説明

ステアロイル−CoAデサチュラーゼの阻害剤として使用するための2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オン誘導体



本発明は、式Iの構造を有する、ステアロイル−CoAデサチュラーゼの阻害剤として使用するための2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オン誘導体を開示する。2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オン化合物は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)酵素により仲介される様々なヒト疾患、特に、異常な脂質レベルに関連する疾患、心臓血管疾患、糖尿病、肥満症、メタボリック症候群などを治療および/または予防する際に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月7日に出願された、米国仮特許出願第61/042,983号に対する優先権を主張する。この仮特許出願は、参照によりその全体が、本明細書中で援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オン誘導体などの、ステアロイル−CoAデサチュラーゼの阻害剤の分野、およびステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)酵素により媒介される様々なヒト疾患、特に、脂質レベルの上昇に関連する疾患、心臓血管疾患、癌、糖尿病、肥満症、メタボリック症候群などを治療および/または予防する際のそのような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCD)は、Δ9脂肪酸デサチュラーゼである。哺乳動物の酵素は、小胞体に局在しており、そのプロセスで、Δ9位において飽和脂肪酸を不飽和化して一価不飽和脂肪酸を生成するための分子OおよびNADHならびに水を必要とする。これらの酵素にとっての一次基質は、ステアリン酸(C18)およびパルミチン酸(C16)のアシル−CoA誘導体であり、主要な反応は、ステアリン酸のオレイン酸(C18:1)への変換である。種に応じて、主に組織分布が異なる2〜4種の高度に相同性のSCDのアイソフォームが存在する。
【0004】
最もよく特徴がわかっているSCDアイソザイムは、肝臓、脂肪および骨格筋で主に見いだされるSCD1である。マウスおよびラットにおけるSCD1の欠失、変異または阻害は、肝トリグリセリド分泌の減少、肝脂肪変性の減少、体重増加に対する抵抗性ならびにインスリン感受性およびグルコース取り込みの改善をもたらす(非特許文献1、非特許文献2;および非特許文献3にレビューされている)。SCD活性の代用物とメタボリック症候群、糖尿病および肥満症との間の相関を示すヒトにおける研究と組み合わせられたこれらの研究は、肥満症、糖尿病、高トリグリセリド血症ならびに関係する疾患および共存症を治療するための手段としてのSCD阻害を強く暗示している。アンチセンスオリゴヌクレオチド阻害剤を使用して行われた研究は、SCD活性と肥満症および食餌誘発性肝インスリン抵抗性の発現との間の相関も証明した。非特許文献4;および非特許文献5を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NtambiらProg Lipid Res 43巻、91〜104頁(2004年)
【非特許文献2】Prostaglandins Leukot. Essent. Fatty Acids 73巻、35〜41頁(2005年)
【非特許文献3】Obes. Rev. 6巻、169〜174頁(2005年)
【非特許文献4】JiangらJ. Clin. Invest. 115巻:1030〜1038頁(2005年)
【非特許文献5】Gutierrez-JuarezらJ. Clin. Invest. 116巻:1686〜1695頁(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、SCD活性を阻害し、したがって、脂質レベルおよび脂質脂肪酸組成を調節する際に有用である化合物を提供する。これらの化合物は、脂質レベルの上昇に関連する疾患、心臓血管疾患、癌、糖尿病、肥満症、メタボリック症候群などを包含するがこれらに限定されない、脂質異常症に関連する疾患および脂質代謝の障害などのSCD媒介性疾患の治療に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ阻害剤として作用する化合物を提供することである。したがって、第一の態様において、本発明は、式Iの構造を有するステアロイル−CoAデサチュラーゼ阻害剤化合物に関し、
【0008】
【化1】

式中、
は、水素、置換されていてもよいC1〜20アルキル、置換されていてもよいC1〜6低級アルキル、置換されていてもよいC3〜20シクロアルキル、置換されていてもよいC2〜20アルケニル、置換されていてもよいC2〜20アルキニル、置換されていてもよいC1〜20アルコキシ、置換されていてもよいC1〜6アルコキシ、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール、または置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロアリールであり、
は、C1〜20アルキル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール、または置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロアリールであり、
およびRは、独立して、水素、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロアリールであり、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール部分は、ハロ、NO、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、S(O)20、P(O)(OR20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、OCON(R20からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、R20およびR22は、水素、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、
は、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−NR’−C(O)−、−C(O)−NR’−、−O−C(O)−NR’−、−NR’−、−O−、−S−、−NR’−S(O)−、または−S(O)−NR’−から選択され、R’は、水素またはC1〜6低級アルキルであり、
は、共有結合または−Lk−Y−であり、Lkは、置換されていてもよい直鎖または分岐のC1〜4アルキレンであり、Yは、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルであり、
は、共有結合または−Lk’−Y’−であり、Lk’は、置換されていてもよい直鎖または分岐のC1〜4アルキレンであり、Y’は、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルであり、
W1は、−O−または−S−であり、
−NH−は、式Iに示されている6または7位に結合している。
【0009】
本発明の一部の実施形態において、RおよびRは、アルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、NO、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、S(O)20、P(O)(OR20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、一部の場合において、各任意選択のアルキル、ヘテロアリール、アリール、およびヘテロシクリル置換基は、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノ−もしくはジ−アルキルアミノ、アルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールアミド、NR20COR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、NR20CON(R20、OC(O)R20、OC(O)N(R20、S(O)20、P(O)(OR20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、またはOR20でさらに置換されていてもよい。
【0010】
本発明のある実施形態において、RおよびRは、アルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、NO、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、COR20、CO20、CON(R20、NR20SO22、およびOC(O)R20からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、一部の場合において、各任意選択のアルキル、ヘテロアリール、アリール、およびヘテロシクリル置換基は、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノ−もしくはジ−アルキルアミノ、アルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールアミド、NR20COR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、またはOR20でさらに置換されていてもよい。
【0011】
典型的な実施形態において、R20およびR22は、水素、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール部分は、ハロ、アルキル、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールアミド、CN、C1〜6アルキル−O−、CF、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい。
【0012】
典型的な実施形態において、R基は、水素、置換されていてもよいC1〜6低級アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルなど)、置換されていてもよいC1〜6アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ、トリフルオロメトキシなど)、または置換されていてもよいフェニル(ハロゲン、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、CF、−OCF、および−OCHからなる群から選択される1〜3個の置換基でフェニル環の2、3、4、および/または5位において置換されていてもよいフェニルなど)である。
【0013】
典型的な実施形態において、R基は、ヒドロキシ、ハロゲン、NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−O−、CF、アミノ、モノ−またはジ−アルキルアミノからなる群から選択される1、2、または3個の置換基で置換されていてもよいC1〜20アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチル)である。他の典型的な実施形態において、R基は、ハロゲン、CF、−OCF、−OCH、C1〜6低級アルキル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルキルチオ、アリール、またはヘテロアリールからなる群から選択される1、2、または3個の置換基でフェニル環の2、3、4、または5位において置換されていてもよいフェニルなどの、置換されていてもよいアリールであり、そのような実施形態において、フェニル上のC1〜6低級アルキル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルキルチオ、アリール、またはヘテロアリール置換基は、それら自体が、ハロゲン、CF、−OCF、および−OCHからなる群から選択される1、2、または3個の置換基で置換されていてもよい。
【0014】
一部の実施形態において、R基は、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル(例えば、ピリジル、フリル、インドリジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、[1,2,4]オキサジアゾリル、[1,3,4]オキサジアゾリル、[1,2,4]チアジアゾリル、[1,3,4]チアジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノリニル、キノリニル、フタラジニル、ナフチルピリジニル、キノキサリル、キナゾリル、シンノリル、プテリジル、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナントロリニル、イソチアゾリル、フェナジニル、イソオキサゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル)、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール(例えば、フェニル、ナフチルなど)である。
【0015】
典型的な実施形態において、RおよびRは、水素、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC1〜6アルコキシル、フルオロ、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、エチルオキシカルボニル、カルボキシル、フェネチル、置換されていてもよいピリジル、置換されていてもよいフェニル(メトキシフェニル、メチルチオフェニル、メトキシエトキシフェニル、プロピルフェニル、アセトアミドフェニル、メチルスルホニルフェニル、ジクロロフェニル、またはクロロフェニルなどであるが、これらに限定されるものではない)から独立して選択される。一部の実施形態において、RおよびRは、水素、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよい5または6員の単環式ヘテロシクリル、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5または6員の単環式ヘテロアリールからなる群から独立して選択される。ある実施形態において、RおよびRは、水素、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ピリジル、および置換されていてもよいフェニルから独立して選択される。一部の実施形態において、RおよびRは、水素およびメチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ペルフルオロエチル、ピリジル、またはC1〜6アルキルからなる群から選択される1、2、または3個の置換基で置換されていてもよいフェニルからなる群から独立して選択される。
【0016】
ある実施形態において、L基は、共有結合または−Lk−Y−であり、Lkは、置換されていてもよい直鎖または分岐のC1〜4アルキレンであり、Yは、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルである。一部の実施形態において、L基は、ヒドロキシル、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、CF、および−OCFから選択される1または2個の置換基で置換されていてもよいC1〜4アルキレンであってよい。典型的なL基は、共有結合、置換されていてもよいC1〜4アルキレン−Y−、置換されていてもよいC2〜3アルキレン−Y−、メチレン−Y−、−CHCH−Y−、−CHCHCH−Y−;−CH(CH)CH−Y−、−CHCHCHCH−Y−、−C(CHCH−Y−または−CH(CH)CHCH−Y−であり、Yは、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルである。典型的には、Yは、共有結合または−O−から選択される。典型的な実施形態において、Lは、YがX基に直接連結しているように配向されており、他の実施形態において、X基に直接連結しているのはLkである。
【0017】
ある実施形態において、L基は、共有結合または−Lk’−Y’−であり、Lk’は、置換されていてもよい直鎖または分岐のC1〜4アルキレンであり、Y’は、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルである。一部の実施形態において、L基は、ヒドロキシル、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、CF、および−OCFから選択される1または2個の置換基で置換されていてもよいC1〜4アルキレンであってよい。典型的なL基は、共有結合、置換されていてもよいC1〜4アルキレン−Y’−、置換されていてもよいC2〜3アルキレン−Y’−、メチレン−Y’−、−CHCH−Y’−、−CHCHCH−Y’−;−CH(CH)CH−Y’−、−CHCHCHCH−Y’−、−C(CHCH−Y’−または−CH(CH)CHCH−Y’−であり、Y’は、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルである。典型的には、Y’は、共有結合または−O−から選択される。典型的なL基は、共有結合、C2〜3アルキレン、メチレン、−CHCH−、−CHCHCH−;−CH(CH)CH−である。典型的な実施形態において、Lは、Y’がR基に直接連結しているように配向されており、他の実施形態において、R基に直接連結しているのはLk’である。
【0018】
典型的なL基は、共有結合、C2〜3アルキレン、メチレン、−CHCH−、−CHCHCH−;−CH(CH)CH−、−CHCHCHCH−、−C(CHCH−または−CH(CH)CHCH−である。一部の実施形態において、L基は、ヒドロキシル、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、CF、および−OCFから選択される1または2個の置換基で置換されているC1〜4アルキレンであってよい。
【0019】
典型的なL基は、共有結合、C2〜3アルキレン、メチレン、−CHCH−、−CHCHCH−;−CH(CH)CH−、−CHCHCHCH−、−C(CHCH−または−CH(CH)CHCH−である。一部の実施形態において、L2基は、ヒドロキシル、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、CF、および−OCFから選択される1または2個の置換基で置換されているC1〜4アルキレンであってよい。
【0020】
典型的な実施形態において、Xは、−O−C(O)−、−NR’−C(O)−、−C(O)−NR’−、−O−C(O)−NR’−、−NR’−、−O−、−S−、−NR’−S(O)−、または−S(O)−NR’−から選択される部分であり、R’は、水素またはC1〜6低級アルキルである。ある実施形態において、X基は、−O−C(O)−、−NR’−C(O)−、−C(O)−NR’−、−NR’−、または−O−から選択され、R’は、水素またはC1〜6低級アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル)である。ある実施形態において、X基は、−NR’−C(O)−または−C(O)−NR’−から選択され、R’は、水素またはC1〜6低級アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル)である。典型的な実施形態において、X基は、X基の書かれている最初の部分(本明細書に書かれているように、普通の方法で左から右に書く)がLに直接接続しているように配向されている。したがって、−NR’−C(O)−は、Lに直接連結している窒素を有し、−C(O)−NR’−は、Lに直接連結している炭素を有する。
【0021】
典型的な実施形態において、W1は、−O−であり、他の実施形態において、W1は、−S−である。
【0022】
一部の実施形態において、R−L2−NH−部分は、ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3−オンの7位に結合しており、化合物は、式Iaの構造を有する。
【0023】
【化2】

他の実施形態において、R−L2−NH−部分は、ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3−オンの6位に結合しており、化合物は、式Ibの構造を有する。
【0024】
【化3】

本発明のさらに別の態様において、治療有効量の式IのSCD阻害性化合物、および少なくとも1種の薬学的に許容できる担体を含む医薬製剤が提供される。製剤は、典型的には、経口投与のためであるが、一部の実施形態において、他の経路を介する投与のために提供されることがある。
【0025】
本発明の第3の実施形態において、SCD阻害性化合物で治療することができる哺乳動物における疾患または状態の治療において式Iの化合物を使用する方法が提供される。方法は、それを必要としている哺乳動物に治療有効投与量の式Iの化合物を投与することを含む。そのような疾患は、心臓血管疾患(冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、心臓疾患、高血圧症、および末梢血管疾患を包含するが、これらに限定されるものではない)、癌、脳血管疾患(脳卒中、虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作(TIA)、ならびに虚血性網膜症を包含するが、これらに限定されるものではない)、脂質異常症、肥満症、糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース耐性の低下、インスリン非依存性糖尿病、II型糖尿病、I型糖尿病、および他の糖尿病性合併症を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0026】
現在のところ、本明細書において使用するための化合物は、
3−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)プロパンアミド;
N−(2−(6−(ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−4−(2−フェノキシエチル)−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オン;
N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
.N−(2−(6−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)ベンズアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド塩酸塩;
(±)−N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
(±)−N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
(±)−N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド;
(±)−N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド;
N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;および
N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド
を包含するが、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
(定義および一般的パラメーター)
本明細書で使用する以下の単語および語句は、一般的に、それらが使用されている文脈が別途指示している場合を除き、以下に記載されているような意味を有することが意図されている。
【0028】
「アルキル」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を有するモノラジカルの分岐または非分岐の飽和炭化水素鎖を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、テトラデシルなどの基により例示される。
【0029】
「置換アルキル」という用語は、
1)アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基、典型的には、1〜3個の置換基を有する上記で定義されているようなアルキル基(定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2、または3個の置換基によりさらに置換されていてもよい)、または
2)酸素、硫黄およびNR−(Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される)から独立して選択される1〜10個の原子が介在している上記で定義されているようなアルキル基(すべての置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によりさらに置換されていてもよい)、または
3)上記で定義されているような1、2、3、4または5個の置換基を有し、上記で定義されているような1〜10個の原子が介在してもいる上記で定義されているようなアルキル基を指す。
【0030】
「低級アルキル」という用語は、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するモノラジカルの分岐または非分岐の飽和炭化水素鎖を指す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシルなどの基により例示される。
【0031】
「置換低級アルキル」という用語は、置換アルキルについて定義されているように、1〜5個の置換基、典型的には、1、2、または3個の置換基を有する上記で定義されているような低級アルキル、または置換アルキルについて定義されているような1、2、3、4、または5個の原子が介在している上記で定義されているような低級アルキル基、または上記で定義されているような1、2、3、4または5個の置換基を有し、上記で定義されているような1、2、3、4、または5個の原子が介在してもいる上記で定義されているような低級アルキル基を指す。
【0032】
「アルキレン」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子、典型的には、1〜10個の炭素原子、より典型的には、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する分岐または非分岐の飽和炭化水素鎖のジラジカルを指す。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン異性体(例えば、−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)などの基により例示される。
【0033】
「低級アルキレン」という用語は、典型的には、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有する分岐または非分岐の飽和炭化水素鎖のジラジカルを指す。
【0034】
「低級アルキレン」という用語は、典型的には、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有する分岐または非分岐の飽和炭化水素鎖のジラジカルを指す。
【0035】
「置換アルキレン」という用語は、
1)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4、または5個の置換基を有する上記で定義されているようなアルキレン基(定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2、または3個の置換基によりさらに置換されていてもよい)、または
2)酸素、硫黄およびNR−(Rは、水素、置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される)から独立して選択される1〜20個の原子、またはカルボニル、カルボキシエステル、カルボキシアミドおよびスルホニルから選択される基が介在している上記で定義されているようなアルキレン基、または
3)上記で定義されているような1、2、3、4または5個の置換基を有し、上記で定義されているような1〜20個の原子が介在してもいる上記で定義されているようなアルキレン基を指す。置換アルキレンの例は、クロロメチレン(−CH(Cl)−)、アミノエチレン(−CH(NH)CH−)、メチルアミノエチレン(−CH(NHMe)CH−)、2−カルボキシプロピレン異性体(−CHCH(COH)CH−)、エトキシエチル(−CHCHO−CHCH−)、エチルメチルアミノエチル(−CHCHN(CH)CHCH−)、1−エトキシ−2−(2−エトキシ−エトキシ)エタン(−CHCHO−CHCH−OCHCH−OCHCH−)などである。
【0036】
「アラルキル」という用語は、アルキレン基に共有結合しているアリール基を指し、アリールおよびアルキレンは、本明細書で定義されている。「置換されていてもよいアラルキル」は、置換されていてもよいアルキレン基に共有結合している置換されていてもよいアリール基を指す。そのようなアラルキル基は、ベンジル、フェニルエチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピルなどにより例示される。
【0037】
「アルコキシ」という用語は、基R−O−を指し、Rは、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいシクロアルキルであり、または、Rは、基−Y−Zであり、Yは、置換されていてもよいアルキレンであり、Zは、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル;もしくは置換されていてもよいシクロアルケニルであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびシクロアルケニルは、本明細書で定義されている通りである。典型的なアルコキシ基は、置換されていてもよいアルキル−O−であり、一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ、トリフルオロメトキシなどを包含する。
【0038】
「アルキルチオ」という用語は、基R−S−を指し、Rは、アルコキシについて定義されている通りである。
【0039】
「アルケニル」という用語は、典型的には2〜20個の炭素原子、より典型的には、2〜10個の炭素原子、さらにより典型的には、2〜6個の炭素原子を有し、1〜6個、典型的には、1個の二重結合(ビニル)を有する、分岐または非分岐の不飽和炭化水素基のモノラジカルを指す。典型的なアルケニル基は、エテニルすなわちビニル(−CH=CH)、1−プロピレンすなわちアリル(−CHCH=CH)、イソプロピレン(−C(CH)=CH)、ビシクロ[2.2.1]ヘプテンなどを包含する。アルケニルが窒素に結合している場合、二重結合は、窒素に対しαにはありえない。
【0040】
「低級アルケニル」という用語は、2〜6個の炭素原子を有する上記で定義されているようなアルケニルを指す。
【0041】
「置換アルケニル」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリール、および−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基、典型的には、1、2、または3個の置換基を有する上記で定義されているようなアルケニル基を指す。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2、または3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0042】
「アルキニル」という用語は、典型的には、2〜20個の炭素原子、より典型的には、2〜10個の炭素原子、さらにより典型的には、2〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1個、典型的には、1〜6個のアセチレン(三重結合)不飽和サイトを有する、不飽和炭化水素のモノラジカルを指す。典型的なアルキニル基は、エチニル、(−C≡CH)、プロパルギル(すなわちプロパ−1−イン−3−イル、−CHC≡CH)などを包含する。アルキニルが窒素に結合している場合、三重結合は、窒素に対しαにはありえない。
【0043】
「置換アルキニル」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリール、および−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基、典型的には、1、2、または3個の置換基を有する上記で定義されているようなアルキニル基を指す。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2、または3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0044】
「アミノカルボニル」という用語は、基−C(O)NRRを指し、各Rは、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルであり、または両方のR基は、一緒になって、ヘテロ環式基(例えば、モルホリノ)を形成する。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1〜3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0045】
「アシルアミノ」という用語は、基−NRC(O)Rを指し、各Rは、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルである。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1〜3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0046】
「アシルオキシ」という用語、基−O(O)C−アルキル、−O(O)C−シクロアルキル、−O(O)C−アリール、−O(O)C−ヘテロアリール、および−O(O)C−ヘテロシクリルを指す。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によりさらに置換されていてもよい。
【0047】
「アリール」という用語は、単一の環(例えば、フェニル)もしくは複数の環(例えば、ビフェニル)、または複数の縮合(condensed)(縮合(fused))環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する6〜20個の炭素原子の芳香族炭素環式基を指す。典型的なアリールは、フェニル、ナフチルなどを包含する。
【0048】
「アリーレン」という用語は、上記で定義されているようなアリール基のジラジカルを指す。この用語は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン、1,4’−ビフェニレンなどの基により例示される。
【0049】
アリールまたはアリーレン置換基についての定義による別段の制約がない限り、そのようなアリールまたはアリーレン基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1〜5個の置換基、典型的には、1〜3個の置換基で置換されていてもよい。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1〜3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0050】
「アリールオキシ」という用語は、基アリール−O−を指し、アリール基は、上記で定義されている通りであり、上記で定義されているような置換されていてもよいアリール基を包含する。「アリールチオ」という用語は、基R−S−を指し、Rは、アリールについて定義されている通りである。
【0051】
「アミノ」という用語は、基−NHを指す。
【0052】
「置換アミノ」という用語は、基−NRRを指し、各Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、カルボキシアルキル(例えば、ベンジルオキシカルボニル)、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるが、ただし、両方のR基が水素であることはなく、または基−Y−Z(Yは、置換されていてもよいアルキレンであり、Zは、アルケニル、シクロアルケニル、またはアルキニルである)でない。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1〜3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0053】
「カルボキシアルキル」という用語は、基−C(O)O−アルキルまたは−C(O)O−シクロアルキルを指し、アルキルおよびシクロアルキルは、本明細書で定義されている通りであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)によりさらに置換されていてもよい。
【0054】
「シクロアルキル」という用語は、単一の環式環または複数の縮合環を有する3〜20個の炭素原子の炭素環式基を指す。そのようなシクロアルキル基は、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単一環構造、またはアダマンタニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル、(2,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)、もしくはアリール基と縮合している炭素環式基、例えば、インダンなどの複数環構造を包含する。
【0055】
「置換シクロアルキル」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個の置換基、典型的には、1、2、または3個の置換基を有するシクロアルキル基を指す。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1、2、または3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0056】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ、ブロモ、クロロ、およびヨードを指す。
【0057】
「アシル」という用語は、基−C(O)Rを示し、Rは、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0058】
「ヘテロアリール」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の炭素原子および少なくとも1個の環の中に酸素、窒素および硫黄から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を有する芳香族環式基(すなわち、完全不飽和の)から誘導されるラジカルを指す。そのようなヘテロアリール基は、単一の環(例えば、ピリジルまたはフリル)または複数の縮合環(例えば、インドリジニル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾチエニル)を有することができる。ヘテロアリールの例は、[1,2,4]オキサジアゾール、[1,3,4]オキサジアゾール、[1,2,4]チアジアゾール、[1,3,4]チアジアゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリンなど、ならびに窒素含有ヘテロアリール化合物のN−オキシドおよびN−アルコキシ誘導体、例えば、ピリジン−N−オキシド誘導体を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0059】
「ヘテロアリーレン」という用語は、上記で定義されているようなヘテロアリール基のジラジカルを指す。この用語は、2,5−イミダゾレン、3,5−[1,2,4]オキサジアゾレン、2,4−オキサゾレン、1,4−ピラゾレンなどの基により例示される。例えば、1,4−ピラゾレンは、
【0060】
【化4】

であり、
Aは、結合点に相当する。
【0061】
ヘテロアリールまたはヘテロアリーレン置換基についての定義による別段の制約がない限り、そのようなヘテロアリールまたはヘテロアリーレン基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1〜5個の置換基、典型的には、1〜3個の置換基で置換されていてもよい。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1〜3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0062】
「ヘテロアラルキル」という用語は、アルキレン基に共有結合しているヘテロアリール基を指し、ヘテロアリールおよびアルキレンは、本明細書で定義されている。「置換されていてもよいヘテロアラルキル」は、置換されていてもよいアルキレン基に共有結合している置換されていてもよいヘテロアリール基を指す。そのようなヘテロアラルキル基は、3−ピリジルメチル、キノリン−8−イルエチル、4−メトキシチアゾール−2−イルプロピルなどにより例示される。
【0063】
「ヘテロアリールオキシ」という用語は、基ヘテロアリール−O−を指す。
【0064】
「ヘテロシクリル」という用語は、1〜40個の炭素原子および環の中に窒素、硫黄、リン、および/または酸素から選択される1〜10個のヘテロ原子、典型的には、1、2、3または4個のヘテロ原子を有する、単一の環または複数の縮合環を有するモノラジカルの飽和または部分不飽和の基を指す。ヘテロ環式基は、単一の環または複数の縮合環を有することができ、テトラヒドロフラニル、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジノ、ジヒドロピリジノなどを包含する。
【0065】
ヘテロ環式置換基についての定義による別段の制約がない限り、そのようなヘテロ環式基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4または5個、典型的には、1、2または3個の置換基で置換されていてもよい。定義による別段の制約がない限り、すべての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)R(Rは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、nは、0、1または2である)から選択される1〜3個の置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0066】
「チオール」という用語は、基−SHを指す。
【0067】
「置換アルキルチオ」という用語は、基−S−置換アルキルを指す。
【0068】
「ヘテロアリールチオ(heteroarylthiol)」という用語は、基−S−ヘテロアリールを指し、ヘテロアリール基は、上記で定義されている通りであり、上記で定義されているような置換されていてもよいヘテロアリール基を包含する。
【0069】
「スルホキシド」という用語は、基−S(O)Rを指し、Rは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールである。「置換スルホキシド」は、基−S(O)Rを指し、Rは、本明細書で定義されているように、置換アルキル、置換アリール、または置換ヘテロアリールである。
【0070】
「スルホン」という用語は、基−S(O)Rを指し、Rは、アルキル、アリールまたはヘテロアリールである。「置換スルホン」は、基−S(O)Rを指し、Rは、本明細書で定義されているように、置換アルキル、置換アリール、または置換ヘテロアリールである。
【0071】
「ケト」という用語は、基−C(O)−を指す。
【0072】
「チオカルボニル」という用語、基−C(S)−を指す。
【0073】
「カルボキシ」という用語、基−C(O)−OHを指す。
【0074】
「任意選択の(Optional)」または「場合により(optionally)」は、続いて記載される事象または状況が生じるかどうか分からないこと、ならびにその記載が、前記事象または状況が生じる場合および前記事象または状況が生じない場合を包含することを意味する。
【0075】
「式Iの化合物」という用語は、開示されているような本発明の化合物、ならびにそのような化合物の薬学的に許容できる塩、薬学的に許容できるエステル、プロドラッグ、水和物および多形体を包含することが意図されている。さらに、本発明の化合物は、1個または複数の不斉中心を有することがあり、ラセミ混合物としてまたは個々の鏡像異性体もしくはジアステレオ異性体として製造されることがある。式Iのある化合物において存在する立体異性体の数は、存在する不斉中心の数に左右される(nが不斉中心の数である場合、2個の立体異性体が可能である)。個々の立体異性体は、合成のある適切な段階において中間体のラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物を分割することにより、または従来の手段による式Iの化合物の分割により得ることができる。個々の立体異性体(個々の鏡像異性体およびジアステレオ異性体を包含する)ならびに立体異性体のラセミ混合物および非ラセミ混合物は、本発明の範囲内に包含され、それらすべては、他に具体的な指示がない限り、本明細書の構造により描かれることが意図されている。
【0076】
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。
【0077】
「立体異性体」は、原子が空間中に配置されている方法のみが異なる異性体である。
【0078】
「鏡像異性体」は、互いの重ね合わせることができない鏡像である一対の立体異性体である。一対の鏡像異性体の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。「(±)」という用語は、適切な場合に、ラセミ混合物を示すのに使用される。
【0079】
「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いの鏡像ではない立体異性体である。
【0080】
絶対立体化学は、Cahn−Ingold−Prelog R−S体系に従って指定される。化合物が、純粋な鏡像異性体である場合、各キラル炭素における立体化学は、RかSのどちらかにより指定することができる。絶対配置が不明である分割された化合物は、それらがナトリウムD線の波長において偏光面を回転させる方向(右旋性または左旋性)に応じて(+)または(−)に指定される。
【0081】
「非経口投与」は、患者への注射を介する治療剤の全身送達である。
【0082】
「治療有効量」という用語は、そのような治療を必要としている哺乳動物に投与される場合に、以下で定義されているように、治療を達成するのに十分である式Iの化合物の量を指す。治療有効量は、使用されている治療剤の比活性、ならびに患者の年齢、身体条件、他の疾患状態の存在、および栄養状態に応じて変わるであろう。さらに、患者が服用している可能性がある他の薬物は、投与する治療剤の治療有効量の決定に影響するであろう。
【0083】
「治療」または「治療すること」という用語は、哺乳動物における疾患のあらゆる治療を意味し、
(i)疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状を発現させないこと、
(ii)疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の発現を止めること、および/または
(iii)疾患を緩和すること、すなわち、臨床症状の退行を引き起こすことを包含する。
【0084】
多くの場合に、本発明の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシル基またはそれらに類似した基の存在により酸および/または塩基塩を形成することができる。「薬学的に許容できる塩」という用語は、式Iの化合物の生物学的な有効性および特性を保持し、生物学的にまたは他の点でも不都合ではない塩を指す。薬学的に許容できる塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製することができる。無機塩基から誘導される塩は、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウム塩を包含する。有機塩基から誘導される塩は、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、二置換シクロアルキルアミン、三置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、二置換シクロアルケニルアミン、三置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、ヘテロ環式アミン、ジヘテロ環式アミン、トリヘテロ環式アミン、混合型ジ−およびトリ−アミン(アミン上の置換基のうちの少なくとも2個は、異なり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環式などからなる群から選択される)などの一級、二級および三級アミンの塩を包含するが、これらに限定されるものではない。2または3個の置換基が、アミノ窒素と一緒に、ヘテロ環式またはヘテロアリール基を形成するアミンも包含される。
【0085】
適当なアミンの具体例は、ほんの一例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(iso−プロピル)アミン、トリ(n−プロピル)アミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N−エチルピペリジンなどを包含する。
【0086】
薬学的に許容できる酸付加塩は、無機および有機酸から調製することができる。無機酸から誘導される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを包含する。有機酸から誘導される塩は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸などを包含する。
【0087】
本明細書で使用する「薬学的に許容できる担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に活性な物質についてのそのような媒体および試剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または試剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図されている。補足的な活性成分も、組成物中に組み入れることができる。
【0088】
(命名法)
本発明の化合物の名称は、ChemDraw Ultra v.10.0(CambridgeSoft、Cambridge、MA)を使用して提供される。一部の化合物または基は、慣用名、または体系的もしくは非体系的名称で命名されることがある。本発明の化合物の命名を、Rが、メチルであり、Rが、4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、L1が、−CHCH−であり、L2が、メチレンであり、X1が、−NH−C(O)−であり、W1が、−O−である:
【0089】
【化5】

(±)−N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミドと命名される式Iの代表的化合物について例示する。
【0090】
(医薬組成物)
SCD阻害剤として選択される場合、式Iの化合物は、通常、医薬組成物の形態で投与される。したがって、本発明は、活性成分として、式Iの化合物、または薬学的に許容できるそれらの塩もしくはエステルのうちの1種もしくは複数、ならびに1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤、不活性な固体の希釈剤および充填剤を包含する担体、無菌水溶液および様々な有機溶媒を包含する希釈剤、可溶化剤および補助剤を含有する医薬組成物を提供する。式Iの化合物は、単独でまたは他の治療剤との組合せで投与することができる。そのような組成物は、製薬技術において周知の方法で調製される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mace Publishing Co.、Philadelphia、PA 第17版(1985年)および「Modern Pharmaceutics」、Marcel Dekker, Inc. 第3版(G. S. BankerおよびC. T. Rhodes、編)を参照)。
【0091】
(合成反応パラメーター)
「溶媒」、「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」という用語は、それと併せて記載されている反応の条件下で不活性な溶媒を意味する(例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(すなわち、ジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、ピリジンなどを包含する)。逆の指示がない限り、本発明の反応において使用される溶媒は、不活性有機溶媒であり、反応は、不活性ガス、典型的には、窒素の下で行われる。
【0092】
「q.s.」という用語は、記述されている機能を達成する、例えば、溶液を望ましい体積(すなわち、100%)にするのに十分な量を加えることを意味する。
【0093】
(式Iの化合物の合成)
式Iの化合物は、典型的には、前駆体コア化合物をまず合成し、次いで、LおよびL部分を順次追加することにより調製される。式Iの化合物を調製する一般的な方法を、反応スキームIに示す。
【0094】
【化6】

(式G7の前駆体コア化合物の調製)
式Iの化合物は、環化および化合物G7の形成につながる適当なアニリンG5のジハロゲン化合物G6との反応により、化合物G7などの前駆体コア化合物をまず合成することにより調製される。この反応は、トリエチルアミン(好ましい)、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、または炭酸カリウムなどの塩基の存在下で適当な溶媒(例えば、アセトン)中で行われる。下の反応スキームIaを参照されたい。
【0095】
【化7】

(L基の追加)
基は、化合物G10などのハロゲン化L誘導体の化合物G7との反応により前駆体コアに追加することができる。反応は、典型的には、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下でDMFまたはDMSOなどの有機溶媒中で行われ、中間化合物G11が得られる。反応を、下の反応スキームIIaで下に図示する。
【0096】
【化8】

(L基の代替追加)
基は、化合物G4などのハロゲン化L−イソインドリン−1,3−ジオン誘導体を化合物G7とまず反応させてカップリング生成物G8を生成させ、次いで、イソインドリンジオン部分を除去してアミノ中間体G9とすることにより、2工程プロセスで前駆体コアに追加することもできる。
【0097】
上に記載されているG10/G7カップリングであったように、化合物G4の化合物G7との反応は、典型的には、水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下でDMFまたはDMSOなどの有機溶媒中で行われる。カップリング生成物G8は、適当な溶媒(例えば、エタノール)中でメチルアミンまたはヒドラジン(好ましい)と一緒に加熱することにより遊離アミンG9に変換される。望ましい場合、得られる遊離塩基は、任意の適当な塩酸源(例えば、ジオキサン中4N HCl)を使用してHCl塩に変換することができる。反応を、下の反応スキームIIbで下に図示する。
【0098】
【化9】

(式G4の化合物の調製)
Hal=Brである前駆体化合物G4は、市販されている。Hal=Iである化合物は、無水フタル酸G1を式G2のアミノアルコールと反応させ、式G3のアルコールを生成させることにより調製することができる。この反応は、加熱を必要とすることがあり、任意の適当な有機溶媒中で、または1つの典型的な方法において、ニート(溶媒なし)で行うことができる。次いで、式G3の化合物は、ヨード−誘導体(G4、Hal=I)に変換される。この反応は、HI、リンの存在下でのI、PhP/N−ヨードスクシンイミドを包含するがこれらに限定されない多くの方法により行うことができる。1つの方法は、下の反応スキームIIcに示すようなジクロロメタン中でPhP、I、およびイミダゾールを使用することを包含する。
【0099】
【化10】

(L基の追加)
L2R2部分を化合物コアとカップリングさせるための典型的な方法は、下の反応スキームIIIに図示されており、この反応が図示されている。
【0100】
【化11】

(ステップ1−R部分の任意選択保護)
部分が、化合物コアにまず結合され、式2の化合物が形成されている場合、さらなる反応からR部分をまず保護することが必要であることがある。反応スキームIIIに示すように、式2化合物G9のL部分上のペンダントであるアミノ基は、適当な溶媒中でのアシル化剤(例えば、AcOまたはAcCl)およびトリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、または炭酸カリウムなどの塩基を包含するがこれらに限定されない標準的条件下でアシル化を受け、式G12の化合物を生成させることができる。
【0101】
保護基は、式Iの最終化合物において望ましい場合には除去する必要がないことが留意される。
【0102】
(ステップ2−ニトロ基の変換)
部分が保護されたら、G7コア化合物または保護された式2の中間体化合物のニトロ部分は、アミノ基に変換される。ニトロ基をアミノ基に変換するための典型的な方法は、パラジウムなどの金属触媒上での水素化、例えば、スズ、もしくは鉄などの金属との反応、または炭酸ナトリウムの存在下で亜ジチオン酸ナトリウム(sodium ditianate)を使用することを包含するが、これらに限定されるものではない。反応スキームIIIに示すように、式G12の化合物の式G13の化合物への変換を行うための1つの方法は、酢酸中の亜鉛である。
【0103】
(ステップ3−R部分のカップリング)
次いで、R部分のカップリングは、G14のようなシッフ塩基の中間体形成と、続く、還元剤による還元の段階的プロセスで行うことができる。シッフ塩基の生成は、Dean−Starkトラップと併せて加熱することまたは無水硫酸マグネシウムもしくは一部の他の吸湿性試薬の存在のような脱水条件を必要とする。シッフ塩基を生成させる1つの方法は、試薬としてのケイ酸テトラエチルの使用を包含する。
【0104】
あるいは、アルデヒドのアニリンとの還元アミノ化を「ワンポット」手順として行うことができる。そのような「ワンポット」方法では、反応剤を、THFまたはメタノール(好ましい)などの有機溶媒に溶かし、1時間〜24時間にわたって撹拌する。
【0105】
「ワンポット」か段階的プロセスのどちらかにおいて、NaBH(好ましい)、LiAlH、NaBHCNなどの還元剤の続く使用は、二級アミンG15などの望ましい生成物を生成させるのに必要である。
【0106】
(さらなる調製−R、R、R、Rの二次修飾)
式Iの化合物を製造した後で、R、R、R、またはR部分のうちの1つまたは複数に対して二次修飾を行うことができることは理解されるであろう。例えば、式Iの化合物の合成は、R部分、R部分、R部分、またはR部分のある置換基上での保護基の使用を含むことがある。保護基が除去されると、R部分、R部分、R部分、またはR部分のその置換基をさらに修飾し、式Iのさらなる化合物を得ることができる。
【0107】
(有用性試験および投与)
本発明は、SCDにより媒介される疾患を治療および/または予防するための、化合物、医薬組成物ならびに化合物および医薬組成物を使用する方法に関する。方法および医薬組成物は、脂質異常症に関連する疾患および脂質代謝の障害、特に、心臓血管疾患、糖尿病、肥満症、メタボリック症候群、脂肪肝疾患などの血漿および組織の脂質レベルの上昇に関連する疾患の治療における使用に特に適している。
【0108】
一般に、本発明の化合物は、動物、特に、ヒトにおける脂質レベルが正常範囲を外れており(すなわち、血漿または組織の脂質レベルの上昇などの異常な脂質レベル)、典型的には、前記脂質が、遊離もしくは複合脂肪酸などの脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、ワックスエステル、またはVLDL、肝もしくは末梢組織トリグリセリドが上昇している場合などのコレステロール、またはそれらの任意の組合せであり、前記脂質関連の状態または疾患が、メタボリック症候群、糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患、肥満症、癌、油性肌および関連疾患などのSCD媒介性の疾患または状態である、脂質異常症に関連する疾患および/または脂質代謝の障害のための患者の治療、またはそれらが発現することから患者を守ることであって、哺乳動物などの動物、特に、ヒト患者に、治療有効量の本発明の化合物または本発明の化合物を含む医薬組成物(化合物は、SCD活性を阻害する)を投与することを含むものにおける有用性を見いだす。
【0109】
SCDの活性を阻害する際の本発明の化合物の一般的価値は、実施例6において以下で記載されるアッセイを使用して決定することができる。さらに、障害および疾患を治療する際の化合物の一般的価値は、肥満症、糖尿病、メタボリック症候群または異常なトリグリセリドもしくはコレステロールレベルを治療する際の化合物の有効性を証明するため、またはグルコース耐性を改善するための業界標準動物モデルにおいて立証されることがある。
【0110】
(有用性)
本発明の化合物は、SCDの阻害剤であり、異常なSCD生物学的活性の結果である、すなわち、SCD生物学的活性の阻害により軽減されることがあるすべてのヒト疾患および障害を包含するヒトおよび他の生物体における疾患および障害を治療するのに有用である。
【0111】
本明細書で定義されているように、SCD媒介性の疾患または状態は、心臓血管疾患、脂質異常症、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、心臓疾患、脳血管疾患(脳卒中、虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作(TIA)、末梢血管疾患、ならびに虚血性網膜症を包含するが、これらに限定されるものではない)、癌および油性肌であるか、またはそれらに関係する疾患もしくは状態を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0112】
本明細書で使用する脂質異常症は、トリグリセリド、すなわち、高トリグリセリド血症、LDL、VLDL、および/またはHDL、コレステロールならびに総コレステロールの血清レベルに関連する障害を包含するが、これらに限定されるものではない。脂質異常症は、脂肪酸不飽和化指数(Desaturation Index)(例えば、SCD生成物脂肪酸/SCD基質脂肪酸の比)に関連する障害も包含する。多価不飽和脂肪酸(PUFA)に関連する障害も、家族性混合型高脂血症などのコレステロール障害および不完全な逆コレステロール輸送が関わる障害と同じように包含される。
【0113】
高トリグリセリド血症に関連するSCD媒介性の疾患または状態は、高リポタンパク質血症、家族性組織球性細網症、リポタンパク質リパーゼ欠損症、アポリポタンパク質欠損症(ApoCII欠損症またはApoE欠損症など)など、または病因が不明もしくは不特定の高トリグリセリド血症を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0114】
メタボリック症候群およびX症候群も、脂質異常症、低HDL、肥満症、インスリン抵抗性、グルコース耐性の低下、高血圧症、ミクロアルブミン血症(microalbuminemia)、高尿酸血症、および凝固性亢進、糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、I型糖尿病、II型糖尿病、糖尿病性合併症、過体重などの体重障害、悪液質および拒食症、ならびにボディマス指数およびレプチン関連疾患などであるがこれらに限定されない症候群を構成する様々な成分状態のすべてを包含する「SCD媒介性疾患」という用語の範囲内にある。
【0115】
本明細書で使用する「メタボリック症候群」という用語は、II型糖尿病、グルコース耐性の障害、インスリン抵抗性、高血圧症、肥満症、腹囲の増加、高トリグリセリド血症、低HDL、高尿酸血症、凝固性亢進および/またはミクロアルブミン血症の組合せを含む状態について記載するために使用される公認された臨床用語である。
【0116】
SCD媒介性の疾患または状態は、肝炎、肝脂肪変性、肝線維症、肝硬変、非アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、脂肪肝、急性脂肪肝、妊娠脂肪肝、薬物誘発性肝炎、赤芽肝性(erythrohepatic)プロトポルフィリン症、鉄過剰障害、遺伝性ヘモクロマトーシス、ヘパトーマおよびそれらに関連する状態などの様々な肝状態も包含する。
【0117】
湿疹、座瘡、乾癬、ケロイド瘢痕の形成または予防、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステルなどの粘膜からの産生または分泌に関連する疾患を包含する様々な皮膚および粘膜組織の障害は、SCD媒介性の疾患または状態の範囲内に入る。炎症、副鼻腔炎、喘息、膵炎、骨関節症、関節リウマチ、嚢胞性線維症、および月経前症候群も、癌、新形成、悪性疾患、転移、腫瘍(良性または悪性)、発癌、ヘパトーマなどである、またはそれらと関連する疾患または状態と同じように、SCD媒介性の疾患または状態と見なすことができる。SCD媒介性の疾患または状態は、神経疾患、精神疾患、多発性硬化症、眼疾患、および免疫障害である、あるいはそれらに関連する疾患または状態も包含する。SCD媒介性の疾患または状態は、ウイルス性の疾患または感染である、あるいはそれらに関連する疾患または状態も包含する。
【0118】
SCD媒介性の疾患または状態は、筋肉増強によってパフォーマンスを高める際に望ましいように、除脂肪体重または除脂肪筋肉量を増加することが望ましい状態も包含する。ミオパシーおよびカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症(CPTIまたはCPTII)などの脂質ミオパシーも、本明細書に包含される。そのような治療は、ヒトならびにトリグリセリド生成を低減しかつ/または低脂肪の肉製品および/またはより健康な動物を提供するためにウシ、ブタもしくはトリの家畜への投与を包含する畜産業において有用である。
【0119】
(試験)
SCD阻害剤としての本発明の化合物の同定は、SCD酵素ならびにTalamoおよびBloch(1969年)Analytical Biochemistry 29巻:300〜304頁に記載されているミクロソームアッセイ手順を使用して容易に行われた。このアッセイにおいて試験された場合に、本発明の化合物は、試験化合物10μM濃度にて50%未満の残存SCD活性、典型的には、試験化合物10μM濃度にて40%未満の残存SCD活性、例えば、試験化合物10μM濃度にて30%未満の残存SCD活性、試験化合物10μM濃度にて20%未満などの残存SCD活性を有しており、それにより、本発明の化合物が、SCD活性の強力な阻害剤であることを証明した。
【0120】
本明細書に開示されている化合物を試験する他の方法も、当業者にとって容易に利用可能である。したがって、さらに、化合物を試験することは、in vivoにおいて行うことができる。1つのそのような実施形態において、化合物を試験することは、血漿または組織の脂肪酸またはトリグリセリド(TG)関連障害または超低密度リポタンパク質(VLDL)関連障害に苦しむ動物に化合物を投与し、続いて、前記動物における血漿または組織の脂肪酸組成またはトリグリセリドレベルの変化を検出し、それにより、血漿または組織の脂肪酸またはトリグリセリド(TG)関連障害または超低密度リポタンパク質(VLDL)関連障害を治療するのに有用な治療剤を同定することにより行われる。そのような実施形態において、動物は、そのような障害に苦しみ、前記障害の治療を必要としているヒト患者などのヒトであってよい。
【0121】
そのようなin vivoプロセスの具体的な実施形態において、前記動物におけるSCD活性の前記変化は、活性の減少であり、典型的には、前記SCD調節剤は、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、脂肪酸合成酵素または他の脂質生成性酵素の生物学的活性を実質的に直接阻害しない。
【0122】
化合物評価にとって有用なモデル系は、高炭水化物食もしくは高脂肪食で維持されてきたマウスもしくはラット、または肥満症に罹患しているヒトを包含するヒトドナー由来などの肝ミクロソームの使用を包含するが、これに限定されるものではない。HepG2(ヒト肝臓由来)、MCF−7(ヒト乳癌由来)および3T3−L1(マウス脂肪細胞由来)などの不死化細胞系も使用されることがある。初代の肝細胞および脂肪細胞などの初代細胞系も、本発明の化合物を試験する際に有用である。丸ごとの動物が使用される場合、初代肝細胞源として使用されるマウスまたはラットも使用されることがあり、マウスまたはラットは、ミクロソームにおけるSCD活性を高めかつ/または血漿トリグリセリドレベルもしくはΔ9脂肪酸不飽和化指数(すなわち、18:1/18:0比)を上昇させるために高炭水化物食または他のSCD誘発性食で維持されてきており、代替方法として、普通食のマウスまたは正常トリグリセリドレベルのマウスが使用されることがある。高トリグリセリド血症のために設計されたトランスジェニックマウスを用いるマウスモデルも利用可能である。ウサギ、ハムスター、およびサルも、動物モデル、特に、糖尿病および肥満症表現型の動物モデルとして有用である。
【0123】
本発明の化合物のin vivo有効性を決定するための別の適当な方法は、脂肪酸組成の変化を測定することによりSCD酵素の阻害に対するそれらの影響を間接的に測定することである。これらは、16:1 n−7、18:1 n−7または18:1 n−9などのSCD生成物脂肪酸の絶対的または相対的低下を包含する。また、脂肪酸組成データを使用し、化合物の投与後に被験体のΔ9不飽和化指数を決定することもできる。本明細書で用いる「1つまたは複数の不飽和化指数」は、(生成物/所与の組織サンプルから測定されるようなSCD酵素の基質)の比を意味する。これは、18:1 n−9/18:0;16:1 n−7/16:0;および/または(16:1 n−7+18:1 n−7)/16:0などの異なる式を使用して計算することができる。1つまたは複数の不飽和化指数は、血漿または組織ならびにトリグリセリドおよびリン脂質などの脂肪酸を含有する具体的な脂質クラスにおいて測定することができる。
【0124】
(投与)
式Iの化合物は、単回投与または複数回投与で、例えば、参照により組み込まれている特許および特許出願に記載されているように、類似の有用性を有する薬剤の許容できる投与方法のいずれかにより投与することができ、口腔、鼻腔内、動脈内注射、静脈内に、腹腔内に、非経口で、筋肉内に、皮下に、経口で、または吸入剤としての投与を包含する。
【0125】
経口投与は、式Iの化合物を投与するための典型的な経路である。投与は、カプセルまたは腸溶コーティングされた錠剤を介するものであってよい。少なくとも1種の式Iの化合物を包含する医薬的組成物を製造する際に、活性成分は、通常、賦形剤により希釈されかつ/またはカプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態であってよいそのような担体内に入れられる。賦形剤が、希釈剤としての役割を果たす場合に、賦形剤は、活性成分にとってビヒクル、担体または媒体としての役割を果たす固体、半固体、または液体の材料(上記のように)であってよい。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体としてまたは液体媒体中の)、例えば、活性化合物20重量%までを含有する軟膏剤、軟質および硬質ゼラチンカプセル剤、無菌注射用液剤、および無菌包装散剤の形態であってよい。
【0126】
適切な賦形剤の一部の例は、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、シクロデキストリン、およびメチルセルロースを包含する。製剤は、さらに、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油などの滑沢剤;湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;メチル−およびプロピルヒドロキシ−ベンゾエートなどの保存剤;甘味剤;および矯味剤をさらに包含することができる。
【0127】
本発明の組成物は、当技術分野において公知の手順を用いることにより、患者への投与後に活性成分の迅速放出、持続放出または遅延放出を提供するように製剤化することができる。経口投与のための制御放出薬物送達システムは、浸透圧ポンプシステムおよびポリマーコーティングされたレザバーを含有する溶解システムまたは薬物−ポリマーマトリックス製剤を包含する。制御放出システムの例は、米国特許第3,845,770号;第4,326,525号;第4,902514号;および第5,616,345号に示されている。
【0128】
本発明の方法において使用するための別の製剤は、経皮送達装置(「パッチ」)を用いる。そのような経皮パッチを使用し、制御された量で本発明の化合物の連続的または不連続的な注入を提供することができる。薬剤を送達するための経皮パッチの作製および使用は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、第4,992,445号および第5,001,139号を参照されたい。そのようなパッチは、薬剤の連続的、脈動的、またはオンデマンド送達のために作成することができる。
【0129】
式Iの化合物などのSCD阻害剤は、広い用量範囲にわたって有効であり、一般的に、薬学的有効量で投与される。典型的には、経口投与の場合に、各用量単位は、SCD阻害剤1mg〜2g、より一般的には、1〜700mg、非経口投与の場合に、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ阻害剤1〜700mg、より一般的には、約2〜200mgを含有する。しかしながら、実際に投与されるSCD阻害剤の量は、治療される状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物およびその相対的活性、個々の患者の年齢、体重および反応、患者の症状の重症度などを包含する関連状況に照らして医師により決定されるであろうことは理解されるであろう。
【0130】
錠剤などの固体組成物を調製するためには、主たる活性成分を医薬賦形剤と混ぜ、本発明の化合物の均一な混合物を含有する固体の予備処方組成物を形成させる。これらの予備処方組成物を均一と呼ぶ場合、組成物が錠剤、丸剤およびカプセル剤などの等しく有効な単位剤形に容易に再分割することができるように、活性成分が組成物全体に均一に分散されていることを意味する。
【0131】
本発明の錠剤または丸剤は、持続性作用の利点を与える剤形を提供するため、または胃の酸性条件から保護するためにコーティングするか、さもなければ混ぜ合わせることができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投与成分および外部投与成分を含むことができ、後者は、前者の上の外層の形態である。2つの成分は、胃における崩壊に抵抗する役目を果たし、内部成分を、そのまま十二指腸へ通過させるかまたは放出を遅らせる腸溶層により分離することができる。様々な材料を、そのような腸溶層またはコーティングとして使用することができ、そのような材料は、多くのポリマー酸ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料の混合物を包含する。
【0132】
吸入または吹送のための組成物は、薬学的に許容できる水性または有機溶媒、またはそれらの混合物中の液剤および懸濁剤、ならびに散剤を包含する。液体または固体の組成物は、上記に記載されているような適当な薬学的に許容できる賦形剤を含有することができる。代表的には、組成物は、局所効果または全身効果のために経口または鼻呼吸経路により投与される。薬学的に許容できる溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用により噴霧化することができる。噴霧化された溶液を噴霧装置から直接吸入することができ、または噴霧装置を、フェイスマスクテント、または間欠的陽圧呼吸器に接続することができる。溶液、懸濁液または粉末の組成物は、例えば、経口的または経鼻的に、適切な方法で製剤を送達する装置から投与することができる。
【0133】
以下の実施例は、本発明の典型的な実施形態を示すために包含される。あとに続く実施例に開示されている技法は、本発明の実施において十分に機能することが発明者らにより発見された技法を示すものであり、したがって、その実施に好ましい様式を構成すると見なすことができることが当業者により理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている具体的な実施形態に多くの変更を加えることができ、同様または類似の結果が依然として得られることを理解するべきである。
【実施例】
【0134】
(実施例1)
A.原料の調製、パート1
【0135】
【化12】

2−(2−ヒドロキシエチル)イソインドリン−1,3−ジオン(P1)は、公表された手順:Organic Syntheses、Coll.4巻、106頁(1963年)により合成した。
【0136】
2−(2−ヨードエチル)イソインドリン−1,3−ジオン(P2)。乾燥CHCl(160mL)中のイミダゾール(16.3g、0.24mol)およびPPh(31.5g、0.12mol)の−10℃まで冷却した懸濁液に、I(30.5g、0.12mol)を少しずつ加えた。添加後、形成された懸濁液を室温にて30分にわたって撹拌し、続いて、P1(15.3g、0.08mol)を少しずつ加えた。反応混合物を24時間にわたって撹拌し、次いで、水性Naを加えた。結果として、有機層を水、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。蒸発後、黄緑色の残渣が得られ、シリカゲル上でクロマトグラフィーに供した(CHCl/ヘキサン1:2)。ヘキサン/アセトンから最終生成物を再結晶すると、白色の繊維物20.9g(87%)が得られた。
【0137】
B.P2に類似した化合物の調製
実施例1Aの合成スキームを変更し、P2に類似しているがヨードアルキル基を変えた化合物を生成させることができる。例えば、実施例1Aのスキームの第一の反応において、エタノールアミンは、アミノ置換基を持つCアルコールであり、他のアミノ置換アルキルアルコール、例えば、3−アミノプロパン−1−オール、2−アミノプロパン−1−オール、3−アミノプロパン−2−オール、4−アミノブタン−1−オール、3−アミノブタン−1−オール、4−アミノブタン−2−オール、または3−アミノブタン−2−オールなどのアミノ置換CまたはCアルコールで置き換え、様々なヨードアルキル基を持つP2に対応する類似化合物を生成させることができる。さらに他のアミノ置換アルキルアルコールを使用し、P2に対応する類似化合物を生成させることができる。次いで、これらの類似化合物を使用し、類似化合物と一緒に本明細書に記載されている合成を使用することにより対応する式Iの化合物を生成させることができる。
【0138】
(実施例2)
A.原料の調製、パート2
【0139】
【化13】

6−ニトロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン(P3)。アセトン(50mL)中の2−アミノ−4−ニトロフェノール(4g、26mmol)の0℃まで冷却した溶液に、塩化クロロアセチル(3.3g、29mmol)を滴加した。わずかに暖かくなることおよび沈殿が観察された。次いで、EtN(5.8g、57mmol)をゆっくりと加え、反応混合物を30分にわたってさらに撹拌した。その後、混合物を水(50mL)で希釈し、3時間にわたって還流状態まで加熱した。生成物が反応混合物から沈殿した。混合物を室温にて一晩にわたって保ち、濾過し、次に、フィルター上の残渣を過剰の水およびメタノールで洗浄した。乾燥した後、灰色の固体(4.3g、85%)が得られた。
【0140】
2−[2−(6−ニトロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチル]−イソインドール−1,3−ジオン(P4)。乾燥DMF(90mL)中のP3(7.4g、38mmol)の−5℃まで冷却した溶液に、NaH(3g、75mmol、鉱油中60%分散)をアルゴン雰囲気下でゆっくりと加えた。添加後、形成された懸濁液を1時間にわたって室温にて撹拌し、次いで、−5℃まで再び冷却し、P2(20.5g、68mmol)をこの温度にて少しずつ加えた。反応混合物を、17時間にわたって室温にて、次いで、4日にわたって40℃にてさらに撹拌した。その後、混合物をエタノール(450mL)および水(100mL)で希釈し、一晩にわたって5℃に保った。沈殿した生成物を濾過し、エタノールで洗浄した。乾燥した後、黄色の粉末(7.7g、55%)が得られた。
【0141】
4−(2−アミノエチル)−6−ニトロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン(P5)。エタノール(150mL)中のP4(7.7g、21mmol)に、NO(10mL)を加え、混合物を3時間にわたって65℃にて撹拌した。沈殿を濾去し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発させ、褐色の残渣を5%水性NaOH(100mL)およびCHCl(150mL)に溶かした。水層をCHCl(4回)でさらに抽出し、次いで、有機層を合わせ、水で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させると、黄色の粉末4.4gが得られた。それをTHF(120mL)に溶かし、ジオキサン中4N HCl(8mL、32mmol)を加えた。形成された沈殿を濾過し、THFで洗浄すると、乾燥した後にベージュ色の粉末4.7g(82%)が得られた。得られた生成物は比較的純粋であり、R=0.45のTLC(CHCl/EtOH5%)による1つの主要なスポットを与えた。それを、追加の精製なしにさらなるステップにおいて使用した。
【0142】
B P5に類似した化合物の調製
実施例2Aの合成スキームを変更し、P3に類似した化合物を生成させることができる。例として、実施例2のスキームの第一の反応において、2−アミノ−4−ニトロフェノールを、2−アミノ−5−ニトロフェノールで置き換え、かつ/または、塩化クロロアセチルを、臭化2−ブロモ−2−メチルプロパノイルで置き換え、P3に対応する類似化合物を生成させることができる。次いで、P3のこれらの類似化合物を使用し、類似化合物と一緒に本明細書に記載されている合成を使用することにより対応する式Iの化合物を生成させることができる。
【0143】
(実施例3)
A.Rが、置換されていてもよいフェニルであり、Lが、メチレンである、式Iの化合物の調製。
【0144】
【化14】

N−[2−(6−ニトロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチル]−アセトアミド(P6)。CHCl(50mL)中のP5(2g、7.3mmol)およびトリエチルアミン(EtN)(5.8g、57mmol)の−5℃まで冷却した溶液に、無水酢酸(AcO)(2.2g、22mmol)を一度に加えた。反応混合物を3時間にわたって室温にて撹拌し、次いで、5%水性HClを加えた。形成された沈殿を濾去し、水ですすぐと、乾燥した後にベージュ色の固体0.7gが得られた。次に、濾液からの有機層を水、水性NaCO、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。CHClを蒸発させると、追加の黄色の固体が得られた。
【0145】
N−[2−(6−アミノ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチル]−アセトアミド(P7)。酢酸(AcOH)(10mL)中のP6(200mg、0.7mmol)およびZn(650mg、10mmol)の懸濁液を、3.5時間にわたって50〜55℃にて撹拌した。次いで、AcOHを蒸発させ、残渣を沸騰したCHClに入れ、濾過した。この操作を沈殿について4回繰り返した。次に、合わせた有機相を水性NaCO、水、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。CHClを蒸発させると、黄褐色の固体が得られた。得られた生成物は比較的純粋であり、R=0.35のTLC(酢酸エチル/EtOH5%)による1つの主要なスポットを与えた。それを、追加の精製なしにさらなるステップにおいて使用した。
【0146】
シッフ塩基形成のための一般手順(P8)。無水エタノール(5mL)中のP7(0.27g、1.1mmol)、Si(OEt)(1.1g、5.3mmol)、および対応するベンズアルデヒド(1.3mmol)の溶液を4.5時間にわたって還流した。シッフ塩基は、4℃までゆっくりと冷却すると溶液から結晶化した。それを濾過し、フィルター上で冷エタノールで洗浄した。追加の生成物を、濾液を部分的に蒸発させ、続いて、冷却することにより得ることができた。TLC分析は、高純度の所望の生成物を示した。それを、追加の精製なしにさらなるステップにおいて使用した。シッフ塩基形成のための一般手順を用い、下記生成物を生成させた:
N−[2−[6−(ベンジリデンアミノ)−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル]−エチル]アセトアミド。R=0.45(CHCl/EtOH 5%)。
【0147】
N−(2−[6−[(3,4−ジクロロベンジリデン)アミノ]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル]−エチル)アセトアミド。R=0.75(酢酸エチル/EtOH 5%)。
【0148】
N−(2−[6−[[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン]アミノ]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル]−エチル)アセトアミド。R=0.35(CHCl/EtOH 5%)。
【0149】
N−(2−[6−[(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジリデン]アミノ]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル]−エチル)アセトアミド。R=0.3(CHCl/EtOH 5%)。
【0150】
(E)−N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジリデンアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド。
【0151】
(Z)−N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジリデンアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド。
【0152】
式Iの生成物(P9)を生成させるシッフ塩基還元のための一般手順。無水エタノール(5mL)中のP8(0.7mmol)の−5℃まで冷却した懸濁液に、NaBH(76mg、2mmol)を一度に、続いて、溶液が均一になるまで乾燥THFを加えた。それを、TLC分析が、反応物中に出発シッフ塩基が残っていないことを示すまで室温にて撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、残渣を水および酢酸エチルに溶かした。次に、有機層を水および食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させると、粗生成物が残った。それを、CHClで溶出し、溶出液を酢酸エチルへ徐々に変化させるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによりさらに精製した。TLCによる純粋な生成物を含有するすべての分画を合わせ、蒸発させると、黄色の固体が残り、CHCl/ヘキサンから再結晶した。結晶性生成物をTHF(10mL)に溶かし、ジオキサン中4N HCl(0.25mL、1mmol)を撹拌しながら加えた。形成された沈殿を濾過し、THFまたはエーテルでフィルター上で洗浄し、乾燥すると、ベージュ色の粉末として標的生成物が得られた。反応の生成物、P9は、Rが、3,4−ジクロロフェニルであり、Lが、メチレンである、式Iの化合物である。
【0153】
シッフ塩基還元のためのこの一般手順を用い、式Iの下記生成物を生成させた:
N−(2−(6−(ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩。
【0154】
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩。
【0155】
N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩。
【0156】
N−(2−(6−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩。
【0157】
N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド。
【0158】
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド。
【0159】
B.Rを変えた式(I)の化合物の調製
同様に、上の実施例3Aの手順に従うが、場合により、構造ArCHOを有する他の化合物(Ar基を変えた(Arは、置換されていてもよいアリール基である))を代わりに用い、式Iの他の化合物を調製する。
【0160】
(実施例4)
A.Rが、置換されていてもよいフェニルであり、Rが、置換されていてもよいフェニルであり、Lが、メチレンである、式Iの化合物の調製。
【0161】
【化15】

N−[2−(6−ニトロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチル]−ベンズアミド(P10)。乾燥THF(10mL)中の安息香酸(0.3g、2.5mmol)およびカルボニルジイミダゾール(CDI)(0.4g、2.5mmol)の溶液を2時間にわたって室温にて撹拌した。P5(0.55g、2mmol)を一度に加え、懸濁液を12時間にわたって室温にて撹拌し、次いで、9時間にわたって還流した。さらに、乾燥THF(4mL)中の前もって混ぜてある安息香酸(0.15g、1.2mmol)およびCDI(0.19g、1.2mmol)の溶液を加えた。9時間にわたる還流後、出発アミンの一部が、TLC分析により検出することができた。無水THF(7mL)中の前もって混ぜてある安息香酸(0.3g、2.5mmol)およびCDI(0.4g、2.5mmol)の溶液を再び加え、続いて、EtN(0.2g、2mmol)を加えた。黒ずんだ反応混合物を、一晩にわたって室温にて撹拌し、次いで、5時間にわたって還流した。この時点で、出発原料はTLCにより観察されなかった。THFを蒸発させ、残渣を水性HCl中で撹拌し、濾過し、次に、水、水性NaCO、水でフィルター上で洗浄した。空気で乾燥した後、沈殿を沸騰したアセトンで抽出した。濾液を蒸発させると、淡褐色の固体が得られ、エタノールから再結晶すると、ベージュ色の粉末が得られた。
【0162】
N−[2−(6−アミノ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチル]−ベンズアミド(P11)。AcOH(13mL)中のP10(0.34g、1mmol)およびZn(0.85g、13mmol)の懸濁液を、3.5時間にわたって50〜55℃にて撹拌した。次いで、AcOHを蒸発させ、残渣を沸騰したCHClに入れ、濾過した。この操作を沈殿について4回繰り返した。次に、合わせた有機層を水性NaCO、水、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。CHClを蒸発させると、黄褐色の固体0.31g(99%)が得られた。得られた生成物は比較的純粋であり、R=0.25のTLC(CHCl/EtOH5%)による1つの主要なスポットを与えた。それを、追加の精製なしにさらなるステップにおいて使用した。
【0163】
N−[2−[6−[(3,4−ジクロロベンジリデン)アミノ]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル]−エチル]−ベンズアミド(P12)。無水エタノール(5mL)中のP11(308mg、1mmol)、Si(OEt)(1.1g、5.3mmol)、および3,4−ジクロロベンズアルデヒド(210mg、1.2mmol)の溶液を5時間にわたって還流した。反応混合物を4℃まで冷却し、沈殿を濾過し、フィルター上で冷エタノールで洗浄すると、乾燥した後にベージュ色の粉末313mg(67%)が得られた。得られた生成物は比較的純粋であり、R=0.35のTLC(CHCl/EtOH5%)による1つの主要なスポットを与えた。それを、追加の精製なしに用いた。
【0164】
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)ベンズアミド(P13)。無水エタノール(6mL)中のP12(310mg、0.67mmol)の−5℃まで冷却した懸濁液に、NaBH(75mg、2mmol)を一度に、続いて、溶液が均一になるまで乾燥THFを加えた。それを、TLC分析が、反応物中に出発シッフ塩基が残っていないことを示すまで室温にて撹拌した。この時点で、溶媒を蒸発させ、残渣を水およびCHClに溶かした。次に、有機層を水および食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させると、淡褐色の油が残った。それを、CHClで溶出し、溶出液を酢酸エチルへ徐々に変化させるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付した。TLCによる純粋な生成物を含有するすべての分画を合わせ、蒸発させると、灰色の固体が残り、CHCl/EtO/ヘキサンおよびCHCl/ヘキサンから2回再結晶した。真空中で乾燥した後、ベージュ色の粉末が得られた。
【0165】
B.RおよびRを変えた式(I)の化合物の調製
同様に、上の実施例4Aの手順に従うが、場合により、使用される原料の一部を置き換え、式Iの他の化合物を調製する。例えば、実施例4Aのスキームの第一の反応において、安息香酸を、置換されていてもよい安息香酸またはカルボキシル置換基を有する他のアリール基で置き換え、式Iの対応する化合物を生成させることができる。別の例として、実施例2のスキームにおける第三の反応において、ジクロロベンズアルデヒド(dichlorobenzaldehye)を、他の置換されていてもよいベンズアルデヒド化合物で置き換え、式Iの対応する化合物を生成させることができる。
【0166】
(実施例5)
A.Rが、3,4−ジクロロフェニルであり、Rが、ヒドロキシメチルである、式Iの化合物の調製。
【0167】
【化16】

酢酸[2−(6−ニトロ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチルカルバモイル]メチルエステル(P14)。無水THF(10mL)中のアセト酢酸(0.22g、1.9mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.26g、2mmol)、およびテトラフルオロホウ酸O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム(TBTU)(0.61g、1.9mmol)の懸濁液を一晩にわたって室温にて撹拌した。追加のジイソプロピルエチルアミン(0.26g、2mmol)と、続いて、P5(0.46g、1.7mmol)を、0℃まで冷却した反応混合物に加えた。室温にて4時間にわたって撹拌した後、出発原料は、TLCにより検出されなかった。THFを蒸発させ、残渣を希釈水性HCl中で撹拌し、濾過し、続いて、水、水性NaHCO、水でフィルター上で洗浄した。乾燥した後、黄色の粉末が得られた。得られた生成物は比較的純粋であり、R=0.5のTLC(CHCl/EtOH5%)による1つの主要なスポットを与えた。それを、追加の精製なしにさらなるステップにおいて使用した。
【0168】
酢酸[2−(6−アミノ−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)−エチルカルバモイル]メチルエステル(P15)。AcOH(15mL)中のP14(0.4g、1.2mmol)およびZn(1.05g、16mmol)の懸濁液を、3.5時間にわたって50〜55℃にて撹拌した。次いで、AcOHを蒸発させ、残渣を沸騰したCHClに入れ、濾過した。この操作を沈殿について4回繰り返した。続いて、合わせた有機層を水性NaCO、水、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。CHClを蒸発させると、灰色の固体が得られた。得られた生成物は比較的純粋であり、R=0.3のTLC(CHCl/EtOH5%)による1つの主要なスポットを与えた。それを、追加の精製なしにさらなるステップにおいて使用した。
【0169】
N−[2−[6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル]−エチル]−2−ヒドロキシアセトアミド塩酸塩(P17)。無水エタノール(7mL)中のP15(364mg、1.2mmol)、Si(OEt)(1.6g、7.7mmol)、および3,4−ジクロロベンズアルデヒド(245mg、1.4mmol)の溶液を3時間にわたって還流した。この時点で、TLC分析は、R=0.6(酢酸エチル)のシッフ塩基P16を圧倒的に示し、出発アミンP15は観察されなかった。反応混合物を0℃まで冷却し、NaBH(46mg、1.2mmol)を一度に加え、続いて、溶液が均一になるまで乾燥THFを加えた。それを、TLC分析が、反応物中に出発シッフ塩基が残っていないことを示すまで室温にて撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を水性メタノールに溶かした。KCO(124mg、0.9mmol)を加え、懸濁液を1時間にわたって撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、シリカゲルプラグに通して濾過し、CHClで溶出し、溶出液を酢酸エチルへ変化させた。TLCによる生成物を含有するすべての分画を合わせ、蒸発させると、黄色の油状の固体が残った。それをTHF/EtOに溶かし、ジオキサン中4N HCl(0.3mL、1.2mmol)を撹拌しながら加えた。形成された沈殿を濾過し、THFでフィルター上で洗浄した。乾燥した後、それを、酢酸エチルおよび水性NaCOに撹拌して溶かした。有機層および水相の抽出物を合わせ、NaSOで乾燥し、蒸発させた。残渣を、CHClで溶出し、溶出液を酢酸エチルへ徐々に変化させるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付した。TLCによる純粋な生成物を含有するすべての分画を合わせ、蒸発させると、淡黄色の固体が残った。それを、1時間にわたってEtO中で還流し、その後、懸濁液を4℃まで冷却し、沈殿を濾過し、冷EtOで洗浄した。それを、THFに溶かし、ジオキサン中の形成した溶液4N HCl(0.15mL、0.6mmol)を激しく撹拌しながら加えた。沈殿を濾過し、冷THFで洗浄し、乾燥すると、ベージュ色の粉末が得られた。
【0170】
この一般手順を用い、式Iの下記生成物を生成させた:
N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド。
【0171】
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド。
【0172】
B.RおよびRを変えた式Iの化合物の調製
同様に、上の実施例5Aの手順に従うが、場合により、アセト酢酸の代わりに、かつ/またはジクロロベンズアルデヒドの代わりに(例えば、他の置換ベンズアルデヒド、式Ar−C(O)H(Arは、置換されていてもよいアリールである)の他の化合物)他の化合物を用い、式Iの他の化合物を調製する。
(実施例6)
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ阻害剤の特徴付け
(材料および方法)
(材料)
H]ステアロイルCoAおよびステルクリン酸は、それぞれPerkinElmerおよびPlanta Piloto de Quimica Finaから入手した。他の試薬の商用ソースを以下に列挙する。
材料 会社
[3H]H2O PerkinElmer
ステアロイルCoA Sigma
CoA Sigma
NADH Sigma
Tris, 1M Invitrogen
MgCl2 Sigma
BHT Sigma
BSA Sigma
DMSO Sigma
ATP Sigma
96ウェルプレート Corning
Bio-Beads SM-2 Bio-Rad
(ラット肝ミクロソームの調製)
ラット肝ミクロソームは、Ozols(1990年)Methods Enzm、182巻:225頁に記載されている手順に従って採取した。
【0173】
(In vivo実験(肝灌流および採取))
雄性Spraque Dawleyラットを、1週間にわたって厳しく管理された絶食プロトコルに置き、SCD酵素活性を刺激した。48時間にわたって摂食と絶食を繰り返してSCD活性を誘導およびダウンレギュレートし、肝灌流および採取前の高炭水化物食を介してSCD活性を誘導した。
【0174】
ラットを、イソフルラン吸入麻酔薬で麻酔し、肝臓を、冷たいリン酸緩衝溶液(PBS)で灌流し、秤量し、冷たい均質化緩衝液(250mMスクロース、10mM Tris、1mM EDTA、pH7.6)中で冷却した。
【0175】
肝臓を細かく切り刻み、均質化チューブに入れた。均質化緩衝液(40mL)を均質化チューブに添加し、肝臓を均質化し、4℃にて10分にわたって800Gにて予備冷却したSLA−600 TC中で遠心分離した。
【0176】
遠心分離後、上清を採取し、ペレットを取り出して捨てた。上清を35分にわたって10,000Gにて遠心分離した。遠心分離後、上清を採取し、ペレットを捨てた。次いで、上清を、4℃にて90分にわたって130,000G(41,000RPM)にて予備冷却した45−Tiローター中で遠心分離した。
【0177】
(In vitro(ミクロソーム採取))
次いで、上清を吸引除去し、採取したミクロソームペレットを、グリセロールPBS(1×PBS7.4、20%グリセロール)25mL中で洗浄し、4〜5倍量のグリセロールPBSに再懸濁した。
【0178】
ミクロソーム調製物のタンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce)により決定し、ミクロソームを等分して−80℃にて保存した。
【0179】
(疎水性ビーズの調製)
バイオビーズを、乳鉢と乳棒でより小さいサイズに粉砕し、3.6%TCA中に再懸濁した。次いで、ビーズを、300μMメッシュを通して濾過した。
【0180】
(ストック溶液)
ストック溶液およびそれらの保存条件を以下に列挙する。
溶液 保存条件
20mg/mlステアロイルCoA -80℃
2.8mCi/ml[3H]ステアロイルCoA -80℃
CoA 新たに調製
ステルクリン酸 新たに調製
0.2 M NADH -80℃
1 M Tris, pH 7.2 室温
1 M MgCl2 室温
100 mM ATP -20℃
10% BSA 4℃
10〜20mg/mlミクロソーム -80℃
(SCDアッセイ緩衝液)
SCDは、デサチュラーゼアッセイ緩衝液中で決定した。このアッセイ緩衝液は、0.1M Tris緩衝液、pH7.2、2mM NADH、4.8mM ATP、0.5mM CoA、4.8mM MgCl、および0.1%BSAを含有していた。
【0181】
SCDアッセイのための手順(出典TalamoおよびBloch(1969年)Analytical Biochemistry 29巻:300〜304頁)
式Iの各化合物1μlを、低容量(0.5〜10μL)マルチチャンネルピペットによりアッセイプレートに添加した。DMSO対照も調製した。ミクロソームを素早く解凍し、0.4mg/mlの濃度が得られるように(0.2mg/mlアッセイファイナル)アッセイ緩衝液に添加した。次いで、アッセイ緩衝液中のミクロソーム懸濁液50μlを、化合物アッセイプレート内の各ウェル中に添加し、プレートを覆い、ミクロソームを、室温にて、オービタルシェーカー、50〜75rpmで30分にわたって、化合物と共にプレインキュベートした。
【0182】
プレインキュベーション後、反応を、MilliQ(Millipore)HO中で、プレインキュベートしたミクロソーム/化合物懸濁液に基質溶液(20μMステアロイルCoA、[3H]ステアロイルCoA、74nCi)50μlを添加することにより開始させた。次いで、反応混合物を、室温にて50〜75rpmのオービタルシェーカー上で45分にわたってインキュベートした。
【0183】
反応を、反応混合物への21%トリクロロ酢酸(TCA)10μlの添加と、続く、室温における50〜75rpmでの30分にわたるオービタルシェーカー上でのインキュベーションと、続く、3700rpmで5分にわたる遠心分離により終了させた。
【0184】
O中の6%Bio−Bead懸濁液50μlを反応混合物に添加し、アッセイプレートを密封した。Bio−Bead混合物を、室温にて100〜150rpmで1時間にわたってオービタルシェーカー上でインキュベートし、次いで、混合物を、5分にわたって2000gで遠心分離し、Bio−Beadをペレット化した。
【0185】
上清25μlを各ウェルから採集し、検出プレートに移した。OptiPhase SuperMixシンチレーションカクテル(TCAを中和するのに十分なNaOHを含有する)100μlを添加し、溶液を、室温にて5分にわたる激しい振盪(300〜400rpm)により混ぜた。放射活性をMicroBetaシンチレーションカウンター中でカウントし、式Iの化合物についての活性およびIC50値を決定した。表1は、上記のアッセイにおいて決定されるIC50が30μM未満であった本発明の多くの化合物についてのIC50データを示している。
【0186】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有するステアロイル−CoAデサチュラーゼの阻害剤である化合物
【化17】

(式中、
は、水素、置換されていてもよいC1〜20アルキル、置換されていてもよいC1〜6低級アルキル、置換されていてもよいC3〜20シクロアルキル、置換されていてもよいC2〜20アルケニル、置換されていてもよいC2〜20アルキニル、置換されていてもよいC1〜20アルコキシ、置換されていてもよいC1〜6アルコキシ、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール、または置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロアリールであり、
は、C1〜20アルキル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール、または置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロアリールであり、
およびRは、独立して、水素、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロシクリル、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のアリール、置換されていてもよい単環式もしくは二環式のヘテロアリールであり、
は、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−NR’−C(O)−、−C(O)−NR’−、−O−C(O)−NR’−、−NR’−、−O−、−S−、−NR’−S(O)−、または−S(O)−NR’−から選択され、R’は、水素またはC1〜6低級アルキルであり、
は、共有結合または−Lk−Y−であり、Lkは、置換されていてもよい直鎖または分岐のC1〜4アルキレンであり、Yは、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルであり、
は、共有結合または−Lk’−Y’−であり、Lk’は、置換されていてもよい直鎖または分岐のC1〜4アルキレンであり、Y’は、共有結合、−O−、−S−、または−NR’’−から選択され、R’’は、水素またはC1〜6低級アルキルであり、
W1は、−O−または−S−であり、
−L−NH−は、式Iに示される6または7位に結合している)。
【請求項2】
が、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよい低級アルコキシ、ハロゲン、CF、−OCF、−OCFCFおよび−OCHからなる群から選択される1、2、または3個の置換基で2、3、4、または5位において置換されていてもよいフェニルであり、
が、C2〜3アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、−NR’−C(O)−である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、置換されていてもよい低級アルキルまたは置換されていてもよいフェニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド;
N−(2−(7−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2,2−ジメチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド塩酸塩;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)ベンズアミド;および
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド塩酸塩
からなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、置換されていてもよいフェニルであり、
が、メチレンであり、
が、C2〜3アルキレンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
3−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)プロパンアミド、および
6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−4−(2−フェノキシエチル)−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−3(4H)−オンからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、置換されていてもよい低級アルキルまたは置換されていてもよい低級アルコキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、水素であり、
が、置換されていてもよいC1〜6アルキルであり、
が、−NR’−C(O)−、−C(O)−NR’−、または−O−である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)アセトアミド;
N−(2−(6−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド;
N−(2−(6−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミノ)−2−メチル−3−オキソ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エチル)−2−ヒドロキシアセトアミド
からなる群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、−O−である、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
およびRが、独立して、水素、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよい5または6員の単環式ヘテロシクリル、置換されていてもよいフェニル、あるいは置換されていてもよい5または6員の単環式ヘテロアリールであり、
前記アルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール部分が、ハロ、低級アルキル、NO、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、SO22、SON(R20、NR20COR22、COR20、CO20、CON(R20、NR20SO22、OC(O)R20からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、R20およびR22が、水素、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
が、水素であり、Rが、水素、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよい5または6員の単環式ヘテロシクリル、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよい5または6員の単環式ヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、水素であり、Rが、水素、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ペルフルオロエチル、ピリジル、および置換されていてもよいフェニルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
が、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ペルフルオロエチル、ピリジル、またはC1〜6アルキルからなる群から選択される1、2、または3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項16】
が、−C(O)−NR’−である、請求項10に記載の化合物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩、エステル、プロドラッグ、もしくは水和物を含む医薬組成物。
【請求項18】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ阻害性化合物で治療することができる哺乳動物における疾患または状態を治療するための方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療有効投与量の請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、もしくは水和物を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記疾患状態が、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、心臓疾患、高血圧症、および末梢血管疾患、癌、脳血管疾患(脳卒中、虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作(TIA)、ならびに虚血性網膜症を包含するが、これらに限定されるものではない)、脂質異常症、肥満症、糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース耐性の低下、インスリン非依存性糖尿病、II型糖尿病、I型糖尿病、および他の糖尿病性合併症からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2011−516494(P2011−516494A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503205(P2011−503205)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039439
【国際公開番号】WO2009/126527
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】