ステアリング装置
【課題】ステアリングコラムと車体間の導通を確保でき、組み立て易い。
【解決手段】本ステアリング装置1は、車体39に固定され一対の第1の側板44,45を含む固定ブラケット37と、ステアリングコラム26に設けられた受け部80および一対の第2の側板54,55と、一対の第1の側板44,45間に挟持され一対の第2の側板54,55に挿通された導電性の筒軸65と、受け部80と筒軸65の外周面71との間に介在する板状の導電部材51とを有する。導電部材51は、第1の湾曲バネ83と、筒軸65を弾性的に把持するU字形の第2の湾曲バネ88とを含む。第1の湾曲バネ83が第2の湾曲バネ88と受け部80との間に介在することによって、第2の湾曲バネ88の第1の接触部81が筒軸65の外周面71に弾性的に押圧され、第1の湾曲バネ83に設けられた第2の接触部82が受け部80に弾性的に押圧されている。
【解決手段】本ステアリング装置1は、車体39に固定され一対の第1の側板44,45を含む固定ブラケット37と、ステアリングコラム26に設けられた受け部80および一対の第2の側板54,55と、一対の第1の側板44,45間に挟持され一対の第2の側板54,55に挿通された導電性の筒軸65と、受け部80と筒軸65の外周面71との間に介在する板状の導電部材51とを有する。導電部材51は、第1の湾曲バネ83と、筒軸65を弾性的に把持するU字形の第2の湾曲バネ88とを含む。第1の湾曲バネ83が第2の湾曲バネ88と受け部80との間に介在することによって、第2の湾曲バネ88の第1の接触部81が筒軸65の外周面71に弾性的に押圧され、第1の湾曲バネ83に設けられた第2の接触部82が受け部80に弾性的に押圧されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置では、ステアリングコラムに備えられるホーン等の電気機器のアースをとるために、ステアリングコラムを車体側の固定ブラケットに電気的に接続する導電部材を有している(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の導電部材は、板状に形成されており、挿通孔を有している。この挿通孔に、ステアリングコラムと固定ブラケットとを挿通状態で連結するためのチルトボルトが挿通されている。
【特許文献1】特開2005−8022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の導電部材を組み付けるには、ステアリング装置の組立時に、ステアリングコラム、固定ブラケット、チルトボルト、および導電部材を互いに位置合わせした状態で、導電部材の挿通孔にチルトボルトを挿通しなければならない。その結果、ステアリング装置の組立に手間がかかっていた。
また、導電部材には、ステアリングコラムと固定ブラケットとを確実に導通させることが要請されている。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ステアリングコラムと固定ブラケット間を確実に導通できて、且つ組み立てるときの手間を低減できるステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のステアリング装置(1)は、車体(39)に固定された固定ブラケット(37)と、上記固定ブラケットに設けられた一対の第1の側板(44,45)と、上記一対の第1の側板にそれぞれ形成された第1の挿通孔(48)と、操舵部材(2)に連結されたステアリングシャフト(3)を回転可能に支持するステアリングコラム(26)と、上記ステアリングコラムに設けられた受け部(80)および一対の第2の側板(54,55)と、上記一対の第2の側板にそれぞれ形成された第2の挿通孔(58)と、上記一対の第2の側板の第2の挿通孔に挿通された導電性の筒軸(65,65B,65D)と、上記第2の挿通孔の内周面(59)と筒軸の軸方向(X1)の端部(67)の外周面(69)との間に介在する絶縁部材(50)と、上記受け部と筒軸の軸方向の中間部(68)の外周面(71)との間に介在する板状の導電部材(51,51A,51B)とを備え、上記筒軸は、上記絶縁部材を介して上記一対の第2の側板を支持し、上記一対の第1の側板の第1の挿通孔および筒軸に挿通された締め付け軸(66)が、一対の第1の側板をそれぞれ筒軸の対応する端面(70)に締め付けており、上記導電部材は、筒軸を弾性的に把持する把持部(88)と、上記把持部と上記受け部との間に介在する付勢バネ(83)とを含み、上記把持部は、筒軸の径方向(R1)に沿って筒軸に嵌合可能なU字形形状をなし、付勢バネによって、上記把持部に設けられた第1の接触部(81)が筒軸の外周面に弾性的に押圧されているとともに、付勢バネに設けられた第2の接触部(82)が上記受け部に弾性的に押圧されていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、第1の接触部が、筒軸に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第1の接触部と筒軸とが確実に導通できる。第2の接触部が、受け部に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第2の接触部と受け部とが確実に導通できる。その結果、ステアリングコラムに設けられた受け部と、筒軸とが、確実に導通できる。ひいては、固定ブラケットとステアリングコラムとが確実に導通できる。
【0007】
しかも、把持部を筒軸の径方向から当該筒軸に嵌めることができるので、例えば、締め付け軸が一対の第1の側板の第1の挿通孔および筒軸に挿通された状態で、筒軸へ把持部を取り付けることができる。その結果、導電部材の組み付けの手間を軽減できる。
さらに、把持部が筒軸を弾性的に把持するとともに、付勢バネが筒軸の外周面と受け部との間に弾性的な圧縮状態で介在している。これにより、導電部材を、筒軸の外周面と受け部との間に保持することができる。従って、従来の導電部材を取り付けるために用いられたボルト等の従来の取付部材を簡素化することが可能となり、さらには従来の上記取付部材を廃止することが可能となる。
【0008】
また、本発明において、上記付勢バネは、第1および第2の端部(84,85)を有する第1の湾曲バネ(83)を含み、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第1の端部(84)に、筒軸の外周面を弾性的に締め付け可能な上記把持部としての第2の湾曲バネ(88,88A,88B)が接続され、上記第2の湾曲バネの内周面(90)に、上記第1の接触部が形成されている場合がある(請求項2)。この場合、例えば、第1の湾曲バネの湾曲の曲率半径を小さくするように、第1の湾曲バネを弾性変形させるときに、第1の湾曲バネを受け部および筒軸の間に弾性的に圧縮状態で介在させることができる。第2の湾曲バネの湾曲の曲率半径を大きくするように、第2の湾曲バネを弾性変形させるときに、第2の湾曲バネにより筒軸を弾性的に締め付けることができる。これにより、第2の湾曲バネが筒軸に確実に保持される。
【0009】
また、本発明において、上記第1の湾曲バネおよび上記第2の湾曲バネは、同側に曲率中心(86,89)を有している場合がある(請求項3)。この場合、第2の湾曲バネがステアリングコラムの径方向外方から筒軸に取り付けられるときに、第1の湾曲バネがステアリングコラムに干渉することが生じ難くできる。
また、本発明において、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第2の端部に、第3の湾曲バネ(95)が設けられ、上記第1の湾曲バネおよび上記第3の湾曲バネは、互いに逆向きに湾曲しており、上記第3の湾曲バネの外周面(97)に、上記第2の接触部が形成されている場合がある(請求項4)。この場合、第3の湾曲バネの弾性付勢力により、第2の接触部が受け部に確実に接触できる。
【0010】
また、本発明において、上記筒軸の外周面に筒軸の周方向(T1)の少なくとも一部に沿って延びる溝(72,72D)が形成され、上記第2の湾曲バネは、筒軸の外周面の上記溝に嵌められており、上記溝によって、筒軸の軸方向への、第1の接触部の移動が規制されている場合がある(請求項5)。この場合、筒軸の軸方向に関しての筒軸と第1の接触部との相対移動を規制できるので、筒軸と第1の接触部との間の接触不良の発生を防止できる。
【0011】
また、本発明において、上記溝(72D)の深さ(L3)が、筒軸の軸方向に関する上記溝の中央部(154)に向かって次第に深くなるようにされている場合がある(請求項6)。この場合、溝を、塑性加工により容易に形成することが可能となる。その結果、製造コストをより一層低減できる。例えば、上記溝の断面において、上記中央部に設けられた溝底部が凹湾曲状をなしており、また、上記溝の一対の縁部が凸湾曲状をなしている。この場合には、溝を鍛造で形成するのに好ましい。
【0012】
また、本発明において、上記ステアリングコラムに、当該ステアリングコラムに対する第2の接触部の移動を規制する規制部(100)が設けられている場合がある(請求項7)。この場合、受け部と第2の接触部との相対移動を規制できるので、受け部と第2の接触部との間の接触不良の発生を防止できる。また、上記規制部と上記把持部とをともに備えるので、導電部材を受け部および筒軸に、より一層確実に保持できる。その結果、従来の上記取付部材を廃止することができる。
【0013】
また、本発明において、上記第2の接触部は、上記受け部および上記規制部によって受けられている場合がある(請求項8)。この場合、受け部と第2の接触部との相対移動をより確実に防止できる。
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ステアリング装置が電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)である場合に則して説明する。なお、本発明はこれに限らず、例えば、操舵補助力を得られないマニュアル操舵のステアリング装置であってもよい。
図1は、本発明の第1実施形態のステアリング装置の概略構成の模式図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間シャフト5と、中間シャフト5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7と、ピニオンシャフト7の端部近傍に設けられたピニオン歯8に噛み合うラック歯9を有して自動車の左右方向(図1の紙面垂直方向に相当する。)に延びる転舵軸としてのラックバー10とを有している。
【0015】
ピニオンシャフト7およびラックバー10によりラックアンドピニオン機構からなるステアリングギヤが構成されている。ラックバー10は、図示しないが、車体に固定されるラックハウジング内に複数の軸受を介して直線往復自在に支持されている。ラックバー10には、一対のタイロッド(図示せず)が結合されている。各タイロッドは対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪(図示せず)に連結されている。
【0016】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン歯8およびラック歯9によって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸17と、ピニオンシャフト7に連なる出力軸18とに分割されている。これら入力軸17および出力軸18はトーションバー19を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸17に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー19が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸17および出力軸18が相対回転するようになっている。
【0017】
トーションバー19を介する入力軸17および出力軸18の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ20が設けられている。また、車速を検出するための車速センサ21が設けられている。また、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)22が設けられている。また、操舵補助力を発生させるための電動モータ23と、この電動モータ23の出力回転を減速する減速機構24とが設けられている。
【0018】
トルクセンサ20および車速センサ21からの検出信号が、ECU22に入力されるようになっている。ECU22は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、操舵補助用の電動モータ23を制御する。電動モータ23の出力回転が減速機構24を介して減速されてピニオンシャフト7に伝達され、ラックバー10の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。
【0019】
また、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム26を有している。
ステアリングコラム26は、アッパーチューブ27と、アッパーチューブ27に嵌合されたロアーチューブ28と、ロアーチューブ28と一体に設けられたセンサハウジング29と、センサハウジング29と一体に設けられたギヤハウジング30とを備えている。アッパーチューブ27とロアーチューブ28とセンサハウジング29とギヤハウジング30とは、導体としての金属により形成されており、電気的に互いに接続されている。
【0020】
センサハウジング29には、トルクセンサ20およびECU22が収容され保持されている。ギヤハウジング30に、電動モータ23のモータハウジング32が固定されている。モータハウジング32は、導体としての金属により形成されており、ギヤハウジング30に電気的に接続されている。ギヤハウジング30内には、減速機構24が収容されている。減速機構24は、電動モータ23の出力軸33によって駆動される駆動ギヤ34と、この駆動ギヤ34に噛み合う被動ギヤ35とを有している。被動ギヤ35は、ステアリングシャフト3の出力軸18と同行回転するように、出力軸18に固定されている。
【0021】
ステアリング装置1は、ステアリングコラム26の下部を支持する車体側部材としての固定ブラケット37と、ステアリングコラム26の下部を回動可能に支持するためのピボット部材38とを有している。ピボット部材38は、固定ブラケット37に固定されている。固定ブラケット37とピボット部材38とは、導体としての金属によりそれぞれ形成されており、電気的に互いに接続されている。また、固定ブラケット37は、車体39に固定されており、車体39に電気的に接続されている。
【0022】
ステアリングコラム26の下部は、例えば、ロアーチューブ28と、センサハウジング29と、ギヤハウジング30とを含んでいる。ステアリングコラム26の下部は、固定ブラケット37を介して車体39に支持されるとともに、ピボット部材38を含むチルトヒンジ機構によって回動可能に支持されている。ステアリングコラム26の全体が、操舵部材2とともに、ピボット部材38の周りに揺動されることにより、操舵部材2の高さ位置が調整されるようになっている。
【0023】
一方、ステアリングコラム26のアッパーチューブ27に関連して、ステアリングコラム26の上部を支持する支持機構42が設けられている。支持機構42は、ステアリングコラム26の位置を、操作レバー41の操作によりロック状態およびロック解除状態に切り換えることができる。
図2は、図1のステアリング装置1の要部の断面図である。図3は、図2の平面図であり、 III− III断面が部分的に図示されている。図2、図3を参照して、固定ブラケット37は、車両の左右方向(図2では紙面垂直方向に相当し、図3では紙面上下方向に相当する。)に相対向する一対の第1の側板44,45を有している。一対の第1の側板44,45のそれぞれは、外側面46と、内側面47とを有している。一対の第1の側板44,45のそれぞれに、第1の挿通孔48が形成されている。固定ブラケット37は、車体39の一部と単一部材により一体に形成され、その結果、車体39に固定されるようにしてもよい。また、固定ブラケット37は、車体39とは別体で形成されており、車体39に固定状態で取り付けられていてもよい。
【0024】
図4は、図2に示す要部の斜視図である。なお、図4では、固定ブラケット37の図示が省略されている。図3および図4を参照して、チルトヒンジ機構は、ピボット部材38と、後述する絶縁部材としての一対のブッシュ50と、後述する導電部材51と、ステアリングコラム26の下部に設けられた一対の第2の側板54,55とを有している。導電部材51は、少なくとも一つあればよい。本実施形態では、導電部材51が1つの場合に則して説明する。
【0025】
ステアリングコラム26の下部は、車両の左右方向に互いに対向する一対の第2の側板54,55を有している。一対の第2の側板54,55と、ギヤハウジング30の底部とは、単一部材により一体に形成されている。一対の第2の側板54,55のそれぞれは、外側面56と、内側面57とを有している。第2の側板54,55の外側面56が、固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45の内側面47にそれぞれ対向している。
【0026】
一対の第2の側板54,55のそれぞれに、第2の挿通孔58が形成されている。一対の第2の側板54,55の第2の挿通孔58の内周面59には、それぞれ、合成樹脂からなる絶縁性のブッシュ50が装着されている。
各ブッシュ50は、低摩擦部材としての合成樹脂部材により形成されている。各ブッシュ50は、第2の挿通孔58に嵌合された筒状の本体61と、本体61の一端部に径方向に延設された環状のフランジ62とを有している。一方のブッシュ50のフランジ62は、相対向する固定ブラケット37の第1の側板44およびステアリングコラム26の第2の側板54の間に介在している。他方のブッシュ50のフランジ62は、相対向する固定ブラケット37の第1の側板45およびステアリングコラム26の第2の側板55の間に介在している。ブッシュ50には、軸方向に延びるスリット63が形成されており、これにより、ブッシュ50は、周方向に有端となっている。ブッシュ50の本体61は、弾性的に縮径された状態で、第2の挿通孔58内に嵌め合わされている。
【0027】
図5は、図2の要部の拡大図である。図3,図5を参照して、ピボット部材38は、一対のブッシュ50に挿通された導電性の筒軸65と、筒軸65を挿通する締め付け軸としてのボルト66とを有している。筒軸65は、一対の第2の側板54,55の第2の挿通孔58を挿通している。筒軸65は、固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45間に挟持されている。ボルト66は、一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48および筒軸65を挿通している。
【0028】
図3を参照して、筒軸65は、ブッシュ50を介して一対の第2の側板54,55を支持している。筒軸65の軸方向X1と、車両の左右方向とは、互いに平行になっている。筒軸65は、当該筒軸65の軸方向X1に関して、一対の端部67と、端部67間の中間部68とを有している。各端部67は、外周面69と、端面70とを有している。中間部68は、外周面71を有している。中間部68の外周面71には、凹部としての溝72が形成されている。この溝72は、筒軸65の周方向T1に無端状に延びている。溝72は、円筒面形状に形成された溝底と、筒軸65の軸方向X1に互いに対向する一対の側壁とを有している。
【0029】
筒軸65の製造方法としては、材料としての管の外周に溝72を切削加工により形成することが考えられる。また、この他の製造方法としては、以下の方法も考えられる。すなわち、外径が小さい材料としての第1の管と、外径が大きい材料としての一対の第2の管とを互いに連結する。第1の管の軸方向両端部に一対の第2の管を加圧溶接(圧接)する。
【0030】
ボルト66は、ねじ軸76と、頭部77とを有している。ねじ軸76の軸方向の一端に、ねじ部としての雄ねじが形成されている。ねじ軸76は、筒軸65および固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48を挿通している。ねじ軸76の軸方向の他端に頭部77が一体に形成されている。
ねじ軸76の雄ねじに、端部材としてのナット78が螺合されている。ボルト66の頭部77が固定ブラケット37の一方の第1の側板44の外側面46に接するとともに、ナット78が固定ブラケット37の他方の第1の側板45の外側面46に接している。
【0031】
ナット78に対して固定ボルト66をねじ込むことにより、固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45間に、ピボット部材38の筒軸65を挟持することができる。これにより、筒軸65が固定ブラケット37に締結されている。筒軸65の一対の端部67の端面70が、固定ブラケット37の対応する第1の側板44,45の内側面47に圧接されている。その結果、車体側部材としての固定ブラケット37と筒軸65との電気的導通が確保されている。
【0032】
一方、筒軸65とステアリングコラム26の一方の第2の側板54との両者間には、絶縁性のブッシュ50が介在している。同様に、筒軸65と他方の第2の側板55との両者間には、絶縁性のブッシュ50が介在している。その結果、ステアリングコラム26の第2の側板54,55の第2の挿通孔58の内周面59と筒軸65の軸方向X1の端部67の外周面69との間の電気的導通が遮断されている。
【0033】
そこで、本実施の形態では、筒軸65とステアリングコラム26とを電気的に接続する導電部材51が設けられている。また、ステアリングコラム26の下部は、導電部材51を受ける受け部80を有している。
図2,図3を参照して、受け部80は、導体としての金属により形成されており、一対の第2の側板54,55の間に配置されている。受け部80は、ステアリングシャフト3の軸方向に対して交差し、且つ筒軸65の軸方向X1に平行な平面をなす。受け部80は、ギヤハウジング30の底部に固定されており、ギヤハウジング30に電気的に接続されている。本実施形態では、受け部80は、ギヤハウジング30の底部に単一部材により一体に形成されている。
【0034】
導電部材51は、受け部80と筒軸65の中間部68の外周面71との間に介在している。導電部材51は、例えば、金属により形成され、板状をなしている。導電部材51が受け部80に接触することにより、導電部材51と受け部80とが互いに電気的に接続される。これにより、導電部材51は、受け部80を介してギヤハウジング30に電気的に接続されるようになっている。
【0035】
図6Aは、図2に示す導電部材51の平面図であり、弾性変形が生じていない自由状態を示す。図6Bは、図6Aの導電部材51の側面図である。図7は、図6Aの導電部材51の自由状態での斜視図である。図5,図7を参照して、導電部材51は、筒軸65の外周面71に接触する第1の接触部81と、受け部80に接触する第2の接触部82と、上記第1および第2の接触部81,82間に介在する付勢バネとしての第1の湾曲バネ83とを含んでいる。
【0036】
第1の湾曲バネ83によって、第1の接触部81が筒軸65の外周面71に弾性的に押圧されている。これとともに、第1の湾曲バネ83によって、第2の接触部82が受け部80に弾性的に押圧されている。第1の接触部81は、筒軸65を当該筒軸65の中心に向けて押圧している。第2の接触部82は、受け部80を筒軸65の中心から遠ざかる向きに押圧している。
【0037】
導電部材51は、弾性変形した状態で、筒軸65および受け部80に取り付けられている。以下では、特に説明しない場合には、導電部材51が弾性変形して取り付けられている状態を説明することとする。
第1の湾曲バネ83は、湾曲状をなす板ばねである。第1の湾曲バネ83は、湾曲に沿う方向に関する第1の端部84および第2の端部85を有している。第1の湾曲バネ83は、湾曲の曲率中心86を有している。なお、この曲率中心86は、導電部材51の組み込み状態と自由状態とで、相異なる。
【0038】
導電部材51がステアリング装置1に組み込まれたときに、第1の湾曲バネ83は弾性曲げ変形している。これにより、組み込み状態の第1の湾曲バネ83の湾曲の曲率半径は、自由状態の第1の湾曲バネ83の湾曲の曲率半径よりも小さくなっている。その結果、第1および第2の端部84,85が互いに遠ざかるような弾性復元力が生じる。
第1の湾曲バネ83の第1の端部84に、第2の湾曲バネ88が接続されている。また、第1の湾曲バネ83の上記第2の端部85に、後述する第3の湾曲バネ95が設けられている。
【0039】
第2の湾曲バネ88は、筒軸65の軸方向X1(図5で紙面垂直方向に相当する。)に沿って見たときに湾曲形状、例えば、円弧形状をなしている。第2の湾曲バネ88は、湾曲の曲率中心89と、内周面90と、外周面91とを有している。また、第2の湾曲バネ88は、当該第2の湾曲バネ88の湾曲に沿う方向(筒軸65の周方向T1に相当する。)に関する一対の端部92,93を有している。なお、第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率中心89は、導電部材51の組み込み状態と自由状態とで、相異なる。
【0040】
第1の湾曲バネ83および第2の湾曲バネ88は、組み込み状態において導電部材51に対して同側に曲率中心86,89を有している。筒軸65の軸方向X1に沿って見たときに、第1の湾曲バネ83および第2の湾曲バネ88は、略3の字形状をなしている。
第2の湾曲バネ88の内周面90は、筒軸65の外周面71に沿っている。第2の湾曲バネ88の内周面90に、上記第1の接触部81が形成されている。第1の接触部81の中心角A2は、180°を超えて大きい値である(A2>180°)。
【0041】
第2の湾曲バネ88は、U字形形状をなしている。これにより、第2の湾曲バネ88を、筒軸65の径方向R1から筒軸65に嵌合することができる。
第2の湾曲バネ88は、筒軸65を弾性的に把持する把持部として機能する。第2の湾曲バネ88は、筒軸65の外周面71を弾性的に締め付け可能とされる。すなわち、第2の湾曲バネ88は、弾性的に拡径された状態で筒軸65に取り付けられている。
【0042】
図3,図5を参照して、第2の湾曲バネ88は、筒軸65の外周面71の規制部としての上記溝72に嵌められている。溝72によって、筒軸65の軸方向X1の両側への、第1の接触部81の移動が規制されている。筒軸65の軸方向X1に関して、溝72の溝幅は、第2の湾曲バネ88の幅寸法に等しくされているか、または、この幅寸法の値よりもわずかに大きくされている。
【0043】
図5,図7を参照して、第3の湾曲バネ95は、湾曲状をなす板ばねである。第3の湾曲バネ95は、湾曲の曲率中心96と、外周面97とを有している。組み込み状態において、第1の湾曲バネ83および第3の湾曲バネ95は、互いに逆向きに湾曲している。第3の湾曲バネ95の外周面97に、上記第2の接触部82が形成されている。なお、第3の湾曲バネ95の湾曲の曲率中心96は、導電部材51の組み込み状態と自由状態とで、若干異なる。
【0044】
また、第2の湾曲バネ88の一方の端部92と第1の湾曲バネ83の第1の端部84とは、第4の湾曲バネ98を介して接続されている。また、第2の湾曲バネ88の他方の端部93には、第5の湾曲バネ99が接続されている。
第2の湾曲バネ88と第4の湾曲バネ98と第5の湾曲バネ99とは、筒軸65の軸方向X1に沿って見たときに略オーム(Ω)字形状をなしている。第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99の湾曲は、互いに同じ側に湾曲している。また、第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99は、第2の湾曲バネ88とは逆向きに湾曲している。第4の湾曲バネ98の湾曲の曲率半径は、第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率半径よりも小さい。第5の湾曲バネ99の湾曲の曲率半径は、第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率半径よりも小さい。
【0045】
第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99は、互いに離隔している。第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99の最小間隔L1は、筒軸65の中間部68の外周面71の直径L2よりも小さくされている(L1<L2)。この直径L2は、例えば、外周面71のうちで溝72の溝底を形成する部分の外径である。
弾性変形を生じていない自由状態において、導電部材51は、筒軸65および受け部80に取り付けられた状態と概ね同様の形状をなしている。すなわち、第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99は、それぞれ湾曲状をなす板ばねである。
【0046】
図6A,図6B,図7を参照して、自由状態において第1の湾曲バネ83および第2の湾曲バネ88は、導電部材51に対して同側に曲率中心86,89を有している。また、自由状態において第1の湾曲バネ83および第3の湾曲バネ95は、導電部材51に対して互いに反対側に曲率中心86,96を有している。
図6A,図6Bを参照して、第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99は、単一材料で一体に形成されている。第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99の板厚は、互いに等しくされている。第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99の板幅(筒軸65の軸方向X1に関する寸法に相当する。)は、互いに等しくされている。第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99の板面は、互いに滑らかに連続してつながっている。導電部材51は、波形の板ばねからなる。
【0047】
図4,図5を参照して、ステアリングコラム26は、当該ステアリングコラム26に対する導電部材51の第2の接触部82の移動を規制する規制部としての保持壁100を有している。
保持壁100は、受け部80の周縁から立ち上がって形成されている。保持壁100は、ギヤハウジング30の底部に固定されている。保持壁100は、受け部80を取り囲む四角環状に配置されている。これにより、保持壁100は、受け部80に沿う方向M1,M2,M3,M4に関しての第2の接触部82の移動を規制することができる。
【0048】
保持壁100の四角環状の内側に、第3の湾曲バネ95が受け入れられている。これにより、導電部材51を受け部80に適切且つ確実に取り付けることができる。受け入れられた第3の湾曲バネ95は、受け部80に接触し、さらに、保持壁100の後述する第1の部分101に当接するようになっている。
保持壁100は、第1、第2、第3および第4の部分101,102,103,104を有している。各部分101,102,103,104は、当該保持壁100の四角環状の対応する一辺をそれぞれ形成している。
【0049】
第1および第2の部分101,102は、受け部80に沿う第1および第2の方向M1, M2に関して受け部80を挟んで互いに対向して配置されている。第1および第2の部分101,102の間隔は、第3の湾曲バネ95の湾曲の外径と等しいか、この外径よりも大きく設定されている。本実施形態では、上記間隔が、上記外径よりも大きい場合に則して説明する。
【0050】
図3,図4を参照して、第3および第4の部分103,104は、受け部80に沿う第3および第4の方向M3,M4に関して受け部80を挟んで互いに対向して配置されている。第3および第4の部分103,104の間隔は、第3の湾曲バネ95の板幅と等しいか、この板幅よりも大きく設定されている。本実施形態では、上記間隔が、板幅よりも大きい場合に則して説明する。
【0051】
ここで、受け部80に沿う第3および第4の方向M3,M4は、互いに逆向きの方向であり、且つ筒軸65の軸方向X1に平行な方向である。第3および第4の方向M3,M4は、上述の第1および第2の方向M1,M2と直交する。この第1および第2の方向M1, M2は、互いに逆向きの方向である。
図5を参照して、第1の部分101は、上記第1の方向M1への第2の接触部82の移動を規制することができる。第1の部分101と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
【0052】
第2の部分102は、上記第2の方向M2への第2の接触部82の移動を規制することができる。第2の部分102と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
図3を参照して、第3の部分103は、上記第3の方向M3への第2の接触部82の移動を規制することができる。第3の部分103と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
【0053】
第4の部分104は、上記第4の方向M4への第2の接触部82の移動を規制することができる。第4の部分104と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
また、保持壁100は、絶縁体により形成されることも考えられるが、本実施形態では導体としての金属により形成されている。保持壁100は、ギヤハウジング30の底部に電気的に接続されている。これにより、保持壁100と導電部材51とは、互いに接触したときに、互いに電気的に接続されるようになっている。
【0054】
図3,図5を参照して、導電部材51は、保持壁100に接触する第3の接触部105を有している。第3の接触部は、第3の湾曲バネ95の外周面97に形成され、第2の接触部82と離隔して配置されており、保持壁100と電気的に接続されている。
本実施形態では、一対の第2の側板54,55、受け部80、保持壁100、およびギヤハウジング30が、単一部材により一体に形成されている。
【0055】
図8は、図6Aの導電部材51をステアリング装置1に組み込む際の途中の状態の断面図である。図8を参照して、導電部材51を、例えば、ステアリングコラム26の径方向外方から筒軸65および受け部80に、以下のように容易に取り付けることができる。
先ず、導電部材51の第2の接触部82を、四角環状をなす保持壁100により囲まれた内側に入れる。
【0056】
次に、第2の湾曲バネ88を、筒軸65に、この筒軸65の径方向R1の外方から嵌合する。すなわち、第2の接触部82を支点として、この支点の周りに導電部材51を回動させる。そして、第4の湾曲バネ98を筒軸65の外周面71に当接させる。この状態で第2の湾曲バネ88の外周面91を筒軸65に向けて押圧することにより、第4および第5の湾曲バネ98,99を筒軸65の外周面71に当接させる。
【0057】
第4および第5の湾曲バネ98,99を筒軸65の外周面71に当接させた状態で、第2の湾曲バネ88の外周面91を筒軸65に向けて押圧する。これにより、第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99が、筒軸65の外周面71に沿って互いに遠ざかる。これとともに、第2の湾曲バネ88が拡径される。さらに、第1の湾曲バネ83が、弾性曲げ変形し、その湾曲の曲率半径が小さくなる。その結果、筒軸65が第2の湾曲バネ88の内側にスムーズに入ることができる。
【0058】
なお、導電部材51を、上述の手順とは異なる手順にしたがって組み付けることもできる。例えば、第2の湾曲バネ88を筒軸65に取り付けた後に、第3の湾曲バネ95が受け部80に受けられるようにしてもよい。
図5を参照して、取り付けた状態で、第2の湾曲バネ88の弾性復元力により、第2の湾曲バネ88の内周面90が、筒軸65の外周面71に沿って、この外周面71を締め付けている。これとともに、第1の湾曲バネ83の弾性復元力により、第1および第2の接触部81,82が筒軸65および受け部80に押圧されている。
【0059】
導電部材51が取り付けられた状態では、第1の接触部81が、筒軸65の中間部68の外周面71の溝72の溝底に押圧状態で接触している。これにより、導電部材51と筒軸65とは、互いに電気的に確実に接続される。また、第1の接触部81は、溝72により、筒軸65の軸方向X1に関する筒軸65に対する移動を規制されている。これにより、第1の接触部81の位置ずれの発生が防止される。従って、位置ずれに起因した押圧力の変化が抑制されるので、電気的な接続が確実に達成される。
【0060】
また、第2の接触部82が受け部80に押圧状態で常時接している。このときに、第3の湾曲バネ95の外周面が保持壁100の第1の部分101に常に接触している。第1の部分101は、第2の接触部82の移動を規制しつつ、第2の接触部82を受けている。これとともに、ステアリングコラム26に対する第2の接触部82の移動が、上述の第1の方向M1について規制されている。また、このとき、保持壁100の第2〜第4の部分102,103,104は、第3の湾曲バネ95に当接していない。万一、車両の振動等に起因して第3の湾曲バネ95が第1の部分101から離れるときには、第2,第3および第4の方向M2,M3,M4に関する移動量が短く規制される。
【0061】
また、本実施形態では、第2の湾曲バネ88が筒軸65に嵌まり且つ第2の接触部82が受け部80に接した状態において、第1の湾曲バネ83の弾性変形量は、第3の湾曲バネ95と保持壁100の第1の部分101との距離に比例している。例えば、第3の湾曲バネ95が保持壁100の第1の部分101に接しているときに、第1の湾曲バネ83の弾性変形量は最小になっている。その結果、第2の接触部82が受け部80に押圧されつつ、第2の接触部82が保持壁100の第1の部分101により安定して受けられるようになっている。
【0062】
また、本実施形態では、筒軸65の中心軸線106に沿って導電部材51、筒軸65および受け部80を見たときに、第2の接触部82が受け部80から受ける反力F2の作用線C2は、筒軸65の中心軸線106を外されている。すなわち、上記反力F2は、第2の接触部82を通り、受け部80の法線方向に作用する。反力F2の作用線C2は、筒軸65の中心軸線106および第2の接触部82とを結ぶ直線C3に対して、ステアリングシャフト3側に傾斜している。その結果、筒軸65の周りのモーメントM6が導電部材51に生じる。このモーメントM6は、導電部材51が受け部80および保持壁100の第1の部分101にともに接することに寄与する。
【0063】
また、本実施形態では、第3の湾曲バネ95が、第1の湾曲バネ83による押圧を受けた状態で、受け部80および保持壁100の第1の部分101を押圧している。このとき、第3の湾曲バネ95の曲率半径が小さくなるように、第3の湾曲バネ95は弾性変形している。第3の湾曲バネ95が受け部80および保持壁100の第1の部分101の間において突っ張るように、第3の湾曲バネ95の弾性復元力F3,F4は作用する。弾性復元力F3,F4は、第3の湾曲バネ95が受け部80および保持壁100の第1の部分101にともに接するのに寄与する。
【0064】
本実施形態では、導電部材51が筒軸65および受け部80に対して弾性的に接触するようにした。仮に、導電部材51の形状、寸法等にばらつきがあったとしても、導電部材51が筒軸65および受け部80に確実に接触できる。
また、導電部材51と筒軸65との接続の信頼性を向上させることができ、その結果、導電部材51を介して、ステアリングコラム26と筒軸65との間を確実に導通させることができる。ひいては、ステアリングコラム26を車体39に対して、確実にボディアースすることができ、電動パワーステアリング装置1に対する電磁障害の発生を防止することができる。
【0065】
図1を参照して、ステアリングコラム26やこれに取り付けられたモータハウジング32等に電気シールド機能を果たさせることができる。その結果、ステアリングコラム26やモータハウジング32外で発生した電磁波が、ECU22およびトルクセンサ20に悪影響を与えることを防止することができる。また、ステアリングコラム26やモータハウジング32から電波が漏洩することを防止することができるので、例えば、車両のラジオ(図示せず)にノイズが生じることを防止できる。
【0066】
また、操舵部材2には、ホーン111(警笛)を鳴らすためのホーンスイッチ112が設けられている。ホーンスイッチ112を操作することにより、ホーン111を鳴らすことができるようになっている。具体的には、車両に設けられたバッテリー113の一方の端子は、車体39に接地されている。バッテリー113の他方の端子が、ホーン111の一方の端子に接続されている。ホーン111の他方の接点は、ホーンスイッチ112の一方の接点に接続されている。ホーンスイッチ112の他方の接点は、ステアリングシャフト3に接続されている。ステアリングシャフト3は、車体39に下記のようにして接地されている。
【0067】
ステアリングシャフト3、ステアリングシャフト3の上部を受ける軸受(図示せず)、アッパーチューブ27、ロアーチューブ28、センサハウジング29、ギヤハウジング30、導電部材51、筒軸65および固定ブラケット37は、それぞれ導電性を有する部材で形成されており、互いに電気的に導通可能である。
また、ステアリングシャフト3の出力軸18を受ける軸受(図示せず)は、導電性を有している。出力軸18、軸受、センサハウジング29、ギヤハウジング30とは、互いに電気的に導通可能である。固定ブラケット37は、車体39に電気的に導通可能であり、車体39に接地されている。
【0068】
図3を参照して、以上説明したように、本実施形態のステアリング装置1は、以下の(1) 〜(10)の各部、すなわち、(1) 車体39に固定された固定ブラケット37と、(2) 上記固定ブラケット37に設けられた一対の第1の側板44,45と、(3) 上記一対の第1の側板44,45にそれぞれ形成された第1の挿通孔48と、(4) 操舵部材2に連結されたステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム26と、(5) 上記ステアリングコラム26に設けられた受け部80および一対の第2の側板54,55と、(6) 上記一対の第2の側板54,55にそれぞれ形成された第2の挿通孔58と、(7) 上記一対の第2の側板54,55の第2の挿通孔58に挿通された導電性の筒軸65と、(8) 上記第2の挿通孔58の内周面と筒軸65の軸方向X1の端部67の外周面69との間に介在する絶縁部材としてのブッシュ50と、(9) 上記受け部80と筒軸65の軸方向X1の中間部68の外周面71との間に介在する板状の導電部材51とを備えている。
【0069】
本実施形態では、上記筒軸65は、上記絶縁部材を介して上記一対の第2の側板54,55を支持している。上記一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48および筒軸65に挿通された締め付け軸としてのボルト66が、一対の第1の側板44,45をそれぞれ筒軸65の対応する端面70に締め付けている。上記導電部材51は、筒軸65を弾性的に把持する把持部としての第2の湾曲バネ88と、上記把持部と上記受け部80との間に介在する付勢バネとしての第1の湾曲バネ83とを含んでいる。上記把持部は、筒軸65の径方向R1に沿って筒軸65に嵌合可能なU字形形状をなし、付勢バネによって、上記把持部に設けられた第1の接触部81が筒軸65の外周面71に弾性的に押圧されているとともに、付勢バネに設けられた第2の接触部82が上記受け部80に弾性的に押圧されている。
【0070】
本実施形態によれば、第1の接触部81が、筒軸65に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第1の接触部81と筒軸65とが互いに確実に導通できる。第2の接触部82が、受け部80に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第2の接触部82と受け部80とが互いに確実に導通できる。その結果、ステアリングコラム26に設けられた受け部80と、筒軸65とが互いに確実に導通できる。ひいては、固定ブラケット37とステアリングコラム26とが互いに確実に導通できる。
【0071】
しかも、第2の接触部82を筒軸65の径方向R1から当該筒軸65に嵌めることができるので、例えば、ボルト66が一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48および筒軸65に挿通された状態で、筒軸65へ第2の接触部82を取り付けることができる。その結果、導電部材51の組み付けの手間を軽減できる。
さらに、把持部が筒軸65を弾性的に把持するとともに、付勢バネが筒軸65の外周面71と受け部80との間に弾性的な圧縮状態で介在している。これにより、導電部材51を、筒軸65の外周面71と受け部80との間に保持することができる。従って、従来の導電部材を取り付けるために用いられたボルト等の従来の取付部材を簡素化することが可能となり、さらには従来の上記取付部材を廃止することが可能となる。さらに、導電部材51は板状なので、構造が簡素になる。
【0072】
また、本実施形態では、上記付勢バネは、第1および第2の端部84,85を有する第1の湾曲バネ83を含んでいる。上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネ83の上記第1の端部84に、筒軸65の外周面71を弾性的に締め付け可能な上記把持部としての第2の湾曲バネ88が接続されている。上記第2の湾曲バネ88の内周面90に、上記第1の接触部81が形成されている。
【0073】
この場合、例えば、第1の湾曲バネ83の湾曲の曲率半径を小さくするように、第1の湾曲バネ83を弾性変形させるときに、導電部材51を受け部80および筒軸65の間に弾性的に圧縮状態で介在させることができる。第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率半径を大きくするように、第2の湾曲バネ88を弾性変形させるときに、第2の湾曲バネ88により筒軸65を弾性的に締め付けることができる。これにより、第2の湾曲バネ88が筒軸65に確実に保持される。
【0074】
また、本実施形態では、第1の湾曲バネ83および上記第2の湾曲バネ88は、同側に曲率中心86,89を有している。この場合、第2の湾曲バネ88がステアリングコラム26の径方向外方から筒軸65に取り付けられるときに、第1の湾曲バネ83がステアリングコラム26に干渉することが生じ難くできる。
また、本実施形態では、付勢バネとしての上記第1の湾曲バネ83の上記第2の端部85に、第3の湾曲バネ95が設けられている。上記第1の湾曲バネ83および上記第3の湾曲バネ95は、互いに逆向きに湾曲している。上記第3の湾曲バネ95の外周面97に、上記第2の接触部82が形成されている。この場合、第3の湾曲バネ95の弾性付勢力により、第2の接触部82が受け部80に確実に接触できる。
【0075】
また、本実施形態では、筒軸65の外周面71に筒軸65の周方向T1に延びる溝72が形成されている。上記第2の湾曲バネ88は、筒軸65の外周面71の上記溝72に嵌められている。この溝72によって、筒軸65の軸方向X1への、第1の接触部81の移動が規制されている。この場合、筒軸65の軸方向X1に関しての筒軸65と第1の接触部81との相対移動を規制できるので、筒軸65と第1の接触部81との間の接触不良の発生を防止できる。
【0076】
また、本実施形態では、ステアリングコラム26に、当該ステアリングコラム26に対する第2の接触部82の移動を規制する規制部としての保持壁100が設けられている。この場合、受け部80と第2の接触部82との相対移動を規制できるので、受け部80と第2の接触部82との間の接触不良の発生を防止できる。また、上記規制部と上記把持部とをともに備えるので、導電部材51を受け部80および筒軸65に、より一層確実に保持できる。その結果、従来の上記取付部材を廃止することができる。
【0077】
また、本実施形態の第2の接触部82は、上記受け部80および規制部としての保持壁100によって受けられている。この場合、受け部80と第2の接触部82との相対移動をより確実に規制できる。
また、本実施形態では、規制部は、受け部80を取り囲む四角環状に配置された保持壁100を含んでいる。この場合、第2の接触部82を保持壁100の四角環状の内側に受けるときに、受け部80に第2の接触部82を確実に当接させることができる。また、導電部材51の受け部80からの不用意な脱落を防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、ステアリングコラム26は、減速機構24を収容するギヤハウジング30を含み、このギヤハウジング30、上記受け部80および一対の第2の側板54,55は、単一の材料で一体に形成されている。この場合、ステアリングコラム26の構造を簡素化できる。また、受け部80と筒軸65との相互の位置決め精度を高めることができるので、導電部材51を介して筒軸65と受け部80とを電気的により一層確実に接続することができる。
【0079】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点のみを図示して、この点を説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
例えば、図9は、第2の実施形態のステアリング装置1の要部の平面図であり、部分的に断面表示されている。図10Aは、図9に示す導電部材51Aの平面図であり、自由状態を示す。図10Bは、図10Aの導電部材51Aの側面図である。
【0080】
第2の実施形態のステアリング装置1は、導電部材51Aを有している。導電部材51Aは、第1の実施形態の導電部材51に代えて用いられている。導電部材51Aと、第1の実施形態の導電部材51とは、以下の点で異なり、他の構成については同じとされている。
導電部材51Aは、第2の湾曲バネ88に代えて第2の湾曲バネ88Aを有している。第2の湾曲バネ88Aは、相対的に板幅が大きな第1の部分121と、相対的に板幅が小さな第2の部分122とを有している。自由状態の第1の部分121の中心角は180°である。
【0081】
筒軸65の中間部68の溝72の溝幅は、導電部材51Aの第2の湾曲バネ88Aの第1の部分121を嵌め入れることができるように、第1の部分121の板幅と等しい値か、この値よりも若干大きな値に形成されている。
第2の部分122が、第4の湾曲バネ98を介して第1の湾曲バネ83につながっている。第2の部分122の板幅は、第1の湾曲バネ83の板幅と等しくされている。
【0082】
本実施形態では、第1の接触部81を幅広にできるので、筒軸65に対して電気的に確実に接続することができる。しかも、第1の湾曲バネ83の板幅が相対的に狭いので、第1の湾曲バネ83が曲げ変形し易くなる。その結果、導電部材51Aを取付易い。
図11は、第3の実施形態のステアリング装置1の要部の拡大図である。図11を参照して、第3の実施形態のステアリング装置1は、図3に示す第1の実施形態の導電部材51および筒軸65に代えて、図11に示す導電部材51Bおよび筒軸65Bを有している。導電部材51Bと、第1の実施形態の導電部材51とは、以下の点で異なり、他の構成については同じとされている。筒軸65Bと筒軸65とは、以下の点でに異なり、他の点については同じである。
【0083】
導電部材51Bは、第2の湾曲バネ88に代えて第2の湾曲バネ88Bを有している。第2の湾曲バネ88Bの内周面90には、規制部としての突起131が内周面90から突出して形成されている。この突起131に対向して、筒軸65Bの外周面71に、規制部としての凹部132が形成されている。突起131が凹部132に嵌まっている。これにより、筒軸65Bの軸方向X1(図11の紙面垂直方向に相当する。)および周方向T1に関する筒軸65Bに対する導電部材51Bの移動が規制される。この場合、第1の実施形態の溝72は廃止されている。また、突起131は、かしめ加工により形成された塑性変形部からなっていてもよい。また、第3の実施形態の突起131と凹部132とを、第2の実施形態に適用してもよい。
【0084】
図12Aは、第4の実施形態のステアリング装置1の要部としての保持壁100を示す断面図である。図12Bは、図12Aの12B−12B断面の断面図である。本実施形態は、保持壁100の変形例を示し、他の構成については、第1の実施形態と同じとされている。本実施形態の保持壁100は、ステアリングコラムに設けられた凹部の側壁に形成されている。具体的には、保持壁100の第1〜第4の部分101,102,103,104は、ギヤハウジング30の底部に形成された凹部の側壁を形成している。この凹部の底に、受け部80が設けられている。本実施形態の保持壁100は、上述の各実施形態に適用することができる。
【0085】
図13は、第5の実施形態のステアリング装置1の要部としての筒軸65Dを示す平面図である。本実施形態のステアリング装置1は、図3に示す第1の実施形態の筒軸65に代えて、図13に示す筒軸65Dを有している。筒軸65Dと筒軸65とは、以下の点で異なり、他の点については同じである。
筒軸65Dの中間部68の外周面71は、溝72Dを有している。溝72Dは、筒軸65Dの周方向T1に無端状に延びている。溝72Dは、筒軸65Dの中心軸線を含む断面(軸方向断面)において、一対の傾斜面150と、一対の傾斜面150を互いに接続する溝底部151とを有している。
【0086】
一対の傾斜面150は、筒軸65Dの軸方向X1に対して互いに逆向きに、筒軸65Dの軸方向X1に対して傾斜している。一対の傾斜面150がなす角度は、軸方向断面において、鈍角である。各傾斜面150は、円錐面の一部を形成している。一対の傾斜面150の小径側端部が互いに近接している。
溝底部151は、筒軸65Dの軸方向X1の軸方向に関する溝72Dの中央部154に設けられている。溝底部151は、凹湾曲面からなり、一対の傾斜面150の小径側端部同士を互いに滑らかに接続している。溝底部151は、軸方向断面において、凹湾曲形状、例えば、円弧形状をなしている。
【0087】
各傾斜面150の大径側端部は、凸湾曲状の縁部152を介して、筒軸65Dの中間部68の外周面71の円筒面153に、滑らかに接続されている。縁部152は、軸方向断面において、凸湾曲形状、例えば、円弧形状をなしている。
筒軸65Dの軸方向X1に関して、溝72Dの溝幅(軸方向X1に関する一対の傾斜面150の大径側端部間の寸法)は、導電部材51の第2の湾曲バネ88の幅寸法よりも大きくされている。これにより、溝72Dの一対の傾斜面150が、導電部材51の第2の湾曲バネ88に接することができる。その結果、軸方向X1への導電部材51の移動を規制することができる。
【0088】
また、一対の傾斜面150により、筒軸65Dの中間部68の溝72Dおよびその近傍における断面形状の変化が滑らかになる。従って、溝72Dの加工方法として、塑性加工、例えば、鍛造加工を利用することが可能となる。塑性加工を利用することにより、製造コストを安価にできる。また、筒軸65Dの全体を塑性加工、例えば、鍛造加工により形成する場合には、溝72Dを後加工、例えば、切削加工せずに済む。従って、製造コストをより一層安価にできる。
【0089】
なお、筒軸65Dの溝72Dが、筒軸65Dの周方向T1に有端で形成されていてもよい。この場合、溝72Dと、導電部材51の第1の接触部81とが互いに接触するように、周方向T1に関して溝72Dが配置されている。有端状の溝72Dも、無端状の溝72Dと同様に、塑性加工を利用でき、製造コストを安価にできる。また、有端か無端かにかかわらず上述の溝72Dを、上述の第2〜第4の各実施形態に適用することができる。
【0090】
このように本実施形態では、溝72Dの深さL3が、筒軸65Dの軸方向X1に関する溝72Dの中央部154に向かって次第に深くなるようにされている。この場合、溝72Dを、塑性加工により容易に形成することができる。その結果、製造コストをより一層低減できる。例えば、上記溝72Dの軸方向断面において、上記中央部154に設けられた溝底部151が凹湾曲状をなしており、また、溝72Dの一対の縁部152が凸湾曲状をなしている。この場合には、溝72Dを鍛造で形成するのに好ましい。
【0091】
また、上述の各実施形態において、保持壁100の第2〜第4の部分102,103,104が、第3の湾曲バネ95に常時当接するようにしてもよい。この場合、第3の湾曲バネ95と受け部80との相対移動を確実に規制できるので、第2の接触部82と受け部80との間の接触不良の発生をより確実に防止できる。
また、上述の各実施形態において、規制部としての保持壁100は、少なくとも第1の部分101を有していればよい。また、規制部としては、ステアリングコラム3に固定された突起(図示せず)でもよい。この突起に導電部材51が当接して、導電部材51と受け部80との相対移動を規制できる。逆に、保持壁100が廃止されることも考えられる。
【0092】
また、上述の筒軸65の溝72,72Dを廃止することも考えられる。
また、第2の側板54,55、受け部80および保持壁100の少なくともひとつの少なくとも一部が、ステアリングコラム26とは別体で形成され、ステアリングコラム26に固定される場合も考えられる。例えば、規制部としては、ギヤハウジング30に取り付けられた突起であってもよい。また、受け部80としては、ギヤハウジング30に導通可能に取り付けられた導体であってもよい。また、一対の第2の側板54,55は、ステアリングコラム26に固定状態で取り付けられていてもよい。
【0093】
また、付勢ばねとして、自由状態において平坦な板ばねを湾曲させた状態で用いることも考えられる。
また、上記導電部材51,51A,51Bは、チルト調節可能な上述のステアリング装置1の他、チルト調節不能なステアリング装置(図示せず)に適用することもできる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図2】図1のステアリング装置の要部の断面図である。
【図3】図2の平面図であり、部分的に断面表示されている。
【図4】図2の斜視図である。
【図5】図2の要部の拡大図である。
【図6】図6Aは、図2に示す導電部材の平面図であり、自由状態を示し、図6Bは、図6Aの導電部材の側面図である。
【図7】図6Aの導電部材の斜視図である。
【図8】図6Aの導電部材をステアリング装置に組み込む際の途中の状態の断面図である。
【図9】第2の実施形態のステアリング装置の要部の平面図であり、部分的に断面表示されている。
【図10】図10Aは、図9に示す導電部材の自由状態での平面図であり、図10Bは、図10Aの導電部材の側面図である。
【図11】第3の実施形態のステアリング装置の要部の拡大図である。
【図12】図12Aは、第4の実施形態のステアリング装置の要部としての規制部を示す断面図であり、図12Bは、図12Aの12B−12B断面の断面図である。
【図13】第5の実施形態のステアリング装置の要部としての筒軸を示す平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、26…ステアリングコラム、37…固定ブラケット、39…車体、44,45…第1の側板、48…第1の挿通孔、50…ブッシュ(絶縁部材)、51,51A,51B…導電部材、54,55…第2の側板、58…第2の挿通孔、59…(第2の挿通孔の)内周面、65,65B,65D…筒軸、66…ボルト(締め付け軸)、67…(筒軸の軸方向の)端部、69…(筒軸の軸方向の端部の)外周面、68…(筒軸の軸方向の)中間部、70…筒軸の端面、71…(筒軸の軸方向の中間部の)外周面、72,72D…溝、80…受け部、81…第1の接触部、82…第2の接触部、83…第1の湾曲バネ(付勢バネ)、84…(第1の湾曲バネの)第1の端部、85…(第1の湾曲バネの)第2の端部、86…第1の湾曲バネの曲率中心、88,88A,88B…第2の湾曲バネ(把持部)、89…第2の湾曲バネの曲率中心、90…(第2の湾曲バネの)内周面、95…第3の湾曲バネ、97…(第3の湾曲バネの)外周面、100…保持壁(規制部)、154…溝の中央部、L3…溝の深さ、R1…(筒軸の)径方向、T1…(筒軸の)周方向、X1…筒軸の軸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置では、ステアリングコラムに備えられるホーン等の電気機器のアースをとるために、ステアリングコラムを車体側の固定ブラケットに電気的に接続する導電部材を有している(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の導電部材は、板状に形成されており、挿通孔を有している。この挿通孔に、ステアリングコラムと固定ブラケットとを挿通状態で連結するためのチルトボルトが挿通されている。
【特許文献1】特開2005−8022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の導電部材を組み付けるには、ステアリング装置の組立時に、ステアリングコラム、固定ブラケット、チルトボルト、および導電部材を互いに位置合わせした状態で、導電部材の挿通孔にチルトボルトを挿通しなければならない。その結果、ステアリング装置の組立に手間がかかっていた。
また、導電部材には、ステアリングコラムと固定ブラケットとを確実に導通させることが要請されている。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ステアリングコラムと固定ブラケット間を確実に導通できて、且つ組み立てるときの手間を低減できるステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のステアリング装置(1)は、車体(39)に固定された固定ブラケット(37)と、上記固定ブラケットに設けられた一対の第1の側板(44,45)と、上記一対の第1の側板にそれぞれ形成された第1の挿通孔(48)と、操舵部材(2)に連結されたステアリングシャフト(3)を回転可能に支持するステアリングコラム(26)と、上記ステアリングコラムに設けられた受け部(80)および一対の第2の側板(54,55)と、上記一対の第2の側板にそれぞれ形成された第2の挿通孔(58)と、上記一対の第2の側板の第2の挿通孔に挿通された導電性の筒軸(65,65B,65D)と、上記第2の挿通孔の内周面(59)と筒軸の軸方向(X1)の端部(67)の外周面(69)との間に介在する絶縁部材(50)と、上記受け部と筒軸の軸方向の中間部(68)の外周面(71)との間に介在する板状の導電部材(51,51A,51B)とを備え、上記筒軸は、上記絶縁部材を介して上記一対の第2の側板を支持し、上記一対の第1の側板の第1の挿通孔および筒軸に挿通された締め付け軸(66)が、一対の第1の側板をそれぞれ筒軸の対応する端面(70)に締め付けており、上記導電部材は、筒軸を弾性的に把持する把持部(88)と、上記把持部と上記受け部との間に介在する付勢バネ(83)とを含み、上記把持部は、筒軸の径方向(R1)に沿って筒軸に嵌合可能なU字形形状をなし、付勢バネによって、上記把持部に設けられた第1の接触部(81)が筒軸の外周面に弾性的に押圧されているとともに、付勢バネに設けられた第2の接触部(82)が上記受け部に弾性的に押圧されていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、第1の接触部が、筒軸に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第1の接触部と筒軸とが確実に導通できる。第2の接触部が、受け部に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第2の接触部と受け部とが確実に導通できる。その結果、ステアリングコラムに設けられた受け部と、筒軸とが、確実に導通できる。ひいては、固定ブラケットとステアリングコラムとが確実に導通できる。
【0007】
しかも、把持部を筒軸の径方向から当該筒軸に嵌めることができるので、例えば、締め付け軸が一対の第1の側板の第1の挿通孔および筒軸に挿通された状態で、筒軸へ把持部を取り付けることができる。その結果、導電部材の組み付けの手間を軽減できる。
さらに、把持部が筒軸を弾性的に把持するとともに、付勢バネが筒軸の外周面と受け部との間に弾性的な圧縮状態で介在している。これにより、導電部材を、筒軸の外周面と受け部との間に保持することができる。従って、従来の導電部材を取り付けるために用いられたボルト等の従来の取付部材を簡素化することが可能となり、さらには従来の上記取付部材を廃止することが可能となる。
【0008】
また、本発明において、上記付勢バネは、第1および第2の端部(84,85)を有する第1の湾曲バネ(83)を含み、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第1の端部(84)に、筒軸の外周面を弾性的に締め付け可能な上記把持部としての第2の湾曲バネ(88,88A,88B)が接続され、上記第2の湾曲バネの内周面(90)に、上記第1の接触部が形成されている場合がある(請求項2)。この場合、例えば、第1の湾曲バネの湾曲の曲率半径を小さくするように、第1の湾曲バネを弾性変形させるときに、第1の湾曲バネを受け部および筒軸の間に弾性的に圧縮状態で介在させることができる。第2の湾曲バネの湾曲の曲率半径を大きくするように、第2の湾曲バネを弾性変形させるときに、第2の湾曲バネにより筒軸を弾性的に締め付けることができる。これにより、第2の湾曲バネが筒軸に確実に保持される。
【0009】
また、本発明において、上記第1の湾曲バネおよび上記第2の湾曲バネは、同側に曲率中心(86,89)を有している場合がある(請求項3)。この場合、第2の湾曲バネがステアリングコラムの径方向外方から筒軸に取り付けられるときに、第1の湾曲バネがステアリングコラムに干渉することが生じ難くできる。
また、本発明において、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第2の端部に、第3の湾曲バネ(95)が設けられ、上記第1の湾曲バネおよび上記第3の湾曲バネは、互いに逆向きに湾曲しており、上記第3の湾曲バネの外周面(97)に、上記第2の接触部が形成されている場合がある(請求項4)。この場合、第3の湾曲バネの弾性付勢力により、第2の接触部が受け部に確実に接触できる。
【0010】
また、本発明において、上記筒軸の外周面に筒軸の周方向(T1)の少なくとも一部に沿って延びる溝(72,72D)が形成され、上記第2の湾曲バネは、筒軸の外周面の上記溝に嵌められており、上記溝によって、筒軸の軸方向への、第1の接触部の移動が規制されている場合がある(請求項5)。この場合、筒軸の軸方向に関しての筒軸と第1の接触部との相対移動を規制できるので、筒軸と第1の接触部との間の接触不良の発生を防止できる。
【0011】
また、本発明において、上記溝(72D)の深さ(L3)が、筒軸の軸方向に関する上記溝の中央部(154)に向かって次第に深くなるようにされている場合がある(請求項6)。この場合、溝を、塑性加工により容易に形成することが可能となる。その結果、製造コストをより一層低減できる。例えば、上記溝の断面において、上記中央部に設けられた溝底部が凹湾曲状をなしており、また、上記溝の一対の縁部が凸湾曲状をなしている。この場合には、溝を鍛造で形成するのに好ましい。
【0012】
また、本発明において、上記ステアリングコラムに、当該ステアリングコラムに対する第2の接触部の移動を規制する規制部(100)が設けられている場合がある(請求項7)。この場合、受け部と第2の接触部との相対移動を規制できるので、受け部と第2の接触部との間の接触不良の発生を防止できる。また、上記規制部と上記把持部とをともに備えるので、導電部材を受け部および筒軸に、より一層確実に保持できる。その結果、従来の上記取付部材を廃止することができる。
【0013】
また、本発明において、上記第2の接触部は、上記受け部および上記規制部によって受けられている場合がある(請求項8)。この場合、受け部と第2の接触部との相対移動をより確実に防止できる。
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ステアリング装置が電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)である場合に則して説明する。なお、本発明はこれに限らず、例えば、操舵補助力を得られないマニュアル操舵のステアリング装置であってもよい。
図1は、本発明の第1実施形態のステアリング装置の概略構成の模式図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間シャフト5と、中間シャフト5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7と、ピニオンシャフト7の端部近傍に設けられたピニオン歯8に噛み合うラック歯9を有して自動車の左右方向(図1の紙面垂直方向に相当する。)に延びる転舵軸としてのラックバー10とを有している。
【0015】
ピニオンシャフト7およびラックバー10によりラックアンドピニオン機構からなるステアリングギヤが構成されている。ラックバー10は、図示しないが、車体に固定されるラックハウジング内に複数の軸受を介して直線往復自在に支持されている。ラックバー10には、一対のタイロッド(図示せず)が結合されている。各タイロッドは対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪(図示せず)に連結されている。
【0016】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン歯8およびラック歯9によって、自動車の左右方向に沿ってのラックバー10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸17と、ピニオンシャフト7に連なる出力軸18とに分割されている。これら入力軸17および出力軸18はトーションバー19を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸17に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー19が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸17および出力軸18が相対回転するようになっている。
【0017】
トーションバー19を介する入力軸17および出力軸18の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ20が設けられている。また、車速を検出するための車速センサ21が設けられている。また、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)22が設けられている。また、操舵補助力を発生させるための電動モータ23と、この電動モータ23の出力回転を減速する減速機構24とが設けられている。
【0018】
トルクセンサ20および車速センサ21からの検出信号が、ECU22に入力されるようになっている。ECU22は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、操舵補助用の電動モータ23を制御する。電動モータ23の出力回転が減速機構24を介して減速されてピニオンシャフト7に伝達され、ラックバー10の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。
【0019】
また、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム26を有している。
ステアリングコラム26は、アッパーチューブ27と、アッパーチューブ27に嵌合されたロアーチューブ28と、ロアーチューブ28と一体に設けられたセンサハウジング29と、センサハウジング29と一体に設けられたギヤハウジング30とを備えている。アッパーチューブ27とロアーチューブ28とセンサハウジング29とギヤハウジング30とは、導体としての金属により形成されており、電気的に互いに接続されている。
【0020】
センサハウジング29には、トルクセンサ20およびECU22が収容され保持されている。ギヤハウジング30に、電動モータ23のモータハウジング32が固定されている。モータハウジング32は、導体としての金属により形成されており、ギヤハウジング30に電気的に接続されている。ギヤハウジング30内には、減速機構24が収容されている。減速機構24は、電動モータ23の出力軸33によって駆動される駆動ギヤ34と、この駆動ギヤ34に噛み合う被動ギヤ35とを有している。被動ギヤ35は、ステアリングシャフト3の出力軸18と同行回転するように、出力軸18に固定されている。
【0021】
ステアリング装置1は、ステアリングコラム26の下部を支持する車体側部材としての固定ブラケット37と、ステアリングコラム26の下部を回動可能に支持するためのピボット部材38とを有している。ピボット部材38は、固定ブラケット37に固定されている。固定ブラケット37とピボット部材38とは、導体としての金属によりそれぞれ形成されており、電気的に互いに接続されている。また、固定ブラケット37は、車体39に固定されており、車体39に電気的に接続されている。
【0022】
ステアリングコラム26の下部は、例えば、ロアーチューブ28と、センサハウジング29と、ギヤハウジング30とを含んでいる。ステアリングコラム26の下部は、固定ブラケット37を介して車体39に支持されるとともに、ピボット部材38を含むチルトヒンジ機構によって回動可能に支持されている。ステアリングコラム26の全体が、操舵部材2とともに、ピボット部材38の周りに揺動されることにより、操舵部材2の高さ位置が調整されるようになっている。
【0023】
一方、ステアリングコラム26のアッパーチューブ27に関連して、ステアリングコラム26の上部を支持する支持機構42が設けられている。支持機構42は、ステアリングコラム26の位置を、操作レバー41の操作によりロック状態およびロック解除状態に切り換えることができる。
図2は、図1のステアリング装置1の要部の断面図である。図3は、図2の平面図であり、 III− III断面が部分的に図示されている。図2、図3を参照して、固定ブラケット37は、車両の左右方向(図2では紙面垂直方向に相当し、図3では紙面上下方向に相当する。)に相対向する一対の第1の側板44,45を有している。一対の第1の側板44,45のそれぞれは、外側面46と、内側面47とを有している。一対の第1の側板44,45のそれぞれに、第1の挿通孔48が形成されている。固定ブラケット37は、車体39の一部と単一部材により一体に形成され、その結果、車体39に固定されるようにしてもよい。また、固定ブラケット37は、車体39とは別体で形成されており、車体39に固定状態で取り付けられていてもよい。
【0024】
図4は、図2に示す要部の斜視図である。なお、図4では、固定ブラケット37の図示が省略されている。図3および図4を参照して、チルトヒンジ機構は、ピボット部材38と、後述する絶縁部材としての一対のブッシュ50と、後述する導電部材51と、ステアリングコラム26の下部に設けられた一対の第2の側板54,55とを有している。導電部材51は、少なくとも一つあればよい。本実施形態では、導電部材51が1つの場合に則して説明する。
【0025】
ステアリングコラム26の下部は、車両の左右方向に互いに対向する一対の第2の側板54,55を有している。一対の第2の側板54,55と、ギヤハウジング30の底部とは、単一部材により一体に形成されている。一対の第2の側板54,55のそれぞれは、外側面56と、内側面57とを有している。第2の側板54,55の外側面56が、固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45の内側面47にそれぞれ対向している。
【0026】
一対の第2の側板54,55のそれぞれに、第2の挿通孔58が形成されている。一対の第2の側板54,55の第2の挿通孔58の内周面59には、それぞれ、合成樹脂からなる絶縁性のブッシュ50が装着されている。
各ブッシュ50は、低摩擦部材としての合成樹脂部材により形成されている。各ブッシュ50は、第2の挿通孔58に嵌合された筒状の本体61と、本体61の一端部に径方向に延設された環状のフランジ62とを有している。一方のブッシュ50のフランジ62は、相対向する固定ブラケット37の第1の側板44およびステアリングコラム26の第2の側板54の間に介在している。他方のブッシュ50のフランジ62は、相対向する固定ブラケット37の第1の側板45およびステアリングコラム26の第2の側板55の間に介在している。ブッシュ50には、軸方向に延びるスリット63が形成されており、これにより、ブッシュ50は、周方向に有端となっている。ブッシュ50の本体61は、弾性的に縮径された状態で、第2の挿通孔58内に嵌め合わされている。
【0027】
図5は、図2の要部の拡大図である。図3,図5を参照して、ピボット部材38は、一対のブッシュ50に挿通された導電性の筒軸65と、筒軸65を挿通する締め付け軸としてのボルト66とを有している。筒軸65は、一対の第2の側板54,55の第2の挿通孔58を挿通している。筒軸65は、固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45間に挟持されている。ボルト66は、一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48および筒軸65を挿通している。
【0028】
図3を参照して、筒軸65は、ブッシュ50を介して一対の第2の側板54,55を支持している。筒軸65の軸方向X1と、車両の左右方向とは、互いに平行になっている。筒軸65は、当該筒軸65の軸方向X1に関して、一対の端部67と、端部67間の中間部68とを有している。各端部67は、外周面69と、端面70とを有している。中間部68は、外周面71を有している。中間部68の外周面71には、凹部としての溝72が形成されている。この溝72は、筒軸65の周方向T1に無端状に延びている。溝72は、円筒面形状に形成された溝底と、筒軸65の軸方向X1に互いに対向する一対の側壁とを有している。
【0029】
筒軸65の製造方法としては、材料としての管の外周に溝72を切削加工により形成することが考えられる。また、この他の製造方法としては、以下の方法も考えられる。すなわち、外径が小さい材料としての第1の管と、外径が大きい材料としての一対の第2の管とを互いに連結する。第1の管の軸方向両端部に一対の第2の管を加圧溶接(圧接)する。
【0030】
ボルト66は、ねじ軸76と、頭部77とを有している。ねじ軸76の軸方向の一端に、ねじ部としての雄ねじが形成されている。ねじ軸76は、筒軸65および固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48を挿通している。ねじ軸76の軸方向の他端に頭部77が一体に形成されている。
ねじ軸76の雄ねじに、端部材としてのナット78が螺合されている。ボルト66の頭部77が固定ブラケット37の一方の第1の側板44の外側面46に接するとともに、ナット78が固定ブラケット37の他方の第1の側板45の外側面46に接している。
【0031】
ナット78に対して固定ボルト66をねじ込むことにより、固定ブラケット37の一対の第1の側板44,45間に、ピボット部材38の筒軸65を挟持することができる。これにより、筒軸65が固定ブラケット37に締結されている。筒軸65の一対の端部67の端面70が、固定ブラケット37の対応する第1の側板44,45の内側面47に圧接されている。その結果、車体側部材としての固定ブラケット37と筒軸65との電気的導通が確保されている。
【0032】
一方、筒軸65とステアリングコラム26の一方の第2の側板54との両者間には、絶縁性のブッシュ50が介在している。同様に、筒軸65と他方の第2の側板55との両者間には、絶縁性のブッシュ50が介在している。その結果、ステアリングコラム26の第2の側板54,55の第2の挿通孔58の内周面59と筒軸65の軸方向X1の端部67の外周面69との間の電気的導通が遮断されている。
【0033】
そこで、本実施の形態では、筒軸65とステアリングコラム26とを電気的に接続する導電部材51が設けられている。また、ステアリングコラム26の下部は、導電部材51を受ける受け部80を有している。
図2,図3を参照して、受け部80は、導体としての金属により形成されており、一対の第2の側板54,55の間に配置されている。受け部80は、ステアリングシャフト3の軸方向に対して交差し、且つ筒軸65の軸方向X1に平行な平面をなす。受け部80は、ギヤハウジング30の底部に固定されており、ギヤハウジング30に電気的に接続されている。本実施形態では、受け部80は、ギヤハウジング30の底部に単一部材により一体に形成されている。
【0034】
導電部材51は、受け部80と筒軸65の中間部68の外周面71との間に介在している。導電部材51は、例えば、金属により形成され、板状をなしている。導電部材51が受け部80に接触することにより、導電部材51と受け部80とが互いに電気的に接続される。これにより、導電部材51は、受け部80を介してギヤハウジング30に電気的に接続されるようになっている。
【0035】
図6Aは、図2に示す導電部材51の平面図であり、弾性変形が生じていない自由状態を示す。図6Bは、図6Aの導電部材51の側面図である。図7は、図6Aの導電部材51の自由状態での斜視図である。図5,図7を参照して、導電部材51は、筒軸65の外周面71に接触する第1の接触部81と、受け部80に接触する第2の接触部82と、上記第1および第2の接触部81,82間に介在する付勢バネとしての第1の湾曲バネ83とを含んでいる。
【0036】
第1の湾曲バネ83によって、第1の接触部81が筒軸65の外周面71に弾性的に押圧されている。これとともに、第1の湾曲バネ83によって、第2の接触部82が受け部80に弾性的に押圧されている。第1の接触部81は、筒軸65を当該筒軸65の中心に向けて押圧している。第2の接触部82は、受け部80を筒軸65の中心から遠ざかる向きに押圧している。
【0037】
導電部材51は、弾性変形した状態で、筒軸65および受け部80に取り付けられている。以下では、特に説明しない場合には、導電部材51が弾性変形して取り付けられている状態を説明することとする。
第1の湾曲バネ83は、湾曲状をなす板ばねである。第1の湾曲バネ83は、湾曲に沿う方向に関する第1の端部84および第2の端部85を有している。第1の湾曲バネ83は、湾曲の曲率中心86を有している。なお、この曲率中心86は、導電部材51の組み込み状態と自由状態とで、相異なる。
【0038】
導電部材51がステアリング装置1に組み込まれたときに、第1の湾曲バネ83は弾性曲げ変形している。これにより、組み込み状態の第1の湾曲バネ83の湾曲の曲率半径は、自由状態の第1の湾曲バネ83の湾曲の曲率半径よりも小さくなっている。その結果、第1および第2の端部84,85が互いに遠ざかるような弾性復元力が生じる。
第1の湾曲バネ83の第1の端部84に、第2の湾曲バネ88が接続されている。また、第1の湾曲バネ83の上記第2の端部85に、後述する第3の湾曲バネ95が設けられている。
【0039】
第2の湾曲バネ88は、筒軸65の軸方向X1(図5で紙面垂直方向に相当する。)に沿って見たときに湾曲形状、例えば、円弧形状をなしている。第2の湾曲バネ88は、湾曲の曲率中心89と、内周面90と、外周面91とを有している。また、第2の湾曲バネ88は、当該第2の湾曲バネ88の湾曲に沿う方向(筒軸65の周方向T1に相当する。)に関する一対の端部92,93を有している。なお、第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率中心89は、導電部材51の組み込み状態と自由状態とで、相異なる。
【0040】
第1の湾曲バネ83および第2の湾曲バネ88は、組み込み状態において導電部材51に対して同側に曲率中心86,89を有している。筒軸65の軸方向X1に沿って見たときに、第1の湾曲バネ83および第2の湾曲バネ88は、略3の字形状をなしている。
第2の湾曲バネ88の内周面90は、筒軸65の外周面71に沿っている。第2の湾曲バネ88の内周面90に、上記第1の接触部81が形成されている。第1の接触部81の中心角A2は、180°を超えて大きい値である(A2>180°)。
【0041】
第2の湾曲バネ88は、U字形形状をなしている。これにより、第2の湾曲バネ88を、筒軸65の径方向R1から筒軸65に嵌合することができる。
第2の湾曲バネ88は、筒軸65を弾性的に把持する把持部として機能する。第2の湾曲バネ88は、筒軸65の外周面71を弾性的に締め付け可能とされる。すなわち、第2の湾曲バネ88は、弾性的に拡径された状態で筒軸65に取り付けられている。
【0042】
図3,図5を参照して、第2の湾曲バネ88は、筒軸65の外周面71の規制部としての上記溝72に嵌められている。溝72によって、筒軸65の軸方向X1の両側への、第1の接触部81の移動が規制されている。筒軸65の軸方向X1に関して、溝72の溝幅は、第2の湾曲バネ88の幅寸法に等しくされているか、または、この幅寸法の値よりもわずかに大きくされている。
【0043】
図5,図7を参照して、第3の湾曲バネ95は、湾曲状をなす板ばねである。第3の湾曲バネ95は、湾曲の曲率中心96と、外周面97とを有している。組み込み状態において、第1の湾曲バネ83および第3の湾曲バネ95は、互いに逆向きに湾曲している。第3の湾曲バネ95の外周面97に、上記第2の接触部82が形成されている。なお、第3の湾曲バネ95の湾曲の曲率中心96は、導電部材51の組み込み状態と自由状態とで、若干異なる。
【0044】
また、第2の湾曲バネ88の一方の端部92と第1の湾曲バネ83の第1の端部84とは、第4の湾曲バネ98を介して接続されている。また、第2の湾曲バネ88の他方の端部93には、第5の湾曲バネ99が接続されている。
第2の湾曲バネ88と第4の湾曲バネ98と第5の湾曲バネ99とは、筒軸65の軸方向X1に沿って見たときに略オーム(Ω)字形状をなしている。第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99の湾曲は、互いに同じ側に湾曲している。また、第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99は、第2の湾曲バネ88とは逆向きに湾曲している。第4の湾曲バネ98の湾曲の曲率半径は、第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率半径よりも小さい。第5の湾曲バネ99の湾曲の曲率半径は、第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率半径よりも小さい。
【0045】
第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99は、互いに離隔している。第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99の最小間隔L1は、筒軸65の中間部68の外周面71の直径L2よりも小さくされている(L1<L2)。この直径L2は、例えば、外周面71のうちで溝72の溝底を形成する部分の外径である。
弾性変形を生じていない自由状態において、導電部材51は、筒軸65および受け部80に取り付けられた状態と概ね同様の形状をなしている。すなわち、第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99は、それぞれ湾曲状をなす板ばねである。
【0046】
図6A,図6B,図7を参照して、自由状態において第1の湾曲バネ83および第2の湾曲バネ88は、導電部材51に対して同側に曲率中心86,89を有している。また、自由状態において第1の湾曲バネ83および第3の湾曲バネ95は、導電部材51に対して互いに反対側に曲率中心86,96を有している。
図6A,図6Bを参照して、第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99は、単一材料で一体に形成されている。第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99の板厚は、互いに等しくされている。第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99の板幅(筒軸65の軸方向X1に関する寸法に相当する。)は、互いに等しくされている。第1、第2、第3、第4および第5の湾曲バネ83,88,95,98,99の板面は、互いに滑らかに連続してつながっている。導電部材51は、波形の板ばねからなる。
【0047】
図4,図5を参照して、ステアリングコラム26は、当該ステアリングコラム26に対する導電部材51の第2の接触部82の移動を規制する規制部としての保持壁100を有している。
保持壁100は、受け部80の周縁から立ち上がって形成されている。保持壁100は、ギヤハウジング30の底部に固定されている。保持壁100は、受け部80を取り囲む四角環状に配置されている。これにより、保持壁100は、受け部80に沿う方向M1,M2,M3,M4に関しての第2の接触部82の移動を規制することができる。
【0048】
保持壁100の四角環状の内側に、第3の湾曲バネ95が受け入れられている。これにより、導電部材51を受け部80に適切且つ確実に取り付けることができる。受け入れられた第3の湾曲バネ95は、受け部80に接触し、さらに、保持壁100の後述する第1の部分101に当接するようになっている。
保持壁100は、第1、第2、第3および第4の部分101,102,103,104を有している。各部分101,102,103,104は、当該保持壁100の四角環状の対応する一辺をそれぞれ形成している。
【0049】
第1および第2の部分101,102は、受け部80に沿う第1および第2の方向M1, M2に関して受け部80を挟んで互いに対向して配置されている。第1および第2の部分101,102の間隔は、第3の湾曲バネ95の湾曲の外径と等しいか、この外径よりも大きく設定されている。本実施形態では、上記間隔が、上記外径よりも大きい場合に則して説明する。
【0050】
図3,図4を参照して、第3および第4の部分103,104は、受け部80に沿う第3および第4の方向M3,M4に関して受け部80を挟んで互いに対向して配置されている。第3および第4の部分103,104の間隔は、第3の湾曲バネ95の板幅と等しいか、この板幅よりも大きく設定されている。本実施形態では、上記間隔が、板幅よりも大きい場合に則して説明する。
【0051】
ここで、受け部80に沿う第3および第4の方向M3,M4は、互いに逆向きの方向であり、且つ筒軸65の軸方向X1に平行な方向である。第3および第4の方向M3,M4は、上述の第1および第2の方向M1,M2と直交する。この第1および第2の方向M1, M2は、互いに逆向きの方向である。
図5を参照して、第1の部分101は、上記第1の方向M1への第2の接触部82の移動を規制することができる。第1の部分101と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
【0052】
第2の部分102は、上記第2の方向M2への第2の接触部82の移動を規制することができる。第2の部分102と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
図3を参照して、第3の部分103は、上記第3の方向M3への第2の接触部82の移動を規制することができる。第3の部分103と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
【0053】
第4の部分104は、上記第4の方向M4への第2の接触部82の移動を規制することができる。第4の部分104と第3の湾曲バネ95とが互いに当接するときに、上記移動が規制される。
また、保持壁100は、絶縁体により形成されることも考えられるが、本実施形態では導体としての金属により形成されている。保持壁100は、ギヤハウジング30の底部に電気的に接続されている。これにより、保持壁100と導電部材51とは、互いに接触したときに、互いに電気的に接続されるようになっている。
【0054】
図3,図5を参照して、導電部材51は、保持壁100に接触する第3の接触部105を有している。第3の接触部は、第3の湾曲バネ95の外周面97に形成され、第2の接触部82と離隔して配置されており、保持壁100と電気的に接続されている。
本実施形態では、一対の第2の側板54,55、受け部80、保持壁100、およびギヤハウジング30が、単一部材により一体に形成されている。
【0055】
図8は、図6Aの導電部材51をステアリング装置1に組み込む際の途中の状態の断面図である。図8を参照して、導電部材51を、例えば、ステアリングコラム26の径方向外方から筒軸65および受け部80に、以下のように容易に取り付けることができる。
先ず、導電部材51の第2の接触部82を、四角環状をなす保持壁100により囲まれた内側に入れる。
【0056】
次に、第2の湾曲バネ88を、筒軸65に、この筒軸65の径方向R1の外方から嵌合する。すなわち、第2の接触部82を支点として、この支点の周りに導電部材51を回動させる。そして、第4の湾曲バネ98を筒軸65の外周面71に当接させる。この状態で第2の湾曲バネ88の外周面91を筒軸65に向けて押圧することにより、第4および第5の湾曲バネ98,99を筒軸65の外周面71に当接させる。
【0057】
第4および第5の湾曲バネ98,99を筒軸65の外周面71に当接させた状態で、第2の湾曲バネ88の外周面91を筒軸65に向けて押圧する。これにより、第4の湾曲バネ98および第5の湾曲バネ99が、筒軸65の外周面71に沿って互いに遠ざかる。これとともに、第2の湾曲バネ88が拡径される。さらに、第1の湾曲バネ83が、弾性曲げ変形し、その湾曲の曲率半径が小さくなる。その結果、筒軸65が第2の湾曲バネ88の内側にスムーズに入ることができる。
【0058】
なお、導電部材51を、上述の手順とは異なる手順にしたがって組み付けることもできる。例えば、第2の湾曲バネ88を筒軸65に取り付けた後に、第3の湾曲バネ95が受け部80に受けられるようにしてもよい。
図5を参照して、取り付けた状態で、第2の湾曲バネ88の弾性復元力により、第2の湾曲バネ88の内周面90が、筒軸65の外周面71に沿って、この外周面71を締め付けている。これとともに、第1の湾曲バネ83の弾性復元力により、第1および第2の接触部81,82が筒軸65および受け部80に押圧されている。
【0059】
導電部材51が取り付けられた状態では、第1の接触部81が、筒軸65の中間部68の外周面71の溝72の溝底に押圧状態で接触している。これにより、導電部材51と筒軸65とは、互いに電気的に確実に接続される。また、第1の接触部81は、溝72により、筒軸65の軸方向X1に関する筒軸65に対する移動を規制されている。これにより、第1の接触部81の位置ずれの発生が防止される。従って、位置ずれに起因した押圧力の変化が抑制されるので、電気的な接続が確実に達成される。
【0060】
また、第2の接触部82が受け部80に押圧状態で常時接している。このときに、第3の湾曲バネ95の外周面が保持壁100の第1の部分101に常に接触している。第1の部分101は、第2の接触部82の移動を規制しつつ、第2の接触部82を受けている。これとともに、ステアリングコラム26に対する第2の接触部82の移動が、上述の第1の方向M1について規制されている。また、このとき、保持壁100の第2〜第4の部分102,103,104は、第3の湾曲バネ95に当接していない。万一、車両の振動等に起因して第3の湾曲バネ95が第1の部分101から離れるときには、第2,第3および第4の方向M2,M3,M4に関する移動量が短く規制される。
【0061】
また、本実施形態では、第2の湾曲バネ88が筒軸65に嵌まり且つ第2の接触部82が受け部80に接した状態において、第1の湾曲バネ83の弾性変形量は、第3の湾曲バネ95と保持壁100の第1の部分101との距離に比例している。例えば、第3の湾曲バネ95が保持壁100の第1の部分101に接しているときに、第1の湾曲バネ83の弾性変形量は最小になっている。その結果、第2の接触部82が受け部80に押圧されつつ、第2の接触部82が保持壁100の第1の部分101により安定して受けられるようになっている。
【0062】
また、本実施形態では、筒軸65の中心軸線106に沿って導電部材51、筒軸65および受け部80を見たときに、第2の接触部82が受け部80から受ける反力F2の作用線C2は、筒軸65の中心軸線106を外されている。すなわち、上記反力F2は、第2の接触部82を通り、受け部80の法線方向に作用する。反力F2の作用線C2は、筒軸65の中心軸線106および第2の接触部82とを結ぶ直線C3に対して、ステアリングシャフト3側に傾斜している。その結果、筒軸65の周りのモーメントM6が導電部材51に生じる。このモーメントM6は、導電部材51が受け部80および保持壁100の第1の部分101にともに接することに寄与する。
【0063】
また、本実施形態では、第3の湾曲バネ95が、第1の湾曲バネ83による押圧を受けた状態で、受け部80および保持壁100の第1の部分101を押圧している。このとき、第3の湾曲バネ95の曲率半径が小さくなるように、第3の湾曲バネ95は弾性変形している。第3の湾曲バネ95が受け部80および保持壁100の第1の部分101の間において突っ張るように、第3の湾曲バネ95の弾性復元力F3,F4は作用する。弾性復元力F3,F4は、第3の湾曲バネ95が受け部80および保持壁100の第1の部分101にともに接するのに寄与する。
【0064】
本実施形態では、導電部材51が筒軸65および受け部80に対して弾性的に接触するようにした。仮に、導電部材51の形状、寸法等にばらつきがあったとしても、導電部材51が筒軸65および受け部80に確実に接触できる。
また、導電部材51と筒軸65との接続の信頼性を向上させることができ、その結果、導電部材51を介して、ステアリングコラム26と筒軸65との間を確実に導通させることができる。ひいては、ステアリングコラム26を車体39に対して、確実にボディアースすることができ、電動パワーステアリング装置1に対する電磁障害の発生を防止することができる。
【0065】
図1を参照して、ステアリングコラム26やこれに取り付けられたモータハウジング32等に電気シールド機能を果たさせることができる。その結果、ステアリングコラム26やモータハウジング32外で発生した電磁波が、ECU22およびトルクセンサ20に悪影響を与えることを防止することができる。また、ステアリングコラム26やモータハウジング32から電波が漏洩することを防止することができるので、例えば、車両のラジオ(図示せず)にノイズが生じることを防止できる。
【0066】
また、操舵部材2には、ホーン111(警笛)を鳴らすためのホーンスイッチ112が設けられている。ホーンスイッチ112を操作することにより、ホーン111を鳴らすことができるようになっている。具体的には、車両に設けられたバッテリー113の一方の端子は、車体39に接地されている。バッテリー113の他方の端子が、ホーン111の一方の端子に接続されている。ホーン111の他方の接点は、ホーンスイッチ112の一方の接点に接続されている。ホーンスイッチ112の他方の接点は、ステアリングシャフト3に接続されている。ステアリングシャフト3は、車体39に下記のようにして接地されている。
【0067】
ステアリングシャフト3、ステアリングシャフト3の上部を受ける軸受(図示せず)、アッパーチューブ27、ロアーチューブ28、センサハウジング29、ギヤハウジング30、導電部材51、筒軸65および固定ブラケット37は、それぞれ導電性を有する部材で形成されており、互いに電気的に導通可能である。
また、ステアリングシャフト3の出力軸18を受ける軸受(図示せず)は、導電性を有している。出力軸18、軸受、センサハウジング29、ギヤハウジング30とは、互いに電気的に導通可能である。固定ブラケット37は、車体39に電気的に導通可能であり、車体39に接地されている。
【0068】
図3を参照して、以上説明したように、本実施形態のステアリング装置1は、以下の(1) 〜(10)の各部、すなわち、(1) 車体39に固定された固定ブラケット37と、(2) 上記固定ブラケット37に設けられた一対の第1の側板44,45と、(3) 上記一対の第1の側板44,45にそれぞれ形成された第1の挿通孔48と、(4) 操舵部材2に連結されたステアリングシャフト3を回転可能に支持するステアリングコラム26と、(5) 上記ステアリングコラム26に設けられた受け部80および一対の第2の側板54,55と、(6) 上記一対の第2の側板54,55にそれぞれ形成された第2の挿通孔58と、(7) 上記一対の第2の側板54,55の第2の挿通孔58に挿通された導電性の筒軸65と、(8) 上記第2の挿通孔58の内周面と筒軸65の軸方向X1の端部67の外周面69との間に介在する絶縁部材としてのブッシュ50と、(9) 上記受け部80と筒軸65の軸方向X1の中間部68の外周面71との間に介在する板状の導電部材51とを備えている。
【0069】
本実施形態では、上記筒軸65は、上記絶縁部材を介して上記一対の第2の側板54,55を支持している。上記一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48および筒軸65に挿通された締め付け軸としてのボルト66が、一対の第1の側板44,45をそれぞれ筒軸65の対応する端面70に締め付けている。上記導電部材51は、筒軸65を弾性的に把持する把持部としての第2の湾曲バネ88と、上記把持部と上記受け部80との間に介在する付勢バネとしての第1の湾曲バネ83とを含んでいる。上記把持部は、筒軸65の径方向R1に沿って筒軸65に嵌合可能なU字形形状をなし、付勢バネによって、上記把持部に設けられた第1の接触部81が筒軸65の外周面71に弾性的に押圧されているとともに、付勢バネに設けられた第2の接触部82が上記受け部80に弾性的に押圧されている。
【0070】
本実施形態によれば、第1の接触部81が、筒軸65に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第1の接触部81と筒軸65とが互いに確実に導通できる。第2の接触部82が、受け部80に弾性的に押圧された状態で接触しているので、第2の接触部82と受け部80とが互いに確実に導通できる。その結果、ステアリングコラム26に設けられた受け部80と、筒軸65とが互いに確実に導通できる。ひいては、固定ブラケット37とステアリングコラム26とが互いに確実に導通できる。
【0071】
しかも、第2の接触部82を筒軸65の径方向R1から当該筒軸65に嵌めることができるので、例えば、ボルト66が一対の第1の側板44,45の第1の挿通孔48および筒軸65に挿通された状態で、筒軸65へ第2の接触部82を取り付けることができる。その結果、導電部材51の組み付けの手間を軽減できる。
さらに、把持部が筒軸65を弾性的に把持するとともに、付勢バネが筒軸65の外周面71と受け部80との間に弾性的な圧縮状態で介在している。これにより、導電部材51を、筒軸65の外周面71と受け部80との間に保持することができる。従って、従来の導電部材を取り付けるために用いられたボルト等の従来の取付部材を簡素化することが可能となり、さらには従来の上記取付部材を廃止することが可能となる。さらに、導電部材51は板状なので、構造が簡素になる。
【0072】
また、本実施形態では、上記付勢バネは、第1および第2の端部84,85を有する第1の湾曲バネ83を含んでいる。上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネ83の上記第1の端部84に、筒軸65の外周面71を弾性的に締め付け可能な上記把持部としての第2の湾曲バネ88が接続されている。上記第2の湾曲バネ88の内周面90に、上記第1の接触部81が形成されている。
【0073】
この場合、例えば、第1の湾曲バネ83の湾曲の曲率半径を小さくするように、第1の湾曲バネ83を弾性変形させるときに、導電部材51を受け部80および筒軸65の間に弾性的に圧縮状態で介在させることができる。第2の湾曲バネ88の湾曲の曲率半径を大きくするように、第2の湾曲バネ88を弾性変形させるときに、第2の湾曲バネ88により筒軸65を弾性的に締め付けることができる。これにより、第2の湾曲バネ88が筒軸65に確実に保持される。
【0074】
また、本実施形態では、第1の湾曲バネ83および上記第2の湾曲バネ88は、同側に曲率中心86,89を有している。この場合、第2の湾曲バネ88がステアリングコラム26の径方向外方から筒軸65に取り付けられるときに、第1の湾曲バネ83がステアリングコラム26に干渉することが生じ難くできる。
また、本実施形態では、付勢バネとしての上記第1の湾曲バネ83の上記第2の端部85に、第3の湾曲バネ95が設けられている。上記第1の湾曲バネ83および上記第3の湾曲バネ95は、互いに逆向きに湾曲している。上記第3の湾曲バネ95の外周面97に、上記第2の接触部82が形成されている。この場合、第3の湾曲バネ95の弾性付勢力により、第2の接触部82が受け部80に確実に接触できる。
【0075】
また、本実施形態では、筒軸65の外周面71に筒軸65の周方向T1に延びる溝72が形成されている。上記第2の湾曲バネ88は、筒軸65の外周面71の上記溝72に嵌められている。この溝72によって、筒軸65の軸方向X1への、第1の接触部81の移動が規制されている。この場合、筒軸65の軸方向X1に関しての筒軸65と第1の接触部81との相対移動を規制できるので、筒軸65と第1の接触部81との間の接触不良の発生を防止できる。
【0076】
また、本実施形態では、ステアリングコラム26に、当該ステアリングコラム26に対する第2の接触部82の移動を規制する規制部としての保持壁100が設けられている。この場合、受け部80と第2の接触部82との相対移動を規制できるので、受け部80と第2の接触部82との間の接触不良の発生を防止できる。また、上記規制部と上記把持部とをともに備えるので、導電部材51を受け部80および筒軸65に、より一層確実に保持できる。その結果、従来の上記取付部材を廃止することができる。
【0077】
また、本実施形態の第2の接触部82は、上記受け部80および規制部としての保持壁100によって受けられている。この場合、受け部80と第2の接触部82との相対移動をより確実に規制できる。
また、本実施形態では、規制部は、受け部80を取り囲む四角環状に配置された保持壁100を含んでいる。この場合、第2の接触部82を保持壁100の四角環状の内側に受けるときに、受け部80に第2の接触部82を確実に当接させることができる。また、導電部材51の受け部80からの不用意な脱落を防止することができる。
【0078】
また、本実施形態では、ステアリングコラム26は、減速機構24を収容するギヤハウジング30を含み、このギヤハウジング30、上記受け部80および一対の第2の側板54,55は、単一の材料で一体に形成されている。この場合、ステアリングコラム26の構造を簡素化できる。また、受け部80と筒軸65との相互の位置決め精度を高めることができるので、導電部材51を介して筒軸65と受け部80とを電気的により一層確実に接続することができる。
【0079】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点のみを図示して、この点を説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
例えば、図9は、第2の実施形態のステアリング装置1の要部の平面図であり、部分的に断面表示されている。図10Aは、図9に示す導電部材51Aの平面図であり、自由状態を示す。図10Bは、図10Aの導電部材51Aの側面図である。
【0080】
第2の実施形態のステアリング装置1は、導電部材51Aを有している。導電部材51Aは、第1の実施形態の導電部材51に代えて用いられている。導電部材51Aと、第1の実施形態の導電部材51とは、以下の点で異なり、他の構成については同じとされている。
導電部材51Aは、第2の湾曲バネ88に代えて第2の湾曲バネ88Aを有している。第2の湾曲バネ88Aは、相対的に板幅が大きな第1の部分121と、相対的に板幅が小さな第2の部分122とを有している。自由状態の第1の部分121の中心角は180°である。
【0081】
筒軸65の中間部68の溝72の溝幅は、導電部材51Aの第2の湾曲バネ88Aの第1の部分121を嵌め入れることができるように、第1の部分121の板幅と等しい値か、この値よりも若干大きな値に形成されている。
第2の部分122が、第4の湾曲バネ98を介して第1の湾曲バネ83につながっている。第2の部分122の板幅は、第1の湾曲バネ83の板幅と等しくされている。
【0082】
本実施形態では、第1の接触部81を幅広にできるので、筒軸65に対して電気的に確実に接続することができる。しかも、第1の湾曲バネ83の板幅が相対的に狭いので、第1の湾曲バネ83が曲げ変形し易くなる。その結果、導電部材51Aを取付易い。
図11は、第3の実施形態のステアリング装置1の要部の拡大図である。図11を参照して、第3の実施形態のステアリング装置1は、図3に示す第1の実施形態の導電部材51および筒軸65に代えて、図11に示す導電部材51Bおよび筒軸65Bを有している。導電部材51Bと、第1の実施形態の導電部材51とは、以下の点で異なり、他の構成については同じとされている。筒軸65Bと筒軸65とは、以下の点でに異なり、他の点については同じである。
【0083】
導電部材51Bは、第2の湾曲バネ88に代えて第2の湾曲バネ88Bを有している。第2の湾曲バネ88Bの内周面90には、規制部としての突起131が内周面90から突出して形成されている。この突起131に対向して、筒軸65Bの外周面71に、規制部としての凹部132が形成されている。突起131が凹部132に嵌まっている。これにより、筒軸65Bの軸方向X1(図11の紙面垂直方向に相当する。)および周方向T1に関する筒軸65Bに対する導電部材51Bの移動が規制される。この場合、第1の実施形態の溝72は廃止されている。また、突起131は、かしめ加工により形成された塑性変形部からなっていてもよい。また、第3の実施形態の突起131と凹部132とを、第2の実施形態に適用してもよい。
【0084】
図12Aは、第4の実施形態のステアリング装置1の要部としての保持壁100を示す断面図である。図12Bは、図12Aの12B−12B断面の断面図である。本実施形態は、保持壁100の変形例を示し、他の構成については、第1の実施形態と同じとされている。本実施形態の保持壁100は、ステアリングコラムに設けられた凹部の側壁に形成されている。具体的には、保持壁100の第1〜第4の部分101,102,103,104は、ギヤハウジング30の底部に形成された凹部の側壁を形成している。この凹部の底に、受け部80が設けられている。本実施形態の保持壁100は、上述の各実施形態に適用することができる。
【0085】
図13は、第5の実施形態のステアリング装置1の要部としての筒軸65Dを示す平面図である。本実施形態のステアリング装置1は、図3に示す第1の実施形態の筒軸65に代えて、図13に示す筒軸65Dを有している。筒軸65Dと筒軸65とは、以下の点で異なり、他の点については同じである。
筒軸65Dの中間部68の外周面71は、溝72Dを有している。溝72Dは、筒軸65Dの周方向T1に無端状に延びている。溝72Dは、筒軸65Dの中心軸線を含む断面(軸方向断面)において、一対の傾斜面150と、一対の傾斜面150を互いに接続する溝底部151とを有している。
【0086】
一対の傾斜面150は、筒軸65Dの軸方向X1に対して互いに逆向きに、筒軸65Dの軸方向X1に対して傾斜している。一対の傾斜面150がなす角度は、軸方向断面において、鈍角である。各傾斜面150は、円錐面の一部を形成している。一対の傾斜面150の小径側端部が互いに近接している。
溝底部151は、筒軸65Dの軸方向X1の軸方向に関する溝72Dの中央部154に設けられている。溝底部151は、凹湾曲面からなり、一対の傾斜面150の小径側端部同士を互いに滑らかに接続している。溝底部151は、軸方向断面において、凹湾曲形状、例えば、円弧形状をなしている。
【0087】
各傾斜面150の大径側端部は、凸湾曲状の縁部152を介して、筒軸65Dの中間部68の外周面71の円筒面153に、滑らかに接続されている。縁部152は、軸方向断面において、凸湾曲形状、例えば、円弧形状をなしている。
筒軸65Dの軸方向X1に関して、溝72Dの溝幅(軸方向X1に関する一対の傾斜面150の大径側端部間の寸法)は、導電部材51の第2の湾曲バネ88の幅寸法よりも大きくされている。これにより、溝72Dの一対の傾斜面150が、導電部材51の第2の湾曲バネ88に接することができる。その結果、軸方向X1への導電部材51の移動を規制することができる。
【0088】
また、一対の傾斜面150により、筒軸65Dの中間部68の溝72Dおよびその近傍における断面形状の変化が滑らかになる。従って、溝72Dの加工方法として、塑性加工、例えば、鍛造加工を利用することが可能となる。塑性加工を利用することにより、製造コストを安価にできる。また、筒軸65Dの全体を塑性加工、例えば、鍛造加工により形成する場合には、溝72Dを後加工、例えば、切削加工せずに済む。従って、製造コストをより一層安価にできる。
【0089】
なお、筒軸65Dの溝72Dが、筒軸65Dの周方向T1に有端で形成されていてもよい。この場合、溝72Dと、導電部材51の第1の接触部81とが互いに接触するように、周方向T1に関して溝72Dが配置されている。有端状の溝72Dも、無端状の溝72Dと同様に、塑性加工を利用でき、製造コストを安価にできる。また、有端か無端かにかかわらず上述の溝72Dを、上述の第2〜第4の各実施形態に適用することができる。
【0090】
このように本実施形態では、溝72Dの深さL3が、筒軸65Dの軸方向X1に関する溝72Dの中央部154に向かって次第に深くなるようにされている。この場合、溝72Dを、塑性加工により容易に形成することができる。その結果、製造コストをより一層低減できる。例えば、上記溝72Dの軸方向断面において、上記中央部154に設けられた溝底部151が凹湾曲状をなしており、また、溝72Dの一対の縁部152が凸湾曲状をなしている。この場合には、溝72Dを鍛造で形成するのに好ましい。
【0091】
また、上述の各実施形態において、保持壁100の第2〜第4の部分102,103,104が、第3の湾曲バネ95に常時当接するようにしてもよい。この場合、第3の湾曲バネ95と受け部80との相対移動を確実に規制できるので、第2の接触部82と受け部80との間の接触不良の発生をより確実に防止できる。
また、上述の各実施形態において、規制部としての保持壁100は、少なくとも第1の部分101を有していればよい。また、規制部としては、ステアリングコラム3に固定された突起(図示せず)でもよい。この突起に導電部材51が当接して、導電部材51と受け部80との相対移動を規制できる。逆に、保持壁100が廃止されることも考えられる。
【0092】
また、上述の筒軸65の溝72,72Dを廃止することも考えられる。
また、第2の側板54,55、受け部80および保持壁100の少なくともひとつの少なくとも一部が、ステアリングコラム26とは別体で形成され、ステアリングコラム26に固定される場合も考えられる。例えば、規制部としては、ギヤハウジング30に取り付けられた突起であってもよい。また、受け部80としては、ギヤハウジング30に導通可能に取り付けられた導体であってもよい。また、一対の第2の側板54,55は、ステアリングコラム26に固定状態で取り付けられていてもよい。
【0093】
また、付勢ばねとして、自由状態において平坦な板ばねを湾曲させた状態で用いることも考えられる。
また、上記導電部材51,51A,51Bは、チルト調節可能な上述のステアリング装置1の他、チルト調節不能なステアリング装置(図示せず)に適用することもできる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図2】図1のステアリング装置の要部の断面図である。
【図3】図2の平面図であり、部分的に断面表示されている。
【図4】図2の斜視図である。
【図5】図2の要部の拡大図である。
【図6】図6Aは、図2に示す導電部材の平面図であり、自由状態を示し、図6Bは、図6Aの導電部材の側面図である。
【図7】図6Aの導電部材の斜視図である。
【図8】図6Aの導電部材をステアリング装置に組み込む際の途中の状態の断面図である。
【図9】第2の実施形態のステアリング装置の要部の平面図であり、部分的に断面表示されている。
【図10】図10Aは、図9に示す導電部材の自由状態での平面図であり、図10Bは、図10Aの導電部材の側面図である。
【図11】第3の実施形態のステアリング装置の要部の拡大図である。
【図12】図12Aは、第4の実施形態のステアリング装置の要部としての規制部を示す断面図であり、図12Bは、図12Aの12B−12B断面の断面図である。
【図13】第5の実施形態のステアリング装置の要部としての筒軸を示す平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、26…ステアリングコラム、37…固定ブラケット、39…車体、44,45…第1の側板、48…第1の挿通孔、50…ブッシュ(絶縁部材)、51,51A,51B…導電部材、54,55…第2の側板、58…第2の挿通孔、59…(第2の挿通孔の)内周面、65,65B,65D…筒軸、66…ボルト(締め付け軸)、67…(筒軸の軸方向の)端部、69…(筒軸の軸方向の端部の)外周面、68…(筒軸の軸方向の)中間部、70…筒軸の端面、71…(筒軸の軸方向の中間部の)外周面、72,72D…溝、80…受け部、81…第1の接触部、82…第2の接触部、83…第1の湾曲バネ(付勢バネ)、84…(第1の湾曲バネの)第1の端部、85…(第1の湾曲バネの)第2の端部、86…第1の湾曲バネの曲率中心、88,88A,88B…第2の湾曲バネ(把持部)、89…第2の湾曲バネの曲率中心、90…(第2の湾曲バネの)内周面、95…第3の湾曲バネ、97…(第3の湾曲バネの)外周面、100…保持壁(規制部)、154…溝の中央部、L3…溝の深さ、R1…(筒軸の)径方向、T1…(筒軸の)周方向、X1…筒軸の軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定された固定ブラケットと、
上記固定ブラケットに設けられた一対の第1の側板と、
上記一対の第1の側板にそれぞれ形成された第1の挿通孔と、
操舵部材に連結されたステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、
上記ステアリングコラムに設けられた受け部および一対の第2の側板と、
上記一対の第2の側板にそれぞれ形成された第2の挿通孔と、
上記一対の第2の側板の第2の挿通孔に挿通された導電性の筒軸と、
上記第2の挿通孔の内周面と筒軸の軸方向の端部の外周面との間に介在する絶縁部材と、
上記受け部と筒軸の軸方向の中間部の外周面との間に介在する板状の導電部材とを備え、
上記筒軸は、上記絶縁部材を介して上記一対の第2の側板を支持し、
上記一対の第1の側板の第1の挿通孔および筒軸に挿通された締め付け軸が、一対の第1の側板をそれぞれ筒軸の対応する端面に締め付けており、
上記導電部材は、筒軸を弾性的に把持する把持部と、上記把持部と上記受け部との間に介在する付勢バネとを含み、
上記把持部は、筒軸の径方向に沿って筒軸に嵌合可能なU字形形状をなし、
付勢バネによって、上記把持部に設けられた第1の接触部が筒軸の外周面に弾性的に押圧されているとともに、付勢バネに設けられた第2の接触部が上記受け部に弾性的に押圧されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、上記付勢バネは、第1および第2の端部を有する第1の湾曲バネを含み、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第1の端部に、筒軸の外周面を弾性的に締め付け可能な上記把持部としての第2の湾曲バネが接続され、上記第2の湾曲バネの内周面に、上記第1の接触部が形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、上記第1の湾曲バネおよび上記第2の湾曲バネは、同側に曲率中心を有していることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項2または3において、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第2の端部に、第3の湾曲バネが設けられ、上記第1の湾曲バネおよび上記第3の湾曲バネは、互いに逆向きに湾曲しており、上記第3の湾曲バネの外周面に、上記第2の接触部が形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項2から4の何れか1項において、上記筒軸の外周面に筒軸の周方向の少なくとも一部に沿って延びる溝が形成され、上記第2の湾曲バネは、筒軸の外周面の上記溝に嵌められており、上記溝によって、筒軸の軸方向への、第1の接触部の移動が規制されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項5において、上記溝の深さが、筒軸の軸方向に関する上記溝の中央部に向かって次第に深くなるようにされていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項において、上記ステアリングコラムに、当該ステアリングコラムに対する第2の接触部の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項8】
請求項7において、上記第2の接触部は、上記受け部および上記規制部によって受けられていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
車体に固定された固定ブラケットと、
上記固定ブラケットに設けられた一対の第1の側板と、
上記一対の第1の側板にそれぞれ形成された第1の挿通孔と、
操舵部材に連結されたステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、
上記ステアリングコラムに設けられた受け部および一対の第2の側板と、
上記一対の第2の側板にそれぞれ形成された第2の挿通孔と、
上記一対の第2の側板の第2の挿通孔に挿通された導電性の筒軸と、
上記第2の挿通孔の内周面と筒軸の軸方向の端部の外周面との間に介在する絶縁部材と、
上記受け部と筒軸の軸方向の中間部の外周面との間に介在する板状の導電部材とを備え、
上記筒軸は、上記絶縁部材を介して上記一対の第2の側板を支持し、
上記一対の第1の側板の第1の挿通孔および筒軸に挿通された締め付け軸が、一対の第1の側板をそれぞれ筒軸の対応する端面に締め付けており、
上記導電部材は、筒軸を弾性的に把持する把持部と、上記把持部と上記受け部との間に介在する付勢バネとを含み、
上記把持部は、筒軸の径方向に沿って筒軸に嵌合可能なU字形形状をなし、
付勢バネによって、上記把持部に設けられた第1の接触部が筒軸の外周面に弾性的に押圧されているとともに、付勢バネに設けられた第2の接触部が上記受け部に弾性的に押圧されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、上記付勢バネは、第1および第2の端部を有する第1の湾曲バネを含み、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第1の端部に、筒軸の外周面を弾性的に締め付け可能な上記把持部としての第2の湾曲バネが接続され、上記第2の湾曲バネの内周面に、上記第1の接触部が形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、上記第1の湾曲バネおよび上記第2の湾曲バネは、同側に曲率中心を有していることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項2または3において、上記付勢バネとしての上記第1の湾曲バネの上記第2の端部に、第3の湾曲バネが設けられ、上記第1の湾曲バネおよび上記第3の湾曲バネは、互いに逆向きに湾曲しており、上記第3の湾曲バネの外周面に、上記第2の接触部が形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項2から4の何れか1項において、上記筒軸の外周面に筒軸の周方向の少なくとも一部に沿って延びる溝が形成され、上記第2の湾曲バネは、筒軸の外周面の上記溝に嵌められており、上記溝によって、筒軸の軸方向への、第1の接触部の移動が規制されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項5において、上記溝の深さが、筒軸の軸方向に関する上記溝の中央部に向かって次第に深くなるようにされていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項において、上記ステアリングコラムに、当該ステアリングコラムに対する第2の接触部の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項8】
請求項7において、上記第2の接触部は、上記受け部および上記規制部によって受けられていることを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−36734(P2010−36734A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202198(P2008−202198)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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