説明

ステープルファイバーおよびその製造方法

ポリ(トリメチレンテレフタレート)のステープルファイバーの製造方法は、未延伸糸(1)を浸漬タンク(2)に供給し、ロール(3、4)によって進め、水中で濡らす工程を含む。濡らされた未延伸糸(1)はロール(5、6、7、8、10)によって浸漬タンク(9)での第1延伸段階に進められ、浸漬タンク(9)の水中でロール(10、11)間で部分延伸される。次に糸(1’)は、ロール(10)より速い速度で駆動されるロール(11、12、13、14、15、16)によって部分延伸される。部分延伸糸(1’’)は次に水スプレージェット(17)によって再び濡らされ、ロール(16)より速い速度で駆動されるロール(18、19、20、21)およびフィルムガイダー(22、23)によってさらに延伸される。ニップロール(5’、8’、14’、22’、25’)が糸滑りを最小限にするために用いられる。第2延伸後に、仕上剤噴霧器(24)が延伸糸(1’’’)に希薄仕上剤を塗布し、糸は次にフィルムガイダー(25、26)によって進められ、かつ、張力下に維持され、駆動される捲縮機ニップロール(26’)によってスタッファーボックス捲縮機(27)中へ進められ、捲縮機でそれはスチーム(28)の適用によって捲縮され、熱固定される。捲縮糸(1’’’’)は次に従来のベルトドライヤー(29)を通って弛緩状態で進められ、ロータリーカッター(30)でカットされ、貯蔵および輸送のために梱包される(31)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステープルファイバーおよびそれらの製造方法に関する。本方法はポリ(トリメチレンテレフタレート)から繊維、特にカーペットステープルを製造するのに特に有用である。本方法は老化した未延伸繊維からのスフ糸の製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(「2GT」)のようなポリアルキレンテレフタレートは一般的な市販のポリエステルである。それらは、化学薬品、熱および光安定性、高融点ならびに高強度をはじめとする、優れた物理的および化学的性質を有する。結果として、それらは樹脂、フィルム、および繊維用に広く使用されてきた。
【0003】
ナイロン繊維とPET繊維との延伸の重要な違いは、適度の延伸力で、一様なやり方で繊維に延伸を開始させるために未延伸糸が上げられる温度にある。ナイロンおよびPETは室温で延伸することができるが、一様な物理的性質を得るためにおよび/または延伸中の過度のフィラメント破損を排除するために、それぞれ約40℃および65℃のそれらのガラス転移温度より高い温度で最も良く延伸される。二次転移温度とも呼ばれる、ガラス転移温度(Tg)は膨張法によって得ることができる。未延伸糸は、加熱ロールのような延伸アシストで延伸前にそのTgより高く上げることができる。
【0004】
ポリエステルおよびナイロン・ステープルファイバーの製造は多くの場合多段法を含む。第1工程では、ポリマーはフィラメントへ押し出され、それは急冷され、繊維化され、潤滑化され、各紡糸位置のフィラメントはフィラメント束へ組み合わされる。次に個々の紡糸位置からのフィラメント束はスピニング壁で直ちにスパンロープへ組み合わされる。有用な特性を有する配向した構造を形成するためのスパンロープの延伸は多くの場合別個の工程で行われ、その工程でスパンロープは次の延伸およびテクスチャリングのために缶中へだらだらと入れられる。延伸機で延伸するために、スパン缶は経済的サイズのクリールへ集められる。この分割紡糸/延伸ステープル法には、延伸用のかかるクリールを生み出すことを可能にするために押出工程と延伸工程との間に固有の時間遅延が存在する。この遅延は多くの場合かなりのものであり、部分的に、紡糸位置の数および紡糸機の紡糸速度に依存する。さらに、生産スケジュールは延伸前遅延を数時間どころか数日まで延ばし得る。
【0005】
下流加工および最終用途にとって十分な強度を繊維に与えるために繊維が延伸された後、それはテクスチャ加工され、潤滑化されて適切な繊維摩擦および価値を与える。スタッフィングボックス捲縮機が通常ナイロンおよびPETステープル・テクスチャリングを実施する。捲縮装置およびプロセス条件は捲縮のタイプ、度数、および耐久性に影響を与え得る。捲縮トウは潤滑油で前−または後処理し、乾燥し、弛緩させまたはアニールし、ステープルファイバーへカットし、梱包することができる。延伸から梱包までの操作は、別個の工程でまたは連結した工程で実施することができる。最適条件は繊維組成物および最終用途に依存し、カット長さは最終用途およびステープル加工システム、すなわち、綿、羊毛、改質梳毛糸に依存する。綿システム装置は一般にテキスタイル用途向けに短い繊維(1〜3インチ)を使用し、カーペット加工用に使用される改良梳毛糸システムはより長い繊維(6〜8インチ)を使用する。
【0006】
カットされたステープルファイバーのベイルは、開繊、混紡、カーディング、延伸、および紡糸装置を用いる多段階工場操作で連続糸へ変換される。生じた繊維における品質低下なしに繊維が延伸およびテクスチャリング工程に耐え得るように、繊維には特定の物理的性質が非常に望ましい。最も決定的に重要なパラメーターの一つは捲縮度数(インチ当たりの捲縮、c.p.i)およびその耐久性(捲縮巻取り値、CTU)である。ステープルファイバーは十分なスライバー粘着力を提供するのに十分な、しかし混紡のような操作で過度の繊維絡み合いをもたらすほど多すぎない捲縮を有することが望ましい。捲縮は、工場加工でのかなりの力に耐えるほど十分に永久的であるべきである。例えば、かかる繊維がそれらを平行に梳くためにカーディングされる場合、それらは、絡み合いのために、捲縮が永久的に除去されるまたはフィラメントが破断するまで、もつれて不具合が生じるかまたは引き伸ばされ得る。また、引き伸ばしからか不十分な耐久性のためかのどちらかで捲縮が失われた場合、カード機を出るスライバーは不十分な強度および粘着力を持ち、さらなる操作を中断し、妨げ得る。たとえCTUが捲縮度数と共に増加するとしても、高すぎる捲縮からの過度の絡み合いを防止するために、繊維は捲縮度数とCTUとのバランスを有することが望ましい。カーペット繊維はテキスタイル繊維より高いデニールを有し、より堅く、従ってそれらは絡み合いを防ぐためにより低い捲縮レベルを必要とする。さらに、いかなる捲縮ロスも糸の嵩を低下させ、それはカーペットの価値を下げる。より低い糸嵩はより少ないカバーを提供し、従って同等のカバーのためにはより多くの重量を必要とする。加工潤滑油は繊維−繊維および繊維−金属摩擦を制御するのを助けるために塗布され、静電気防止を提供する。カーペット製造では、紡績糸は典型的には諸撚りされ、撚りを固定するためにヒートセットされ、一次基布へタフティングされ、染色される。次に、タフト中に固着してカーペットに寸法安定性を与えるラテックス接着剤を用いて、二次基布が一次基布に貼り付けられる。
【0007】
またPTTまたは3GTとも言われるポリ(トリメチレンテレフタレート)は、カーペット、テキスタイル、および他の熱可塑性樹脂用途での使用に好適なポリエステルである。繊維形のポリ(トリメチレンテレフタレート)は、それが分散染料で大気圧で染色することができ、比較的低い曲げ弾性率、比較的高い弾性回復および弾力、ならびに耐汚染性を有するので望ましい。しかしながら、未延伸PTT糸は、幾つかの紡糸条件下で老化(例えば、貯蔵)すると脆くなり得る。本明細書で上に言及されたように、ポリエステル・ステープルファイバーを製造するために用いられる従来の二段法は、繊維を効果的に老化させる固有の時間遅延を押出工程と延伸工程との間に含む。脆い繊維は延伸するのが困難であり得るし、延伸できないことさえあるかもしれない。
【0008】
米国特許第6,109,015号明細書はPTTの脆さの問題を克服するための試みを開示している。該特許は、従来の2段階法で製造された糸よりも改善された耐摩耗性を有すると述べられているPTT糸を製造するための連続法を開示している。該連続法は、紡糸工程と延伸工程とを連結することにより貯蔵工程を排除することによって繊維の老化を回避する。しかしながら、該方法はまた、既存の従来の二段装置の使用を妨げる重大な装置改良を必要とする。
【0009】
未延伸糸の老化に関連した問題を克服するための他の取組みは収縮の低減または制御に向けられた。例えば、特許公報国際公開第01/68962 A2号パンフレットは、比較的長い急冷ゾーンの装置でポリ(トリメチレンテレフタレート)から細いデニール・テキスタイル糸を製造するための二段法を開示している。第1工程は未延伸糸を生み出し、第2工程は未延伸糸をステープルファイバーに変換する。該方法は、60℃以上の温度で張力下に繊維を予備調整する工程と、次に60℃以上の温度で、好ましくは繊維の全延伸長さの80〜85%に繊維を延伸する工程とを含む。任意の第2延伸段階の後に、繊維は190℃以下の温度で弛緩される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ある種のテキスタイル最終用途では、ステープルファイバーが連続フィラメントより好ましい。例には、その両方ともテキスタイル・ステープル加工装置の使用を可能にするために連続繊維よりもむしろ不連続繊維を必要とするアパレル布(1〜6dpf)およびカーペット(6〜25dpf)用のステープル紡績糸が挙げられる。布およびカーペットに好適なステープルファイバーの製造は、延伸が別個の工程で実施される従来の分割紡糸/延伸方法で特に、特殊な問題を提起し得る。このように、PTTからの繊維、特にステープルファイバーの製造方法を求める要求は存続している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、PTT繊維からのステープルファイバーの形成方法を提供する。特に、本明細書に開示される方法は延伸、捲縮、および乾燥の工程を含む。本明細書に開示される方法に従って製造されたPTT繊維はカーペット糸としての使用に特に好適である。本方法は、分割紡糸/延伸法で延伸される前にある時間一般に貯蔵され、従来装置を用いる従来方式で延伸されるには脆すぎ得る、老化した未延伸糸をはじめとする未延伸糸(「UDY」)を加工するのに好適である。本明細書に開示される方法は、貯蔵中の繊維老化による脆さがほとんどないまたは何もないステープルファイバーへの未延伸PTT糸の加工および/または未延伸糸の加工を可能にする。別の利点は、従来のナイロンまたはPET装置が改善された繊維を製造するために簡単に改造できることである。PTT繊維は従来方式で溶融紡糸することができる。
【0012】
本発明の一態様は、本質的にポリ(トリメチレンテレフタレート)よりなる改善された6〜25dpfステープルファイバーの製造方法である。かかるステープルファイバーは一般にカーペット用途に使用される。例えば、カーペット繊維は約10、15、または20dpfであり得る。しかしながら、本発明の方法は列挙された範囲内すべてのデニールの繊維を製造するのに有用であると考えられる。本方法は、約45℃未満、より好ましくは約40℃未満の温度で、さらにより好ましくは約25℃で未延伸糸をプレウェッティングする工程と、繊維を第1段階で約45℃〜約95℃の温度で湿潤条件下にその最終長さの約30〜90パーセントに延伸する工程と、繊維を第2段階で湿潤条件下に約60℃〜約98℃の温度で延伸する工程と、延伸繊維を捲縮する工程と、捲縮繊維を約80℃〜約100℃の温度で、好ましくは約85℃でスチームで熱固定する工程と、繊維を乾燥し、弛緩させる工程とを含む。好ましくは、繊維は、第1段階では約50℃の温度で、第2段階では約60℃の温度で延伸され、捲縮繊維は約60℃〜約120℃の温度で乾燥される。湿潤条件は、例えば、水中または加工仕上剤の水溶液中のような、水および/またはスチームの存在下であり得る。好ましくは、未延伸糸は、最も一様な処理を保証するために実用的な最大繊維面積をウェッティング媒体に曝すやり方でプレウェッティングされ、延伸される。
これらおよび他の実施形態は、次の説明および添付される特許請求の範囲を考慮して、当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
特に明記しない限り、次の用語は本明細書で用いられる時には次の定義を有する。本明細書で報告される測定値は、メートル単位であるデニールをはじめとして、従来の米国テキスタイル単位を用いて報告される。繊維の比特性は下に記載されるように測定された。利用可能な時には、本明細書の以下の定義は、全体を参照により本明細書に援用される、The Man−Made Fiber and Textile Dictionary,Fouth Edition,Reprinted 1986,Celanese Corporationから引用された。
【0014】
数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に明記しない限り、該範囲はその端点、ならびに該範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図される。本発明の適用範囲はある範囲を画定する時に列挙された具体的値に限定されることを意図されない。さらに、本明細書に述べられるすべての範囲は、具体的に記載される特定の範囲だけでなく、列挙される最小および最大値をはじめとする、そこでの値の任意の組み合わせも含むことが意図される。
【0015】
「ステープル」は天然繊維かフィラメントからのカット長かのどちらかに関する。用語ステープル(ファイバー)は、テキスタイル工業では天然繊維またはカットされた人造繊維をフィラメントから区別するのに用いられる。人造繊維は特定の長さ、例えば、8インチほどに長いまたは1.5インチほどに短い長さにカットされ、従ってそれらは綿、羊毛、もしくは梳毛糸紡績システムで加工する、またはフロック加工することができる。
【0016】
また「実験室相対粘度」(LRV)とも呼ばれる「相対粘度」は、100ppmの98%試薬用硫酸を含有するヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP溶液)に溶解されたポリマーの粘度である。粘度測定装置は、多数の商用供給業者(例えば、Design Scientific、Cannon)から入手できる毛細管粘度計である。センチストークス単位の相対粘度は、25℃での純HFIP溶液の粘度と比べてポリマーの4.75重量%HFIP溶液について25℃で測定される。
【0017】
「急冷ゾーン」は、PTT繊維の加工用装置に関しては、紡糸繊維を製造するためにポリマーが押し出される紡糸口金から、次の延伸用の缶にドローオフ速度で紡糸繊維を進めるのに用いられるロールまでの冷却距離を意味するのに本明細書では用いられる。
【0018】
「延伸クリール」は、多くの末端がもつれることなくスムーズにおよび均一に引き出され、延伸機(ビーム)へと進められ得るように、多数の容器(缶)から末端を導くために配置されたフレームワークである。クリール・ストックは一度に延伸されるべき供給UDY缶の集合体である。
【0019】
「未延伸糸」は延伸されたことのない繊維に習慣的に適用される用語であり、編布または織布で使用されるそれらの糸のような、延伸され、糸製品へ加工された繊維を含むことを本明細書では意図されない。溶融紡糸の後、未延伸糸は延伸機にとって適切なトータルデニールが生み出されるまで蓄積される。蓄積は、工程間の休止または貯蔵時間を含めて24時間以上までかかり得る。例えば、延伸ラインでの経済的な延伸にとって十分な未延伸糸を製造するのに一般に6時間以上を要する。生産スケジュールおよび他の実践的考察のために、繊維は数日間貯蔵されるかもしれない。かかる貯蔵時間に曝された繊維は「老化した」または「老化した未延伸糸」と言われる。
【0020】
「延伸比」または「ドローダウン」は、フィラメントが溶融紡糸の後に引き伸ばされる量である。本明細書で用いるところでは、「延伸比」は、引きロール対送りロール(繊維を動かすロール)の表面速度の比である機械延伸比を意味する。引張りの結果として幾らかの引き伸ばしが起こる。
【0021】
「変形比」(MR)は三葉フィラメントの形状に関する。それはコアの内接直径または直径で割られたフィラメント葉の外接直径または外径の比である。それは透明の目盛り付き型板またはデジタル画像形成法を用いて測定することができる。その数字が高ければ高いほど、三葉フィラメントの3つの葉は長い。
【0022】
「捲縮」は、単位長さ当たりの捲縮として表される繊維のきめまたは波打ちである。インチ当たりの捲縮(cpi)で報告される捲縮度数は糸嵩の間接的な尺度である。捲縮度数は次の方法で測定される。フィラメントは2つのクランプの間に置かれ、次に2mg/デニールの張力がフィラメントに加えられる。クランプ間の捲縮の数がカウントされる。次に50mg/デニール張力が加えられ、伸びた長さが記録される。10フィラメントが測定されてしまうまで該方法が繰り返される。結果は平均され、平均された結果からcpiは次の通り計算される:CPI=(フィラメント中の捲縮の数)/(伸びた長さ)。
【0023】
「トウ」は、捲縮によって一緒に通常保持される、ルーズなロープ様形状に集められた明確な撚りなしの連続人造繊維フィラメントの大きなストランドである。トウは、繊維がステープルへカットされる前に達する形である。
「最終長さ」は、延伸繊維に関連して本明細書で用いるところでは、繊維がそれまで延伸される総長さを意味する。
【0024】
「捲縮巻取り値」(CTU、%)は繊維の弾力の尺度である。CTUは、二次捲縮の指定の度数および振幅が繊維中にいかにうまくセットされているかを表す。CTUは捲縮繊維対伸びた繊維の長さに関係し、こうしてそれは捲縮振幅、捲縮度数、および変形に抵抗する捲縮の能力によって左右される。捲縮巻取り値は式
CTU(%)=100(L1−L2)/L1
(式中、L1は伸びた長さ(0.13±0.02gpdの加えられた荷重下に30秒間ぶら下がっている繊維)を表し、L2は捲縮長さ(第1伸長後60秒間休止した後何の加えられた重りもなしにぶら下がっている同じ繊維の長さ)を表す)
を用いて計算することができる。
【0025】
「カーディング」は、それによってステープルが整列させられ、スライバーと呼ばれる連続の撚りなしストランドを形成する工程である。カード機は、その表面が多くの突き出た金属歯で覆われている一連のロールよりなる。
「スライバー」は、撚りなしで粗く集められた繊維の連続ストランドである。スライバーはカード機または延伸フレームによって運ばれる。スライバーの製造は、延伸されて最終的に紡績糸へ撚られ得る形へステープルファイバーを変換するテキスタイル作業での第一歩である。
【0026】
「スライバー・テナシティ」は、スライバー重量で割られたスライバーを破断するのに必要とされる重量と定義される。繊維の強度または粘着力はスライバー・テナシティ試験によって測定することができ、テキスタイル加工での繊維の性能を判断するのに役立つ。例えば、スライバーは、カーディングまたは引張操作で進められつつある時に破断しないほど十分な粘着力を望ましくは有する。スライバー・テナシティを測定するために、ある長さのスライバーが一端でテーピングされ、反対側の(テーピングされていない)端がクランプ中に置かれる。次に、スライバーが破断するまで、重りが10秒間隔で試料のテーピングされた端上に引き続いて置かれる。スライバー・テナシティ=破断するための重量(グラム)/スライバー重量(グレイン)。
【0027】
「嵩高加工糸」はテクスチャ加工糸を記載するための定性的用語である。「カーペット嵩」は、同等の本質(耐圧縮性)およびカバーの、他の繊維と比較した、カーペットパイル重量である。それは様々な圧縮機器で測定することができる。本実施例では、カーペット嵩はカーペット専門家のパネルによる主観的比較試験に準拠して評価された。
加撚はフィラメントを紡績機でテキスタイル糸へ組み合わせる工程である。「撚り」はテキスタイル糸の単位長さ当たりのその軸回りの回転の数である。撚りはインチ当たりの回転(tpi)として表すことができる。
「ゲージ」(ga.)は、カーペットタフティング機の針間のインチ単位の距離である。
【0028】
本発明は、PTTから繊維を形成するための改善された方法を提供する。本方法は、急冷された未延伸糸を好ましくは糸のTg未満の温度でプレウェッティングする工程と、急冷された未延伸PTT糸フィラメントを好ましくはそれらのTgより高い温度で、湿潤条件下に、例えば、水および/またはスチームの存在下に延伸する工程とを含む。
【0029】
本発明者らは、PTT未延伸糸がナイロンカーペット繊維の製造で知られている従来の溶融紡糸法を用いて加工された場合、繊維が押出後短時間内に極端な脆さを示すことを見いだした。脆さは、低い張力下でさえも容易にポキッと折れ得る弱い繊維をもたらす。PETポリエステルまたはナイロンでは起こらない、驚くべき構造の経時変化は、構造を配向させ、それに有用な強度を与えることを意図される次の延伸を妨害するかまたは妨げる。また、延伸後に、ある種の他の繊維での使用について知られている幾つかの従来法がPTTステープルファイバーの形成に用いられる場合、厳しい繊維捲縮ロスがあり、従ってカーディングのような下流工場加工にとって不十分なスライバー粘着力が生じ得る。不十分なスライバー粘着力の防止および高いカーペット嵩の達成が望ましい。PTTステープルの製造のために従来のナイロンまたはポリエステル装置を用い得ることもまた経済的理由で望ましい。
【0030】
好ましい実施形態では、PETまたはナイロンから糸を製造するのに通常用いられるもののような標準装置を本明細書に開示される方法で用いることができる。例示的な好ましい実施形態は図1に概略的に例示される。紡糸され、急冷ゾーン(示されていない)を通された未延伸糸(「UDY」)1はプレフィード浸漬タンク2に入り、ロール3および4によって進められ、水中で濡らされる(水レベルは示されていない)。湿潤UDY1’はロール5、6、7、8および10によって進められ、次に浸漬タンク9中での第1延伸段階(「延伸1」)に入り、第1段階浸漬タンク9で水中ロール10と11との間で部分延伸される。糸は、ロール10より速い速度で駆動されるロール11、12、13、14、15および16によって部分延伸される。部分延伸糸1’’は次に水スプレージェット17によって再び濡らされる。場合により、スチームジェットまたは別の浸漬タンクを水スプレージェットの代わりに用いることができる。さらなる延伸(「延伸2」)は、ロール16より速い速度で駆動される、ロール18、19、20および21、ならびにフィルムガイダー22および23によって達成される。ニップロール5’、8’、14’、22’および25’が糸滑りを最小限にするために用いられる。糸が第2延伸段階を通過した後、仕上剤噴霧器24が延伸糸1’’’に希薄加工仕上剤を塗布し、糸は次に、駆動される捲縮機ニップロール26’によってスタッファーボックス捲縮機27中へ押し入れられるまで、フィルムガイダー25および26によって進められ、かつ、張力下に維持され、捲縮機でそれは28でのスチームの適用によって捲縮され、熱固定される。「トウ」と呼ばれる捲縮糸1’’’’は次に従来のベルトドライヤー29を通って弛緩した状態で進められ、ロータリーカッター30でカットされ、貯蔵および運送のために梱包される(31)。
【0031】
本明細書に開示される方法は、老化した脆いPTT未延伸糸を延伸する能力を提供するだけでなく、改善された物理的性質を有する繊維をも提供する。本方法はまた、カーディング後に改善されたスライバー粘着力と従来の方法を用いて延伸された繊維に比べて改善された嵩とを有する繊維を提供する。本方法は5〜60dpf未延伸糸を延伸するのに好ましくは用いられる。本明細書に開示される方法に従って製造された繊維は、こうして、物理的性質、工場加工性、およびカーペット嵩のバランスを与える。本方法はまた、ナイロン・ステープルか2GTポリエステル・ステープルかのどちらかの製造向けにデザインされた装置を改良することによって実施することもできる。
【0032】
本明細書に開示される方法では、延伸される前に、従来の溶融紡糸によって製造されたPTT繊維は、さらなる加工工程の実施前に繊維の全体にわたって温度一様性を改善するためにプレウェッティングされる。プレウェッティングは浸漬タンク中で実施することができる。繊維が張力下にある場合、浸漬タンクの温度は好ましくは約45℃未満、より好ましくは約25℃未満である。プレウェッティングがポリマーのガラス転移温度近くの温度で実施される場合、延伸段階前に繊維の一様でない延伸を避けるために繊維上の張力を制御することが望ましい。
【0033】
好ましい実施形態では、ウェッティング後に、繊維は少なくとも2段階で延伸される。第1段階では、繊維は少なくとも約45℃のおよび約95℃以下の温度に維持されて延伸される。好ましくは、温度は約80℃以下、より好ましくは約70℃以下、さらにより好ましくは約60℃以下である。さらにより好ましくは、第1延伸段階は約50℃〜約55℃の温度で実施される。繊維は100℃以上の温度を有するスチーム中で延伸され得るので、延伸段階中の繊維の温度は周囲温度と必ずしも等しくない。
【0034】
第1延伸段階では、カーペットでの使用に好適な繊維については、繊維はその最終長さの少なくとも約30パーセントに、好ましくは約40パーセント、より好ましくはその最終長さの約50パーセントに延伸される。また、繊維はその最終長さの約90パーセント以下、好ましくは約70パーセント以下、より好ましくは約55パーセント以下に延伸される。より細いデニール・テキスタイル繊維については、より高いデニール繊維についてよりも全延伸のより高い割合が第1延伸段階で実施されることが好ましい。
【0035】
第1延伸段階では、繊維は湿潤条件下に延伸される。「湿潤条件下」は、当業者により容易に理解される用語であり、例えば、水中、スプレー下、および湿った環境中を含む。非常に好ましい実施形態では、繊維は水中または「希薄仕上剤」とも言われる加工仕上剤の水溶液中で延伸される。さらにより好ましくは、繊維は、一様な湿潤および加熱を可能にするために、できるだけ広い帯へ広げられるスパンロープとして、好ましくは帯の厚さを制御し、それをできるだけ広く維持して、水中約50℃で、最終延伸長さの約50%に延伸される。スパンロープは形状が実質的に長方形であり得る。スパンロープはカーペット繊維向けには延伸ロール幅のインチ当たり約300,000デニール未満、およびアパレル繊維向けには延伸ロール幅のインチ当たり約200,000デニール未満の横の厚さを有することが非常に好ましい。繊維が延伸される時、ロープの幅は実質的に同じままであるかもしれないが、横の厚さは延伸中に一般に減少する。上に述べたように、インチ当たり約300,000デニール未満およびインチ当たり200,000デニール未満の横の厚さが初期デニールに関することは当業者によって理解されるであろう。
【0036】
次に繊維は第2段階で湿潤条件下に、約45℃以上、約98℃以下の温度で延伸される。例えば、第1延伸段階におけるように、繊維は水中で、希薄仕上剤中で、水スプレー下に、または例えばスチームジェットによるスチームで濡らされて延伸することができる。第2延伸段階中の繊維の温度は好ましくは約50℃〜約95℃、より好ましくは約60℃〜約80℃に維持される。好ましくは、繊維は220ヤード毎分(ypm)以下の速度で延伸される。より好ましくは、繊維は100ypm以下の速度で延伸される。高すぎる延伸温度は延伸性を徐々に低下させることが驚くべきことにも分かった。
【0037】
好ましい延伸比は繊維デニールおよび所望の特性に依存する。例えば、12〜20dpf繊維については、未延伸糸はカーペット繊維に有用な特性を得るために3:1〜5:1の範囲の機械延伸比を有することが望ましい。延伸比は所望の繊維テナシティを得るのに十分に高い、また、繊維が実質的に一様な断面にドローダウンされるのを可能にするほど十分に高いことが好ましい。繊維の断面の一様性は、本明細書で下の本実施例で例示されるように、デニール範囲または伸びの標準偏差を用いて測定し、定量化することができる。例えば、14〜18dpf繊維について実質的な一様性を得るためには約3.5:1以上の延伸比が望ましいことが分かった。より高い紡糸速度またはより細いデニールはより多くの構造配向をもたらし、それは繊維を延伸するのにより硬くし、テナシティおよび伸びをはじめとする、同じ物理的性質を得るのにより低い延伸比を通常必要とする。ザラザラしたおよび/または脆いものであり得る繊維中の未延伸部分を最小限にするまたは排除することは非常に望ましい。具体的な繊維にとって特に好ましい延伸比は、例えば、繊維の意図される用途に依存して変わり得るし、当業者によって選択され得る。所与のデニール繊維については、より遅い紡糸速度は、より少ない量の繊維構造配向をもたらし、延伸を容易にする。
【0038】
一般に、カーペット繊維は、繊維の構造を変える、かつ、スピン配向の程度を下げる、より低い紡糸速度で製造されるので、カーペット繊維はより低いdpfテキスタイル繊維よりも高い延伸比を必要とする。従って、より高いdpf未延伸PTTカーペット糸はより低いdpf繊維よりも多い延伸配向を必要とする。十分な配向はまた、繊維の構造を安定化させ、十分で一様な物理的性質を得るためにも必要とされる。
【0039】
例えば加熱ロールでの繊維のみの加温が加工および特性で幾らかの改善を提供できることが観察されてきたが、本発明者らは今、繊維が延伸法の全工程の間ずっと湿潤に保たれることが非常に好ましいことを見いだした。本発明が任意の特定の理論または機構によって縛られることは意図されないが、繊維のウェッティングは、水の熱伝達能力のために繊維の全体にわたって実質的に一様な温度を生み出し、繊維を可塑化し、延伸を開始するために加えられる力を下げるおよび/またはより一様にすると考えられる。このように、十分に高い繊維配向、一様性、および強度を達成するためには各フィラメントへの一様な水分適用が望ましい。
【0040】
より高い紡糸口金キャピラリー(また「紡糸口金穴」とも呼ばれる)密度およびより短い急冷ゾーン(例えば、16フィート未満)でデザインされた従来の装置で、より高いdpf繊維、例えば、カーペット繊維を紡糸するのに用いられるかもしれない比較的遅い紡糸速度(600ypm未満)は、かかる従来の方法では脆い繊維をもたらし得る。かかる装置では、より高いdpf繊維は600ypm未満、多くの場合約500ypm以下、約500ypm以下でさえ、および幾つかの実施形態では約400ypm以下の速度で紡糸されることが一般に好ましい。幾つかのより高いdpf繊維、例えば14〜20dpf繊維については、約450ypm以下、400以下、さらには350ypm以下の紡糸速度が適切である。
【0041】
本発明者らは、カーペット糸を紡糸するためには、本明細書に開示される方法が少なくとも約2/cm2のキャピラリー密度を有する装置で特に有用であることを見いだした。また、テキスタイル糸向けには、本明細書に開示される方法は少なくとも約8/cm2のキャピラリー密度を有する装置で特に有用である。当業者により認められるであろうように、ポリマーの所与の押出量について、テキスタイル繊維の比較的より高い表面積はより速い急冷却を可能にするので、より細いデニール・テキスタイル繊維はカーペット糸より速い速度で一般に紡糸され、より高いキャピラリー密度を有することができる。例えば、より細いデニール・テキスタイル繊維は、デニールに依存して、900ypm、または1300rpmの速度でも紡糸することができる。
【0042】
本明細書に開示される方法は、16フィート未満の急冷ゾーンを有する装置で特に有利である。12フィートより短い急冷ゾーンを用いることができるが、一般に、急冷ゾーンの長さは少なくとも約12フィートである。当業者により認められるであろうように、より短い急冷ゾーンは、押出量および速度のような、他の条件およびパラメーターでの調節を必要とするかもしれない。
【0043】
延伸された後、繊維は捲縮される。繊維は、例えば、機械スタッファーボックス捲縮機のようなPETまたはナイロン繊維に用いられる任意の従来技術を用いて捲縮することができる。カーペット繊維における幾つかの実施形態では、捲縮繊維は5以上、好ましくは6以上の捲縮度数を有する。カーペット向けには、インチ当たり約10捲縮以下の捲縮度数が一般に好適である。例えば、好ましい実施形態では、6dpfカーペット繊維はインチ当たり約9捲縮の捲縮度数を有するが、18dpfカーペット繊維はインチ当たり約7捲縮の捲縮度数を有することができる。一般に、例えば、テキスタイル用途向けのような、カーペット繊維より低いデニールを有する繊維については、捲縮度数はインチ当たり約14捲縮以上までであることが望ましい。特に好ましい捲縮度数は最終用途およびデニールに依存する。より細いデニール・アパレルステープルは一般により高い捲縮度数を必要とする。
【0044】
本明細書に開示される方法に従って製造された繊維は、様々なテキスタイル用途での使用のために、例えば、カーペットならびにアパレルおよび他の用途向け布を製造するために他の繊維と混紡することができる。かかる他の繊維と、本明細書に開示される方法に従って製造されたもののようなポリエステル繊維との混紡は、他の繊維の物理的性質の改善を提供することができる。本明細書に開示される方法に従って製造された繊維と混紡することができる繊維の例には、綿、レーヨン、PET、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ナイロン、アクリル、スパンデックス、アセテート、羊毛、およびポリブチレンテレフタレート繊維が挙げられる。
【0045】
捲縮後に、繊維をスチームで熱固定してCTUを最大限にし、必要とされるカードスライバー粘着力を提供することが望ましい。熱固定は、例えば、スタッファーボックス中で繊維にスチームを適用し、少なくとも約80℃および好ましくは約100℃以下に繊維を加熱することによって成し遂げることができる。
【0046】
熱固定された後、繊維は乾燥され、その時間中に繊維は一般に弛緩する。乾燥は、約60℃以上の温度の加熱された空気に繊維を曝すことによって成し遂げることができる。しかしながら、繊維は約140℃以下の、より好ましくは約120℃未満、さらにより好ましくは約60〜100℃の温度で乾燥されることが好ましい。乾燥に関しては、列挙された温度は周囲温度に関する。CTUは繊維が約100℃以下の温度で乾燥された時に最適化されることが分かった。約10%〜約60%の範囲のCTUが一般に望ましく、約15%〜約60%の範囲のCTUが一般により望ましい。約15%〜約45%のCTUがカーペット最終用途向けには好ましく、約30〜約50%の範囲内のCTUがテキスタイル最終用途向けには好ましい。
【0047】
延伸され弛緩した繊維は、従来方式で最終用途に依存する長さを有するステープルファイバーへカットすることができる。例えば、カーペット繊維向けには約6〜8インチのステープル長さが一般に好ましい。
望まれる場合、繊維は当業者に周知である帯電防止剤で処理することができる。帯電防止剤はポリマー中へ組み入れるおよび/または繊維の表面に塗布することができる。帯電防止剤は、例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性であり得る。性質および帯電防止剤の使用方法は、意図される用途およびポリマーの組成物に依存し、適切な帯電防止剤およびそれらの使用方法は当業者によって決定され得る。
繊維は様々な布を製造するのに使用することができる。PTT繊維から製造される布は、例えば、織布、不織布、編布、または接着加工布であり得る。6〜25デニールの繊維は公知の方法を用いて、布を製造するのに、また、カーペットを製造するのにも好適である。
【0048】
アパレル用途向けには、繊維は少なくとも約3.0gpd(グラム毎デニール、また、「g/デニール」とも言われる)、より好ましくは少なくとも約3.2gpd、例えば、約3.4または3.6gpd以上のテナシティを有することが一般に好ましい。カーペット用途向けには、繊維は少なくとも約2.2gpd、より好ましくは少なくとも約2.4gpdのテナシティを有することが一般に好ましい。
【実施例】
【0049】
次の実施例は、本発明のある種の好ましい実施形態を例示することを意図される。最適条件は、装置およびトウ寸法および滞留時間にだけでなく、操作性と必要とされる物理的性質との所望のバランスにも依存することは当業者により認められるであろう。
【0050】
実施例1
本実施例では、ナイロン向け使用を意図されるパイロットプラント装置でPTTを加工した。約360ypmの紡糸速度で252〜257℃で従来方式で52.0の相対粘度(LRV)および1.04の固有粘度(IV)を有するペレットを溶融押出し、仕上剤を塗布し、缶中へだらだらと入れることによって1.65の変形比(MR)を有する未延伸55dpfPTT三葉フィラメントを製造した。固有粘度(IV)は、ASTM D5225−92に準拠した自動化方法に従って19℃で0.4グラム/dL濃度で50/50重量%トリフルオロ酢酸/塩化メチレンに溶解したポリマーについてViscotek Forced Flow Viscometer Y900(Viscotek Corporation,Houston,TX)で測定した粘度を用いて求めた。
【0051】
繊維は紡糸された時には容易に延伸されたが、ナイロンまたは2GTができるように老化後に延伸することはできなかった。それは、1週間の貯蔵による老化後には非常に脆くなり、本質的に何の破断伸びも持たなかった。これは、繊維がそのガラス転移温度(45℃)より十分に下の25℃未満に急冷され、26℃未満で貯蔵されたので、ナイロンおよび2GT経験に基づき全く予期されなかった。
【0052】
表1−実施例1の紡糸条件

【0053】
55dpf繊維を、1週間老化後に、表2にリストされたA−1〜A−5でラベル表示された条件下に延伸した。
円形断面を有する、より細いデニール番手(表1の8.3dpf)繊維もまた紡糸した。8.3dpf繊維は55dpf繊維ほど脆くなく、それより良好な延伸性を有したが、得られる延伸性は幾つかの商業方法には許容されないであろう。8.3dpf繊維を、1週間の老化後にもまた、表2にリストされたB−1〜B−2でラベル表示された条件下に延伸した。
【0054】
Instron試験に基づいて、当初は脆かった繊維を表2に示すような熱い湿潤条件下で延伸する場合それらを満足に延伸できることが分かった。Instron(登録商標)Tensile Tester Model 1122を用いた。Instron(登録商標)試験機は、広範囲の試験条件下に様々な材料を試験するためにデザインされた高精度電子試験機器である。この装置は、2つのクランプの間で引き伸ばすことによってシングルフィラメント・トウかマルチフィラメント・トウかのどちらかを破断するのに必要とされる力および距離の両方を測定するために用いることができる。底クランプは固定されており、上方クランプを前もってセットした速度で動かす。上方クランプに取り付けたロードセルがトウに発生した力を測定する。この特定のInstronでのすべてのPTT測定を未延伸ロープの形の糸に関して行った。この機器は、0.002〜50インチ毎分に調節することができるクランプヘッド速度を有する。
表1に示すように、より高い紡糸口金キャピラリー密度およびより短い急冷ゾーン(16フィート未満)用にデザインされた装置でのより高いdpf紡糸のための二段紡糸法には比較的遅い紡糸速度が好適である。
【0055】
表2−実施例1:Instron(登録商標) Testerで500mm/分で試験

*1=低い延伸力変動:5=高い延伸力変動
【0056】
表2は、55dpf(実験A1〜A5)および8.3dpf(実験B1およびB2)の繊維の単独延伸の結果を報告する。両タイプの繊維が延伸前には脆さを示した。各タイプの繊維を比較のために湿潤および乾燥で延伸した。報告された結果は破断前の最大延伸比および延伸力変動である。延伸力変動、Instron測定によって提供される値は一様性の指標である。より低い延伸力変動(表2、A4およびB2に示されるような)はより低いばらつきを示唆し、従って望ましい。
熱だけまたは水分だけでも脆い繊維を延伸するのを助けるが、延伸力変動によって証明されるように最も一様な延伸は熱および水分の両方を用いることによって得られることは明らかであった。熱および水分の欠如下に延伸された場合、繊維は高デニールまたは未延伸のザラザラした部分を有した。これらの結果は、熱いおよび湿潤条件がPTT繊維を延伸し、老化による構造変化を克服するのに好ましいことを示唆する。
【0057】
比較例(CE2A〜CE2F)および実施例2G
これらの例は、市販ナイロン溶融紡糸押出および延伸装置で加工されたPTTの特性を例示する。約430ypmの紡糸速度で、266℃で従来方式で52.2LRVフレークを溶融押出し、仕上剤を塗布し、端をスパンロープへと結び付け、ロープを缶中へだらだらと入れることによってPTT繊維、40dpf、1.65MR三葉フィラメントを製造した。缶からのロープをトウへと組み合わせ、従来方式で約100ypmで延伸した。延伸条件を表3に示す。紡糸条件は次の通りである:紡糸温度は265℃であり、紡糸口金キャピラリー断面積は0.000228インチ2であり、キャピラリー処理能力は1.87g/分であり、キャピラリー剪断速度は6339秒-1であり、紡糸速度は430ypmであり、キャピラリージェット速度は42.6フィート毎分であり、キャピラリー密度は2.46N/cm2であり、未延伸糸温度は25℃であり、かつ、未延伸糸は40デニールであった。
【0058】
試験した初期条件は、追加の水または希薄仕上剤なしに室温で、できるだけ少なく老化した繊維、2時間齢の非常に小さなクリール・ストックを使ってであった。この短時間後でさえ、延伸ゾーンで暖かい、湿潤条件を提供することなしには繊維を延伸できなかった(比較例2A(CE2A))。プレフィード接触ロールで熱水を適用するための延伸機の改良および約45℃で延伸ゾーンにおいて熱水をスプレーすることは操作を可能にしたが、変わりやすい特性を与え、それは厚い束の表面湿潤だけを提供するスプレーのためであると考えられる。これは、水中または溶液中での湿潤のような、各フィラメントについてもっと一様な処理条件が好ましいことを示唆する。
繊維は、当初は2.9倍以下に延伸できたが(2.9:1の延伸比のように表すこともできる、その元の長さの2.9倍、比較例2B)、8時間後は2.5倍に延伸できたにすぎなかった(比較例2Cおよび2D)。デニールにおける高変動と伸び標準偏差(S.D.)とによって証明されるように、繊維はザラザラした未延伸部分を含有した。繊維は、この装置で可能な最低の延伸比(2.3:1)でさえ、全面的な束破断のために約30時間後には全く延伸できないことが分かった(比較例2F)。
【0059】
上で用いた延伸条件は、フィラメントについて十分に一様な処理または十分な熱を提供せず、また老化による延伸問題も克服できなかった。これらの条件はトウ中への十分な熱または水分の浸透を提供しなかった。結果は、本質的に未延伸であり非常にザラザラした脆い幾つかの部分を含む、変わりやすいデニールであった。ザラザラした部分はまたカーディングで過度のフライおよびザラザラしたカーペット繊維を生み出すことが後で分かった。
オートクレーブ中135℃での延伸繊維のヒートセット(比較例2E)はそれをはるかにもっと脆くし、テナシティを2.1から0.7gpdに下げることもまた分かった。(かかる処理は物理的性質および収縮を改良するためにカーペット繊維製造では一般的であり、かかるテナシティ・ロスは非常に望ましくない。)この結果は、繊維構造がこれらの低い延伸比ではまだ不安定であること、および繊維をより良く配向させ、安定化させるためのより高い延伸比が必要とされることを例示する。
【0060】
45℃のプレ延伸浸漬タンク付き改良延伸機で繊維を延伸し、第2延伸段階(「延伸2」)のためにスチームジェットを用いると、3ヶ月老化の後でさえ、許容される延伸性を与え(実施例2G)、それは、許容されるほど一様な特性でおよびいかなるザラザラした部分もなしに、脆い繊維が3.9倍まで成功裡に延伸され得ることを実証した。フィラメントの薄帯の水中ウェッティングおよびかかる帯の加熱は、表面処理を上回る劇的な改善を与えた。これらの結果は、繊維老化の影響が驚くべきことに逆転され、乾燥延伸機がPTTからの満足のいく繊維の製造での使用のために改良され得ることを実証した。














【0061】
表3−実施例2延伸条件

【0062】
実施例3
本実施例は、一連の加工条件下での実施例1の老化した脆い55dpf未延伸糸の延伸を実証する。結果を表4に示す。延伸機は単一段階または2段階延伸が可能であり、繊維を浸漬タンク中でプレウェッティングし、第1段階(「延伸1」)では水中または希薄仕上剤中で延伸し、第2段階(「延伸2」)ではこれらのゾーンで一連の温度にわたってホットスプレー下にまたはスチームジェットで延伸することができた。延伸/捲縮ゾーンを乾燥機に連結し、延伸繊維を一連の条件にわたって捲縮し、弛緩/乾燥させることができた。これらの試行に用いた装置を図1に示す。
実施例1で製造したUDYを下に記載するように延伸し、捲縮し、弛緩させた。該加工条件は、繊維を60日間遅れさせた後でさえも、はるかにより良好な特性でおよび何のザラザラした未延伸部分もなしに、実施例2に記載したナイロン装置でのように本質的に延伸できない代わりに、繊維を5.6倍以下に延伸させた。
【0063】
プレ延伸浸漬タンクは延伸一様性を改善することが分かった。実施例3Aおよび3Bに示すように、過度の熱は繊維を結晶化させ、破断フィラメントのために延伸性および操作性を低下させ得る。単一延伸段階は、プレフィード浸漬タンクおよび浸漬延伸で、3.3倍以下で満足のゆく操作性および3.6倍でまずまずの性能を与えた。2延伸段階は改善された延伸性を与えた。実施例3Cは、第2段階でより多くの延伸が取られて、すなわち、第1段階でよりも第2段階で全延伸のより高い百分率で(延伸1で40%および延伸2で60%)4.5倍が得られることを示した。しかしながら、より多くの延伸が第1段階で取られた場合には(延伸1で56%)、5.5倍延伸が実現可能であった(実施例3Fは5倍での特性を示す)。
第1延伸段階での高すぎる温度(90℃−実施例3E)は、50℃での第1延伸段階(実施例3F)が提供したほど良好な操作性を提供せず、恐らく過度の結晶化のために、最大延伸比を低下させることが分かった。最良の性能は実施例3Fで用いられた条件下で観察され、より低い温度が高い温度よりも良いことを示唆した。




【0064】
表4−実施例3:延伸条件の最適化

【0065】
実施例4
本実施例は、PTT繊維で見いだされた別の驚くべき効果:捲縮後に繊維の熱固定を変えると、ナイロンおよびPET経験を基準にして驚くべき程度に下流加工操作性およびカーペット嵩の両方に著しく影響を及ぼしたことを実証する。実施例2と同じ紡糸繊維を、図1に示す装置でカーペット・トウに変換し、6インチの長さにカットした。次にステープルを従来の改良梳毛糸装置で糸へ変換した。繊維を5.1t.p.i.の3.25ccへリング精紡し、4.9t.p.i.に諸撚りし、200℃でSuessenヒートセットした。次にそれを5/8インチ・パイル高さで、1/8ゲージ、50オンス/平方ヤードへタフティングした。次にカーペットを連続染色レンジで分散染色し、従来方式で仕上げした。
【0066】
実施例4Aは、捲縮でのスチーム・アシストなしでは繊維が低いCTUを有したことを示す。工場加工では、捲縮度数は他のアイテムと同様であるにもかかわらず、カードスライバーは非常に低い粘着力を有し、引き離されたスライバーのようにカーディングすることはできなかった。実施例4Bは、スチーム・アシストありで本方法は操作可能になり、CTUおよびスライバー粘着力の両方が改善されることを示す。実施例4Cは、乾燥機/リラクサー温度を165℃から60℃に下げると、CTUを著しく改善しただけでなく、カーペット嵩も改善したことを示す。














【0067】
表5−実施例4:トウ製造およびカーペット糸評価

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ポリ(トリメチレンテレフタレート)から繊維を製造するために本発明による方法で用いられる例示的な装置の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的にポリ(トリメチレンテレフタレート)よりなる未延伸糸を約45℃未満の温度でプレウェッティングする工程と、繊維を第1段階で約45℃〜約95℃の温度で湿潤条件下にその最終長さの約30〜約90パーセントの長さに延伸する工程と、繊維を第2段階で湿潤条件下に約45℃〜約98℃の温度で延伸する工程と、延伸繊維を捲縮する工程と、捲縮繊維を約80℃〜約100℃の温度でスチームの存在下に熱固定する工程と、捲縮繊維を60℃〜140℃で乾燥する工程とを含む、6〜25dpfカーペット・ステープルファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記未延伸糸が少なくとも2/cm2の紡糸口金キャピラリー密度および約16フィートより短い急冷ゾーンを有する装置で紡糸される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未延伸糸が約600ypm未満の速度で紡糸される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレウェッティングおよび延伸が水中でまたは加工仕上剤の水溶液中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレウェッティングおよび延伸の間ずっと、前記糸が約300,000デニール/インチ未満のスパンロープの形にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1延伸段階で、繊維がその最終長さの約40〜約70パーセントの長さに延伸される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1延伸段階で、繊維がその最終長さの約50〜約55パーセントの長さに延伸される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1延伸段階が約80℃以下の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1延伸段階が約70℃以下の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1延伸段階が約60℃以下の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1延伸段階が約50℃〜約55℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2延伸段階が約60℃〜約80℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記熱固定が約85℃の温度で実施される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記延伸糸が6〜20dpfのデニールを有する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
捲縮繊維が約60℃〜約100℃の温度で乾燥される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
本質的にポリ(トリメチレンテレフタレート)よりなる未延伸糸を約45℃未満の温度でプレウェッティングする工程と、繊維を第1段階で約45℃〜約95℃の温度で湿潤条件下にその最終長さの約30〜約90パーセントの長さに延伸する工程と、繊維を第2段階で湿潤条件下に約45℃〜約98℃の温度で延伸する工程と、延伸繊維を捲縮する工程と、捲縮繊維を約80℃〜約100℃の温度でスチームの存在下に熱固定する工程と、捲縮繊維を60℃〜140℃で乾燥する工程とを含む、1〜6dpfテキスタイル・ステープルファイバーの製造方法。
【請求項17】
前記未延伸糸が少なくとも約8/cm2の紡糸口金キャピラリー密度および約16フィートより短い急冷ゾーンを有する装置で紡糸される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記未延伸糸が1300ypm以下の速度で紡糸される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記未延伸糸が900ypm以下の速度で紡糸される請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記プレウェッティングおよび延伸が水中でまたは加工仕上剤の水溶液中で実施される請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記プレウェッティングおよび延伸の間ずっと、前記糸が約200,000デニール/インチ未満のスパンロープの形にある、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記第1延伸段階で、繊維がその最終長さの約40〜約90パーセントの長さに延伸される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第1延伸段階で、繊維がその最終長さの約70〜約90パーセントの長さに延伸される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記第1延伸段階が約80℃以下の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記第1延伸段階が約70℃以下の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記第1延伸段階が約60℃以下の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記第1延伸段階が約50℃〜約55℃の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記第2延伸段階が約60℃〜約80℃の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記熱固定が約85℃の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記捲縮繊維が約60℃〜約100℃の温度で乾燥される、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも約3.0gpdのテナシティおよび約15%〜約60%の捲縮巻取り値を有する、請求項16に記載の方法に従って製造された、1〜6dpfのポリ(トリメチレンテレフタレート)テキスタイル・ステープルファイバー。
【請求項32】
約6〜8インチの長さ、少なくとも約2.2gpdのテナシティおよび約10%〜約60%の捲縮巻取り値を有する、6〜25dpfのポリ(トリメチレンテレフタレート)カーペット・ステープルファイバー。
【請求項33】
請求項32に記載の6〜20dpfポリ(トリメチレンテレフタレート)ステープルファイバー。
【請求項34】
前記テナシティが3.2gpd以上である請求項31に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)ファイバー。
【請求項35】
前記テナシティが2.4gpd以上である請求項32に記載のポリ(トリメチレンテレフタレート)ファイバー。
【請求項36】
前記捲縮巻取り値が約30%〜約50%である請求項31に記載のアパレル・ポリ(トリメチレンテレフタレート)ファイバー。
【請求項37】
前記捲縮巻取り値が約15%〜約45%である請求項32に記載のカーペット・ポリ(トリメチレンテレフタレート)ファイバー。
【請求項38】
請求項31に記載のファイバーから製造された糸。
【請求項39】
請求項38の糸から製造された布。
【請求項40】
綿、レーヨン、PET、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ナイロン、アクリル、スパンデックス、アセテート、羊毛、およびポリブチレンテレフタレート繊維から選択された1つまたは複数の繊維をさらに含む請求項39に記載のテキスタイルまたは不織布。
【請求項41】
請求項32に記載のファイバーから製造された糸。
【請求項42】
請求項41に記載のファイバーから製造されたカーペット、じゅうたんまたは不織布。
【請求項43】
綿、PET、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ナイロン、アクリル、羊毛、およびポリブチレンテレフタレート繊維から選択された1つまたは複数の繊維をさらに含む請求項42に記載のカーペット、じゅうたんまたは不織布。
【請求項44】
帯電防止剤を含む、請求項31に記載のファイバー。
【請求項45】
帯電防止剤を含む、請求項32に記載のファイバー。

【図1】
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【公表番号】特表2007−521403(P2007−521403A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565596(P2004−565596)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040625
【国際公開番号】WO2004/061170
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】