ステアリングホイールの温度制御装置
【課題】ステアリングホイールの温度を迅速且つ安定に調節することができるステアリングホイールの温度制御装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイールの所定温度範囲Tc0〜Tccにおいて、該ステアリングホイールの温度の変化に対しペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率Dcを比例関係で変化させて、ステアリングホイールの温度を冷却目標温度値Tctに制御する。冷却開始時に検出されたステアリングホイールの温度が冷却目標温度値Tct以上のとき、ステアリングホイールの温度が冷却目標温度値Tctに達するまで、デューティ比率Dcが大きくなるように比例関係となる所定温度範囲をシフトする。
【解決手段】ステアリングホイールの所定温度範囲Tc0〜Tccにおいて、該ステアリングホイールの温度の変化に対しペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率Dcを比例関係で変化させて、ステアリングホイールの温度を冷却目標温度値Tctに制御する。冷却開始時に検出されたステアリングホイールの温度が冷却目標温度値Tct以上のとき、ステアリングホイールの温度が冷却目標温度値Tctに達するまで、デューティ比率Dcが大きくなるように比例関係となる所定温度範囲をシフトする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの温度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールの温度制御装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この装置は、発熱・吸熱する熱電変換素子としてのペルチェ素子をステアリングホイールに内蔵しており、該ステアリングホイールの現在の温度(実温度)を温度センサ(サーミスタ)により検出して、所定の温度にするように、加熱・冷却を選択すべくペルチェ素子への印加電圧の極性を切り替えるととともに、該印加電圧のオン・オフ(断続)制御によりステアリングホイールの温度を調節する。
【特許文献1】特開昭60−88679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようにペルチェ素子への印加電圧のオン・オフ制御によりステアリングホイールの温度を調節する場合、例えば実温度の検出遅れ等の影響で温度制御が不安定となり、例えばハンチングを起こす可能性がある。
【0004】
一方、ペルチェ素子への印加電圧の比例制御によりステアリングホイールの温度を調節することも検討されている。具体的には、ステアリングホイールの現在の温度を検出し、該ステアリングホイールの温度及び目標温度などから設定したパターン(マップ)に基づいて、ペルチェ素子への印加電圧のデューティ比率を比例制御する。これにより、ペルチェ素子による加熱・冷却の作用の強さを調節し、ステアリングホイールの温度を調節する。
【0005】
しかしながら、この場合であっても、デューティ比率の比例制御に係るステアリングホイールの所定温度範囲において、例えばステアリングホイールの温度の変化に対するデューティ比率の変化が急峻であれば、前述したオン・オフ制御と同様、温度制御が不安定となり、例えばハンチングを起こす可能性がある。そして、ステアリングホイールの温度が変動して、それを握る運転者に不快適を与えてしまう。
【0006】
一方、ステアリングホイールの温度の変化に対するデューティ比率の変化が緩慢であれば、ペルチェ素子による加熱・冷却の作用も緩やかになって、目標温度への到達に長い時間を要してしまう。そして、ステアリングホイールが、それを握る運転者の快適に感じる温度になるのが遅れてしまう。
【0007】
本発明の目的は、ステアリングホイールの温度を迅速且つ安定に調節することができるステアリングホイールの温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングホイールに設けられたペルチェ素子と、前記ステアリングホイールの温度を検出する温度検出手段とを備え、前記ステアリングホイールの所定温度範囲において、該ステアリングホイールの温度の変化に対し前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率を比例関係で変化させて、前記ステアリングホイールの温度を目標温度に制御するステアリングホイールの温度制御装置において、所定タイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が、前
記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき、前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度に達するまで、前記デューティ比率が大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲をシフトする補正手段を備えたことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記所定タイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が、前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき、即ち前記目標温度へと調節すべく前記ペルチェ素子を作用させるときには、前記補正手段により、前記デューティ比率が大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲がシフトされる。従って、前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率がより大きく設定されて該ペルチェ素子の作用が強められ、前記ステアリングホイールの温度は前記目標温度へとより迅速に到達される。従って、前記ステアリングホイールの温度を迅速に調節することができる。
【0010】
そして、前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度に達すると、前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率が本来の比例関係に基づくデューティ比率に設定されて該ペルチェ素子の作用が抑えられ、前記ステアリングホイールの前記目標温度への温度制御がより安定化される。従って、ステアリングホイールの温度を安定した状態で調節することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、前記補正手段は、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフト量を補正することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフト量は、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように前記補正手段により補正される。従って、前記ペルチェ素子の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、前記補正手段により、前記デューティ比率がより大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲がシフトされる。つまり、前記ペルチェ素子の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率がより大きく設定されて該ペルチェ素子の作用が強められ、前記ステアリングホイールの温度を前記目標温度へとより迅速に到達させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度は、該ステアリングホイールの温度制御開始時に検出された初期温度であることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記補正手段による前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフトは、前記ステアリングホイールの温度制御開始時に1回行うのみであるため、例えば複数回行う場合に比べて演算負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至3に記載の発明では、ステアリングホイールの温度を迅速且つ安定に調節することができるステアリングホイールの温度制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係るステアリングホイールを示す断面図である。同図に示される
ように、ステアリングホイールは、車両のステアリングシャフトに取着される取付部11と、該取付部11から放射状に延出する複数(4本)のスポーク部12と、これらスポーク部12の先端部を連結する円環状のリング部13とを備えて構成される。
【0017】
前記リング部13は、例えばアルミニウムからなる蓄熱体としての円環状のリム部21を備える。図1に拡大して示すように、このリム部21には、上下に隣り合う前記スポーク部12間で前記リング部13に形成される左右のグリップ部に合わせて、複数(12個)のペルチェ素子22が配設されている。これら12個のペルチェ素子22は、前記リング部13の左右のグリップ部に6個ずつ配置されている。各グリップ部に配置された6個のペルチェ素子22は、電気的に直列接続されて、ペルチェ素子アセンブリ23を構成する。各ペルチェ素子アセンブリ23は、対応するグリップ部において前記リム部21と熱伝導的に接続されている。また、各ペルチェ素子アセンブリ23を構成する6個のペルチェ素子22は、リング部13の外周側及び内周側に3個ずつで配置されている。
【0018】
各ペルチェ素子アセンブリ23において、前記リング部13の外周側及び内周側に配置された3個のペルチェ素子22には、例えば銅からなる伝熱プレート24が装着されている。各伝熱プレート24は、対応する3個のペルチェ素子22と熱伝導的に接続されている。
【0019】
そして、前記リム部21は、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)及び伝熱プレート24とともに、例えば本皮や合成皮革からなる表皮25により覆われている。
【0020】
図1に併せ示したように、各グリップ部のペルチェ素子アセンブリ23は、マイクロコンピュータ(マイコン)を備えた制御ユニット31に電気的に接続されており、該制御ユニット31からの通電出力に従って対応するグリップ部の表面を加熱又は冷却する。具体的には、例えばグリップ部の表面を冷却すべく通電出力された場合、ペルチェ素子アセンブリ23は、前記伝熱プレート24から吸熱するとともに、前記リム部21の熱容量を利用して該リム部21に蓄熱・熱放散する。これにより、表皮25の熱がリム部21へと移動し、グリップ部の表面が冷却される。
【0021】
なお、各グリップ部には、その温度を検出する温度検出手段としてのサーミスタ32が設けられている。制御ユニット31は、各サーミスタ32からの温度信号入力によって対応するグリップ部の温度を検出するとともに、該検出された温度に応じて前記ペルチェ素子アセンブリ23への通電出力を制御する。つまり、制御ユニット31は、左右のグリップ部の温度調節を個別に行う。前記リング部13において、各グリップ部がペルチェ素子アセンブリ23等による温度調節領域を形成することはいうまでもない。
【0022】
次に、制御ユニット31の電気的構成について、図2の回路図に従って説明する。
同図に示されるように、制御ユニット31は、各種制御プログラムを格納するとともに該制御プログラムを実行するマイコン33を備える。このマイコン33は、定電圧電源回路34を介して所定電圧VB(例えば12V)を有するバッテリ35のプラス端子と電気的に接続されるとともに、グランドGNDに接地されている。定電圧電源回路34は、前記マイコン33に所定電圧Vcc(例えば5V)を電源として供給する。
【0023】
前記マイコン33は、左右のグリップ部に配設されたペルチェ素子アセンブリ23及びサーミスタ32とそれぞれ電気的に接続されている。なお、マイコン33との電気的な接続構造は、左右のグリップ部で同様であるため、以下では、左側のグリップ部に配設されたペルチェ素子アセンブリ23及びサーミスタ32との電気的な接続構造を代表して説明し、右側のグリップ部については同一の符号を付して詳細な説明を割愛する。
【0024】
前記マイコン33は、抵抗Rb1,Rb2を介してNPN型のトランジスタTr1,Tr2のベースにそれぞれ接続されるとともに、これらトランジスタTr1,Tr2のコレクタは、リレー36を構成するコイルL1,L2の一方の接続点にそれぞれ接続されている。なお、トランジスタTr1,Tr2のエミッタは、グランドGNDに接地されている。
【0025】
前記リレー36は、前記バッテリ35のプラス端子に電気的に接続された一対の接点a1,a2を備えるとともに、これら接点a1,a2は、前記コイルL1,L2の他方の接続点にそれぞれ接続されている。また、前記リレー36は、一対の接点b1,b2を備えるとともに、これら接点b1,b2は、N型のパワーFET37のドレインに接続されている。なお、パワーFET37のゲートは、前記マイコン33に接続されるとともに、そのソースは、グランドGNDに接地されている。
【0026】
さらに、前記リレー36は、接点a1,b1間及び接点a2,b2間で接点を切り替える一対の可動子c1,c2を備える。これら可動子c1,c2は、前記ペルチェ素子アセンブリ23の両接続点P1,P2にそれぞれ接続されている。一方の可動子c1は、通常は接点b1に接続されており、前記マイコン33によりトランジスタTr1がオンされて、前記コイルL1が通電されると、前記可動子c1は、前記コイルL1に駆動されて接点a1(所定電圧VB)に接続される。同様に、他方の可動子c2は、通常は接点b2に接続されており、前記マイコン33によりトランジスタTr2がオンされて、前記コイルL2が通電されると、前記可動子c2は、前記コイルL2に駆動されて接点a2(所定電圧VB)に接続される。
【0027】
従って、例えば前記コイルL1の駆動により一方の可動子c1を接点a1に接続したとき、前記マイコン33によりパワーFET37がオンされると、接点b2はパワーFET37を介してグランドGNDに接地される。そして、前記ペルチェ素子アセンブリ23には、可動子c1に接続された一方の接続点P1から、可動子c2に接続された他方の接続点P2へと電流が流れる。本実施形態では、上述の方向で前記ペルチェ素子アセンブリ23に電流が流れるときに、グリップ部の表面が冷却されるように設定されている。
【0028】
また、前記コイルL2の駆動により他方の可動子c2を接点a2に接続したとき、前記マイコン33によりパワーFET37がオンされると、接点b1はパワーFET37を介してグランドGNDに接地される。そして、前記ペルチェ素子アセンブリ23には、可動子c2に接続された他方の接続点P2から、可動子c1に接続された一方の接続点P1へと電流が流れる。本実施形態では、上述の方向で前記ペルチェ素子アセンブリ23に電流が流れるときに、グリップ部の表面が加熱されるように設定されている。
【0029】
なお、前記マイコン33は、パワーFET37のゲートに一定周期のパルス信号を出力しており、該一定周期中のパルス信号のオン時間の割合、即ち前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率を変更することで、該ペルチェ素子アセンブリ23による冷却又は加熱作用の強さを制御する。
【0030】
前記サーミスタ32は、一方の接続点が抵抗Ruを介して所定電圧Vccに接続されるとともに、他方の接続点がグランドGNDに接地されている。そして、サーミスタ32及び抵抗Ruの接続点Cは、前記マイコン33に接続されている。マイコン33は、抵抗Ru及びサーミスタ32による所定電圧Vccの分圧(接続点Cの電圧)を温度信号として入力して、前記サーミスタ32の設けられたグリップ部の温度(検出温度T)を検出する。
【0031】
次に、前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧の極性と、その作用との関係について図3に示した一覧図に基づいて総括して説明する。同図に示されるように、前述の態様でペルチェ素子アセンブリ23の接続点P1をプラス側である所定電圧VBに接続するとともに、接続点P2をマイナス側であるグランドGNDに接続すると、前記ペルチェ素子アセンブリ23の作用は冷却となる。一方、ペルチェ素子アセンブリ23の接続点P1をマイナス側であるグランドGNDに接続するとともに、接続点P2をプラス側である所定電圧VBに接続すると、前記ペルチェ素子アセンブリ23の作用は加熱となる。以上により、ペルチェ素子アセンブリ23による冷却又は加熱作用が、印加電圧の極性によって切り替えられる。この印加電圧の極性の切り替えが、前記トランジスタTr1,Tr2による前記リレー36(コイルL1,L2)の選択的な駆動によって行われることはいうまでもない。
【0032】
次に、前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する電圧の印加態様について総括して説明する。なお、図4は、冷却・加熱のそれぞれにおける印加電圧を示すタイムチャートであり、図5は、同じく冷却・加熱のそれぞれにおける印加電圧のデューティ比率と前記ペルチェ素子アセンブリ23による冷却・加熱作用の強さとの関係を示す説明図である。図4では、冷却時の印加電圧の極性をプラス側で表している。
【0033】
図4に示されるように、例えば冷却時に前記ペルチェ素子アセンブリ23の両接続点P1,P2間に印加される電圧は、所定周期tcを有するオン・オフ波形となっており、各周期tc内の通電時間τcにおいて所定電圧VBが印加される。これは、各ペルチェ素子22に対しその吸熱の効率が優れる2V(=12/6V)程度の電圧を供給してその損失を抑えるためである。なお、通電時間τcを周期tcで除した値の百分率(=τc/tc×100)[%]が、冷却時の前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率Dcである。前記マイコン33は、デューティ比率Dcを変更することで、前記ペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用の強さを制御する。
【0034】
一方、加熱時に前記ペルチェ素子アセンブリ23の両接続点P1,P2間に印加される電圧は、所定周期thを有するオン・オフ波形となっており、各周期th内の通電時間τhにおいて逆極性となる所定電圧−VBが印加される。なお、通電時間τhを周期thで除した値の百分率(=τh/th×100)[%]が、加熱時の前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率Dhである。前記マイコン33は、デューティ比率Dhを変更することで、前記ペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用の強さを制御する。
【0035】
図5に示されるように、例えば前記ペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用の強さは、冷却時の印加電圧のデューティ比率Dcが0〜100%の間で増減されることで、該デューティ比率Dcの0%で皆無となり、100%で最大となるように連続的に制御される。同様に、前記ペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用の強さは、加熱時の印加電圧のデューティ比率Dhが0〜100%の間で増減されることで、該デューティ比率Dhの0%で皆無となり、100%で最大となるように連続的に制御される。
【0036】
次に、本実施形態におけるデューティ比率Dc,Dhの設定態様について説明する。なお、両デューティ比率Dc,Dhは、基本的にステアリングホイール(グリップ部)の各対応する所定温度範囲において、該ステアリングホイールの温度の変化に対し比例関係で変化するように設定される。各デューティ比率Dc,Dhの制御は、前記マイコン33による制御プログラムの実行によって行われる。
【0037】
まず、冷却作用時のデューティ比率Dcの設定態様について説明する。図6は、冷却作用時の検出温度T(ステアリングホイールの温度)とデューティ比率Dcとの関係を示す
マップである。同図に示されるように、検出温度Tが所定温度値Tc0(例えば43.3°C)から所定温度値Tcc(例えば60°C)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dcは、0%から100%へと比例関係で推移するように設定されている。そして、検出温度Tが所定温度値Tc0よりも低温側にあるとき(T<Tc0)にはデューティ比率Dcは0%に設定され、検出温度Tが所定温度値Tccよりも高温側にあるとき(T>Tcc)にはデューティ比率Dcは100%に設定される。なお、冷却作用時の目標の温度である冷却目標温度値Tct(例えば50°C)において、該冷却目標温度値Tctを保持するための所定のデューティ比率Dct(例えば40%)が設定されている。
【0038】
また、本実施形態では、ステアリングホイールの冷却開始時の検出温度T(実際には、左右のサーミスタ32による検出温度Tの平均温度、以下、初期温度値Tcsという)が高いとき、即ち冷却目標温度値Tctから高温側に離れているときには、図6に破線にて併せ示すように、前記比例関係となる所定温度範囲がシフト量ΔTchだけ低温側にシフト(平行移動)されるようになっている。このとき、検出温度Tが温度値Tc01(=Tc0−ΔTch)から温度値Tcc1(=Tcc−ΔTch)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dcは、0%から100%へと比例関係で推移する。また、デューティ比率Dcが100%以下に変化する温度値Tcc1は、冷却目標温度値Tctにより近付けられる。従って、デューティ比率Dcは、100%を上限としてより大きくなるように変更設定される。
【0039】
つまり、検出温度Tに対するデューティ比率Dcの制御パターンは、破線で示したパターンPc1と、実線で示したパターン(基本パターン)Pc2との複数の異なる制御パターンからなり、検出温度Tと冷却目標温度値Tctとの大小関係に基づいて該制御パターンが変更(切替)される。具体的には、検出温度Tが冷却目標温度値Tct以上の場合(高温側からの冷却開始時)にはパターンPc1が設定され、検出温度Tが冷却目標温度値Tct未満の場合(温度低下後)にはパターンPc2が設定される。
【0040】
従って、冷却開始直後は、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに達するまで、図6に破線にて示したパターンPc1が設定される。これにより、検出温度Tが冷却目標温度値Tct以上の場合に、より大きいデューティ比率Dcにてペルチェ素子アセンブリ23による強い冷却作用が行われることになり、ステアリングホイールは迅速に冷却目標温度値Tctへと温度低下する。
【0041】
そして、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに達すると、図6に実線にて示したパターン(基本パターン)Pc2に変更される。これにより、検出温度Tが冷却目標温度値Tct未満の場合に、低温側にシフトされる前の本来のデューティ比率Dcにてペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用が行われることになり、ステアリングホイールは冷却目標温度値Tctに安定した状態で温度制御される。
【0042】
ここで、初期温度値Tcs及びシフト量ΔTch(制御パターンが変更度合い)の関係について、図7のマップに基づいて説明する。同図に示すように、これら初期温度値Tcs及びシフト量ΔTchは、初期温度値Tcsが高く冷却目標温度値Tctから高温側に大きく離れるときほどシフト量ΔTchが大きくなり、反対に初期温度値Tcsが低く初期温度値Tcsが冷却目標温度値Tctから高温側に小さく離れるときほどシフト量ΔTchが小さくなるように単調非減少の関係を有している。
【0043】
従って、例えば雰囲気温度が高く初期温度値Tcsが高いときには、シフト量ΔTchが大きくなって、デューティ比率Dcが100%以下に変化する温度値Tcc1が冷却目標温度値Tctにより近付けられ、検出温度T(ステアリングホイールの温度)が冷却目標温度値Tctの直近になるまで、より大きいデューティ比率Dcにてペルチェ素子アセ
ンブリ23による強い冷却作用が行われる。これにより、ステアリングホイールの温度を迅速に低下させることができる。
【0044】
一方、雰囲気温度が低く初期温度値Tcsが低いときには、シフト量ΔTchが小さくなって、温度値Tcc1及び冷却目標温度値Tctに差が設けられ、検出温度T(ステアリングホイールの温度)が冷却目標温度値Tctの直近になるまでのデューティ比率Dcがより小さくなってペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用が抑制される。これにより、ステアリングホイールの温度が低温側へとアンダーシュートする程度を減少させることができる。
【0045】
次に、本実施形態における検出温度T(ステアリングホイールの温度)及びデューティ比率Dcの推移について説明する。
図8(a)(b)は、それぞれ検出温度T及びデューティ比率Dcの推移を示すタイムチャートである。なお、図8(a)には、パターン(基本パターン)Pc2のみによる従来形態での検出温度Tの推移を破線にて併せ図示している。同図に示されるように、時刻τcsにおいて冷却が開始されたとして、このときの初期温度値Tcsに応じたシフト量ΔTchに基づいてパターンPc1が設定されたとする。このとき、初期温度値Tcsが温度値Tcc1よりも高温であれば、検出温度Tが該温度値Tcc1に達するまでデューティ比率Dcは100%に設定される。そして、100%のデューティ比率Dcによりペルチェ素子アセンブリ23による強い冷却作用が行われる。
【0046】
検出温度Tが温度値Tcc1に達した後は、検出温度Tが前記冷却目標温度値Tctに達する時刻τct1までデューティ比率Dcは漸減されるものの、該デューティ比率Dcは大きい値(100%の近く)で推移することになり、依然としてペルチェ素子アセンブリ23による強い冷却作用が行われる。
【0047】
以上より、検出温度Tは、冷却目標温度値Tctへと迅速に低下する。なお、図8には、従来形態において前記冷却目標温度値Tctに達する時刻を時刻τctとして併記している。同図から明らかなように、本実施形態における冷却開始から冷却目標温度値Tctに達するまでの時間Δτcst1(=τct1−τcs)は、従来形態における冷却開始から冷却目標温度値Tctに達するまでの時間Δτcst(=τct−τcs)に比べて短くなっていることが確認される。
【0048】
そして、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに達した後は、パターンPc2に変更され、デューティ比率Dcは前記所定のデューティ比率Dctまで急減されて該デューティ比率Dctの近くの小さい値で推移することになる。従って、ペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用が抑制されて、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに安定した状態で保持される。
【0049】
次に、加熱作用時のデューティ比率Dhの設定態様について説明する。なお、デューティ比率Dhは、加熱作用に対応して前記所定温度範囲及び目標とする温度変化の方向が異なることを除けば、前記デューティ比率Dcと同様の処理で設定される。
【0050】
図9は、加熱作用時の検出温度T(ステアリングホイールの温度)とデューティ比率Dhとの関係を示すマップである。同図に示されるように、検出温度Tが所定温度値Th0(例えば34.3°C)から所定温度値Thc(例えば20°C)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dhは、0%から100%へと比例関係で推移するように設定されている。そして、検出温度Tが所定温度値Th0よりも高温側にあるとき(T>Th0)にはデューティ比率Dhは0%に設定され、検出温度Tが所定温度値Thcよりも低温側にあるとき(T<Thc)にはデューティ比率Dhは100%に設定される。なお、加熱作
用時の目標の温度である加熱目標温度値Tht(例えば30°C)において、該加熱目標温度値Thtを保持するための所定のデューティ比率Dht(例えば30%)が設定されている。
【0051】
また、本実施形態では、ステアリングホイールの加熱開始時の検出温度T(実際には、左右のサーミスタ32による検出温度Tの平均温度、以下、初期温度値Thsという)が低いとき、即ち加熱目標温度値Thtから低温側に離れているときには、図9に破線にて併せ示すように、前記比例関係となる所定温度範囲がシフト量ΔThhだけ高温側にシフト(平行移動)されるようになっている。このとき、検出温度Tが温度値Th01(=Th0−ΔThh)から温度値Thc1(=Thc−ΔThh)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dhは、0%から100%へと比例関係で推移する。また、デューティ比率Dhが100%以下に変化する温度値Thc1は、加熱目標温度値Thtにより近付けられる。従って、デューティ比率Dhは、100%を上限としてより大きくなるように変更設定される。
【0052】
つまり、検出温度Tに対するデューティ比率Dhの制御パターンは、破線で示したパターンPh1と、実線で示したパターン(基本パターン)Ph2との複数の異なる制御パターンからなり、検出温度Tと加熱目標温度値Thtとの大小関係に基づいて該制御パターンが変更(切替)される。具体的には、検出温度Tが加熱目標温度値Tht以下の場合(低温側からの加熱開始時)にはパターンPh1が設定され、検出温度Tが加熱目標温度値Tht超過の場合(温度上昇後)にはパターンPh2が設定される。
【0053】
従って、加熱開始直後は、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに達するまで、図9に破線にて示したパターンPh1が設定される。これにより、検出温度Tが加熱目標温度値Tht以下の場合に、より大きいデューティ比率Dhにてペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われることになり、ステアリングホイールは迅速に加熱目標温度値Thtへと温度上昇する。
【0054】
そして、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに達すると、図9に実線にて示したパターン(基本パターン)Ph2に変更される。これにより、検出温度Tが加熱目標温度値Tht超過の場合に、高温側にシフトされる前の本来のデューティ比率Dhにてペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用が行われることになり、ステアリングホイールは加熱目標温度値Thtに安定した状態で温度制御される。
【0055】
ここで、初期温度値Ths及びシフト量ΔThh(制御パターンが変更度合い)の関係について、図10のマップに基づいて説明する。同図に示すように、これら初期温度値Ths及びシフト量ΔThhは、初期温度値Thsが低く加熱目標温度値Thtから低温側に大きく離れるときほどシフト量ΔThhが大きくなり、反対に初期温度値Thsが高く初期温度値Thsが加熱目標温度値Thtから低温側に小さく離れるときほどシフト量ΔThhが小さくなるように単調非減少の関係を有している。
【0056】
従って、例えば雰囲気温度が低く初期温度値Thsが低いときには、シフト量ΔThhが大きくなって、デューティ比率Dhが100%以下に変化する温度値Thc1が加熱目標温度値Thtにより近付けられ、検出温度T(ステアリングホイールの温度)が加熱目標温度値Thtの直近になるまで、より大きいデューティ比率Dhにてペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われる。これにより、ステアリングホイールの温度を迅速に上昇させることができる。
【0057】
一方、雰囲気温度が高く初期温度値Thsが高いときには、シフト量ΔThhが小さくなって、温度値Thc1及び加熱目標温度値Thtに差が設けられ、検出温度T(ステア
リングホイールの温度)が加熱目標温度値Thtの直近になるまでのデューティ比率Dhがより小さくなってペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用が抑制される。これにより、ステアリングホイールの温度が高温側へとオーバーシュートする程度を減少させることができる。
【0058】
次に、本実施形態における検出温度T(ステアリングホイールの温度)及びデューティ比率Dhの推移について説明する。
図11(a)(b)は、それぞれ検出温度T及びデューティ比率Dhの推移を示すタイムチャートである。なお、図11(a)には、パターン(基本パターン)Ph2のみによる従来形態での検出温度Tの推移を破線にて併せ図示している。同図に示されるように、時刻τhsにおいて加熱が開始されたとして、このときの初期温度値Thsに応じたシフト量ΔThhに基づいてパターンPh1が設定されたとする。このとき、初期温度値Thsが温度値Thc1よりも低温であれば、検出温度Tが該温度値Thc1に達するまでデューティ比率Dhは100%に設定される。そして、100%のデューティ比率Dhによりペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われる。
【0059】
検出温度Tが温度値Thc1に達した後は、検出温度Tが前記加熱目標温度値Thtに達する時刻τht1までデューティ比率Dhは漸減されるものの、該デューティ比率Dhは大きい値(100%の近く)で推移することになり、依然としてペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われる。
【0060】
以上より、検出温度Tは、加熱目標温度値Thtへと迅速に低下する。なお、図11には、従来形態において前記加熱目標温度値Thtに達する時刻を時刻τhtとして併記している。同図から明らかなように、本実施形態における加熱開始から加熱目標温度値Thtに達するまでの時間Δτhst1(=τht1−τhs)は、従来形態における加熱開始から加熱目標温度値Thtに達するまでの時間Δτhst(=τht−τhs)に比べて短くなっていることが確認される。
【0061】
そして、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに達した後は、パターンPh2に変更され、デューティ比率Dhは前記所定のデューティ比率Dhtまで急減されて該デューティ比率Dhtの近くの小さい値で推移することになる。従って、ペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用が抑制されて、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに安定した状態で保持される。
【0062】
次に、マイコン33による検出温度T、即ちステアリングホイールの温度の制御態様について図12に示すフローチャートに基づき総括的に説明する。なお、既述のように、左右のグリップ部の温度制御は個別に行われるものの、基本的に左側を右側に言い換えることで同様の処理になる。従って、以下では、左側のグリップ部の温度制御について代表して説明し、右側のグリップ部については詳細な説明を割愛する。
【0063】
同図に示されるように、この制御が起動されると、左右のグリップ部の検出温度Tの平均温度を初期温度値として検出する(ステップS1)。そして、この初期温度値と所定温度(例えば50°C)との大小関係に基づいて、温度調節の方向(冷却又は加熱)を判断する(ステップS2)。
【0064】
そして、ステップS2で冷却と判断されると、左側用のリレー36を冷却通電の状態に設定する(ステップS3)。具体的には、前記トランジスタTr1によりリレー36の一方のコイルL1を駆動して、ペルチェ素子アセンブリ23により冷却作用が行われるように、印加電圧の極性を切り替える。このとき、ステップS1で検出された初期温度値が冷却時の初期温度値Tcsとして設定される。
【0065】
次いで、この初期温度値Tcsに基づき、図7で示したマップに従って冷却時の制御パターンの変更分であるシフト量ΔTchを算出する(ステップS4)。そして、その後は、左側のグリップ部の温度を前記冷却目標温度値Tctに制御するための処理が演算周期に合わせて繰り返される(ステップS5)。
【0066】
すなわち、現在の左側のグリップ部の検出温度Tを検出する(ステップS11)。そして、この検出温度Tが前記冷却目標温度値Tct以上か否かを判断する(ステップS12)。
【0067】
ステップS12で検出温度Tが前記冷却目標温度値Tct以上と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔTchで補正した制御パターン(パターンPc1、図6参照)が設定される(ステップS13)。そして、検出温度Tに基づき、補正後の制御パターンに従って、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23に対するデューティ比率Dcを算出する(ステップS14)。
【0068】
また、ステップS12で検出温度Tが前記冷却目標温度値Tct未満と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔTchで補正されない制御パターン(パターンPc2、図6参照)が設定される(ステップS15)。
【0069】
そして、ステップS14,S15のいずれかで算出されたデューティ比率Dcとなるパルスを、左側用のパワーFET37に出力する(ステップS16)。これにより、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23は、設定されたデューティ比率Dcに応じた強さで冷却作用を行う。そして、ステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。
【0070】
一方、ステップS2で加熱と判断されると、左側用のリレー36を加熱通電の状態に設定する(ステップS6)。具体的には、前記トランジスタTr2によりリレー36の他方のコイルL2を駆動して、ペルチェ素子アセンブリ23により加熱作用が行われるように、印加電圧の極性を切り替える。このとき、ステップS1で検出された初期温度値が加熱時の初期温度値Thsとして設定される。
【0071】
次いで、この初期温度値Thsに基づき、図10で示したマップに従って加熱時の制御パターンの変更分であるシフト量ΔThhを算出する(ステップS7)。そして、その後は、左側のグリップ部の温度を前記加熱目標温度値Thtに制御するための処理が演算周期に合わせて繰り返される(ステップS8)。
【0072】
すなわち、現在の左側のグリップ部の検出温度Tを検出する(ステップS21)。そして、この検出温度Tが前記加熱目標温度値Tht以下か否かを判断する(ステップS22)。
【0073】
ステップS22で検出温度Tが前記加熱目標温度値Tht以下と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔThhで補正した制御パターン(パターンPh1、図9参照)が設定される(ステップS23)。そして、検出温度Tに基づき、補正後の制御パターンに従って、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23に対するデューティ比率Dhを算出する(ステップS24)。
【0074】
また、ステップS22で検出温度Tが前記加熱目標温度値Tht超過と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔThhで補正されない制御パターン(パターンPh2、図9参照)が設定される(ステップS25)。
【0075】
そして、ステップS24,S25のいずれかで算出されたデューティ比率Dhとなるパルスを、左側用のパワーFET37に出力する(ステップS26)。これにより、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23は、設定されたデューティ比率Dhに応じた強さで加熱作用を行う。そして、ステップS21に戻って同様の処理を繰り返す。
【0076】
なお、右側のグリップ部についても同様な処理が行われる。以上により、左右のグリップ部は、それを握る運転者にとって快適な温度に調節される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0077】
(1)本実施形態では、温度制御開始時に検出されたステアリングホイールの温度(検出温度T)が、目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき(具体的には、冷却時にあっては検出温度Tが冷却目標温度値Tct以上のとき、加熱時にあっては検出温度Tが加熱目標温度値Tht以下のとき)には、前記デューティ比率Dc,Dhが大きくなるように前記比例関係となる所定温度範囲がシフトされる。従って、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)に対する印加電圧のデューティ比率Dc,Dhがより大きく設定されて該ペルチェ素子アセンブリ23の作用が強められ、ステアリングホイールの温度は目標温度へとより迅速に到達される。従って、ステアリングホイールの温度を迅速に調節することができる。
【0078】
そして、ステアリングホイールの温度(検出温度T)が目標温度に達すると、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)に対する印加電圧のデューティ比率Dc,Dhが本来の比例関係に基づくデューティ比率に設定されて該ペルチェ素子アセンブリ23の作用が抑えられ、ステアリングホイールの目標温度への温度制御がより安定化される。従って、ステアリングホイールの温度を安定した状態で調節することができる。
【0079】
(2)本実施形態では、比例関係となる所定温度範囲のシフト量は、温度制御開始時に検出されたステアリングホイールの温度(初期温度値Tcs,Ths)が目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように補正される。従って、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、前記デューティ比率Dc,Dhがより大きくなるように前記比例関係となる所定温度範囲がシフトされる。つまり、前記ペルチェ素子アセンブリ23の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、該ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率Dc,Dhがより大きく設定されてペルチェ素子アセンブリ23の作用が強められ、ステアリングホイールの温度を目標温度へとより迅速に到達させることができる。
【0080】
(3)本実施形態では、前記比例関係となる所定温度範囲のシフトは、ステアリングホイールの温度制御開始時に1回行うのみであるため、例えば複数回行う場合に比べて演算負荷を軽減することができる。
【0081】
また、前記比例関係となる所定温度範囲のシフトを初期温度(初期温度値Tcs,Ths)、即ち温度制御開始時の周辺温度(雰囲気温度)に基づいて好適に行うことができる。
【0082】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態においては、検出温度Tに対するデューティ比率Dc,Dhの制御パターンをシフト量ΔTch,ΔThhで変更(切替)して、ステアリングホイールの温度制御態様を補正した。これに対し、検出温度T自体をシフト量ΔTch,ΔThhで補正して実質的に制御パターンを変更(切替)するようにしても、本発明を何ら逸脱するものではない。
【0083】
・前記実施形態においては、検出温度Tに対するデューティ比率Dc,Dhの制御パターンの変更(切替)を、検出温度Tと目標温度値Tct,Thtとの大小比較のみで行ったが、例えば検出温度Tが最初に目標温度値Tct,Thtに達した後は、この制御パターンの変更(切替)を禁止してもよい。例えば、シフト量ΔTch,ΔThhで補正されない制御パターンに固定してもよいし、デューティ比率Dc,Dhを一定値に固定してもよい。
【0084】
・前記実施形態において、ペルチェ素子22の個数は一例であり、例えば1個だけであってもよい。ただし、各ペルチェ素子に対し高効率な印加電圧(2V程度)が設定される好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態を示す断面図。
【図2】同実施形態を示す回路図。
【図3】ペルチェ素子アセンブリに対する印加電圧の極性と、その作用との関係を示す一覧図。
【図4】ペルチェ素子アセンブリに対する印加電圧を示すタイムチャート。
【図5】印加電圧のデューティ比率とペルチェ素子アセンブリによる冷却・加熱作用の強さとの関係を示す説明図。
【図6】冷却作用時の検出温度とデューティ比率との関係を示すマップ。
【図7】冷却作用時の初期温度値とシフト量との関係を示すマップ。
【図8】(a)(b)は、冷却作用時の検出温度及びデューティ比率の推移を示すタイムチャート。
【図9】加熱作用時の検出温度とデューティ比率との関係を示すマップ。
【図10】加熱作用時の初期温度値とシフト量との関係を示すマップ。
【図11】(a)(b)は、加熱作用時の検出温度及びデューティ比率の推移を示すタイムチャート。
【図12】同実施形態の温度制御態様を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
22…ペルチェ素子、23…ペルチェ素子アセンブリ、32…サーミスタ(温度検出手段)、31…制御ユニット、33…マイコン(補正手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの温度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールの温度制御装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この装置は、発熱・吸熱する熱電変換素子としてのペルチェ素子をステアリングホイールに内蔵しており、該ステアリングホイールの現在の温度(実温度)を温度センサ(サーミスタ)により検出して、所定の温度にするように、加熱・冷却を選択すべくペルチェ素子への印加電圧の極性を切り替えるととともに、該印加電圧のオン・オフ(断続)制御によりステアリングホイールの温度を調節する。
【特許文献1】特開昭60−88679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようにペルチェ素子への印加電圧のオン・オフ制御によりステアリングホイールの温度を調節する場合、例えば実温度の検出遅れ等の影響で温度制御が不安定となり、例えばハンチングを起こす可能性がある。
【0004】
一方、ペルチェ素子への印加電圧の比例制御によりステアリングホイールの温度を調節することも検討されている。具体的には、ステアリングホイールの現在の温度を検出し、該ステアリングホイールの温度及び目標温度などから設定したパターン(マップ)に基づいて、ペルチェ素子への印加電圧のデューティ比率を比例制御する。これにより、ペルチェ素子による加熱・冷却の作用の強さを調節し、ステアリングホイールの温度を調節する。
【0005】
しかしながら、この場合であっても、デューティ比率の比例制御に係るステアリングホイールの所定温度範囲において、例えばステアリングホイールの温度の変化に対するデューティ比率の変化が急峻であれば、前述したオン・オフ制御と同様、温度制御が不安定となり、例えばハンチングを起こす可能性がある。そして、ステアリングホイールの温度が変動して、それを握る運転者に不快適を与えてしまう。
【0006】
一方、ステアリングホイールの温度の変化に対するデューティ比率の変化が緩慢であれば、ペルチェ素子による加熱・冷却の作用も緩やかになって、目標温度への到達に長い時間を要してしまう。そして、ステアリングホイールが、それを握る運転者の快適に感じる温度になるのが遅れてしまう。
【0007】
本発明の目的は、ステアリングホイールの温度を迅速且つ安定に調節することができるステアリングホイールの温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングホイールに設けられたペルチェ素子と、前記ステアリングホイールの温度を検出する温度検出手段とを備え、前記ステアリングホイールの所定温度範囲において、該ステアリングホイールの温度の変化に対し前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率を比例関係で変化させて、前記ステアリングホイールの温度を目標温度に制御するステアリングホイールの温度制御装置において、所定タイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が、前
記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき、前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度に達するまで、前記デューティ比率が大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲をシフトする補正手段を備えたことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記所定タイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が、前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき、即ち前記目標温度へと調節すべく前記ペルチェ素子を作用させるときには、前記補正手段により、前記デューティ比率が大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲がシフトされる。従って、前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率がより大きく設定されて該ペルチェ素子の作用が強められ、前記ステアリングホイールの温度は前記目標温度へとより迅速に到達される。従って、前記ステアリングホイールの温度を迅速に調節することができる。
【0010】
そして、前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度に達すると、前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率が本来の比例関係に基づくデューティ比率に設定されて該ペルチェ素子の作用が抑えられ、前記ステアリングホイールの前記目標温度への温度制御がより安定化される。従って、ステアリングホイールの温度を安定した状態で調節することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、前記補正手段は、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフト量を補正することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフト量は、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように前記補正手段により補正される。従って、前記ペルチェ素子の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、前記補正手段により、前記デューティ比率がより大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲がシフトされる。つまり、前記ペルチェ素子の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率がより大きく設定されて該ペルチェ素子の作用が強められ、前記ステアリングホイールの温度を前記目標温度へとより迅速に到達させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度は、該ステアリングホイールの温度制御開始時に検出された初期温度であることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記補正手段による前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフトは、前記ステアリングホイールの温度制御開始時に1回行うのみであるため、例えば複数回行う場合に比べて演算負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至3に記載の発明では、ステアリングホイールの温度を迅速且つ安定に調節することができるステアリングホイールの温度制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係るステアリングホイールを示す断面図である。同図に示される
ように、ステアリングホイールは、車両のステアリングシャフトに取着される取付部11と、該取付部11から放射状に延出する複数(4本)のスポーク部12と、これらスポーク部12の先端部を連結する円環状のリング部13とを備えて構成される。
【0017】
前記リング部13は、例えばアルミニウムからなる蓄熱体としての円環状のリム部21を備える。図1に拡大して示すように、このリム部21には、上下に隣り合う前記スポーク部12間で前記リング部13に形成される左右のグリップ部に合わせて、複数(12個)のペルチェ素子22が配設されている。これら12個のペルチェ素子22は、前記リング部13の左右のグリップ部に6個ずつ配置されている。各グリップ部に配置された6個のペルチェ素子22は、電気的に直列接続されて、ペルチェ素子アセンブリ23を構成する。各ペルチェ素子アセンブリ23は、対応するグリップ部において前記リム部21と熱伝導的に接続されている。また、各ペルチェ素子アセンブリ23を構成する6個のペルチェ素子22は、リング部13の外周側及び内周側に3個ずつで配置されている。
【0018】
各ペルチェ素子アセンブリ23において、前記リング部13の外周側及び内周側に配置された3個のペルチェ素子22には、例えば銅からなる伝熱プレート24が装着されている。各伝熱プレート24は、対応する3個のペルチェ素子22と熱伝導的に接続されている。
【0019】
そして、前記リム部21は、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)及び伝熱プレート24とともに、例えば本皮や合成皮革からなる表皮25により覆われている。
【0020】
図1に併せ示したように、各グリップ部のペルチェ素子アセンブリ23は、マイクロコンピュータ(マイコン)を備えた制御ユニット31に電気的に接続されており、該制御ユニット31からの通電出力に従って対応するグリップ部の表面を加熱又は冷却する。具体的には、例えばグリップ部の表面を冷却すべく通電出力された場合、ペルチェ素子アセンブリ23は、前記伝熱プレート24から吸熱するとともに、前記リム部21の熱容量を利用して該リム部21に蓄熱・熱放散する。これにより、表皮25の熱がリム部21へと移動し、グリップ部の表面が冷却される。
【0021】
なお、各グリップ部には、その温度を検出する温度検出手段としてのサーミスタ32が設けられている。制御ユニット31は、各サーミスタ32からの温度信号入力によって対応するグリップ部の温度を検出するとともに、該検出された温度に応じて前記ペルチェ素子アセンブリ23への通電出力を制御する。つまり、制御ユニット31は、左右のグリップ部の温度調節を個別に行う。前記リング部13において、各グリップ部がペルチェ素子アセンブリ23等による温度調節領域を形成することはいうまでもない。
【0022】
次に、制御ユニット31の電気的構成について、図2の回路図に従って説明する。
同図に示されるように、制御ユニット31は、各種制御プログラムを格納するとともに該制御プログラムを実行するマイコン33を備える。このマイコン33は、定電圧電源回路34を介して所定電圧VB(例えば12V)を有するバッテリ35のプラス端子と電気的に接続されるとともに、グランドGNDに接地されている。定電圧電源回路34は、前記マイコン33に所定電圧Vcc(例えば5V)を電源として供給する。
【0023】
前記マイコン33は、左右のグリップ部に配設されたペルチェ素子アセンブリ23及びサーミスタ32とそれぞれ電気的に接続されている。なお、マイコン33との電気的な接続構造は、左右のグリップ部で同様であるため、以下では、左側のグリップ部に配設されたペルチェ素子アセンブリ23及びサーミスタ32との電気的な接続構造を代表して説明し、右側のグリップ部については同一の符号を付して詳細な説明を割愛する。
【0024】
前記マイコン33は、抵抗Rb1,Rb2を介してNPN型のトランジスタTr1,Tr2のベースにそれぞれ接続されるとともに、これらトランジスタTr1,Tr2のコレクタは、リレー36を構成するコイルL1,L2の一方の接続点にそれぞれ接続されている。なお、トランジスタTr1,Tr2のエミッタは、グランドGNDに接地されている。
【0025】
前記リレー36は、前記バッテリ35のプラス端子に電気的に接続された一対の接点a1,a2を備えるとともに、これら接点a1,a2は、前記コイルL1,L2の他方の接続点にそれぞれ接続されている。また、前記リレー36は、一対の接点b1,b2を備えるとともに、これら接点b1,b2は、N型のパワーFET37のドレインに接続されている。なお、パワーFET37のゲートは、前記マイコン33に接続されるとともに、そのソースは、グランドGNDに接地されている。
【0026】
さらに、前記リレー36は、接点a1,b1間及び接点a2,b2間で接点を切り替える一対の可動子c1,c2を備える。これら可動子c1,c2は、前記ペルチェ素子アセンブリ23の両接続点P1,P2にそれぞれ接続されている。一方の可動子c1は、通常は接点b1に接続されており、前記マイコン33によりトランジスタTr1がオンされて、前記コイルL1が通電されると、前記可動子c1は、前記コイルL1に駆動されて接点a1(所定電圧VB)に接続される。同様に、他方の可動子c2は、通常は接点b2に接続されており、前記マイコン33によりトランジスタTr2がオンされて、前記コイルL2が通電されると、前記可動子c2は、前記コイルL2に駆動されて接点a2(所定電圧VB)に接続される。
【0027】
従って、例えば前記コイルL1の駆動により一方の可動子c1を接点a1に接続したとき、前記マイコン33によりパワーFET37がオンされると、接点b2はパワーFET37を介してグランドGNDに接地される。そして、前記ペルチェ素子アセンブリ23には、可動子c1に接続された一方の接続点P1から、可動子c2に接続された他方の接続点P2へと電流が流れる。本実施形態では、上述の方向で前記ペルチェ素子アセンブリ23に電流が流れるときに、グリップ部の表面が冷却されるように設定されている。
【0028】
また、前記コイルL2の駆動により他方の可動子c2を接点a2に接続したとき、前記マイコン33によりパワーFET37がオンされると、接点b1はパワーFET37を介してグランドGNDに接地される。そして、前記ペルチェ素子アセンブリ23には、可動子c2に接続された他方の接続点P2から、可動子c1に接続された一方の接続点P1へと電流が流れる。本実施形態では、上述の方向で前記ペルチェ素子アセンブリ23に電流が流れるときに、グリップ部の表面が加熱されるように設定されている。
【0029】
なお、前記マイコン33は、パワーFET37のゲートに一定周期のパルス信号を出力しており、該一定周期中のパルス信号のオン時間の割合、即ち前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率を変更することで、該ペルチェ素子アセンブリ23による冷却又は加熱作用の強さを制御する。
【0030】
前記サーミスタ32は、一方の接続点が抵抗Ruを介して所定電圧Vccに接続されるとともに、他方の接続点がグランドGNDに接地されている。そして、サーミスタ32及び抵抗Ruの接続点Cは、前記マイコン33に接続されている。マイコン33は、抵抗Ru及びサーミスタ32による所定電圧Vccの分圧(接続点Cの電圧)を温度信号として入力して、前記サーミスタ32の設けられたグリップ部の温度(検出温度T)を検出する。
【0031】
次に、前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧の極性と、その作用との関係について図3に示した一覧図に基づいて総括して説明する。同図に示されるように、前述の態様でペルチェ素子アセンブリ23の接続点P1をプラス側である所定電圧VBに接続するとともに、接続点P2をマイナス側であるグランドGNDに接続すると、前記ペルチェ素子アセンブリ23の作用は冷却となる。一方、ペルチェ素子アセンブリ23の接続点P1をマイナス側であるグランドGNDに接続するとともに、接続点P2をプラス側である所定電圧VBに接続すると、前記ペルチェ素子アセンブリ23の作用は加熱となる。以上により、ペルチェ素子アセンブリ23による冷却又は加熱作用が、印加電圧の極性によって切り替えられる。この印加電圧の極性の切り替えが、前記トランジスタTr1,Tr2による前記リレー36(コイルL1,L2)の選択的な駆動によって行われることはいうまでもない。
【0032】
次に、前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する電圧の印加態様について総括して説明する。なお、図4は、冷却・加熱のそれぞれにおける印加電圧を示すタイムチャートであり、図5は、同じく冷却・加熱のそれぞれにおける印加電圧のデューティ比率と前記ペルチェ素子アセンブリ23による冷却・加熱作用の強さとの関係を示す説明図である。図4では、冷却時の印加電圧の極性をプラス側で表している。
【0033】
図4に示されるように、例えば冷却時に前記ペルチェ素子アセンブリ23の両接続点P1,P2間に印加される電圧は、所定周期tcを有するオン・オフ波形となっており、各周期tc内の通電時間τcにおいて所定電圧VBが印加される。これは、各ペルチェ素子22に対しその吸熱の効率が優れる2V(=12/6V)程度の電圧を供給してその損失を抑えるためである。なお、通電時間τcを周期tcで除した値の百分率(=τc/tc×100)[%]が、冷却時の前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率Dcである。前記マイコン33は、デューティ比率Dcを変更することで、前記ペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用の強さを制御する。
【0034】
一方、加熱時に前記ペルチェ素子アセンブリ23の両接続点P1,P2間に印加される電圧は、所定周期thを有するオン・オフ波形となっており、各周期th内の通電時間τhにおいて逆極性となる所定電圧−VBが印加される。なお、通電時間τhを周期thで除した値の百分率(=τh/th×100)[%]が、加熱時の前記ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率Dhである。前記マイコン33は、デューティ比率Dhを変更することで、前記ペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用の強さを制御する。
【0035】
図5に示されるように、例えば前記ペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用の強さは、冷却時の印加電圧のデューティ比率Dcが0〜100%の間で増減されることで、該デューティ比率Dcの0%で皆無となり、100%で最大となるように連続的に制御される。同様に、前記ペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用の強さは、加熱時の印加電圧のデューティ比率Dhが0〜100%の間で増減されることで、該デューティ比率Dhの0%で皆無となり、100%で最大となるように連続的に制御される。
【0036】
次に、本実施形態におけるデューティ比率Dc,Dhの設定態様について説明する。なお、両デューティ比率Dc,Dhは、基本的にステアリングホイール(グリップ部)の各対応する所定温度範囲において、該ステアリングホイールの温度の変化に対し比例関係で変化するように設定される。各デューティ比率Dc,Dhの制御は、前記マイコン33による制御プログラムの実行によって行われる。
【0037】
まず、冷却作用時のデューティ比率Dcの設定態様について説明する。図6は、冷却作用時の検出温度T(ステアリングホイールの温度)とデューティ比率Dcとの関係を示す
マップである。同図に示されるように、検出温度Tが所定温度値Tc0(例えば43.3°C)から所定温度値Tcc(例えば60°C)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dcは、0%から100%へと比例関係で推移するように設定されている。そして、検出温度Tが所定温度値Tc0よりも低温側にあるとき(T<Tc0)にはデューティ比率Dcは0%に設定され、検出温度Tが所定温度値Tccよりも高温側にあるとき(T>Tcc)にはデューティ比率Dcは100%に設定される。なお、冷却作用時の目標の温度である冷却目標温度値Tct(例えば50°C)において、該冷却目標温度値Tctを保持するための所定のデューティ比率Dct(例えば40%)が設定されている。
【0038】
また、本実施形態では、ステアリングホイールの冷却開始時の検出温度T(実際には、左右のサーミスタ32による検出温度Tの平均温度、以下、初期温度値Tcsという)が高いとき、即ち冷却目標温度値Tctから高温側に離れているときには、図6に破線にて併せ示すように、前記比例関係となる所定温度範囲がシフト量ΔTchだけ低温側にシフト(平行移動)されるようになっている。このとき、検出温度Tが温度値Tc01(=Tc0−ΔTch)から温度値Tcc1(=Tcc−ΔTch)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dcは、0%から100%へと比例関係で推移する。また、デューティ比率Dcが100%以下に変化する温度値Tcc1は、冷却目標温度値Tctにより近付けられる。従って、デューティ比率Dcは、100%を上限としてより大きくなるように変更設定される。
【0039】
つまり、検出温度Tに対するデューティ比率Dcの制御パターンは、破線で示したパターンPc1と、実線で示したパターン(基本パターン)Pc2との複数の異なる制御パターンからなり、検出温度Tと冷却目標温度値Tctとの大小関係に基づいて該制御パターンが変更(切替)される。具体的には、検出温度Tが冷却目標温度値Tct以上の場合(高温側からの冷却開始時)にはパターンPc1が設定され、検出温度Tが冷却目標温度値Tct未満の場合(温度低下後)にはパターンPc2が設定される。
【0040】
従って、冷却開始直後は、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに達するまで、図6に破線にて示したパターンPc1が設定される。これにより、検出温度Tが冷却目標温度値Tct以上の場合に、より大きいデューティ比率Dcにてペルチェ素子アセンブリ23による強い冷却作用が行われることになり、ステアリングホイールは迅速に冷却目標温度値Tctへと温度低下する。
【0041】
そして、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに達すると、図6に実線にて示したパターン(基本パターン)Pc2に変更される。これにより、検出温度Tが冷却目標温度値Tct未満の場合に、低温側にシフトされる前の本来のデューティ比率Dcにてペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用が行われることになり、ステアリングホイールは冷却目標温度値Tctに安定した状態で温度制御される。
【0042】
ここで、初期温度値Tcs及びシフト量ΔTch(制御パターンが変更度合い)の関係について、図7のマップに基づいて説明する。同図に示すように、これら初期温度値Tcs及びシフト量ΔTchは、初期温度値Tcsが高く冷却目標温度値Tctから高温側に大きく離れるときほどシフト量ΔTchが大きくなり、反対に初期温度値Tcsが低く初期温度値Tcsが冷却目標温度値Tctから高温側に小さく離れるときほどシフト量ΔTchが小さくなるように単調非減少の関係を有している。
【0043】
従って、例えば雰囲気温度が高く初期温度値Tcsが高いときには、シフト量ΔTchが大きくなって、デューティ比率Dcが100%以下に変化する温度値Tcc1が冷却目標温度値Tctにより近付けられ、検出温度T(ステアリングホイールの温度)が冷却目標温度値Tctの直近になるまで、より大きいデューティ比率Dcにてペルチェ素子アセ
ンブリ23による強い冷却作用が行われる。これにより、ステアリングホイールの温度を迅速に低下させることができる。
【0044】
一方、雰囲気温度が低く初期温度値Tcsが低いときには、シフト量ΔTchが小さくなって、温度値Tcc1及び冷却目標温度値Tctに差が設けられ、検出温度T(ステアリングホイールの温度)が冷却目標温度値Tctの直近になるまでのデューティ比率Dcがより小さくなってペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用が抑制される。これにより、ステアリングホイールの温度が低温側へとアンダーシュートする程度を減少させることができる。
【0045】
次に、本実施形態における検出温度T(ステアリングホイールの温度)及びデューティ比率Dcの推移について説明する。
図8(a)(b)は、それぞれ検出温度T及びデューティ比率Dcの推移を示すタイムチャートである。なお、図8(a)には、パターン(基本パターン)Pc2のみによる従来形態での検出温度Tの推移を破線にて併せ図示している。同図に示されるように、時刻τcsにおいて冷却が開始されたとして、このときの初期温度値Tcsに応じたシフト量ΔTchに基づいてパターンPc1が設定されたとする。このとき、初期温度値Tcsが温度値Tcc1よりも高温であれば、検出温度Tが該温度値Tcc1に達するまでデューティ比率Dcは100%に設定される。そして、100%のデューティ比率Dcによりペルチェ素子アセンブリ23による強い冷却作用が行われる。
【0046】
検出温度Tが温度値Tcc1に達した後は、検出温度Tが前記冷却目標温度値Tctに達する時刻τct1までデューティ比率Dcは漸減されるものの、該デューティ比率Dcは大きい値(100%の近く)で推移することになり、依然としてペルチェ素子アセンブリ23による強い冷却作用が行われる。
【0047】
以上より、検出温度Tは、冷却目標温度値Tctへと迅速に低下する。なお、図8には、従来形態において前記冷却目標温度値Tctに達する時刻を時刻τctとして併記している。同図から明らかなように、本実施形態における冷却開始から冷却目標温度値Tctに達するまでの時間Δτcst1(=τct1−τcs)は、従来形態における冷却開始から冷却目標温度値Tctに達するまでの時間Δτcst(=τct−τcs)に比べて短くなっていることが確認される。
【0048】
そして、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに達した後は、パターンPc2に変更され、デューティ比率Dcは前記所定のデューティ比率Dctまで急減されて該デューティ比率Dctの近くの小さい値で推移することになる。従って、ペルチェ素子アセンブリ23による冷却作用が抑制されて、検出温度Tが冷却目標温度値Tctに安定した状態で保持される。
【0049】
次に、加熱作用時のデューティ比率Dhの設定態様について説明する。なお、デューティ比率Dhは、加熱作用に対応して前記所定温度範囲及び目標とする温度変化の方向が異なることを除けば、前記デューティ比率Dcと同様の処理で設定される。
【0050】
図9は、加熱作用時の検出温度T(ステアリングホイールの温度)とデューティ比率Dhとの関係を示すマップである。同図に示されるように、検出温度Tが所定温度値Th0(例えば34.3°C)から所定温度値Thc(例えば20°C)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dhは、0%から100%へと比例関係で推移するように設定されている。そして、検出温度Tが所定温度値Th0よりも高温側にあるとき(T>Th0)にはデューティ比率Dhは0%に設定され、検出温度Tが所定温度値Thcよりも低温側にあるとき(T<Thc)にはデューティ比率Dhは100%に設定される。なお、加熱作
用時の目標の温度である加熱目標温度値Tht(例えば30°C)において、該加熱目標温度値Thtを保持するための所定のデューティ比率Dht(例えば30%)が設定されている。
【0051】
また、本実施形態では、ステアリングホイールの加熱開始時の検出温度T(実際には、左右のサーミスタ32による検出温度Tの平均温度、以下、初期温度値Thsという)が低いとき、即ち加熱目標温度値Thtから低温側に離れているときには、図9に破線にて併せ示すように、前記比例関係となる所定温度範囲がシフト量ΔThhだけ高温側にシフト(平行移動)されるようになっている。このとき、検出温度Tが温度値Th01(=Th0−ΔThh)から温度値Thc1(=Thc−ΔThh)までの範囲にあるときに、デューティ比率Dhは、0%から100%へと比例関係で推移する。また、デューティ比率Dhが100%以下に変化する温度値Thc1は、加熱目標温度値Thtにより近付けられる。従って、デューティ比率Dhは、100%を上限としてより大きくなるように変更設定される。
【0052】
つまり、検出温度Tに対するデューティ比率Dhの制御パターンは、破線で示したパターンPh1と、実線で示したパターン(基本パターン)Ph2との複数の異なる制御パターンからなり、検出温度Tと加熱目標温度値Thtとの大小関係に基づいて該制御パターンが変更(切替)される。具体的には、検出温度Tが加熱目標温度値Tht以下の場合(低温側からの加熱開始時)にはパターンPh1が設定され、検出温度Tが加熱目標温度値Tht超過の場合(温度上昇後)にはパターンPh2が設定される。
【0053】
従って、加熱開始直後は、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに達するまで、図9に破線にて示したパターンPh1が設定される。これにより、検出温度Tが加熱目標温度値Tht以下の場合に、より大きいデューティ比率Dhにてペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われることになり、ステアリングホイールは迅速に加熱目標温度値Thtへと温度上昇する。
【0054】
そして、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに達すると、図9に実線にて示したパターン(基本パターン)Ph2に変更される。これにより、検出温度Tが加熱目標温度値Tht超過の場合に、高温側にシフトされる前の本来のデューティ比率Dhにてペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用が行われることになり、ステアリングホイールは加熱目標温度値Thtに安定した状態で温度制御される。
【0055】
ここで、初期温度値Ths及びシフト量ΔThh(制御パターンが変更度合い)の関係について、図10のマップに基づいて説明する。同図に示すように、これら初期温度値Ths及びシフト量ΔThhは、初期温度値Thsが低く加熱目標温度値Thtから低温側に大きく離れるときほどシフト量ΔThhが大きくなり、反対に初期温度値Thsが高く初期温度値Thsが加熱目標温度値Thtから低温側に小さく離れるときほどシフト量ΔThhが小さくなるように単調非減少の関係を有している。
【0056】
従って、例えば雰囲気温度が低く初期温度値Thsが低いときには、シフト量ΔThhが大きくなって、デューティ比率Dhが100%以下に変化する温度値Thc1が加熱目標温度値Thtにより近付けられ、検出温度T(ステアリングホイールの温度)が加熱目標温度値Thtの直近になるまで、より大きいデューティ比率Dhにてペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われる。これにより、ステアリングホイールの温度を迅速に上昇させることができる。
【0057】
一方、雰囲気温度が高く初期温度値Thsが高いときには、シフト量ΔThhが小さくなって、温度値Thc1及び加熱目標温度値Thtに差が設けられ、検出温度T(ステア
リングホイールの温度)が加熱目標温度値Thtの直近になるまでのデューティ比率Dhがより小さくなってペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用が抑制される。これにより、ステアリングホイールの温度が高温側へとオーバーシュートする程度を減少させることができる。
【0058】
次に、本実施形態における検出温度T(ステアリングホイールの温度)及びデューティ比率Dhの推移について説明する。
図11(a)(b)は、それぞれ検出温度T及びデューティ比率Dhの推移を示すタイムチャートである。なお、図11(a)には、パターン(基本パターン)Ph2のみによる従来形態での検出温度Tの推移を破線にて併せ図示している。同図に示されるように、時刻τhsにおいて加熱が開始されたとして、このときの初期温度値Thsに応じたシフト量ΔThhに基づいてパターンPh1が設定されたとする。このとき、初期温度値Thsが温度値Thc1よりも低温であれば、検出温度Tが該温度値Thc1に達するまでデューティ比率Dhは100%に設定される。そして、100%のデューティ比率Dhによりペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われる。
【0059】
検出温度Tが温度値Thc1に達した後は、検出温度Tが前記加熱目標温度値Thtに達する時刻τht1までデューティ比率Dhは漸減されるものの、該デューティ比率Dhは大きい値(100%の近く)で推移することになり、依然としてペルチェ素子アセンブリ23による強い加熱作用が行われる。
【0060】
以上より、検出温度Tは、加熱目標温度値Thtへと迅速に低下する。なお、図11には、従来形態において前記加熱目標温度値Thtに達する時刻を時刻τhtとして併記している。同図から明らかなように、本実施形態における加熱開始から加熱目標温度値Thtに達するまでの時間Δτhst1(=τht1−τhs)は、従来形態における加熱開始から加熱目標温度値Thtに達するまでの時間Δτhst(=τht−τhs)に比べて短くなっていることが確認される。
【0061】
そして、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに達した後は、パターンPh2に変更され、デューティ比率Dhは前記所定のデューティ比率Dhtまで急減されて該デューティ比率Dhtの近くの小さい値で推移することになる。従って、ペルチェ素子アセンブリ23による加熱作用が抑制されて、検出温度Tが加熱目標温度値Thtに安定した状態で保持される。
【0062】
次に、マイコン33による検出温度T、即ちステアリングホイールの温度の制御態様について図12に示すフローチャートに基づき総括的に説明する。なお、既述のように、左右のグリップ部の温度制御は個別に行われるものの、基本的に左側を右側に言い換えることで同様の処理になる。従って、以下では、左側のグリップ部の温度制御について代表して説明し、右側のグリップ部については詳細な説明を割愛する。
【0063】
同図に示されるように、この制御が起動されると、左右のグリップ部の検出温度Tの平均温度を初期温度値として検出する(ステップS1)。そして、この初期温度値と所定温度(例えば50°C)との大小関係に基づいて、温度調節の方向(冷却又は加熱)を判断する(ステップS2)。
【0064】
そして、ステップS2で冷却と判断されると、左側用のリレー36を冷却通電の状態に設定する(ステップS3)。具体的には、前記トランジスタTr1によりリレー36の一方のコイルL1を駆動して、ペルチェ素子アセンブリ23により冷却作用が行われるように、印加電圧の極性を切り替える。このとき、ステップS1で検出された初期温度値が冷却時の初期温度値Tcsとして設定される。
【0065】
次いで、この初期温度値Tcsに基づき、図7で示したマップに従って冷却時の制御パターンの変更分であるシフト量ΔTchを算出する(ステップS4)。そして、その後は、左側のグリップ部の温度を前記冷却目標温度値Tctに制御するための処理が演算周期に合わせて繰り返される(ステップS5)。
【0066】
すなわち、現在の左側のグリップ部の検出温度Tを検出する(ステップS11)。そして、この検出温度Tが前記冷却目標温度値Tct以上か否かを判断する(ステップS12)。
【0067】
ステップS12で検出温度Tが前記冷却目標温度値Tct以上と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔTchで補正した制御パターン(パターンPc1、図6参照)が設定される(ステップS13)。そして、検出温度Tに基づき、補正後の制御パターンに従って、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23に対するデューティ比率Dcを算出する(ステップS14)。
【0068】
また、ステップS12で検出温度Tが前記冷却目標温度値Tct未満と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔTchで補正されない制御パターン(パターンPc2、図6参照)が設定される(ステップS15)。
【0069】
そして、ステップS14,S15のいずれかで算出されたデューティ比率Dcとなるパルスを、左側用のパワーFET37に出力する(ステップS16)。これにより、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23は、設定されたデューティ比率Dcに応じた強さで冷却作用を行う。そして、ステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。
【0070】
一方、ステップS2で加熱と判断されると、左側用のリレー36を加熱通電の状態に設定する(ステップS6)。具体的には、前記トランジスタTr2によりリレー36の他方のコイルL2を駆動して、ペルチェ素子アセンブリ23により加熱作用が行われるように、印加電圧の極性を切り替える。このとき、ステップS1で検出された初期温度値が加熱時の初期温度値Thsとして設定される。
【0071】
次いで、この初期温度値Thsに基づき、図10で示したマップに従って加熱時の制御パターンの変更分であるシフト量ΔThhを算出する(ステップS7)。そして、その後は、左側のグリップ部の温度を前記加熱目標温度値Thtに制御するための処理が演算周期に合わせて繰り返される(ステップS8)。
【0072】
すなわち、現在の左側のグリップ部の検出温度Tを検出する(ステップS21)。そして、この検出温度Tが前記加熱目標温度値Tht以下か否かを判断する(ステップS22)。
【0073】
ステップS22で検出温度Tが前記加熱目標温度値Tht以下と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔThhで補正した制御パターン(パターンPh1、図9参照)が設定される(ステップS23)。そして、検出温度Tに基づき、補正後の制御パターンに従って、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23に対するデューティ比率Dhを算出する(ステップS24)。
【0074】
また、ステップS22で検出温度Tが前記加熱目標温度値Tht超過と判断されると、左側のグリップ部に対し前記シフト量ΔThhで補正されない制御パターン(パターンPh2、図9参照)が設定される(ステップS25)。
【0075】
そして、ステップS24,S25のいずれかで算出されたデューティ比率Dhとなるパルスを、左側用のパワーFET37に出力する(ステップS26)。これにより、左側のグリップ部のペルチェ素子アセンブリ23は、設定されたデューティ比率Dhに応じた強さで加熱作用を行う。そして、ステップS21に戻って同様の処理を繰り返す。
【0076】
なお、右側のグリップ部についても同様な処理が行われる。以上により、左右のグリップ部は、それを握る運転者にとって快適な温度に調節される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0077】
(1)本実施形態では、温度制御開始時に検出されたステアリングホイールの温度(検出温度T)が、目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき(具体的には、冷却時にあっては検出温度Tが冷却目標温度値Tct以上のとき、加熱時にあっては検出温度Tが加熱目標温度値Tht以下のとき)には、前記デューティ比率Dc,Dhが大きくなるように前記比例関係となる所定温度範囲がシフトされる。従って、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)に対する印加電圧のデューティ比率Dc,Dhがより大きく設定されて該ペルチェ素子アセンブリ23の作用が強められ、ステアリングホイールの温度は目標温度へとより迅速に到達される。従って、ステアリングホイールの温度を迅速に調節することができる。
【0078】
そして、ステアリングホイールの温度(検出温度T)が目標温度に達すると、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)に対する印加電圧のデューティ比率Dc,Dhが本来の比例関係に基づくデューティ比率に設定されて該ペルチェ素子アセンブリ23の作用が抑えられ、ステアリングホイールの目標温度への温度制御がより安定化される。従って、ステアリングホイールの温度を安定した状態で調節することができる。
【0079】
(2)本実施形態では、比例関係となる所定温度範囲のシフト量は、温度制御開始時に検出されたステアリングホイールの温度(初期温度値Tcs,Ths)が目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように補正される。従って、前記ペルチェ素子アセンブリ23(ペルチェ素子22)の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、前記デューティ比率Dc,Dhがより大きくなるように前記比例関係となる所定温度範囲がシフトされる。つまり、前記ペルチェ素子アセンブリ23の作用による必要な温度調節の幅が大きくなるほど、該ペルチェ素子アセンブリ23に対する印加電圧のデューティ比率Dc,Dhがより大きく設定されてペルチェ素子アセンブリ23の作用が強められ、ステアリングホイールの温度を目標温度へとより迅速に到達させることができる。
【0080】
(3)本実施形態では、前記比例関係となる所定温度範囲のシフトは、ステアリングホイールの温度制御開始時に1回行うのみであるため、例えば複数回行う場合に比べて演算負荷を軽減することができる。
【0081】
また、前記比例関係となる所定温度範囲のシフトを初期温度(初期温度値Tcs,Ths)、即ち温度制御開始時の周辺温度(雰囲気温度)に基づいて好適に行うことができる。
【0082】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態においては、検出温度Tに対するデューティ比率Dc,Dhの制御パターンをシフト量ΔTch,ΔThhで変更(切替)して、ステアリングホイールの温度制御態様を補正した。これに対し、検出温度T自体をシフト量ΔTch,ΔThhで補正して実質的に制御パターンを変更(切替)するようにしても、本発明を何ら逸脱するものではない。
【0083】
・前記実施形態においては、検出温度Tに対するデューティ比率Dc,Dhの制御パターンの変更(切替)を、検出温度Tと目標温度値Tct,Thtとの大小比較のみで行ったが、例えば検出温度Tが最初に目標温度値Tct,Thtに達した後は、この制御パターンの変更(切替)を禁止してもよい。例えば、シフト量ΔTch,ΔThhで補正されない制御パターンに固定してもよいし、デューティ比率Dc,Dhを一定値に固定してもよい。
【0084】
・前記実施形態において、ペルチェ素子22の個数は一例であり、例えば1個だけであってもよい。ただし、各ペルチェ素子に対し高効率な印加電圧(2V程度)が設定される好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態を示す断面図。
【図2】同実施形態を示す回路図。
【図3】ペルチェ素子アセンブリに対する印加電圧の極性と、その作用との関係を示す一覧図。
【図4】ペルチェ素子アセンブリに対する印加電圧を示すタイムチャート。
【図5】印加電圧のデューティ比率とペルチェ素子アセンブリによる冷却・加熱作用の強さとの関係を示す説明図。
【図6】冷却作用時の検出温度とデューティ比率との関係を示すマップ。
【図7】冷却作用時の初期温度値とシフト量との関係を示すマップ。
【図8】(a)(b)は、冷却作用時の検出温度及びデューティ比率の推移を示すタイムチャート。
【図9】加熱作用時の検出温度とデューティ比率との関係を示すマップ。
【図10】加熱作用時の初期温度値とシフト量との関係を示すマップ。
【図11】(a)(b)は、加熱作用時の検出温度及びデューティ比率の推移を示すタイムチャート。
【図12】同実施形態の温度制御態様を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
22…ペルチェ素子、23…ペルチェ素子アセンブリ、32…サーミスタ(温度検出手段)、31…制御ユニット、33…マイコン(補正手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに設けられたペルチェ素子と、前記ステアリングホイールの温度を検出する温度検出手段とを備え、前記ステアリングホイールの所定温度範囲において、該ステアリングホイールの温度の変化に対し前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率を比例関係で変化させて、前記ステアリングホイールの温度を目標温度に制御するステアリングホイールの温度制御装置において、
所定タイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が、前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき、前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度に達するまで、前記デューティ比率が大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲をシフトする補正手段を備えたことを特徴とするステアリングホイールの温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、
前記補正手段は、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフト量を補正することを特徴とするステアリングホイールの温度制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、
前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度は、該ステアリングホイールの温度制御開始時に検出された初期温度であることを特徴とするステアリングホイールの温度制御装置。
【請求項1】
ステアリングホイールに設けられたペルチェ素子と、前記ステアリングホイールの温度を検出する温度検出手段とを備え、前記ステアリングホイールの所定温度範囲において、該ステアリングホイールの温度の変化に対し前記ペルチェ素子に対する印加電圧のデューティ比率を比例関係で変化させて、前記ステアリングホイールの温度を目標温度に制御するステアリングホイールの温度制御装置において、
所定タイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が、前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れているとき、前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度に達するまで、前記デューティ比率が大きくなるように前記比例関係となる前記所定温度範囲をシフトする補正手段を備えたことを特徴とするステアリングホイールの温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、
前記補正手段は、前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度が前記目標温度への調節方向とは反対方向に該目標温度から離れる度合いと単調非減少の関係になるように前記比例関係となる前記所定温度範囲のシフト量を補正することを特徴とするステアリングホイールの温度制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステアリングホイールの温度制御装置において、
前記所定のタイミングで検出された前記ステアリングホイールの温度は、該ステアリングホイールの温度制御開始時に検出された初期温度であることを特徴とするステアリングホイールの温度制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−230407(P2008−230407A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73009(P2007−73009)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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