説明

スナバ回路の動作を制御する方法及び装置

本発明は、入力電圧が、少なくとも1つの周期的パターンで制御されるスイッチを少なくとも用いて処理されるシステムにおいて、スナバ回路の動作を制御する装置に関する。スナバ回路の動作が可能にされたときに入力電圧がスナバ回路に印加される。本装置は、各スイッチを制御するために用いられる周期的パターンを確定する手段であって、該周期的パターンは入力電圧を変更する、確定する手段と、スナバ回路の動作を不能にする手段と、各スイッチを確定された周期的パターンで制御する手段と、入力電圧が所与の値と適合しているか否かを検査する手段と、入力電圧が所与の値と適合している場合に、スナバ回路の動作を可能にする手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、スナバ回路の動作を制御する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スナバ回路は誘導負荷を備えた電気システムで頻繁に使用される。誘導負荷を備えた電気システムでは、電流の急な中断により、その中断をもたらしているデバイスの両端の電圧が急激に上昇することが多い。この電圧の急激な上昇は過渡的であり、半導体デバイスを損傷しその故障をもたらす可能性がある。スパークが生成され(アーキング)、電磁干渉をもたらす可能性がある。スナバ回路は、デバイスの周囲に過渡電流を導通させることによってこの望ましくない電圧を阻止する。小さいコンデンサーCSと直列の小さい抵抗器RSを備えた単純なスナバが使用されることが多い。したがって、スナバ回路は、電圧降伏に対してパワーデバイスを保護するとともに、いくつかの規則及び標準規格に準拠するために電磁干渉も回避する。
【0003】
スナバ回路はDC/DCコンバーターで使用されることが多い。従来のDC/DCコンバーターは、直流を、第1の電圧から第2の電圧(第1の電圧より大きい場合もあるし小さい場合もある)に変換するために、インダクターを使用する。
【0004】
インダクターは、磁界(電流)の形態でエネルギーを蓄積するために用いられ、それには多くの欠点がある。インダクターは重量があり、主に銅材料からなるためコストが比較的大きい。
【0005】
インダクターに取って代わるためのスイッチ及びコンデンサーの組合せはすでに提案されている。
【0006】
例えば、DC/DCコンバーターとしても知られるチャージポンプは、エネルギー蓄積素子としてコンデンサーを用いる。誘導性スイッチングDC/DCコンバーター(これはインダクターをエネルギー蓄積素子として用いる)と比較した場合、チャージポンプは、いくつかのエンドユーザー用途に対してそれを魅力的なものとする独自の特徴を提供する。
【0007】
基本的に、従来のDC/DC昇圧コンバーターのインダクターは、直列に接続された「k」個のブリッジ装置によって置き換えられ、各ブリッジ装置は4つのスイッチ及び1つのコンデンサーで構成される。
【0008】
各ブリッジにおける電圧は、スイッチの制御に従って正、ゼロ又は負である場合がある。ブリッジコンデンサーが短絡する可能性を回避するために、各ブリッジの脚のハイ側スイッチのスイッチングとロー側スイッチのスイッチングとの間に不感時間(dead time)を与える必要がある。
【0009】
しかしながら、不感時間により、スイッチに現れる高圧オーバーシュート等、いくつかの欠点がもたらされる可能性がある。これらのオーバーシュートは、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターの入力に、単一スイッチング期間内において何回か(通常、最大2k回(kはブリッジ装置の数))表れる。電源として複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターに接続された光起電モジュールの場合、光起電モジュールの最大電力点(MPP)周辺での振動に起因して発電損失が示される可能性があるため、入力電圧変動はなおさら望ましくない。
【0010】
スナバ回路は、電圧オーバーシュートを回避しスイッチを保護する。
【0011】
複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターに接続された光起電モジュールの特別な場合では、スナバ回路は電圧オーバーシュートを回避し、また結果としてMPP周辺の発電損失を回避する。
【0012】
複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターは、利用可能なブリッジの数によって決まる、電圧昇圧比(したがってデューティサイクルDの値、ただし比=1/(1−D))のいくつかの離散値しか達成することができない。
【0013】
周期的なスイッチングパターンは、種々の昇圧比を提供するために選択される。入力電圧が変化する場合、別の昇圧比を提供する別のスイッチングパターンを選択する必要がある場合がある。
【0014】
昇圧比を変化させることにより、或る時間の間、光起電モジュールの入力電圧が変化する可能性がある。この時間は、平衡状態において各デューティサイクルの場合に対し各ブリッジコンデンサーに存在する電圧レベルが、種々の昇圧比間で異なる可能性がある時間である。
【0015】
この遷移時間の間、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターのスナバ回路は、こうした入力電圧変動に対処しなければならない。入力において複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターによって加えられる電圧が、スナバコンデンサーにおける電圧レベルより小さい場合、大きい電流ピークが生成される可能性がある。
【0016】
そして、スナバ回路の構成要素は、大きい電流ピークに対処するために寸法が決められる必要がある。
【0017】
そして、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターの全体的なコストが増大する。
【0018】
更なる電力損失がインダクター昇圧レスコンバーター(inductor boost less converter)に加わり、昇圧コンバーターの構成要素は、そのより大きい電流ピークによって損傷を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、高電流に耐えることができるスナバ回路を必要とすることなく、所与のデューティサイクルに対し通常の動作状態のスナバ回路の利点を提供する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
その目的のために、本発明は、システムにおいて、スナバ回路の動作を制御する装置であって、前記システムにおいて、少なくとも1つの周期的パターンで制御されるスイッチを少なくとも用いて、入力電圧が処理される、装置において、
前記装置は、前記スナバ回路の前記動作が可能にされたときに前記入力電圧が前記スナバ回路に印加されることを特徴としかつ、該装置は、
‐前記スイッチを制御するために用いられる周期的パターンを確定する手段であって、該周期的パターンは前記入力電圧を変更する、周期的パターンを確定する手段と、
‐前記スナバ回路の前記動作を不能にする手段と、
‐前記スイッチを前記確定された周期的パターンで制御する手段と、
‐前記入力電圧が所与の値と適合しているか否かを検査する手段と、
‐前記入力電圧が前記所与の値と適合している場合に、前記スナバ回路の前記動作を可能にする手段と、
を具備することを特徴とする、装置に関する。
【0021】
また、本発明は、システムにおいて、スナバ回路の動作を制御する方法であって、前記システムにおいて、少なくとも1つの周期的パターンを用いるスイッチを少なくとも用いて、入力電圧が処理される、方法において、
前記方法は、前記スナバ回路の前記動作が可能にされたときに前記入力電圧が前記スナバ回路に印加されることを特徴とし、かつ、
該方法は、
‐前記スイッチを制御するために用いられる周期的パターンを確定するステップであって、該周期的パターンは前記入力電圧を変更する、周期的パターンを確定するステップと、
‐前記スナバ回路の前記動作を不能にするステップと、
‐前記スイッチを前記確定された周期的パターンで制御するステップと、
‐前記入力電圧が所与の値と適合しているか否かを検査するステップと、
‐前記入力電圧が前記所与の値と適合している場合に、前記スナバ回路の前記動作を可能にするステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0022】
したがって、高電流で動作することができるスナバ回路を有することが不要である。
【0023】
特定の特徴によれば、入力電圧を処理するために使用されるスイッチは、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターのスイッチである。
【0024】
したがって、関連するスイッチングパターンを通じて、複数のブリッジ装置デューティサイクルで構成される昇圧コンバーターを変更することにより、一定の出力電圧を得ることが可能である。
【0025】
特定の特徴によれば、スナバ回路の動作を可能/不能にする手段はスイッチで構成される。
【0026】
したがって、コンバーター起動途中やデューティサイクル変更中等、スナバ回路が存在することに起因して高電流が生成される可能性がある瞬間を除き、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターにスナバ回路を継続的に接続しておくことができる。
【0027】
特定の特徴によれば、スナバ回路の動作を可能/不能にする手段は、2つのN−MOSFETトランジスタと、それらのそれぞれのボディダイオードとで構成され、これらは直列にかつ反対位置に接続される。
【0028】
したがって、N−MOSFETボディダイオードを通って流れる可能性がある望ましくない電流が完全に回避され、2つのN−MOSFETを通って流れる電流は、それらの両方が使用可能(オン状態)である場合にのみ可能となる。
【0029】
特定の特徴によれば、第1のダイオードのアノードは第1のN−MOSFETトランジスタSWS1のソースに接続され、第1のダイオードのカソードは第1のN−MOSFETトランジスタのドレインに接続され、第2のダイオードのアノードは第2のN−MOSFETトランジスタのソースに接続され、第2のダイオードのカソードは第2のN−MOSFETトランジスタSWSのドレインに接続され、第1のN−MOSFETトランジスタSWS1のドレインは第2のN−MOSFETトランジスタのドレインに接続される。
【0030】
特定の特徴によれば、スナバ回路は、直列に接続された部分回路およびコンデンサーで構成され、部分回路は、並列に接続された抵抗器及びダイオードで構成される。
【0031】
したがって、光起電モジュールのMPP等の平均電圧値の周辺の望ましくない大きい電圧変動を回避して、所与の持続時間中に必要な電圧上昇を制御することが可能である。
【0032】
本発明の特徴は、実施形態例の以下の説明を読むことによってより明確になるであろう。上記説明は、以下のうちからの添付図面を参照して行う。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明が実施される3つのブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターの一例の図である。
【図2】スナバ回路を切断するか否かのスイッチの一例を表す図である。
【図3】複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターを備えた装置の一例を表す図である。
【図4】周期的パターンが8つの時間インターバルに分解される場合に第1の昇圧比を有するための、3つのブリッジで構成される昇圧コンバーターのブリッジにおける電圧値の一例の表である。
【図5】周期的パターンが7つの時間インターバルに分解される場合に第2の昇圧比を有するための、3つのブリッジで構成される昇圧コンバーターのブリッジにおける電圧値の一例の表である。
【図6】本発明による、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターにスナバ回路を接続するか否かを制御するアルゴリズムの一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明が実施される3つのブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターの一例である。
【0035】
昇圧コンバーターは、リアクトルレス昇圧コンバーター(Reactor Less Boost Converter)又はインダクターレス昇圧コンバーター(inductor less boost converter)とも呼ばれ、本明細書ではRLBCと呼ぶ。
【0036】
本発明を、光起電モジュールに接続されたRLBCにおいて説明する。本願はまた、入力電圧が変化する可能性があり、かつスイッチ及びコンデンサーが使用されるいかなるシステムにおいても適用可能である。
【0037】
基本的に、従来のDC/DC昇圧コンバーターのインダクターは、直列に接続される「k」個のブリッジ装置に置き換えられる。各ブリッジ装置は、図1に示すように4つのスイッチ及びコンデンサーで構成される。2つのスイッチは、スイッチとして作用するダイオードの形態としてもよいことが留意されなければならない。この個々のブリッジ構造は「ビット」とも呼ばれる。複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターは、ダイオードDo及びコンデンサーCOを備える出力段もまた有する。
【0038】
図1では、3つのビットすなわちブリッジ装置B1、B2及びB3が示され、直列に接続されており、第3のビットB3は出力段に接続されている。
【0039】
より多数のブリッジ装置を含む昇圧コンバーターを、必要なだけビットB1を複製することによって得ることができる。
【0040】
ビットB1は、4つのスイッチS11、S12、S13及びS14並びに1つのコンデンサーC1で構成される。
【0041】
スイッチS11及びS14は、ビットB1のハイ側のスイッチであり、スイッチS12及びS13は、ビットB1のロー側のスイッチである。
【0042】
スイッチS11及びS12は、ビットB1の一方の脚のスイッチであり、スイッチS14及びS13は、ビットB1の他方の脚のスイッチである。
【0043】
ビットB2は、4つのスイッチS21、S22、S23及びS24並びに1つのコンデンサーC2で構成される。
【0044】
スイッチS21及びS24は、ビットB2のハイ側のスイッチであり、スイッチS22及びS23は、ビットB2のロー側のスイッチである。
【0045】
スイッチS21及びS22は、ビットB2の一方の脚のスイッチであり、スイッチS24及びS23は、ビットB2の他方の脚のスイッチである。
【0046】
ビットB3は、3つのスイッチS31、S32及びS33並びに1つのコンデンサーC3で構成される。
【0047】
各ビットBi(ただしi=1又は2)について、スイッチSi1の第1の端子は、スイッチSi2の第2の端子に接続されている。スイッチSi1の第2の端子は、スイッチSi4の第2の端子とコンデンサーCiの正の端子とに接続されている。スイッチSi2の第1の端子は、コンデンサーCiの負の端子と、スイッチSi3の第1の端子とに接続されている。スイッチSi4の第1の端子は、スイッチSi3の第2の端子に接続されている。
【0048】
光起電モジュールのような直流電流提供手段は、入力電圧Vinを提供する。直流電流提供手段の正の端子は、スイッチS11の第1の端子に接続されている。
【0049】
ビットB3について、スイッチS31の第1の端子は、スイッチS32の第2の端子に接続されている。スイッチS31の第2の端子は、ダイオードDOのアノードとコンデンサーC3の正の端子とに接続されている。スイッチS32の第1の端子は、コンデンサーC3の負の端子とスイッチS33の第2の端子とに接続されている。スイッチS33の第1の端子は、直流電流提供手段の負の端子に接続されている。
【0050】
ダイオードDOのカソードは、コンデンサーCOの正の端子に接続されている。コンデンサーCOの負の端子は、直流電流提供手段の負の端子に接続されている。
【0051】
スイッチS14の第1の端子はスイッチS21の第1の端子に接続されている。
【0052】
スイッチS24の第1の端子はスイッチS31の第1の端子に接続されている。
【0053】
コンデンサーCOにおける電圧はVoutに等しい。
【0054】
B1の入力と出力との間の電圧差をVb1と呼び、B2の入力と出力との電圧差をVb2と呼び、B3の入力と出力との電圧差をVb3と呼ぶ。スイッチS33がオンの場合、Vb3はVb3*に等しく、スイッチS33がオフの場合、Vb3はVb3**に等しい。
【0055】
1における電圧差をVC1と呼び、C2における電圧差をVC2と呼び、C3における電圧差をVC3と呼ぶ。
【0056】
RLBCはスナバ回路を更に備えている。
【0057】
スナバ回路は、ダイオードDS、抵抗器RSおよびコンデンサーCSで構成される。
【0058】
直流電流提供手段の正の端子は、ダイオードDSのアノードと抵抗器RSの第1の端子とに接続されている。ダイオードDSのカソードは、抵抗器RSの第2の端子とコンデンサーCSの第1の端子とに接続されている。
【0059】
本発明によれば、本発明ではスナバ回路の動作を可能にする(イネーブル)か又は不能にする(ディセーブル)スイッチが設けられている。
【0060】
コンデンサーCSの第2の端子は、スイッチSWSの第1の端子に接続されている。スイッチSWSの第2の端子は、直流電流提供手段の負の端子に接続されている。
【0061】
従来の昇圧コンバーターとRLBCとの主な相違は、後者が、電圧昇圧比(したがってデューティサイクルDの値、ただし比=1/(1−D)である)のいくつかの離散的な値にしか達することができないという事実による。これは利用可能な「ビット」の数に依存する。
【0062】
動作時に、RLBCは、利用可能な「ビット」の数に依存する電圧昇圧比の離散的な値を提供する。この昇圧比の離散的な値の数は、以下の法則に従うことができる。
ratios=2k
式中、「nratios」は、可能な昇圧比(又はデューティサイクル)の総数であり、「k」は直列に接続されるビットの数である。
【0063】
各ビットに課される電圧値は、以下の法則に従うことができる。
[Vc1:Vc2:…:Vcn]=[1:2:…:2(k-1)]Vco/2k
式中、VCOは上昇した出力電圧である。
【0064】
一定の出力電圧を得るために、以下の法則に従う、「nratios」個の異なる入力電圧を有することが可能である。
Vin=Vco/ratioi, i=1,2,…,nratios
【0065】
図1のn=3ビットの場合、[Vc1:Vc2:Vc3]=[1:2:4]Vrefである。
【0066】
各ブリッジBiのスイッチのスイッチングパターンは、そのブリッジの両コネクタに、+Vci、−Vci又は0に等しい電圧Vbiを提供するように定義される。ここで、VciはコンデンサーCiの電圧である。さらに、各ビットBiのスイッチングパターンは、主スイッチ周期T=1/fの、2k個の等しい連続したサブ周期ΔTとして適時に定義される。
【0067】
図4又は図5を参照して、3つのブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターのブリッジにおける電圧値の例について説明する。
【0068】
ここでは、[Vc1:Vc2:Vc3]=[2:3:4]又は「Vc1:Vc2:Vc3:Vc3]=[1:1:1:4]のような他の構成を使用することができることが留意されなければならない。さらに、nratiosは最終的に2kを超えることができる。
【0069】
スイッチングパターンは、スイッチS11、S12、S13、S14、S21、S22、S23、S24、S31、S32及びS33に適用される。
【0070】
あるシステムにおける、スナバ回路の動作が制御される。このシステムでは、少なくとも1つの周期的パターンで制御されるスイッチを少なくとも使用して、入力電圧が処理される。スナバ回路の動作が可能にされたときに、入力電圧がスナバ回路に印加される。
【0071】
本発明によれば、各スイッチを制御するために用いられる周期的パターンが確定され、周期的パターンは入力電圧を増大させ、それにより、遷移状態の間に入力電圧値が幾分か変更される。遷移状態の間、スナバ回路の動作は不能にされ、各スイッチは確定された周期的パターンで制御され、遷移状態が終了しかつ入力電圧が安定しているか否かが検査される。入力電圧が所与の値と適合している(compatible)場合、スナバ回路の動作は可能にされる。
【0072】
図2は、スナバ回路を切断するか否かのスイッチの一例を表す。
【0073】
スイッチSWSは、例えば、2つのN−MOSFETトランジスタとそれぞれのボディダイオードで構成される。ボディダイオードDS1のアノードは、N−MOSFETトランジスタSWS1のソースに接続され、ボディダイオードDS1のカソードはN−MOSFETトランジスタSWS1のドレインに接続されている。
【0074】
ボディダイオードDS2のアノードは、N−MOSFETトランジスタSWS2のソースに接続され、ボディダイオードDS2のカソードはN−MOSFETトランジスタSWS2のドレインに接続されている。
【0075】
N−MOSFETトランジスタSWS1のドレインはN−MOSFETトランジスタSWS2のドレインに接続されている。N−MOSFETトランジスタSWS2のソースは、直流電流提供手段の負の端子に接続されている。
【0076】
図3は、複数個のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターを備えた装置の一例を表す。
【0077】
装置30は、例えば、バス301によって互いに接続された構成要素と、図6に開示するようなアルゴリズムに関連するプログラムによって制御されるプロセッサ300とに基づくアーキテクチャを有している。
【0078】
ここで、装置30は、変形形態では、以下に開示するようにプロセッサ300によって実行されるものと同じ動作を実行する1つ又はいくつかの専用集積回路の形態で実装されることが留意されなければならない。
【0079】
バス301は、プロセッサ300を、リードオンリーメモリROM302、ランダムアクセスメモリRAM303、アナログ/デジタル変換器ADC306及び図1に開示するもののようなRLBCモジュールに連結する。
【0080】
リードオンリーメモリROM302は、図6に開示するようなアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含み、それらは、装置30に電源が投入されると、ランダムアクセスメモリRAM303に転送される。
【0081】
リードオンリーメモリROM302は、本発明の図4及び図5に示す表を記憶する。
【0082】
RAMメモリ303は、変数を受け取るように意図されたレジスタと、図6に開示するようなアルゴリズムに関連するプログラムの命令とを含む。
【0083】
アナログ/デジタル変換器306は、RLBCに接続され、入力電圧Vin及び/又は出力電圧Voutを表す電圧を2値情報に変換する。
【0084】
図4は、周期的パターンが8つの時間インターバルに分解される場合に第1の昇圧比を有するための、3つのブリッジで構成される昇圧コンバーターのブリッジにおける電圧値の一例である。
【0085】
図4は、比Vout/Vin=1.14を有するためのRLBCの各ブリッジにおける電圧値を含む。
【0086】
行401において、1に等しい値は、Vb1=Vrefを意味し、−1に等しい値はVb1=−Vrefを意味し、0に等しい値はVb1=0を意味する。
【0087】
行402において、1に等しい値は、Vb2=2Vrefを意味し、−1に等しい値はVb2=−2Vrefを意味し、0に等しい値はVb2=0を意味する。
【0088】
行403において、1に等しい値は、Vb3=4Vrefを意味し、−1に等しい値はVb3=−4Vrefを意味し、0に等しい値はVb3=0を意味する。
【0089】
各時間インターバルt1〜t8の持続時間はΔT=T/N(N=8)であり、ここで、Tは、図1のスイッチS33によって作動するスイッチングサイクルの持続時間である。
【0090】
比Vout/Vin=1.14を得るために、8つの時間インターバルが必要である。
【0091】
時間インターバルt1では、Vb1=Vref、Vb2=2Vref及びVb3=4Vrefである。時間インターバルt2、t3、t4及びt5では、Vb1=−Vref及びVb2=Vb3=0である。時間インターバルt6及びt7では、Vb1=Vref、Vb2=−2Vref及びVb3=0である。時間インターバルt8では、Vb1=Vref、Vb2=2Vref及びVb3=−4Vrefである。
【0092】
図5は、周期的パターンが7つの時間インターバルに分解される場合に第2の昇圧比を有するための、3つのブリッジで構成される昇圧コンバーターの各ブリッジにおける電圧値の一例である。
【0093】
図5は、比Vout/Vin=1.16を有するためのRLBCの各ブリッジにおける電圧値を含む。
【0094】
行501において、1に等しい値は、Vb1=Vrefを意味し、−1に等しい値はVb1=−Vrefを意味し、0に等しい値はVb1=0を意味する。
【0095】
行502において、1に等しい値は、Vb2=2Vrefを意味し、−1に等しい値はVb2=−2Vrefを意味し、0に等しい値はVb2=0を意味する。
【0096】
行503において、1に等しい値は、Vb3=4Vrefを意味し、−1に等しい値はVb3=−4Vrefを意味し、0に等しい値はVb3=0を意味する。
【0097】
各時間インターバルt1〜t7の持続時間はΔT=T/N(N=7)であり、ここで、tは、図1のスイッチS33によって作動するスイッチングサイクルの持続時間である。
【0098】
比Vout/Vin=1.16を得るために、7つの時間インターバルが必要である。
【0099】
時間インターバルT1では、Vb1=0、Vb2=2Vref及びVb3=4Vrefである。時間インターバルt2、t3及びt4では、Vb1=−Vref、Vb2=0及びVb3=0である。時間インターバルt5及びt6では、Vb1=Vref、Vb2=−2Vref及びVb3=0である。時間インターバルt7では、Vb1=Vref、Vb2=2Vref及びVb3=−4Vrefである。
【0100】
図6は、本発明によるスナバ回路を制御するアルゴリズムの一例である。
【0101】
より厳密には、本アルゴリズムは、装置30のプロセッサ300によって実行される。
【0102】
ステップS600において、プロセッサ200は入力電圧Vinを得る。入力電圧Vinは、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターが昇圧しなければならない電圧である。例えば、Vinを、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターに印加される入力電圧のデジタル変換器306によって行われる測定の結果とすることができる。他の例として、Vinを、特定の調節機能を実現するように、他の信号(ビット電圧、出力電圧、入力電流又は出力電流等)のデジタル変換器306によってなされるさらに他の測定から、プロセッサ300による計算によって求めることができる。本発明の特別な実施形態では、調節機能は、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターを通過する電力を最大限にするように確定される。
【0103】
次のステップS601において、プロセッサ300は、所与のデューティサイクルD(例えば図4の表に対応する周期的パターンによって提供されるもの)を用いて、RLBCによって昇圧される入力電圧Vinを検査する。
【0104】
入力電圧Vinが出力電圧の所望の範囲に含まれる出力電圧値を提供する場合、プロセッサ300はステップS600に戻る。そうでない場合、プロセッサ300はステップS602に移る。
【0105】
ステップS602において、プロセッサ300は、変数Vprevの値をVinの値に設定する。
【0106】
次のステップS603において、プロセッサ300は、スイッチSWSを非導通状態(オフ状態)に設定するコマンドをRLBCに転送することによって、RLBCのスナバ回路の動作を不能にする。
【0107】
次のステップS604において、プロセッサ300は、入力電圧を、出力電圧の所望の範囲に含まれる出力電圧値に昇圧するのを可能にする別のデューティサイクルDを選択する。例えば、プロセッサ300は、図5の表に対応する周期的パターンによって提供されるデューティサイクルDを選択する。
【0108】
次のステップS605において、プロセッサ300は、ステップS604によって選択されたデューティサイクルに対応する、メモリ302に格納されたパターンに従って、RLBC305の各スイッチに命令する。
【0109】
デューティサイクルの変更が必要であるときはいつでも(また、コンバーターの起動途中でも)、種々の回路構成要素の電圧レベルはまだ平衡状態ではない。したがって、スイッチSWSが非導通状態(オフ)ではない場合、スナバ抵抗器に望ましくない電圧が現れ、スナバコンデンサーの電圧は、RLBCコンバーターによって加えられる入力電圧より高くなる。それにより、スナバ回路の抵抗器及びコンデンサーを通して、したがってRLBC回路を通して、電流ピークがもたらされことになる。この理由は、スナバ回路が、光起電モジュールのような電流提供手段から到来する電流を増大させるためである。
【0110】
第2の周期的パターンにより平衡状態に達する前に、図1、図4及び図5に従って本明細書で説明したこの特定の場合に、抵抗器RSに、Vout/(8*RS)に等しい最大ピーク電流がある可能性がある。
【0111】
本発明により、この電流は生成されない。
【0112】
次のステップS606において、プロセッサ300は、入力電圧Vinを取得する。入力電圧Vinは、ステップS600において開示したように、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターが昇圧しなければならない電圧である。
【0113】
次のステップS607において、プロセッサ300は、電圧Vinが所与の値と適合する(compatible)か否かを検査する。
【0114】
電圧Vinが安定しており、かつデューティサイクル変更に起因した遷移変動が終了している場合、電圧Vinは所与の値と適合している。
【0115】
電圧Vinは、その平均値の周辺の変動が±5パーセントであるときには、安定している。Vinの安定性は、移動平均計算により、すべてのスイッチング期間それぞれにおいて利用可能なすべての点を用いて検査される。2つの連続した平均計算値の差が5パーセント未満である場合、安定性が達成される。
【0116】
電圧Vinが所与の値と適合していない場合、プロセッサ300はステップS606に戻る。
【0117】
電圧Vinが安定しているが、記憶された値Vprev未満である場合、プロセッサ300はまたステップS606に戻る。
【0118】
電圧Vinが安定しておりかつVprev以上である場合、プロセッサ300はステップS608に移る。
【0119】
次のステップS608において、プロセッサ300は、スイッチSWSを導通状態(オン状態)に設定するコマンドをRLBCに転送することによって、RLBCのスナバ回路の動作を可能にする。
【0120】
その後、プロセッサ300はステップS600に戻る。
【0121】
ここで、RLBCの電源がオンとなるとき、又はRLBCが初期状態にリセットされるときには、プロセッサ300は、ステップS607において説明したようにVinが安定している場合にのみ、RLBCのスナバ回路の動作を可能にするということが留意されなければならない。Vinの安定性は、移動平均計算により、すべてのスイッチング期間それぞれにおいて利用可能なすべての点を用いて検査される。スナバコンデンサーは、こうした状況では完全に又は略完全に放電される。
【0122】
2つの連続した平均計算値の差が5パーセント未満である場合、安定性が達成される。この時点で、他に何も考慮することなくスナバ回路を使用可能(SSWがオン状態)とすることができる。コンデンサーCSを流れる電流はISCに制限され、VinはVOC(光起電モジュール開放電圧)に等しい。この電圧は、RLBC回路によって入力に印加される電圧と同じ電圧でもある。起動途中にはスイッチSWが開放されているため、Vinは初期Vprev=0よりも大きい。
【0123】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおいて、スナバ回路の動作を制御する装置であって、
前記システムにおいて、少なくとも1つの周期的パターンで制御されるスイッチを少なくとも用いて、入力電圧が処理される
装置において、
前記スナバ回路の前記動作が可能にされたときに、前記入力電圧が前記スナバ回路に印加されることを特徴とし、かつ、
前記装置は、
‐前記スイッチを制御するために用いられる周期的パターンを確定する手段であって、前記周期的パターンは前記入力電圧を変更する、周期的パターンを確定する手段と、
‐前記スナバ回路の前記動作を不能にする手段と、
‐前記スイッチを前記確定された周期的パターンで制御する手段と、
‐前記入力電圧が所与の値と適合しているか否かを検査する手段と、
‐前記入力電圧が前記所与の値と適合している場合に、前記スナバ回路の前記動作を可能にする手段と、
を具備することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記入力電圧を処理するために用いられる前記スイッチは、複数のブリッジ装置で構成される昇圧コンバーターのスイッチであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スナバ回路の前記動作を可能/不能にする前記手段はスイッチで構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記スナバ回路の前記動作を可能/不能にする前記手段は、2つのN−MOSFETトランジスタと、それらのそれぞれのボディダイオードとで構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記スナバ回路は、直列に接続された部分回路およびコンデンサーで構成され、前記部分回路は、並列に接続された抵抗器及びダイオードで構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
システムにおいて、スナバ回路の動作を制御する方法であって、
前記システムにおいて、少なくとも1つの周期的パターンを用いるスイッチを少なくとも用いて、入力電圧が処理される
方法において、
前記スナバ回路の前記動作が可能にされたときに前記入力電圧が前記スナバ回路に印加されることを特徴とし、かつ、
前記方法は、
‐前記スイッチを制御するために用いられる周期的パターンを確定するステップであって、前記周期的パターンは前記入力電圧を変更する、周期的パターンを確定するステップと、
‐前記スナバ回路の前記動作を不能にするステップと、
‐前記スイッチを前記確定された周期的パターンで制御するステップと、
‐前記入力電圧が所与の値と適合しているか否かを検査するステップと、
‐前記入力電圧が前記所与の値と適合している場合に、前記スナバ回路の前記動作を可能にするステップと、
を含むことを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−525111(P2012−525111A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506489(P2012−506489)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055315
【国際公開番号】WO2010/122085
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】