説明

ストリップのデスケールをするための方法及び装置

本発明は、ストリップにプラズマデスケールを受けさせる少なくとも1つのプラズマデスケール装置(2,3)を通してストリップ(1)を移送方向(R)に案内する、ストリップ(1)の、特に標準鋼から成る熱間圧延ストリップ又はオーステナイト系又はフェライト系ステンレス鋼から成る熱間又は冷間圧延ストリップのデスケールをするための方法及び装置に関して、このようなストリップの製造を改善するために、冷却装置(4,5)の後でストリップ(1)が一定の温度を備えるように、ストリップ(1)が少なくとも1つのプラズマデスケール装置(2,3)内でのプラズマデスケールに続いて冷却装置(4,5)内で調整冷却を受けることを特徴とする。更に、本発明は、方法に関して、プラズマデスケールによる加熱を利用してストリップがプラズマデスケールの後に被覆金属によるコーティングを受けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップにプラズマデスケールを受けさせる少なくとも1つのプラズマデスケール装置を通してストリップを移送方向に案内する、ストリップの、特に標準鋼から成る熱間圧延ストリップ又はオーステナイト系又はフェライト系ステンレス鋼から成る熱間又は冷間圧延ストリップのデスケールをするための方法に関する。更に本発明は、ストリップのデスケールをするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属コーティングのための例えば冷間圧延による次処理又は最終製品への直接処理のため、スチールストリップはスケールのない表面を有していなければならない。従って、例えば熱間圧延時及び後続の冷却中に生じたスケールは徹底的に除去しなければならない。これは、公知の方法では酸洗プロセスによって行なわれ、種々の酸化鉄(FeO,Fe,Fe)又はステンレス鋼の場合はクロムリッチの酸化鉄から成るスケールが、スチール品質に応じて種々の酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸、又は混合酸)により高温時に化学反応により酸により溶かされる。標準鋼の場合、スケールを破砕し、これによりスケール層内への酸の迅速な浸入を可能にするために、酸洗の前にもう1つの引張り曲げ矯正による付加的な機械処理が必要である。酸洗することが本質的に困難なオーステナイト系又はフェライト系のステンレス鋼の場合は、できるだけ良好に酸洗可能なストリップ表面をえるために、酸洗プロセス時にストリップの焼鈍及び機械的なデスケールは提案されている。酸化を防止するために、酸洗時にスチールストリップは洗浄、乾燥、及び必要に応じてオイルの塗布をしなければならない。
【0003】
スチールストリップの酸洗は連続ライン内で実施されるが、この連続ラインのプロセス部分は、ストリップ速度に依存して非常に大きな長さを有していることがある。従って、このような設備は非常に高い投資を必要とする。加えて、酸洗プロセスは、非常に大量のエネルギーと、汚水の処理と標準鋼の場合に大抵は使用される塩酸の再生に高い費用を必要とする。
【0004】
従って、従来技術では、酸を使用しない金属ストランドからのデスケールを達成する種々の様式の試みがなされた。これまでに知られている開発は、ここでは大抵はスケール機械的な除去(例えばイシクリーン法、APO法)に基づく。但し、このような方法は、その経済性及びデスケールされた表面の品質に関して、幅広のスチールストリップの工業的なデスケールにとって適していない。従って、このようなストリップのデスケール時には依然として酸の使用に基づく。
【0005】
従って、経済性及び環境汚染に関する欠点は、これまでは受け入れなければならなかった。
【0006】
金属ストランドのデスケールをするための新しい試みは、プラスマテクノロジーに基づく。異なった形状の金属ストランドの、例えばストリップ又は線材のデスケールをするための冒頭で述べたよう式のこのような方法及び装置は、従来技術では既に種々の形成が公知である。模範的に特許文献1〜3が挙げられる。そこに開示されたプラズマデスケールテクノロジーの場合は、デスケールすべき物が、真空チャンバ内に存在する特殊な電極間を通過する。デスケールは、スチールストリップと電極間に発生したプラズマによって行なわれ、残滓のない金属光沢のある表面が発生させられる。従って、プラズマテクノロジーは、経済的で品質的に申し分のない、そして環境汚染のないスチール表面のデスケール及びクリーニングの可能性を示す。これは、標準鋼やオーステナイト系及びフェライト系のステンレス鋼に使用可能である。特殊な前処理は必要ない。
【0007】
プラズマデスケールの場合、ストリップは、即ち真空チャンバを通る、ストリップの上下に配設された電極間を通過する。プラズマは、ストリップの両側の電極とストリップ表面間に存在する。この場合、スケールに作用するプラズマによってストリップ表面上の酸化物の除去が得られるが、これはストリップの温度上昇と結び付いており、このことは、非常に欠点となることがある。温度上昇は、デスケールされたストリップが真空から出た時に空気に接してストリップ表面に酸化膜を生じさせてしまうが、この酸化膜は、熱間ストリップの冷間圧延又は直接処理のような次の処理ステップにとって許容できない。
【0008】
この状況を改善するためにプラズマデスケールに次いでストリップの冷却を行なってもよいということは、種々の解決策から、例えば特許文献4〜9から知られている。しかしながら、この文献から分かったコンセプトは冷却のための措置に狙いを合わせてあるが、これらの措置は、一方で著しい欠点と結び付いているか効果的でない。こうして、例えば冷却のために吹き付けられる媒体が使用され、これが、引き続きストリップの乾燥を実施することを必要にする。冷却ガスでストリップの処理をする場合、冷却速度が非常に低く、加えて、この解決策は真空内で可能でない。その他に提案された解決策は、特有のストリップの温度上昇を得る可能性をほとんど提供しない。
【0009】
大抵の適用に対しては、ストリップが空気と接触するまでデスケール中もしくはデスケール後にストリップのコントロール式の冷却が必要である。このような適切な冷却は、従来技術から公知である解決策では可能でない。
【特許文献1】国際公開第2004/044257号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2000/056949号パンフレット
【特許文献3】露国特許第2 145 912号明細書
【特許文献4】特開平07−132316号公報
【特許文献5】特開平06−279842号公報
【特許文献6】特開平06−248355号公報
【特許文献7】特開平03−120346号公報
【特許文献8】特開2001−140051号公報
【特許文献9】特開平05−105941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の根本にある課題は、特に酸化プロセスを防止し、ストリップの組織構造にマイナスの影響を与えないことにより、ストリップの製造時の品質向上の達成を可能にする、ストリップのデスケールをするための方法とこれに付属する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明によるこの課題の解決策は、本発明によれば、冷却装置の後でストリップが一定の温度を備えるように、ストリップが少なくとも1つのプラズマデスケール装置内でのプラズマデスケールに続いて冷却装置内で調整冷却を受けることを特徴とする。
【0012】
完全なデスケールを達成するために、ストリップが、それぞれ調整冷却を接続させた少なくとも2度のプラズマデスケールを受けることは好ましい。
【0013】
デスケールされたストリップの雰囲気での酸化は、ストリップが100℃以下の温度で移送方向で最後の冷却装置から出るように、移送方向で最後の調整冷却が行なわれることによって防止される。
【0014】
他方で、ストリップの組織構造は、プラズマデスケール装置の後でストリップが200℃以下の温度を備えるように、それぞれのプラズマデスケール装置でのプラズマデスケールが行なわれることによって不利な影響を受けない。
【0015】
ストリップが予設定可能なかかり角に渡って冷却ロールと接触させられることによって、少なくとも1つの冷却装置内でのストリップの冷却が行なわれることは、ストリップの冷却の特に有利な形態であることが分かった。冷却されたロールは、ストリップと接触した際に熱をストリップから導き出す。熱伝達を最適化するために、ストリップが、少なくとも冷却ロールと接触する領域内で張力下で保持されることは、有効であることが分かった。
【0016】
ストリップが、プラズマデスケールに続くそれぞれの冷却時に少なくとも本質的に同じ温度に冷却されることは有利である。更に、これに対して選択的又はこれに加えて、ストリップが、プラズマデスケールに続くそれぞれの冷却時に少なくとも本質的に同じ温度差で冷却される場合は有利である。
【0017】
一方又はそれぞれの冷却装置内でのストリップの冷却は、好ましくは環境圧と比べて低い圧力の下で、特に真空下で行なわれる。その間、移送方向で最後の冷却装置内でのストリップの冷却は、不活性ガスの下で、特に窒素の下で行なうことができる。
【0018】
ストリップのデスケールするための装置は、少なくとも1つのプラズマデスケール装置を備え、このプラズマデスケール装置を通してストリップが移送方向に案内される。本発明によれば、装置は、一定の温度にストリップを調整冷却するために適している、移送方向でプラズマデスケール装置の後に配設された少なくとも1つの冷却装置が設けられていることを特徴とする。
【0019】
一方又はそれぞれの冷却装置のストリップの移送方向で終端部又はその後に温度センサが配設されており、この温度センサが、冷却装置によって発生される冷却能力及び/又はストリップの移送速度に関して冷却装置に影響を与えるために適している調整装置と接続していることは好ましい。
【0020】
それぞれ1つの冷却装置を接続させた少なくとも2つのプラズマデスケール装置が設けられていることは好ましい。
【0021】
それぞれの冷却装置が少なくとも3つの冷却ロールを備え、これら冷却ロールが、ストリップとロール表面間のかかり角が変更可能であるように配設され、互いに相対的に可動であることは特に有利である。かかり角の変更を介して、冷却装置がストリップに加える冷却能力に、即ちどのくらい強く冷却装置がストリップを冷却するかに影響を与えることができる。従って、少なくとも1つの冷却ロールを他の冷却ロールに対して相対的に冷却ロールの回転軸に対して垂直に移動させることができる移動手段が設けられていることは好ましい。
【0022】
冷却ロールは、好ましくは液体冷却、特に水冷である。
【0023】
更に、少なくとも冷却装置の領域内でストリップに張力を発生させるための手段を設けることができる。これにより、冷却ロールにストリップが良好に当接することが保証される。
【0024】
設備コンセプトによれば、少なくとも2つのプラズマデスケール装置と後続の少なくとも2つの冷却装置が一直線に配設されている。これに対して省スペースである選択肢は、ストリップがその内部で垂直に上(又は下)に向かって案内されるように、プラズマデスケール装置が配設されており、ストリップがその内部で垂直に下(又は上)に向かって案内されるように、別のプラズマデスケール装置が配設されており、両プラズマデスケール装置間に冷却装置が配設されている。
【0025】
冷却ロールの良好な冷却作用は、冷却ロールが、その外周面に耐磨耗性で高熱伝導性の材料、特に硬質クロム又はセラミックのコーティングを備える場合に得ることができる。
【0026】
前記のテクノロジーは、酸洗と比べて環境保護、エネルギー消費及び品質に関して大きな利点を提供する。
【0027】
更に、相応の設備のための投資コストは、公知のデスケール及び/又はクリーニング設備におけるよりも本質的に少ない。
【0028】
デスケールすべきストリップがデスケールに続き非常に良好で酸化されてない表面を備え、これにより高い品質で後続の作業を実施することができることが特に有利である。
【0029】
従って、本発明は、ストリップがデスケール中もしくはデスケール後にコントロールされつつ、空気と接触してストリップ表面に酸化もしくはテンパーカラーを生じさせてしまう温度以下の温度に冷却されることを保証する。
【0030】
ストリップにプラズマデスケールを受けさせる少なくとも1つのプラズマデスケール装置を通してストリップを移送方向に案内する、ストリップの、特に標準鋼から成る熱間圧延ストリップのデスケールをするための方法においては、プラズマデスケールの後に、直接的又は間接的に被覆金属によるストリップのコーティングが、特にストリップのドブ漬け亜鉛メッキが接続されていてもよい。
【0031】
この場合、プラズマデスケールによってストリップにもたらされたエネルギーは、コーティングの前のストリップの予熱のために利用することができることが有利である。
【0032】
この場合、ストリップが、連結された設備内で先ずプラズマデスケールをされ、次いでコーティング、特にドブ漬け亜鉛メッキをされることは好ましい。この場合、プラズマデスケールによって予熱されたストリップが、空気を侵入させない状態でプラズマデスケールからコーティングに必要な連続炉の不活性ガス雰囲気内に案内され、ここで、ストリップがコーティングに必要な温度に更に加熱されることは好ましい。この場合、ストリップの加熱は、プラズマデスケール後に「ヒートツーコート」法により誘導的に行なうことができる。この場合、ストリップ、特にドブ漬け亜鉛メッキすべきストリップは、コーティング槽内に入る前に、非常に迅速に減圧した雰囲気下で440℃〜520℃に、特に約460℃に加熱することができる。
【0033】
プラズマデスケールの後に接続されたコーティングは、コーティング容器での転向ローラによる従来の方法又はコーティング容器内のコーティング金属が電磁プラグによって拘束される垂直法(Continuous Vertical Galvanizing Line-CVGL-法)により行なうことができる。この場合、ストリップは、非常に短い時間だけコーティング金属に浸漬される。
【0034】
プラズマデスケール設備は、熱間圧延されたスチールストリップのドブ漬け亜鉛メッキ用の連続炉と連結することができ、この場合、プラズマデスケール設備の出側に真空ゲートが、連続炉の入側に通常の構造の炉ゲートが存在してもよく、これらは、互いにガス密に接続されている。
【0035】
従って、最後に述べたプラズマデスケールとコーティングの連結は、良好に付着する亜鉛層を維持するために、熱間圧延されたスチールストリップがドブ漬け亜鉛メッキの前に完全に酸化から解放されていなければならないので、特に有利である。
【0036】
加えて、ストリップは、加熱速度に依存して約460℃〜650℃の温度に加熱されなければならない。この場合、プラズマデスケール時に生じるストリップの加熱は、連続炉に入る前のストリップの予熱として利用することができ、これにより、炉の省エネルギー及び短縮が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明を図示した図面を基にして、本発明を詳細に説明する。
【0038】
図1には、スチールストリップ1のデスケールをするための装置を見ることができるが、この設備は水平な構造で構成されている。巻取り機19から来るスチールストリップ1は、S字ローラスタンド21及び22が付属する引張り曲げ矯正機20にて矯正されるので、ストリップが高い張力下で設備のプロセス部分に入るまでは、ストリップ1は最大限可能な平面度を有している。
【0039】
複数の真空ゲート23を通って、ストリップ1は第1のプラズマデスケール装置2に入り、このプラズマデスケール装置内で、プラズマデスケールに必要な真空が公知の真空ポンプによって発生及び維持される。プラズマデスケール装置2内には、ストリップ1の両側に配設された電極24が存在し、これら電極がデスケールに必要なプラズマを発生させる。
【0040】
プラズマにより両側のストリップ表面が加熱され、これにより、プラズマデスケール装置2の終端部で最大200℃の温度にストリップ横断面全体を加熱することができる。全横断面に渡るストリップの加熱の程度は、プラズマのエネルギーが同じ場合は主にストリップ1の移送速度vとストリップ厚に依存するが、ストリップ速度vの増加と共にストリップの加熱が低くなる。
【0041】
プラズマデスケール装置2から、未だ不完全にデスケールされたストリップ1が冷却ロール6,7,8を備えている冷却装置4内に入るが、この冷却装置は、ガス密にプラズマデスケール装置2と接続されており、内部をプラズマデスケール装置2内と同じ真空が支配する。
【0042】
ストリップ1は冷却ロール6,7,8の周りを通り、これら冷却ロールの周囲は内側から水で冷却され、この水が冷却回路を介して熱を排出する。高いストリップ張力は、できるだけ高い熱伝導を保証するために、ストリップ1が−冷却ロール6,7,8に巻き付いて−良好にこれら冷却ロールに当接することを生じさせる。
【0043】
この場合、冷却ロール6,7,8には、ストリップ1が交互に上及び下から巻き付く。3つから6つの冷却ロールを設ける場合が好ましい。冷却ロールを冷却するための冷却水は、回転実施部を介して連続的に供給され、再び排出される。
【0044】
図1に図示した配設の場合、冷却装置4内には、個々に駆動される3つの冷却ロール6,7,8が存在する。設備の能力及び最大ストリップ速度vに応じて多くの冷却ロールも可能であり、有効である。冷却装置4の入側及び出側には、ストリップ1の温度を連続的に測定するための温度センサ12が存在する。冷却ロール6,7,8の1つ(又は複数)を例えば垂直方向に調整することにより(図3及び図4参照)、かかり角α(図3及び図4参照)を、これによりストリップ1に作用する冷却装置4の冷却能力を調整することができる。冷却装置4の周端部で最大ストリップ温度は約100℃である。
【0045】
冷却装置4から、冷却されたストリップ1は第2のプラズマデスケール装置3に入るが、このプラズマデスケール装置は、ガス密に冷却装置4と接続されており、内部では、真空ポンプによって第1のプラズマデスケール装置2内と同じ真空が発生される。第1のプラズマデスケール装置と同様に構成されている第2のプラズマデスケール装置3内では、第1のプラズマデスケール装置2内で未だ不完全にデスケールされたストリップ1の完全なデスケールが行なわれる。この場合、ストリップ1は、既にプラズマデスケール装置2で説明したものと同様に、ストリップ速度vとストリップ横断面に依存してプラズマデスケール装置3に入る温度以上の約100℃〜200℃の最終温度に加熱される。そこから、ストリップ1はガス密のゲート25を通って不活性ガス(例えば窒素)で満たされた第2の冷却装置5に入るが、この冷却装置は、第1の冷却装置4のように冷却ロール9,10,11を備えている。
【0046】
個々のプラズマデスケール装置2及び3もしくはそれ以外の装置は、全て同じ長さに設定されていると好ましい。
【0047】
冷却ロール6,7,8,9,10,11の数は、設備の能力に従う。冷却装置5では、ストリップ1が冷却ロール9,10,11により100℃以上でない最終温度に冷却される。第1の冷却装置4におけるように、冷却装置5の入側及び出側には更にストリップ温度を測定するための温度センサ13が存在する。冷却装置5の終端部にはガス密の別のゲート26が存在し、このゲートが冷却装置5への空気の流入を防止する。この措置により、ストリップ1が最大100℃の温度でラインのプロセス部分から出ること、ストリップの光沢のある表面が空気の酸素により酸化できないことが保証される。
【0048】
設備のプロセス部分の後には、2つ又は3つのローラから成る牽引ローラスタンド18が存在し、この牽引ローラスタンドは、必要なストリップ張力を調達するか、S字ローラスタンド22を一体化している。符号17及び18で指示した要素は、即ちストリップ1に張力を発生させるための手段である。ストリップ1に発生した張力は、ストリップ1の冷却ロール6,7,8,9,10,11への良好な当接を保証するために使用される。その後、ストリップ1はストリップ貯蔵部及び仕上げシャーのような必要な別の装置を介して(図示したような)巻上げ機27又は連結された別の装置、例えばタンデム圧延機に進む。
【0049】
計算された必要冷却能力に依存して、提案したプラズマデスケール設備は冷却装置4,5を接続させた1つ又は複数のプラズマデスケール装置2,3を備えることができる。図1による実施例は、このような2つのユニットに適合させてある。冷却装置4だけが使用される場合、この冷却装置は、ここで説明したゲート25及び26が付属する第2の冷却装置5と同様に形成される。
【0050】
図2は、プラズマデスケール装置2及び3が垂直に配設されている、スチールストリップ1のデスケールをするための設備の選択的な形成を示す。この設備の全ての機能は、図1で説明した設備のそれと同一である。垂直な配設は、一定の条件下でその短い全長のために水平な配設よりも有利であるとすることができる。
【0051】
図3及び4には、どのようにして、両冷却ロール6と7間に存在する冷却ロール7を垂直に移動させる(2重矢印)ことによりロール6,7,8の周りのストリップ1のかかり角α(ロール7の周りのかかり角に対して記入されている)を変更することができるかを見ることができるが、これにより、ストリップ1から冷却ロール6,7,8に伝達される熱流も変化する。中央の冷却ロール7の垂直移動は、概略的に図示され、ここでは油圧式のピストンシリンダシステムとして形成されている移動手段16によって行われる。
【0052】
温度センサ12,13によって冷却装置4,5内又はその終端部でのストリップ温度を測定することにより、図1に概略的にのみ図示した調整装置14及び15によって冷却装置4,5内の冷却能力への影響を把握することができるので、ストリップ1の所望の流出温度を得ることができる。測定した温度が非常に高い場合は、移動手段16を制御することによって大きなかかり角αに調整すればよいので、ストリップ1は良好に冷却される。基本的に、冷却能力を増加もしくは低減するために、ストリップ1の移送速度vをこの設備によって低下もしくは上昇させることができる。但し、ここではその際に両調整装置14と15間の同調が必要である。
【0053】
図5には、直接でスケールに接続させてストリップにコーティング金属を備えさせるために、プラズマデスケールによってストリップに収容された熱を利用する解決策が図示されている。図5は、熱間圧延されたスチールストリップ用のプラズマデスケールラインとドブ漬け亜鉛メッキラインを連結した処理部分を示す。ストリップ1は、引張り曲げ矯正機20(引張り矯正ユニット)での引張り矯正後に真空ゲート23を通ってプラズマデスケール装置2に入り、ここで、ストリップがデスケールされ、この場合−ストリップ速度及びストリップ厚に依存して−約200℃〜300℃に加熱される。
【0054】
引き続き、ストリップ1は真空出側ゲート25とこれに接続された炉入側ゲート29を通って連続炉28に入る。炉28の入側には、プラズマデスケール装置2内で必要な高さのストリップ張力を発生させる牽引ローラ対30(ホットブライドル)が存在する。
【0055】
牽引ローラ対30の後で、ストリップ温度が温度センサ12により測定され、この温度センサを介して連続炉28内に必要な更なるストリップの加熱が調整される。センサ12の箇所から、ストリップ1は誘導加熱された連続炉28を通り、この連続炉内で、ストリップが非常に迅速に「ヒートツーコート」法により約460℃に加熱される。引き続き、ストリップは吹管31を介してコーティング容器32に入り、ここでストリップはドブ漬け亜鉛メッキされる。スクレーパノズル34により層厚さが調整される。続く空冷区間35でストリップ1が冷却され、その後必要な別の処理ステップに、例えばスキンパス、引張り矯正、及びクロムメッキに供給される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形によるストリップのデスケールをするための装置を概略的に側面図で示す。
【図2】第2の実施形の装置の図1と同様の図を示す。
【図3】冷却能力が低い場合の冷却装置の3つの冷却ロールを概略的に示す。
【図4】冷却装置の冷却能力が高い場合の図3と同様の図を示す。
【図5】ストリップのデスケールと後続のドブ漬け亜鉛メッキをするための装置を概略的に側面図で示す。
【符号の説明】
【0057】
1 ストリップ
2 プラズマデスケール装置
3 プラズマデスケール装置
4 冷却装置
5 冷却装置
6 冷却ロール
7 冷却ロール
8 冷却ロール
9 冷却ロール
10 冷却ロール
11 冷却ロール
12 温度センサ
13 温度センサ
14 調整装置
15 調整装置
16 移動手段
17 張力を発生させるための手段
18 張力を発生させるための手段
19 巻取り機
20 引張り曲げ矯正機
21 S字ローラスタンド
22 S字ローラスタンド
23 真空ゲート
24 電極
25 ゲート
26 ゲート
27 巻上げ機
28 連続炉
29 炉入側ゲート
30 牽引ローラ対
31 吹管
32 コーティング容器
33 転向ローラ
34 スクレーパノズル
35 空冷区間
R 移送方向
α かかり角
v 移送速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップにプラズマデスケールを受けさせる少なくとも1つのプラズマデスケール装置(2,3)を通してストリップ(1)を移送方向(R)に案内する、ストリップ(1)の、特に標準鋼から成る熱間圧延ストリップ又はオーステナイト系又はフェライト系ステンレス鋼から成る熱間又は冷間圧延ストリップのデスケールをするための方法において、
冷却装置(4,5)の後でストリップ(1)が一定の温度を備えるように、ストリップ(1)が少なくとも1つのプラズマデスケール装置(2,3)内でのプラズマデスケールに続いて冷却装置(4,5)内で調整冷却を受けることを特徴とする方法。
【請求項2】
ストリップ(1)が、それぞれ調整冷却を接続させた少なくとも2度のプラズマデスケールを受けることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ストリップ(1)が100℃以下の温度で移送方向(R)で最後の冷却装置(5)から出るように、移送方向(R)で最後の調整冷却が行なわれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プラズマデスケール装置(2,3)の後でストリップ(1)が200℃以下の温度を備えるように、それぞれのプラズマデスケール装置(2,3)でのプラズマデスケールが行なわれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ストリップ(1)が予設定可能なかかり角(α)に渡って冷却ロール(6,7,8,9,10,11)と接触させられることによって、少なくとも1つの冷却装置(4,5)内でのストリップ(1)の冷却が行なわれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ストリップ(1)が、少なくとも冷却ロール(6,7,8,9,10,11)と接触する領域内で張力下で保持されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ストリップ(1)が、プラズマデスケールに続くそれぞれの冷却時に少なくとも本質的に同じ温度に冷却されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ストリップ(1)が、プラズマデスケールに続くそれぞれの冷却時に少なくとも本質的に同じ温度差で冷却されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
一方又はそれぞれの冷却装置(4,5)内でのストリップ(1)の冷却が、環境圧と比べて低い圧力の下で、特に真空下で行なわれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
移送方向(R)で最後の冷却装置(5)内でのストリップ(1)の冷却が、不活性ガスの下で、特に窒素の下で行なわれることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
特に請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法を実施するための、ストリップ(1)を移送方向(R)に案内する少なくとも1つのプラズマデスケール装置(2,3)を備える、ストリップ(1)の、特に標準鋼から成る熱間圧延ストリップ又はオーステナイト系又はフェライト系ステンレス鋼から成る熱間又は冷間圧延ストリップのデスケールをするための装置において、
一定の温度にストリップ(1)を調整冷却するために適している、移送方向(R)でプラズマデスケール装置(2,3)の後に配設された少なくとも1つの冷却装置(4,5)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項12】
一方又はそれぞれの冷却装置(4,5)の内部又はストリップ(1)の移送方向(R)で終端部又はその後に少なくとも1つの温度センサ(12,13)が配設されており、この温度センサが、冷却装置(4,5)によって発生される冷却能力及び/又はストリップ(1)の移送速度(v)に関して冷却装置(4,5)に影響を与えるために適している調整装置(14,15)と接続していることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
それぞれ1つの冷却装置(4,5)を接続させた少なくとも2つのプラズマデスケール装置(2,3)が設けられていることを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
それぞれの又は少なくとも1つの冷却装置(4,5)が少なくとも3つの冷却ロール(6,7,8,9,10,11)を備え、これら冷却ロールが、ストリップ(1)とロール表面間のかかり角(α)が変更可能であるように配設され、互いに相対的に可動であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つの冷却ロール(6,7,8,9,10,11)を他の冷却ロール(6,7,8,9,10,11)に対して相対的に冷却ロール(6,7,8,9,10,11)の回転軸に対して垂直に移動させることができる移動手段(16)が設けられていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
冷却ロール(6,7,8,9,10,11)が、液体冷却、特に水冷であることを特徴とする請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも冷却装置(4,5)の領域内でストリップ(1)に張力を発生させるための手段(17,18)が設けられていることを特徴とする請求項11〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
少なくとも2つのプラズマデスケール装置(2,3)と後続の少なくとも2つの冷却装置(4,5)が一直線に配設されていることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
ストリップ(1)がその内部で垂直に上又は下に向かって案内されるように、プラズマデスケール装置(2)が配設されており、ストリップ(1)がその内部で垂直に下又は上に向かって案内されるように、プラズマデスケール装置(3)が配設されており、両プラズマデスケール装置(2,3)間に冷却装置(4)が配設されていることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つの冷却装置(4,5)の冷却ロール(6,7,8,9,10,11)が、その外周面に耐磨耗性で高熱伝導性の材料、特に硬質クロム又はセラミックのコーティングを備えることを特徴とする請求項14〜19のいずれか1つに記載の装置。
【請求項21】
ストリップにプラズマデスケールを受けさせる少なくとも1つのプラズマデスケール装置(2,3)を通してストリップ(1)を移送方向(R)に案内する、ストリップ(1)の、特に標準鋼から成る熱間圧延ストリップのデスケールをするための方法において、
プラズマデスケールの後に、直接的又は間接的に被覆金属によるストリップ(1)のコーティングが、特にストリップ(1)のドブ漬け亜鉛メッキが接続されていることを特徴とする方法。
【請求項22】
ストリップ(1)が、連結された設備内で先ずプラズマデスケールをされ、次いでコーティング、特にドブ漬け亜鉛メッキをされることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
プラズマデスケールによって予熱されたストリップ(1)が、空気を侵入させない状態でプラズマデスケールからコーティングに必要な連続炉(28)の不活性ガス雰囲気内に案内されることを特徴とする請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
ストリップ(1)が連続炉(28)内でコーティングに必要な温度に更に加熱されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ストリップ(1)が連続炉(28)内で誘導加熱されることを特徴とする請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
ストリップ(1)が、コーティング槽(32)内に入る前に連続炉(28)内で440℃〜520℃に、特に約460℃に加熱されることを特徴とする請求項23〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
ストリップ(1)が、被覆金属によるコーティング時にコーティング容器(32)内に案内され、そこで転向ローラ(33)によって転向され、垂直に上に向かってコーティング容器(32)から導き出されることを特徴とする請求項21〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
コーティング容器(32)内のコーティング金属が電磁プラグによって拘束され、ストリップが転向されることなく垂直にコーティング容器(32)を通過する垂直法により、ストリップ(1)が被覆材料によってコーティングされることを特徴とする請求項21〜26のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−520442(P2008−520442A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542006(P2007−542006)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002429
【国際公開番号】WO2006/097311
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】