説明

ストラットアッセンブリ組立装置

【課題】ストラットアッセンブリ組立時におけるコイルスプリングの圧縮時におけるストラットの傾斜を防止できるストラットアッセンブリ組立装置を提提供することにある。
【解決手段】縦向き支持台11にショックアブソーバ4を挟持するストラットアッセンブリ受台10と、ショックアブソーバ挟持手段26の挟持中心線Laに沿って支持されたショックアブソーバ4にコイルスプリングS8を仮組して圧縮し、ナット締結を行なうストラットアッセンブリ組立手段20と、ストラットアッセンブリSのロアーシートS4の挟持中心線と直交する方向のずれを規制可能なロアーシート支持手段30とを備え、ロアーシート支持手段はロアーシートが当接する複数の当接部を挟持中心線と直交する方向に列設したロアーシート受け部材70と、そのずれを阻止可能なずれ規制手段81とを有した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置として使用されるストラットアッセンブリの組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が装備する懸架装置は車体とその下方の車軸支持部材との間を連結すると共に車輪を所定の整列状態に保持するリンク部材と、車体荷重を受け、それをリンク部材を介して車輪に伝えると共に車輪反力を干渉しつつ支持するスプリングと、車輪反力に基づく車体振動を吸収し減衰させるショックアブソーバとを装備している。この懸架装置の一つにストラット型サスペンションがある。このストラット型サスペンションは、ショックアブソーバを内蔵したストラットの外筒下端にステヤリングナックルを固定し、外筒外周に設けたロアーシートとショックアブソーバ上端に取り付けたアッパーシート間にコイルスプリングを装着し、そのアッパーシート側を車体上部に締結し、ストラットの外筒下端をナックルに連結している。このストラット型サスペンションではコイルスプリングの中心線とショックアブソーバの中心線とを同軸的に取り付けず、路面反力によるストラットの曲げ応力を打ち消すようにコイルスプリングの中心線を偏心させて取り付けるという方法を採っている。
【0003】
このようなストラット型サスペンションのストラットアッセンブリの組立ての際にはストラットアッセンブリ組立装置が使用されている。その一例として、組立て前に基枠に固定された外筒よりロッド上端を機械的に引き出し、その上端にアッパーブラケット等を嵌着後にナット止めするという組立装置が実公昭60−12788号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
例えば、図13に示すようなストラットアッセンブリ組立装置では、ストラットアッセンブリ受台200の側壁にショックアブソーバ挟持手段201を設け、それにより仮組前のショックアブソーバ202の下部外筒を着脱可能に挟持すると共に、下端ジョイント部203を受台204側に載置し、ストラットアッセンブリSAを挟持中心線Laに沿って支持する。
【0005】
このようにストラットアッセンブリ受台200に支持された仮組前のストラットアッセンブリSAには、ショックアブソーバ202の外筒の外周面に突き出し状態で固着されたロアーシート205にコイルスプリング206の下端が載置され、ショックアブソーバ202の上部外筒から突出するピストンロッド207の上端に不図示のアッパーシートが嵌着され、同上端にナット締結される。このアッパーシート装着に先立ち、コイルスプリング206は挟持中心線Laに沿い、不図示のストラットアッセンブリ組み立て装置により上方より下方に向けて所定量圧縮され、更に、その圧縮状態はストラットアッセンブリ受台204(支持台)の下部にピン結合された左右一対のバネ係止部材208の上端フック209により係止され保持される。その圧縮状態のコイルスプリング206の上端にアッパーシートをかぶせ、ピストンロッド207の上端にナット締結を行っている。
【0006】
更に、上述のストラットアッセンブリ受台200と同様の機能部をターンテーブルの4つの側面にそれぞれ装備したストラットアセンブリ組立装置が特許3356038号公報(特許文献2)に開示される。
【0007】
このターンテーブル方式を用いた組立装置では、ターンテーブルの4つの側面にそれぞれストラットを保持させた上で、第1の作業ステージでストラットにコイルばねを供給して圧縮し、かつ、圧縮状態を保ったままのコイルばねをワーク保持具によって保持し、第2の作業ステージではストラットのロッドを引抜き、その上部にアッパーシートを組付け、第3の作業ステージではストラットのアッパーシート上にマウントインシュレータを組付けロッド上部にナットを締結し、第4の作業ステージではワーク保持具からコイルばねを解放してストラットアセンブリをターンテーブル上から取出すという各工程を順次行っている。
【0008】
【特許文献1】実公昭60−12788号公報
【特許文献2】特許3356038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、コイルスプリングの中心線Lcとショックアブソーバの中心線である挟持中心線Laとは同軸的に設けられず(図13参照)、コイルスプリングの中心線Lcを偏心させてコイルスプリングが路面反力を適確に受けるように設定している。このようにして、ストラットの曲げ応力を打ち消すようにしているストラットアッセンブリSAにおいてはコイルスプリングの中心線Lcがショックアブソーバの中心線(挟持中心線)Laに対して傾き、ずれていることより、ストラットアッセンブリSAの組立作業において、コイルスプリング206を下方に向けて圧縮した場合、コイルスプリング206の下端部及びロアーシート205がコイルスプリングの中心線Lc方向に押圧力F1で押圧される。これにより、ストラットアッセンブリSAにはショックアブソーバ挟持手段201の挟持中心線La方向の圧縮力F2と挟持中心線Laより離れる方向の分力F3が働き、ストラットアッセンブリSAの上部側が傾き変位eする傾向にある。
【0010】
このように、ショックアブソーバの上部外筒側が傾くと、以後のピストンロッド207の上端へのアッパーシートの嵌着及び同上端にナット締結を行なう作業効率が低下する。特に、この場合、アッパーシートと同時に組み込まれるインシュレータ(不図示)にピストンロッド207の上端を嵌挿する作業に手間取り、不図示のナットランナーによりナットをピストンロッド207の上端へ螺合する作業にも手間取り、作業性の低下を生じてしまう。なお、このような作業性の低下は特許文献1及び特許文献2の技術でも解決されていない。
【0011】
このため、ストラットアッセンブリ組立時にコイルスプリングが圧縮処理された場合に、コイルスプリングの中心線とショックアブソーバの中心線とがずれることで、ストラットが傾斜することを防止でき、更に、各ストラットアッセンブリのロアーシートの形状の相違があっても、ストラットの傾斜を確実に防止でき、ストラットアッセンブリ組立時の作業性を改善できるストラットアッセンブリ組立装置が望まれている。
【0012】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたもので、コイルスプリングの中心線とショックアブソーバの中心線とがずれていることで、ストラットアッセンブリ組立時のコイルスプリングの圧縮処理においてストラットが傾斜することを確実に防止でき、ストラットアッセンブリ組立時の作業性を改善できるストラットアッセンブリ組立装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、フロアに固定される下側基部より上方に延びる縦向き支持台の側壁にストラットアッセンブリのショックアブソーバを着脱可能に挟持するショックアブソーバ挟持手段を有したストラットアッセンブリ受台と、前記ストラットアッセンブリ受台に対設されると共に前記ショックアブソーバ挟持手段の挟持中心線に沿って支持されたショックアブソーバにコイルスプリングを仮組した上で圧縮処理し、次いでストラットアッセンブリのアッパーシートを組み付けた上でナット締結処理を行なうストラットアッセンブリ組立手段と、上記ストラットアッセンブリ受台に支持され前記ストラットアッセンブリのロアーシートの前記挟持中心線と直交する切換え方向のずれを規制可能なロアーシート支持手段と、を具備し、上記ロアーシート支持手段は、前記挟持中心線と直交する方向に移動可能に支持されると共に前記ロアーシートの周縁部が当接する複数の当接部を前記切換え方向に沿って列設したロアーシート受け部材と、前記ロアーシート受け部材の切換え方向のずれを阻止可能なずれ規制手段と、を有したことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のストラットアッセンブリ組立装置において、前記ずれ規制手段はロアーシート受け部材の側壁に形成されたラックと同ラックに離脱可能に係合することでロアーシート受け部材の前記切換え方向のずれを阻止可能なラチェット爪とからなるラチェット機構部として形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のストラットアッセンブリ組立装置において、前記ロアーシート受け部材の上向き面には前記複数の当接部を前記切換え方向に沿って階段状に列設したことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3に記載のストラットアッセンブリ組立装置において、前記ロアーシート受け部材には同ロアーシート受け部材の複数の当接部の一つが前記ロアーシートの周縁部と当接するよう前記切換え方向に駆動力を加えるリンクと、同リンクに駆動力を伝達する切換え駆動手段と、が連結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、ストラットアッセンブリ受台の上部にロアーシート支持手段が設けられ、そのロアーシート支持手段上に列設された複数の当接部の一つが組み立て中のストラットアッセンブリの周縁部に当接できるので、たとえ、コイルスプリングを組み立て中のストラットアッセンブリに挟持中心線と直交する方向の荷重が加わったとしても、ストラットアッセンブリの傾きをショックアブソーバ挟持手段と共にロアーシート支持手段が阻止でき、組み立て中のストラットアッセンブリの挟持中心線と直交する切換え方向のずれを防止でき、以後のアッパーシート側の仮組やナット締結処理を確実に容易に行うことができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、ラチェット機構部によりロアーシート受け部材の挟持中心線に向う移動を許容し、挟持中心線と直交する切換え方向のずれを阻止することを容易に行なえるので、コイルスプリングを組み立て中においてロアーシート受け部材の周縁部をロアーシート受け部材の当接部の一つに容易に操作性よく当接させることができ、ロアーシート受け部材が傾斜方向の外力を受けたのに連動してロアーシート受け部材が切換え方向にずれることを阻止できる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、ロアーシート支持手段を挟持中心線側に接近するように押し込み移動するのみで、たとえ形状がそれぞれ異なるストラットアッセンブリであってもそれぞれのロアーシートの周縁に階段状に列設した複数当接部の一つを確実に当接させ、ストラットアッセンブリの傾きを容易に防止でき、以後のアッパーシート側の仮組やナット締結処理を確実に容易に行うことができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、駆動手段の駆動力をリンクを介してロアーシート受け部材に伝え、同ロアーシート受け部材の当接部の一つをロアーシートの周縁部と容易に当接させることができ、このロアーシート受け部材の当接部をロアーシートの周縁部と当接させる作業が容易化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1にはこの発明の一実施形態としてのストラットアッセンブリ組立装置を示した。
このストラットアッセンブリ組立装置M1は組み立て中のストラットアッセンブリSを着脱可能に挟持するショックアブソーバ挟持手段26を有したストラットアッセンブリ受台10と、ストラットアッセンブリ受台10に対設されると共にショックアブソーバ挟持手段26の挟持中心線Laに沿って支持されたストラットアッセンブリSを組み立て処理するストラットアッセンブリ組立手段20と、ストラットアッセンブリ受台10の上部に配備されるロアーシート支持手段30と、を備える。
なお、図1、図2(a)に示すように、ここで組み立てられるストラットアッセンブリSは、コイルスプリングの中心線Lcとショックアブソーバの中心線である挟持中心線Laとは同軸的に設けられず、コイルスプリングの中心線Lcを偏心させたものである。
【0022】
図1、図2に示すように、ストラットアッセンブリ受台10はフロア面Aに載置され固定される下側基部2と、同下側基部2の一端より上方に延びストラットアッセンブリSの一部を構成するショックアブソーバ4を縦向きで支持する縦柱状の縦向き支持台であるストラット取り付け台11と、ストラット取り付け台11の表裏2つの側壁である縦壁面にストラットアッセンブリSのショックアブソーバ4を着脱可能に挟持するショックアブソーバ挟持手段26と、後述の外筒挟持部18の直下の下受台111が装着される。
更に、下側基部2上であって、ストラット取り付け台11の下端部11bに対向する位置には、ショックアブソーバ4の下端の変位を阻止する下端変位阻止手段5(図1参照)と、縦向きの支持枠92とがそれぞれ装備される。
【0023】
図1、2に示すように、ストラット取り付け台11のストラットアッセンブリ組立手段20と対向する組立位置K1側の下側基部2に縦向きの支持枠92が固定され、この支持枠92の上下方向での中間部には突状の枢支枠部材921が突設され、上端には、図1、4に示すように、ガイドプレート68を取り付け、これにより左右バネ係止バー91のずれを規制している。
図2(b)に示すように、突状の枢支枠部材921には左右バネ係止バー91の下端911がピン結合され、左右バネ係止バー91の上端には圧縮状態のコイルスプリングS8を係止するフック部912が形成される。
【0024】
図2(b)に示すように、支持枠92の中間部には左右バネ係止バー91を開放位置d1から係止位置d2に弾性的に押圧する複数のばね93が取り付けられる。更に、ばね93の弾性力に抗して左右バネ係止バー91を開放位置d1に切換える不図示の開放駆動手段が支持枠92側に取り付けられ、同開放駆動手段が制御手段16により駆動制御される。
【0025】
このような左右バネ係止バー91は、不図示の開放駆動手段のオン作動時に左右に互いに離隔し、その際、ガイドプレート68により退却位置d1に保持される。一方、不図示の開放駆動手段のオフ時には複数のバネ93の弾性力を受けてストラットアッセンブリSの圧縮状態のコイルスプリングS8の上端を係止する係止位置d2(図2(b)参照)に切換え移動可能に形成されている。
【0026】
次に、図1に示すように、ストラット取り付け台11は駆動部回転台14の上に支持され、縦向き回転中心線L1回りに回転可能に支持されている。なお、駆動部回転台14内の回転駆動部15は制御手段16によって適時に切換え回動制御され、表裏対向配備された各ショックアブソーバ挟持手段26のいずれか一方がストラットアッセンブリ組立手段20側に対向するように切換え保持する。
【0027】
ここで、各ショックアブソーバ挟持手段26はストラット取り付け台11が駆動部収納台14によって180°毎に切換え回転され、その際、図1に示すように、縦基枠3と対向する組立位置K1においてはストラットアッセンブリSの組立を可能とし、更に、180°回転して組立前位置K2に達すると、組立が完了したストラットアッセンブリSを取り外し、新たに組み立てるストラットアッセンブリSの構成部品(ショックアブソーバ4、コイルスプリングS8等)を下受台111及びショックアブソーバ挟持手段26に対して組み込み、新たな組立前の搬入処理が作業者により行なわれる。
【0028】
この際、表裏の各ショックアブソーバ挟持手段26は、上下の外筒挟持部17、18を備え、これらによりストラットを縦向きの挟持中心線Laに沿って支持する。しかも、下の外筒挟持部18の直下の下受台111によりショックアブソーバ4の下端を支持する。
下受台111はその上向き面に、ショックアブソーバ4の下端部S3をずれなく載置する凹溝受け部21が配備される。この下受台111の下壁面は下端変位阻止手段5(図1中に実線及び2点鎖線で2位置を示した)の荷重受け部材12に当接可能に形成される。
下受台111の下方の下端変位阻止手段5は、荷重受け部材12と同荷重受け部材12を挟持中心線Laに沿う当接位置E1(図1に実線で示す位置)と退却位置E0(図1に2点鎖線で示す位置)とに切換えるエアーシリンダ23とを備える。
【0029】
荷重受け部材12はストラットの下方変位を阻止するもので、ストラット取り付け台11が駆動部収納台14によって180°回転される毎に、退却位置E0(図1に2点鎖線で示す位置)から当接位置E1(図1に実線で示す位置)にエアーシリンダ23の高圧エアの給排切換えによって切換え保持される。エアーシリンダ23には不図示のエア源がエア切換え用の切換えバルブVを介して連結され、切換えバルブVは後述の制御手段16によって適時に切換えられる。
【0030】
図2(a)に示すように、上下の外筒挟持部17、18は、ストラット取り付け台11の縦側壁より所定量突き出た腕部171、181と、同腕部の内部に基端側をピン結合すると共に回動端側がショックアブソーバ4の外筒を挟持可能な一対の湾曲把持部材172、182と、ストラット取り付け台11内に配備されると共に一対の湾曲把持部材172、182を基端側を中心にして水平面方向に把持作動させる駆動部173、183とを備える。
一対の湾曲把持部材172、182はそれぞれ複数のバネ93に連結されており、把持するストラットに対して弾性的な挟持力を付加可能に形成される。しかも、ストラットの着脱時には駆動部173、183が同バネの挟持力に抗して一対の湾曲把持部材172、182を開放作動させるよう駆動できる。
【0031】
このようなショックアブソーバ挟持手段26はストラットアッセンブリ組立手段20と対向する組立位置K1とその反対側の組立前位置K2との間を交互に回転移動する。組立位置K1で組立が完了したストラットアッセンブリを組立前位置K2で取り外し、そのストラット装着部13に新たな組立前ストラットの構成部品であるショックアブソーバ4を縦向きの挟持中心線Laに沿って取り付けている。
【0032】
図5に示すように、外筒S2の長手方向での中間部の外周面にはロアーシートS4を突出し、外筒の上端からはショックアブソーバ4のピストンロッドS5を突き出し、そこにアッパーシートS6をナットS7で締結するように形成される。ここで、ロアーシートS4上にコイルスプリングS8が作業者により嵌着される。その後で、そのコイルスプリングS8はストラットアッセンブリ組立手段20により圧縮され、その上で上端側にアッパーシートS6が取り付けられ、ピストンロッドS5の上端にナットS7で締結されることで組み立てが完了する。
【0033】
ここで、外筒S2に対してロアーシートS4の下端部は車内側(図2(a)、図5で左側)の対向部b1が最も上方位置となるように傾斜して形成される。しかも、ロアーシートS4、即ち、コイルスプリングS8の中心線Lcがショックアブソーバ4の中心線、即ち、挟持中心線Laの位置に対して傾斜している。これにより、ストラットアッセンブリSは中心線Lc方向の路面反力Fcを適確に受けて、ストラットの曲げ応力を低減するようにしている。
【0034】
このように、挟持中心線Laに対してロアーシートS4、即ち、コイルスプリングS8の中心線Lcが傾斜して設定されている構造のストラットアッセンブリSでは、コイルプリングS8の組み付け時に、中心線Lc方向の圧縮操作力F2を加えると、同圧縮操作力F2に対して、挟持中心線La方向の加圧力F3に加えてストラットを傾ける傾斜方向分力F4が働く。このため、圧縮操作力F2が加わる場合に、ストラットアッセンブリSが傾斜方向分力F4で傾き、コイルスプリングS8の圧縮後にショックアブソーバ4が傾きピストンロッドS5が傾いてアッパーシートS6の組み付け、ナット締結作業が的確になされなくなるおそれがあり、作業効率が悪化する。
【0035】
そこで、ストラットアッセンブリ受台10はストラット取り付け台11の上部100にショックアブソーバ4の傾きを阻止するロアーシート支持手段30を配備している。
図2、3に示すように、ロアーシート支持手段30は、ストラット取り付け台11の上部100に移動可能に支持されるロアーシート受け部材70と、ロアーシート受け部材70の切換え方向Dのずれを阻止可能なずれ規制手段81(図3参照)と、ロアーシート受け部材70を後述の切換え方向Dに切換え移動させる駆動力を加える切換え駆動手段71(図3参照)とを備える。
【0036】
図3、図6〜図8に示すように、ロアーシート受け部材70は挟持中心線Laと直交する方向(以後単に切換え方向Dと記す)に移動可能なように、ストラット取り付け台11の上部100に装備される。ここで、ロアーシート受け部材70はスライドベース73と、その上部の嵌合部731に嵌着され一体結合されたロアーシート受け具74とからなる。
【0037】
このような、ロアーシート受け部材70にはロアーシートS4の周縁部が当接する複数の当接部c1〜cnが切換え方向Dに沿って階段状に列設され、挟持中心線側に接近する当接部c1ほど低位置に形成される。これによりストラットアッセンブリSの種類に応じてロアーシートS4の形状が大小異なるとしても、各ロアーシートS4の形状に応じた位置の当接部c1〜cnに当接できる。このため、ストラットアッセンブリの傾きを容易に防止でき、以後のアッパーシート側の仮組やナット締結処理を確実に容易に行うことができる。
ロアーシート受け部材70を切換え方向Dに切換え移動させる切換え駆動手段71は、図3に示すように、ロアーシート受け具74上の複数の当接部c1〜cnの一つがロアーシートS4の周縁部と当接するよう切換え移動させる機能を備える。
【0038】
即ち、図3、4に示すように、切換え駆動手段71は、ストラット取り付け台11の上部100の上向き面f1に切換え方向Dに沿って締結されたガイド部材である一対の押さえ金具72と、それらの間のガイド溝に摺動可能に嵌着されるスライドベース73及びその上部に一体結合されたロアーシート受け具74と、スライドベース73の両側壁間を貫通する断面楕円状のレバー嵌合穴733(図7(b)、(c)参照)に相対変位可能に嵌合されストラット取り付け台11の上部100の上向き面f1に縦向きピン75(図3参照)を介して枢支位置が枢支されたレバー76と、同レバー76の一方の揺動端に揺動操作力を付与する切換え手段78と、レバー76の他方の揺動端に一端がストラット取り付け台11の上部100上の係止片101に他端が係合される戻しバネ77とを備える。
【0039】
なお、図7(b)、(c)に示すように、レバー嵌合穴731に相対変位可能に嵌合されたレバー76の中間部には長穴761が形成され、ここにスライドベース73のレバー嵌合穴733の中央に上下に向けて縦ピン732が嵌着される。この縦ピン732がレバー76の中間部の長穴761に嵌合する。
図3に示すように、切換え手段78はストラット取り付け台11の上部100に支持されたエアーシリンダ79と同エアーシリンダ79に連結ロッド791を介して切換え方向Dと並行な方向に往復作動すると共に、レバー76の一方の揺動端を係合する押圧スライド部材792とを備える。
【0040】
ここで連結ロッド791及び押圧スライド部材792が切換え方向Dに駆動力を加えるリンクを成し、エアーシリンダ79がリンクに駆動力を伝達する切換え駆動源を成す。
ここでエアーシリンダ79は不図示の切換えバルブの開閉操作に応じて押圧スライド部材792を介してレバー76を基準位置P1(図3中の実線位置)より切換え位置P2(図3中の2点鎖線位置)に切換える。
図3に示すように、切換え手段78のオフ時にはレバー76は戻しバネ77により基準位置P1に保持され、その間、図2(a)に示すように、スライドベース73及びロアーシート受け具74を載置位置Q1に保持する。一方、切換え手段78のオン時に、戻しバネ77の弾性力に抗して切換え位置P2に達するレバー76はスライドベース73及びロアーシート受け具74を退却位置Q2に切換える。
【0041】
図3に示すように、ずれ規制手段81はロアーシート受け部材70を成すスライドベース73の側壁に形成されたラック82(図7(a)、(b)参照)と、同ラック82に離脱可能に係合することでロアーシート受け部材70の切換え方向Dのずれを阻止可能なラチェット爪83(図6(b)参照)とからなるラチェット機構部として形成される。
【0042】
図3、図6(a)、(b)に示すように、ラチェット爪83は扇形状の本体831を備え、その基端がストラット取り付け台11の上部100の上向き面に対し縦ピン832を介して枢支される。本体831の周縁部の一端に爪833が突設される。本体831の側部には解除用レバー834が一体的に取り付けられる。
【0043】
解除用レバー834の一部であって基端より離れた部位にはストラット取り付け台11の上部100側のバネ受け部材96に一端が支持された圧縮ばね835の他端が当接し、常時押圧されている。この圧縮ばね835の押圧力に応じてラチェット爪83がラック82に噛み合い、ラック82側のスライドベース73の切換え方向Dのずれを阻止するようにしている。
【0044】
図6(a)に示すように、ラチェット爪83と一体の解除用レバー834の揺動端近傍は上側の外筒挟持部17の上部に突設されたレバー駆動バー173の上端部と対向可能に形成される。
外筒挟持部17と一体のレバー駆動バー173は外筒挟持部17が挟持状態より解除位置に切換る際に、レバー駆動バー171の上端部が解除用レバー834及びラチェット爪83を噛み合い位置より解除位置に切換え、ずれ規制手段81によるスライドベース73及びロアーシート受け具74の移動を許容する。この際、切換え手段78が押圧作動すると(オンすると)、切換え位置P2に達するレバー76がスライドベース73及びロアーシート受け具74を退却位置Q2(図2(a)参照)に切換えることができる。
【0045】
次に、図1に示すストラットアッセンブリ組立手段20を説明する。
このストラットアッセンブリ組立手段20は、ショックアブソーバ挟持手段26の挟持中心線Laに沿って支持された組み立て前のストラットアッセンブリSにコイルスプリングS8を仮組した上で所定量圧縮処理し、次いでストラットアッセンブリSのアッパーシートS6を組み付けると共にナットS7の締結処理を自動的に行なう機能を有する。
【0046】
図1に示すように、このストラットアッセンブリ組立手段20は、フロア面Aに載置され下側基部2より上方に延びる縦基枠3を備える。同縦基枠3はストラット取り付け台11と対向配備され、その一側面に縦支持レール8が取り付けられ、縦支持レール8に可動台7の可動本体6が上下動可能に支持される。ここで可動本体6の上端部の縦レール8aには上下動可能にナットランナー9が支持されている。
縦基枠3の他側面にはばね圧縮手段BMの駆動源を成すスプリング圧縮昇降駆動モータ35(以後単に主モータと記す)が取り付けられる。この主モータ35の回転力は縦支持レール8内に配備される送りねじ軸36に無端ベルト59を介して伝達されている。
【0047】
縦支持レール8内の送りねじ軸36は可動本体6側に支持された不図示の送りねじ部材に螺合しており、送りねじ軸36の正逆回転に応じて可動本体6側を上下に移動でき、これらが昇降駆動部を成している。可動本体6の下部には、左右送りレール43及び前後送りレール44を介して支持された紙面垂直方向に長い可動支持枠42が配備される。この可動支持枠42にはコイルスプリングS8の上端に当接して、コイルスプリングS8を加圧する加圧部材47(図9(a)参照)と、その前後に所定量離れた位置に取り付けられる引抜装置46(図9(b)参照)と、アッパーシート挟持装置48(図9(c)参照)とが取り付けられている。
【0048】
なお、左右送りレール43及び前後送りレール44の切り換え移動時にこれらと干渉せずに、これらの上方のナットランナー9(図1参照)が退却位置H1より締結位置H2に降下移動し、後述のナット締結作動を行える。
このようなストラットアッセンブリ組立装置M1の作動を制御手段16の制御機能と共に説明する。
【0049】
初めに、組立前のストラットアッセンブリSのショックアブソーバ4がストラット取り付け台11の組立前位置K2に対向する側のショックアブソーバ挟持手段26に取り付けられる。これと同時期に、制御手段16はストラットアッセンブリ組立手段20の可動本体6側の左右送りレール43及び前後送りレール44を切り換え移動させ、アッパーシート挟持装置48(図9(c)参照)を駆動して、供給台J上に予め供給されているアッパーシートS6を把持して、所定の待機位置(図9(c)の2点鎖線で示す位置参照)に待機させる。
【0050】
組立前位置K2において、制御手段16は、ずれ規制手段81のラック82とラチェット爪83を噛み合い解除に保持し、切換え手段78のエアーシリンダ79がオンしてレバー76を介しロアーシート受け部材70を退避位置Q2(図2(a)参照)に保持する。 この状態で、組み立て前のストラットアッセンブリSのショックアブソーバ4の上下が上下の外筒挟持部17、18に嵌合され、作業者により、制御手段16に挟持指令が入力されるとする。これにより、制御手段16は上下の外筒挟持部17、18を挟持位置に切換える。
【0051】
次いで、制御手段16は切換え手段78(図3参照)のエアーシリンダ79をオフする。これにより切換え手段78のレバー76が戻しバネ77により基準位置P1側に切換えられ、これに連動してスライドベース73及びロアーシート受け具74を載置位置Q1(図2(a)参照)に向けて移動させる。
この際、ロアーシート受け具74の複数の当接部c1〜cnの一つがストラットアッセンブリSのロアーシートS4の周縁部と当接し、停止する。この際、ずれ規制手段81のラチェット機能によりロアーシート受け具74の挟持中心線Laに向う移動を許容し、離れる方向(挟持中心線と直交する方向)のずれを阻止することを容易に行なえるので、コイルスプリングS8を組み立て中においてロアーシートS4の周縁部をロアーシート受け具74の当接部cnの一つに容易に操作性よく当接させ、ずれを阻止でき、ロアーシートS4及び組み立て前のストラットアッセンブリSの上部側の傾きは確実に防止される。
【0052】
この時点では、制御手段16はストラット取り付け台11の下端枠部にピン結合されていた左右バネ係止バー91(図2(b)参照)を退却位置d1に保持しており、作業者によりロアーシートS4上にコイルスプリングS8が嵌着される。
この後、作業者による組立開始指令が制御手段16に入力されると、組立て作動が開始される。
【0053】
まず、組立開始指令を受けると、図1に示すように、その時点で、ストラット取り付け台11が回転し、組立前位置K2におけるショックアブソーバ挟持手段26が組立位置K1に対向する。
この際、ストラットアッセンブリ組立手段20の縦中心線L0とストラット取り付け台11の挟持中心線Laは同一線上に位置する。
更に、シリンダ23がオンして、下受台111の下壁に荷重受け部材12の上端が当接するよう駆動する。これによって、以後のスプリング圧縮時の荷重により下受台111が上下変位することを防止できる。
【0054】
次いで、制御手段16はストラットアッセンブリ組立手段20をばね圧縮工程g1〜圧縮戻し工程g4に沿って駆動する。
まず、ストラットアッセンブリ組立手段20は、ばね圧縮工程g1に入る。
ここで、制御手段16が不図示の開放駆動手段をオンし、複数のバネ93の弾性力に抗して左右バネ係止バー91を係止位置d2より解除位置d1に切換え保持する。この際、可動本体6の下部に左右送りレール43及び前後送りレール44を介して支持された支持枠42より下方に突出する加圧部材47(図2(a)、(b)参照)を下方移動させ、ショックアブソーバ挟持手段26に保持されているストラットSのコイルスプリングS8を係止位置B0(図9(a)参照)より第1圧縮位置B1に圧縮する。
【0055】
この際、図5に示したように、挟持中心線La及び縦中心線L0に対してコイルスプリングS8の中心線Lcが傾斜しているため、圧縮操作力F2は挟持中心線La方向の加圧力F3に加えてストラットを傾ける傾斜方向分力F4を受ける。このストラットアッセンブリSが受ける傾斜方向分力F4はロアーシートS4の周縁部よりロアーシート受け具74の一つの当接部cnに受け止められる。これにより傾斜方向分力F4を受けていても、ロアーシートS4及び組み立て前のストラットアッセンブリSの上部側はその傾きを確実に防止される。
【0056】
この圧縮処理が済むと、制御手段16は不図示の開放駆動手段をオフし、図2(b)に示すように、複数のバネ93の弾性力で左右バネ係止バー91を退却位置d1より係止位置d2に切換え移動し、圧縮状態のコイルスプリングS8の上端を係止する。この後、左右の各加圧部材47(図9(a)参照)を第1圧縮位置B1より待機位置B0に戻す。
次に、引抜き及びアッパーシート組付工程g2に入る。まず、左右送りレール43及び前後送りレール44を介して支持された紙面垂直方向に長い可動支持枠42の引抜装置46(図9(b)参照)を挟持中心線La及び縦中心線L0上に切換える。
【0057】
引抜装置46は下部にチャック461を備え、これが昇降用アクチュエータ462によって降下させられたときにロッドS5の上端をクランプする。その後、チャック461が上昇することによりロッドS5がストラット4から所定高さまで引抜かれる。この際、押さえ部材464がバンプラバーrmの上端を押さえ、上昇を回避する。
次いで、左右送りレール43及び前後送りレール44が切換えられて、引抜装置46に代えて、挟持中心線La及び縦中心線L0上に、アッパーシート挟持装置48(図9(c)参照)を切換え保持する。この際、アッパーシート挟持装置48はアッパーシートS6を把持部481によりチャックし、待機位置(図9(c)での2点鎖線で示す位置参照)より、挟持中心線La上に配置される。次いで、S5の真上からアッパーシートS6と共に降下することにより、アッパーシートS6の中央部の孔をロッドS5の上端部に嵌合させる。
【0058】
この後、締結工程g3に入る。
制御手段16は左右送りレール43及び前後送りレール44を駆動し、前後送りレール44側を所定の退避位置に移動させ、その上でナットランナー9(図1、図9(d)参照)を退却位置H1より締結位置H2に降下移動させ、締結駆動させる。この際、ナットS7(図5、図9(d)参照)をストラットアッセンブリSのピストンロッドS5のねじ部に螺着し、アッパーシートS6をロッド39の上端に締結し、退却位置H1に引き上げる。
この後、左右のショックアブソーバ挟持手段212、212′の各左右バネ係止バー227からコイルスプリングS8を同時に解放する圧縮戻し工程g4に入る。
【0059】
ここで、制御手段16が摺動台45上の加圧部材47を待機位置B0より第1圧縮位置B1に押圧作動して切換え、コイルスプリングS8を左右バネ係止バー91のフック部912から離す。さらに、左右バネ係止バー91が開く方向に駆動されてコイルスプリングS8から退避したのち、可動本体6を引き上げ作動させ、加圧部材47を第1圧縮位置B1より第2開放位置B2まで引き上げ、少し上昇させ、コイルスプリングS8の上端部がアッパーシート204に接近する。その直後に加圧部材47が開く方向に移動することにより、コイルスプリングS8の上端部が加圧部材47から外れ、アッパーシートS6に当接する。
【0060】
この後、制御手段16はストラット取り付け台11を180°回転させ、組立て完了のストラットアッセンブリSを組立前位置K2に対向させる。
この際、すでに次の組立前のストラットがストラット取り付け台11の他方のショックアブソーバ挟持手段26に取付け済みであり、次の組立て指令の入力を待つこととなる。
【0061】
以上のように、図1のストラットアッセンブリ組立装置M1によれば、圧縮処理に先立ち、ストラットアッセンブリSのロアーシートS4の周縁部がロアーシート受け具74の一つの当接部cnに受け止められるので、たとえ、挟持中心線Laに対してコイルスプリングS8の中心線Lcが傾斜し、圧縮操作力F2がストラットを傾ける傾斜方向分力F4を生じるとしても、ロアーシートS4及び組み立て前のストラットアッセンブリSの上部側はその傾きを確実に防止される。このため、コイルスプリングS8の上端をアッパーシートS6に当接させる際、ピストンロッドS5はその傾斜変位を確実に防止され、適正位置に保持されている。このため以後の組み立て処理である、アッパーシートS6及び不図示のインシュレータをピストンロッドS5の頂部に嵌挿させ、ナットS7をねじ部に螺着する処理が容易化され、スプリング上端を当接させたアッパーシートS6をロッド39の上端に確実に締結でき、アッパーシートS6の組み付けが容易化される。
【0062】
特に、ずれ規制手段81のラチェット機構部によりロアーシート受け具74の挟持中心線Laに向う移動を許容し、挟持中心線Laと直交する方向のずれを阻止することを容易に行なえるので、コイルスプリングS8を組み立て中においてロアーシートS4の周縁部をロアーシート受け具74の当接部cnの一つに容易に操作性よく当接させることができ、ロアーシート受け部材が傾斜方向の分力F11を受けたのに連動してロアーシート受け具74が切換え方向Dにずれることを阻止できる。
【0063】
更に、ロアーシート受け具74(ロアーシート支持手段)を挟持中心線La側に接近するように押し込み移動するのみで、たとえ形状がそれぞれ異なるストラットアッセンブリSであってもそれぞれのロアーシートS4の周縁に階段状に列設した複数当接部cnの一つを確実に当接させ、ストラットアッセンブリSの傾きを容易に防止でき、以後のアッパーシート側の仮組やナット締結処理を確実に容易に行うことができる。
【0064】
更に、切換え手段78で用いる連結ロッド791及び押圧スライド部材792が切換え方向Dに駆動力を加えるリンクを成し、エアーシリンダ79がリンクに駆動力を伝達する切換え駆動手段を成すので、エアーシリンダ79の駆動力をリンクを介してロアーシート受け具74に伝えることができ、ロアーシート受け部材の当接部cnをロアーシートS4の周縁部と当接させる作業が容易化される。
【0065】
以上のように、本発明が適用されたターンテーブル方式のストラットアッセンブリ組み立て装置では、特に、ストラット取り付け台11の上部100に移動可能に支持されるロアーシート受け部材70と、ロアーシート受け部材70の切換え方向Dのずれを阻止可能なずれ規制手段81(図3参照)とを装備することで、ストラットアッセンブリSの傾きを容易に防止でき、以後のアッパーシート側の仮組やナット締結処理を確実に容易に行うことができるという効果を確実に得ることができる。
【0066】
次に本発明の第2実施形態を説明する。
上述の第1実施形態のストラットアッセンブリ組立装置M1はストラット取り付け台11が180°毎に切換え回転し、組立前位置K2では組み立て済みのストラットアッセンブリSを外し、新たに組み立てるストラットアッセンブリSの構成部品を組み込み、組立位置K1ではストラットアッセンブリ組立手段20によりストラットアッセンブリSの組立が行われていた。
【0067】
これに対し、図10〜図12に示すように、第2実施形態のストラットアッセンブリ組立装置M2は回転するターンテーブル211を有する。このターンテーブル211は、左輪用ストラットアセンブリS1のストラット222と右輪用ストラットアセンブリS1′のストラット222′を同時に保持する左右一対のショックアブソーバ挟持手段(ワーク保持具)212、212′を周方向4箇所に備えている。
【0068】
ターンテーブル211は回転駆動機構15によって90°ずつ回転しながら間欠的に停止する。即ち、ターンテーブル211の周方向4箇所に設けられた作業ステージG1〜G4において一時的に停止し、位置決めされる。これにより、各作業ステージG1、G2、G3、G4において、左右一対のストラットアセンブリS1、S1′の構成部品(アッパーシート204、バンプラバーrm、コイルスプリングS8など)が左右ほぼ同時に順次組付けられるようにしている。
【0069】
左右一対のショックアブソーバ挟持手段212、212′は左輪用のストラット202と右輪用のストラット202′を立てた姿勢で保持するものであり、左側のショックアブソーバ挟持手段212の近傍に、左輪用のアッパーシート仮置き台220とインシュレータ仮置き台221が設けられ、右側のショックアブソーバ挟持手段212′の近傍に、右輪用のアッパーシート仮置き台220′とインシュレータ仮置き台221′が設けられている。しかも、ショックアブソーバ挟持手段212、212′それぞれの後部側の取り付け枠部U1にロアーシート支持手段230が配備されている。
なお、先に説明した図9中に第1実施形態における部材を説明したが、以下の記載において、これらと同一機能の第2実施形態における部材を第1実施形態における部材の符号に続けて括弧書き符号として併記し、図9を第2実施形態における説明図としても兼用する。
【0070】
各ショックアブソーバ挟持手段212、212′(図9(a)参照)は、下受台(ベース部材)225と、クランプアーム(外筒挟持部)226と、左右バネ係止バー227などを備えている。下受台225はターンテーブル211に設けられており、ストラット202、202′を立てた姿勢で下端部を保持できるようになっている。クランプアーム226は図示しないクランプ駆動機構によって開閉駆動され、ストラット202、202′を挾持するように構成されている。左右バネ係止バー227も図示しないアーム駆動機構によって開閉駆動され、係止部がコイルスプリングS8の上端部(座巻部)に引っ掛かるようになっている。
【0071】
左右輪用ストラットアセンブリS1,S1’にそれぞれ対設された各ロアーシート支持手段230は、図3、図6〜図8を用いて第1実施形態で説明したロアーシート支持手段30と同様の構成のものである。このため、ここでは重複部材には同一符号を付加し、重複説明を略した。
【0072】
図10に示すように、ここでのロアーシート支持手段230は、ターンテーブル211の取り付け枠部U1上に移動可能に支持されるロアーシート受け部材70(図3参照)と、ロアーシート受け部材70の切換え方向Dのずれを阻止可能なずれ規制手段81(図3参照)と、ロアーシート受け部材70を後述の切換え方向Dに切換え移動させる駆動力を加える切換え駆動手段71(図3参照)とを備える。これにより、第1実施形態で説明したロアーシート支持手段30と同様に、左右輪用ストラットアセンブリS1,S1’に対し、傾き規制機能を発揮できる。
【0073】
次に、各作業ステージG1、G2、G3、G4毎に、ストラットアセンブリ組立装置M2の構成と機能について説明する。
まず、第1ステージG1でのばね圧縮工程g1を説明する。
図10に示すように、作業員Wはコンテナ(図示せず)の中から左右のストラット202、202′を取出し、左側のショックアブソーバ挟持手段212に左輪用のストラット202をセットし、右側のショックアブソーバ挟持手段212′に右輪用のストラット202′をセットする。ついで、左右のショックアブソーバ挟持手段212、212′の各クランプアーム226が閉じる。次いで、作業員Wは、各ストラット202、202′のロアーシート207上にコイルスプリングS8を載置する。また、アッパーシート仮置き台220、220′のそれぞれにアッパーシート204を置き、インシュレータ仮置き台221、221′のそれぞれにマウントインシュレータrmを置く。
【0074】
第1ステージG1に設けられた左右一対のばね圧縮手段BM’の構成は左右互いに共通であり、左右のショックアブソーバ挟持手段212、212′に保持されているストラット202、202′のコイルスプリングS8をそれぞれ上方から所定高さまで圧縮する。 ばね圧縮手段BM’は、図9(a)に示すように、コイルスプリングS8の上方に位置する加圧部材47が、昇降用アクチュエータ232(図12参照)によって加圧部材47を降下することにより、各コイルスプリングS8が所定量圧縮される。
【0075】
この際、図5を用いて説明したように、ストラットアッセンブリSが傾斜方向分力F4を受けるが、これはロアーシートS4の周縁部よりロアーシート受け部材70に受け止められる。これにより傾斜方向分力F4を受けていても、ロアーシートS4及び組み立て前のストラットアッセンブリS1、S1’の上部側はその傾きを確実に防止される。
【0076】
この圧縮処理が済むと、図9(a)に実線で示すようにショックアブソーバ挟持手段212、212′の各左右バネ係止バー227が閉じ、さらに加圧部材47が待機位置B0まで上昇する。これにより、各コイルスプリングS8が左右バネ係止バー227の係止部に引っ掛かり、圧縮された状態のままに保持される。
【0077】
次いで、ターンテーブル211が90°回転し、このとき、アッパーシート仮置き台220、220′(図10参照)上のアッパーシート204と、インシュレータ仮置き台221、221′上のバンプラバーrmも第2ステージG2まで移動する。
【0078】
次に、第2ステージG2での引抜き及びアッパーシート組付工程g2を説明する。
まず、図12に示す左右一対のロッド引抜き機構240、240′は、図9(b)に示すように、下部にチャック241を備え、これが昇降用アクチュエータ242によって降下させられたときにロッドS5の上端をクランプする。その後、図9(b)に示すように、チャック241が上昇することにより、各ロッドS5がストラット204、204′から所定高さまで引抜かれる。この際、押さえ部材464がバンプラバーrmの上端を押さえ、上昇を回避する。
【0079】
次いで、図9(c)、図10に示す左右一対のアッパーシート組付機250、250′が駆動する。アッパーシート組付機250、250′は、それぞれアッパーシート204を把持部251によりチャックする。水平方向に移動可能である把持部251は、アッパーシート仮置き台220、220′からアッパーシート204をつかんだのち、ロッドS5の真上からアッパーシート204と共に降下することにより、アッパーシート204の中央部の孔をロッドS5の上端部に嵌合させる。次いで、ターンテーブル211が90°回転することにより、インシュレータ仮置き台221、221′上のマウントインシュレータrmもストラット204、204′と同時に第3ステージG3まで移動する。
【0080】
次に、第3ステージG3での締結工程g3を説明する。
まず、図10、12に示すナット締付機270、270′が駆動して締結工程が行われる。ナット締付機270、270′は上下方向に移動可能なナットランナーであり、昇降用アクチュエータ272によって、上下方向に駆動されるようになっている。図9(d)に示すように、ナット締付機270、270′の下端のソケット部273は周知の回転機構によって垂直軸回りに回転させることができ、ナット締付機270、270′によって供給されるナットNを保持する。
ナット締付機270、270′がロッドS5の真上からねじ部に向って降下し、ソケット部273が回転することにより、ナットNがロッドS5のねじ部に締結される。次いで、ナット締付機270、270′上昇して元の位置に戻り、ターンテーブル211が90°回転して第4ステージG4まで移動する。
【0081】
次に、第4ステージG4での圧縮戻し工程g4の作動を説明する。
ここでは、図10、図9(e)に示すように、左右のショックアブソーバ挟持手段212、212′の各左右バネ係止バー227からコイルスプリングS8を同時に解放する。ここで、図11に示すように、左右一対の圧縮戻し機構280、280′は昇降用アクチュエータ281(図11参照)によって上下方向に駆動される加圧部材282を備えている。この昇降用アクチュエータ281は加圧部材282を待機位置B0よりコイルスプリングS8に向って降下させ、図9(e)に示すようにコイルスプリングS8を第1加圧位置B1まで圧縮する。これにより、コイルスプリングS8が左右バネ係止バー227の係止部から離れ、さらに、左右バネ係止バー227が開く方向に駆動されてコイルスプリングS8から退避したのち、加圧部材282が第2加圧位置B2まで少し上昇することにより、コイルスプリングS8の上端部がアッパーシート204に接近する。その直後に加圧部材282が開く方向に移動することにより、コイルスプリングS8の上端部が加圧部材282から外れ、アッパーシート204に当接する。次いで、クランプアーム226が開くことにより、左右のコイルスプリングS8が同時に解放される。この後、左右一対のストラットアセンブリS1、S1′は、第4ステージG4において搬出機構290によって2本同時にターンテーブル211から取出されコンベア等に移載される。
【0082】
この第2実施形態でもターンテーブル211の基枠上に移動可能に支持されるロアーシート受け部材270と、ロアーシート受け部材270の切換え方向Dのずれを阻止可能なずれ規制手段281(図3参照)とを装備することで、ストラットアッセンブリS1、S1′の傾きを容易に防止でき、以後のアッパーシート側の仮組やナット締結処理を確実に容易に行うことができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態としてストラットアッセンブリ組立装置の全体構成図である。
【図2】図1のストラットアッセンブリ組立装置で用いるストラットアッセンブリ受台の要部拡大図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】図1のストラットアッセンブリ組立装置で用いるストラットアッセンブリ受台の要部平面図である。
【図4】図1のストラットアッセンブリ組立装置で用いるストラットアッセンブリ受台の部分切欠拡大正面図である。
【図5】図1のストラットアッセンブリ組立装置で組み立てられるストラットアッセンブリの拡大側面図である。
【図6】図1のストラットアッセンブリ組立装置で用いるずれ規制手段の起動説明図で、(a)は部分平面図、(b)はずれ規制手段のラチェット爪とラックの部分噛み合い平面図である。
【図7】図1のストラットアッセンブリ組立装置で用いるロアーシート受け部材を成すスライドベースを示し、(a)はラック部分拡大図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図8】図1のストラットアッセンブリ組立装置で用いるロアーシート受け部材を成すロアーシート受け具を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図9】図1のストラットアッセンブリ組立装置を用いて行われるストラットアッセンブリ組立工程の説明図で、しかも、第2実施形態における説明図としても兼用する説明図であり、(a)はばね圧縮工程、(b)引抜き工程、(c)アッパーシート組付工程、(d)締結工程g3、(e)圧縮戻し工程の説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態としてストラットアッセンブリ組立装置の平面図である。
【図11】図10のストラットアッセンブリ組立装置の第1ステージ方向の正面図である。
【図12】図10のストラットアッセンブリ組立装置の第2ステージ方向の正面図である。
【図13】従来装置の説明図である。
【符号の説明】
【0084】
2 下側基部
4 ショックアブソーバ
6 可動本体
7 可動台
9、271 ナットランナー
10 ストラットアッセンブリ受台
11 ストラット取り付け台
20 ストラットアッセンブリ組立手段
211 ターンテーブル
212、212′ ショックアブソーバ挟持手段
26 ショックアブソーバ挟持手段
30、230 ロアーシート支持手段
70 ロアーシート受け部材
74 ロアーシート受け具
81 ずれ規制手段
91 左右バネ係止バー
cn 当接部
g1 ばね圧縮工程
g2 引抜き及びアッパーシート組付工程
g3 締結工程
g4 圧縮戻し工程
A フロア面
BM、BM’ ばね圧縮手段
D 切換え方向
La 挟持中心線
M1、M2 ストラットアッセンブリ組立装置
S、S1、S1’ ストラットアッセンブリ
S4 ロアーシート
S6 アッパーシート
S7、N ナット
S8 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに固定される下側基部より上方に延びる縦向き支持台の側壁にストラットアッセンブリのショックアブソーバを着脱可能に挟持するショックアブソーバ挟持手段を有したストラットアッセンブリ受台と、
前記ストラットアッセンブリ受台に対設されると共に前記ショックアブソーバ挟持手段の挟持中心線に沿って支持されたショックアブソーバにコイルスプリングを仮組した上で圧縮処理し、次いでストラットアッセンブリのアッパーシートを組み付けた上でナット締結処理を行なうストラットアッセンブリ組立手段と、
上記ストラットアッセンブリ受台に支持され前記ストラットアッセンブリのロアーシートの前記挟持中心線と直交する方向のずれを規制可能なロアーシート支持手段と、を具備し、
上記ロアーシート支持手段は、前記挟持中心線と直交する切換え方向に移動可能に支持されると共に前記ロアーシートの周縁部が当接する複数の当接部を前記切換え方向に沿って列設したロアーシート受け部材と、前記ロアーシート受け部材の切換え方向のずれを阻止可能なずれ規制手段と、を有したことを特徴とするストラットアッセンブリ組立装置。
【請求項2】
請求項1に記載のストラットアッセンブリ組立装置において、
前記ずれ規制手段はロアーシート受け部材の側壁に形成されたラックと同ラックに離脱可能に係合することでロアーシート受け部材の前記切換え方向のずれを阻止可能なラチェット爪とからなるラチェット機構部として形成されたことを特徴とするストラットアッセンブリ組立装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のストラットアッセンブリ組立装置において、
前記ロアーシート受け部材の上向き面には前記複数の当接部を前記切換え方向に沿って階段状に列設したことを特徴とするストラットアッセンブリ組立装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のストラットアッセンブリ組立装置において、
前記ロアーシート受け部材には同ロアーシート受け部材の複数の当接部の一つが前記ロアーシートの周縁部と当接するよう前記切換え方向に駆動力を加えるリンクと、同リンクに駆動力を伝達する切換え駆動手段と、が連結されたことを特徴とするストラットアッセンブリ組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−142919(P2010−142919A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325442(P2008−325442)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】