説明

ストロボ用のフライバック式昇圧トランス

【課題】充電時間および充電効率が向上し、電池の消耗を抑制できるストロボ用のフライバック式昇圧トランスおよびストロボ回路を提供する。
【解決手段】一次コイル31aと二次コイル31bとからなり、該二次コイル31bの両端子がストロボ発光部に供給する電力を蓄積するメインコンデンサ33に接続されたストロボ用のフライバック式昇圧トランス本体31と、フライバック式昇圧トランス本体31の二次コイル31bの間に直列に接続され、フライバック式昇圧トランス本体31に内蔵された整流ダイオード32とを具備したことを特徴とするストロボ用のフライバック式昇圧トランスにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カメラ、携帯電話等に使用されるストロボ用のフライバック式昇圧トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、携帯電話等に使用されるストロボ装置の充電回路としてフライバック式昇圧トランスを用いたものが知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に示すストロボ充電回路は、図8および図9に示すように、ストロボ発光部に電力を供給するメインコンデンサ11を充電するための回路であり、直流電源12、ヒューズ素子13、昇圧トランス14、スイッチング素子15、フィードバックコンデンサ16、整流ダイオード17およびメインコンデンサ18を備えている。また、このストロボ充電回路を制御するための機能として、充電制御部19、発振制御部20および満充電検出部21を備えている。
【0003】
昇圧トランス14は、一次コイル14aに発生するフライバックパルスを昇圧して二次コイル14bに出力するフライバックトランスであり、その一次コイル14aは、直流電源12およびスイッチング素子15と直列に接続されている。フィードバックコンデンサ16は、ヒューズ素子13と昇圧トランス14との間において直流電源12と並列に接続され、フィードバックコンデンサ16と昇圧トランス14の一次コイル14aとスイッチング素子15とにより、スイッチンググループが構成されている。
【0004】
スイッチング素子15は、発振制御部20からスイッチング制御信号に応じてオン・オフの動作を行なう。スイッチング素子15が導通状態となると、昇圧トランス14の一次コイル14aに電流が流れ、その後にスイッチング素子15が遮断されると、昇圧トランス14の二次コイル14bに逆起電力が発生し、スイッチング素子15が連続的にオン・オフされることで、昇圧トランス14の二次コイル14b側にフライバックパルスが発生する。
【0005】
整流ダイオード17は、昇圧トランス14の外部に設けられ、フライバックパルスを整流してメインコンデンサ11に供給し、メインコンデンサ11は、供給されたフライバックパルスにより充電動作を行なう。このメインコンデンサ11の充電電圧が、負荷であるストロボ発光部(図示しない)に対して電力供給端子22を通じて供給される。
【0006】
また、フォワード型コンバータ回路におけるトランス、つまりトランスの一次コイルと二次コイルとからなるトランス本体の二次コイルの両端部に2つのダイオードを接続し、このダイオードをトランス本体に一体的に外付けした電源装置用トランスも知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−261896号公報
【特許文献2】特許第3126624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示すストロボ充電回路は、昇圧トランス14の外部に整流ダイオード17が設けられている。したがって、部品点数が多くなり、コストアップの原因となるとともに、実装時に高圧部品からの沿面距離確保が困難である。
【0009】
特許文献2は、トランス本体の二次コイルの両端部に2つのダイオードを接続し、このダイオードをトランス本体に一体的に外付けた構成であるが、トランス本体にダイオードを外付けしたものであり、実装時にダイオードを高圧部品から遠ざけて沿面距離を確保することが困難である。さらに、ダイオードをトランス本体に外付けしたことにより、実装時に結線ラインが短くできるものの、トランスの構造が複雑となり、コストアップになる。
【0010】
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、充電時間および充電効率が向上し、電池の消耗を抑制できる。さらに、実装時に整流ダイオードを設置するスペースが不要となり、部品点数の減少を図ることができるとともに、高圧部品からの沿面距離を確保できるストロボ用のフライバック式昇圧トランスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を解決するために、請求項1は、一次コイルと二次コイルとからなり、該二次コイルの両端子がストロボ発光部に供給する電力を蓄積するメインコンデンサに接続されたストロボ用のフライバック式昇圧トランス本体と、前記フライバック式昇圧トランス本体の前記二次コイルの間に直列に接続され、前記フライバック式昇圧トランス本体に内蔵された整流ダイオードとを具備したことを特徴とするストロボ用のフライバック式昇圧トランスにある。
【0012】
請求項2は、請求項1の前記整流ダイオードは、前記二次コイルの中間部に直列に接続されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項1の前記フライバック式昇圧トランス本体は、磁性材料フェライトコアとコイルを巻装した端子一体型ボビンとからなり、前記端子一体型ボビンに凹溝を設けるとともに、この凹溝内の両端部に端子と接続される電極を設け、前記整流ダイオードを前記凹溝に収納して該整流ダイオードを前記電極に直接的に接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、昇圧トランス本体の二次コイルの間に整流ダイオードを直列に接続して、整流ダイオードを昇圧トランス本体に内蔵することにより、充電時間および充電効率が向上し、電池の消耗を抑制できる。さらに、高圧部品からの沿面距離を確保できるとともに実装時に整流ダイオードを設置するスペースが不要となり、部品点数の減少を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1のストロボ回路図。
【図2】同実施例の小型昇圧トランスの斜視図。
【図3】同実施例の小型昇圧トランスを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は図2のA−A線に沿う断面図、(d)は図3(a)のB−B線に沿う断面図。
【図4】従来と本発明の小型昇圧トランスの充電時間を示すグラフ。
【図5】従来と本発明の小型昇圧トランスの充電効率を示すグラフ。
【図6】本発明の実施例2のストロボ回路図。
【図7】同実施例の小型昇圧トランスの充電効率を示すグラフ。
【図8】従来のストロボ回路図。
【図9】従来のストロボ回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1はストロボ回路を示し、符号31は一次コイルに発生するフライバックパルスを昇圧して二次コイルに出力するストロボ用フライバック式の昇圧トランス本体である。昇圧トランス本体31は一次コイル31aと二次コイル31bとから構成され、二次コイル31bの両端側は昇圧トランス本体31の外部に設けられたメインコンデンサ33に接続されている。
【0018】
二次コイル31bの中間部には整流コンデンサ32が直列に接続されており、整流コンデンサ32は昇圧トランス本体31に内蔵されている。そして、この整流ダイオード32はフライバックパルスを整流して外部のメインコンデンサ33に供給し、メインコンデンサ33は、供給されたフライバックパルスにより充電動作を行なう。このメインコンデンサ33の充電電圧が、負荷であるストロボ発光部(図示しない)に対して電力供給を行なうようになっている。
【0019】
昇圧トランス本体31について説明すると、図2および図3に示すように、ポット型フェライトコア34とドラム型フェライトコア35及び端子一体型ボビン36とから構成されている。ポット型フェライトコア34は、例えば、6.0×6.0mmの正方形の頂壁37を有しており、その下面には周壁38によって囲繞される円筒状の凹陥部39が設けられている。
【0020】
ドラム型フェライトコア35は、円筒状の磁芯部40の上下両端部に第1の鍔部41と第2の鍔部42が一体に設けられている。第1の鍔部41は、その外径が凹陥部39の内径より小径で、凹陥部39の内部に嵌合するようになっている。第2の鍔部42は第1の鍔部41より若干肉厚に形成されている。磁芯部40には前記一次コイル31aと二次コイル31bが巻装されており、このコイルは、例えば、内層と外層に一次コイル31aが、中間層に二次コイル31bが巻装され、それぞれの端部は後述する端子に接続されている。
【0021】
端子一体型ボビン36の上面にはドラム型フェライトコア35の第2の鍔部42と嵌合される嵌合部43が設けられている。端子一体型ボビン36の本体部44は矩形状であり、この本体部44の両側部には複数の端子部45a〜45fが突出して設けられている。例えば、端子部45a,45cは一次コイル31aの両端部に接続され、端子部45dは二次コイル31bの一端部に接続されている。また、端子部45e,45fは、前記整流ダイオード32の両端部と後述する手段によって接続されるようになっている。
【0022】
すなわち、端子一体型ボビン36の嵌合部43の底面には端子部45bと45eとの延長線上に位置して長方形状の凹溝46が設けられている。凹溝46は整流ダイオード32の全体が収容される長さおよび深さで、長手方向の両端部には端子部45bと45eに接続される電極47が対向して設けられている。整流ダイオード32の一端にはカソード32aが、他端にはアノード32bが設けられており、凹溝46に整流ダイオード32を収容すると、整流ダイオード32のカソード32aとアノード32bが電極47に直接接続されるようになっている。
【0023】
したがって、整流ダイオード32は半田付け等の接続を行なうことなく、凹溝46に整流ダイオード32を収納するだけで電気的に接続され、接続工程の削減を図ることができる。さらに、端子一体型ボビン36の嵌合部43とドラム型フェライトコア35の第2の鍔部42とを嵌合すると、凹溝46の開口部は第2の鍔部42によって閉塞され、整流ダイオード32はその全体が昇圧トランス本体31に埋設された状態になる。
【0024】
また、端子一体型ボビン36に設けられた端子部45a〜45fは本体部44の下面に露出する実装端子48a〜48fと一体に接続されている。
【0025】
前述のように構成された昇圧トランスの組立てに際しては、まず端子一体型ボビン36の凹溝46に整流ダイオード32を収納する。凹溝46に整流ダイオード32を収容すると、整流ダイオード32のカソード32aとアノード32bが電極47に直接接続される。
【0026】
次に、端子一体型ボビン36の本体部44の上面に接着剤を塗布し、この端子一体型ボビン36の上面に一次コイル31aと二次コイル31bが巻装されたドラム型フェライトコア35の第2の鍔部42を接合すると、端子一体型ボビン36とドラム型フェライトコア35とが結合され、同時に凹溝46の開口部は第2の鍔部42によって閉塞され、整流ダイオード32はその全体が昇圧トランス本体31に埋設された状態になる。この状態で、一次コイル31aの両端部を端子部45a,45cに接続し、二次コイル31bの両端部を端子部45d,45fに接続する。なお、端子部45b,45e間には整流ダイオード32の両端部が接続される。
【0027】
次に、ドラム型フェライトコア35の第1の鍔部41の上面に接着剤を塗布した状態で、ドラム型フェライトコア35にポット型フェライトコア34を嵌合すると、ポット型フェライトコア34の下面がドラム型フェライトコア35の第1の鍔部41の上面に結合され、昇圧トランスが完成する。
【0028】
表1は、図4及び図5に示す従来の昇圧トランスにおける充電時間(sec)と充電効率(%)を示し、表2は本発明の実施例1の昇圧トランスにおける充電時間(sec)と充電効率(%)を示す。いずれも入力電圧を2.7V〜3.7V〜5.5Vに変化させ、メインコンデンサとしての電解コンデンサに対する出力電圧が300Vに達するまでの充電時間および充電効率を示したものである。なお、メインコンデンサの容量は、22μFである。
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表1および表2に示すように、昇圧トランスの外部に整流ダイオードを設けた従来仕様と昇圧トランスの内部に整流ダイオードを設けた本発明仕様とは充電時間(sec)および充電効率(%)に顕著な差が現れることが分かった。
【0031】
出力電圧=V、S2にかかる電圧出力電圧=V2、S1にかかる電圧出力電圧=V−V2(V>V2)、S1に寄生する容量=Cs1,C2に寄生する容量=Cs2とすると、
従来品は、S1+S2であるため、((Cs1+Cs2)*(V)2)/2のロスエネルギーとなる。本発明品は整流ダイオード32を二次コイル31bの間に入れているため、((Cs1)*(V−V2)2)/2+((Cs2)*(V2)2/2となり、S1とS2のロスエネルギーが分割される。二乗で効いてくる電位が少なくなるため、S1とS2のロスエネルギーを足しても従来品よりロスエネルギーが低減される。
【実施例2】
【0032】
図6はストロボ回路を示し、符号31は一次コイルに発生するフライバックパルスを昇圧して二次コイルに出力するストロボ用フライバック式の昇圧トランス本体である。昇圧トランス本体31は一次コイル31aと二次コイル31bとから構成され、二次コイル31bの間で、二次コイル31bの中間部より一端側に片寄った位置には整流コンデンサ32が直列に接続されている。整流コンデンサ32は昇圧トランス本体31に内蔵され、外部に設けられたメインコンデンサ33に接続されている。メインコンデンサ33は、供給されたフライバックパルスにより充電動作を行なう。このメインコンデンサ33の充電電圧が、負荷であるストロボ発光部(図示しない)に対して電力供給を行なうようになっている。
【0033】
図7は二次コイル31bの間に設けられる整流トランス32をS1とS2の比率が変動した際の充電効率の推移を示し、S1+S2を10としてS1の支配率(1〜10)による推移をグラフ化したものである。図7に示すように、二次コイル31bの中間部(S1=S2)に整流コンデンサ32を直列に接続した場合は最も充電効率が高く、二次コイル31bの中間部より一端側に片寄った場合には充電効率が低下することが分かる。昇圧トランス本体31の構造は実施例1と同一であり、説明を省略する。
【0034】
なお、本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のフライバック式昇圧トランスは、例えば、デジタルカメラ、携帯電話等のストロボ用として有効である。
【符号の説明】
【0036】
31…昇圧トランス本体、31a…一次コイル、31b…二次コイル、32…整流ダイオード、33…メインコンデンサ、34…ポット型フェライトコア、35…ドラム型フェライトコア、36…端子一体型ボビン、46…凹溝、47…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと二次コイルとからなり、該二次コイルの両端子がストロボ発光部に供給する電力を蓄積するメインコンデンサに接続されたストロボ用のフライバック式昇圧トランス本体と、
前記フライバック式昇圧トランス本体の前記二次コイルの間に直列に接続され、前記フライバック式昇圧トランス本体に内蔵された整流ダイオードと、
を具備したことを特徴とするストロボ用のフライバック式昇圧トランス。
【請求項2】
前記整流ダイオードは、前記二次コイルの中間部に直列に接続されていることを特徴とする請求項1記載のストロボ用のフライバック式昇圧トランス。
【請求項3】
前記フライバック式昇圧トランス本体は、磁性材料フェライトコアとコイルを巻装した端子一体型ボビンとからなり、前記端子一体型ボビンに凹溝を設けるとともに、この凹溝内の両端部に端子と接続される電極を設け、前記整流ダイオードを前記凹溝に収納して該整流ダイオードを前記電極に直接的に接続したことを特徴とする請求項1記載のストロボ用のフライバック式昇圧トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−192839(P2010−192839A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38248(P2009−38248)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(592074441)東京コイルエンジニアリング株式会社 (62)
【Fターム(参考)】