特に限定されない。具体的には、(A)成分〜(D)成分を予めタンブラー又はヘンシェルミキサーのような混合機で均一に混合した後、1軸又は2軸の押出機に供給して溶融混練する方法、または、上記(A)〜(C)成分を予め混合し、1軸又は2軸押出機に供給して溶融混練した後、(D)成分のカーボンブラックをサイドフィーダから供給する方法(例えば、特開平7−53767号公報開示の方法)などにより、ペレット化した後、成形に供してもよく、また、直接成形してもよい。また、混練処理温度は、熱可塑性樹脂成分が溶融する温度より5〜50℃高い温度であり、特に好ましくは、樹脂の融点より10〜30℃高い温度であることが望ましい。処理温度が高温すぎると、樹脂の分解や異常反応を誘発するため好ましくない。更に、溶融混練処理時間は、30秒〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分である。
【0020】
本発明の導電性樹脂組成物は、上述の調製方法等により容易に得ることができるものである。得られた導電性樹脂組成物は、直接あるいはペレットを経由して、射出成形、押出成形、トランスファー成形、インフレーション成形など公知の成形方法で成形することによって、フィルム、シート、テープまたは成形体等の各種導電体を製造することができる。
特に本発明の樹脂組成物は導電性のフィルムやシートに好適に使用できる。本発明の導電性樹脂組成物から製造されるシートの肉厚は通常0.1〜3.0mmである。肉厚が薄いとシートを成形して得られる包装容器としての強度が不足するおそれがある。厚いと成形が困難となるおそれがある。フィルムまたはシートを製造する方法には特に限定されない。
フィルムまたはシートは電子部品の包装容器に好適に使用することができる。電子部品包装容器としては、真空成形トレー、キャリアテープ等がある。本発明の導電性樹脂組成物から製造されるフイルムまたはシートはキャリアテープに特に好適に用いることができる。電子部品としては特に限定されない。例えば、IC、LED(発光ダイオード)等がある。
【実施例】
【0021】
実施例及び比較例の導電性樹脂組成物を製造するのに用いた成分を〔表1〕〜〔表5〕に示す。
【0022】
【表1】





【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
2.コンパウンドの調製
(A)芳香族ポリカーボネート、(B)芳香族ポリエステル、(C)スチレン系エラストマー、及び(E)安定剤を所定量配合し、予めタンブラー混合機で均一に混合し、混合物を得た。該混合物をシリンダー及びダイ温度240〜260℃とした同方向2軸押出機(NR−II57mm、ナカタニ機械(株)製)の元ホッパーから定量フィーダーにて供給した。溶融ゾーンを通過して完全に溶融したところで第2投入口から定量フィーダーにより押出機に(C)導電性カーボンブラックをサイドフィードして混練し、つづいて押し出されたストランドを水冷して冷却後、ペレタイザーを用いて円柱状ペレット(直径2mm、長さ2〜4mm)とした。なお、未分散のカーボンブラック、およびスチレン系エラストマー中に存在するゲル状物質を除去するため押し出し機ダイヘッド内にステンレス製の網を取り付けた。
【0026】
3.測定用試料の作成
同方向二軸押し出し機にて調製したコンパウンドのペレットを、雰囲気120℃の温風循環式乾燥機内で3時間乾燥を行い、径15mmφの単軸インフレーション成形機を用い、シリンダー温度C1〜C3:280℃、ダイ:280℃の条件にて厚さ100μm、及び150μmのフィルムを成形した。この厚さ100μmのフィルムを用いてフィルム表面の光沢度と表面抵抗率、耐久性(M・I・T試験)を、また厚さ150μmのフィルムを用いて引張り強さ、引張り破壊歪みを測定した。得られた結果を〔表6〕及び〔表7〕に示す。
【0027】
4.測定法
1)光沢度
厚さ100μmのフィルムを厚紙に貼り付けてJIS Z8741−1997に準拠し、方法3(入射角60度)により1次標準面(鏡面光沢度 90.5の黒色ガラス標準板)を基準として、SMカラーコンピューター デジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製)にて測定した。光沢度の標記は前記基準に対する比率(%)であり、この値が低いほど、光沢度が低く艶消しであることを示す。
2)表面抵抗率
厚さ100μmのフィルムをASTM D257に準拠し、抵抗測定器(デジタルマルチメーター7555、横河電機製)により測定した。この値が低いほど導電性能が高いことを示す。
3)引張り試験
厚さ150μmのフィルムを幅15mm、長さ150mmに切り出し ISO 527に準拠してテンシロン万能試験機(エー・アンドーデイ製)により、ロードセル0.1N、試験速度 50mm/minの条件で試験を行い、得られたS−Sカーブの最大点から引張り強さを、フィルムが切断した時点の歪(伸び)から引張り破壊歪を算出した。
4)M・I・T試験
厚さ100μmのフィルムをM・I・T試験機(東洋精機製)を用い、ISO−5626に準拠し、折り曲げ角度270度、折り曲げ速度175回/min、荷重2.45N、先端半径0.38mmの条件にて測定した。この値が大きいほど耐久性に優れることを示す。
5)フィルムの表面粗さRa値の測定方法
フィルムの表面の算術平均表面粗さRa値は、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を用いて測定した。具体的には、(株)島津製作所製のSPM−9500J3を用い、厚さ100μm×5mm×5mmの試料を試料台に両面粘着テープで接着し、位相検出モード(タッピングモード)で、フィルムの表面を30μm角の範囲で計測走査を行い、得られる表面のプロファイル曲線よりJIS・B0601の算術平均粗さRa値を求めた。
なお、測定条件の詳細は以下のとおりである。
探針子:シリコン
測定モード:位相検出モード(タッピングモード)
測定領域:30×30μm
スキャンスピード:1回/秒
解像度:256×256(走査線本数)
検出方式:光てこ方式







【0028】
【表4】

【0029】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有し、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が1〜10質量部、(C)成分が1〜10質量部であり、かつ、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計100質量部に対し、(D)成分が5〜20質量部であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
(A)メルトフローレート(MFR)が2〜50g/10分の熱可塑性芳香族ポリカーボネート
(B)熱可塑性ポリアルキレンフタレート
(C)スチレン比が10〜20のスチレン系エラストマー
(D)n−ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100〜400ml/100gである導電性カーボンブラック
【請求項2】
(C)スチレン系エラストマーが、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体又はスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体である請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の導電性樹脂組成物を含有する電子部品包装容器用導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−184482(P2008−184482A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16830(P2007−16830)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】