説明

ストレージシステム、及びパス設定方法

【課題】オペレータの手作業を軽減し且つストレージ装置に割り当てられる識別情報に起因することのないパス設定を可能とするストレージシステム、及びパス設定方法を提案する。
【解決手段】リモートコピー元ストレージ装置は、リモートコピー先となり得るストレージ装置に、ポート情報の問い合せを送信する手段と、返却された第1のポート情報に基づいて、コピー先ポート情報を決定し、決定したコピー先ポート情報に基づいて、リモートコピーのパスを設定する手段と、決定したコピー先ポート情報に対応するストレージ装置に、第2のポート情報を送信する手段と、を有し、リモートコピー先となり得るストレージ装置は、問い合わせしたストレージ装置に第1のポート情報を返却する手段と、受信した第2のポート情報に基づいて、リモートコピーのパスを設定する手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージシステム、及びパス設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレージ装置間により行われるコピー方式の1つに、リモートコピー方式がある。例えば、特許文献1のリモートコピーシステムに開示されるように、リモートコピー方式では、データをコピーするリモートコピー先のストレージ装置にコピーデータを作成し、上位装置との接続をコピー完了時にコピー元からコピー先のストレージ装置に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−151601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のストレージ装置を用いてリモートコピー環境を構築する場合、パス設定時に、各拠点に配置される各オペレータは、ストレージ装置(又はストレージ装置のポート)に割り当てられている、例えばWorld Wide Name(WWN)や動的ネイティブ・アドレス(ポート・アドレス,以下、N_port IDという。)等の識別情報を用いて、他のストレージ装置が有するパス設定情報の取得や、取得したパス設定情報の設定を行わなければならず、複数のオペレータによる手作業が生じていた。
【0005】
また、ストレージ装置間において、パス設定情報の設定が完了したパスに、例えば、ファイバチャネル・スイッチ等の中継装置が新たに導入され又は交換された場合、オペレータが既に設定済のパス設定情報を変更する必要も生じる。
【0006】
特に、各ストレージ装置にN_port IDが割り当てられていた場合、ストレージ装置間に新しいファイバチャネル・スイッチが導入されると、そのスイッチに接続したストレージ装置には、新たなN_port IDが割当てられてしまい、ストレージ装置に割り当てられる識別情報が動的に変化してしまう。リモートコピーは、ストレージ装置を管理する上で必須機能でありながらも、このように識別情報が動的に割り当てられる場合には、パス管理が一層複雑になる。
【0007】
そこで、本発明は、複数のストレージ装置を用いてリモートコピー環境を構築する場合であっても、オペレータの手作業を軽減し且つストレージ装置に割り当てられる識別情報に起因することのないパス設定を可能とするストレージシステム、及びパス設定方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明は、それぞれリモートコピー機能を有する少なくとも2つのストレージ装置を備えるストレージシステムであって、各ストレージ装置は、コピー元として指定された場合に、コピー先となり得るストレージ装置にポート情報の問い合わせを送信する手段と、他のストレージ装置より問い合わせを受信した場合に、リモートコピーに用いることができる自装置のポートの情報を取得し、問い合わせをしたストレージ装置に第1のポート情報として返信する手段と、他のストレージ装置より第1のポート情報を受信した場合に、第1のポート情報に基づいてコピー先ポート情報を決定し、決定したコピー先ポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定する手段と、リモートコピーに用いるポートの情報を、決定したコピー先ポート情報に対応するストレージ装置に第2のポート情報として送信する手段と、他のストレージ装置より第2のポート情報を受信した場合に、第2のポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定する手段と、を有する。
【0009】
また、本発明はそれぞれリモートコピー機能を有する少なくとも2つのストレージ装置を備えるストレージシステムのパス設定方法であって、各ストレージ装置は、コピー先となり得るストレージ装置にポート情報の問い合わせを送信するステップと、他のストレージ装置より問い合わせを受信した場合に、リモートコピーに用いることができる自装置のポートの情報を取得し、問い合わせをしたストレージ装置に第1のポート情報として返信するステップと、他のストレージ装置より第1のポート情報を受信した場合に、第1のポート情報に基づいてコピー先ポート情報を決定し、決定したコピー先ポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定するステップと、リモートコピーに用いるポートの情報を、決定したコピー先ポート情報に対応するストレージ装置に第2のポート情報として送信するステップと、他のストレージ装置より第2のポート情報を受信した場合に、第2のポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のストレージ装置を用いてリモートコピー環境を構築する場合であっても、オペレータの手作業が軽減でき且つストレージ装置に割り当てられる識別情報に起因することないパス設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ストレージシステム1の構成を示すブロック図である。
【図2】ストレージ装置300における要部の構成を示すブロック図である。
【図3】ポート情報管理テーブル341Aを示す表である。
【図4】リモートコピーパス管理テーブル342Aを示す表である。
【図5】ストレージ装置間におけるパス設定方法を示すフローチャートである。
【図6】ストレージ装置間におけるパス再設定方法を示すフローチャートである。
【図7】ストレージ装置間におけるパス設定方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
【0014】
(1−1)ストレージシステムの構成
図1は、本実施形態によるストレージシステム1の構成を示したブロック図である。ストレージシステム100は、リモートコピー元であるローカル側ストレージ装置300Aと、リモートコピー先であるリモート側ストレージ装置300Bとが、装置間インターフェースケーブル600によって通信可能に接続されている。また、各ストレージ装置300A,300Bは、各ストレージ装置300A,300Bを管理する各管理端末100A,100Bに、管理端末インターフェースケーブル400を介して通信可能にそれぞれ接続され、且つ、中央演算装置である各ホスト装置200A,200Bに、ホストインターフェースケーブル500を介して通信可能にそれぞれ接続されている。
【0015】
本実施形態のストレージシステム1では、SAN(Storage Area Network)が構築され、中継装置としてファイバチャネル・スイッチが使用される。なお、以下、ローカル側及びリモート側を特に区別する場合を除いて、各要素の参照符号は、A,Bと明記せずに説明する。
【0016】
ホスト装置200は、CPU(図示せず)、バスに接続されたメモリ(図示せず)、入力部(図示せず)、出力部(図示せず)及び入出力インタフェース(図示せず)など、通常のコンピュータ装置と同様のハードウェアを備えている。ホスト装置200は、物理的には、専用化したシステム、あるいは汎用の情報処理装置のいずれであってもよい。たとえば、一般的な構成の情報処理装置において、後述するパス設定方法やパス再設定方法における各処理を規定したソフトウェアを実行することにより、本実施形態のホスト装置200として動作させることもできる。
【0017】
ストレージ装置300は、マイクロプロセッサ(図示せず)、キャッシュメモリ340、ディスク361との間の入出力を制御するディスク制御部350、入力部(図示せず)、出力部(図示せず)、及び、複数のディスク361を有するディスクエンクロージャ360などのハードウェアを備えている。
【0018】
また、ストレージ装置300は、機能的には、管理端末100との間の入出力を制御する管理端末インタフェース制御部310、ホスト装置200との間の入出力を制御する複数のホストインタフェース制御部320、及びストレージ装置300A,300B間のデータコピーを制御する複数の装置間データコピー制御部330を備えている。
【0019】
管理端末インタフェース制御部310は、ストレージ装置間パス設定用のGUI(Graphical User Interface)プログラムが保存されており、管理端末100に当該プログラムを提供する。
【0020】
複数のホストインタフェース制御部320、及び複数の装置間データコピー制御部330のうち、ホストインタフェース制御部320、及び装置間データコピー制御部330のモジュールをディレクタという。複数のホストインタフェース制御部320、及び複数の装置間データコピー制御部330は、ディレクタ単位で実装されている。
【0021】
図2は、装置間データコピー制御部330、及びキャッシュメモリ340の詳細を示したブロック図である。
【0022】
装置間データコピー制御部330は、ポート情報制御部331、装置間状態監視部332、データコピー制御部333、及び装置間インタフェースポート334を有している。
【0023】
ポート情報制御部331は、キャッシュメモリに保存されている各種テーブル341,342を参照及び更新(書き換え)する。
【0024】
装置間状態監視部332は、SANへのログイン及びログアウトを含めた装置間インタフェースポート334の状態を監視し、装置間インタフェースポート334のログイン時及びログアウト時にはポート情報制御部331に通知する。
【0025】
データコピー制御部333は、リモートコピー時のデータ転送を行う。
【0026】
キャッシュメモリ330には、ポート情報管理テーブル341及びリモートコピーパス管理テーブル342が保存されている。図3にポート情報管理テーブル341の一例を示し、図4にリモートコピーパス管理テーブル342の一例を示す。
【0027】
ポート情報管理テーブル341は、ストレージ装置300のポート情報を管理するテーブルであり、ローカル側ストレージ装置300A、及びリモート側ストレージ装置300Bのそれぞれが有するテーブルである。ポート情報管理テーブル341は、自ストレージ装置が有するローカルなポート識別情報と、ファイバチャネル・スイッチから割り当てられる自ストレージ装置のグローバルなポート識別情報と、を対応させている。
【0028】
図3に示すポート情報管理テーブル341Aは、ローカル側ストレージ装置300Aのポート情報を管理する。図3に示すポート情報管理テーブル341Aは、一の装置間データコピー制御部330Aを特定する「ディレクタ番号」、装置間データコピー制御部330Aごとの装置間インタフェースポート334Aの番号を示す「ポート番号」、及び、ストレージ装置300Aのグローバルなポート識別情報を示す「N_port ID」から構成される。
【0029】
リモートコピーパス管理テーブル342は、ストレージ装置300A,300B間で設定されたパスを管理するテーブルである。リモートコピーパス管理テーブル342は、ストレージ装置300A,300B間で設定されたパスごとに、該パスに用いられる自ストレージ装置が有するローカルなポート識別情報と、ファイバチャネル・スイッチから割り当てられる他ストレージ装置のグローバルなポート識別情報と、を対応させている。
【0030】
図4に示すリモートコピーパス管理テーブル342Aは、ローカル側ストレージ装置300Aが、ローカル側ストレージ装置300A、及びリモート側ストレージ装置300Bの間で設定されたパスを管理するテーブルである。図4に示すリモートコピーパス管理テーブル342Aは、ストレージ装置300A,300B間で設定されたパスを示す「パス番号」、該パスに用いられる装置間データコピー制御部330Aを特定する「ディレクタ番号」、該パスに用いられる装置間インタフェースポート334Aの番号を示す「ポート番号」、及びリモート側ストレージ装置300Bのグローバルなポート識別情報を示す「N_port ID」から構成される。
【0031】
リモート側ストレージ装置300Bにおいても、リモートコピーパス管理テーブルをキャッシュメモリ340Bに保存している。リモートコピーパス管理テーブルは、ストレージ装置300A,300B間で設定されたパスを示す「パス番号」、該パスに用いられる装置間データコピー制御部330Bを特定する「ディレクタ番号」、該パスに用いられる装置間インタフェースポート334Bの番号を示す「ポート番号」、及びローカル側ストレージ装置300Aのグローバルなポート識別情報を示す「N_port ID」から構成される。
【0032】
(1−2)パスの設定処理
このように構成されたストレージシステム1において、ストレージ装置300A,300B間におけるパスを設定する処理を図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0033】
まず、オペレータがローカル側ストレージ装置300Aとリモート側ストレージ装置300Bとの間を、装置間インターフェースケーブル600を用いて物理的な接続を行う(S1)。次にオペレータは、ストレージ装置間パス設定用のGUIを用いて、リモート側ストレージ装置300Bにおける情報取得の指示を管理端末100Aに行い、管理端末100Aは、該情報取得の指示をローカル側ストレージ装置300Aに送信する(S2)。
【0034】
ストレージ装置300Aの管理端末インタフェース制御部310Aは、情報取得の指示を受信すると、該情報取得の指示を装置間データコピー制御部330Aに送信する。装置間データコピー制御部330Aは、該情報取得の指示を受信すると、リモートコピーが可能なリモート側ストレージ装置300Bを特定するために、装置間インタフェースポート334Aに接続されているリモート側の全てのデバイス(ハードウェア)に対してコマンドを発行する(S3)。本実施形態では、装置間データコピー制御部330Aは、Inquiryコマンドを発行する。ここで、Inquiryコマンドとは、デバイスの種類(例えば、ベンダ名や製品名)等、デバイスを特定するための情報を取得するために発行されるコマンドである。
【0035】
装置間データコピー制御部330Aは、装置間インタフェースポート334Aに接続されているリモート側の全てのデバイスから送信された、Inquiryコマンドに対する応答に基づいて、パス設定のために接続可能なリモート側ストレージ装置300Bが存在するか否かを判断する(S4)。
【0036】
装置間データコピー制御部330Aは、装置間インタフェースポート334Aに接続されている全てのデバイスのうち、パス設定のために接続可能なリモート側ストレージ装置300Bが存在しないと判断すると(S4 No)、この処理を終了する。
【0037】
一方、装置間データコピー制御部330Aは、装置間インタフェースポート334Aに接続されている全てのデバイスのうち、パス設定のために接続可能なリモート側ストレージ装置300Bが存在すると判断すると(S4 Yes)、リモート側のポート情報を取得するために、リモート側ストレージ装置300Bに対して、ベンダが有する固有のポート情報取得コマンドを発行する(S5)。
【0038】
リモート側ストレージ装置300Bの装置間データコピー制御部330Bは、ベンダが有する固有のポート情報取得コマンドを受信すると、パス設定のために、リモート側のポート情報である、接続可能な装置間インタフェースポート334Bのポート番号及びディレクトリ番号と、リモート側ストレージ装置300Bが有するポート情報管理テーブル341Bと、をローカル側ストレージ装置300Aに送信する(S6)。
【0039】
装置間データコピー制御部330Aは、受信した接続可能な装置間インタフェースポート334Bのポート番号及びディレクトリ番号と、リモート側ストレージ装置300Bが有するポート情報管理テーブル341Bと、をキャッシュメモリ340Aに保存する。
【0040】
その後、装置間データコピー制御部330Aは、受信した接続可能な装置間インタフェースポート334Bのポート番号及びディレクトリ番号をリモート側レプリケーションポート情報として、管理端末インタフェース制御部310Aに送信する。
【0041】
管理端末インタフェース制御部310Aは、リモート側レプリケーションポート情報を受信すると、該リモート側レプリケーションポート情報を管理端末100Aに送信する。
【0042】
管理端末100Aは、ストレージ装置間パス設定用のGUIを用いて、受信したリモート側レプリケーションポート情報の一覧を表示する(S7)。
【0043】
オペレータは、リモート側レプリケーションポート情報の一覧から、パスを設定するための一のリモート側レプリケーションポート情報を決定する(S8)。管理端末100Aは、決定したリモート側レプリケーションポート情報を、管理端末インタフェース制御部310Aに送信する。
【0044】
管理端末インタフェース制御部310Aは、決定したリモート側レプリケーションポート情報を受信すると、該リモート側レプリケーションポート情報を装置間データコピー制御部330Aに送信する。
【0045】
装置間データコピー制御部330Aは、決定したリモート側レプリケーションポート情報をキャッシュメモリ340Aに保存すると、ローカル側のポート情報である、装置間インタフェースポート334Aのポート番号、及び該ポート番号に対応するディレクトリ番号(以下、ローカル側レプリケーションポート情報という。)と、ローカル側ストレージ装置300Aが有するポート情報管理テーブル341Aと、決定したリモート側ストレージ装置300BのN_port IDと、を、ベンダ固有の設定コマンドとともに、リモート側ストレージ装置300Bに送信する(S9)。
【0046】
リモート側ストレージ装置300Bの装置間データコピー制御部330Bは、ベンダ固有の設定コマンドを受信すると、ローカル側レプリケーションポート情報と、ポート情報管理テーブル341Aと、決定したリモート側ストレージ装置300BのN_port IDと、をキャッシュメモリ340Bに保存する。
【0047】
装置間データコピー制御部330Bのポート情報制御部331Bは、ローカル側レプリケーションポート情報と、ポート情報管理テーブル341Aと、決定したリモート側ストレージ装置300BのN_port IDと、に基づいて、リモートコピーパス管理テーブル342Bを作成又は更新する(S10)。
【0048】
すなわち、ポート情報制御部331Bは、ストレージ装置300A,300B間のパス番号と、リモート側のディレクトリ番号及びリモート側のポート番号と、これに対応するローカル側ストレージ装置300AのN_port IDと、を対応させ、リモートコピーパス管理テーブル342Bを作成又は更新する。装置間データコピー制御部330Bは、ポート情報制御部331Bがリモートコピーパス管理テーブル342Bを正常に作成終了又は更新終了したことを確認すると、正常に終了した報告をローカル側ストレージ装置300Aに送信する(S10)。
【0049】
ローカル側ストレージ装置300Aの装置間データコピー制御部330Aは、正常に終了した報告を受信すると、ポート情報制御部331Aは、既にキャッシュメモリ340Aに保存されている一のリモート側レプリケーションポート情報に基づいて、リモートコピーパス管理テーブル342Aを作成又は更新する(S11)。
【0050】
すなわち、ポート情報制御部331Aは、ストレージ装置300A,300B間のパス番号、ローカル側のディレクトリ番号、ローカル側のポート番号、及びこれに対応するリモート側ストレージ装置300BのN_port IDを対応させ、リモートコピーパス管理テーブル342Aを作成又は更新する。
【0051】
ポート情報制御部331Aが、リモートコピーパス管理テーブル342Aを作成又は更新し終えると、リモートコピーにおけるパスの設定処理は終了する。
【0052】
(1−3)パスの再設定処理
このようにパスが設定されるストレージシステム1において、ストレージ装置300A,300B間にファイバ・チャネル等の中継装置が新たに導入されたことにより、リモート側ストレージ装置300BのN_port IDが変更された場合に、ストレージ装置300A,300B間におけるパスを再設定する処理を図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0053】
リモート側ストレージ装置300Bのポート情報制御部331Bは、装置間状態監視部332Bによって、リモート側ストレージ装置300BのN_port IDが変更されたことを検知すると(S21)、ポート情報制御部331Bは、ポート情報管理テーブル341Bを変更する(S22)。すなわち、ポート情報制御部331Bは、リモート側のディレクトリ番号、リモート側のポート番号、及びこれに対応する新たなリモート側ストレージ装置300BのN_port IDを対応させ、ポート情報管理テーブル341Bを変更する。
【0054】
ローカル側ストレージ装置300Aの装置間データコピー制御部330Aにファイバチャネル・スイッチが接続された後、装置間データコピー制御部330Bは、当該ファイバチャネル・スイッチに再ログインを行う(S23)。装置間データコピー制御部330Bは、再ログイン後に、ポート情報管理テーブル341Bにおける変更前のN_port IDと、変更後のN_port IDとを、ベンダ固有の変更コマンドとともに、ローカル側ストレージ装置300Aに送信する(S23)。
【0055】
装置間データコピー制御部330Aは、ベンダ固有の変更コマンドを受信すると、リモートコピーパス管理テーブル342Aに保存された、対応するN_port IDを変更し、パスの再設定を行う(S24)。装置間データコピー制御部330Aは、パスの再設定を終了すると、正常にパスが再設定された旨をリモート側ストレージ装置300Bに送信し(S24)、パスの再設定処理が終了する。
【0056】
このように、本第1実施形態によれば、自ストレージ装置が有するローカルなポート識別情報と、ファイバチャネル・スイッチから他のストレージ装置に割り当てられた識別情報と、を対応付けたテーブルを、双方のストレージ装置が作成及び更新するので、動的なN_port IDに起因した複雑なパス設定を行う必要がなくなり、容易にパス設定を行うことが可能となる。
【0057】
また、ストレージ装置間に新たなファイバチャネル・スイッチを導入したことにより、一方のストレージ装置に割り当てられた識別情報が変更した場合であっても、他方のストレージ装置に変更報告を行うことにより、他方のストレージ装置は、オペレータの手作業を介することなく、パスの再設定を行うことができる。
【0058】
さらに、双方のストレージ装置がパス設定を行うため、複数の拠点にオペレータを配置することがなくなり、人件費を大幅に削減することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態による、ファイバチャネル・スイッチから各ストレージ装置に動的に割り当てられたポート識別情報N_port IDに代わって、各ストレージ装置に割り当てられた固定的なポート識別情報WWNを有している点、及び、パス設定処理の開始時に、上記第1実施形態によるリモート側ストレージ装置300Bは電源がオンの状態であったことに代わって、リモート側ストレージ装置300Bは電源がオフの状態である点で、上記第1実施形態と異なる。上記第1実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
本第2実施形態によるポート情報管理テーブルは、一の装置間データコピー制御部330を示す「ディレクタ番号」、ストレージ装置300の装置間インタフェースポート334の番号を示す「ポート番号」、及び、ファイバチャネル・スイッチから割り当てられたストレージ装置300の固定的なポート識別情報を示す「WWN」から構成される。
【0061】
本第2実施形態によるリモートコピーパス管理テーブルは、ストレージ装置300A,300B間で設定されたパスを示す「パス番号」、該パスに接続される自ストレージ装置の装置間データコピー制御部330を示す「ディレクタ番号」、該パスに接続される自ストレージ装置の装置間インタフェースポート334の番号を示す「ポート番号」、及びファイバチャネル・スイッチから割り当てられた他ストレージ装置300の固定的なポート識別情報を示す「WWN」から構成される。
【0062】
(2−1)パスの設定処理
このように構成されたストレージシステムにおいて、パス設定処理の開始時に、リモート側ストレージ装置300Bの電源がオフの状態である場合のパス設定処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
まず、オペレータは、ストレージ装置間パス設定用のGUIを用いて、リモートコピーを行いたいリモート側ストレージ装置300BのWWN、ディレクタ番号、及びポート番号を予め入力する(S31)。
【0064】
管理端末100Aは、オペレータが入力したリモート側ストレージ装置300BのWWN、ディレクタ番号、及びポート番号をローカル側ストレージ装置300Aの管理端末インタフェース制御部310Aに送信する。管理端末インタフェース制御部310Aは、受信したリモート側ストレージ装置300BのWWN、ディレクタ番号、及びポート番号をキャッシュメモリ340Aに送信する。キャッシュメモリ340Aは、リモート側ストレージ装置300BのWWN、ディレクタ番号、及びポート番号を一時的に保存する。
【0065】
リモート側ストレージ装置300Bの電源が投入されると、ローカル側ストレージ装置300Aは、リモート側ストレージ装置300Bに接続され、通信可能な状態となる(リンクアップする)(S32)。
【0066】
装置間データコピー制御部330Aは、装置間インタフェースポート334Aにリンクアップしたリモート側ストレージ装置300Bに対してInquiryコマンドを発行する(S33)。
【0067】
装置間データコピー制御部330Aは、Inquiryコマンドに対する応答に基づいて、パス設定のために接続可能なリモート側ストレージ装置300Bが存在するか否かを判断する(S34)。
【0068】
装置間データコピー制御部330Aは、パス設定のために接続可能なリモート側ストレージ装置300Bが存在しないと判断すると(S34 No)、この処理を終了する。
【0069】
一方、装置間データコピー制御部330Aは、パス設定のために接続可能なリモート側ストレージ装置300Bが存在すると判断すると(S34 Yes)、リモート側のポート情報を取得するために、リモート側ストレージ装置300Bに対して、ベンダが有する固有のポート情報取得コマンドを発行する(S35)。
【0070】
リモート側ストレージ装置300Bの装置間データコピー制御部330Bは、ベンダが有する固有のポート情報取得コマンドを受信すると、パス設定のために、接続可能な装置間インタフェースポート334Bのポート番号及びディレクトリ番号と、リモート側ストレージ装置300Bが有するポート情報管理テーブルと、をローカル側ストレージ装置300Aに送信する(S36)。
【0071】
装置間データコピー制御部330Aは、受信したディレクトリ番号、ポート番号、及びこれらの番号に対応するポート情報テーブルのWWNが、オペレータの設定したリモート側ストレージ装置300Bのディレクタ番号、ポート番号及びWWN、と一致するか否かを判断する(S37)。
【0072】
装置間データコピー制御部330Aは、受信したディレクトリ番号、ポート番号、及びこれらの番号に対応するポート情報テーブルのWWNが、オペレータの設定したリモート側ストレージ装置300Bのディレクタ番号、ポート番号及びWWN、と一致しないと判断した場合には(S37 No)、リンクアップしたリモート側ストレージ装置300Bに異常がある旨の報告を管理端末100Aに行い、このパス設定処理を終了させる。
【0073】
一方、装置間データコピー制御部330Aは、受信したディレクトリ番号、ポート番号、及びこれらの番号に対応するポート情報テーブルのWWNが、オペレータの設定したリモート側ストレージ装置300Bのディレクタ番号、ポート番号及びWWN、と一致すると判断した場合には(S37 Yes)、受信したディレクトリ番号、ポート番号、及びこれら番号に対応するポート情報テーブルのWWN、をキャッシュメモリ340Aに保存する。
【0074】
その後、装置間データコピー制御部330Aは、受信したディレクトリ番号及びポート番号をリモート側ポート情報(以下、リモート側レプリケーションポート情報という。)として、管理端末インタフェース制御部310Aに送信する。
【0075】
管理端末インタフェース制御部310Aは、リモート側レプリケーションポート情報を受信すると、該リモート側レプリケーションポート情報を管理端末100Aに送信する。
【0076】
装置間データコピー制御部330Aは、決定したリモート側レプリケーションポート情報をキャッシュメモリ340Aに保存すると、装置間インタフェースポート334Aのポート番号、及び該ポート番号に対応するディレクトリ番号をローカル側レプリケーションポート情報として、該情報と、ローカル側ストレージ装置300Aが有するポート情報管理テーブルと、決定したリモート側ストレージ装置BのWWNと、を、ベンダ固有の設定コマンドとともに、リモート側ストレージ装置300Bに送信する(S38)。
【0077】
リモート側ストレージ装置300Bの装置間データコピー制御部330Bは、ベンダ固有の設定コマンドを受信すると、受信したローカル側レプリケーションポート情報と、ローカル側のポート情報管理テーブルと、決定したリモート側ストレージ装置BのWWNと、をキャッシュメモリ340Bに保存する(S39)。
【0078】
装置間データコピー制御部330Bのポート情報制御部331Bは、ローカル側レプリケーションポート情報と、ローカル側のポート情報管理テーブルと、決定したリモート側ストレージ装置BのWWNと、に基づいて、リモートコピーパス管理テーブルを作成又は更新する(S39)。
【0079】
すなわち、ポート情報制御部331Bは、ストレージ装置300A,300B間のパス番号と、リモート側のディレクトリ番号及びリモート側のポート番号と、これに対応するローカル側ストレージ装置300AのWWNと、を対応させ、リモートコピーパス管理テーブルを作成又は更新する。装置間データコピー制御部330Bは、ポート情報制御部331Bがリモート側のリモートコピーパス管理テーブルを正常に作成終了又は更新終了したことを確認すると、正常に終了した報告をローカル側ストレージ装置300Aに送信する(S39)。
【0080】
ローカル側ストレージ装置300Aの装置間データコピー制御部330Aは、正常に終了した報告を受信すると、ポート情報制御部331Aは、既にキャッシュメモリ340Aに保存されている一のリモート側レプリケーションポート情報に基づいて、ローカル側のリモートコピーパス管理テーブルを作成又は更新する(S40)。
【0081】
すなわち、ポート情報制御部331Aは、ストレージ装置300A,300B間のパス番号、ローカル側のディレクトリ番号、ローカル側のポート番号、及びこれに対応するリモート側ストレージ装置300BのWWNを対応させ、ローカル側のリモートコピーパス管理テーブルを作成又は更新する。
【0082】
ポート情報制御部331Aが、ローカル側のリモートコピーパス管理テーブルを作成又は更新し終えると、リモートコピーにおけるパスの設定処理は終了する。
【0083】
本第2実施形態によれば、パス設定の開始時にリモート側ストレージ装置の電源がオン状態である必要がなくなる。このため、リモート側ストレージ装置の状態に制限されることなく柔軟な環境を構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、リモートコピーのためのパスをストレージ間で設定するストレージシステムにおいて、手作業を要することなく且つハードウェアに割り当てられるハードウェアIDに起因することなくパスを設定するストレージシステムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…ストレージシステム、100…管理端末、200…ホスト装置、300A…ローカル側ストレージ装置、300B…リモート側ストレージ装置、310…管理端末インタフェース制御部、320…ホストインタフェース制御部、330…装置間データコピー制御部、331…ポート情報制御部、332…装置間状態監視部、333…データコピー制御部、334…装置間インタフェースポート、340…キャッシュメモリ、341…ポート情報管理テーブル、342…リモートコピーパス管理テーブル、342A…リモートコピーパス管理テーブル、342B…リモートコピーパス管理テーブル、350…ディスク制御部、360…ディスクエンクロージャ、361…ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれリモートコピー機能を有する少なくとも2つのストレージ装置を備えるストレージシステムであって、
各ストレージ装置は、
コピー元として指定された場合に、コピー先となり得るストレージ装置にポート情報の問い合わせを送信する手段と、
他のストレージ装置より前記問い合わせを受信した場合に、リモートコピーに用いることができる自装置のポートの情報を取得し、前記問い合わせをしたストレージ装置に第1のポート情報として返信する手段と、
他のストレージ装置より前記第1のポート情報を受信した場合に、前記第1のポート情報に基づいてコピー先ポート情報を決定し、前記決定したコピー先ポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定する手段と、
リモートコピーに用いるポートの情報を、前記決定したコピー先ポート情報に対応するストレージ装置に第2のポート情報として送信する手段と、
他のストレージ装置より前記第2のポート情報を受信した場合に、前記第2のポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定する手段と、
を備えるストレージシステム。
【請求項2】
前記第1のポート情報及び第2のポート情報は、外部から動的に割り当てられるポート識別情報を含むものである、請求項1記載のストレージシステム。
【請求項3】
前記第1のポート情報及び第2のポート情報は、外部から固定的に割り当てられるポート識別情報を含むものである、請求項1記載のストレージシステム。
【請求項4】
前記リモートコピー先となり得るストレージ装置の電源投入時に、コピー元として指定された前記ストレージ装置と前記リモートコピー先となり得るストレージ装置とが通信可能に構成される、請求項1又は3記載のストレージシステム。
【請求項5】
それぞれリモートコピー機能を有する少なくとも2つのストレージ装置を備えるストレージシステムのパス設定方法であって、
コピー元として指定された場合に、コピー先となり得るストレージ装置にポート情報の問い合わせを送信するステップと、
他のストレージ装置より前記問い合わせを受信した場合に、リモートコピーに用いることができる自装置のポートの情報を取得し、前記問い合わせをしたストレージ装置に第1のポート情報として返信するステップと、
他のストレージ装置より前記第1のポート情報を受信した場合に、前記第1のポート情報に基づいてコピー先ポート情報を決定し、前記決定したコピー先ポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定するステップと、
リモートコピーに用いるポートの情報を、前記決定したコピー先ポート情報に対応するストレージ装置に第2のポート情報として送信するステップと、
他のストレージ装置より前記第2のポート情報を受信した場合に、前記第2のポート情報に基づいてリモートコピーのパスを設定するステップと、
を実行するパス設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197920(P2011−197920A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62889(P2010−62889)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】