スチールコードの製造方法及びスチールコード
【課題】ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さをバランス良く兼ね備え、耐疲労性に優れたスチールコードの製造方法及びスチールコードを提供する。
【解決手段】心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤを、バンチャー撚り線機により単一の心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わせ、心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤをそれぞれ所定の型付率に型付けし、型付けしたn本の外層ワイヤを、バンチャー撚り線機により内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに内層ワイヤの周囲に撚り合わせ、(1+m+n)3層撚り構造のスチールコードを得る。
【解決手段】心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤを、バンチャー撚り線機により単一の心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わせ、心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤをそれぞれ所定の型付率に型付けし、型付けしたn本の外層ワイヤを、バンチャー撚り線機により内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに内層ワイヤの周囲に撚り合わせ、(1+m+n)3層撚り構造のスチールコードを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タイヤの補強に用いられるスチールコードの製造方法及びスチールコードに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールコードをゴムシート中に埋め込み加工した車両用タイヤでは、相互に隣接するワイヤが互いに擬触して摩耗する所謂フレッティングを生じると共に、その表面部分のゴム部が損傷されると外部からスチールコードの間隙に水が浸入して錆が発生し、この錆によってゴムが剥離し易くなり、タイヤなどの耐疲労性が低下するなどの問題を生じる。特にタイヤのカーカスコードは、引張りと曲げが組み合わされた衝撃的な荷重が繰り返し負荷されるために、フレッティング摩耗や疲労破断を生じやすい。このため、カーカスコードを構成するワイヤの相互間隙にゴムを浸透させ、水の浸入を防ぐと同時にワイヤ相互間における直接の接触を回避するようにしてその耐久性を向上させている。
【0003】
特許文献1は、フレッティング摩耗によるワイヤ断面積の減少に起因するコード強度の低下を各ワイヤで均一にし、コードの耐久性を向上させた図3に示す(3+9+15)3層撚り構造の多層スチールコードを提案している。しかし、特許文献1のスチールコードにおいては、外層ワイヤ5Cと内層ワイヤ3Cとの間、内層ワイヤ3Cと心ワイヤ2Cとの間にそれぞれフレッティング摩耗を生じる。特に、3本の心ワイヤ2Cで構成される心部の周囲へのゴムの浸透が不足し、錆やフレッティング摩耗により心ワイヤ2Cの耐疲労性が低下して断線を生じやすい。
【0004】
特許文献2は、大型車両用タイヤのフレッティング摩耗を抑制し、耐疲労性を向上させることを目的として、外側層を不飽和の状態にしてゴム浸透性を向上させた(1+6+11)3層撚り構造の多層スチールコードを提案している。
【0005】
しかし、特許文献2のスチールコードは、外側層を不飽和の状態に撚り合せるため、形状保持性の点に問題があり、形崩れを起こしやすく、形崩れを起こして変形した部分に局部応力集中を生じて疲労性の低下を招く。
【0006】
また、特許文献2のスチールコードでは、ゴム浸透度の改善のためにワイヤの相互間隙を拡張しすぎると、形状保持性が低下して外層ワイヤにまとまりがなくなり、外層ワイヤが整然と撚り合わせられず、ワイヤ相互間隙に粗密を生じる所謂バラケが発生したり、内層が外層ワイヤの間から飛び出したりする。
【0007】
さらに、特許文献2のスチールコードでは、外側層を不飽和とするために、外層ワイヤの本数を減らすばかりでなく、側ワイヤの径に対する心ワイヤの径の比率(異径比)をかなり大きくしているので、心ワイヤが他のワイヤよりも早期に疲労破断し、コードとしての疲労性を著しく低下させている。
【特許文献1】特開平7−292585号公報
【特許文献2】特表2004−523406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、低コスト化が可能な撚り線機を用いて、ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さをバランス良く兼ね備え、耐疲労性に優れたスチールコードを製造することができるスチールコードの製造方法及びスチールコードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスチールコードの製造方法は、(i)心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤを、バンチャー撚り線機により単一の前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わせる工程と、(ii)前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤをそれぞれ所定の型付率に型付けする工程と、(iii)前記型付けしたn本の外層ワイヤを、バンチャー撚り線機により前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ前記内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに前記内層ワイヤの周囲に撚り合わせ、(1+m+n)3層撚り構造のスチールコードを得る工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るスチールコードは、単一の心ワイヤと、前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤと、所定の型付率に型付けされ、前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで前記内層ワイヤの周囲に撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤと、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、同軸内層と同軸外層を同一方向に撚り合わせることにより、層間のワイヤ同士が適度な接触を保ち、層間ワイヤの相互接触圧力が低下するため、フレッティング摩耗が軽減され、耐疲労性の低下が抑制される。
【0012】
心ワイヤ、内層ワイヤおよび外層ワイヤの径がそれぞれ0.15mm以上0.25mm以下であることが好ましい。ワイヤ径が0.15mm未満になると、コードが所望の強度レベルを満たさなくなり、強度不足を生じる。一方、ワイヤ径が0.25mmを超えると、スチールコードの曲げ剛性が増加する。
【0013】
内層ワイヤの径に対する心ワイヤの径の比率および外層ワイヤの径に対する心ワイヤの径の比率としての異径比dc/dsが1.10以上1.30以下の範囲とすることが好ましい。異径比dc/dsが1.10未満になると、内層ワイヤの相互間隙(不飽和の程度)および外層ワイヤの相互間隙(不飽和の程度)が不足して、ゴム浸透性が低下する。一方、異径比dc/dsが1.30を超えると、他のワイヤよりも早期に疲労破断し、コードとしての疲労性を著しく低下させる。
【0014】
本発明では、内層ワイヤの本数mを6以上の整数、好ましくは6とし、外層ワイヤの本数nを11以上の整数、好ましくは11とすることができる。これらm,nの数は、上記の異径比dc/dsと関連して不飽和の程度(外層ワイヤの相互間隙と内層ワイヤの相互間隙)を決定するパラメータである。
【0015】
上記工程(ii)から(iii)までの間において、外層の型付率を85%以上100%以下の範囲に調整することが好ましい。より好ましくは外層の型付率を87%以上94%以下とするのが望ましい。外層の型付率が85%を下回ると、形状保持性が低下して形崩れを生じやすくなる(バラケの発生)。一方、外層の型付率が100%を超えると、外層ワイヤによる心ワイヤの拘束力が不足して、タイヤ走行時に心ワイヤがゴム層を突き破って飛び出すおそれがある。外層の型付率は、心ワイヤの抜け出し難さを考慮に入れるが、心ワイヤの抜け出し難さばかりでなくそれ以外の他の特性(形状保持性、耐疲労性)とのバランスも考慮して決定する必要がある。
【0016】
なお、心ワイヤの抜け出し難さは主に外層の型付率に影響を受けるが、内層の型付率からも影響を受ける。本発明では内層ワイヤを撚る前に型付けする所謂プレフォームは行わないが、内層ワイヤがバンチャー撚り線機のなかに入ってオーバーツイスター及びキャプスタンの矯正ロール(ならしロール)により非弾性的に矯正され、結果として型付けされる所謂ポストフォームが内層に施される。このようにして型付けされた内層の型付率は、100%以上110%以下の範囲とすることが望ましい。この範囲が、形崩れを生じることなく、バンチャー撚り線機により適正な形状に撚り合わせすることができる型付率になるからである。
【0017】
本明細書中において、「型付け」とは、撚り合わされるべきワイヤが螺旋状に非弾性変形されることをいう。
【0018】
また、「型付率」とは、スチールコードを切断して構成ワイヤをばらしたときの径を元のスチールコードの径で割って百分率で表わした指標をいう。
【0019】
心ワイヤ、内層ワイヤ、外層ワイヤの引張強さを2800MPa以上3400MPa以下にすることが好ましい。これらの構成ワイヤには例えばJISG3502に規定されたピアノ線材(C含有量0.70〜0.82%)を用いることが望ましい。引張強さが2800MPa未満であると、強度不足を生じる。一方、引張強さが3400MPaを超えると、高張力化に伴い靭性が低下して断線を生じやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明方法は、低コスト化が可能なバンチャー撚り線機を使用することができ、ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さ、耐疲労性をバランス良く兼ね備えたスチールコードを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0022】
先ず、図4と図5を参照して本発明のスチールコードの製造方法に用いられる装置の概要について説明する。
【0023】
図4に示す製造装置10は内層ワイヤ3を心ワイヤ2の周囲に撚り合わせる内層の撚り合わせに用いられ、図5に示す製造装置20は外層ワイヤ5を中間ストランド4の周囲に撚り合わせる外層の撚り合わせに用いられる。
【0024】
製造装置10は、パスラインの上流側から順に7個の送給リール12,13、ボイス14、およびバンチャー撚り線機11を備えている。中央の送給リール12は、撚り線機11の(a)側入口の前に1個が配置され、心ワイヤ2を送給する。周辺の送給リール13は、撚り線機11の(a)側入口の前に6個が配置され、各々から内層ワイヤ3を1本ずつ引き出して送給するようになっている。ボイス14は、主パスライン上を通過する1本の心ワイヤ2とその周囲の6本の内層ワイヤ3とを束ねて位置合せし、これらが互いに寄り添うようにして主パスラインに沿ってバンチャー撚り線機11に円滑に入っていくようにする案内部材としての役割をもつ孔を有している。バンチャー撚り線機11は、クレードルタイプの筐体内に、左右一対のガイドローラ15a,15b、オーバーツイスター16、引き取りキャプスタン17、矯正ロール17a、巻き取りトラバース18および巻き取りボビン19を内蔵している。なお、矯正ロール17aはキャプスタン17のなかに組み込まれている。
【0025】
内層ワイヤ3には、ボイス14と(a)側のガイドローラ15aとの間で1回目の撚りが入り、(e)側のガイドローラ15bを通過した後に2回目の撚りが入って所定のピッチになる。内層ワイヤ3は、(a)側の入口からボイス14通過後に心ワイヤ2に巻き付いた状態で撚り線機11内に入り、ガイドローラ15bの部分で2回目の撚りが入り、図1に示す1+6構造の中間ストランド4が形成される。中間ストランド4は、オーバーツイスター16を通過し、引き取りキャプスタン17で引き取られながら、矯正ロール17aを通過して型付け(ポストフォーム)がなされて形状を整えられ、巻き取りトラバース18を介して巻き取りボビン19に巻き取られる。
【0026】
製造装置20は、パスラインの上流側から順に12個の送給リール19,22、型付装置23、ボイス24、およびバンチャー撚り線機21を備えている。中央の送給リール19は、上記装置10の巻き取りボビンと同じものであり、撚り線機21の(a)側入口の前に1個が配置され、前工程で作製した中間ストランド4を送給する。周辺の送給リール22は、撚り線機21の(a)側入口の前に11個が配置され、各々から外層ワイヤ5を1本ずつ引き出して送給するようになっている。
【0027】
型付装置23は、各送給リール22からボイス24までの間にそれぞれ設けられている。図6に示すように、型付装置23は、基台23aの上に立設された複数本(例えば3本)のピン23bを備えている。図7に示すように、3本のうち中央のピン23bが両側のピン23bから外れた位置に変位して設けられ、これら3本のピン23b間を外層ワイヤ5がオープン状態でジグザグに進む間に、外層ワイヤ5は所望の型付率に型付けされるようになっている。
【0028】
ボイス24は、主パスライン上を通過する1本の中間ストランド4とその周囲の11本の外層ワイヤ5(型付後)とを束ねて位置合せし、これらが互いに寄り添うようにして主パスラインに沿ってバンチャー撚り線機21に円滑に入っていくようにする案内部材としての役割をもつ孔を有している。バンチャー撚り線機21は、クレードルタイプの筐体内に、左右一対のガイドローラ25a,25b、オーバーツイスター26、引き取りキャプスタン27、矯正ロール27a、巻き取りトラバース28および巻き取りボビン29を内蔵している。
【0029】
外層ワイヤ5には、ボイス24と(a)側のガイドローラ25aとの間で1回目の撚りが入り、(e)側のガイドローラ25bを通過した後に2回目の撚りが入って所定のピッチになる。外層ワイヤ5は、(a)側の入口からボイス24通過後、中間ストランド4に巻き付いた状態で撚り線機21内に入り、ガイドローラ25bの部分で2回目の撚りが入って図1に示す1+6+11構造のスチールコード6が形成される。スチールコード6は、オーバーツイスター26を通過し、引き取りキャプスタン27で引き取られながら、矯正ロール27aを通過して形状を整えられ、ここで型付けが終了し、最終的な型付けがなされたコードを巻き取りトラバース28を介して巻き取りボビン29に巻き取られる。
【0030】
次に、スチールコードが埋め込まれたゴム複合体としてのタイヤの製造方法の概要を説明する。
【0031】
上記のように作製したスチールコードをゴムシート上にすだれ状に引き揃え、2枚のゴムシートの間に挟み込んで圧力を掛け、ゴム複合体シートとする(カレンダリング)。このゴム複合体シートを所定のサイズに切断する。これらをタイヤ成型機上で生ゴムタイヤ(グリーンタイヤ)の適所にそれぞれ組み込み、所定の形状に成形する。所定の加硫温度に加熱してゴムを硬化させる。これにより最終製品のタイヤを得る。
【0032】
次に、実施例、比較例および従来例の各サンプルコードについてそれぞれ説明する。
【0033】
(実施例1)
実施例1として、図4と図5に示す製造装置を用いて図1に示す(1+6+11)構造のスチールコード6を製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工してそれぞれ直径0.20mm(心ワイヤ2)、0.18mm(内層ワイヤ3)、0.18mm(外層ワイヤ5)としたものを用いた。内層ワイヤ3は、型付率を101.0%、撚りピッチを6.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5は、型付率を91.1%、撚りピッチを12.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0034】
(実施例2)
実施例2として、図4と図5に示す製造装置を用いて図1に示す(1+6+11)構造のスチールコード6を製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工してそれぞれ直径0.25mm(心ワイヤ2)、0.225mm(内層ワイヤ3)、0.225mm(外層ワイヤ5)としたものを用いた。内層ワイヤ3は、型付率を101.4%、撚りピッチを8.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5は、型付率を87.8%、撚りピッチを16.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0035】
(比較例1)
比較例1として、従来の製造装置を用いて図1に示す(1+6+11)構造のスチールコード6を製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.20mm(心ワイヤ2)、0.18mm(内層ワイヤ3)、0.18mm(外層ワイヤ5)としたものを用いた。内層ワイヤ3は、撚りピッチを6.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5は、型付率を82.0%、撚りピッチを12.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0036】
(比較例2)
比較例2として、従来の製造装置を用いて図2に示す(1+6+12)構造のスチールコード6Bを製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.25mm(心ワイヤ2B)、0.225mm(内層ワイヤ3B)、0.225mm(外層ワイヤ5B)としたものを用いた。内層ワイヤ3Bは、撚りピッチを8.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5Bは、型付率を85.3%、撚りピッチを16.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0037】
(従来例1)
従来例1として、従来の製造装置を用いて図3に示す(3+9+15)構造のスチールコード6Cを製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.17mm(心ワイヤ2C、内層ワイヤ3C、外層ワイヤ5C)としたものを用いた。心ワイヤ2Cは、撚りピッチを5.5mm、撚りの向きをS方向とした。内層ワイヤ3Cは、撚りピッチを11.0mm、撚りの向きをS方向とした。外層ワイヤ5Cは、型付率を89.5%、撚りピッチを17.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0038】
(従来例2)
従来例2として、従来の製造装置を用いて図3に示す(3+9+15)構造のスチールコード6Cを製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.23mm(心ワイヤ2C、内層ワイヤ3C、外層ワイヤ5C)としたものを用いた。心ワイヤ2Cは、撚りピッチを6.0mm、撚りの向きをS方向とした。内層ワイヤ3Cは、撚りピッチを12.0mm、撚りの向きをS方向とした。外層ワイヤ5Cは、型付率を92.7%、撚りピッチを18.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0039】
[ゴム浸透度の評価方法]
120cmに両端末を溶断したコードを厚さ1.2mmのゴムシート中に埋め込み、加硫圧100kg/mm2で、温度155℃×35分間の加硫を行った。加硫されたサンプルの外層から全ワイヤを取り除いていき、層ごとに内部のゴム付着率を測定した。3+9+15のように心内部のゴム浸透度を測定する場合は、本数の半分を取り除いて、10ピッチ分を取り出し、内部の付着率を測定した。
【0040】
[耐疲労性の評価方法]
図9と図10を参照してスチールコードの耐久性を評価するための耐疲労性試験について説明する。
120cmに両端末を溶断したコードを厚さ1.2mmのゴムシート中に埋め込み、圧力100kg/mm2、温度155℃×35分間の加硫を行った。これから図8に示す試験片8を作製した。3ロール疲労試験機を用いて試験片8に引張り曲げ荷重を繰り返し印加した。
【0041】
試験片8の両端を3ロール疲労試験機のチャック(図示せず)で把持し、試験片8の中央部分を3つのロールに掛けわたす。試験片8に規定の負荷がかかるようにロールを一定の力で引っ張りながら、図9に示すようにチャックを330サイクル/分の速度で左右に往復移動させる。3ロールの往復ストロークを85cm、3ロールの直径Dを25.4mm、3ロールの軸間距離L1を73.0mm、中央ロールと左右ロールとの偏心距離L2を12.7mmとした。
【0042】
サイクル数(繰り返し数)をカウントしながら、図10に示すホイートストンブリッジ回路を用いて試験片8の電気特性を測定・監視する。なお、試験開始時のホイートストンブリッジ回路において、抵抗RB=RSとなるように調整し、さらに検流計にかかる電圧が0mVとなるように抵抗RAを設定した。検流計の電圧が100mV(試験開始時は0mV)になったところで試験を停止し、試験停止時までにカウントしたサイクル数を破断サイクル数とみなした。耐疲労性は従来例1,2を基準値の100として評価した。
【0043】
[形状保持性の評価方法]
コードの形状保持性は、スチールコードを水平に支持し、支持箇所から50mm離れた箇所を切断し、その切断部のバラケ状態を評価した。その評価基準は、1コードピッチ以上のバラケの無いもの(但し、1コードピッチ未満のバラケはある)を良好と判定し、1コードピッチ以上のバラケの有るものを不良と判定した。
【0044】
[心抜け力の評価方法]
図11に示すように、測定区間にあたるコード6の両側を粘着テープ53で締結し、測定区間を除くコード6の外層ワイヤ5と内層ワイヤ3を解いてばらばらにし、心ワイヤ2を露出させる。測定区間の長さL3を70cmとした。露出した心ワイヤ2を引張試験機50の上側クランプ51に巻き付け、測定区間の外層ワイヤ5を引張試験機の下側エアーチャック52で押さえる。試験速度25mm/minで上側クランプ51を上昇させて、心抜け力を測定した。なお、心ワイヤ2がコード6から抜け出すときに測定される荷重は脈動して様々に変化するが、最初に現われたピーク値を心抜け力として評価した。
【0045】
[評価結果]
図12は横軸に外層ワイヤの型付率(%)をとり、縦軸に心抜け力(kgf)をとって、外層ワイヤの型付率が心抜け力に及ぼす影響について調べた結果を示す特性図である。コード構成1+6+11のスチールコードにおける外層ワイヤの型付率を種々変えて測定した。図から明らかなように、外層ワイヤの型付率が小さくなるに従って心抜け力が増加する傾向がみられた。例えば、外層ワイヤの型付率を82.0%(比較例1)、91.1%(実施例1)、98.4%、100%、107.0%とした場合に、心抜け力はそれぞれ5.15kgf(比較例1)、3.77kgf(実施例1)、3.2kgf、2.9kgf、1.5kgfであった。このように外層型付率を大きくするにしたがって心抜け力が低下するのは、外層ワイヤの撚り合わせによる心ワイヤの拘束力(締め付け力)が弱まるからである。一般に心抜け力は2.5kgf以上あればタイヤ走行時に心ワイヤがゴム層を突き破ることは無い。したがって、外層の型付率は100%以下であればよい。また、本発明では「心ワイヤの抜け出し難さ」以外の他の特性(形状保持性、耐疲労性)とのバランスを考慮して外層型付率の適正範囲を定める必要がある。
【0046】
表1に実施例1、比較例1および従来例1のコード構成および評価試験結果等をそれぞれ示す。
【0047】
ゴム浸透性試験において、実施例1のコードは中間部65/外層部125、比較例1のコードは中間部46/外層部158であった。これらの結果は、いずれも従来例1のゴム浸透度(0/0/100)を上回った。ここで、心部のゴム浸透度とは心ワイヤ相互間の間隙に入り込んだゴムの割合(面積%)、中間部のゴム浸透度とは心ワイヤと内層ワイヤとの間隙に入り込んだゴムが心ワイヤを覆っている割合(面積%)、外層部のゴム浸透度とは内層ワイヤと外層ワイヤとの間隙に入り込んだゴムが内層ワイヤを覆っている割合(面積%)をそれぞれいう。
【0048】
外観試験において、実施例1のコードは形状保持性が極めて良好であったのに対して、比較例1のコードは型付率が低く(82%)、形状保持性が不良であった。
【0049】
心抜け試験において、実施例1は3.77kgf、比較例1は5.15kgf、従来例1は4.09kgf(参考値)であった。なお、実施例1より比較例1のほうが心抜け力が大きくなったのは、前者より後者のほうが外層ワイヤの撚り合わせによる心ワイヤの拘束力(締め付け力)が強くなるからである。また、実施例1より従来例1のほうが心抜け力が大きくなったのは、前者が3本心撚り構造であることの影響である。
【0050】
耐疲労性試験において、実施例1は耐疲労性指数142の結果が得られ、比較例1の結果(86)及び従来例1の結果(100)を上回った。
【0051】
表2に実施例2、比較例2および従来例2のコード構成および評価試験結果等をそれぞれ示す。
【0052】
ゴム浸透性試験において、実施例2のコードは中間部45/外層部155、比較例2のコードは中間部23/外層部73であった。実施例2の結果は、従来例2のゴム浸透度(0/0/100)を上回ったが、比較例2の結果は、従来例2のそれを下回った。
【0053】
外観試験において、実施例2および比較例2ともに形状保持性は良好であった。
【0054】
心抜け試験において、実施例2は4.56kgf、比較例2は4.55kgf、従来例2は4.03kgf(参考値)であった。従来例2では心ワイヤの本数が3本であるのに対して、実施例2および比較例2の心ワイヤの本数は1本であるにもかかわらず、実施例2と比較例2の心抜け力は従来例2のそれを上回る結果が得られた。
【0055】
耐疲労性試験において、実施例2は耐疲労性指数180の結果が得られ、比較例2の結果(160)を上回った。このように実施例2では比較例2を大幅に上回る結果が得られた。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のスチールコードは、普通乗用車をはじめとして大型バス、トラック、大型バン、建設用特殊車両などのあらゆる種類のタイヤに広範に用いることができる。特に、曲げ荷重と引張・圧縮荷重とが複合化する過酷な荷重条件下におかれるカーカスコードに用いることができる。
【0059】
また、本発明方法は、トラック、バス、中型・大型の乗用車のタイヤを補強するためのスチールコードの製造に利用可能である。特に、バンチャー撚り線機と型付装置を組合せることにより、ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さをバランス良く兼ね備え、耐疲労性に優れたスチールコードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1,2及び比較例1のスチールコード(1+6+11)を示す断面図。
【図2】比較例2のスチールコード(1+6+12)を示す断面図。
【図3】従来例1、2のスチールコード(3+9+15)を示す断面図。
【図4】本発明のスチールコードの製造方法に用いられるバンチャー撚り線機を模式的に示す図。
【図5】本発明のスチールコードの製造方法に用いられるバンチャー撚り線機を模式的に示す図。
【図6】型付装置の斜視図。
【図7】型付装置の平面図。
【図8】耐疲労性評価試験に用いられる試験片を示す断面斜視図。
【図9】耐疲労性評価試験装置の概要を示す図。
【図10】耐疲労性評価試験装置の計測部の概要を示す図。
【図11】心抜け力の測定方法の概要を示す図。
【図12】心抜け力の測定結果を示す特性図。
【符号の説明】
【0061】
2,2B,2C…心ワイヤ、
3,3B,3C…内層ワイヤ(側ワイヤ)、
4,4B,4C…中間ストランド、
5,5B,5C…外装ワイヤ(側ワイヤ)、
6,6B,6C…スチールコード、
8…試験片、
10,20…スチールコード製造装置、
11,21…バンチャー撚線機、
12,13,22…送給リール、
14,24…ボイス、
15a,15b,25a,25b…ターンローラ、
16,26…オーバーツイスター、
17,27…キャプスタン、
17a,27a…矯正ロール、
18,28…トラバース、
19…巻取ボビン(送給リール)、
23…型付装置、23a…基台、23b…ピン、
29…巻取ボビン、
30…耐疲労性評価試験装置、
31a,31b,32…ローラ、
40…歪電流検出装置、41…検流計、
50…心抜け力測定装置、
51…クランプ、52…エアーチャック、53…テープ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タイヤの補強に用いられるスチールコードの製造方法及びスチールコードに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールコードをゴムシート中に埋め込み加工した車両用タイヤでは、相互に隣接するワイヤが互いに擬触して摩耗する所謂フレッティングを生じると共に、その表面部分のゴム部が損傷されると外部からスチールコードの間隙に水が浸入して錆が発生し、この錆によってゴムが剥離し易くなり、タイヤなどの耐疲労性が低下するなどの問題を生じる。特にタイヤのカーカスコードは、引張りと曲げが組み合わされた衝撃的な荷重が繰り返し負荷されるために、フレッティング摩耗や疲労破断を生じやすい。このため、カーカスコードを構成するワイヤの相互間隙にゴムを浸透させ、水の浸入を防ぐと同時にワイヤ相互間における直接の接触を回避するようにしてその耐久性を向上させている。
【0003】
特許文献1は、フレッティング摩耗によるワイヤ断面積の減少に起因するコード強度の低下を各ワイヤで均一にし、コードの耐久性を向上させた図3に示す(3+9+15)3層撚り構造の多層スチールコードを提案している。しかし、特許文献1のスチールコードにおいては、外層ワイヤ5Cと内層ワイヤ3Cとの間、内層ワイヤ3Cと心ワイヤ2Cとの間にそれぞれフレッティング摩耗を生じる。特に、3本の心ワイヤ2Cで構成される心部の周囲へのゴムの浸透が不足し、錆やフレッティング摩耗により心ワイヤ2Cの耐疲労性が低下して断線を生じやすい。
【0004】
特許文献2は、大型車両用タイヤのフレッティング摩耗を抑制し、耐疲労性を向上させることを目的として、外側層を不飽和の状態にしてゴム浸透性を向上させた(1+6+11)3層撚り構造の多層スチールコードを提案している。
【0005】
しかし、特許文献2のスチールコードは、外側層を不飽和の状態に撚り合せるため、形状保持性の点に問題があり、形崩れを起こしやすく、形崩れを起こして変形した部分に局部応力集中を生じて疲労性の低下を招く。
【0006】
また、特許文献2のスチールコードでは、ゴム浸透度の改善のためにワイヤの相互間隙を拡張しすぎると、形状保持性が低下して外層ワイヤにまとまりがなくなり、外層ワイヤが整然と撚り合わせられず、ワイヤ相互間隙に粗密を生じる所謂バラケが発生したり、内層が外層ワイヤの間から飛び出したりする。
【0007】
さらに、特許文献2のスチールコードでは、外側層を不飽和とするために、外層ワイヤの本数を減らすばかりでなく、側ワイヤの径に対する心ワイヤの径の比率(異径比)をかなり大きくしているので、心ワイヤが他のワイヤよりも早期に疲労破断し、コードとしての疲労性を著しく低下させている。
【特許文献1】特開平7−292585号公報
【特許文献2】特表2004−523406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、低コスト化が可能な撚り線機を用いて、ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さをバランス良く兼ね備え、耐疲労性に優れたスチールコードを製造することができるスチールコードの製造方法及びスチールコードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスチールコードの製造方法は、(i)心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤを、バンチャー撚り線機により単一の前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わせる工程と、(ii)前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤをそれぞれ所定の型付率に型付けする工程と、(iii)前記型付けしたn本の外層ワイヤを、バンチャー撚り線機により前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ前記内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに前記内層ワイヤの周囲に撚り合わせ、(1+m+n)3層撚り構造のスチールコードを得る工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るスチールコードは、単一の心ワイヤと、前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤと、所定の型付率に型付けされ、前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで前記内層ワイヤの周囲に撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤと、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、同軸内層と同軸外層を同一方向に撚り合わせることにより、層間のワイヤ同士が適度な接触を保ち、層間ワイヤの相互接触圧力が低下するため、フレッティング摩耗が軽減され、耐疲労性の低下が抑制される。
【0012】
心ワイヤ、内層ワイヤおよび外層ワイヤの径がそれぞれ0.15mm以上0.25mm以下であることが好ましい。ワイヤ径が0.15mm未満になると、コードが所望の強度レベルを満たさなくなり、強度不足を生じる。一方、ワイヤ径が0.25mmを超えると、スチールコードの曲げ剛性が増加する。
【0013】
内層ワイヤの径に対する心ワイヤの径の比率および外層ワイヤの径に対する心ワイヤの径の比率としての異径比dc/dsが1.10以上1.30以下の範囲とすることが好ましい。異径比dc/dsが1.10未満になると、内層ワイヤの相互間隙(不飽和の程度)および外層ワイヤの相互間隙(不飽和の程度)が不足して、ゴム浸透性が低下する。一方、異径比dc/dsが1.30を超えると、他のワイヤよりも早期に疲労破断し、コードとしての疲労性を著しく低下させる。
【0014】
本発明では、内層ワイヤの本数mを6以上の整数、好ましくは6とし、外層ワイヤの本数nを11以上の整数、好ましくは11とすることができる。これらm,nの数は、上記の異径比dc/dsと関連して不飽和の程度(外層ワイヤの相互間隙と内層ワイヤの相互間隙)を決定するパラメータである。
【0015】
上記工程(ii)から(iii)までの間において、外層の型付率を85%以上100%以下の範囲に調整することが好ましい。より好ましくは外層の型付率を87%以上94%以下とするのが望ましい。外層の型付率が85%を下回ると、形状保持性が低下して形崩れを生じやすくなる(バラケの発生)。一方、外層の型付率が100%を超えると、外層ワイヤによる心ワイヤの拘束力が不足して、タイヤ走行時に心ワイヤがゴム層を突き破って飛び出すおそれがある。外層の型付率は、心ワイヤの抜け出し難さを考慮に入れるが、心ワイヤの抜け出し難さばかりでなくそれ以外の他の特性(形状保持性、耐疲労性)とのバランスも考慮して決定する必要がある。
【0016】
なお、心ワイヤの抜け出し難さは主に外層の型付率に影響を受けるが、内層の型付率からも影響を受ける。本発明では内層ワイヤを撚る前に型付けする所謂プレフォームは行わないが、内層ワイヤがバンチャー撚り線機のなかに入ってオーバーツイスター及びキャプスタンの矯正ロール(ならしロール)により非弾性的に矯正され、結果として型付けされる所謂ポストフォームが内層に施される。このようにして型付けされた内層の型付率は、100%以上110%以下の範囲とすることが望ましい。この範囲が、形崩れを生じることなく、バンチャー撚り線機により適正な形状に撚り合わせすることができる型付率になるからである。
【0017】
本明細書中において、「型付け」とは、撚り合わされるべきワイヤが螺旋状に非弾性変形されることをいう。
【0018】
また、「型付率」とは、スチールコードを切断して構成ワイヤをばらしたときの径を元のスチールコードの径で割って百分率で表わした指標をいう。
【0019】
心ワイヤ、内層ワイヤ、外層ワイヤの引張強さを2800MPa以上3400MPa以下にすることが好ましい。これらの構成ワイヤには例えばJISG3502に規定されたピアノ線材(C含有量0.70〜0.82%)を用いることが望ましい。引張強さが2800MPa未満であると、強度不足を生じる。一方、引張強さが3400MPaを超えると、高張力化に伴い靭性が低下して断線を生じやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明方法は、低コスト化が可能なバンチャー撚り線機を使用することができ、ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さ、耐疲労性をバランス良く兼ね備えたスチールコードを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0022】
先ず、図4と図5を参照して本発明のスチールコードの製造方法に用いられる装置の概要について説明する。
【0023】
図4に示す製造装置10は内層ワイヤ3を心ワイヤ2の周囲に撚り合わせる内層の撚り合わせに用いられ、図5に示す製造装置20は外層ワイヤ5を中間ストランド4の周囲に撚り合わせる外層の撚り合わせに用いられる。
【0024】
製造装置10は、パスラインの上流側から順に7個の送給リール12,13、ボイス14、およびバンチャー撚り線機11を備えている。中央の送給リール12は、撚り線機11の(a)側入口の前に1個が配置され、心ワイヤ2を送給する。周辺の送給リール13は、撚り線機11の(a)側入口の前に6個が配置され、各々から内層ワイヤ3を1本ずつ引き出して送給するようになっている。ボイス14は、主パスライン上を通過する1本の心ワイヤ2とその周囲の6本の内層ワイヤ3とを束ねて位置合せし、これらが互いに寄り添うようにして主パスラインに沿ってバンチャー撚り線機11に円滑に入っていくようにする案内部材としての役割をもつ孔を有している。バンチャー撚り線機11は、クレードルタイプの筐体内に、左右一対のガイドローラ15a,15b、オーバーツイスター16、引き取りキャプスタン17、矯正ロール17a、巻き取りトラバース18および巻き取りボビン19を内蔵している。なお、矯正ロール17aはキャプスタン17のなかに組み込まれている。
【0025】
内層ワイヤ3には、ボイス14と(a)側のガイドローラ15aとの間で1回目の撚りが入り、(e)側のガイドローラ15bを通過した後に2回目の撚りが入って所定のピッチになる。内層ワイヤ3は、(a)側の入口からボイス14通過後に心ワイヤ2に巻き付いた状態で撚り線機11内に入り、ガイドローラ15bの部分で2回目の撚りが入り、図1に示す1+6構造の中間ストランド4が形成される。中間ストランド4は、オーバーツイスター16を通過し、引き取りキャプスタン17で引き取られながら、矯正ロール17aを通過して型付け(ポストフォーム)がなされて形状を整えられ、巻き取りトラバース18を介して巻き取りボビン19に巻き取られる。
【0026】
製造装置20は、パスラインの上流側から順に12個の送給リール19,22、型付装置23、ボイス24、およびバンチャー撚り線機21を備えている。中央の送給リール19は、上記装置10の巻き取りボビンと同じものであり、撚り線機21の(a)側入口の前に1個が配置され、前工程で作製した中間ストランド4を送給する。周辺の送給リール22は、撚り線機21の(a)側入口の前に11個が配置され、各々から外層ワイヤ5を1本ずつ引き出して送給するようになっている。
【0027】
型付装置23は、各送給リール22からボイス24までの間にそれぞれ設けられている。図6に示すように、型付装置23は、基台23aの上に立設された複数本(例えば3本)のピン23bを備えている。図7に示すように、3本のうち中央のピン23bが両側のピン23bから外れた位置に変位して設けられ、これら3本のピン23b間を外層ワイヤ5がオープン状態でジグザグに進む間に、外層ワイヤ5は所望の型付率に型付けされるようになっている。
【0028】
ボイス24は、主パスライン上を通過する1本の中間ストランド4とその周囲の11本の外層ワイヤ5(型付後)とを束ねて位置合せし、これらが互いに寄り添うようにして主パスラインに沿ってバンチャー撚り線機21に円滑に入っていくようにする案内部材としての役割をもつ孔を有している。バンチャー撚り線機21は、クレードルタイプの筐体内に、左右一対のガイドローラ25a,25b、オーバーツイスター26、引き取りキャプスタン27、矯正ロール27a、巻き取りトラバース28および巻き取りボビン29を内蔵している。
【0029】
外層ワイヤ5には、ボイス24と(a)側のガイドローラ25aとの間で1回目の撚りが入り、(e)側のガイドローラ25bを通過した後に2回目の撚りが入って所定のピッチになる。外層ワイヤ5は、(a)側の入口からボイス24通過後、中間ストランド4に巻き付いた状態で撚り線機21内に入り、ガイドローラ25bの部分で2回目の撚りが入って図1に示す1+6+11構造のスチールコード6が形成される。スチールコード6は、オーバーツイスター26を通過し、引き取りキャプスタン27で引き取られながら、矯正ロール27aを通過して形状を整えられ、ここで型付けが終了し、最終的な型付けがなされたコードを巻き取りトラバース28を介して巻き取りボビン29に巻き取られる。
【0030】
次に、スチールコードが埋め込まれたゴム複合体としてのタイヤの製造方法の概要を説明する。
【0031】
上記のように作製したスチールコードをゴムシート上にすだれ状に引き揃え、2枚のゴムシートの間に挟み込んで圧力を掛け、ゴム複合体シートとする(カレンダリング)。このゴム複合体シートを所定のサイズに切断する。これらをタイヤ成型機上で生ゴムタイヤ(グリーンタイヤ)の適所にそれぞれ組み込み、所定の形状に成形する。所定の加硫温度に加熱してゴムを硬化させる。これにより最終製品のタイヤを得る。
【0032】
次に、実施例、比較例および従来例の各サンプルコードについてそれぞれ説明する。
【0033】
(実施例1)
実施例1として、図4と図5に示す製造装置を用いて図1に示す(1+6+11)構造のスチールコード6を製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工してそれぞれ直径0.20mm(心ワイヤ2)、0.18mm(内層ワイヤ3)、0.18mm(外層ワイヤ5)としたものを用いた。内層ワイヤ3は、型付率を101.0%、撚りピッチを6.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5は、型付率を91.1%、撚りピッチを12.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0034】
(実施例2)
実施例2として、図4と図5に示す製造装置を用いて図1に示す(1+6+11)構造のスチールコード6を製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工してそれぞれ直径0.25mm(心ワイヤ2)、0.225mm(内層ワイヤ3)、0.225mm(外層ワイヤ5)としたものを用いた。内層ワイヤ3は、型付率を101.4%、撚りピッチを8.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5は、型付率を87.8%、撚りピッチを16.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0035】
(比較例1)
比較例1として、従来の製造装置を用いて図1に示す(1+6+11)構造のスチールコード6を製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.20mm(心ワイヤ2)、0.18mm(内層ワイヤ3)、0.18mm(外層ワイヤ5)としたものを用いた。内層ワイヤ3は、撚りピッチを6.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5は、型付率を82.0%、撚りピッチを12.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0036】
(比較例2)
比較例2として、従来の製造装置を用いて図2に示す(1+6+12)構造のスチールコード6Bを製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.25mm(心ワイヤ2B)、0.225mm(内層ワイヤ3B)、0.225mm(外層ワイヤ5B)としたものを用いた。内層ワイヤ3Bは、撚りピッチを8.0mm、撚りの向きをZ方向とした。外層ワイヤ5Bは、型付率を85.3%、撚りピッチを16.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0037】
(従来例1)
従来例1として、従来の製造装置を用いて図3に示す(3+9+15)構造のスチールコード6Cを製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.17mm(心ワイヤ2C、内層ワイヤ3C、外層ワイヤ5C)としたものを用いた。心ワイヤ2Cは、撚りピッチを5.5mm、撚りの向きをS方向とした。内層ワイヤ3Cは、撚りピッチを11.0mm、撚りの向きをS方向とした。外層ワイヤ5Cは、型付率を89.5%、撚りピッチを17.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0038】
(従来例2)
従来例2として、従来の製造装置を用いて図3に示す(3+9+15)構造のスチールコード6Cを製造した。原料ワイヤとして、JISG3502に規定されたピアノ線材を伸線加工して直径0.23mm(心ワイヤ2C、内層ワイヤ3C、外層ワイヤ5C)としたものを用いた。心ワイヤ2Cは、撚りピッチを6.0mm、撚りの向きをS方向とした。内層ワイヤ3Cは、撚りピッチを12.0mm、撚りの向きをS方向とした。外層ワイヤ5Cは、型付率を92.7%、撚りピッチを18.0mm、撚りの向きをZ方向とした。
【0039】
[ゴム浸透度の評価方法]
120cmに両端末を溶断したコードを厚さ1.2mmのゴムシート中に埋め込み、加硫圧100kg/mm2で、温度155℃×35分間の加硫を行った。加硫されたサンプルの外層から全ワイヤを取り除いていき、層ごとに内部のゴム付着率を測定した。3+9+15のように心内部のゴム浸透度を測定する場合は、本数の半分を取り除いて、10ピッチ分を取り出し、内部の付着率を測定した。
【0040】
[耐疲労性の評価方法]
図9と図10を参照してスチールコードの耐久性を評価するための耐疲労性試験について説明する。
120cmに両端末を溶断したコードを厚さ1.2mmのゴムシート中に埋め込み、圧力100kg/mm2、温度155℃×35分間の加硫を行った。これから図8に示す試験片8を作製した。3ロール疲労試験機を用いて試験片8に引張り曲げ荷重を繰り返し印加した。
【0041】
試験片8の両端を3ロール疲労試験機のチャック(図示せず)で把持し、試験片8の中央部分を3つのロールに掛けわたす。試験片8に規定の負荷がかかるようにロールを一定の力で引っ張りながら、図9に示すようにチャックを330サイクル/分の速度で左右に往復移動させる。3ロールの往復ストロークを85cm、3ロールの直径Dを25.4mm、3ロールの軸間距離L1を73.0mm、中央ロールと左右ロールとの偏心距離L2を12.7mmとした。
【0042】
サイクル数(繰り返し数)をカウントしながら、図10に示すホイートストンブリッジ回路を用いて試験片8の電気特性を測定・監視する。なお、試験開始時のホイートストンブリッジ回路において、抵抗RB=RSとなるように調整し、さらに検流計にかかる電圧が0mVとなるように抵抗RAを設定した。検流計の電圧が100mV(試験開始時は0mV)になったところで試験を停止し、試験停止時までにカウントしたサイクル数を破断サイクル数とみなした。耐疲労性は従来例1,2を基準値の100として評価した。
【0043】
[形状保持性の評価方法]
コードの形状保持性は、スチールコードを水平に支持し、支持箇所から50mm離れた箇所を切断し、その切断部のバラケ状態を評価した。その評価基準は、1コードピッチ以上のバラケの無いもの(但し、1コードピッチ未満のバラケはある)を良好と判定し、1コードピッチ以上のバラケの有るものを不良と判定した。
【0044】
[心抜け力の評価方法]
図11に示すように、測定区間にあたるコード6の両側を粘着テープ53で締結し、測定区間を除くコード6の外層ワイヤ5と内層ワイヤ3を解いてばらばらにし、心ワイヤ2を露出させる。測定区間の長さL3を70cmとした。露出した心ワイヤ2を引張試験機50の上側クランプ51に巻き付け、測定区間の外層ワイヤ5を引張試験機の下側エアーチャック52で押さえる。試験速度25mm/minで上側クランプ51を上昇させて、心抜け力を測定した。なお、心ワイヤ2がコード6から抜け出すときに測定される荷重は脈動して様々に変化するが、最初に現われたピーク値を心抜け力として評価した。
【0045】
[評価結果]
図12は横軸に外層ワイヤの型付率(%)をとり、縦軸に心抜け力(kgf)をとって、外層ワイヤの型付率が心抜け力に及ぼす影響について調べた結果を示す特性図である。コード構成1+6+11のスチールコードにおける外層ワイヤの型付率を種々変えて測定した。図から明らかなように、外層ワイヤの型付率が小さくなるに従って心抜け力が増加する傾向がみられた。例えば、外層ワイヤの型付率を82.0%(比較例1)、91.1%(実施例1)、98.4%、100%、107.0%とした場合に、心抜け力はそれぞれ5.15kgf(比較例1)、3.77kgf(実施例1)、3.2kgf、2.9kgf、1.5kgfであった。このように外層型付率を大きくするにしたがって心抜け力が低下するのは、外層ワイヤの撚り合わせによる心ワイヤの拘束力(締め付け力)が弱まるからである。一般に心抜け力は2.5kgf以上あればタイヤ走行時に心ワイヤがゴム層を突き破ることは無い。したがって、外層の型付率は100%以下であればよい。また、本発明では「心ワイヤの抜け出し難さ」以外の他の特性(形状保持性、耐疲労性)とのバランスを考慮して外層型付率の適正範囲を定める必要がある。
【0046】
表1に実施例1、比較例1および従来例1のコード構成および評価試験結果等をそれぞれ示す。
【0047】
ゴム浸透性試験において、実施例1のコードは中間部65/外層部125、比較例1のコードは中間部46/外層部158であった。これらの結果は、いずれも従来例1のゴム浸透度(0/0/100)を上回った。ここで、心部のゴム浸透度とは心ワイヤ相互間の間隙に入り込んだゴムの割合(面積%)、中間部のゴム浸透度とは心ワイヤと内層ワイヤとの間隙に入り込んだゴムが心ワイヤを覆っている割合(面積%)、外層部のゴム浸透度とは内層ワイヤと外層ワイヤとの間隙に入り込んだゴムが内層ワイヤを覆っている割合(面積%)をそれぞれいう。
【0048】
外観試験において、実施例1のコードは形状保持性が極めて良好であったのに対して、比較例1のコードは型付率が低く(82%)、形状保持性が不良であった。
【0049】
心抜け試験において、実施例1は3.77kgf、比較例1は5.15kgf、従来例1は4.09kgf(参考値)であった。なお、実施例1より比較例1のほうが心抜け力が大きくなったのは、前者より後者のほうが外層ワイヤの撚り合わせによる心ワイヤの拘束力(締め付け力)が強くなるからである。また、実施例1より従来例1のほうが心抜け力が大きくなったのは、前者が3本心撚り構造であることの影響である。
【0050】
耐疲労性試験において、実施例1は耐疲労性指数142の結果が得られ、比較例1の結果(86)及び従来例1の結果(100)を上回った。
【0051】
表2に実施例2、比較例2および従来例2のコード構成および評価試験結果等をそれぞれ示す。
【0052】
ゴム浸透性試験において、実施例2のコードは中間部45/外層部155、比較例2のコードは中間部23/外層部73であった。実施例2の結果は、従来例2のゴム浸透度(0/0/100)を上回ったが、比較例2の結果は、従来例2のそれを下回った。
【0053】
外観試験において、実施例2および比較例2ともに形状保持性は良好であった。
【0054】
心抜け試験において、実施例2は4.56kgf、比較例2は4.55kgf、従来例2は4.03kgf(参考値)であった。従来例2では心ワイヤの本数が3本であるのに対して、実施例2および比較例2の心ワイヤの本数は1本であるにもかかわらず、実施例2と比較例2の心抜け力は従来例2のそれを上回る結果が得られた。
【0055】
耐疲労性試験において、実施例2は耐疲労性指数180の結果が得られ、比較例2の結果(160)を上回った。このように実施例2では比較例2を大幅に上回る結果が得られた。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のスチールコードは、普通乗用車をはじめとして大型バス、トラック、大型バン、建設用特殊車両などのあらゆる種類のタイヤに広範に用いることができる。特に、曲げ荷重と引張・圧縮荷重とが複合化する過酷な荷重条件下におかれるカーカスコードに用いることができる。
【0059】
また、本発明方法は、トラック、バス、中型・大型の乗用車のタイヤを補強するためのスチールコードの製造に利用可能である。特に、バンチャー撚り線機と型付装置を組合せることにより、ゴム浸透性、形状保持性、心ワイヤの抜け出し難さをバランス良く兼ね備え、耐疲労性に優れたスチールコードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1,2及び比較例1のスチールコード(1+6+11)を示す断面図。
【図2】比較例2のスチールコード(1+6+12)を示す断面図。
【図3】従来例1、2のスチールコード(3+9+15)を示す断面図。
【図4】本発明のスチールコードの製造方法に用いられるバンチャー撚り線機を模式的に示す図。
【図5】本発明のスチールコードの製造方法に用いられるバンチャー撚り線機を模式的に示す図。
【図6】型付装置の斜視図。
【図7】型付装置の平面図。
【図8】耐疲労性評価試験に用いられる試験片を示す断面斜視図。
【図9】耐疲労性評価試験装置の概要を示す図。
【図10】耐疲労性評価試験装置の計測部の概要を示す図。
【図11】心抜け力の測定方法の概要を示す図。
【図12】心抜け力の測定結果を示す特性図。
【符号の説明】
【0061】
2,2B,2C…心ワイヤ、
3,3B,3C…内層ワイヤ(側ワイヤ)、
4,4B,4C…中間ストランド、
5,5B,5C…外装ワイヤ(側ワイヤ)、
6,6B,6C…スチールコード、
8…試験片、
10,20…スチールコード製造装置、
11,21…バンチャー撚線機、
12,13,22…送給リール、
14,24…ボイス、
15a,15b,25a,25b…ターンローラ、
16,26…オーバーツイスター、
17,27…キャプスタン、
17a,27a…矯正ロール、
18,28…トラバース、
19…巻取ボビン(送給リール)、
23…型付装置、23a…基台、23b…ピン、
29…巻取ボビン、
30…耐疲労性評価試験装置、
31a,31b,32…ローラ、
40…歪電流検出装置、41…検流計、
50…心抜け力測定装置、
51…クランプ、52…エアーチャック、53…テープ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤを、バンチャー撚り線機により単一の前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わせる工程と、
(ii)前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤをそれぞれ所定の型付率に型付けする工程と、
(iii)前記型付けしたn本の外層ワイヤを、バンチャー撚り線機により前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ前記内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに前記内層ワイヤの周囲に撚り合わせ、(1+m+n)3層撚り構造のスチールコードを得る工程と、
を有することを特徴とするスチールコードの製造方法。
【請求項2】
前記心ワイヤ、前記内層ワイヤおよび前記外層ワイヤの径がそれぞれ0.15mm以上0.25mm以下であり、前記内層ワイヤの径に対する前記心ワイヤの径の比率および前記外層ワイヤの径に対する前記心ワイヤの径の比率としての異径比dc/dsを1.10以上1.30以下の範囲とすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記外層の型付率を85%以上100%以下とすることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記心ワイヤ、前記内層ワイヤ、前記外層ワイヤの引張強さを2800MPa以上3400MPa以下とすることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記mを6以上の整数とし、前記nを11以上の整数とすることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
単一の心ワイヤと、
前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤと、
所定の型付率に型付けされ、前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ前記内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに前記内層ワイヤの周囲に撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤと、
を有することを特徴とするスチールコード。
【請求項1】
(i)心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤを、バンチャー撚り線機により単一の前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わせる工程と、
(ii)前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤをそれぞれ所定の型付率に型付けする工程と、
(iii)前記型付けしたn本の外層ワイヤを、バンチャー撚り線機により前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ前記内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに前記内層ワイヤの周囲に撚り合わせ、(1+m+n)3層撚り構造のスチールコードを得る工程と、
を有することを特徴とするスチールコードの製造方法。
【請求項2】
前記心ワイヤ、前記内層ワイヤおよび前記外層ワイヤの径がそれぞれ0.15mm以上0.25mm以下であり、前記内層ワイヤの径に対する前記心ワイヤの径の比率および前記外層ワイヤの径に対する前記心ワイヤの径の比率としての異径比dc/dsを1.10以上1.30以下の範囲とすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記外層の型付率を85%以上100%以下とすることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記心ワイヤ、前記内層ワイヤ、前記外層ワイヤの引張強さを2800MPa以上3400MPa以下とすることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記mを6以上の整数とし、前記nを11以上の整数とすることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
単一の心ワイヤと、
前記心ワイヤの周囲に所定のピッチで撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するm本の内層ワイヤと、
所定の型付率に型付けされ、前記内層ワイヤの所定の撚りピッチより長い撚りピッチで、かつ前記内層ワイヤの撚り方向と同じ向きに前記内層ワイヤの周囲に撚り合わされ、前記心ワイヤの径より小さい径を有するn本の外層ワイヤと、
を有することを特徴とするスチールコード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−314910(P2007−314910A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145443(P2006−145443)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】
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