説明

ステント及びその製造方法

【課題】基材の生体成分による劣化がなく且つ再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出するステントを実現できるようにする。
【解決手段】ステントは、環状のステント本体11と、ステント本体11の表面に形成され且つ表面活性化処理されたダイヤモンド様薄膜12と、ダイヤモンド様薄膜の表面に固定されたポリマー層13を備えている。ポリマー層13は、再狭窄防止効果を有する薬剤14を含有し、薬剤14はポリマー層13から徐放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント及びその製造方法に関し、特に薬剤徐放性のステント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の欧米化に伴い、我が国においても虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)が急速に増加しつつある。虚血性心疾患は、主として、心表面を走行する太い冠動脈の動脈硬化症を基盤に、これに冠動脈血栓や冠れん縮が加わり惹起される。
【0003】
血管狭窄症の治療方法として、血管内で小型バルーンを拡張させ治療する血管形成術(PTA及びPTCA等。)が低侵襲治療法として広く行われている。しかし、この治療法の場合、高い確率で繰り返し狭窄(再狭窄)が生じる。この再狭窄率を低減する手法として、ステントを留置する手技が近年普及している。
【0004】
ステントは体内に留置して使用するため、生体成分に対する耐久性及び生体との適合性が要求される。ステント等の医療用材料に耐久性を付与する方法として、ダイヤモンド様薄膜(DLC膜)を表面にコーティングする方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)DLC膜は、非常に平滑で化学的に不活性な膜であるため、生体成分と反応しにくいという特徴を有している。従って、ステントの基材表面にDLC膜をコーティングすることにより耐久性が高く、生体適合性も優れたステントが得られる。
【0005】
一方、ステント留置術においても、20%〜30%程度の頻度で再狭窄が発生することが報告されている。再狭窄が発生した場合には、再びPTCAを行う必要があり、再狭窄の予防法及び治療法の確立は世界的な緊急課題である。
【0006】
再狭窄の予防方法として閉塞の発生を制限する薬剤によりステントの基材を被覆する試みがなされている。例えば、特許文献2には、薬剤を含有させたポリマー溶液をステントの表面に噴霧したり、ステントをポリマー溶液に浸漬したりすることによりコーティングする方法が開示されている。これにより、再狭窄を予防する薬剤が徐々に放出されるステントが実現できる。
【特許文献1】特開平10−248923号公報
【特許文献2】特表2005−531332号公報
【特許文献3】特表2002−517285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のステントには、コーティングしたポリマーが剥離してしまい、継続的な薬剤の放出が困難であるという問題点がある。ステントは使用時に大きな物理的変形を受けるため、基材表面へのポリマー溶液の噴霧等の方法により基材表面にポリマーを物理的にコーティングした場合には、クラックが発生しポリマーが簡単に剥離してしまう。
【0008】
特に、基材の表面がDLC膜に覆われている場合には、DLC膜の表面が不活性で平滑なため、ポリマーとDLC膜との物理的な相互作用が小さくなり、さらにポリマーが剥離しやすくなる。このため、ステントから再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出することができず、再狭窄を効果的に予防することができない。
【0009】
一方、リンカー分子を用いてDLC膜の表面に生体分子を化学的に固定する方法も知られているが(例えば、特許文献3を参照。)、この場合には生体分子を徐々に放出することは困難である。また、リンカー分子を用いる必要があり、生体分子の固定が煩雑であると共に、固定できる生体分子の種類も限られるという問題がある。
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決し、基材の生体成分による劣化がなく且つ再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出するステントを実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明はステントをDLC膜の表面に導入された官能基を介して、薬剤を徐放するポリマーをDLC膜の表面に固定した構成とする。
【0012】
具体的に本発明に係るステントは、環状のステント本体と、ステント本体の表面に形成され且つ表面活性化処理されたダイヤモンド様薄膜と、ダイヤモンド様薄膜の表面に固定され、再狭窄防止効果を有する薬剤を含有し且つ該薬剤を徐放するポリマーとを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明のステントによれば、ステント本体の表面に形成され且つ表面活性化処理されたダイヤモンド様薄膜を備えているため、基材の劣化がほとんどないステントが実現できる。また、ポリマーを強固に固定することができるので、ステントの使用時にステントが大きく変形しても、薬剤を徐放するポリマーがステントの表面から剥離することがほとんどない。従って、ステントから継続的に薬剤が放出されるので、再狭窄が発生しにくいステントを実現できる。
【0014】
本発明のステントにおいて、ダイヤモンド様薄膜は、膜厚が10nm以上且つ300nm以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜がステント本体から剥離することを防止することができ、長期の仕様に耐えるステントが実現できる。
【0015】
本発明のステントは、ステント本体とダイヤモンド様薄膜との間に形成された中間層をさらに備え、中間層は、珪素及び炭素の少なくとも一方を主成分とするアモルファス膜であることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜とステントとの間の密着性が向上し、基材の劣化を確実に防ぐことが可能となる。
【0016】
この場合において、中間層の膜厚は5nm以上且つ100nm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のステントにおいてステント本体は、金属材料、セラミックス材料及び高分子材料のいずれか1つ又は少なくとも2つ以上からなる複合体であることが好ましい。
【0018】
本発明のステントにおいて、ダイヤモンド様薄膜は表面に親水性の官能基が導入されていることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜の表面における生体適合性を向上させることができる。
【0019】
本発明のステントにおいて、ポリマーはダイヤモンド様薄膜の表面にイオン性相互作用により固定されていていることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜の表面からポリマーが剥離することを確実に防止できる。
【0020】
本発明のステントにおいて、ポリマーは生体適合性ポリマーであることが好ましい。
【0021】
この場合において生体適合性ポリマーは、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンカーボネート、ポリアミド、フィブリン、リン脂質の重合体、疎水親水ミクロ相分離重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、ビニルピロリドンの重合体又は共重合体、フッ素含有モノマーの重合体又は共重合体、Si含有モノマーの重合体又は共重合体及びビニルエーテルの重合体又は共重合体からなる群から選択された少なくとも1つのポリマー又はポリマーのエステル化物であることが好ましい。
【0022】
本発明のステントにおいて、ポリマーは生分解性ポリマーであることが好ましい。
【0023】
この場合において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸との共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、澱粉、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、及びポリ−β−ヒドロキシアルカノエートからなる群から選択された少なくとも1つのポリマーである。
【0024】
この場合において、生分解性ポリマーは可塑剤を含んでいることが好ましい。このような構成とすることにより、生分解性ポリマーの生体内における分解を促進し、薬剤の放出効率を向上させることができる。
【0025】
本発明のステントにおいて、薬剤は、抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフィブリン、アンチトロンビン、抗増殖剤、抗ガン剤、HMG−CoA還元酵素の抑制剤、アルファインターフェロン及び遺伝子工学を用いて改変した上皮細胞からなる群から選択された少なくとも1つの薬剤であることが好ましい。
【0026】
本発明に係るステントの製造方法は、ステント本体の表面にダイヤモンド様薄膜を形成するダイヤモンド様薄膜形成工程と、ダイヤモンド様薄膜の表面に反応性の部位を生起させる活性化工程と、活性化工程の後にダイヤモンド様薄膜の表面に再狭窄防止効果を有する薬剤を含有するポリマーを固定するポリマー層形成工程とを備えていることを特徴とする。
【0027】
本発明のステントの製造方法によれば、ダイヤモンド様薄膜の表面に反応性の部位を生起させる活性化工程を備えているため、ステント本体の劣化を防止すると共に、薬剤を含有するポリマーをダイヤモンド様薄膜の表面に強固に固定することができる。従って、ステントの使用時にステントが大きく変形した場合においても、ポリマーが剥離することを防ぐことができる。その結果、基材の劣化が少なく且つ継続的に薬剤を放出するステントを実現できる。
【0028】
本発明のステントの製造方法は、ダイヤモンド様薄膜形成工程よりも前に、珪素及び炭素を主成分とするアモルファス膜をステント本体の表面に形成する中間層形成工程をさらに備えていることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜とステント本体との密着性を向上させることができる。
【0029】
本発明のステントの製造方法において、活性化工程はダイヤモンド様薄膜の表面にプラズマを照射するプラズマ照射工程であることが好ましい。この場合においてプラズマは、アルゴン、キセノン、ネオン、ヘリウム、クリプトン、窒素、酸素、アンモニア、水素、水蒸気、鎖式又は環式の炭化水素、酸素を含む有機化合物及び窒素を含む有機化合物からなる群から選択された1つの気体又は2つ以上からなる混合気体のプラズマであることが好ましい。このような構成とすることにより、ダイヤモンド様薄膜の表面に官能基を確実に導入することができる。
【0030】
本発明のステントの製造方法は、活性化工程とコーティング工程との間に、反応性の部位と酸素を含む分子とを反応させることにより、ダイヤモンド様薄膜の表面に水酸基を導入する表面処理工程をさらに備えていることが好ましい。
【0031】
本発明のステントの製造方法において、ポリマーは生体適合性ポリマー又は生分解性ポリマーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るステントによれば、基材の生体成分による劣化がなく且つ再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出するステントを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施形態に係るステントについて図面を参照して説明する。図1(a)及び(b)は一実施形態に係るステントであり、(a)はステントの概略の形状を示し、(b)は(a)のIb−Ib線における断面の構成を示している。
【0034】
図1(a)及び(b)に示すように本実施形態のステント10は、金属等からなるステント本体11の表面にダイヤモンド様薄膜(DLC膜)12が形成されている。DLC膜12の表面は活性化処理されている。活性化は、後で述べるようにプラズマ照射、紫外光(UV)照射及びオゾン処理等によって行う。
【0035】
表面が活性化処理されたDLC膜12の表面にはポリマー層13がコーティングされている。DLC膜12の表面が活性化処理されているため、ポリマー層13はDLC膜12の表面に強固に固定されている。ポリマー層13は、再狭窄を防止するための薬剤14を含んでおり、薬剤14は、ポリマー層13から徐々に放出される。これにより、長期にわたり継続的に薬剤を放出するステントが実現できる。
【0036】
以下に、ステントの各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0037】
−ステント本体−
ステント本体11には、特に制限はなく一般的な既知のものを用いることができる。例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン(Ni−Ti)系合金、銅アルミニウムマンガン(Cu−Al−Mn)系合金、タンタリウム、コバルトクロム(Co−Cr)系合金、イリジウム、イリジウムオキサイド又はニオブ等からなる金属チューブをステントデザインにレーザを用いてカットし、電解研磨したものを用いることができる。また、金属チューブをエッチングする方法、平板金属をレーザカットしてから丸めて溶接する方法又は金属ワイヤーを編みこむ方法等を用いて形成してもよい。
【0038】
また、ステント本体11は金属材料に限定されず、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリイミド、ポリアミドイミド若しくはポリエーテルエーテルケトン等の高分子材料又はセラミックス若しくはヒドロキシアパタイト等の無機材料を用いて形成してもよい。高分子材料又は無機材料をステントに加工する方法は、本発明の効果に影響を及ぼすものではなく、各材料に適した加工方法を任意に選択することができる。
【0039】
−ダイヤモンド様薄膜の形成−
ダイヤモンド様薄膜(DLC膜)12は、ダイヤモンドに類似したカーボンからなる薄膜であり、非常に緻密で且つ強固な膜であるため、生体成分がDLC膜12を浸透することがない。このため、ステント本体11の表面をDLC膜12により覆うことにより、生体成分によるステント本体11の劣化を防止することができる。
【0040】
また、ステント本体11の材料表面には、ミクロスケール又はナノスケールの凹凸が存在している。これらの凹凸は、生体成分が付着する際の起点となり、ステント本体11への生体成分の付着は血栓等の原因となる。しかし、ステント本体11をDLC膜12により覆うことにより凹凸を平滑化することができる。平滑で且つ不活性なDLC膜12により覆われたステント本体11は、生体成分との相互作用が小さくなり、生体成分がステントの表面に付着することを低減できる。
【0041】
本実施形態においてDLC膜12は、スパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、化学気相堆積法(CVD法)、プラズマCVD法、プラズマイオン注入法、重畳型RFプラズマイオン注入法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法又はレーザーアブレーション法等の公知の方法によりステント本体11の表面に形成することができる。
【0042】
DLC膜12の膜厚は、生体成分によるステント本体11の劣化を防止するという観点からは厚い方が好ましい。しかし、ステントは使用時に大きな変形が加えられる器具であるため、DLC膜12の膜厚をあまりに厚くすると、変形の際にクラックが発生し、DLC膜が剥離するという問題がある。従って、DLC膜12の膜厚は10nm以上且つ300nm以下とすればよく、好ましくは20nm以上且つ80nm以下とする。
【0043】
また、DLC膜はステント本体11の表面に直接形成することができるが、ステント本体11とDLC膜12とをより強固に密着させるために、ステント本体11とDLC膜12との間に中間層を設けてもよい。
【0044】
中間層は、ステント本体11の材質に応じて種々のものを用いることができるが、珪素(Si)と炭素(C)、チタン(Ti)と炭素(C)又はクロム(Cr)と炭素(C)からなるアモルファス膜等の公知のものを用いることができる。
【0045】
中間層は、ステント本体11の表面に均一に形成する必要があるため、ある程度の膜厚が必要である。しかし、膜厚があまりに厚くなると成膜時間が長くなり生産性が低下する。従って、中間層の膜厚は5nm以上且つ100nm以下とすればよく、好ましくは10nm以上且つ40nm以下とする。
【0046】
中間層は、公知の方法を用いて形成することができ、例えば、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法、溶射法、イオンプレーティング法又はアークイオンプレーティング法等を用いればよい。
【0047】
−ダイヤモンド様薄膜の活性化−
DLC膜12の表面は、先に述べたように平滑で且つ不活性であるため、DLC膜12の表面にポリマーを直接コーティングしても、ポリマーはすぐに剥離してしまう。
【0048】
一方、DLC膜12の表面にプラズマ等を照射することにより、表面のダイヤモンド(炭素−炭素)結合の一部を開裂させることができる。これにより、DLC膜12の表面にフリーラジカル又はイオン種を生起させることができる。フリーラジカル又はイオン種を用いることにより、DLC膜12の表面にカルボキシル基又は水酸基等の反応しやすい官能基を容易に導入することができ、さらに他の官能基に置換することも可能である。
【0049】
DLC膜12の表面に官能基を導入して活性化することにより、種々のポリマーをDLC膜12の表面に強固にコーティングすることが可能となる。
【0050】
DLC膜12の炭素−炭素結合の開裂は、例えばアルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)、クリプトン(Cr)、キセノン(Xe)、窒素ガス(N)、酸素ガス(O)、アンモニアガス(NH)、水素ガス(H)又は水蒸気(HO)等のガスにより発生させたプラズマにDLC膜を曝すことにより行えばよい。ガスは、単独で用いても混合ガスとして用いてもよい。また、紫外光又はオゾン雰囲気における紫外光照射等によって炭素−炭素結合を開裂させてもよい。
【0051】
開裂された炭素−炭素結合は、水と容易に反応するため、DLC膜12の表面に水酸基又はカルボキシル基等を容易に導入することができる。また、一旦導入した水酸基又はカルボキシル基等を他の官能基に変換することも容易である。例えば、DLC膜12の表面に導入された水酸基は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能性アルコキシシラン誘導体、2−メルカプト酢酸等の官能性カルボン酸誘導体、ジイソシアネート誘導体、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、N−メタクリロイルスクシンイミド、又はN−アクリロイルスクシンイミド等と反応させることにより、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基又はビニル基に容易に変換することができる。
【0052】
DLC膜12の表面に水酸基又はカルボキシル基を導入すれば、DLC膜12の表面の親水性が向上する。これにより、DLC膜12自体の生体適合性を向上させることができ好ましい。この場合において、さらに官能基の置換を行っても一部の水酸基又はカルボキシル基は置換されずに残存するため、DLC膜12自体の生体適合性が向上するという効果は維持される。
【0053】
プラズマ源となるガスに鎖式又は環式の炭化水素、酸素を含む有機化合物及び窒素を含む有機化合物を用いれば、炭素−炭素結合が開裂すると共にプラズマ中のイオン種と反応するため、ガス種に応じた官能基をDLC膜12の表面に直接導入することが可能である。
【0054】
DLC膜12の表面に導入する官能基の種類は、DLC膜12の表面に固定するポリマー層13に用いるポリマーの種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、DLC膜12の表面に導入する官能基をカルボキシル基、アミノ基又はリン酸基等のイオン性の官能基とすれば、ポリマー中のイオン性の官能基を用いてDLC膜12の表面にポリマーをイオン性相互作用(イオン結合)により固定することができる。
【0055】
また、疎水性の官能基を導入することにより、ポリマーとの物理的な相互作用を高め、ポリマーを物理的に固定してもよい。
【0056】
さらに、例えば、ポリマーがイソシアネート基又はトリメトキシシラン若しくはトリエトキシシラン等のトリアルキルオキシシラン基等の官能基を分子中に含む場合には、DLC膜12の表面に導入する官能基をアミノ基とすれば共有結合させることも可能である。また2官能性試薬を用いてDLC膜12の表面に導入された官能基とポリマー中の官能基とを結合してもよく、この場合には2官能性試薬の種類に応じてDLC膜12の表面に導入する官能基の種類を選択する。
【0057】
−ポリマー層−
ポリマー層13は、DLC膜12の表面にポリマーを固定することにより形成する。DLC膜12の表面に固定するポリマーは、活性化したDLC膜12の表面に固定できること及び薬剤をその中に含有し且つ薬剤を一定速度で放出する能力があるものが好ましい。さらに、血小板が付着し難く且つ組織に対しても刺激性を示さないポリマーが好ましい。
【0058】
例えば、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリDL乳酸(DL−PLA)、ポリL乳酸(L−PLA)、ラクチド、ポリカプロラクトン(PCL)、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−L−リジン等のポリアミノ酸、澱粉、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート又はポリ−β−ヒドロキシアルカノエート等の生分解性のポリマーを用いることができる。また、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はポリ乳酸とポリグリコール酸との共重合体等の末端には極性官能基が導入されていてもよい。
【0059】
また、これに限らず、生体内で酵素的又は非酵素的に分解され、分解産物が毒性を示さず、薬物の放出が可能なものであれば、いずれの生分解性ポリマーも利用可能である。
【0060】
さらに、生体による分解を促進し、薬剤の放出が効率よく行うために可塑剤が添加されていてもよい。可塑剤は、例えば酒石酸、リンゴ酸若しくはクエン酸のエステル系の可塑剤又は他の生体に対する安全性が確認された可塑剤を用いればよい。
【0061】
また、生体適合性を有する非分解性のポリマーを用いることも可能である。例えば、パリレン、パリラスト、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、シリコン、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリブチルメチルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレンカーボネート若しくはポリプロピレンカーボネート等のポリカーボネート、セグメント化ポリウレタン等のポリウレタン又はポリエーテル型ポリウレタンとジメチルシリコンとのブレンド若しくはブロック共重合体等の合成ポリマーを用いることが可能である。また、フィブリン等の天然のポリマーを用いてもよい。
【0062】
なお、ポリマーのDLC膜への固定を行うために必要に応じて官能基の導入等を行ってもよい。
【0063】
−薬剤−
ポリマー材料中に含有させる薬剤は、再狭窄の防止効果のある薬剤であればどのようなものであってもよい。例えば抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフィブリン、アンチトロンビン、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗ガン剤、免疫抑制剤、抗生物質及び抗炎症剤等を用いることができる。以下に、具体的に薬剤の例を挙げるが、これは例示的に示されたものであり、本発明を限定するものではない。
【0064】
抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフィブリン及びアンチトロンビンとしては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、塩酸サルボクレラート、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリン同族体、デキストラン、D−フェ−プロ−アルグ−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ディピリダモール、グリコプロテインIIb/IIIa血小板膜受容抗体、ビトロネクチン受容体拮抗物質及びトロンビン防止剤等が挙げられる。
【0065】
血栓溶解剤としては、組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ等が挙げられる。
【0066】
抗増殖剤としては、アンギオペプチン、カプトプリル、シラザプリル及びリシノプリル等のアンギオテンシン変換酵素抑制剤、カルシウム溝阻止抗体、コルチシン、繊維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヘスタミン拮抗薬、ロバスタティン(HMG−CoA還元酵素の抑制剤)、メトトレキサート、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ抑制剤、プロスタグランジン抑制剤、セラミン(PDGF拮抗薬)、セロトニン阻止抗体、ステロイド、チオプロテーゼ抑制剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、酸化窒素、オールトランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸並びに9−シスレチノイン酸(レチノインド)等が挙げられる。
【0067】
また、ナイトロジェン・マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及びその類似体、メルファラン及びクロラムブシル等を含む)、エチレンイミン、メチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ等を含む)、スルホン酸アルキル類−ブスルファン複合物、ニトロソ尿素類(カルムスチン(BCNU)、BCNU類似体及びストレプトゾシン等を含む)及びトラゼン(trazenes)−ダカルバジン(DTIC)複合物等の抗増殖抗有糸分裂アルキル化薬も用いることができる。
【0068】
ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フルクスウリジン及びシタラビン等)、プリン類似体(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデオキシアデノシン等)及びその他の抑制因子でもよい。白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトーテン、アミノグルテチミド又はホルモン類(エストロゲン等を含む)等の抗増殖有糸分裂代謝拮抗物質でもよい。L−アスパラギンを全身系的に代謝し、自己的にアスパラギンを合成する機能をもたない各種細胞を奪うL−アスパラギナーゼ等の酵素も用いることができる。
【0069】
抗ガン剤としてはタキソール、タキソテール、トポテシン等のアルカロイド類、アドレアシン、ブレオなど抗生物質類、5−FU等の代謝拮抗物質及びビンカアルカロイド類(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)等の天然産物が挙げられる。
【0070】
免疫抑制剤としては、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン及びミコフェノール酸モフェチル等が挙げられる。抗生物質としては、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトザントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン等が挙げられる。
【0071】
抗炎症剤としては、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキマブ、抗遊走薬(antimigratory)、抗分泌薬(ブレベルジン)、副腎皮質ステロイド(コルチソル、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、及びデキサメタゾン)、非ステロイド系薬(サリチル酸誘導体、すなわち、アスピリン、パラアミノフェノール誘導体、すなわち、アセトミノフェン)、インドール酢酸及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラック等)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク等)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及びその誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン及びオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン並びに金化合物(オーラノフィン、金チオグルコース及び金チオリンゴ酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0072】
他に、アルファインターフェロン、血管形成剤、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、アンギオテンシン受容体遮断薬、酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチド類及びこれらの組み合わせ物、細胞周期抑制因子、mTOR抑制因子、増殖因子信号伝達キナーゼ抑制因子、レテノイド(retenoid)、サイクリン/CDK抑制因子、HMG補酵素レダクターゼ抑制因子(スタチン類)並びにプロテアーゼ抑制因子等を用いることもできる。
【0073】
また、これらの薬剤は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。さらに、薬剤そのものではなく、遺伝子工学により種々の薬剤を分泌するように遺伝子を改変した上皮細胞を用いてもよい。
【0074】
再狭窄防止効果を有する薬剤は、既知の方法によりポリマーに保持させればよい。例えば、ゲル状のポリマーと所定の濃度の薬剤とを混合することにより、ポリマーに保持させればよい。この場合、物理的な相互作用又はイオン性相互作用等によって薬剤はポリマーに保持される。また、ポリマーの種類によってはポリマーの3次元構造に包摂されるようにしてもよい。ポリマーと薬剤とを混合した溶液等を用いて、ポリマーのDLC膜への固定を行えば、ポリマーによる薬剤の保持とポリマーのDLC膜への固定とを同時に行うことができる。
【0075】
−ポリマーの固定−
DLC膜12の表面へのポリマーの固定は、DLC膜12を活性化したステント本体11をポリマー溶液に浸漬する方法又はポリマー溶液をDLC膜12を活性化したステント本体11に噴霧若しくは滴下する方法等により行えばよい。特に、浸漬の場合には内表面がポリマー溶液と接触しやすく、ポリマーをステントに効率よく固定できるという効果がある。
【0076】
ディッピング又は噴霧等に用いるポリマー溶液の溶媒は、ポリマーの溶解性を有する任意の溶媒を選択することができる。溶媒の揮発性等を調整するために2つ以上の溶媒を用いた混合溶媒としてもよい。また、ポリマーは溶媒に溶解している必要はなく、懸濁液、分散液等の状態であってもよい。さらに、液状のポリマーの場合には溶媒を用いず直接用いることも可能である。また、ポリマーを溶融状態にして用いてもよい。
【0077】
ポリマー溶液の濃度は特に制限されず、ポリマー層13の表面特性、必要とする薬剤の保持量及び保持させた薬剤の放出挙動等を勘案して濃度を決定すればよい。
【0078】
最終的なポリマー層13の厚さは、ステント表面におけるポリマー層13の膜厚の均一性という観点からは厚い方がよいが、あまりに厚いとステント使用時にクラックが発生する原因となるため、0.1μm以上且つ200μm以下とし、好ましくは1μm以上100μm以下とする。
【0079】
また、ポリマー層13は複数の層から構成されていてもよい。この場合、一部の層だけが薬剤を含んでいてもよい。また、各層においてポリマーの種類を変えてもよい。例えば、DLC膜と接するアンダーコート層には、DLC膜との密着性のよいポリマーを用い、血液と触れるトップコート層のポリマーには、シリコン樹脂等の生体適合性材料又はポリ乳酸等の生分解性ポリマーを用いればよい。また、ヘパリン等の抗血栓材を含有するポリマーを用いてもよい。この場合、トップコート層のポリマーは、色相及び光沢等の美的な効果を考慮してもよい。
【0080】
(一実施例)
以下に、本発明に係るステントについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。本実施例においてステント本体11には、長さが19mm、径が1.5mm、セルの厚みが75μmのCo−Cr合金製のステントを用いた。
【0081】
図2は、本実施例において用いたイオン化蒸着装置を模式的に示したものであり、真空チャンバーの内部に設けられた直流アーク放電プラズマ発生器21に、イオン源であるAr並びにベンゼン(C)ガスを導入することにより発生させたプラズマを、負電圧にバイアスしたターゲット22に衝突させることによりターゲット22の上にDLC膜を固体化して成膜する通常のイオン化蒸着装置である。
【0082】
ステント本体11を図2に示すイオン化蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバーにアルゴンガス(Ar)を圧力が10−1Pa〜10−3Pa(10−3Torr〜10−5Torr)となるように導入した後、放電を行うことによりArイオン発生させ、発生したArイオンをステント本体の表面に衝突させるボンバードクリーニングを約30分間行った。
【0083】
続いて、チャンバにテトラメチルシラン(Si(CH)を3分間導入し、珪素(Si)及び炭素(C)を主成分とするアモルファス状で膜厚が20nmの中間層を形成する。
【0084】
中間層を形成した後、Cガスをチャンバーに導入し、ガス圧を10−1Paとする。Cを30ml/minの速度で連続的に導入しながら放電を行うことによりCをイオン化し、イオン化蒸着を約2分間行、厚さ30nmのDLC膜12をステント本体11の表面に形成した。
【0085】
DLC膜12を形成する際の基板電圧は1.5kV、基板電流は50mA、フィラメント電圧は14V、フィラメント電流は30A、アノード電圧は50V、アノード電流は0.6A、リフレクタ電圧は50V、リフレクタ電流は6mAとした。また、形成時におけるステント本体11の温度は約160℃であった。
【0086】
なお、中間層はステント本体11とDLC膜12との密着性を向上させるために設けており、ステント本体11とDLC膜12との密着性を十分に確保できる場合には省略してもよい。
【0087】
また、本実施例においては炭素源としてCの単独ガスを用いたが、他の炭化水素原料、あるいはCを含む炭化水素原料とCF等のフロンガスとの混合ガスを用いて、フッ素を含むDLC膜12をステント本体11の表面に形成してもよい。
【0088】
次に、ステント本体11の表面に形成したDLC膜12にプラズマを照射することによりDLC膜12の表面に官能基を導入した。図3は本実施例において使用したプラズマ照射装置を模式的に示している。
【0089】
図3に示すようにプラズマ照射装置は、一般的なプラズマ照射装置であり、真空ポンプ32が接続されガス置換が可能なチャンバー31の底面及び胴部に電極33及び電極34が設けられている。電極33及び電極34に、マッチングネットワーク36を通して高周波電源35から高周波を印加することによりチャンバー31の内部にプラズマを発生させる。
【0090】
まず、DLC膜12を形成したステント本体11をプラズマ照射装置のチャンバー31の内部にセットし、アセチレンを流してチャンバー31の内圧を133Paとした。続いて、高周波電源35(アドテックプラズマテクノロジー製、AX−300型;周波数13.56MHz)を用いて50Wの高周波を電極33及び34に印加して、チャンバー31の内部にプラズマを発生させた。DLC膜を形成したステントにプラズマを約30秒間照射することによりDLC膜12の表面に官能基を発生させた。
【0091】
また、本実施例において、Ar又は酸素ガスを用いて、DLC膜の表面にラジカルを発生させ活性化させることも可能である。
【0092】
次に、薬剤14を含有するポリマーを官能基を導入したDLC膜12の表面に固定し、ポリマー層13を形成した。ポリマーにはDL−ポリ乳酸を用い、薬剤14にはラパマイシンを用いた。プラズマ処理後、直ちにステントを120rpmの速度で回転させながら、その表面にポリマー及び薬剤を含む液を0.02ml/分の速度で8分間にわたりまんべんなく噴霧した。固定には1.5重量%のDL−ポリ乳酸、0.5重量%のラパマイシン及び98重量%のクロロホルムにより調製した溶液を用いた。噴霧終了後、ステントを窒素気流で10分間乾燥し、さらに室温で1昼夜減圧乾燥した。
【0093】
乾燥終了後、ステントの重量を測定し、ポリマーの固定量が0.54mgであることを確認した。このステントを倍率400倍の実態顕微鏡で観察したが、ポリマー層13はステント表面に均一にコーティングされており且つクラック及び剥離等の欠陥も観察されなかった。次にステントをバルーンカテーテルに装着し、バルーンを加圧して、ステントの直径を3.0mmまで拡張した。この時のステントの最大歪率は最大箇所で40%であった。拡張後、カテーテルを抜き取り、ポリマー層13を観察したが、ポリマー層13にはクラックはなく、またステント本体11からのポリマー層13の剥離も観察されなかった。
【0094】
以上のように、本実施例のステントは動脈内膜肥厚を抑制し得る薬剤を含むポリマーがDLC膜に覆われたステントの表面に共有結合により強固に固定されている。従って、ステントが大きく変形した場合にも、ポリマー層にクラックが生じたり、ステントの表面から剥離することがない。その結果、継続的に薬剤を徐放することができ且つ基材の劣化がほとんどないステントを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係るステント及びその製造方法は、基材の生体成分による劣化がなく且つ再狭窄を予防する薬剤を継続的に放出するステントを実現でき、特に薬剤徐放性のステント及びその製造方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るステントを示し、(a)は全体を示す斜視図であり、(b)は(a)のIb−Ib線における断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るステントの製造に用いたイオン化蒸着装置を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施例に係るステントの製造に用いたプラズマ照射装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0097】
10 ステント
11 ステント本体
12 ダイヤモンド様薄膜
13 ポリマー層
14 薬剤
21 プラズマ発生器
22 材料
31 チャンバ
32 真空ポンプ
33 電極
34 電極
35 高周波電源
36 マッチングネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステント本体と、
前記ステント本体の表面に形成され且つ表面活性化処理されたダイヤモンド様薄膜と、
前記ダイヤモンド様薄膜の表面に固定され、再狭窄防止効果を有する薬剤を含有し且つ該薬剤を徐放するポリマーとを備えていることを特徴とするステント。
【請求項2】
前記ダイヤモンド様薄膜は、膜厚が10nm以上且つ300nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記ステント本体と前記ダイヤモンド様薄膜との間に形成された中間層をさらに備え、
前記中間層は、珪素及び炭素の少なくとも一方を主成分とするアモルファス膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
前記中間層の膜厚は、5nm以上且つ100nm以下であることを特徴とする請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記ステント本体は、金属材料、セラミックス材料及び高分子材料のいずれか1つ又は少なくとも2つ以上からなる複合体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のステント。
【請求項6】
前記ダイヤモンド様薄膜は、表面に親水性の官能基が導入されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のステント。
【請求項7】
前記ポリマーは、前記ダイヤモンド様薄膜の表面にイオン性相互作用により固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のステント。
【請求項8】
前記ポリマーは、生体適合性ポリマーであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のステント。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマーは、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンカーボネート、ポリアミド、フィブリン、リン脂質の重合体、疎水親水ミクロ相分離重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、ビニルピロリドンの重合体又は共重合体、フッ素含有モノマーの重合体又は共重合体、Si含有モノマーの重合体又は共重合体及びビニルエーテルの重合体又は共重合体からなる群から選択された少なくとも1つのポリマー又はポリマーのエステル化物であることを特徴とする請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記ポリマーは、生分解性ポリマーであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のステント。
【請求項11】
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸との共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、澱粉、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、及びポリ−β−ヒドロキシアルカノエートからなる群から選択された少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記生分解性ポリマーは、可塑剤を含んでいることを特徴とする請求項11に記載のステント。
【請求項13】
前記薬剤は、抗血小板剤、抗凝固剤、アンチフィブリン、アンチトロンビン、抗増殖剤、抗ガン剤、HMG−CoA還元酵素の抑制剤、アルファインターフェロン及び遺伝子工学を用いて改変した上皮細胞からなる群から選択された少なくとも1つの薬剤であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のステント。
【請求項14】
ステント本体の表面にダイヤモンド様薄膜を形成するダイヤモンド様薄膜形成工程と、
前記ダイヤモンド様薄膜の表面に反応性の部位を生起させる表面活性化工程と、
前記表面活性化工程の後にダイヤモンド様薄膜の表面に薬剤を含有するポリマーを固定するポリマー層形成工程とを備えていることを特徴とするステントの製造方法。
【請求項15】
前記ダイヤモンド様薄膜形成工程よりも前に、珪素及び炭素を主成分とするアモルファス膜を前記基材の表面に形成する中間層形成工程をさらに備えていることを特徴とする請求項14に記載のステントの製造方法。
【請求項16】
前記活性化工程は、前記ダイヤモンド様薄膜の表面にプラズマを照射するプラズマ照射工程であることを特徴とする請求項14又は15のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
【請求項17】
前記プラズマは、アルゴン、キセノン、ネオン、ヘリウム、クリプトン、窒素、酸素、アンモニア、水素、水蒸気、鎖式又は環式の炭化水素、酸素を含む有機化合物及び窒素を含む有機化合物からなる群から選択された1つの気体又は2つ以上からなる混合気体のプラズマであることを特徴とする請求項16に記載のステントの製造方法。
【請求項18】
前記活性化工程と前記コーティング工程との間に、前記反応性の部位と酸素を含む分子とを反応させることにより、前記ダイヤモンド様薄膜の表面に水酸基を導入する表面処理工程をさらに備えていることを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載のステントの製造方法。
【請求項19】
前記ポリマーは、生体適合性ポリマー又は生分解性ポリマーであることを特徴とする請求項14から18のいずれか1項に記載のステントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−195883(P2007−195883A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20926(P2006−20926)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【出願人】(504184721)株式会社日本ステントテクノロジー (28)
【Fターム(参考)】