説明

スチレン誘導体の製造方法

【課題】金属触媒や生体触媒などの特別な触媒を用いることなく、簡便に桂皮酸誘導体を脱炭酸してスチレン誘導体を高収率で製造することができるスチレン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】桂皮酸誘導体を脱炭酸し、スチレン誘導体を製造するスチレン誘導体の製造方法において、桂皮酸誘導体に超臨界流体及び/又は亜臨界流体を作用させて脱炭素することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性プラスチックなどの高分子材料、農薬、医薬品などのファインケミカル原料となるスチレン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン誘導体は、高分子材料、農薬、医薬品などの原料として幅広く利用されているが、中でも、ヒドロキシスチレン誘導体は機能性材料の原料として有用であり、特に、4-ヒドロキシ-3-メトシキスチレンは、生分解性ポリマーの原料(非特許文献1参照)や作物発芽抑制剤(特許文献1参照)として有用である。
【0003】
4−ヒドロキシスチレン誘導体としての4-ヒドロキシスチレンは、たとえば、4-ヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸から4-ヒドロキシ桂皮酸を得た後、キノリン中で銅触媒を添加し、225℃で加熱する。その後、減圧蒸留を行い、不純物のヒドロキノン、重合物を除去することにより得られる(非特許文献2参照)。
しかし、この製造方法では4-ヒドロキシスチレンの収率が41%と低く、生産性に問題がある。
【0004】
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)から4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレンを得るSovishらの方法も提案されている(非特許文献3参照)が、この方法の場合も収率は62%程度である。
【0005】
一方、桂皮酸およびその誘導体の多くは植物中に存在しており、香気成分の前駆体として重要な役割を持っている。これまで、桂皮酸誘導体から加熱による脱カルボキシル化については、食品中の加熱処理による香気成分の化学変化について報告(非特許文献4参照)がなされている。この報告では、アルコールを含む酸性水溶液中(pH1-6)において100℃で加熱することにより桂皮酸誘導体の脱カルボキシル化の反応が進行することが示されているが、カフェー酸、イソフェルラ酸、フェルラ酸などの比較的反応の速いもので、10時間以上の時間が必要である。さらに、生成物の詳細については明らかではない。
また、桂皮酸誘導体の多くが、酵素により脱炭酸し対応するスチレン誘導体を生成することが多くの文献により報告されている(例えば、非特許文献5〜8参照)。さらに、米糠から得られるフェルラ酸を原料に、植物細胞中で4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレンを微生物により製造する手法も報告されている(非特許文献9参照)。
【0006】
しかし、これら微生物や酵素など生体触媒を利用する製造方法の場合、生成物阻害などによる効率の低下や微生物・酵素の固定化と再利用などの面で課題が多く、工業生産においては、これらの課題が高コスト化を招くという問題点もある。
近年、化学物質の製造において、原料から製造工程、製品に至るまで環境への負荷を低減する、いわゆる環境に優しい化学(グリーンケミストリー)が求められている。そこで、グリーンケミストリーを達成すべく、マイクロ波エネルギーの利用によるスチレン誘導体の製造方法が既に提案されている(特許文献2参照)。しかし、この方法では、触媒として塩基を用いる必要があり、また、用いた触媒を反応後に除く操作が必要であるという問題点がある。
【0007】
【非特許文献1】T. Pyysalo, H. Torkkeli, E. Honkanen, Lebensm.-Wiss. u. -Technol., 10,145(1977)
【非特許文献2】R. C. Sovish, J. Org. Chem., 24, 1345 (1957)
【非特許文献3】H. Hatakeyama, E. Hayashi, T. Haraguchi, PolymeR18, 759(1977)
【非特許文献4】T. Pyysalo, H. Torkkeli, E. Honkanen, Lebensm.-Wiss. u. -Technol., 10,145(1977)
【非特許文献5】M. Takemoto, K. Achiwa, Chem. Pharm. Bull., 49, 639(2001)
【非特許文献6】van Beek S, Priest FG., Appl. Environ. Microbiol., 66, 5322(2000)
【非特許文献7】Karmakar B, Vohra RM, Nandanwar H, Sharma P, Gupta KG, Sobti RC., J. Biotechnol., 80, 195(2000)
【非特許文献8】Degrassi G, Polverino De Laureto P, Bruschi CV., Appl. Environ. Microbiol., 61, 326(1995)
【非特許文献9】米光ら、第6回高専シンポジウム、講演要旨集、p97(2001)
【特許文献1】特開2002-255706号公報
【特許文献2】特開2004-231524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑みて、本発明の目的は、金属触媒や生体触媒などの特別な触媒を用いることなく、簡便に桂皮酸誘導体を脱炭酸してスチレン誘導体を高収率で製造することができるスチレン誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のスチレン誘導体の製造方法は、
下記の一般式(1)
【化1】

(式(1)中、X,Yは水素またはカルボキシル基であって、X,Yのいずれか一方が水素のとき、他方がカルボキシル基、置換基R1、R2は、水素、ヒドロキシル基およびメトキシ基のいずれかである)で示される桂皮酸誘導体を脱炭酸し、一般式(2)
【化2】

(式(2)中、置換基R1、R2は、水素、ヒドロキシル基およびメトキシ基のいずれかである)で示されるスチレン誘導体を製造するスチレン誘導体の製造方法において、前記桂皮酸誘導体に超臨界流体及び/又は亜臨界流体を作用させて脱炭素することを特徴としている。
【0010】
本発明において、超臨界流体とは、以下のような流体を言う。すなわち、物質には、固有の気体、液体、固体の3態があり、さらに、臨界温度および臨界圧力以上になると、圧力をかけても凝縮(液化)しない流体相がある。この状態を超臨界状態といい、超臨界状態にある物質を超臨界流体という。超臨界流体の密度はその物質の液体に近く、超臨界流体の粘度はその物質の気体に近く、熱伝導率と拡散係数は、気体と液体の中間的性質を示す。すなわち、超臨界流体は「液体ではない溶媒」であり、超臨界流体が高密度、低粘性および高拡散性であるために反応が進み易くなるものと思われるが、機構は明らかではない。
【0011】
一方、亜臨界流体とは、物質ごとに決まっている超臨界状態よりも、温度、圧力の両方、又はいずれか一方が低い状態で、気体および液体とは異なる性質を備えた流体であって、例えば、温度が臨界点温度より0〜30℃、圧力が臨界点圧力より0〜5MPa低い状態の流体を言う。
超臨界及び/又は亜臨界状態の流体としては、有機溶媒を超臨界及び/又は亜臨界状態としたものが好ましい。
【0012】
また、超臨界及び/又は亜臨界状態の流体となる溶媒としては、特に限定されないが、たとえば、アルコール類または水を混和可能な有機溶媒が好ましい。
上記有機溶媒としては、桂皮酸誘導体を溶解することができるものであれば、特に限定されないが、たとえば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、n-へキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノールおよびn-ドデカノールが挙げられ、これらのうちメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノールおよびn-へキサノールが工業的に有用であり好ましい。
【0013】
また、アセトン、アセトニトリル等の非アルコール性で水またはアルコールを混和可能な有機溶媒用も好適に用いることが出来る。なお、混和可能とは、アルコールまたは水が有機溶媒に対して相溶性を有するだけでなく、均一に混ざったる状態にできるものも含む。
さらに、上記有機溶媒に水を含ませることも可能であるが、その量は、有機溶媒に対して、0.01から50%の範囲が好ましく、0.1から10%の範囲がより好ましい。
【0014】
因みに、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリルおよび水の臨界温度および臨界圧力は、以下の表1のとおりである。
【0015】
【表1】

【0016】
上記一般式(I)で示される桂皮酸誘導体は、その二重結合における立体配置としてトランス体とシス体とが存在し、いずれの異性体に限定されるものではないが、その安定性から天然に得られるものは以下の一般式(3)に示すトランス体が主である。
【0017】
【化3】

【0018】
また、上記一般式(1)で示される桂皮酸誘導体としては、具体的には、例えば、4-ヒドロキシ桂皮酸(R1=R2=H)、3-メトキシ-4-ヒドロキシ桂皮酸(フェルラ酸)(R1=H、R2=OMe、)、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸(カフェー酸)(R1=H、R2=OH)などが挙げられ、それぞれ、4-ヒドロキシスチレン、3-メトキシ-4-ヒドロキシスチレン、3、4-ジヒドロキシスチレンを高収率で得ることが可能である。
【0019】
本発明の製造方法において反応は、回分式および流通式いずれの方式でも行うことができる。反応温度は生成物の分解等が進行しないように450℃以下であることが好ましい。反応装置の耐圧を増すためにコストがかかるので、反応圧力は工業的実施が容易な25MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法を連続的製造方法に適用する場合においては、桂皮酸誘導体を溶解した溶液の反応器内での平均滞留時間は、1分〜4時間の範囲であることが好ましく、1分〜1時間の範囲がより好ましい。平均滞留時間が0.5分未満では転化率が低い場合があり好ましくなく、4時間を超えると経済的でない場合があり好ましくない。
【0020】
回分式製造方法においては、本発明の製造方法における反応時間は、1分〜48時間の範囲が好ましく、さらに好ましくは1分〜12時間の範囲である。
反応終了後は、用いた有機溶媒を除くことでスチレン誘導体が得られるが、水洗など一般的な手法により精製すれば95%以上の純度でスチレン誘導体を得ることができる。また、反応終了後直ちに蒸留により精製することも可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるスチレン誘導体の製造方法は、以上のように構成されているので、桂皮酸誘導体からスチレン誘導体を、無触媒で収率良く合成することができる。特に、フェルラ酸については、天然物として米糠から大量に得られる桂皮酸誘導体であり、これを原料として合成されるスチレン誘導体は、生分解性プラスチックをはじめとする高分子材料、農薬、医薬品などのファインケミカル原料となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の詳細について実施例によって具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において反応後に残存した原料および生成物は、エレクトロスプレーイオン化-飛行時間型質量分析装置(ESI-TOF/MS:アプライドバイオシステムズ製Mariner)および超伝導核磁気共鳴装置(400MHz,バリアン製 Unity plus-400)を用いて分析した。
【0023】
(実施例1)
桂皮酸誘導体としての4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)0.2gを溶媒としてのメタノール10mlに溶解し、反応管(SUS316、内容量10ml)に仕込んだ。この反応管をオイルバスにて250℃まで昇温するとともに、圧力を背圧制御装置により12MPaに保った。この状態を5時間維持することで原料が完全に消失した。冷却した後に溶媒を除き、残渣をカラムクロマトグラフィーにより分離精製した。その結果、生成物はスチレン誘導体として(収率50%)、フェルラ酸メチルエステル(収率34%)、スチレン誘導体へのメタノール付加物(収率16%)であった。これらの誘導体のスペクトルデータは次の通りである。
【0024】
・4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレン(スチレン誘導体)
oil; 1H NMR (CDCl3) (=3.90 (s, 3H, OCH3), 5.11 (dd, 1H, J=0.9, 10.8 Hz, =CH2), 5.73 (dd, 1H, J=0.9, 17.6 Hz, =CH), 5.63 (s, 1H, OH), 6.62 (dd, 1H, J=10.8, 17.6 Hz, =CH2), 6.85-6.93 (m, 3H, ArH); 13C NMR (CDCl3) (=55.8, 108.0, 111.4, 114.3, 120.6, 130.2, 136.58, 136.6, 145.6, 146.5; MS (ESI-TOF) calcd for [C9H11O2]+ 151.076, found 151.058 [M + H]+.
・フェルラ酸メチルエステル
oil; 1H NMR (DMSO-d6) (=3.71 (s, 3H, OCH3), 3.83 (s, 3H, OCH3), 6.49 (d, 1H, J=16.0 Hz, =CH), 6.82 (d, 1H, J=8.0 Hz, ArH), 7.13 (dd, 1H, J=8.0, 1,6 Hz, ArH), 7.32 (d, 1H, J=1.6 Hz, ArH), 7.57 (d, 1H, J=16.0 Hz, =CH), 9.63 (s, 1H, OH); 13C NMR (DMSO-d6) (=51.4, 55.9, 111.4, 114.4, 115.7, 123.3, 125.8, 145.3, 148.1, 149.5, 167.3.
・へのメタノール付加物
oil; 1H NMR (CDCl3) (=1.42 (d, 3H, J=6.4 Hz, CH3), 3.21 (s, 3H, CHOCH3 ), 3.90 (s, 3H, OCH3), 4.20 (q, 1H, J=12.8, 6.4 Hz, CH), 5.62 (s, 1H, OH), 6.76-6.88 (m, 3H, ArH); 13C NMR (CDCl3) (=23.8, 55.8, 56.2, 79.4, 108.0, 114.0, 119.5, 135.4, 145.0, 136.6, 146.7.
【0025】
(実施例2)
溶媒として10%の水を含むメタノールを使用する以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、3時間で原料が消失し、スチレン誘導体(収率56%)、フェルラ酸メチルエステル(収率10%)、スチレン誘導体へのメタノール付加物(収率34%)をそれぞれ与えた。
【0026】
(実施例3〜8)
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)0.2gを表2に示した各種溶媒10mlにそれぞれ溶解し、以下実施例1と同様にして表2に示す条件で行い、表2に示す結果を得た。
なお、表2中、95%アセトン、95%アセトニトリルは、残部が水である。
【0027】
【表2】

【0028】
上記表2から、超臨界状態の有機溶媒中でフェルラ酸を処理することで、4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレンが高い収率で得られることがわかる。また、水を加えることで反応が促進されることもわかる。なお、実施例7、8に示すように、アセトニトリルの場合、水を加えることによって反応が促進されるものの、収率が水を加えない場合より低下しているが、その原因は、アセトニトリルが水の存在により高温高圧で加水分解するためであると考えられる。
【0029】
(比較例1)
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)0.2gを溶媒としての超臨界状態を示さないエチレングリコール10mlに溶解し、反応管(SUS316、内容量10ml)に仕込んだ。この反応管をオイルバスにて250℃まで昇温し3時間反応させた。この間、圧力は背圧制御装置により12MPaに保った。冷却した後、内容物を分析したところ、原料はほぼ消失していたが、生成物は複雑な混合物であった。質量分析から4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレンの生成は認められたが、痕跡程度であり主成分の同定は不可能であった。
【0030】
(実施例9,10、比較例2,3)
各種桂皮酸誘導体0.2gをメタノール10mlに溶解し、実施例1と同様の方法で検討を行った。その結果を表3にまとめて示した。
なお、得られた主な化合物のスペクトルデータを次に示す。
【0031】
・4-ヒドロキシスチレン(スチレン誘導体)
solid; Mp=70-74°C; 1H NMR (DMSO-d6) (=5.05 (dd, 1H, J=1.0, 10.9 Hz, =CH2), 5.57 (dd, 1H, J=1.0, 17.7 Hz, =CH), 6.59 (dd, 1H, J=10.9, 17.7 Hz, =CH2), 6.72 (d, 2H, J=8.6 Hz, ArH), 7.27 (d, 2H, J=8.6 Hz, ArH), 9.49 (brs, 1H, OH); 13C NMR (DMSO-d6) (=110.8, 115.5, 127.6, 128.4, 136.6, 157.6: MS (ESI-TOF) calcd for [C8H9O]+ 121.065, found 121.062 [M + H]+.
・3-ヒドロシキ桂皮酸メチル(エステル誘導体)
oil; 1H NMR (DMSO-d6) (= 3.72 (s, 3H, CH3), 6.52 (d, 1H, J=16 Hz, =CH), 6.84 (dd, 1H, J=1.2, 8.4 Hz, ArH), 7.04 (d, 1H, J=2.0 Hz, ArH), 7.10-7.24 (m, 2H, ArH), 7.57 (d, 1H, J=16 Hz, =CH), 9.64 (brs, 1H, OH); 13C NMR (DMSO-d6) (=51.68, 114.9, 117.8, 117.9, 119.5, 130.2, 135.4, 145.0, 157.9, 166.9: MS (ESI-TOF) calcd for [C10H10O3]+ 179.065, found 179.062 [M + H]+.
・3,4-ジヒドロキシスチレン(スチレン誘導体)
oil; 1H NMR (DMSO-d6) (=5.00 (dd, 1H, J=1.2, 10.8 Hz, =CH2), 5.49 (dd, 1H, J=1.2, 17.6 Hz, =CH), 6.53 (dd, 1H, J=10.8, 17.6 Hz, =CH2), 6.70 (m, 2H, ArH), 6.85 (d, 1H, J=1.6 Hz, ArH), 8.90 (brs, 2H, OH); 13C NMR (DMSO-d6) (=110.6, 113.1, 115.7, 118.3, 129.0, 136.9, 145.5, 145.8: MS (ESI-TOF) calcd for [C8H9O2]+ 137.05, found 137.06 [M + H]+.
【0032】
【表3】

【0033】
表3から、比較例2のように、4位にヒドロキシル基を持たない桂皮酸誘導体の場合、スチレン誘導体が生成せず、ほぼ定量的にエステル誘導体を生成するものがあることが判る。
【0034】
(実施例11〜15)
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)0.2gをメタノール10mlに溶解し各種の温度/圧力条件で反応を行った。その、結果を表4に示した。
【0035】
【表4】

【0036】
表4から、反応温度の上昇により原料の消失時間が大幅に短縮されることが分かる。
【0037】
(実施例16)
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)の0.1Mメタノール溶液を調整し、ステンレス製細管(内径0.25mm、長さ6m)に連続的に供給した。この時、反応器内は350℃の12MPaに調整し、細管内に平均滞留時間が5分となるように定量ポンプで送液し、反応混合物は圧力制御弁の排出口から送液量に応じ排出されるようにした。反応混合物をヘキサンで抽出し、ヘキサン層を濃縮することで純度70%以上のスチレン誘導体が得られた。
【0038】
(実施例17)
4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸(フェルラ酸)を5%の水分を含むアセトン溶液に溶解し、その濃度を0.1Mに調整した。以下実施例6と同様に行うことで、純度90%以上のスチレン誘導体が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)
【化1】

(式(1)中、X,Yは水素またはカルボキシル基であって、X,Yのいずれか一方が水素のとき、他方がカルボキシル基、置換基R1、R2は、水素、ヒドロキシル基およびメトキシ基のいずれかである)で示される桂皮酸誘導体を脱炭酸し、一般式(2)
【化2】

(式(2)中、置換基R1、R2は、水素、ヒドロキシル基およびメトキシ基のいずれかである)で示されるスチレン誘導体を製造するスチレン誘導体の製造方法において、前記桂皮酸誘導体に超臨界流体及び/又は亜臨界流体を作用させて脱炭素することを特徴とするスチレン誘導体の製造方法。
【請求項2】
有機溶媒を超臨界及び/又は亜臨界状態の流体とする請求項1に記載のスチレン誘導体の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒が、アルコール類または水を混和可能な有機溶媒である請求項2に記載のスチレン誘導体の製造方法。


【公開番号】特開2006−232677(P2006−232677A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45273(P2005−45273)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【Fターム(参考)】