説明

スパイラルミキサーノズル、2種以上の流体の混合方法、およびイソシアネートの製造方法

(a)第1のフローチャンバーを画定する第1のフローダクトを含んでいて、第1の排出開口を有する第1のノズルチップを有する第1のノズル;および(b)第2のフローチャンバーを画定する第2のフローダクトを含んでいて、第2の排出開口を有する第2のノズルチップを有する第2のノズル;を含み、このとき前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが互いに螺旋状に包まれている、少なくとも第1と第2の流体を混合するための装置。本発明はさらに、流体を混合するための方法、特にイソシアネートの製造に適合した、流体を混合するための方法を提供し、この方法は本発明の装置において行うのが特に適切である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、流体、特にアミンとホスゲンを混合するための新規装置、および塩化カルバモイルとイソシアネートを得るべくアミンとホスゲンを混合するための方法に関する。
多くの文献が、流体を混合するための、特に流体を反応させるためのノズルを開示している。速やかな混合が重要なパラメーターとなっているホスゲン化反応において、1つの特定の例が記載されている。従って、このようなノズルに対して多くの設計物が提唱されており、それらのほとんどが、衝突する場合も、しない場合もある同軸ジェットを含む。しかしながら、特にホスゲン化反応において、ノズルの混合効率をさらに向上させることが依然として求められている。
【0002】
したがって本発明の目的は、(a)第1のフローチャンバーを画定する第1のフローダクトを含んでいて、第1の排出開口を有する第1のノズルチップを有する第1のノズル;および
(b)第2のフローチャンバーを画定する第2のフローダクトを含んでいて、第2の排出開口を有する第2のノズルチップを有する第2のノズル;を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための装置を提供することにあり、
このとき前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが、互いに螺旋状に包まれており;
前記装置の操作時において、第1のフローチャンバー中に流入し、第1の排出開口を通って出て行く第1の流体が第1の流体ジェットを形成し、第2のフローチャンバー中に流入する第2の流体が、第2の排出開口にて第2の流体ジェットを形成し、このとき前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合う。
【0003】
本発明は特に、(a)第1のフローチャンバーを画定する第1のフローダクトを含んでいて、第1の排出開口を有する第1のノズルチップを有する第1のノズル;および(b)第2のフローチャンバーを画定する第2のフローダクトを含んでいて、第2の排出開口を有する第2のノズルチップを有する第2のノズル;を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための実質的に円筒形の装置を提供し、
このとき前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが、1〜20旋回を有するアルキメデスの螺旋(an Archimedean spiral)にしたがって互いに螺旋状に包まれていて、前記第1と第2のノズルが先細になっており;
前記装置の操作時において、第1のフローチャンバー中に流入し、第1の排出開口を通って出て行く第1の流体が第1の流体ジェットを形成し、第2のフローチャンバー中に流入する第2の流体が、第2の排出開口にて第2の流体ジェットを形成し、このとき前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合う。
【0004】
本発明の他の目的は、(a)第1の流体からなる第1の流体ジェットを第1の排出ポジションにおいて形成させる工程;(b)第2の流体からなる第2の流体ジェットを第2の排出ポジションにおいて形成させる工程;および(c)前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合うよう、それぞれの流体ジェットを互いに螺旋状に包む工程;を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための方法を提供することにある。
【0005】
本発明は特に、(a)第1の流体からなる第1の流体ジェットを第1の排出ポジションにおいて形成させる工程;(b)第2の流体からなる第2の流体ジェットを第2の排出ポジションにおいて形成させる工程;および(c)前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合うよう、1〜20旋回を有するアルキメデスの螺旋に従ってそれぞれの流体ジェットを互いに螺旋状に包む工程;を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための方法を提供する。
【0006】
本発明の方法は、イソシアネートの製造に対して特に有用である。本発明はさらに、アミンとホスゲンに対して施される本発明の混合プロセス、そして引き続き行われる混合されたアミンとホスゲンを反応させる工程を含んだイソシアネートの製造方法を提供する。これらのプロセスは、本発明の装置において特に行うことができる。
【0007】
他の目的、特徴、および利点は、下記の説明を参照すればより明らかになるであろう。
本発明は、螺旋状のノズル(以後、スパイラルノズルと呼ぶ)を使用することに基づいている。形状が特殊であることから、細い流れは互いに衝突することができ、このとき同時に高い混合エネルギーを有する。
【0008】
図1を参照すると、2種の流体を混合するための、単純な衝突同軸ジェットミキサーノズルアセンブリ100が示されている。衝突同軸ジェットミキサーノズルアセンブリ100は、外側フローダクト101と外側フローダクトノズルチップ105の内部に同軸的に配置された内側フローダクト102と内側フローダクトノズルチップ104を含む。フローチャンバー120は、内側フローダクト102と内側フローダクトノズルチップ104の内部のスペースであると定義される。フローチャンバー120は、2つの端部、すなわち供給端部130と排出端部110を有する。フローチャンバー120の排出端部110は、内側フローダクトノズルチップ104の排出端部によって形成されており、所定の直径の排出開口を有する。フローチャンバー121は、外側フローダクト101と内側フローダクト102との間の環状スペースとして始まっている。フローチャンバー121は、外側フローダクトノズルチップ105と内側フローダクト102との間の環状スペースとして続いている。フローチャンバー121はさらに、外側フローダクトノズルチップ105と内側フローダクトノズルチップ104との間の環状スペースとして続いている。フローチャンバー121は、2つの端部、すなわち供給端部131と排出端部132を有する。フローチャンバー121の排出端部132は、外側フローダクトノズルチップ105の排出端部によって形成されている。フローチャンバー120の排出端部110とフローチャンバー121の排出端部132は、軸方向寸法において実質的に隣接している。第1の流体がフローチャンバー120を通って流れ、排出端部110においてジェット103として排出される。ジェット103の初期直径は、ノズルチップ104の排出開口の直径に実質的に等しい。第2の流体がフローチャンバー121を通って流れ、排出端部132において環状ジェット106として排出される。ジェット106の初期厚さは、ノズルチップ105の排出開口の直径とノズルチップ104の直径との差の半分に実質的に等しい。2つの同軸ジェット103と106が衝突し、それらがノズルチップ104と105を出るときに混ざり合って複合ジェット107を形成する。ミキシングのための主要な駆動力は、ジェット103と106の運動エネルギーと乱流エネルギー散逸速度である。流体の速度は、ノズルチップ104と105の相対的な設計によって選定される。ノズルチップ104と105が先細になっている角度(すなわち衝突角度)は、例えば30〜60°の範囲で変わってよい。
【0009】
この装置は、かなり前から知られているが、混合効率に関してはまだ改良を必要とする。
したがって本発明のノズルアセンブリは、少なくとも第1と第2の流体を混合するための装置を提供し、その装置は、第1のスパイラル流体ジェット206(第1の流体からなる)を形成するための第1のノズルアセンブリ手段、および前記第1のスパイラル流体ジェット206と同軸で且つ、前記第1のスパイラル流体ジェット206の周りに包まれている、第2のスパイラル流体ジェット207(第2の流体からなる)を形成するための第2のノズルアセンブリ手段を含み、したがって第2のスパイラル流体ジェット207が第1のスパイラル流体ジェット206と衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合う。この部分を必要に応じてノズルサブアセンブリ201と呼ぶ。
【0010】
必要であれば、さらなる流体に対するさらなるダクトを組み込むこともできる。
図2を参照すると、本発明のノズルアセンブリの縦方向拡大断面図が示されている。ノズルサブアセンブリ201は、下部ハウジング250中に配置されている。螺旋状に巻かれたアセンブリは、下記のように配置された第1のダクト202と第2のダクト203を含む。第1のフローチャンバー220は、第1のフローダクト202と第1のフローダクトノズルチップ204(図面の左側に示す)の内側のスペースであると定義される。第1のフローチャンバー220は、2つの端部、すなわち供給端部230(図面の右側に示す)と排出開口210(図面の左側に示す)を有する。第1のフローチャンバー220の排出開口210は、第1のフローダクトノズルチップ204の排出端部によって形成されており、所定の値の排出隙間を有する。第2のフローチャンバー221は、第2のフローダクト203と第2のフローダクトノズルチップ205(図面の左側に示す)の内側のスペースであると定義される。第2のフローチャンバー221は、2つの端部、すなわち供給端部231(図面の左側に示す)と排出開口211(図面の右側に示す)を有する。供給端部231は、実施態様においてはデッドエンドとして示されており、カバープレート251により、流体が側方エントリー(導入のルーメン)から強制的に流れる。これは、図3、図4、および図5においてさらに詳細に開示されている。フローチャンバー221の排出開口211は、第2のフローダクトノズルチップ205の排出端部によって形成されており、所定の値の排出隙間を有する。図面からわかるように、ダクト202と203は、共通の壁体241と242(図4に示す)を共有しており、ダクト203が下部ハウジング250と共に形成している外側旋回をセーブし、したがって協同的に作用して螺旋状に巻かれたアセンブリを形成する。このアセンブリは、第1のジェット206と第2のジェット207を生成し、それぞれ第1と第2の排出開口にて出て行く。ジェット206と207が衝突し、ノズルチップ204と205を出て行くときに混ざり合って複合ジェット208を形成する。フローダクトの最も外側のテーパー角度は、例えば30〜60°(好ましくは40〜50°)の範囲で変わってよく、通常は約45°である。ある箇所での所定のフローダクトのテーパー角度は、アセンブリの軸と、衝突する前の、ある箇所での所定のダクトの出口における一般的な流れ方向との間の角度であることが理解されるであろう。フローダクトは、フローダクトの環状通路に沿って変わるテーパー角度を有することが理解されるであろう。特に、テーパー角度は、装置の中心部から外側に向かって増大してよい。フローダクトの内側テーパー角度も、0〜45°(好ましくは0〜15°)の範囲で変わってよいことも理解されるであろう。
【0011】
図示の実施態様において、前記第1のフローチャンバー220が、第1の排出開口に向かって、第1のフローダクトに沿って実質的に減少していく寸法を有していることがわかる。[供給端部230の隙間]対[排出開口210の隙間]の比は、1〜10の範囲で、好ましくは2〜4の範囲で、変わってよい。
【0012】
図示の実施態様において、前記第2のフローチャンバー221も、第2の排出開口に向かって、第2のフローダクトに沿って実質的に減少していく寸法を有していることがわかる。
図示の実施態様において(図4により詳細に示されている)、前記第2のフローチャンバー221はさらに、螺旋状に包まれたダクトの外側から内側に向かって実質的に減少していく寸法を有していることがわかる。[外側端部の隙間]対[内側端部の隙間]の比も、供給レベル、排出レベル、またはそれらの両方において変わってよい。
【0013】
ここでは、個々の排出開口に対する種々の寸法(すなわち、幅や隙間)は、必要な速度が付与されるように選定される。ジェット206の(見掛けの)速度は、一般には5〜90フィート/秒であり、好ましくは20〜70フィート/秒である。ジェット207の(見掛けの)速度は、一般には5〜70フィート/秒であり、好ましくは10〜40フィート/秒である。ノズルチップ204における隙間は、一般には0.04インチ〜0.20インチであり、好ましくは0.05インチ〜0.10インチである。ノズルチップ205における隙間は、一般には0.04インチ〜0.20インチであり、好ましくは0.05インチ〜0.10インチである。これらの隙間は、一定であってもよいし、あるいは螺旋に沿って変わってもよい。壁体の厚さ、または隔離している隙間は、一般にはそれぞれの排出開口に対する隙間より小さく、通常は0.03インチ〜0.10インチであり、好ましくは0.03インチ〜0.06インチである。それぞれの排出開口を考慮する場合は、排出開口に対するおよその長さ(展開したライン(a deployed line)と見なすことができる)を見積もればよい。排出開口は通常、長さ対隙間の比が20〜200(好ましくは60〜150)となるような長さLを有する。排出隙間210は、排出隙間211より小さくても、排出隙間211と等しくても、あるいは排出隙間211より大きくてもよい。排出隙間211はさらに、外側から内側に向かって変わってよく、例えば、外側での211は、内側での211の半分である。排出隙間210も、必要に応じて同様に変わってよい。
【0014】
図3を参照すると、本発明の第1の実施態様のノズルサブアセンブリの拡大底面図(下部ハウジングなし)が示されている。図からわかるように、ダクト202と203が共通の壁体を共有しており、このときダクト202はループ状旋回から生じているダクトであり、ダクト203はラッピング(最終的には、エンケーシング(encasing)から下部ハウジングまで)から生じている。導入のルーメン(lumen of introduction)が図面の232として識別されている。
【0015】
図4を参照すると、本発明の第1の実施態様のノズルサブアセンブリの拡大上面図(下部ハウジングなし)が示されている。図4において、壁体241と242、ならびに第2の流体232を導入するためのルーメンが示されており、このとき矢印は、第2のダクト203における流れの一般的な注入方向を表わしている。これについては、図5においてさらに詳細に開示されている。
【0016】
図5を参照すると、本発明の螺旋状に巻かれたアセンブリの縦方向拡大断面図が示されている。第1のダクト202、第2のダクト203、および下部ハウジング250が示されている。図5には、第2の流体を導入するための第2の流体カバー251が示されている。カバーは、ラッピングから(そして最終的には、下部ハウジング中へのエンケーシングから)生じる第2のダクト203の上部に配置されるので、カバー251はさらに、図示の実施態様において、一般的には巻かれている形態を有する。導入のルーメン232から第2のダクト203中に供給されると、第2の流体は、ノズルの軸に対して実質的に接線となる方向(図4の矢印で示す)にしたがって流れる。第2の流体に対して接線方向の供給を使用することによって、接線速度ベクトルを達成する際に特別の利点が存在し、この結果渦巻き作用が起こり、最終的にはより十分なミキシングが得られる。253aと253bは歯(tine)である。
【0017】
前の図面からわかるように、本発明のノズルアセンブリは、それ自体が螺旋状に巻かれているか又は包まれている。“互いに螺旋状に包まれているダクト”という用語は、一方のダクトが他方のダクトを1旋回より多く包んでいる、という場合を含むよう意図されている。本発明の目的に適うよう、少なくとも3つの異なった位置において曲線と交差する直線が存在する場合、曲線は1つの旋回を形成する、と一般には考えられている。前記直線と曲線との交点の数を数えることによって旋回数を計数することができる。これを表示する1つの方法は、交点の数を2n+1(式中、nは旋回の数である)として計数すると言う方法である。ここで言う螺旋とは、固定点から増え続ける距離にて引かれる実質的に連続した全ての曲線を含むよう意図されている。旋回が1つより多いという形で包まれている場合は、ダクトのオーバーラップが起こる。“旋回(turn)”は、必ずしも輪状であることを意味しているわけではないが、輪状であるのが好ましい実施態様であり、これはさらに、螺旋様の方眼状に包まれたダクトも含む。こうした設計から生じる非対称性が、2種の流体の混合を向上させる。旋回の数は重要なことではなく、広い範囲で変わってよい(例えば、1〜20旋回)。1つの実施態様においては、この数はかなり大きく(例えば、図示した第1の実施態様の場合)、“タイト・スパイラル(tight spiral)”実施態様と表現することができる。この場合、旋回数は3〜10の範囲で変わってよい。他の実施態様においては、この数はかなり小さく、“オープン・スパイラル(open spiral)”実施態様として表現することができる。旋回数は1.05〜1.5の範囲で変わってよい。二重のダクトが包まれているというケースも考えられている。第1と第2のフローダクトは、アルキメデスの螺旋(an Archimedean spiral)にしたがって互いに螺旋状に包まれているのが好ましく、アルキメデスのスパイラル(an Archimedes’ spiral)にしたがって互いに螺旋状に包まれているのがさらに好ましい。アルキメデスの螺旋は、極方程式r=aθ1/yを(式中、rは半径距離であり、θは極角であり、そしてyは、螺旋がどの程度にぴったりと“包まれている”かを決定する定数である)を有する螺旋である。アルキメデスのスパイラルは、yが1である場合の螺旋である。
【0018】
図6は、本発明の他の実施態様を示している。図6Aは“オープン・スパイラル”実施態様を表わしている。図6Bは“スクエア・スパイラル”実施態様を表わしている。図6Cは“ハート・スパイラル”実施態様を表わしている。図6Dは“シグモイド・スパイラル”実施態様を表わしている。図5は、洗浄用デバイスを含んだ、本発明の他の実施態様を示している。本実施態様においては、カートリッジ252(ノズルに沿って同軸的に取り付けられている)に、歯(tine)243a、243b、および243cなどが設けられている。これらの歯は、ダクトの一方(ここでは第1のダクト202)に設けられている。適切な機械的手段(図示せず)を使用してカートリッジ252を置き換えるときに、これらの歯が、第1のダクト202中に詰まった堆積物を掻き落とす。したがって、プロセスを中断して詰まりを生じた又は制約されたフローノズルアセンブリを除去する必要なく、詰まりのないノズルアセンブリを得ることができる。
【0019】
図7は、図1の実施態様に対応する、本発明の他の実施態様を示しており、本実施態様においては、ノズルサブアセンブリの底部が湾曲した形状に変更されている。これは、球体(または他の任意の円形物)の一部に対応した部分のサプレッションとして表わすことができる。
【0020】
本発明のノズルアセンブリの表面はさらに、従来の表面処理法(必要に応じて、塗被、研磨、ネジ山やネジ溝の形成)を使用して処理および/または仕上げを行うことができる。
本発明は、従来技術のノズルアセンブリを凌ぐ幾つかの利点をもたらす。1つの利点は、従来のノズルアセンブリと比較したときの、混合効率における実質的な向上である。ノズルの形状が特異的であることから、他の表面上での衝突を必要とせず、これにより腐食やコストのかかる配置を避けることができる。本発明はさらに、下部ハウジング250に対するノズルサブアセンブリ201[カバープレート251とそれに連動したキャリッジ(存在する場合)を含めて]の調整を可能にする。下部ハウジング250に対するノズルサブアセンブリ201の軸方向移動は、サブアセンブリ201の軸方向位置を調整するための機械的手段(図示せず)によって達成される。これらの機械的手段は一般に、サブアセンブリが取り付けられるシャフト、およびこのシャフトを置き換えるための手段を含む。下部ハウジングに関してサブアセンブリを調整することで、下部ハウジング250に隣接した外側ダクト203の寸法が、したがってこのダクトを通る流量が変わる。これにより、生じる反応に対する調整手段が得られる。移動可能なサブアセンブリを組み込んだ実施態様の利点は、最も外側のジェットの流れに対する断面エリアのオンライン調整機能(on-line adjustability)にある。オンライン調整機能とは、進行中のプロセスを過度に妨げることなく調整できる能力を表わしている。工業規模のプロセスにおいては、オンライン調整機能により、ノズルの頻繁な調整(例えば、ノズルの最も外側の排出箇所における、最大圧力降下または流量に関して)が可能となる。他の利点は、工業プロセスのターンダウン能力(turn-down capability)が改良されることにある。こうした調整機能により、幾つかのプロセスに対してより広い範囲の操作速度が可能となる。他の利点は、ノズルアセンブリを取り付けた状態で、その全移動通路にわたって下部ハウジング250に関してサブアセンブリをストロークできることにある。工業規模のミキサーアセンブリは、くずや固体堆積物で詰まりを起こすことがある。下部ハウジング250上のサブアセンブリ201をストロークすることで、最も外側のダクト中に留まっているくずや堆積物を掻き落とすことができる(このとき、このダクト位置に歯は存在していない)。
【0021】
本発明のノズルアセンブリは、製造および取り付けが簡単である。その製造のためのプロセスの1つは、ワイヤ放電加工によるものであり、これは広く利用されている技術である。本発明の装置のノズルサブアセンブリを製造するためのプロセスは一般に、(a)予備成形物を供給する工程;および(b)前記予備成形物をワイヤ放電加工する工程;を含む。ハウジングは、従来の機械加工法を使用して製造することができる。1つのさらなる利点は、連続的に移動または回転する部分がないという点にあり、したがってシステムのいかなる機械的摩耗も避けられる。
【0022】
本発明は、速やかな混合が非常に重要であるような極めて速い化学反応に対して特に有用である。したがって本発明は、イソシアネートを製造するための予備ホスゲン化反応器として有用である。本実施態様においては、内側通路を通って流れる流体は第一アミンであり、必要に応じて溶媒中に溶解される。本実施態様においては、外側通路を通って流れる流体はホスゲンであり、必要に応じて溶媒中に溶解される。したがって本発明は、種々のイソシアネート(例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、およびアリール脂肪族ポイイソシアネートなど)の製造に対して有用である。
【0023】
本発明のノズルアセンブリにより、反応において使用される過剰のホスゲンを最小限に抑えること、より高いブレンド濃度(blend strength)を有すること、あるいはより高い生産量をもたらすことが可能となる。ブレンド濃度とは、ノズルへのアミン供給物を構成している溶媒とアミンの混合物中のアミンの濃度を表わしている。
【0024】
公知の方法のように、溶媒、ホスゲン、およびイソシアネートを含んだ溶液を、単独または組み合わせて、ホスゲン流れ中に再循環させることができる。ある実施態様においては、この溶液を再循環させないのが好ましい。
【0025】
具体的には、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)(例えば、2,4’-異性体、2,2’-異性体、4,4’-異性体、およびこれらの混合物の形態にて);2より大きいイソシアネート官能価を有する、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)とそれらのオリゴマー(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)との混合物(当業界では、“クルード”MDIまたはポリメリックMDIとして知られている);トルエンジイソシアネート(TDI)(例えば、2,4-異性体、2,6-異性体、およびこれらの混合物の形態にて);1,5-ナフタレンジイソシアネート;および1,4-ジイソシアナートベンゼン(PPDI);等の芳香族ポリイソシアネートが生産される。得ることができる他の有機ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,6-ジイソシアナートヘキサン、および4,4’-ジイソシアナートジシクロ-ヘキシルメタン(HMDI)などがある。生産することができるさらに他のイソシアネートとしては、キシレンジイソシアネートやフェニルイソシアネートがある。
【0026】
必要であれば、本発明のノズルアセンブリの形状を、製造される個別のイソシアネートに適合させることができる。通常の試験を行うことで、当業者は、隙間や長さに対する最適値、ならびに操作条件を明確に定めることができる。
【0027】
本発明のノズルアセンブリは、標準的な連続攪拌タンク反応器(バッフルがある場合と、ない場合)において使用することができる。本発明のノズルアセンブリは、気相空間中に存在していても、あるいは液中に浸漬されてもよい。本発明のノズルアセンブリは、最小の適合化で、現行のあらゆる装置に対して使用することができ、そのため、費用を節約することができる。本発明のノズルアセンブリはさらに、任意のタイプの反応器に対しても使用することができる。例えば、ノズルアセンブリを、インペラー及びバッフルを装備した回転型反応器の底部に取り付けることができ、また、ノズルアセンブリをローター/ステータ型反応器における注入デバイスとして使用することができる。
【0028】
プロセス条件は、一般的に使用されているような条件である。ホスゲン対アミンのモル比は、一般にはホスゲンが過剰となるようなモル比であって、1.1:1〜10:1の範囲であり、好ましくは1.3:1〜5:1の範囲である。アミンとホスゲンに対し、一般には溶媒が使用される。代表的な溶媒は、モノクロロベンゼン(MCB)、o-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、対応するトルエン類、対応するキシレン類、対応するメチルベンゼン類、および対応するナフタレン類等の塩素化アリールおよび塩素化アルキルアリール;ならびに当業界に公知の他の溶媒(例えば、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ケトン、およびエステル);である。アミンのブレンド濃度は5〜40重量%であってよく、ホスゲンの濃度は40〜100%であってよい。アミン流れの温度は、一般には40〜80℃であり、ホスゲン流れの温度は、一般には−20〜0℃である。プロセスは、(混合部において)一般には大気圧〜100psigの圧力にて行われる。
【0029】
反応を完全に進行させるために、1つ以上のさらなる反応器(特にCSTR)を使用することもできる。イソシアネートを製造するためのプロセスにおいては、溶媒および/または過剰のホスゲンを再循環させるための、HClを除去するための、そしてHClを塩素にリサイクルするためなどの一般的なユニットを使用することもできる。
【0030】
説明してきた本発明の好ましい実施態様は代表的なものであって、本発明の範囲を網羅しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、従来の単純な同軸ジェットミキサーノズルアセンブリの軸方向断面図である。
【図2】図2は、本発明のノズルサブアセンブリの軸方向断面図である。
【図3】図3は、本発明のノズルサブアセンブリの底部拡大図である。
【図4】図4は、本発明のノズルサブアセンブリの上部拡大図である。
【図5】図5は、本発明のノズルの軸方向断面図である。
【図6】図6A、6B、6C及び6Dは、本発明のさらなる実施態様である。
【図7】図7は、本発明のノズルサブアセンブリの、さらなる実施態様の軸方向断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のフローチャンバーを画定する第1のフローダクトを含んでいて、第1の排出開口を有する第1のノズルチップを有する第1のノズル;および
(b)第2のフローチャンバーを画定する第2のフローダクトを含んでいて、第2の排出開口を有する第2のノズルチップを有する第2のノズル;
を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための装置であって、
ここで、前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが、互いに螺旋状に包まれており;
前記装置の操作時において、第1のフローチャンバー中に流入し、第1の排出開口を通って出て行く第1の流体が第1の流体ジェットを形成し、第2のフローチャンバー中に流入する第2の流体が、第2の排出開口にて第2の流体ジェットを形成し、このとき前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合う、前記装置。
【請求項2】
前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが、アルキメデスの螺旋に従って互いに螺旋状に包まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが、アルキメデスのスパイラルに従って互いに螺旋状に包まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1と第2のノズルが、先細になっている第1と第2のフローダクトを画定している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
テーパー角度が装置の内側から外側に向かって増大している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが互いに螺旋状に包まれていて、これによって1〜20旋回が形成される、請求項1、2、または3に記載の装置。
【請求項7】
1.05〜1.5旋回が形成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
3〜10旋回が形成される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のチャンバーが、第1の排出開口に向かって、第1のフローダクトに沿って実質的に減少していく寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第2のチャンバーが、第2の排出開口に向かって、第2のフローダクトに沿って実質的に減少していく寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のチャンバーが、螺旋状に包まれているダクトの外側から内側に向かって実質的に減少していく寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1または第2のフローチャンバー上に、前記第1または第2の流体をそれぞれ接線方向に供給するための流体カバーをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
実質的に円筒形である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
(a)第1のフローチャンバーを画定する第1のフローダクトを含んでいて、第1の排出開口を有する第1のノズルチップを有する第1のノズル;および
(b)第2のフローチャンバーを画定する第2のフローダクトを含んでいて、第2の排出開口を有する第2のノズルチップを有する第2のノズル;
を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための実質的に円筒形の装置であって、
ここで、前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが、1〜20旋回を有するアルキメデスの螺旋にしたがって互いに螺旋状に包まれていて、そして、前記第1と第2のノズルが先細になっており;
前記装置の操作時において、第1のフローチャンバー中に流入し、第1の排出開口を通って出て行く第1の流体が第1の流体ジェットを形成し、第2のフローチャンバー中に流入する第2の流体が、第2の排出開口にて第2の流体ジェットを形成し、このとき前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合う、前記装置。
【請求項15】
前記第1と第2のノズルが、先細になっている第1と第2のフローダクトを画定していて、テーパー角度が装置の内側から外側に向かって増大している、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが互いに螺旋状に包まれていて、これによって1.05〜1.5旋回が形成される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記第1のフローダクトと前記第2のフローダクトが互いに螺旋状に包まれていて、これによって3〜10旋回が形成される、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記第1と第2のチャンバーがそれぞれ、第1と第2の排出開口に向かって、第1と第2のフローダクトに沿って実質的に減少していく寸法を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記第2のチャンバーが、螺旋状に包まれているダクトの外側から内側に向かって実質的に減少していく寸法を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の排出開口と前記第2の排出開口が、前記排出開口のそれぞれの寸法を実質的に超えない厚さを有する壁体によって隔離されている、請求項14に記載の装置。
【請求項21】
前記第1または第2のフローチャンバー上に、前記第1または第2の流体をそれぞれ接線方向に供給するための流体カバーをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項22】
(a)第1の流体からなる第1の流体ジェットを第1の排出ポジションにおいて形成させる工程;
(b)第2の流体からなる第2の流体ジェットを第2の排出ポジションにおいて形成させる工程;および
(c)前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合うよう、それぞれの流体ジェットを互いに螺旋状に包む工程;
を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための方法。
【請求項23】
それぞれの流体ジェットを螺旋状に包む前記工程がアルキメデスの螺旋にしたがって行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
それぞれの流体ジェットを螺旋状に包む前記工程がアルキメデスのスパイラルにしたがって行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
それぞれの流体ジェットを螺旋状に包む前記工程が1〜20旋回を形成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の流体ジェットと前記第2の流体ジェットを渦巻き状にする、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
第1の流体がアミンを含んで、第2の流体がホスゲンを含むか、あるいは第1の流体がホスゲンを含んで、第2の流体がアミンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
(a)第1の流体からなる第1の流体ジェットを第1の排出ポジションにおいて形成させる工程;
(b)第2の流体からなる第2の流体ジェットを第2の排出ポジションにおいて形成させる工程;および
(c)前記第1と第2の流体ジェットが互いに衝突し、これによって第1と第2の流体が混ざり合うよう、1〜20旋回を有するアルキメデスの螺旋に従ってそれぞれの流体ジェットを互いに螺旋状に包む工程;
を含む、少なくとも第1と第2の流体を混合するための方法。
【請求項29】
前記アルキメデスのスパイラルが1.05〜1.5旋回を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アルキメデスのスパイラルが3〜10旋回を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の流体ジェットと前記第2の流体ジェットを渦巻き状にする、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
第1の流体がアミンを含んで、第2の流体がホスゲンを含むか、あるいは第1の流体がホスゲンを含んで、第2の流体がアミンを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
請求項27に記載の混合方法に次いで、混合されたアミンとホスゲンとを反応させる工程を含む、イソシアネートを製造するための方法。
【請求項34】
請求項32に記載の混合方法に次いで、混合されたアミンとホスゲンとを反応させる工程を含む、イソシアネートを製造するための方法。
【請求項35】
メチレンジフェニルジイソシアネートとそのポリマー変性体、トルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシレンジイソシアネート、フェニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、および4,4’-ジイソシアネートジシクロ-ヘキシルメタンからなる群から選択されるイソシアネートを製造するための、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
メチレンジフェニルジイソシアネートとそのポリマー変性体、トルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシレンジイソシアネート、フェニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、および4,4’-ジイソシアネートジシクロ-ヘキシルメタンからなる群から選択されるイソシアネートを製造するための、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
歯を備えた可動性キャリッジからなる洗浄用デバイスをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項38】
ノズルサブアセンブリのボディ部分が湾曲形状物に変更されている、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−534273(P2008−534273A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504722(P2008−504722)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060488
【国際公開番号】WO2006/108740
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】