説明

ステンレス鋼電解プレート

【課題】銅陰極の電気精錬および/または電解採取での使用に適した実質的に永久的な二重および/またはグレード304ステンレス鋼陰極プレートを提供する。
【解決手段】電解プレートは最終グレードの金属が電着される永久的基板である。プレートは、金属が電着される少なくとも一つの表面を有する。表面は、電着物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要である接着性を作り出すように修正された表面粗さを有し、接着性は修正された表面から電着物の機械的分離を防止するには不十分な強度である。プレートは、少なくとも部分的に二重および/またはグレード304ステンレス鋼からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解プレートに関し、また特に金属の電解回収での使用に適した実質的に永久的な陰極プレートに関する。
【0002】
本発明は主として、銅陰極の電解採取での使用に適した実質的に永久的なステンレス鋼陰極プレートとして開発された。電着物の動作接着性は、陰極の表面仕上げ特性によって高められる。この開発は、今後本出願を参照しながら説明される。しかしながら本発明がこの特定の使用分野に限定されないことは理解されたい。
【0003】
関連出願
本PCT国際出願は、参照により本明細書に組み込まれている2005年3月9日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2005901127号から優先権を主張する。2005年11月16日に出願された米国特許出願第11/281,686号もAU2005901127の利益を主張する。
【背景技術】
【0004】
本明細書全体を通しての従来技術のいかなる論議も、このような従来技術が広く知られているか、あるいは当分野における共通的一般知識の一部を形成するという容認と考えられるべきではない。
【0005】
銅の電気精錬は、約99.7%Cuの不純な陽極から銅を電解的に溶解し、それから純粋な形の溶解された銅を陰極に選択的にめっきすることを含む。この反応は、実質的に硫酸銅と硫酸との混合物である電解質を含有する電解槽内で発生する。
【0006】
金属の電気精錬のための種々のプロセスと装置とが存在する。銅の電解採取に関して、現在の産業における最善の実施法は、「永久的」ステンレス鋼陰極プレートの製造と使用とに向かっている。このような実施法は主として、オーストラリア、クイーンズランド州、マウントイサマインズ(Mount Isa Mines,Queensland,Australia)のジム・ペリーら(Jim Perry,et al.)の独自の研究(および特許)に基づいている。このような技法は、ISA PROCESS(登録商標)技術として本業界中で一般に知られている。
【0007】
ISA PROCESS(登録商標)技術(ISA PROCESS2000(商標)ともいう)は、マウントイサマインズ株式会社(Mount Isa Mines Limited)の商標であって、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、中国、キプロス、エジプト、英国、ドイツ、インド、インドネシア、イラン、日本、ミャンマー、メキシコ、ペルー、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、タイ、および米国で認可されている。
【0008】
本プロセスでは、ステンレス鋼陰極マザープレートは、銅陽極を有する電解浴内に浸漬される。電流の印加は、陽極からの未精錬母材金属を電解浴中に溶解させ、実質的にマザープレートの陰極ブレード上に精錬された形で堆積させる。それから電解的に堆積した銅は、銅堆積物の少なくとも一部を陰極プレートから分離するように陰極プレートをまず屈曲させ、それから銅の残り部分をブレードからウェッジ剥離またはガス吹き付けすることによってブレードから剥離される。
【0009】
このような剥離は、薄鋼板と銅の上部エッジの堆積銅との間に挿入されたナイフ状ブレードまたはナイフエッジ・ウェッジの使用によって実行される。代替として剥離は、堆積銅が両側からその上部エッジ付近で軽く叩かれるハンマー叩きステーションを銅堆積陰極に通過させることによって自動的に実行されてもよい。これは銅上部エッジを緩め、それから剥離は、鋼と銅の緩められた上部エッジとの間の小さな空間に一つ以上の空気流を差し向けることによって完了する。しかしながら剥離は、本出願人によって開発され、特許文献1に特許されている屈曲装置によって、あるいは関連する方法(特許文献2参照)によってより好ましく達成される。
【0010】
陰極マザープレートは一般に、ステンレス鋼ブレードと、電解浴内に陰極を保持して支持するためにブレードの上部エッジに接続されたハンガーバーとからなる。
【0011】
ISA PROCESS(登録商標)は、実際的形材を形成するために直列に配置された多数の電解槽のシステムを使用する。これらの電解槽において、電極すなわち陽極銅と陰極は並列に接続される。
【0012】
ISA PROCESS(登録商標)の代替手段として、もう一つの方法は、銅が電着された陰極基板として、より高純度の銅のスタータシートの使用である。これらのスタータシートは、硬圧延銅ブランクまたはチタンブランクへの銅の24時間電着によって特殊な電解槽内で製造される。
【0013】
スタータシートの準備は、シートの洗浄と真っ直ぐにすることと硬くすることとを含む。それからシートは、銅ストリップの付属ループによって圧延銅ハンガーバーから吊り下げられる。
【0014】
ISA PROCESS(登録商標)と従来のスタータシート技術との間の基本的な差は、ISA PROCESS(登録商標)が再使用できない銅スタータシートの代わりに「永久的な」再使用可能陰極ブランクを使用することである。
【0015】
この技術の基本要素は、ISA PROCESS(登録商標)陰極プレートの専用設計である。このプレート自体は、ステンレス鋼矩形中空形材ハンガーバーに溶接された「316L」ステンレス鋼から製造される。このハンガーバーは、電導性と耐食性のために電気めっきされた銅で包まれる。
【0016】
ステンレス鋼は、超低炭素レベル(軟鋼と比較して)と種々のレベルのクロムとを含有する鉄ベースの金属である。クロムは、酸化に耐える接着性表面フィルムを形成するために酸素と化合する。ISA PROCESS(登録商標)陰極プレートの316Lステンレス鋼は近似的に、<0.03%炭素、16〜18.5%クロム、10〜14%ニッケル、2〜3%モリブデン、<2%マンガン、<1%ケイ素、<0.045%燐、<0.03%硫黄、残り鉄という組成を有する。
【0017】
オーステナイト316Lは、標準的モリブデン含有グレードである。モリブデンは、316Lに優れた全体的耐食性、特に酸性環境における点食と亀裂腐食とに対する高い耐食性を与える。
【0018】
しかしながら適切なステンレス鋼の選択は、それ自体で成功を保証するものではない。陰極プレートの所望の表面接着特性は、これが鋼シートと自発的に銅が鋼から剥離または崩落するのを防止するために鋼シートの上に堆積された銅との間に結合の十分な靭性を与えることである。
【0019】
このために316Lステンレス鋼は、「2B」表面仕上げを施される。2B仕上げは、中程度に明るくて曇っており、冷間圧延と、軟化とデスケーリングと、それから仕上げロールによる軽い最終圧延とによって製造されるシルバーグレイ、セミブライト面になる。この結果は、「スキンパス圧延」または「2B」(「B」=ブライト)と呼ばれ、0.1と0.5μmとの間の表面粗さ(Ra)インデックスを有するセミブライトグレイ表面と
なる。2B鋼はしばしば、清浄に保ち易い表面が必要とされるときに、食品工業での加工装置のために使用される。
【0020】
表面の平滑さと反射性は、材料が次第に薄く圧延されるにつれて向上する。必要なゲージ的縮小を遂行するために行われる必要があるいかなる焼きなましも、また最終焼きなましも極めて厳しく制御された不活性ガス雰囲気内で遂行される。したがって表面の酸化またはスケーリングは実質的に発生せず、追加的酸洗いおよび不動態化の必要はない。
【0021】
ISA PROCESS(登録商標)において使用されるように、2B仕上げ316L鋼ブレードは厚さ3.25mmであって、中空ステンレス鋼形材ハンガーバーに溶接される(特許文献3、特許文献4参照)。導電性を改善するためにハンガーバーは、厚さ2.5mmの電気めっきされた銅被覆で包まれる。垂直エッジ(特許文献5参照)は、銅陰極がこれらのエッジの周りに成長するのを防止するためにプラスチックのエッジストリップでマークされる(特許文献6参照)。底部エッジは、銅がプレートを包み込むのを防ぎながら、そうでなければ陰極銅を汚染する落下陽極泥を集めるための横桟を備えないワックスの薄いフィルムでマスクされる。
【0022】
スタータシートの製造と変更はますます費用がかかるので、これらの手段によって操業する精錬所は一般に、1陽極サイクル当たり2陰極サイクルを動作させる、すなわちスタータシート陰極は各々一般に、これらが除去される前に12〜14日間、金属銅でめっきされる。それから第2のスタータシートが陽極間に挿入される。したがって陽極サイクルは一般に、ほぼ24〜28日となる。陰極サイクルの終了時に、陽極スクラップは除去されて洗浄され、さらなる電気精錬サイクルのために溶融して陽極に再鋳造するための鋳造施設に戻される。
【0023】
ISA PROCESS(登録商標)陰極技術は5〜14日の変化する陰極寿命に適応できるが、7日の陰極サイクルは一般に、1週間の作業スケジュールおよびより短い作業週間に適合するので理想的と考えられる。
【0024】
より短いサイクルは、陰極品質にとって極めて多くの利点を有する。剥離されると単一の陰極プレートは、純粋な陰極銅の2枚の単一シートを作り出す。この陰極技術は、銅タンクハウスの電極処理システムにおける主要な進歩をもたらしている。ステンレス鋼陰極プレートにより、代替の薄いスタータシートと比較してステンレス鋼陰極プレートの真直性と垂直性が正確になる。永久的ステンレス鋼陰極は、電気分解時の陰極堆積物の落下軟泥およびその他の不純物をトラップするチャンスをほとんど有さない。つまり永久的ステンレス鋼陰極を使用すると、スタータシートを使用した場合には得られないプロセス効率が可能になる。
【0025】
さらにステンレス鋼陰極プレートを使用すると、短絡がほとんど起きないので電流効率が改善され、したがって銅ノジュールがほとんど形成されない。陰極品質もまた、スタータシートループの除去によって改善された。
【0026】
陰極の化学的品質は、細ワイヤ引き抜き工具による銅ロッド製造者に対する、より一層厳しい要求(LMEグレードAを超える)にとって特に重要である。このような品質要求は必ず、銅製造元−陰極銅精錬所自体から始まらなくてはならない。
【0027】
ISA PROCESS(登録商標)の主要な利点は、精錬者にとってのものであったにもかかわらず、実際の二次的な利点は、より安定な、より高品質の製品を取得するエンドユーザに対して生じている。精錬強度は、永久ステンレス鋼陰極の利点によって大いに増加した。陽極/陰極ペア間の電極間ギャップは、低減することができ、それによって電解槽の単位長さ当たりの電気分解用活性面積を増加した。
【0028】
したがって電気分解に関する電流密度は増加でき、また従来のスタータシート精錬所は典型的には約240A/m2で運転しているが、現在ではISA PROCESS(登録
商標)精錬所は約330A/m2で運転している。
【0029】
製造過程の銅材料は、精錬所運転における重要な考慮事項である。組合せにおいて、前述された種々のISA PROCESS(登録商標)効率は、製造過程の銅を約12%だけ削減できる−これは極めて重要な結果である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】オーストラリア特許第712,612号明細書
【特許文献2】米国特許第4,840,710号明細書
【特許文献3】国際公開第WO03/062497号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/126906号明細書
【特許文献5】オーストラリア特許第646,450号明細書
【特許文献6】国際特許出願第PCT/AU00/00668号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の一目的は、従来技術の欠点の少なくとも一つを克服または改善すること、あるいは有用な代替手段を提供することである。
【0032】
好ましい形態における本発明の一目的は、銅陰極の電気精錬および/または電解採取での使用に適した実質的に永久的な二重および/またはグレード304ステンレス鋼陰極プレートを提供することである。
【0033】
もう一つの好ましい形態における本発明のさらなる目的は、電解プレート上への金属の電着および接着に適した二重鋼電解プレートを製造する方法と、電解プレート上への金属の電着および接着に適したグレード304鋼電解プレートを製造する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の第1の態様によれば、金属の電着のための基板として適切な電解プレートであって、少なくとも部分的に二重ステンレス鋼からなる電解プレートが提供される。
【0035】
好ましくはこの二重ステンレス鋼は、316Lステンレス鋼に関して低ニッケルおよび/または低モリブデン鋼である。好ましくは、二重鋼は実質的に、近似的に、22〜26%Cr、4〜7%Ni、0〜3%Mo、および0.1〜0.3%Nを含む組成によって特徴付けられる。代替としてこの二重鋼は実質的に、近似的に、1.5%Ni、21.5%Cr、5%Mn、0.2%Nを含む組成によって特徴付けられる。
【0036】
一実施形態ではこの電解プレートは、スタータシート陰極ブランクとしての使用に適している。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、金属の電着のための基板として適切な電解プレートであって、少なくとも部分的に「グレード304」鋼からなる電解プレートが提供される。
【0038】
一実施形態ではこの電解プレートは、実質的に永久的および/または再使用可能であり、例えば陰極マザープレートである。
【0039】
好ましくは、上記グレード304鋼は実質的に、近似的に、<0.8%C、17.5〜20%Cr、8〜11%Ni、<2%Mn、<1%Si、<0.045%P、<0.03%S、残りFeを含む組成によって特徴付けられる。
【0040】
もう一つの実施形態ではこのグレード304ステンレス鋼は、2B仕上げによって用意される。
【0041】
第1、第2態様の実施形態では、電解プレートの表面(複数可)は、このプレートに所定の接着特性を与えるように修正される。用語「所定の接着特性」は、金属の電着が要求される表面が電着物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要な接着性であり、修正された表面からの電着物の機械的分離を防止するには不十分な強度である接着性を作り出すように修正された表面粗さを有することを意味すると取られるべきである。
【0042】
好ましい実施形態では、この電解プレートは陰極であり、電着物は電気精錬または電解採取のいずれかによる銅である。
【0043】
もう一つの実施形態では、バフ研磨表面仕上げがこのプレートに、所定の接着特性を与える。好ましくはこのバフ研磨表面仕上げは、電着された金属の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要であり、さらには修正された表面からの電着された金属の機械的分離を防止するには不十分である接着性を作り出すように修正された、表面粗さを有するめっき表面である。
【0044】
一実施形態ではバフ研磨仕上げは、典型的には約0.6〜2.5μmの範囲内の表面粗さRaによって画定される。
【0045】
特に好ましい実施形態ではバフ研磨仕上げは、典型的には約0.6〜1.2μmの範囲内の表面粗さRaによって画定される。
【0046】
好ましくは、バフ研磨仕上げは、研磨工具、アングルグラインダ、電気または空気駆動サンダ、またはこれらの組合せなどの装置によって施されてもよい。
【0047】
もう一つの実施形態では、プレートの表面には一つ以上の空洞が形成され、それによってプレートに所定の接着特性を与える。
【0048】
一実施形態ではこれらの空洞の少なくとも幾つかは、プレートの厚みを完全に貫通して延びるが、代替の実施形態ではこれらの空洞の少なくとも幾つかは、プレートの厚みを単に部分的に通して延びる。
【0049】
もう一つの実施形態ではこれらの空洞は、最上部の空洞より上の電着された金属が比較的除去容易であり、最上部の空洞のレベルにあるか、より下にある電着金属が比較的除去困難であるように、電着された金属の上部堆積ラインから間隔をあけて配置される。
【0050】
好ましくはこれらの空洞は、プレートの最上部から実質的に15〜20cmのところに配置され、それによって比較的除去容易な上部金属部と比較的除去困難な下部金属部との形成を容易にする。
【0051】
一実施形態では電着された金属は、まず上部金属部とプレートとの間に楔打込みする屈曲装置によって除去可能である。
【0052】
さらなる実施形態では、プレートの表面に一つ以上の溝部が形成され、それによってプレートに、所定の接着特性を与える。これらの溝部はプレートの表面上で実質的に任意の形状または方位であり得るが、分離装置が電着金属を最上部から底部の方に引き剥がすという事実に結びついたV溝制約により、好ましくは水平ではない。
【0053】
もう一つの実施形態では、プレートの表面に一つ以上の横桟部が配置され、それによってプレートに、所定の接着特性を与える。これらの横桟部は、プレートの表面上で実質的に任意の形状または方位であり得る。実質的に水平な横桟部(複数可)は、より多くの陽極スラッジが堆積でき、それによって電着物の純度を損なうという付随するトレードオフによって、より大きな動作接着性を与える。
【0054】
もう一つの実施形態ではプレートの表面はエッチングされ、それによってプレートに所定の接着特性を与える。好ましくはこのエッチングは電気化学的手段によって実行される。
【0055】
さらなる実施形態ではプレートは、切り落としコーナー技術および/またはV溝技術を含み、それによってプレート上の電着物の剥離を容易にする。
【0056】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様および/または第2の態様による電解プレート上に金属を電着する方法が提供される。
【0057】
本発明の第4の態様によれば、電解プレート上への金属の電着と接着のために適した二重鋼電解プレートを製造する方法であって、
電解金属堆積物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要であり、さらには修正された表面からの上記の電着された金属の機械的分離を防止するには不十分である接着性を作り出すために修正された表面粗さを有するめっき表面を得るように二重鋼プレートの表面を修正することを含む方法が提供される。
【0058】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様による方法によって製造される、二重ステンレス鋼電解プレートが提供される。
【0059】
本発明の第6の態様によれば、電解プレート上への金属の電着と接着のために適したグレード304鋼電解プレートを製造する方法であって、
電解金属堆積物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要であり、さらには修正された表面からの上記の電着された金属の機械的分離を防止するには不十分である接着性を作り出すために修正された、表面粗さを有するめっき表面を得るようにグレード304鋼プレートの表面を修正することを含む方法が提供される。
【0060】
本発明の第7の態様によれば、第6の態様による方法によって形成される、グレード304鋼電解プレートが提供される。
【0061】
上記の利点にもかかわらず、ニッケルとモリブデン両方の予測できない(また現在急速に上がりつつある)価格は、工業規格陰極プレートとしての316Lステンレス鋼の経済的使用に増大する圧力をかけている。
【0062】
現在使用されている再使用可能陰極技術は、それに関連した原材料の法外なコストという欠点から損害を受けている。したがって再使用可能陰極の使用範囲は狭い。驚くべきことに、新しい材料と管理された表面仕上げの組合せが陰極製造において、利用される原材料の品質とコスト両方の救済が可能であることが見出されている。コスト低減が実現すれば、今度は再使用可能陰極市場の範囲を拡大する可能性があり、これを他の材料の電着にまで拡大される可能性がある。
【0063】
実用可能な代替の「永久的」陰極プレートの開発の機会が存在する。不都合なことにこのような材料は、少なくとも部分的には、下記を同時に示す陰極プレートを提供するという二重の問題によって、直ちに得られるものとはなっていない。
【0064】
1.強酸性のH2SO4/CuSO4媒体における十分な耐食性、および
2.接着性が陰極ブレードへの化学的または物理的損傷なしに、堆積物の物理的手段による即時分離を可能にしなくてはならない場合で、めっきされた電極の電極処理装置への安全な搬送を可能にするための銅堆積物の十分な動作接触接着性。
【0065】
したがって、より経済的に実用可能な陰極プレートを製造するために、上記の特性を示す代替材料が必要である。低ニッケル・オーステナイトステンレス鋼を使用することは、非オーステナイト鋼を使用することを有すると考えられている。しかしながら、低ニッケル二重鋼の使用は、これが適切な仕上げで利用可能であれば実用可能な代替陰極プレートと考えられていた。
【0066】
ステンレス鋼の最も広く使用されているタイプは、「オーステナイト」ステンレス鋼である。「完全オーステナイト」鋼構造は、少なくとも7%のニッケル含有量を有し、これは延性、広範囲に及ぶ使用温度、非磁気特性、および良好な溶接性を与える。オーステナイトステンレス鋼の用途範囲は、家庭用品、容器、工業用配管および容器、建築物正面および建造構造物を含む。
【0067】
「フェライト」ステンレス鋼は、軟鉄に似ているがより良好な耐食性という特性を有する。これらの鋼の最も大きな共通点は、構造物的用途で12〜17%クロム、最もよく使用されるのは12%であり、家庭用品、ボイラー、洗濯機および屋内建造物では17%である。
【0068】
「二重」鋼は、オーステナイトとフェライトのほぼ等しい割合の2相構造を有する。二重構造は、強度と延性の両方を与える。二重鋼は、石油化学、製紙、パルプおよび造船工業で最もよく使用される。このフェライト/オーステナイト状態を達成するために、合金元素の種々の組合せが使用され得る。最も一般的な二重鋼の組成は、22〜26%Cr、4〜7%Ni、0〜3%Mo、オーステナイトを安定化するための少量の窒素(0.1〜0.3%)の範囲内である。一つの適切な商業的二重ステンレス鋼は、近似的に1.5%Ni、21.5%Cr、5%Mn、および0.2%Nを含有する。
【0069】
前述のように電気精錬工業において一般に容認されている知識は、電着された金属を陰極プレートに十分に接着させるには、陰極プレート上には2B仕上げが必要であるということである。利用可能な二重ステンレス鋼の一部は電気精錬工業の要件に合致する耐食性を示すが、これらの材料は2B仕上げでは利用可能でない。
【0070】
2B仕上げは製造によって二重鋼に与えることはできないので、実用可能な代替手段は、その表面接着特性を真似ること、すなわち二重鋼の表面をバフ研磨および/またはブラッシングすることによる「2Bの様な」仕上げの製造と考えられていた。
【0071】
2B仕上げを必要とする容認された知識とは反対に、本出願人らは意外にも、二重鋼が銅の電解採取のために陰極プレートに「そのままで」使用されるとき、電着物のプレートへの動作接着は、必要なさらなる処理を考慮するために容認できるほどに迅速であることを見出した。
【0072】
しかしながら、二重鋼陰極プレートの有効性を広げるために、本発明の範囲内で二つのさらなる修正が開発された。
【0073】
第1に、陰極の表面には、横桟、溝および/または孔などの「物理的ロック」が加えられ得る。横桟および/または溝は、陰極の一つ以上の表面に亘って水平、垂直、斜めまたはそれらの任意の組合せであってよい。任意で横桟(複数可)および/または溝(複数可)は、陰極の前面と後面両方の最下部の幅に亘って実質的に水平に配置され得る。横桟(複数可)および/または溝(複数可)は、固形の堆積物が重力下で滑り落ち得ない表面を与えることによって電解採取された銅堆積物の「巻きほどき」を防止するために役立つ。しかしながら実質的に水平な横桟は、陽極スラッジが堆積し得る表面を与えるという前述の問題から不利益を被り、また実質的に水平な溝は陰極表面にV溝制約を与える。
【0074】
好ましくは、溝(複数可)は、実質的にプレートの長さに沿って実質的に垂直に配置される。この選択は、最上部から底部へ動作するISA PROCESS(登録商標)屈曲除去装置の動作の正常モードから生じる。溝が水平に配置されれば、その結果生じるV溝制約は、電着された金属を表面から引き剥がして溝の周りで破損させる可能性がある。
【0075】
同様に、陰極プレートの表面(複数可)上に一つ以上の孔を配置すると、孔内に銅めっきすることが可能になり、それによって陰極により良好な接着性が与えられる。孔(複数可)は、プレートの厚み/幅を完全に、または部分的に貫通して延びることができ、好ましくは最上部の孔より上に上部めっき部分を配置可能にし、かつ最上部の孔のレベルの位置とそれより下の位置に下部めっき部分を配置可能にするために、プレートの最上部から15〜20cmのところに配置される。
【0076】
上部めっき部分は、プレートへの接着性が孔のないプレートに関して改善されていないので、比較的除去が容易である。しかし、下部めっき部分では一つ以上の空洞内の金属めっきに起因するより大きな動作接着性が動作接着性を向上させるので、比較的除去が困難である。したがって、電解プレートの表面上で最上部から底部へと動作する除去装置は、上部めっき部分とプレート自体との間に楔打込みして、その後の下部めっき部分の除去をより容易にする。
【0077】
プレートは、銅堆積物を除去する最初の段階で、グリップされて曲げられる。孔の内部に形成された堆積物とそれによって与えられた接着は、機械的に壊れ易いことが好ましい。したがって、孔の最適なサイズ/数/配置/深さは、スケール、陰極サイクル長さおよび精錬される金属にしたがって変わり得る。
【0078】
より良好な動作接着性を与える第2の手段は、電解採取された銅堆積物がよりよく接着し得るエッチング面を作り出すように、陰極の表面を電気化学的にエッチングすることである。しかしながら、このような電気化学的エッチングは、実質的に平坦な銅シートがさらにそれから製造できるようにステンレス鋼プレートの実質的な垂直性を保持しなくてはならない。
【0079】
二重鋼陰極プレートの明らかな利点は、コストの点で実証される。二重鋼は一般に、316L鋼より安価である。さらに二重鋼は、現在陰極プレートに使用されている316L鋼より遥かに強く、これは二重陰極プレートがこれらプレートの本質的な機能を損なわずに、予測可能なほどに、より薄く作られ得ることを意味する。プレートは必ず、陰極表面からの電着物の分離のための屈曲を受けるために十分に強くなくてはならない。316L陰極プレートは典型的には約3.25mmの厚さであるが、二重鋼は原則として約1mm厚さの陰極プレートを維持するほど十分に丈夫である。しかしながら陰極プレートの表面(複数可)上への横桟、溝および/または孔の選択的配置は、このようなプレートが好ましくは約2.0〜2.25mmの厚さであることを意味する。とにかく現在の価格で2.25mm厚の二重ステンレス鋼陰極は、機能的に同等な3.25mm厚の316L陰極プレートに対してさらに大きなコスト節減を表している。工業的規模の電気精錬所の経済効率の点からのこれらの節減の重要性は、過小評価されるべきではない。
【0080】
二重ステンレス鋼陰極プレートのさらなる市場は、スタータシートとして存在する。スタータシート技術は上述され、適切な二重鋼スタータシートを達成することの利点は、コストと加工効率の両方において証明される。
【0081】
本発明の範囲内でのさらなる開発において、陰極プレートとしての低グレード「304」鋼が使用される。グレード304鋼は、典型的には、<0.8%C、17.5〜20%Cr、8〜11%Ni、<2%Mn、<1%Si、<0.045%P、<0.03%S、残りFeの組成を有する。
【0082】
グレード304は、最も多面的で広く使用されるステンレス鋼である。304のバランスしたオーステナイト構造により、このグレードをシンク、底深い容器およびソースパンなどの絞りステンレス部品の製造において優位にしている中間の焼きなましをすることなしに、大幅に深絞りすることが可能になる。グレード304は、工業、建築および輸送の分野での用途のための種々の部品に直ちにブレーキ形成または圧延形成される。オーステナイト構造はまた、304に優れた靭性を与える。
【0083】
しかしながらグレード304鋼は、陰極プレートとして有効であるには余りにも腐食され易いという汚名を受けてきた。これは温暖な塩化物環境において点食および亀裂腐食を受けることであり、周囲温度において最大約200mg/L塩化物、60℃において150mg/Lに低減する塩化物を有する飲料水に耐性があると考えられる。これらの理由から、グレード304は、潜在的な実質的に永久的な陰極プレートとしては一般に無視されてきた。
【0084】
しかしながらグレード304鋼は2B仕上げで製造でき、本出願人らは意外にも、304鋼から3.0〜3.25mmの厚さに作られた2B仕上げの陰極プレートが銅の電解採取で使用されたとき意外にも効果的であることを発見した。
【0085】
本出願人らは、電解採取された銅堆積物の十分な動作接着性を作り出して、さらに従来のISA PROCESS(登録商標)陰極剥離装置による堆積物の即座の分離を可能にするために適したバフ研磨仕上げまたは研磨仕上げを開発した。
【0086】
ステンレス鋼は、陰極構成への組立ての前または後に「バフ研磨」され得る。したがって各場合で使用される装置は異なる。原則は、金属を研削または研磨するために利用可能な商業的工具の一つを利用することである。これらは、研磨工具、アングルグラインダ、電気または空気駆動サンダであり得る。バフ研磨媒体の選択と利用される装置の速度選択は、意図される陰極設計のめっき表面の正しい仕上げを得ることにとって極めて重要である。
【0087】
本発明の範囲内のもう一つの予測可能な開発として、二重および/またはグレード304陰極プレート(複数可)への切り落としコーナー陰極技術の適用がある。切り落としコーナー陰極技術は、本出願人らの国際特許出願第PCT/AU2004/000565号に開示されている。陰極ブレードのサイド周辺部と下方周辺部は、底部エッジの反対側端部の間に延びて、これら端部をそれぞれのサイドエッジに接続するコーナーエッジ部とそれぞれの下方周辺部およびサイド周辺部との短絡を終端する。
【0088】
さらに、本発明の二重および/またはグレード304陰極プレートは、V溝技術と連携して使用され得ることが考えられる。陰極プレートの底部エッジおよび/またはコーナーエッジ部分は、陰極ブレードから2枚の別々のシートへの銅の分離を助けるためのV溝などの溝を含む。
【0089】
本発明の好ましい実施形態は、例示のみを目的として下記の添付の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】電着物の動作接着性を増加させるための電解プレートの正面内における複数の空洞を示す、本発明の一実施形態による電解プレートの正面図である。
【図2】電解プレートの厚みを貫通して延びる空洞を示す、図1の線2−2上の断面図である。
【図3】実質的にプレートの幅を横切って延びる水平な溝部を示す、本発明のもう一つの実施形態による電解プレートの正面図である。
【図4】溝部が形成され得る相対的深さを示す、図3の線4−4上の断面図である。
【図5】実質的にプレートの最下部の幅を横切って延びる水平な横桟部を示す、本発明のもう一つの実施形態による電解プレートの正面図である。
【図6】プレートの前面と後面の両方に延びる横桟部を示す、図5に示された電解プレートの側面図である。
【図7】図1および図2に示された実施形態と切り落としコーナー技術を組み込んだ、本発明の特に好ましい実施形態の正面図である。
【図8】V溝技術を組み入れた、本発明のもう一つの特に好ましい実施形態の最下部の拡大側面図である。
【図9】本発明にしたがって作られたテストプレートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図面を参照すると、金属2の電着用の基板として適切な電解プレート1は、二重ステンレス鋼またはグレード304鋼からなる。
【0092】
二重ステンレス鋼電解プレートが必要とされる場合、適切な鋼は、316Lステンレス鋼に関して低ニッケルおよび/または低モリブデン鋼であって、プレートはスタータシート陰極ブランクとしての使用に適している。
【0093】
グレード304鋼電解プレートが必要とされる場合、プレートは実質的に永久的および/または再利用可能である。特に好ましい実施形態では、グレード304鋼は、2B仕上げによって用意される。
【0094】
二重またはグレード304鋼のいずれかで十分である場合には、電解プレート1の表面(複数可)は、プレートに「所定の接着特性」を与えるように修正される。この用語は、金属2の電着が、要求される電解プレート1の表面3が電着金属2の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要な接着性、さらには修正された表面3からの電着2の機械的分離を防止するには強度的に不十分な接着性を作り出すように、修正された表面粗さを有することを意味すると取られるべきである。
【0095】
特に好ましい実施形態では電解プレート1は、陰極であり、電着された金属2は電解採取された銅である。
【0096】
要求される所定の接着特性を陰極1に与える一つの手段は、バフ研磨表面仕上げによるものである。バフ研磨表面仕上げは、電解採取された銅堆積物2の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要であり、さらには修正された表面3からの電着銅に機械的分離を防止するためには不十分である接着性を作り出すように修正された表面粗さを有するめっき表面3である。バフ研磨仕上げは、典型的には近似的に0.6〜2.5μmの範囲内の、より好ましくは近似的に0.6〜1.2μmの範囲内の表面粗さRaによって画定
される。研磨工具、アングルグラインダ、電気または空気駆動サンダ、あるいはこれらの組合せなどの装置は、バフ研磨仕上げを実施できる。
【0097】
特にもう一つの好ましい実施形態を概略表示する付属図面の図1および2を参照すると、プレート1の表面3には一つ以上の空洞4が形成され、これによりプレートに所定の接着特性が与えられる。このような空洞の物理的寸法と特性は、2つのサイド間のブリッジまたは接合が効果的に避けられるように選択される。
【0098】
これらの空洞は、プレートの厚みを完全に貫通するか(図2)、あるいはプレートの厚みを単に部分的に通して延びることができる。これらの空洞4は、最上部空洞4より上方に堆積された金属が比較的除去し易く、また上記最上部空洞のレベルに、またはこのレベルより下方に堆積された金属が比較的除去し難くなるように、電着金属2の上部堆積ライン5から間隔をあけて配置される。空洞4は、プレート1の最上部6から実質的に15〜20cmのところに配置され、これにより比較的容易に除去される上部金属部7および比較的除去され難い下部金属部8の形成が容易になる。電着された金属2は、まず上部金属部7とめっき表面3との間に楔打込みする屈曲装置9によって除去可能である。
【0099】
特にもう一つの好ましい実施形態を概略表示する付属図面の図3および4を参照すると、プレート1の表面3には一つ以上の溝部10が形成され、それによってプレートに所定の接着特性を与えている。これらの溝部は実質的に、上記プレート上でいかなる形状あるいは方位であってもよい。しかしながら、実質的に水平な溝部は、めっき表面3上に本来のV溝制約を与える。
【0100】
特になおもう一つの好ましい実施形態を概略表示する付属図面の図5および6を参照すると、プレート1の表面3には一つ以上の横桟部11が形成されており、それによってプレートに所定の接着特性が与えられる。これらの横桟部は実質的に、プレート上でいかなる形状あるいは方位であってもよい。
【0101】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、所定の接着特性は、電気化学的エッチングによってプレート表面3に与えられる。
【0102】
特になおもう一つの好ましい実施形態を概略表示する図7を参照すると、電解プレート1に切り落としコーナー12の技術を組み入れてもよい。
【0103】
特になおもう一つの好ましい実施形態を概略表示する図8を参照すると、電解プレート1にV溝13の技術を組み入れてもよい。
【0104】
使用時に、陰極1上に堆積された電解採取銅2は、前述の本発明の一つ以上の実施形態による一つ以上の表面修正(複数可)によってプレートからの分離が防止されている。
【0105】
また電解プレート上への金属2の電着および接着に適した二重ステンレス鋼またはグレード304鋼電解プレート1を製造する方法であって、電解金属堆積物2の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要な接着性であり、かつ修正された表面3から電着金属2の機械的分離を防止するには強度的に不十分である接着性を作り出すために修正された表面粗さを有するめっき表面3を得るように、プレート1の表面3を修正することを含む方法が提供される。
【0106】
例示された本発明が、銅陰極の電気精錬および/または電解採取での使用に適した、実質的に永久的な二重および/またはグレード304ステンレス鋼陰極プレートを提供することは理解されたい。
【0107】
本発明は特定の例を参照しながら説明されてきたが、本発明が他の多くの形で具体化され得ることは、当業者によって理解される。
【0108】
本明細書と特許請求の範囲の全体を通して、ほかの点で文脈が明らかに必要としなければ、用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的または網羅的意味とは反対の包括的意味、すなわち「含むが限定されない(including,but not limited to)」という意味に取られるべきである。
【0109】
請求項全体を通して使用されるように、用語「所定の接着特性」は、電着が要求される電解プレートの表面が、電着物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要であり、かつ修正された表面からの電着物の機械的分離を防止するには強度的に不十分である接着性を作り出すように修正された、表面粗さを有することを意味すると取られるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終グレードの金属が電着される永久的基板である電解プレートであって、
前記プレートは、前記金属が電着される少なくとも一つの表面を有し、
前記表面は、電着物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要である接着性を作り出すように修正された表面粗さを有し、前記接着性は前記修正された表面から前記電着物の機械的分離を防止するには不十分な強度であり、
前記プレートは、少なくとも部分的に二重ステンレス鋼からなる、電解プレート。
【請求項2】
前記二重ステンレス鋼は、316Lステンレス鋼に関して低ニッケルおよび低モリブデン鋼の少なくともいずれか一方である、請求項1に記載の電解プレート。
【請求項3】
前記二重ステンレス鋼は、22〜26%Cr、4〜7%Ni、0〜3%Mo、および0.1〜0.3%Nを含む組成によって特徴付けられる、請求項1または請求項2に記載の電解プレート。
【請求項4】
前記二重ステンレス鋼は、1.5%Ni、21.5%Cr、5%Mn、0.2%Nを含む組成によって特徴付けられる、請求項1または請求項2に記載の電解プレート。
【請求項5】
最終グレードの金属が電着される永久的基板である電解プレートであって、
前記プレートは、前記金属が電着される少なくとも一つの表面を有し、
前記表面は、電着物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要である接着性を作り出すように修正された表面粗さを有し、前記接着性は前記修正された表面から前記電着物の機械的分離を防止するには不十分な強度であり、
前記プレートは、少なくとも部分的にグレード304鋼からなる、電解プレート。
【請求項6】
前記グレード304鋼は、0.8%未満のC、17.5〜20%Cr、8〜11%Ni、2%未満のMn、1%未満のSi、0.045%未満のP、および0.03%未満のSを含む組成によって特徴付けられる、請求項5に記載の電解プレート。
【請求項7】
前記組成の残りは、Feを含む、請求項6に記載の電解プレート。
【請求項8】
前記グレード304鋼は、2B仕上げによって作成される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項9】
前記電解プレートは陰極であり、前記電着物は電気精錬または電解採取のいずれかによる銅である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項10】
前記接着性は、バフ研磨表面仕上げによって前記プレートに与えられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項11】
前記バフ研磨仕上げは、0.6〜2.5μmの範囲内の表面粗さRによって画定される、請求項10に記載の電解プレート。
【請求項12】
前記バフ研磨仕上げは、0.6〜1.2μmの範囲内の表面粗さRによって画定される、請求項10に記載の電解プレート。
【請求項13】
前記バフ研磨仕上げは、研磨工具、アングルグラインダ、電気/空気駆動サンダ、またはこれらの組合せなどの装置によって施され得る、請求項10〜12のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項14】
前記プレートの表面は一つ以上の空洞を含み、前記空洞は前記プレートに前記接着性を与える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項15】
前記空洞の少なくとも幾つかは、前記プレートの厚みを完全に貫通して延びる、請求項14に記載の電解プレート。
【請求項16】
前記空洞の少なくとも幾つかは、前記プレートの厚みを部分的に通して延びる、請求項14に記載の電解プレート。
【請求項17】
前記空洞は、最上部の前記空洞より上方の電着された金属が比較的除去容易であり、前記最上部の空洞のレベルにあるか、このレベルより下方にある電着金属が比較的除去困難であるように、前記電着された金属の上部堆積ラインから間隔をあけて配置される、請求項14〜16のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項18】
前記空洞は、前記プレートの最上部から15〜20cmのところに配置されて、除去容易な上部金属部と比較的除去困難な下部金属部との形成を容易にする、請求項14〜17のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項19】
前記電着された金属は、前記上部金属部と前記プレートとの間に楔打込みする屈曲装置によって除去可能である、請求項18に記載の電解プレート。
【請求項20】
前記プレートの表面は一つ以上の溝部を有し、前記溝部は前記プレートに前記接着性を与える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項21】
前記溝部は、前記プレートの表面上で任意の形状または方位であり得る、請求項20に記載の電解プレート。
【請求項22】
前記プレートの表面には一つ以上の横桟部が配置され、前記横桟部が前記プレートに前記接着性を与える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項23】
前記横桟部は、前記プレートの表面上で任意の形状または方位であり得る、請求項22に記載の電解プレート。
【請求項24】
前記プレートの表面はエッチングされ、前記エッチングが前記プレートに前記接着性を与える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項25】
前記エッチングは、電気化学的手段によって実行される、請求項24に記載の電解プレート。
【請求項26】
前記プレートは切り落としコーナーを含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項27】
前記プレートはV溝を含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の電解プレート。
【請求項28】
電解プレート上への最終グレードの金属の電着と接着に適した永久的二重鋼電解プレートを製造する方法であって、
前記二重鋼電解プレートの表面を修正して、電解金属堆積物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要である接着性を作り出すための表面粗さを有するプレート表面を得ることを含み、
前記接着性は前記修正された表面から前記電着された金属の機械的分離を防止するには不十分な強度である、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって製造される、永久的二重鋼電解プレート。
【請求項30】
電解プレート上への最終グレードの金属の電着と接着のために適した永久的グレード304鋼電解プレートを製造する方法であって、
前記グレード304鋼プレートの表面を修正して、電解金属堆積物の動作接着とその後の処理とを可能にするために必要である接着性を作り出すための表面粗さを有するプレート表面を得ることを含み、
前記接着性は前記修正された表面から前記電着された金属の機械的分離を防止するには不十分な強度である、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法によって製造される、永久的グレード304鋼電解プレート。
【請求項32】
前記二重ステンレス鋼は、21.5〜26%Cr、1.5〜7%Ni、0〜3%Mo、および0.1〜0.3%Nを含む組成によって特徴付けられる、請求項1に記載の電解プレート。
【請求項33】
前記二重ステンレス鋼は、1.5〜7%Niを含む、請求項1に記載の電解プレート。
【請求項34】
前記二重ステンレス鋼は、21.5〜26%Crを含む、請求項1に記載の電解プレート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−211397(P2012−211397A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166686(P2012−166686)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2008−500007(P2008−500007)の分割
【原出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507303239)エクストラータ クイーンズランド リミテッド (2)
【Fターム(参考)】