説明

ストマー

【課題】生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、創傷部を外界と隔絶し、治癒機転における細菌感染等の増悪因子を防御し、ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないストマーを提供する。
【解決手段】ストマー1は、フランジ3とパッド5とを有する。ストマー1は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で形成された、平均孔径10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状材料よりなる。フランジ3の上面の外周縁と内周縁との間に凸条3tが周設されている。凸条3tの内側領域に対しパッド5が重ね合わされ、接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストマー(人工肛門)に係り、詳しくは、生体組織からの細胞の侵入が可能で、生体組織と頑強な癒着が得られるストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
腸管を体表面に露呈させた部分にストマーが装着される。このストマーは、円環形のフランジ(面板、プレートと称されることもある。)を有している。このストマーは接着剤によって体表面に接着される(特許2726280号)。
【0003】
このストマーは、例えば低密度ポリウレタン製とされる(特許2582819号)。2ピースタイプのストマーの場合、このフランジに対し、適宜のカップリング機構を介して袋側フランジが着脱可能に連結される(上記各特許公報)。この袋側フランジにストマー袋が連結される。1ピースタイプのストマーの場合、フランジとストマー袋とが一体とされており、袋側フランジは省略される。
【特許文献1】特許第2726280号
【特許文献2】特許第2582819号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のストマーにあっては、フランジを体表面に接着するための貼付・剥離の際に疼痛がある。また、繰り返し行われる貼付・剥離の刺激や接着剤の刺激により、皮膚が炎症をおこすことがある。
【0005】
体表面には体毛、皮脂、汗の分泌があるため、フランジの接着不良が生じ、排泄物や臭気が漏れるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題を顧みて達成されたものであり、生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないストマーであって、皮下組織と外界との隔絶性を向上させることが可能となるストマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のストマーは、一方の面が生体の外面に重なるフランジと、該フランジの他方の面に重なる高分子材料製パッドとを備えてなるストマーであって、該フランジの他方の面に、該フランジの外周縁と内周縁との間を周回している凸条が設けられており、該凸条の内側領域に該パッドが配置されており、該フランジは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のストマーは、請求項1において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が100〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のストマーは、請求項2において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が200〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のストマーは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.3g/cmであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5のストマーは、請求項4において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.2g/cmであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6のストマーは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7のストマーは、請求項1ないし6のいずれか1項において、該凸条部分にのみ硬化性化合物を含浸させてあることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8のストマーは、請求項7において、該硬化性化合物がキチン、キトサン及びケラチンよりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9のストマーは、請求項1ないし8のいずれか1項において、該フランジの外周縁と凸条との距離が1〜100mmであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項10のストマーは、請求項1ないし9のいずれか1項において、該フランジの直径が10〜200mmであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項11のストマーは、請求項1ないし10のいずれか1項において、該フランジの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項12のストマーは、請求項1ないし11のいずれか1項において、該パッドの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項13のストマーは、一方の面が生体に重なる第1フランジと、一方の面が該第1フランジの他方の面に重なる第2フランジと、該第2フランジの他方の面に重なる高分子材料製パッドとを有しており、前記第2フランジが前記高分子樹脂製パッドの外縁よりも外方にまで延出しており、前記第1フランジが第2フランジの外縁よりも外方にまで延出しているストマーであって、前記第1フランジが熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径100〜1,000μmで見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの連通性のある多孔性三次元網状構造部を有しており、前記第2フランジが熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径1〜100μmで見掛け密度が0.05〜1.0g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有していることを特徴とするものである。
【0020】
請求項14のストマーは、請求項13において、第1フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径が150〜600μmで、見掛け密度が0.03〜0.3g/cmであることを特徴とするものである。
【0021】
請求項15のストマーは、請求項13又は14において、第1フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径が200〜500μmで、見掛け密度が0.05〜0.2g/cmであることを特徴とするものである。
【0022】
請求項16のストマーは、請求項13ないし15のいずれか1項において、第1フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径150〜400μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項17のストマーは、請求項13ないし16のいずれか1項において、第1フランジの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項18のストマーは、請求項13ないし17のいずれか1項において、前記第2フランジの多孔性三次元網状構造部の平均孔径が5〜80μmで、見掛け密度が0.1〜0.7g/cmであることを特徴とするものである。
【0025】
請求項19のストマーは、請求項13ないし18のいずれか1項において、前記第2フランジの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするものである。
【0026】
請求項20のストマーは、請求項13ないし19のいずれか1項において、前記第2フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径30〜60μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするものである。
【0027】
請求項21のストマーは、請求項13ないし20のいずれか1項において、該パッドの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするものである。
【0028】
請求項22のストマーは、請求項1ないし21のいずれか1項において、該基材樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項23のストマーは、請求項22において、該基材樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とするものである。
【0030】
請求項24のストマーは、請求項23において、該ポリウレタン樹脂がセグメント化ポリウレタン樹脂であることを特徴とするものである。
【0031】
請求項25のストマーは、請求項1ないし24のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造部に、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項26のストマーは、請求項25において、該多孔性三次元網状構造部に更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするものである。
【0033】
請求項27のストマーは、請求項26において、該多孔性三次元網状構造部に細胞が接着されていることを特徴とするものである。
【0034】
請求項28のストマーは、請求項27において、該細胞が体性肝細胞、造血肝細胞、胚性幹細胞、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞、繊維芽細胞及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0035】
請求項29のストマーは、請求項28において、該体性肝細胞、造血肝細胞又は胚性幹細胞が分化されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明のストマーは、上記特定の平均孔径及び見掛け密度を有する、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有するため、この多孔性三次元網状構造部の空孔部分へ細胞が容易に侵入して生着し、生体組織と頑強な癒着が得られる。
【0037】
本発明のストマーによれば、生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、創傷部を外界と隔絶し、治癒機転における細菌感染等の増悪因子を防御ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないストマーが提供される。
【0038】
請求項1〜12のストマーにあっては、凸条よりも内側領域が高分子材料製パッドで覆われたフランジが存在する。このため、皮膚のダウングロース作用が中央部にまで及ぶのに時間がかかる。また、フランジはその凸条よりも外周縁側が皮下へ埋入され、皮下組織の浸潤によって器質化される。この凸条よりも外周縁側の上に存在する表皮の末端が該フランジの凸条へ接着し、表皮がフランジ部と高分子樹脂製パッドの接着面を剥がすように潜り込む現象や、表皮が高分子樹脂製パッド上に這い上がる現象を防ぐことが可能である。
【0039】
請求項13〜21のストマーでは、高分子樹脂製パッドによって覆われた第1フランジが存在するために、ダウングロース作用が中央部にまで及ぶのに時間がかかる。また、第1フランジが皮下へ埋入され、皮下組織の浸潤によって器質化されるのに対して、この第1フランジの上に存在する表皮の末端が第2フランジのエッヂ部分へ接着し、表皮がフランジ部と高分子樹脂製パッドの接着面を剥がすように潜り込む現象や、表皮が高分子樹脂製パッド上に這い上がる現象を防ぐことが可能である。
【0040】
この結果、長期にわたり、ダウングロースの影響を受けることなく生体に対しストマーを装着しておくことができる。
【0041】
また、パッドが生体の外面に重なるように配置されるので、外力がパッドを介しても生体に伝達されるようになり、ストマー袋から生体に加えられる応力が広い範囲に分散される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明のストマーの実施の形態を詳細に説明する。
【0043】
第1図(a)は実施の形態に係るストマーの分解斜視図、第1図(b)はこのストマーの縦断面図、第2図はこのストマーの使用例を示す断面図、第3図〜第4図は別の実施の形態に係るストマーの説明図である。
【0044】
第1図の通り、ストマー1は、フランジ3と、このフランジ3の一方の面に重ね合わされたパッド5とを有する。フランジ3の中央には直径が5〜150mm程度の円形の開口3aが設けられている。フランジ3の内周縁と外周縁との間には、凸条3tが周回して設けられている。この凸条3tの内側領域にパッド5が嵌合されるようにして重ね合わされ、接着等により一体化される。
【0045】
このフランジ3は、後述する生体組織との癒着性に優れた多孔性樹脂材料よりなる。
【0046】
フランジ3は円形、楕円形、レンズ形、涙滴形等の平面視形状を有するものが使用可能であるが、通常、皮膚をメスで直線に切開した場合には楕円形に生体組織が露出されるので、該露出部位を効率良く被覆できる楕円形であることが好ましい。フランジ3の厚さは該フランジ3の物理的強度以外に、後述するフランジ3の多孔性材料の平均孔径やその傾斜性(これらは組織浸潤深度や分化程度へ影響する)など複雑な因子が関連するが、通常は0.05〜20mm程度が好適である。フランジ3が円形の場合、その直径は10〜200mm程度が好適である。フランジ3が楕円形、レンズ形、涙滴形等の場合、長径が10〜200mmであり、短径が長径の5〜80%程度であることが好ましい。
【0047】
凸条3tのフランジ部半径方向の幅は0.0〜5.0mm程度が好適である。ここでいう、幅とは、鉛直方向へ一定の幅でも良いし、徐々に幅が狭くなるようなテパーを有していても良い。テーパーがある場合、先端部で幅が0.0mmと解釈することができる。凸条3tの高さは0.5〜5.0mm程度が好適であり、パッド5の厚み以上であることが好ましい。
【0048】
凸条3tからフランジ部3の外周縁までの距離は1〜100mm、特に5〜20mm程度が好適である。
【0049】
開口3aの直径は、5〜150mm、特に10〜100mm程度が好ましい。
【0050】
パッド5には、フランジ3の開口3aと同軸に且つ該開口3aと同一又はそれよりも若干(例えば20mm以下、具体的には1〜10mm程度)大きい大きさにて開口5aが設けられている。
【0051】
このパッド5は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、キチン、キトサン、ケラチン、ヒアルロン酸、フィブロイン並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上などの高分子材料よりなる。
【0052】
パッド5の厚みは高分子材料の柔軟性とも関連するが、0.1〜50mm程度が好適である。ストマーを配置する部位によって当業者によって適宜選択すれば良い。
【0053】
このストマーを生体に装着するには、第2図の通り皮膚を切開して生体組織を露出させる。また、生体組織を切開して腸管Cを開口3a,5aに挿入しつつフランジ3を生体組織の外面に重ね合わせる。腸管Cの周囲の生体組織切開部は必要に応じ縫合される。パッド5は生体組織の露出面に被さると共に、該露出面の周囲の皮膚の縁部に重ね合わされる。パッド5を患者体表へ固定するための縫合を行う場合にはパッド5の外縁付近に数個の孔の穿孔を行うと縫合針でパッド5を貫通穿孔させる必要がなく楽に縫合が行える。さらに、パッド5の外縁とその周囲の皮膚に跨るようにして、通気性及び遮水性を有した粘着テープ(図示略)が貼着され、パッド5の下側への水等の浸入を防止することも可能である。
【0054】
このようにストマー1を生体に装着した場合、皮膚のダウングロースは、第2図の通り矢印Dのようにフランジ3の下側に向って進行する。このため、ダウングロースが腸管Cに達するまでの時間がかなり長いものとなる。また、フランジ3はその凸条3tよりも外周縁側が皮下へ埋入され、皮下組織の浸潤によって器質化される。この凸条3tよりも外周縁側の上に存在する表皮の末端が該凸条3t、特にその外周側の側面、へ接着し、高分子樹脂製パッド5上に這い上がる現象を防ぐことが可能である。
【0055】
このパッド5にストマー袋が両面テープ等によって接続される。なお、パッド5にストマー袋の連結手段を設けておいてもよい。この連結手段としては、パッド5の開口5aの周縁部から立ち上がる筒状部が例示される。この筒状部にネジを設けてもよい。筒状部の外周面に周回溝を設けてもよい。
【0056】
また、ストマー袋から生体に加えられる応力がパッド5を介して広い範囲に分散する。このため、ストマー1の周囲の生体組織に加えられる刺激が緩和される。
【0057】
本発明では、凸条3t部分にのみ硬化性化合物を含浸させ強度を高めるようにしてもよい。硬化性化合物としては、キチン、キトサン、ケラチンなどを用いることができる。
【0058】
次に、第3,4図を参照して、別の実施の形態に係るストマー2について説明する。
【0059】
第4図(a)はこのストマー2の分解斜視図、同(b)はストマーの断面図、第3図は第2図と同様の生体装着状況図である。
【0060】
ストマー2は、第1フランジ3Aと、第2フランジ4と、パッド5とを有する。第1フランジ3Aの中央には直径が5〜150mm程度の円形の開口3aが設けられている。第2フランジ4及びパッド5にも開口3aと同軸かつ同径の開口4a,5aが設けられている。なお、開口3a,4aよりも開口5aの直径を若干(例えば20mm以下、具体的には1〜10mm程度)大きくしてもよい。
【0061】
第1フランジ3A及び第2フランジ4は、後述する生体組織との癒着性に優れた多孔性樹脂材料にて構成されている。
【0062】
第1フランジ3Aは円形、楕円形、レンズ形、涙滴形等の平面視形状を有するものが使用可能であるが、通常、皮膚をメスで直線に切開した場合には図1に例示されるような楕円形に生体組織が露出されるので、該露出部位を効率良く被覆できる楕円形であることが好ましい。第1フランジ3Aの厚さは該第1フランジ3Aの物理的強度以外に、第1フランジ3Aの平均孔径やその傾斜性(これらは組織浸潤深度や分化程度へ影響する)など複雑な因子が関連するが、通常は0.2〜50mm特に0.2〜10mmとりわけ1〜5mm程度が好適である。第1フランジ3Aが円形の場合、その直径は10〜200mm程度が好適である。第1フランジ3Aが楕円形、レンズ形、涙滴形等の場合、長径が10〜20mmであり、短径が長径の5〜80%程度であることが好ましい。
【0063】
第2フランジ4は第1フランジ3Aよりも若干小さい大きさであり、好ましくは第1フランジ3Aの外縁が第2フランジ4の外縁よりも10〜20mm特に好ましくは約15mm程度張り出すものとなっている。
【0064】
第2フランジ4には凹所4bが設けられ、この凹所4にパッド5が嵌合配置される。
【0065】
第2フランジ4がパッド5の外縁から延出する幅は0.1〜30mm程度が好ましい。この第2フランジ4がパッド5の外縁から延出する幅は該第2フランジ4の厚み方向において変化してもよく、例えばパッドの上面において0mm〜3mmであって、第1フランジ3Aと接する底面において1mm〜30mmであってもよい。
【0066】
パッド5の材料、厚さは前記実施の形態と同様である。
【0067】
このストマー2も、第3図の通り、前記ストマー1と同様にして生体に装着される。そして、パッド5にストマー袋が装着される。この場合にも、パッド5にストマー袋の連結手段を設けてもよい。
【0068】
このようにストマー2を生体に装着した場合も、皮膚のダウングロースは、第3図の通り矢印Dのように第1フランジ3Aの下側に向って進行する。このため、ダウングロースが腸管Cに達するまでの時間がかなり長いものとなる。また、ストマー袋から加えられる外力がパッド5を介して広い範囲に分散される。
【0069】
次に、ストマーの好適な材料について説明する。
【0070】
本発明のストマーを構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、連通性のある三次元網状構造部は、平均孔径が50〜1,000μm、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの多孔性三次元網状構造であれば良く、厚み方向の切断断面において、その全面が類似の構造を有してもいても、一方の面側と他方の面側において異なる構造を有していても良い。また、部分的に平均孔径や見掛け密度が変化するものであっても良く、例えば、一方の面側から他方の面側に向けて平均孔径や見掛け密度が徐々に変化する、所謂、異方性を有していても良い。厚み方向に平均孔径が同一でないストマーを使用する場合には、生体組織との接触面側を大きくし深部において小さい孔径とすることが好ましい。この理由としては、生体組織との接触面から浸潤した組織は、通常厚み方向へ10mm程度の深度までは安定して到達するが、多孔体内に形成される新生血管が成熟していても深部の細胞は壊死したり分化が不十分となる危険性があるため、10mm程度よりも深い部分では孔径を小さくして組織の浸潤を抑制することが好ましいのである。
【0071】
また、生体組織との接触面側には平均孔径を大きく外れる大孔径の孔が存在しても構わない。このような孔としては500〜2,000μm程度の孔が好ましく、これらが生体組織側の表層近くに存在することでコラーゲンなどの細胞外マトリックスを深部まで均質に含浸させること容易となり、また、組織からの細胞の侵入や毛細血管の構築などに有利に働くこととなる。ただし、このような大孔径の孔は、本発明でいう多孔性三次元網状構造の平均孔径の計算の概念に導入されるものではない。
【0072】
本発明に係る多孔性三次元網状構造の平均孔径は10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであるが、好ましい平均孔径は100〜500μm、より好ましくは200〜500μmである。見掛け密度としては0.01〜0.5g/cm範囲内であれば、細胞生着性が良好で、優れた物理的強度を維持し、細胞が侵入、生着し、組織化した際に皮下組織と近似した弾性特性が得られるが、好ましくは0.05〜0.3g/cm、より好ましくは0.05〜0.2g/cmである。
【0073】
また、平均孔径が同一であっても孔径の分布としては、細胞の侵入に重要な孔径サイズである10〜300μmの孔の寄与率が高いことが望ましく、孔径10〜300μmの孔の寄与率が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上であると、細胞が侵入し易く、また、侵入した細胞が接着、成長しやすいため、好ましい。
【0074】
なお、多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率とは、全孔の数に対する孔径10〜300μmの孔の数の割合を指す。
【0075】
このような平均孔径、見掛け密度及び孔径分布の多孔性三次元網状構造であれば、細胞が容易に空孔部分へ浸透し、多孔性三次元網状構造部へ細胞が接着、成長し易く、毛細血管の構築がなされ、刺入部において皮下組織とカテーテルやカニューレとの癒着が頑強で良好なストマーを得ることができる。
【0076】
このような多孔性三次元網状構造部を構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにそれらの誘導体の1種又は2種以上が例示できるが、好ましくはポリウレタン樹脂であり、中でもセグメント化ポリウレタン樹脂が好適である。
【0077】
セグメント化ポリウレタン樹脂は、ポリオール、ジイソシアネート及び鎖延長剤の3成分から合成され、いわゆるハードセグメント部分とソフトセグメント部分を分子内に有するブロックポリマー構造によるエラストマー特性を有するため、このようなセグメント化ポリウレタン樹脂を使用した場合に得られる弾性特性は、患者やカテーテル又はカニューレが動いた場合や、消毒作業時等に刺入部周辺の皮膚を動かした場合に皮下組織とストマーの界面に生じる応力を減衰させる効果が期待できる。
【0078】
本発明のストマーには、上記特定の多孔性三次元網状構造を形成した層を第1の層とし、この第1の層に更に異なる構造の第2の層を積層することも可能である。この第2の層としては、繊維集合体や可撓性フィルム、更には、第1の層の多孔性三次元網状構造とは平均孔径や見掛け密度が異なる多孔性三次元網状構造層が使用可能である。
【0079】
不織布又は織布の有孔性としては100〜5,000cc/cm/minの範囲のものであれば可撓性、皮下組織との縫合強度など点で好ましい。なお、この有孔性は、JIS L 1004により測定される値で、通気性や通気量ということもある。
【0080】
繊維集合体としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上からなる合成樹脂製であっても良く、また、フィブロイン、キチン、キトサン及びセルロース並びにこれらの誘導体から選択される1種又は2種以上のような天然物由来の繊維からなるものも使用可能である。合成繊維と天然物由来の繊維とを併用したものであっても良い。
【0081】
また、可撓性フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルム、具体的には、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上よりなるフィルムが例示でき、好ましくは、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、フッ素樹脂及びシリコン樹脂よりなる群から選択される1種又は2種以上よりなるフィルムである。
【0082】
可撓性フィルムとしては中実フィルムのみならず多孔膜や発泡体も使用可能である。中実の可撓性フィルムと積層した場合には、細菌バリア性が大きく、感染管理に有利なストマーが得られる。
【0083】
平均孔径や見掛け密度が第1の層の多孔性三次元網状構造とは異なる多孔性三次元網状構造を第2の層とする場合、この多孔性三次元網状構造としては、平均孔径0.1〜200μmで見掛け密度0.01〜1.0g/cm程度の多孔性三次元網状構造を用いることができる。
【0084】
これらの第2の層を多孔性三次元網状構造層に積層する方法としては、該第2の層が繊維集合体、可撓性フィルム、第1の層の多孔性三次元網状構造とは平均孔径や見掛け密度が異なる多孔性三次元網状構造層の場合には、粘着剤を使用して接着する方法、特にホットメルト不織布を第1の層と第2の層との間に挟みこんで積層し、加熱下で圧着する方法などが挙げられる。このようなホットメルト不織布としては、例えば、日東紡社製PA1001のようなポリアミド型熱粘着シートなどが使用可能である。他にも、溶剤を使用して接触表面の表層部を溶解して接着する方法、熱によって表層部を溶融して接着する方法、超音波や高周波を利用する方法などが例示できる。また、第1の層の製造時に、ポリマードープと繊維集合体や可撓性フィルムを積層して成形するなど、連続的に積層形成することができる。
【0085】
なお、第2の層としては、繊維集合体、可撓性フィルム、多孔性三次元網状構造層が2層以上設けられていても良く、また、第2の層を介して第1の層の多孔性三次元網状構造層が積層された3層構造であっても良い。
【0086】
本発明のストマーの多孔性三次元網状構造部には、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていても良く、更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていても良く、更に、胚性幹細胞(分化されていても良い。)、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞、及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上の細胞が接着されていても良い。
【0087】
また、本発明のストマーは、その多孔性三次元網状構造層を構築する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる骨格自体にも微細な孔を設けることが可能である。このような微細孔は、骨格表面を平滑な表面でなく複雑な凹凸のある表面とし、コラーゲンや細胞増殖因子などの保持にも有効であり、結果として細胞の生着性を上げることが可能である。ただし、この場合の微細孔は、本発明でいう多孔性三次元網状構造層の平均孔径の計算の概念へ導入されるものではない。
【0088】
以下に、本発明のストマーを構成する熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体の製造方法の一例を挙げるが、本発明のストマーの製造方法は何ら以下の方法に限定されるものではない。
【0089】
熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体を製造するには、まず、ポリウレタン樹脂と、孔形成剤としての後述の水溶性高分子化合物と、ポリウレタン樹脂の良溶媒である有機溶媒とを混合してポリマードープを製造する。具体的には、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に混合して均一溶液とした後、この溶液中に水溶性高分子化合物を混合分散させる。有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、テトラヒドロフランなどがあるが、熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶解することができればこの限りではなく、また、有機溶媒を減量するか又は使用せずに熱の作用でポリウレタン樹脂を融解し、ここに孔形成剤を混合することも可能である。
【0090】
孔形成剤としての水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられるが、熱可塑性樹脂と均質に分散してポリマードープを形成するものであればこの限りではない。また、熱可塑性樹脂の種類によっては、水溶性高分子化合物でなく、フタル酸エステル、パラフィンなどの親油性化合物や塩化リチウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類を使用することも可能である。また、高分子用の結晶核剤などを利用して凝固時の二次粒子の生成、即ち、多孔体の骨格形成を助長することも可能である。
【0091】
熱可塑性ポリウレタン樹脂、有機溶媒及び水溶性高分子化合物などより製造されたポリマードープは、次いで熱可塑性ポリウレタン樹脂の貧溶媒を含有する凝固浴中に浸漬し、凝固浴中に有機溶媒及び水溶性高分子化合物を抽出除去する。このように有機溶媒及び水溶性高分子化合物の一部又は全部を除去することにより、ポリウレタン樹脂からなる多孔性三次元網状構造材料を得ることができる。ここで用いる貧溶媒としては、水、低級アルコール、低炭素数のケトン類などが例示できる。凝固したポリウレタン樹脂は、最終的には、水などで洗浄して残留する有機溶媒や孔形成剤を除去すれば良い。
【実施例】
【0092】
以下に、この熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体の製造方法の具体例を説明する。
【0093】
<多孔体の成型>
熱可塑性ポリウレタン樹脂(日本ミラクトラン社製、ミラクトランE980PNAT)をN−メチル−2−ピロリジノン(関東化学社製、ペプチド合成用試薬、NMP)にディゾルバー(約2,000rpm)を使用して室温下で溶解して12.5%溶液(重量/重量)を得た。このNMP溶液約1.0kgをプラネタリーミキサー(井上製作所製、2.0L仕込み、PLM−2型)に秤量して入れ、ポリウレタン樹脂の半分重量相当のメチルセルロース(関東化学社製、試薬、50cpグレード)を添加し、60℃で120分間攪拌した。攪拌を継続したまま10分間20mmHg(2.7kPa)まで減圧して脱泡する操作を加え、ポリマードープを得た。
【0094】
別に、厚み3mmで内側の140mm×140mm部分を打抜いた150mm×150mmのテフロン製の四角枠を二枚重ね、これらの間に150mm×150mm角の化学実験用濾紙(東洋濾紙社製、定量分析用、2番)を挟み固定した。ここに前記ポリマードープを流延し、ガラス棒にて液切りした後、150mm×150mm角の化学実験用濾紙(東洋濾紙社製、定量分析用、2番)を乗せて固定した。これを還流状態にあるメタノール中へ投入して72時間還流を継続して上下両面の化学実験用濾紙面からNMP溶媒を抽出除去することでポリウレタン樹脂を凝固させた。なお、メタノールは還流状態を維持したまま、20分間隔で新液と交換した。
【0095】
72時間後、テフロン枠から固化したポリウレタン樹脂を取り出し、日本薬局方精製水中で72時間洗浄することによりメチルセルロース、メタノール及び残留するNMPを抽出除去した。これを、室温下で24時間減圧(20mmHg)乾燥させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂製の多孔性三次元網状構造材料を得た。
【0096】
得られた多孔性三次元網状構造材料について、下記方法により平均孔径及び見掛け密度の測定を行った。なお、試料の切断は両刃カミソリ(フェザー社製、ハイステンレス)を使用して室温下で行った。
【0097】
[平均孔径の測定]
両刃カミソリで切断した試料の平面(切断面)を電子顕微鏡(トプコン社製、SM200)にて撮影した写真(代表例を図6に示す)を使用して、同一平面上の個々の孔を三次元網状構造の骨格から包囲された図形として画像処理(画像処理装置はニレコ社のLUZEX APを使用し、画像取り込みCCDカメラはソニー株式会社のLE N50を使用した。)し、個々の図形の面積を測定した。これを真円面積とし、対応する円の直径を求め孔径とした。ただし、多孔体形成時の相分離の効果によって、多孔体の骨格部分に穿孔されている微細孔は無視して同一平面上の連通孔のみを測定した。同時に、測定した全孔において孔径分布を測定した。更にこの孔径分布測定結果から、孔径10〜300μm孔の寄与率を計測した結果、多孔質構造体の平均孔径は286.1μm、孔径150〜400μm孔の寄与率は87.6%と測定された。
【0098】
[見掛け密度の測定]
多孔質構造体を約10mm×10mm×3mmの直方体に両刃カミソリで切断し、投影機(Nikon,V−12)にて測定して得た寸法より体積を求め、その重量を体積で除した値から見かけ密度を求めた結果、0.118±0.006g/cmであった。
【0099】
<ストマーへの成型>
前記多孔性構造体をトムソン打ち抜き刃で図1の3のフランジの形状に打ち抜いた(長直径は120mm、短直径は70mm)。次に、前記の同様の手法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を筒状の多孔性三次元網状構造材料(内径7.7mm、外径13.5mm、長さ50mm)へ成型した(図1の4の筒状部)。続いて、熱可塑性ポリウレタン樹脂を定法のヒートプレス加工によって2.0mm厚みの鏡面シートへ成型し、トムソン打ち抜き刃によって図1の5(パッド)の形状(長直径は100mm、短直径は50mm)に打ち抜いた。
【0100】
このパッド表面にTHF(関東化学、試薬、特級)を塗布し、ここに多孔性三次元網状構造材料からなるフランジを重ね合わせ、荷重1.0kg/cmで圧着させて中央部へ穴(図1の開口5a及び3a)を開けた。これによりストマーが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施の形態に係るストマーの構成図である。
【図2】図1のストマーの使用例を示す断面図である。
【図3】別の実施の形態に係るストマーの使用例を示す断面図である。
【図4】別の実施の形態に係るストマーの構成図である。
【符号の説明】
【0102】
1,2 ストマー
3 フランジ
3t 凸条
3A 第1フランジ
4 第2フランジ
5 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が生体の外面に重なるフランジと、
該フランジの他方の面に重なる高分子材料製パッドとを備えてなるストマーであって、 該フランジの他方の面に、該フランジの外周縁と内周縁との間を周回している凸条が設けられており、該凸条の内側領域に該パッドが配置されており、
該フランジは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有することを特徴とするストマー。
【請求項2】
請求項1において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が100〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項3】
請求項2において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が200〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.3g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項5】
請求項4において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.2g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするストマー。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、該凸条部分にのみ硬化性化合物を含浸させてあることを特徴とするストマー。
【請求項8】
請求項7において、該硬化性化合物がキチン、キトサン及びケラチンよりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするストマー。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、該フランジの外周縁と凸条との距離が1〜100mmであることを特徴とするストマー。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、該フランジの直径が10〜200mであることを特徴とするストマー。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、該フランジの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするストマー。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項において、該パッドの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするストマー。
【請求項13】
一方の面が生体に重なる第1フランジと、一方の面が該第1フランジの他方の面に重なる第2フランジと、該第2フランジの他方の面に重なる高分子材料製パッドとを有しており、
前記第2フランジが前記高分子樹脂製パッドの外縁よりも外方にまで延出しており、前記第1フランジが第2フランジの外縁よりも外方にまで延出しているストマーであって、
前記第1フランジが熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径100〜1,000μmで見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの連通性のある多孔性三次元網状構造部を有しており、
前記第2フランジが熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径1〜100μmで見掛け密度が0.05〜1.0g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有していることを特徴とするストマー。
【請求項14】
請求項13において、第1フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径が150〜600μmで、見掛け密度が0.03〜0.3g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項15】
請求項13又は14において、第1フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径が200〜500μmで、見掛け密度が0.05〜0.2g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれか1項において、第1フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径150〜400μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするストマー。
【請求項17】
請求項13ないし16のいずれか1項において、第1フランジの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするストマー。
【請求項18】
請求項13ないし17のいずれか1項において、前記第2フランジの多孔性三次元網状構造部の平均孔径が5〜80μmで、見掛け密度が0.1〜0.7g/cmであることを特徴とするストマー。
【請求項19】
請求項13ないし18のいずれか1項において、前記第2フランジの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするストマー。
【請求項20】
請求項13ないし19のいずれか1項において、前記第2フランジの多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径30〜60μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするストマー。
【請求項21】
請求項13ないし20のいずれか1項において、該パッドの厚みが0.1〜50mmであることを特徴とするストマー。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれか1項において、該基材樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするストマー。
【請求項23】
請求項22において、該基材樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とするストマー。
【請求項24】
請求項23において、該ポリウレタン樹脂がセグメント化ポリウレタン樹脂であることを特徴とするストマー。
【請求項25】
請求項1ないし24のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造部に、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするストマー。
【請求項26】
請求項25において、該多孔性三次元網状構造部に更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするストマー。
【請求項27】
請求項26において、該多孔性三次元網状構造部に細胞が接着されていることを特徴とするストマー。
【請求項28】
請求項27において、該細胞が該細胞が体性肝細胞、造血肝細胞、胚性幹細胞、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞、繊維芽細胞及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするストマー。
【請求項29】
請求項28において、該体性肝細胞、造血肝細胞又は胚性幹細胞が分化されたものであることを特徴とするストマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−68921(P2007−68921A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262431(P2005−262431)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】