説明

ステントデリバリーシステム

【課題】ステントデリバリーシステムにおいて外管の途中に形成された開口部を確実且つ容易に閉塞する。
【解決手段】ステントデリバリーシステム10を構成する外側チューブ体14には、ガイドワイヤ20を外部に導出するためのガイドワイヤ導出孔44が形成され、該ガイドワイヤ導出孔44には、封止ロッド52のテーパ部60が挿入され該ガイドワイヤ導出孔44を閉塞している。また、封止ロッド52の先端には、内側チューブ体12の内部に挿通されるスタイレット部56が設けられ、前記内側チューブ体12を保持する。そして、ステント16の留置作業を行う際、封止ロッド52をガイドワイヤ導出孔44から取り外して該ガイドワイヤ導出孔44を開放状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の生体管腔内にステントを送達、留置するためのステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部や閉塞部の改善のため、金属線材等によって多数の側壁開口を有する円筒形状に形成され、生体管腔内で拡張可能なステントが用いられることがある。
【0003】
例えば、自己拡張機能を備えたステント(自己拡張型ステント)は、内管の周囲に外管を配置したデリバリー用のカテーテルの先端部において、内管と外管の間の間隙に圧縮・収納された状態で生体管腔内へと送達され、外管が基端側に後退されることで放出されて拡張し、所望の管腔内に留置することができる。
【0004】
この種のステントとカテーテルとを備えるステントデリバリーシステムとしては、内管の周囲に外管を配置すると共に、その先端部近傍の内管と外管の間の間隙にステントを収納配置したステントデリバリーシステムが開示されている。このシステムでは、基端の操作部を操作することで外管を引き寄せて、先端側のステントを生体内で円滑に放出・拡張させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−517735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1記載のステントデリバリーシステムでは、外管の途中に開口部が形成されると共に、内管に形成されるガイドワイヤルーメンの出口が前記開口部に対応して配置され、ガイドワイヤルーメンに挿通されたガイドワイヤを外管の途中の開口部から外部へと導出可能で、カテーテルの迅速な交換が可能となる迅速交換型、いわゆるラピッドエクスチェンジ型と呼ばれる方式を採用している。
【0007】
このため、このシステムの準備時において、カテーテル内に生理食塩水等の液体をフラッシュする際には、該液体が外管の途中に形成された開口部から外部へと漏れないように、術者が前記開口部を手で塞ぎながら作業を行う必要があり、その手技が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、外管の途中に形成された開口部を確実且つ容易に閉塞することができるステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、ガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤルーメンが形成された内管と、生体管腔内挿入時には中心軸方向に圧縮されて前記内管の先端側外面に配置され、生体管腔内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、前記内管の外面側に配置されることで前記ステントを内腔に収納可能であると共に、前記内管に対して基端方向に移動することにより、内部に収納された前記ステントを放出可能な外管とを備えるステントデリバリーシステムであって、
前記外管は、前記ガイドワイヤルーメンの出口に連通し、前記ガイドワイヤを前記外管の外側へと導出可能な開口部を備え、前記ステントデリバリーシステムには、さらに前記内管のガイドワイヤルーメンに挿通され該内管を保持する保持部と、前記保持部に接続され前記開口部を閉塞する閉塞部とを有した封止部材が着脱自在に設けられることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、生体内にステントを留置するためのステントデリバリーシステムにおいて、前記ステントを内腔に収容可能な外管には、内管のガイドワイヤルーメンの出口と連通し、ガイドワイヤを前記外管の外側へと導出可能な開口部が形成され、前記ステントデリバリーシステムには、前記内管のガイドワイヤルーメンに挿通される保持部と、前記開口部を閉塞する閉塞部とを備えた封止部材が着脱自在に装着される。
【0011】
従って、ステントデリバリーシステムに対して液体を注入してフラッシュを行う場合、開口部を封止部材の閉塞部で閉塞しておくことによって外管及び内管の内部に供給された前記液体が前記開口部から外部へ漏出してしまうことが確実に防止される。一方、ガイドワイヤを開口部から導出させる場合には、封止部材を前記開口部から離脱させて前記開口部を開放状態とすることによって、ガイドワイヤを好適に外部へと導出させることが可能となる。その結果、封止部材によって開口部を確実且つ容易に開閉させることができるため、例えば、術者が前記開口部を手で塞ぐといった煩雑な作業を行うことなくフラッシュを行うことが可能となり、作業性の向上を図ることができる。
【0012】
また、内管内に封止部材の保持部を挿通して該内管を保持することにより、ガイドワイヤを挿通する前の該内管の剛性を向上させることができ、それに伴って、前記内管を折れ曲がり等から保護することができる。
【0013】
さらに、閉塞部を、保持部に対して拡径して形成するとよい。
【0014】
さらにまた、閉塞部を、保持部から離間する方向に向かって徐々に拡径するテーパ状に形成するとよい。
【0015】
またさらに、封止部材を、外管に対してホルダで固定するとよい。
【0016】
また、保持部を、内管の内周径より小さな外周径で形成し、前記保持部と前記内管との間に間隙を設けるとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
すなわち、ステントデリバリーシステムに、内管のガイドワイヤルーメンに挿通される保持部と、開口部を閉塞する閉塞部とを備えた封止部材が着脱自在に設けられていることにより、例えば、ステントデリバリーシステムに対して液体を注入してフラッシュを行う場合、前記開口部を閉塞部で閉塞しておくことで外管及び内管の内部に供給された前記液体が前記開口部から外部へ漏出するのを確実且つ容易に防止できるため、例えば、術者が前記開口部を手で塞ぐといった煩雑な作業を行うことなくフラッシュを行うことが可能となり、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るステントデリバリーシステムの全体構成図である。
【図2】図1のステントデリバリーシステムにおける内側チューブ体及び外側チューブ体を示す一部省略断面図である。
【図3】図2の内側チューブ体及び外側チューブ体の先端近傍を示す拡大断面図である。
【図4】図2に示す封止ロッドの一部省略正面図である。
【図5】図1に示すステントデリバリーシステムを構成する操作部の外観斜視図である。
【図6】図5に示す操作部の分解斜視図である。
【図7】図5及び図6に示す操作部の内部側面図である。
【図8】外側チューブ体の先端からステントが途中まで放出された状態、又は、途中まで放出されたステントを前記外側チューブ体の内部に収容する場合を示す拡大断面図である。
【図9】第1変形例に係る封止ロッドの適用されたステントデリバリーシステムの拡大断面図である。
【図10】第2変形例に係る封止ロッドの適用されたステントデリバリーシステムの拡大断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るステントデリバリーシステムのガイドワイヤ導出孔近傍を示す拡大断面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るステントデリバリーシステムについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0021】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係るステントデリバリーシステムを示す。
【0022】
このステントデリバリーシステム10は、図1に示されるように、管状に形成された内側チューブ体(内管)12と、該内側チューブ体12の外周側に設けられる外側チューブ体(外管)14と、前記内側チューブ体12と外側チューブ体14との間に収納された拡張可能なステント16と、前記外側チューブ体14を前記内側チューブ体12に対して移動させるための操作部18とを含む。
【0023】
なお、図1において、内側チューブ体12及び外側チューブ体14の左側を「基端(後端)」側(矢印A方向)、前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の右側を「先端」側(矢印B方向)と呼び、他の各図についても同様とする。
【0024】
内側チューブ体12は、図1〜図3に示されるように、ガイドワイヤ20(図1参照)を挿通するためのガイドワイヤルーメン22が形成された第1先端チューブ24と、前記第1先端チューブ24の基端側(矢印A方向)に連結部材26を介して連結された第1基端チューブ28と、前記第1基端チューブ28の基端に接続されたコネクタ30とを有する。この内側チューブ体12は、管状体からなり、第1先端チューブ24及び第1基端チューブ28の先端及び基端がそれぞれ開口すると共に、前記第1先端チューブ24の先端が、外側チューブ体14の先端から突出するように配置される。なお、上述したガイドワイヤ20は、例えば、ステントデリバリーシステム10を生体管腔内の病変部に導くために用いられる。
【0025】
そして、内側チューブ体12は、外側チューブ体14の内部において第1先端チューブ24の基端と第1基端チューブ28の先端とが連結部材26を介して連結されると共に、前記第1基端チューブ28は、その先端から基端まで貫通するルーメン32を有し、該ルーメン32にはコネクタ30を通じて生理食塩水等の液体が注入される。なお、第1先端チューブ24は可撓性の高い樹脂製材料で、第1基端チューブ28は強度が高い金属製材料で、それぞれ構成されているのが好ましい。
【0026】
第1先端チューブ24には、外側チューブ体14の外部に途中まで放出されたステント16を再収納する際に機能するステント保持機構34が設けられる。
【0027】
このステント保持機構34は、内側チューブ体12の外周面に設けられ、外側チューブ体14の内部にステント16が収納された際に、該ステント16の基端側(矢印A方向)となる位置に設けられるステント係止部36と、該ステント係止部36に対して第1先端チューブ24の先端側(矢印B方向)に設けられ、後述するステント16の縮径部38が係合されるステント係合部40とを備える。ステント係止部36とステント係合部40とは、それぞれ環状に形成され、それぞれ外側チューブ体14側となる半径外方向に突出すると共に、第1先端チューブ24の軸方向(矢印A、B方向)に沿って互いに所定間隔離間して配置される。なお、ステント係合部40の高さは、ステント係止部36の高さに対して低く形成される。
【0028】
これにより、ステント16は、外側チューブ体14の内部に収納された状態で、その基端がステント係止部36に当接し、且つ、縮径部38が前記ステント係止部36とステント係合部40との間に保持されることによって第2先端チューブ46の先端から外部に露呈することがない位置で保持される。なお、第2先端チューブ46の先端からステント16が放出される際、その基端がステント係止部36に当接することにより、ステント16は所定位置に位置決めされた状態で拡張する。また、途中まで放出されたステント16が外側チューブ体14の内部へと再収納される際、その縮径部38がステント係合部40に当接することにより、前記ステント16は所定位置に位置決めされた状態で保持される。
【0029】
また、第1先端チューブ24の先端には、半径外方向に膨出し、外側チューブ体14の先端方向への移動を規制するストッパ部42が形成される。これにより、外側チューブ体14が内側チューブ体12の先端に対して軸方向(矢印B方向)に突出してしまうことが阻止される。
【0030】
一方、第1先端チューブ24の基端は、該第1先端チューブ24の半径外方向に向かって緩やかに湾曲しており、外側チューブ体14の後述するガイドワイヤ導出孔(開口部)44と連通可能に設けられる。
【0031】
コネクタ30は、図5〜図7に示されるように、円筒状に形成され、内側チューブ体12の第1基端チューブ28と接続されて連通し、図示しない液体注入具(例えば、シリンジ)が接続可能に形成される。そして、コネクタ30に液体注入具が接続された状態で、第1基端チューブ28のルーメン32を通じて液体の注入がなされ、内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端まで前記液体を流通させることにより、その内部をフラッシュすることができる。
【0032】
外側チューブ体14は、管状体からなり、内部に内側チューブ体12の第1先端チューブ24が配置される第2先端チューブ46と、該第2先端チューブ46の基端側(矢印A方向)に連結され内部に第1基端チューブ28が配置される第2基端チューブ48とを有する。なお、第2先端チューブ46の先端は、生体管腔内の病変部にステント16を留置する際の放出口として機能すると共に、途中まで放出された前記ステント16を回収する際の収納口としても機能する。
【0033】
また、第2先端チューブ46の基端には、半径外方向に向かって斜めに突出して開口したガイドワイヤ導出孔44が形成され、内部に設けられた第1先端チューブ24のガイドワイヤルーメン22の開口と連通可能に設けられる。このガイドワイヤ導出孔44の開口50を通じて内側チューブ体12のガイドワイヤルーメン22にガイドワイヤ20を挿通させることが可能である。詳細には、ガイドワイヤ導出孔44は、外側チューブ体14の基端側(矢印A方向)に向かって斜め方向に突出すると共に、その内壁面が開口50に向かって徐々に拡径したテーパ状に形成される。
【0034】
そして、ガイドワイヤ導出孔44には、該ガイドワイヤ導出孔44を閉塞するための封止ロッド(封止部材)52が装着される。この封止ロッド52は、図1、図2及び図4に示されるように、第1先端チューブ24及び第2先端チューブ46より硬度の大きい材料、例えば、ステンレス等の金属製材料から形成されており、軸状に形成された本体部54と、該本体部54の先端に接合され細軸状に形成されたスタイレット部(保持部)56とからなる。
【0035】
本体部54は、例えば、略一定径からなり術者が把持可能な把持部58と、該把持部58に先端に形成され、先端に向かって徐々に縮径したテーパ部(閉塞部)60とを備え、前記テーパ部60の先端にスタイレット部56が接合される。そして、テーパ部60が、ガイドワイヤ導出孔44に挿入され、該ガイドワイヤ導出孔44の内壁面に当接することによって開口50が閉塞され、把持部58が外側チューブ体14の軸方向に対して斜め方向に突出した状態となる。
【0036】
スタイレット部56は、例えば、軸方向に沿って略同一径且つ所定長さで形成され、本体部54がガイドワイヤ導出孔44に装着された際、内側チューブ体12のガイドワイヤルーメン22に挿通され、その先端が前記第1先端チューブ24の先端から突出する。また、図2に示されるように、スタイレット部56の外周径Cは、ガイドワイヤルーメン22の内周径Dより小さく設定され、該スタイレット部56とガイドワイヤルーメン22との間には径方向に間隙62が形成される。
【0037】
これにより、フラッシュ時において内側チューブ体12内に注入された液体が、ガイドワイヤルーメン22内の間隙62を通じて前記内側チューブ体12の先端側(矢印B方向)へと流通する。
【0038】
また、可撓性を有した内側チューブ体12が、その内部に挿通されたスタイレット部56で保持されることによって、例えば、ステントデリバリーシステム10の工場出荷時や輸送時等において、内側チューブ体12の折れ曲がり等を防止して保護することが可能となる。
【0039】
さらに、上述した封止ロッド52は、例えば、ステントデリバリーシステム10の工場出荷時や輸送時、フラッシュ時にはステントデリバリーシステム10に装着されてガイドワイヤ導出孔44の閉塞且つ内側チューブ体12の保護を行い、一方、ステント16の留置作業を行う場合には前記ステントデリバリーシステム10から取り外すことが可能な着脱自在に設けられる。
【0040】
なお、封止ロッド52を構成する本体部54とスタイレット部56は、同一の材質から一体に形成してもよいし、別の材質で別体として形成するようにしてもよい。
【0041】
また、第2先端チューブ46の先端部には、その外周面に造影マーカー64が設けられる。この造影マーカー64は、例えば、造影材料から環状に形成される。
【0042】
ステント16は、図3に示されるように、多数の開口を有したメッシュ状で略円筒形状に形成される。このステント16は、生体管腔内への挿入時には外側チューブ体14の第2先端チューブ46の内部において中心軸方向となる半径内方向に圧縮されて配置され、前記外側チューブ体14の先端から前記生体管腔内の病変部に放出されることにより、半径外方向に拡張して圧縮前の形状へと復元可能な自己拡張型ステントである。なお、ステント16を構成する材料としては、例えば、Ni−Ti合金等の超弾性合金が好適である。
【0043】
また、ステント16の先端及び基端には、例えば、造影材料から環状に形成された造影マーカー66a、66bが設けられると共に、前記基端には、半径内方向に縮径した縮径部38が形成される。この縮径部38は、内側チューブ体12の外周面に摺接することがないように形成される。
【0044】
操作部18は、図1、図5〜図7に示されるように、ハウジング68と、該ハウジング68の内部に収納され外側チューブ体14に接続されるラック部材70と、前記ラック部材70に噛合される第1歯車100を有し該ラック部材70を直線変位させる回転ローラ72とを含む。
【0045】
ハウジング68は、その中央部が丸みを帯びた形状で形成され、厚さ方向の中央から2分割された第1ハウジング74及び第2ハウジング76から構成される。このハウジング68には、第1及び第2ハウジング74、76の内部において、略中央部に回転ローラ72を収納可能なローラ収納部78を有し、該回転ローラ72の一部が前記ローラ収納部78に形成されたローラ孔79を介して外部に露呈する。
【0046】
また、回転ローラ72は、第1及び第2ハウジング74、76の内壁面に形成された一対の軸受80によって回転自在に支持される。
【0047】
また、第2ハウジング76の内部には、ラック部材70が軸方向(矢印A、B方向)に移動可能に収納され保持される第1及び第2収納溝82、84がそれぞれ形成され、前記第1収納溝82が前記第2ハウジング76の基端側(矢印A方向)、前記第2収納溝84が前記第2ハウジング76の先端側(矢印B方向)に設けられる。この第1収納溝82と第2収納溝84との間にはローラ収納部78が配置される。
【0048】
そして、第1ハウジング74と第2ハウジング76とを組み合わせることにより、第1及び第2収納溝82、84によってラック部材70が先端及び基端側へと直線的に移動可能な状態で保持される。
【0049】
また、第1収納溝82の基端側(矢印A方向)には、コネクタ30の収納されるコネクタ収納部86が形成され、前記コネクタ30が前記コネクタ収納部86に収納されることによってハウジング68に対して固定される。これにより、内側チューブ体12を構成する第1基端チューブ28の基端がコネクタ30を介して操作部18に固定される。
【0050】
なお、コネクタ収納部86は、ハウジング68の基端側(矢印A方向)に開口しており、前記ハウジング68の外部から液体注入具(図示せず)をコネクタ30に対して接続可能に形成される。
【0051】
一方、ハウジング68の先端には、外側チューブ体14の第2基端チューブ48を摺動可能に保持する先端ノズル88が装着され、該先端ノズル88の内部には、前記第2基端チューブ48が挿通される貫通孔(図示せず)が形成される。そして、先端ノズル88がハウジング68の先端に装着された状態で、キャップ90を前記先端に対して螺合することにより、前記先端ノズル88が固定される。すなわち、外側チューブ体14は、その内部に内側チューブ体12が挿通された状態で先端ノズル88を通じてハウジング68内に挿入され、ラック部材70と連結されている。
【0052】
ラック部材70は、直線状に形成され、且つ、略対称形状に形成された一組の第1及び第2ブロック体92、94からなり、外側チューブ体14における第2基端チューブ48の基端が、前記第1ブロック体92と前記第2ブロック体94との間に挟持されることによって固定される。
【0053】
そして、第1及び第2ブロック体92、94からなるラック部材70が、ハウジング68の内部において第1及び第2収納溝82、84に挿入されることによって該ハウジング68の先端及び基端側に向かって直線的に移動可能な状態で保持されることとなる。
【0054】
また、第1ブロック体92は、ハウジング68の内部において回転ローラ72に臨むように設けられ、該回転ローラ72に臨む側面には軸方向(矢印A、B方向)に沿って凹凸状に形成された複数の歯部96が設けられる。
【0055】
回転ローラ72の中心部には、互いに離間する方向に突出した一対の回転軸98が設けられ、第1及び第2ハウジング74、76の軸受80にそれぞれ挿入される。
【0056】
また、回転ローラ72の一側面には、回転軸98を中心として半径外方向に第1歯車100が設けられ、ラック部材70の歯部96に噛合される。そして、回転ローラ72が回転することによってラック部材70が第1及び第2収納溝82、84に沿って直線的に移動することとなる。また、回転ローラ72の外周部位は、その一部がハウジング68のローラ孔79を介して外部に露呈し、この露呈した部位を介して術者が前記回転ローラ72を回転させる。
【0057】
そして、上述した操作部18では、例えば、図7に示されるように、術者が回転ローラ72をハウジング68に対して所定方向(矢印E方向)に回転させることにより、前記ハウジング68の内部においてラック部材70が第1及び第2収納溝82、84に沿ってコネクタ30側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14がハウジング68の基端側へと移動(後進)する。これにより、ステント16が、外側チューブ体14の先端から放出される。
【0058】
一方、ステント16を途中まで放出した後、回転ローラ72を前記とは反対方向(矢印F方向)に回転させることにより、前記ラック部材70が第1及び第2収納溝82、84に沿ってコネクタ30から離間する方向(矢印B方向)へと移動し、それに伴って、前記外側チューブ体14が内側チューブ体12の先端側に移動(前進)してステント16が内部に再収納される。
【0059】
また、操作部18には、図7に示されるように、回転ローラ72の回転動作を規制することにより、ラック部材70の移動動作を規制可能なロック機構102が設けられる。
【0060】
このロック機構102は、第1ハウジング74の側面に開口した孔部104にスライド変位自在に設けられたスライド部材106と、該スライド部材106に臨むように回転ローラ72の一側面に形成されたピン溝108とからなる。スライド部材106は、孔部104を介して第1ハウジング74の先端及び基端側(矢印A、B方向)に直線変位自在に保持されている。そして、前記スライド部材106がハウジング68の基端側に位置した状態において、該第1ハウジング74の内部に突出した断面矩形状のピン110が回転ローラ72のピン溝108に挿入されることにより、該回転ローラ72の回転動作が規制される。
【0061】
そのため、ラック部材70が軸方向に移動することがなく、それに伴って、外側チューブ体14の前進又は後進動作が規制される。
【0062】
また、スライド部材106をハウジング68の先端側に移動させることにより、ピン110がピン溝108から回転ローラ72の半径外方向に離脱し、該ピン110による回転ローラ72の回転規制状態が解除されるため、前記回転ローラ72の回転作用下にラック部材70が軸方向(矢印A、B方向)に移動可能な状態となる。
【0063】
さらに、操作部18には、回転ローラ72を間欠的に回転動作させるための間欠機構112が設けられている。この間欠機構112は、回転ローラ72において第1歯車100とは反対側の側面に設けられた第2歯車114と、第2ハウジング76に保持され該第2歯車114の歯部に係合されるノッチ部材116とを含む。ノッチ部材116は、例えば、弾性変形可能な薄板状に形成され、第2ハウジング76に保持された部位から第2歯車114の中心に向かって延在し、該第2歯車114の歯部に係合される。
【0064】
そして、回転ローラ72が回転する際、第2歯車114に係合されたノッチ部材116が弾性変形し、歯部の凹部から隣接する凸部を乗り越え再び凹部へと係合されるため、回転動作を間欠的に行うことができる。さらに、ノッチ部材116と第2歯車114との係合時に発生する音から回転ローラ72の回転動作、回転角度を確認することもできる。
【0065】
本発明の第1の実施の形態に係るステントデリバリーシステム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、先ず、封止ロッド52をステントデリバリーシステム10に対して装着する場合について簡単に説明する。
【0066】
先ず、外側チューブ体14のガイドワイヤ導出孔44と内側チューブ体12における第1先端チューブ24の基端とが連通した状態となっていることを確認した後、前記ガイドワイヤ導出孔44に封止ロッド52のスタイレット部56をその先端側から挿入していく。このスタイレット部56を進行させていくと、内側チューブ体12のガイドワイヤルーメン22に沿って徐々に先端側(矢印B方向)へと挿通され、その先端が前記第1先端チューブ24の先端から突出する。一方、テーパ部60が、徐々にガイドワイヤ導出孔44に挿入され、その外周面が前記ガイドワイヤ導出孔44の内周面に当接することによって前記ガイドワイヤ導出孔44が閉塞状態となる。これにより、外側チューブ体14の内部と外部との連通が遮断される。
【0067】
次に、上述した封止ロッド52の装着されたステントデリバリーシステム10の動作並びに作用効果について説明する。なお、生体管腔内(例えば、血管内)にガイドワイヤ20が挿入され、その先端が前記生体管腔内の病変部に予め留置されている状態とする。
【0068】
このような準備状態において、図1に示されるステントデリバリーシステム10のフラッシュを行う。先ず、術者が操作部18の基端に設けられたコネクタ30に対して液体注入具(図示せず)を接続し、前記液体注入具からコネクタ30へと液体を注入することにより、該液体が内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端側(矢印B方向)へと流通する。この際、外側チューブ体14に形成されたガイドワイヤ導出孔44が、封止ロッド52のテーパ部60によって確実に閉塞されているため、液体が前記ガイドワイヤ導出孔44を通じて外部に漏出することが確実に阻止される。
【0069】
そして、先端まで到達した液体が内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端から吐出することにより、生体外において前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の内部のフラッシュが完了する。この場合、液体は、第1先端チューブ24と封止ロッド52のスタイレット部56との間の間隙62を通じて先端側へと流通するため、該スタイレット部56によって前記液体の流通が妨げられることがない。
【0070】
このステントデリバリーシステム10のフラッシュ作業が完了した後に、術者が封止ロッド52の把持部58を把持し、基端側(矢印A方向)へと引き抜くことによってテーパ部60がガイドワイヤ導出孔44から離脱すると共に、スタイレット部56が内側チューブ体12のガイドワイヤルーメン22に沿って基端側に移動し、前記ガイドワイヤ導出孔44を介して外部に取り出される。これにより、ステントデリバリーシステム10から封止ロッド52が取り外され、ガイドワイヤ導出孔44が開放された状態となる。
【0071】
次に、図1に示されるように、生体外に露呈しているガイドワイヤ20の基端を、内側チューブ体12の先端からガイドワイヤルーメン22へと挿通させ、前記ガイドワイヤ20に沿って前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14を生体管腔内の管腔へと進行させていく。このガイドワイヤ20の基端は、ガイドワイヤ導出孔44を通じて外側チューブ体14の外部へと導出される。
【0072】
そして、外側チューブ体14の先端が病変部に到達したことを造影マーカー64によって確認した後、操作部18のスライド部材106を先端側(矢印B方向)へと移動させ、ピン110を回転ローラ72のピン溝108から離脱させることにより、回転ローラ72の回転規制状態を解除させる。そして、前記回転ローラ72を所定方向(矢印E方向)へと回転させる。
【0073】
これにより、第1歯車100の回転に伴ってラック部材70がハウジング68内で基端側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14が前記操作部18の基端側へと徐々に移動する。その結果、図8に示されるように、外側チューブ体14に収容されたステント16が、先端部側から徐々に露出し始めるのと同時に半径外方向に拡張し始め、ステント16が、外側チューブ体14に対して完全に露出した状態となることにより、円筒状に拡張した状態で病変部に留置される。
【0074】
最後に、ステントデリバリーシステム10を構成する内側チューブ体12及び外側チューブ体14を基端側(矢印A方向)へと引くことにより、ステント16のみが病変部に留置された状態で生体外へと抜去される。
【0075】
以上のように、第1の実施の形態では、ステントデリバリーシステム10に封止ロッド52を着脱自在に設け、前記封止ロッド52のテーパ部60によって前記ガイドワイヤ導出孔44を閉塞することができる。その結果、ステントデリバリーシステム10に対して液体を注入してフラッシュを行う場合、ガイドワイヤ導出孔44を通じて前記液体が外部に漏出してしまうことが確実に防止される。そのため、封止ロッド52を装着してガイドワイヤ導出孔44を閉塞するという簡便な作業で、前記ガイドワイヤ導出孔44からの液体の漏れを確実且つ容易に防止でき、術者が手で前記ガイドワイヤ導出孔44を塞ぎながらフラッシュを行うという煩雑な作業が不要となるため、その作業性の向上を図ることが可能となる。
【0076】
また、ガイドワイヤ導出孔44を通じてガイドワイヤ20を外部へと導出させる際には、封止ロッド52を外側チューブ体14から取り外すことによって容易にガイドワイヤ導出孔44を開放してその作業を行うことが可能となる。
【0077】
さらに、封止ロッド52の先端には、内側チューブ体12の内部に挿通され保持可能なスタイレット部56を有しているため、ガイドワイヤ導出孔44をテーパ部60で閉塞するのと同時に、前記スタイレット部56によって内側チューブ体12の剛性を高め、折れ曲がり等を防止して保護することが可能となる。
【0078】
なお、封止ロッド52は、例えば、ステントデリバリーシステム10の工場出荷時等に予め装着しておき、フラッシュが終了した後に初めて取り外せばよい。
【0079】
なお、図9に示される封止ロッド120のように、軸方向に沿って略同一径の本体部を有さず、先端から基端側に向かって徐々に拡径するテーパ部122のみで本体部が構成されるようにしてもよいし、図10に示される封止ロッド130のように、前記本体部を設けることなくスタイレット部132の中央部にシール部材134を設け、前記シール部材134をガイドワイヤ導出孔44に挿入して閉塞するようにしてもよい。
【0080】
次に、第2の実施の形態に係るステントデリバリーシステム150を図11及び図12に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係るステントデリバリーシステム10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0081】
この第2の実施の形態に係るステントデリバリーシステム150では、図11及び図12に示されるように、封止ロッド152の本体部154が外側チューブ体14と略平行に設けられている点、前記封止ロッド152を前記外側チューブ体14に対して一体的に保持可能な保持クリップ156を備える点で、第1の実施の形態に係るステントデリバリーシステム10と相違している。
【0082】
この封止ロッド152は、本体部154が、テーパ部60の基端に対して所定角度傾斜して接合され、前記テーパ部60が外側チューブ体14のガイドワイヤ導出孔44に挿入された際に、前記外側チューブ体14と前記本体部154とが略平行となるように形成される(図11参照)。
【0083】
そして、外側チューブ体14及び本体部154の略平行に配置された部位には、該外側チューブ体14の軸線と直交方向に延在し、且つ、前記外側チューブ体14と本体部154とに跨るように保持クリップ156が装着される。この保持クリップ156の内面には、図12に示されるように、外側チューブ体14を保持する第1保持溝158と、該第1保持溝158と離間し、封止ロッド152の本体部154を保持する第2保持溝160とが形成される。第1及び第2保持溝158、160は、それぞれ外側チューブ体14の外周形状、本体部154の外周形状に基づいた断面略円形状に形成される。
【0084】
この封止ロッド152がガイドワイヤ導出孔44に挿入され、ガイドワイヤ導出孔44を閉塞した状態において、保持クリップ156を用いて該封止ロッド152を外側チューブ体14に固定することにより、前記封止ロッド152の位置ずれが防止され、ガイドワイヤ導出孔44の閉塞状態を確実に維持することができる。
【0085】
さらに、外側チューブ体14及び封止ロッド152の外周面に、所定深さだけ窪んだ切欠溝を設け、該切欠溝に対して保持クリップ156を係合させるように装着してもよい。この場合には、外側チューブ体14及び封止ロッド152に対して保持クリップ156をより一層確実に固定することが可能となり、それに伴って、前記封止ロッド152がガイドワイヤ導出孔44から離脱してしまうことをより一層確実に防止することができる。
【0086】
なお、本発明に係るステントデリバリーシステムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0087】
10、150…ステントデリバリーシステム
12…内側チューブ体 14…外側チューブ体
16…ステント 18…操作部
20…ガイドワイヤ 22…ガイドワイヤルーメン
24…第1先端チューブ 26…連結部材
28…第1基端チューブ 30…コネクタ
44…ガイドワイヤ導出孔 46…第2先端チューブ
48…第2基端チューブ 50…開口
52、120、130、152…封止ロッド
54、154…本体部 56、132…スタイレット部
58…把持部 60、122…テーパ部
62…間隙 68…ハウジング
70…ラック部材 72…回転ローラ
102…ロック機構 112…間欠機構
134…シール部材 156…保持クリップ
158…第1保持溝 160…第2保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤルーメンが形成された内管と、生体管腔内挿入時には中心軸方向に圧縮されて前記内管の先端側外面に配置され、生体管腔内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、前記内管の外面側に配置されることで前記ステントを内腔に収納可能であると共に、前記内管に対して基端方向に移動することにより、内部に収納された前記ステントを放出可能な外管とを備えるステントデリバリーシステムであって、
前記外管は、前記ガイドワイヤルーメンの出口に連通し、前記ガイドワイヤを前記外管の外側へと導出可能な開口部を備え、前記ステントデリバリーシステムには、さらに前記内管のガイドワイヤルーメンに挿通され該内管を保持する保持部と、前記保持部に接続され前記開口部を閉塞する閉塞部とを有した封止部材が着脱自在に設けられることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項2】
請求項1記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記閉塞部は、前記保持部に対して拡径して形成されることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記閉塞部は、前記保持部から離間する方向に向かって徐々に拡径するテーパ状に形成されることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、
前記封止部材は、前記外管に対してホルダで固定されることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントデリバリーシステムにおいて、 前記保持部は、前記内管の内周径より小さな外周径で形成され、前記保持部と前記内管との間に間隙が設けられることを特徴とするステントデリバリーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−183155(P2012−183155A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47491(P2011−47491)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】