説明

ステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計

【課題】外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるステッピングモータ制御回路を提供すること。
【解決手段】複数の駆動パルスの中から選択した駆動パルスによってステッピングモータ105を駆動する制御手段を備えたステッピングモータ制御回路において、制御手段は、駆動パルスによって駆動する毎に、ステッピングモータ105の駆動前に磁界を検出する直流磁界検出回路111を備え、直流磁界検出回路111が第1基準しきい電圧Vcomp_J1を超える磁界を検出したとき、通常駆動時用の主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい固定駆動パルスPwによってステッピングモータ105を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御回路及び前記ステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、駆動コイルとを有し、前記駆動コイルの2つの端子OUT1、OUT2に相互に極性の異なる交番駆動信号を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにしたステッピングモータがアナログ電子時計等に使用されている。
【0003】
前記ステッピングモータの制御方式として、ステッピングモータを主駆動パルスによって駆動した際に、前記ステッピングモータに生じる誘起電圧である検出信号に基づいた検出信号を検出することによって回転したか否かを検出し、回転したか否かに応じて、パルス幅の異なる主駆動パルスに変更(エネルギの大きい主駆動パルスに変更するランクアップやエネルギの小さい主駆動パルスに変更するランクダウン)して駆動する、あるいは、主駆動パルスよりもパルス幅の大きい補正駆動パルスによって強制的に回転させ、負荷に応じた駆動パルスに変更して駆動する補正駆動方式が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、特許文献2の直流磁場検出の構成は、駆動パルス遮断後のロータ自由振動による誘起電圧を検知する検出抵抗により、外部磁界の影響による誘起電圧の変化を複数回記憶し、基準電圧とを複数回比較判断し、異なっていた場合に磁界中と判断する結果を出力する。
前記従来の駆動システムでは直流磁界中に時計がさらされた状態で、駆動パルスがランクダウンした場合、回転しない場合でも回転したのと同等レベルの高レベルの誘起信号VRsが生じ、非回転にも拘わらず回転したと誤判定してしまう可能性がある。
【0005】
また、直流磁界によって双方の端子OUT1、OUT2の誘起電圧が発生する時刻や電圧値が大きく変化するため、正常な回転検出ができなくなり、補正駆動パルスを出し続ける可能性もある。また、非回転にも拘わらず回転したと誤判定をしてしまうと、補正駆動パルスによる駆動が行われないため、ステッピングモータが回転されず、時計においては実測遅れの機能不良となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭61−15385号公報
【特許文献2】特公平4−15917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるステッピングモータ制御回路を提供することを課題としている。
また、本発明は、外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるようにして、正確な運針動作を行うアナログ電子時計を提供することを他の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、複数の駆動パルスの中から選択した駆動パルスによってステッピングモータを駆動する制御手段を備えたステッピングモータ制御回路において、前記制御手段は、前記ステッピングモータの駆動前に磁界を検出する磁界検出手段を備え、前記磁界検出手段が第1レベルを超える磁界を検出したとき、前記通常駆動時用の主駆動パルスよりもエネルギの大きい固定駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動することを特徴とするステッピングモータ制御回路が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の視点によれば、時刻針を回転駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、前記ステッピングモータ制御回路として、前記記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステッピングモータ制御回路によれば、外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるステッピングモータ制御回路を提供することができる。
また、本発明に係るアナログ電子時計によれば、外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるようにして、正確な運針動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計に使用するステッピングモータの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路の部分詳細回路図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路のタイミング図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計について説明する。尚、各図において同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計のブロック図で、アナログ電子腕時計の例を示している。
図1において、アナログ電子時計は、所定周波数の信号を発生する発振回路101、発振回路101で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路102、電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路103、制御回路103からの制御信号に基づいてモータ回転駆動用の複数の駆動パルスの中から駆動パルスを選択し出力する駆動パルス選択回路104、駆動パルス選択回路104からの駆動パルスによって回転駆動されるステッピングモータ105、ステッピングモータ105によって回転駆動され時刻を表示するための時刻針(図1の例では時針107、分針108、秒針109の3種類)を有するアナログ表示部106、ステッピングモータ105の回転状況を表す誘起信号VRs_Kを検出し誘起信号VRs_Kが所定の基準しきい電圧Vcomp_Kを超えるか否かを表す回転検出信号を出力する回転検出回路110、ステッピングモータ105からの信号に基づいてアナログ電子時計外部の直流磁界を検出する直流磁界検出回路111を備えている。
【0013】
ステッピングモータ105が回転した場合には回転検出回路110が基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出し、モータ105が回転しなかった場合には回転検出回路110が基準しきい値Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出しないように基準しきい値Vcomp_Kは設定されている。
直流磁界検出回路111は、所定の基準しきい電圧Vcomp_J1、Vcomp_J2によって、アナログ電子時計外部の直流磁界の状況を検出する。本実施の形態では、前記基準しきい電圧として複数の基準しきい電圧を有しており、第1基準しきい電圧Vcomp_J1を超える磁界の場合には強磁界が存在することを表す磁界検出信号、前記第1基準しきい電圧Vcomp_J1よりも小さい第2基準しきい電圧Vcomp_J2以下の場合には磁界が無いことを表す磁界検出信号、前記第1基準しきい電圧Vcomp_J1以下で前記第2基準しきい電圧Vcomp_J2を超える場合には弱磁界が存在することを表す磁界検出信号を出力する。
【0014】
制御回路103は、各主駆動パルスP1による駆動を行った後、回転検出回路110からの回転検出信号に基づいてステッピングモータ105が回転したか否かを判定し、これにより負荷状況に応じて、複数の主駆動パルスP1のいずれかに主駆動パルスを変更したり、あるいは各主駆動パルスよりも駆動エネルギの大きい補正駆動パルスP2によって強制的に回転駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
また、詳細は後述するが、制御回路103は、直流磁界検出回路111が検出した外部直流磁界の状況に応じて、適切な駆動パルスに変更してステッピングモータ105を回転駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
【0015】
尚、発振回路101及び分周回路102は信号発生手段の一例を構成し、アナログ表示部106は時刻表示手段の一例を構成している。回転検出回路110は回転検出手段の一例を構成し、直流磁界検出回路111は磁界検出手段の一例を構成している。また、制御回路103、駆動パルス選択回路104、回転検出回路110及び直流磁界検出回路111は制御手段の一例を構成している。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に使用するステッピングモータ105の構成図で、アナログ電子時計で一般に用いられている時計用ステッピングモータの例を示している。
図2において、ステッピングモータ105は、ロータ収容用貫通孔203を有するステータ201、ロータ収容用貫通孔203に回転可能に配設されたロータ202、ステータ201と接合された磁心208、磁心208に巻回された駆動コイル209を備えている。ステッピングモータ105をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジ又はカシメ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合される。駆動コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0017】
ロータ202は、2極(S極及びN極)に着磁されている。磁性材料によって形成されたステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施の形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206、207が設けられている。各外ノッチ206、207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210、211が設けられている。
【0018】
可飽和部210、211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施の形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204、205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0019】
切り欠き部204、205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。駆動コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(ステータ201に流れる磁束の方向Xと角度θ0をなす位置)に安定して停止している。
【0020】
いま、駆動パルス選択回路104から一方の極性の矩形波の駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は図2の実線矢印方向に180度回転し、角度θ1位置で安定的に停止する。
【0021】
次に、駆動パルス選択回路104から、逆極性の矩形波の駆動パルスを駆動コイル209の端子OUT1、OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、図2の反矢印方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向に180度回転し、角度θ0位置で安定的に停止する。
【0022】
以後、このように、駆動コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ実線矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。尚、本実施の形態では、駆動パルスとして、後述するように、負荷を正常に動作可能な通常時の駆動に使用する主駆動パルスP1、全主駆動パルスP1よりも駆動エネルギが大きく、負荷が大きくモータ105を回転できない場合の駆動に使用する補正駆動パルスP2、直流磁界が存在するときにステッピングモータ105を確実に回転するために全主駆動パルスP1よりも駆動エネルギの大きい固定駆動パルスPwを用いている。各主駆動パルスP1は相互にエネルギの異なる駆動パルスである。固定駆動パルスPwは、主駆動パルスP1の中のいずれか、あるいは、補正駆動パルスP2を兼用してもよい。
【0023】
図3は、駆動パルス選択回路104、回転検出回路110及び直流磁界検出回路111の一部を詳細に示す回路図である。
図3において、NチャネルMOSトランジスタQ1、Q2、PチャネルMOSトランジスタQ3、Q4及びスイッチ制御回路303は駆動パルス選択回路104の構成要素である。トランジスタQ1及びトランジスタQ3のドレイン接続点と、トランジスタQ2及びトランジスタQ4のドレイン接続点との間には、ステッピングモータ105の駆動コイル209が接続されている。
【0024】
PチャネルMOSトランジスタQ3〜Q6、トランジスタQ5に直列接続された検出素子の一例である検出用抵抗301、トランジスタQ6に直列接続された検出素子の一例である検出用抵抗302、スイッチ制御回路303及びコンパレータ304は回転検出回路110の構成要素である。検出用抵抗301、302は回転検出及び磁気検出に兼用する検出素子である。
【0025】
各トランジスタQ1〜Q6のゲートはスイッチ制御回路103に接続されている。検出用抵抗301と駆動コイル209の接続点OUT2、及び、検出用抵抗302と駆動コイル209の接続点OUT1は、コンパレータ304の入力部に接続されている。また、コンパレータ304の入力部には、ステッピングモータ105の回転検出時には所定の基準しきい電圧Vcomp_Kが入力され、外部直流磁界検出時には所定の第1基準しきい電圧Vcomp_J1、第2基準しきい電圧Vcomp_J2(Vcomp_J1>Vcomp_J2)が入力される。コンパレータ304の代わりにインバータを使用することも可能である。
【0026】
制御回路103は、直流磁界検出回路111が検出した信号が基準しきい電圧Vcomp_J1を超える場合には強磁界(第1レベルを超える磁界)が存在し、直流磁界検出回路111が検出した信号が基準しきい電圧Vcomp_J1以下でVcomp_J2を超える場合には弱磁界(第2レベルを超える磁界)が存在し、直流磁界検出回路111が検出した信号が基準しきい電圧Vcomp_J2以下の場合には磁界が無いと判定するように、各基準しきい電圧はVcompは設定されている。
【0027】
尚、本実施の形態では、外部直流磁界検出時には複数の基準しきい電圧Vcomp_J1、Vcomp_J2を用いているが、1種類の基準しきい電圧を用いてもよい。また、基準しきい電圧Vcomp_Kを基準しきい電圧Vcomp_J1、Vcomp_J2のいずれかと同一値に設定してもよい。また、磁界検出用の基準しきい電圧Vcomp_J1、comp_J2は、回転検出用の基準しきい電圧Vcomp_Kと同じでも異なってもよいが、回転検出用の基準しきい電圧Vcomp_Kよりも低くするのが好ましい。
【0028】
トランジスタQ1、Q2、Q5、Q6、検出用抵抗301、302及び制御回路303は直流磁界検出回路111の構成要素である。
制御回路103は、各主駆動パルスP1でステッピングモータ105を駆動する前の磁界検出期間において、トランジスタQ1、Q6をオンにして検出用抵抗302(換言すれば端子OUT1)に生じる電圧の検出と、トランジスタQ2、Q5をオンにして検出用抵抗301(換言すれば端子OUT2)に生じる電圧の検出とを交互に複数回行い、外部直流磁界が存在するか否かを判定する。このとき、トランジスタQ1とQ2、トランジスタQ2とQ5を交互にオンにする期間はステッピングモータ105が回転しない小さなエネルギとなるようにする。
【0029】
詳細は後述するが、無磁界の場合は端子OUT1、OUT2に生じる電圧はほぼ同じ値を示すが、外部直流磁界が存在する場合、検出される誘起信号VRsは直流磁界の方向に応じて、駆動(トランジスタQ1とQ6、又はQ2とQ5がオン)による誘起電圧と外部直流磁界による誘起電圧の和又は差となる。磁界が存在する場合には、どちらか一方の端子OUT1又はOUT2に(コイル誘起電圧+外部直流磁界による誘起電圧)となる高い誘起信号VRS_Jが発生し、他方の端子OUT2又はOUT1に低い誘起信号VRs_Kが生じる。コンパレータ304によって基準しきい電圧Vcomp_J1、J2と比較することによって直流磁界が存在するか否かを判断し、磁界が存在するか否かに応じて、所定の固定駆動パルスPw、複数の主駆動パルスP1の中のいずれかの主駆動パルスによって駆動するようにパルス制御する。
【0030】
前記磁界検出期間に続く回転駆動期間においてステッピングモータ105を回転駆動する場合、スイッチ制御回路303は、制御回路103から供給される駆動パルスに対応する回転駆動用制御パルスViに応答して、トランジスタQ2、Q3を同時にオン状態とする、あるいは、トランジスタQ1、Q4を同時にオン状態とすることによって駆動コイル209に対して正方向あるいは逆方向に電流を供給し、これによってステッピングモータ105を回転駆動する。
【0031】
前記回転駆動期間に続く回転検出期間において、回転駆動後のステッピングモータ105の自由振動によって生じる誘起信号VRs_Kを検出する場合、スイッチ制御回路303は制御回路103からの回転検出用制御パルスViに応答して、トランジスタQ3、Q6をオンにした状態でトランジスタQ4を所定周期でオン/オフ制御する、あるいは、トランジスタQ4、Q5をオンにした状態でトランジスタQ3を所定周期でオン/オフ制御することにより、コンパレータ304で誘起信号VRsを検出する。
【0032】
コンパレータ304は、ステッピングモータ105(換言すれば駆動コイル209)に誘起する誘起信号VRs_Kのうち、基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出すると、基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出したことを表す検出信号を出力する。制御回路103は、前記検出信号に基づいてステッピングモータ105が回転したと判定すると、主駆動パルスP1のランクダウン制御等のパルス制御を行って、次の駆動制御を行う。
磁界検出期間、回転駆動期間、回転検出期間の順で繰り返しながら、ステッピングモータ105の回転駆動制御を行う。
【0033】
図4は、本実施の形態の動作を説明するタイミング図で、同図(a)は外部直流磁界が存在しない場合、同図(b)は強い外部直流磁界(直流強磁界)が存在する場合、同図(c)は弱い外部直流磁界(直流弱磁界)が存在する場合のタイミング図である。
図4(a)に示すように外部直流磁界が存在しない場合、磁界検出期間において直流磁界検出回路111は、端子OUT1、OUT2のいずれからも基準しきい電圧Vcomp_J1、Vcomp_J2を超える誘起信号VRs_Jを検出できない。
【0034】
この場合、制御回路103は、磁界検出期間に続く回転駆動期間において、通常駆動動作時に用いる複数の主駆動パルスP1中の前回駆動した主駆動パルスP1nによってステッピングモータ105を回転駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。駆動パルス選択回路104は制御回路103の制御に応答して、端子OUT1から駆動パルスP1nを出力してステッピングモータ105を駆動する。
回転駆動期間に続く回転検出期間において、回転検出回路110が基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出すると、制御回路103はステッピングモータ105が回転したと判定して、主駆動パルスP1の維持、ランクダウン等のパルス制御を行う。
【0035】
次のサイクルでは、磁界検出期間において磁界検出し、これに続く回転駆動期間においては端子OUT2から逆極性の主駆動パルスP1nを出力してステッピングモータを駆動し、これに続く回転検出期間においてステッピングモータ105が回転したか否かを判定して、パルス制御動作を行う。
以後、直流磁界が存在しない場合には前記動作が繰り返され、ステッピングモータ105は、端子OUT1、OUT2から供給される交互に極性の異なる主駆動パルスP1によって駆動される。尚、負荷変動等によってステッピングモータ105が回転しない事態が発生した場合、制御回路103は各主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2によって強制的に回転駆動する。
【0036】
図4(b)に示すように直流強磁界が存在する場合、磁界検出期間において直流磁界検出回路111は、端子OUT1、OUT2のいずれかから基準しきい電圧Vcomp_J1を超える誘起信号VRs_Jを検出する。
この場合、制御回路103は、磁界検出期間に続く回転駆動期間において、主駆動パルスP1に代えて、全主駆動パルスP1よりもエネルギが大きく補正駆動パルスP2よりもエネルギが小さい固定駆動パルスPwによってステッピングモータ105を回転駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。駆動パルス選択回路104は制御回路103の制御に応答して、端子OUT1から固定駆動パルスPwを出力してステッピングモータ105を駆動する。
【0037】
固定駆動パルスPwは強磁界中でも確実にステッピングモータ105を回転駆動可能な所定エネルギの駆動パルスに設定されているため、直流強磁界が存在することによって実質的に負荷が増えた状態になっても、確実にステッピングモータ105を回転駆動することができる。また、固定駆動パルスPwによって回転駆動した場合、確実にステッピングモータ105を回転駆動できるため回転検出は行わない。
以後、直流強磁界が存在する場合には前記動作が繰り返され、ステッピングモータ105は、端子OUT1、OUT2から供給される交互に極性の異なる固定駆動パルスPwによって駆動される。
【0038】
図4(c)に示すように直流弱磁界が存在する場合、磁界検出期間において直流磁界検出回路111は、端子OUT1、OUT2のいずれかから、基準しきい電圧Vcomp_J1以下で基準しきい電圧Vcomp_J2を超える誘起信号VRs_Jを検出する。
この場合、制御回路103は、磁界検出期間に続く回転駆動期間において、主駆動パルスP1に代えて、全主駆動パルスP1中の最もエネルギが大きい主駆動パルスP1maxによってステッピングモータ105を回転駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。駆動パルス選択回路104は制御回路103の制御に応答して、端子OUT1から最大エネルギの主駆動パルスP1maxを出力してステッピングモータ105を駆動する。
【0039】
回転駆動期間に続く回転検出期間において、回転検出回路110が基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出すると、制御回路103はステッピングモータ105が回転したと判定して、主駆動パルスP1の維持、ランクダウン等のパルス制御を行う。
次のサイクルでは、磁界検出期間において磁界検出し、これに続く回転駆動期間においては端子OUT2から逆極性の主駆動パルスP1nを出力してステッピングモータを駆動し、これに続く回転検出期間においてステッピングモータ105が回転したか否かを判定して、パルス制御動作を行う。
【0040】
以後、直流弱磁界が存在する場合には前記動作が繰り返され、ステッピングモータ105は、端子OUT1、OUT2から供給される交互に極性の異なる主駆動パルスP1によって駆動される。尚、負荷変動等によってステッピングモータ105が回転しない事態が発生した場合、制御回路103は主駆動パルスP1maxよりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2によって強制的に回転駆動する。
図5は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路のフローチャートである。
【0041】
以下、図1〜図5を用いて、本実施の形態の動作を詳細に説明する。
制御回路103が磁界検出期間において、トランジスタQ1及びQ6の組と、トランジスタQ2及びQ5の組とを所定周期で交互にオン/オフ制御し、直流磁界検出回路111が、そのときに端子OUT1、OUT2に発生する誘起信号VRs_Jを検出する。
制御回路103は、前記磁気検出期間において、誘起信号VRs_Jが基準しきい電圧Vcomp_J1と基準しきい電圧Vcomp_J2のいずれも超えなかったと判定した場合(ステップS501、S502)、即ち、外部直流磁界が存在しないと判定した場合、主駆動パルスP1nを最低エネルギの主駆動パルスP10に設定して(ステップS503、S504)、当該主駆動パルスP10によってステッピングモータ105を駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する(ステップS505)。駆動パルス選択回路104は主駆動パルスP10によってステッピングモータ105を回転駆動する。
【0042】
制御回路103は、前記回転駆動期間に続く回転検出期間において、回転検出回路110が基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出しなかったと判定した場合(ステップS506)、即ち、ステッピングモータ105が回転しなかったと判定した場合、補正駆動パルスP2によって駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する(ステップS507)。駆動パルス選択回路104は補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を回転駆動し、ステッピングモータ105が強制的に回転するようにパルス制御が行われる。
【0043】
次に、制御回路103は、主駆動パルスP1のランクnが最大値m(エネルギ最大の主駆動パルスP1max)でない場合には(ステップS508)、主駆動パルスP1のランクを1ランクランクアップするようにパルス制御した後、処理ステップS504に戻る(ステップS509)。
制御回路103は、処理ステップS508において、主駆動パルスP1のランクnが最大値mと判定した場合には、主駆動パルスP1のランクは変更しないようにパルス制御した後、処理ステップS504に戻る(ステップS514)。
【0044】
制御回路103は、処理ステップS506において回転検出回路110が基準しきい電圧Vcomp_Kを超える誘起信号VRs_Kを検出したと判定した場合、即ち、ステッピングモータ105が回転したと判定した場合、主駆動パルスP1のランクが最低エネルギ(n=0)のときは(ステップS512)、主駆動パルスP1のランクは変更しないようにパルス制御した後、処理ステップS504に戻る(ステップS514)。
制御回路103は、処理ステップS512において主駆動パルスP1のランクが最低エネルギ(n=0)ではないと判定したときは、主駆動パルスP1のランクを1ランク下げるようにパルス制御した後、処理ステップS504に戻る(ステップS513)。
【0045】
制御回路103は、前記磁気検出期間において誘起信号VRs_Jが基準しきい電圧Vcomp_J1以下であるが基準しきい電圧Vcomp_J2を超えたと判定した場合(ステップS501、S502)、即ち、直流弱磁界が存在すると判定した場合、主駆動パルスP1を最大エネルギの主駆動パルスP1maxに設定して(ステップS511)、処理ステップS504に移行し、主駆動パルスP1maxによって駆動する。これにより、直流弱磁界が存在する場合でも、ステッピングモータ105を回転させることが可能になる。
【0046】
制御回路103は、前記磁気検出期間において誘起信号VRs_Jが基準しきい電圧Vcomp_J1を超えたと判定した場合(ステップS501)、即ち、直流強磁界が存在すると判定した場合、主駆動パルスP1を固定駆動パルスPwに設定して駆動し(ステップS510)、処理ステップS501に戻る。これにより、直流強磁界の影響で実質的に負荷が大きく増加した場合でもステッピングモータ105を回転させることが可能になる。
【0047】
以上述べたように本実施の形態によれば、複数の駆動パルスの中から選択した駆動パルスによってステッピングモータ105を駆動する制御手段を備えたステッピングモータ制御回路において、制御手段は、駆動パルスによって駆動する毎に、ステッピングモータ105の駆動前に磁界を検出する直流磁界検出回路111を備え、直流磁界検出回路111が第1基準しきい電圧Vcomp_J1を超える磁界を検出したとき、通常駆動時用の主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい固定駆動パルスPwによってステッピングモータ105を駆動するようにしている。
【0048】
したがって、外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるステッピングモータ制御回路を提供することが可能になる。また、外部磁界の影響を受けることなく、ステッピングモータを正確に駆動できるようにして、正確な運針動作を行うアナログ電子時計を提供することが可能になる。
また、直流磁界のレベルに応じて、所定エネルギの固定駆動パルスPwによって駆動したり、エネルギ最大の主駆動パルスP1maxによって駆動することにより、安定した回転制御を行うことができる。
【0049】
また、複雑な検出パルス発生回路や、特別な磁場検出素子を用いることなく構成することが可能になる。
また、磁界中では、回転検出動作を禁止することができ誤判定を防ぐことが可能となる。
また、電子時計の場合、磁界に強い固定駆動パルスに切り替えられ、確実な運針を提供することが可能になる。
【0050】
尚、前記実施の形態では、各主駆動パルスP1のエネルギを変えるために、パルス幅が異なるようにしたが、パルス電圧を変える等によっても、駆動エネルギを変えることが可能である。
また、時刻針以外にも、カレンダ等を駆動するためのステッピングモータに適用可能である。
また、ステッピングモータの応用例として単一モータの電子時計の例で説明したが、クロノグラフ時計等のような複数モータの電子時計や、モータを使用する各種電子機器にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るステッピングモータ制御回路は、ステッピングモータを使用する各種電子機器に適用可能である。
また、本発明に係る電子時計は、カレンダ機能付きアナログ電子腕時計、カレンダ機能付きアナログ電子置時計等の各種カレンダ機能付きアナログ電子時計、クロノグラフ時計をはじめ、各種のアナログ電子時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
101・・・発振回路
102・・・分周回路
103・・・制御回路
104・・・駆動パルス選択回路
105・・・ステッピングモータ
106・・・アナログ表示部
107・・・時針
108・・・分針
109・・・秒針
110・・・回転検出回路
111・・・直流磁界検出回路
201・・・ステータ
202・・・ロータ
203・・・ロータ収容用貫通孔
204、205・・・切り欠き部(内ノッチ)
206、207・・・切り欠き部(外ノッチ)
208・・・磁心
209・・・駆動コイル
210、211・・・可飽和部
OUT1・・・第1端子
OUT2・・・第2端子
Q1〜Q6・・・トランジスタ
301、302・・・検出用抵抗
303・・・スイッチ制御回路
304・・・コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動パルスの中から選択した駆動パルスによってステッピングモータを駆動する制御手段を備えたステッピングモータ制御回路において、
前記制御手段は、前記ステッピングモータの駆動前に磁界を検出する磁界検出手段を備え、前記磁界検出手段が第1レベルを超える磁界を検出したとき、前記通常駆動時用の主駆動パルスよりもエネルギの大きい固定駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動することを特徴とするステッピングモータ制御回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記磁界検出手段が前記第1レベルより小さい第2レベル以下の磁界を検出したとき、複数の主駆動パルスの中から負荷に応じた主駆動パルスを選択して駆動することを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項3】
前記制御手段は、前記磁界検出手段が前記第1レベル以下で前記第1レベルより小さい第2レベルを超える磁界を検出したとき、複数の主駆動パルスの中の最大エネルギの主駆動パルスによって前記ステッピングモータを駆動することを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項4】
前記制御手段は通常駆動時に相互に極性の異なる主駆動パルスによって交互に前記ステッピングモータを駆動すると共に、前記磁界検出手段は磁界検出時に前記ステッピングモータの駆動コイルに流れる電流を検出する検出素子を有して成り、
前記磁界検出手段は、前記検出素子に生じる信号に基づいて、前記第1レベル、前記第1レベルより小さい第2レベルを超える磁界か否かを検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ステッピングモータが回転したか否かを検出する回転検出手段を有し、前記回転検出手段は前記検出素子に生じる信号に基づいて前記ステッピングモータが回転したか否かを検出することを特徴とする請求項4記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項6】
時刻針を回転駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、
前記ステッピングモータ制御回路として、請求項1乃至5のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50164(P2011−50164A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195966(P2009−195966)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】