説明

スパイラル型膜濾過装置及び取付部材、並びに、これを用いた膜濾過装置管理システム及び膜濾過装置管理方法

【課題】電気部品の再利用が可能なスパイラル型膜濾過装置及び取付部材、並びに、これを用いた膜濾過装置管理システム及び膜濾過装置管理方法を提供する。
【解決手段】膜エレメントに対して着脱可能な取付部材であるインターコネクタ42に、膜濾過装置内を流れる原水や透過水などの液体の性状を検知するセンサ又は発電部26を設ける。これにより、膜エレメントを交換する場合であっても、インターコネクタ42を新しい膜エレメントに付け替えることにより、センサ又は発電部26を再利用することができる。また、膜エレメントには変更を加える必要がないので、従来の膜エレメントをそのまま使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントを備えたスパイラル型膜濾過装置及び取付部材、並びに、これを用いた膜濾過装置管理システム及び膜濾過装置管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記スパイラル型膜エレメント(以下、単に「膜エレメント」という。)を一直線上に複数配置するとともに、隣接する膜エレメントの上記中心管同士をインターコネクタ(連結部)で連結することにより構成されるスパイラル型膜濾過装置(以下、単に「膜濾過装置」という。)が知られている。このようにして連結された複数の膜エレメントは、例えば樹脂により形成された外筒内に収容され、1本の膜濾過装置として取り扱われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の膜濾過装置は、一般的に、排水や海水などの原水(原液)を濾過して、浄化された透過水(透過液)を得るために用いられる。特に大型のプラントなどでは、多数本の膜濾過装置がトレーンと呼ばれるラックで保持されることにより、トレーンごとに処理特性(圧力、透過水の水質及び水量など)の管理が行われている。
【0004】
しかしながら、上記のようにトレーンごとに処理特性の管理を行う場合には、トレーンにより保持されている多数本の膜濾過装置のうち、一部の膜濾過装置における膜エレメント又は連結部にのみ不具合がある場合に、その不具合箇所を特定することが困難であり、当該特定作業に多大な労力かかるという問題があった。
【0005】
また、上記のように複数の膜エレメントを備えた膜濾過装置がトレーンにより多数本保持された構成では、トレーンにおける各膜濾過装置の位置、又は、各膜濾過装置内における各膜エレメントの位置に応じて、分離膜の汚染具合及び当該分離膜により原液が濾過される際の負荷が異なる。そのため、膜エレメントを交換する際には、新しい膜エレメントと、まだ使用可能な膜エレメントを適宜に組み合わせて外筒内に収容することにより、最終的にトレーン全体で最適な処理性能を発揮できるように、各膜エレメントの配置及び組み合わせの最適化を行っている。しかしながら、現状では、使用期間のみに基づいて最適化を行っているため、十分に最適化が行われているとは言えない。
【0006】
さらに、膜エレメントの洗浄や交換といったメンテナンスを行うか否かの判断は、トレーンごとの処理特性に基づいて行われるため、膜エレメントによっては、その位置や使用期間によりメンテナンスが必ずしも適切に行われているとは言えない場合がある。すなわち、場合によっては、いずれかの膜エレメントがメンテナンスを行うには手遅れの状態となっていたり、又は、必要以上に早い段階でメンテナンスが行われていたりする場合があった。
【0007】
上記のような問題に対し、上記特許文献1に開示されているような技術を用いれば、膜エレメントごとに、その膜エレメントに備えられた無線タグ(RFIDタグ)に上記処理特性に関するデータを予め格納しておき、各無線タグからデータを読み出すことにより、膜エレメントごとに上記処理特性の管理を行うことが可能である。しかし、このような無線タグに予め格納されているデータのみに基づいて管理を行う場合であっても、各膜エレメントの状態は時々刻々と変化するため、管理の精度が十分であるとは言えず、各膜エレメントの状態をリアルタイムで検知することができれば、より精度よく管理を行うことが可能である。
【0008】
そこで、センサなどを用いて各膜エレメントの状態をリアルタイムで検知する方法も知られており(例えば、特許文献2参照)、当該特許文献2では、無線タグを用いてセンサに電力を供給する構成や、バッテリからセンサに電力を供給する構成などが開示されている。上記バッテリは充電可能であり、無線タグを用いて充電を行うことも可能である。
【0009】
【特許文献1】特表2007−527318号公報
【特許文献2】国際公開第2007/030647号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のようなセンサなどの電気部品を膜エレメントに直接取り付けた場合、膜エレメントは、ある程度汚染された時点で新しい膜エレメントと交換されるため、その際に当該電気部品も一緒に交換されることとなる。したがって、まだ使用可能な電気部品が交換されることとなるため、無駄なコストがかかるといった問題がある。
【0011】
また、上記の方法は、センサなどを用いて各膜エレメントの状態を検知して、交換の必要性の有無を判断するものであるため、各膜エレメントにおける状態の変化は確認できるものの、その変化の原因まで特定することは困難である。例えば、いずれかの膜エレメントにおいて透過水や原水など液体の性状に変化が生じた場合であっても、その原因は、増殖した微生物が膜に付着することによって発生するバイオファウリングによるものである場合もあれば、上記液体が濃縮されることにより析出した塩類が膜に付着することによって発生するスケールによるものである場合もある。
【0012】
したがって、たとえ各膜エレメントにおける状態の変化を確認することができたとしても、その変化の原因に応じて行うべきメンテナンスの方法も異なるため、当該原因を特定することができなければメンテナンスを良好に行うことができない。また、上記原因の特定を誤った場合には、メンテナンスを行っても良好な効果が得られないだけでなく、かえって各膜エレメントの寿命を短縮してしまうなどの問題が生じるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電気部品の再利用が可能なスパイラル型膜濾過装置及び取付部材、並びに、これを用いた膜濾過装置管理システム及び膜濾過装置管理方法を提供することを目的とする。また、本発明は、スパイラル型膜濾過装置をより精度よく管理することができるスパイラル型膜濾過装置及び取付部材、並びに、これを用いた膜濾過装置管理システム及び膜濾過装置管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントを備えたスパイラル型膜濾過装置であって、上記スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材と、上記取付部材に設けられ、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の性状を検知するセンサとを備えたことを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材に、スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の性状を検知するセンサが設けられているので、スパイラル型膜エレメントを交換する場合であっても、取付部材を新しいスパイラル型膜エレメントに付け替えることにより、センサを再利用することができる。また、スパイラル型膜エレメントには変更を加える必要がないので、従来のスパイラル型膜エレメントをそのまま使用することができる。
【0016】
第2の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記取付部材が、複数の上記スパイラル型膜エレメントの上記中心管同士を連結するインターコネクタであることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、複数のスパイラル型膜エレメントの中心管同士を連結するインターコネクタに、センサ又は発電部などの電気部品が設けられているので、スパイラル型膜エレメントを交換する場合であっても、インターコネクタを新しいスパイラル型膜エレメントに付け替えることにより、当該電気部品を再利用することができる。
【0018】
第3の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記センサを用いて発電を行う発電部を備えたことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の性状を検知するセンサを用いて発電部で発電を行うことによって、より多くの電力を確保することができる。発電部から供給される電力は、スパイラル型膜濾過装置に備えられている各部に供給することができる。上記各部には、上記センサが含まれていてもよいし、スパイラル型膜濾過装置に備えられている他のセンサ又はセンサ以外の電気部品が含まれていてもよい。
【0020】
第4の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記センサが、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の流圧により回転する回転体を備え、上記発電部が、上記回転体の回転に基づいて発電を行うことを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内を液体が流れているときに、センサに備えられた回転体が液体の流圧により回転し、その回転に基づいて発電部で発電が行われる。したがって、センサに備えられた回転体を利用して、効率よく発電を行うことができる。
【0022】
第5の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記センサが、上記回転体の回転数に基づいて上記液体の流量を検知する流量センサであることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内を液体が流れているときに、流量センサに備えられた回転体が液体の流圧で回転することにより、その回転数に基づいて当該流量センサで液体の流量を検知することができるとともに、回転体の回転に基づいて発電部で発電を行うことができる。したがって、流体センサに備えられた回転体を利用して、効率よく発電を行うことができる。
【0024】
第6の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントを複数備えたスパイラル型膜濾過装置であって、上記スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材と、上記取付部材に設けられた発電部とを備えたことを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材に、発電部が設けられているので、スパイラル型膜エレメントを交換する場合であっても、取付部材を新しいスパイラル型膜エレメントに付け替えることにより、発電部を再利用することができる。また、スパイラル型膜エレメントには変更を加える必要がないので、従来のスパイラル型膜エレメントをそのまま使用することができる。
【0026】
また、発電部で発電を行うことによって、より多くの電力を確保することができる。発電部から供給される電力は、スパイラル型膜濾過装置に備えられている各部に供給することができる。上記各部には、上記センサが含まれていてもよいし、スパイラル型膜濾過装置に備えられている他のセンサ又はセンサ以外の電気部品が含まれていてもよい。
【0027】
第7の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記発電部が、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の流圧により発電を行うことを特徴とする。
【0028】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内を液体が流れているときに、当該液体の流圧により効率よく発電を行うことができる。
【0029】
第8の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の流圧により回転する回転体を備え、上記発電部が、上記回転体の回転に基づいて発電を行うことを特徴とする。
【0030】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内を液体が流れているときに、当該液体の流圧により回転体が回転し、その回転に基づいて発電部で発電が行われる。したがって、スパイラル型膜濾過装置内に回転体を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。
【0031】
第9の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記回転体の回転数に基づいて上記液体の流量を検知する流量センサを備えたことを特徴とする。
【0032】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内を液体が流れているときに、流量センサに備えられた回転体が液体の流圧で回転することにより、その回転数に基づいて当該流量センサで液体の流量を検知することができるとともに、回転体の回転に基づいて発電部で発電を行うことができる。したがって、流体センサに備えられた回転体を利用して、効率よく発電を行うことができる。
【0033】
第10の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記発電部から供給される電力を蓄積する蓄電部を備えたことを特徴とする。
【0034】
このような構成によれば、発電部から供給される電力を蓄電部に蓄積しておくことができるので、さらに多くの電力を確保することができ、当該電力を用いてスパイラル型膜濾過装置に備えられている各部を動作させることができる。
【0035】
第11の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記スパイラル型膜エレメントに取り付けられた無線タグを備えたことを特徴とする。
【0036】
このような構成によれば、無線タグにデータを予め格納しておき、当該データを外部から読み出すことにより、スパイラル型膜エレメントの処理特性の管理を行うことができる。したがって、無線タグに格納されているデータと、上記センサなどの各部で得られるデータとに基づいて、より精度よく管理を行うことができる。
【0037】
第12の本発明に係る取付部材は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材であって、センサ又は発電部を備えたことを特徴とする。
【0038】
このような構成によれば、スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材に、センサ又は発電部が設けられているので、スパイラル型膜エレメントを交換する場合であっても、取付部材を新しいスパイラル型膜エレメントに付け替えることにより、センサ又は発電部を再利用することができる。また、スパイラル型膜エレメントには変更を加える必要がないので、従来のスパイラル型膜エレメントをそのまま使用することができる。
【0039】
第13の本発明に係る膜濾過装置管理システムは、上記スパイラル型膜濾過装置において軸線方向に複数並べて設けられた上記スパイラル型膜エレメントを管理するための膜濾過装置管理システムであって、上記センサからデータを取得するデータ取得手段と、上記スパイラル型膜エレメントの軸線方向に沿った位置と、上記センサから得られる基準値との相関関係を表す比較データを予め記憶している比較データ記憶手段と、上記データ取得手段により取得したデータを上記比較データと比較するデータ比較手段とを備えたことを特徴とする。
【0040】
このような構成によれば、センサを備えた取付部材が、軸線方向に並べて設けられた複数のスパイラル型膜エレメントにそれぞれ取り付けられるので、これらのセンサから取得したデータと、当該センサを備えた取付部材が取り付けられているスパイラル型膜エレメントのスパイラル型膜濾過装置内における軸線方向の各位置とが対応付けられたデータを得ることができる。このようにして得られるデータを比較データと比較することにより、スパイラル型膜濾過装置内に生じる変化の原因をより明確に特定し、その原因に応じて適切なメンテナンスを行うことができるので、スパイラル型膜濾過装置をより精度よく管理することができる。
【0041】
第14の本発明に係る膜濾過装置管理システムは、上記データ比較手段による比較結果に基づいて、上記スパイラル型膜濾過装置の運転に関する指示信号を出力する指示信号出力手段を備えたことを特徴とする。
【0042】
このような構成によれば、スパイラル型膜濾過装置内に生じる変化の原因をより明確に特定し、その原因に応じた指示信号を出力することができるので、より適切なメンテナンスを行うことができ、スパイラル型膜濾過装置をより精度よく管理することができる。
【0043】
第15の本発明に係る膜濾過装置管理方法は、上記スパイラル型膜濾過装置において軸線方向に複数並べて設けられた上記スパイラル型膜エレメントを管理するための膜濾過装置管理方法であって、上記センサからデータを取得するデータ取得ステップと、上記データ取得ステップにより取得したデータを、上記スパイラル型膜エレメントの軸線方向に沿った位置と、上記センサから得られる基準値との相関関係を表す比較データと比較するデータ比較ステップとを備えたことを特徴とする。
【0044】
このような構成によれば、第13の本発明に係る濾過装置管理システムと同様の効果を奏する膜濾過装置管理方法を提供することができる。
【0045】
第16の本発明に係る膜濾過装置管理方法は、上記データ比較ステップによる比較結果に基づいて、上記スパイラル型膜濾過装置の運転に関する指示信号を出力する指示信号出力ステップを備えたことを特徴とする。
【0046】
このような構成によれば、第14の本発明に係る濾過装置管理システムと同様の効果を奏する膜濾過装置管理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材に、センサ又は発電部が設けられているので、スパイラル型膜エレメントを交換する場合であっても、取付部材を新しいスパイラル型膜エレメントに付け替えることにより、センサ又は発電部を再利用することができる。また、本発明によれば、スパイラル型膜濾過装置内に生じる変化の原因をより明確に特定し、その原因に応じて適切なメンテナンスを行うことができるので、スパイラル型膜濾過装置をより精度よく管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るスパイラル型膜濾過装置50の一例を示した概略断面図である。また、図2は、図1のスパイラル型膜エレメント10の内部構成を示した斜視図である。このスパイラル型膜濾過装置50(以下、単に「膜濾過装置50」という。)は、スパイラル型膜エレメント(以下、単に「膜エレメント10」という。)を外筒40内に一直線上に複数配置することにより構成されている。
【0049】
外筒40は、耐圧ベッセルと呼ばれる樹脂製の筒体であり、例えばFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)により形成される。外筒40の一端部には、排水や海水などの原水(原液)が流入する原水流入口48が形成されており、当該原水流入口48から流入する原水が複数の膜エレメント10で濾過されることにより、浄化された透過水(透過液)と、濾過後の原水である濃縮水(濃縮液)とが得られる。外筒40の他端部には、透過水が流出する透過水流出口46と、濃縮水が流出する濃縮水流出口44とが形成されている。
【0050】
図2に示すように、膜エレメント10は、分離膜12と供給側流路材18と透過側流路材14とが積層された状態で中心管20の周囲にスパイラル状に巻回されることにより形成されたRO(Reverse Osmosis:逆浸透)エレメントである。
【0051】
より具体的には、樹脂製の網状部材からなる矩形形状の透過側流路材14の両面に、同一の矩形形状からなる分離膜12が重ね合わせられるとともに、その3辺が接着されることにより、1辺に開口部を有する袋状の膜部材16が形成される。そして、この膜部材16の開口部が中心管20の外周面に取り付けられ、樹脂製の網状部材からなる供給側流路材18とともに中心管20の周囲に巻回されることにより、上記膜エレメント10が形成される。上記分離膜12は、例えば不織布層上に多孔性支持体及びスキン層(緻密層)が順次に積層されることにより形成される。
【0052】
上記のようにして形成された膜エレメント10の一端側から原水を供給すると、原水スペーサとして機能する供給側流路材18により形成された原水流路を介して、膜エレメント10内を原水が通過する。その際、原水が分離膜12により濾過され、原水から濾過された透過水が、透過水スペーサとして機能する透過側流路材14により形成された透過水流路内に浸透する。
【0053】
その後、透過水流路内に浸透した透過水が、当該透過水流路を通って中心管20側に流れ、中心管20の外周面に形成された複数の通水孔(図示せず)から中心管20内に導かれる。これにより、膜エレメント10の他端側から、中心管20を介して透過水が流出するとともに、供給側流路材18により形成された原水流路を介して濃縮水が流出することとなる。
【0054】
図1に示すように、外筒40内に収容されている複数の膜エレメント10は、隣接する膜エレメント10の中心管20同士が管状のインターコネクタ(連結部)42で連結されている。したがって、原水流入口48から流入した原水は、当該原水流入口48側の膜エレメント10から順に原水流路内に流れ込み、各膜エレメント10で原水から濾過された透過水が、インターコネクタ42により接続された1本の中心管20を介して透過水流出口46から流出する。一方、各膜エレメント10の原水流路を通過することにより透過水が濾過されて濃縮された濃縮水は、濃縮水流出口44から流出する。インターコネクタ42としては、ABS、塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル等の樹脂製や、ステンレス等の金属製のものを用いることができるが、センサを取り付ける際の加工のしやすさや、着脱の容易性の観点から、樹脂製が好ましい。
【0055】
図3は、インターコネクタ42の内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。この例では、インターコネクタ42内に、当該インターコネクタ42内を流れる透過水の流圧により回転する回転体としての羽根車21が設けられている。ただし、上記回転体は、羽根車21に限らず、各種形状のものを採用することができる。インターコネクタ42は、膜エレメント10の中心管20に対して着脱可能な取付部材を構成している。
【0056】
インターコネクタ42内には、その中心軸線に沿って主軸22が配置されており、当該主軸22の両端部がインターコネクタ42の両端部において保持部23により保持されている。保持部23は、インターコネクタ42の中心軸線に対して放射状に延びる複数本の棒材からなり、これらの棒材間の空間が透過水を流通させるための通水口24を形成している。
【0057】
羽根車21は、それぞれの先端部がインターコネクタ42の内周面に近接する位置まで延びる複数枚の羽根21aを有している。したがって、インターコネクタ42の一端部の通水口24を介してインターコネクタ42内に流入した透過水が、羽根車21の羽根21aに接触しながらインターコネクタ42内を流通し、当該インターコネクタ42の他端部の通水口24から流出することにより、羽根21aに作用する透過水の流圧によって羽根車21が回転するようになっている。
【0058】
インターコネクタ42における羽根車21の周囲には、金属線が巻回されることによりコイル25が形成されている。また、羽根車21の各羽根21aの先端部には、磁石(図示せず)が取り付けられている。このような構成により、羽根車21が回転すると、コイル25の周囲で上記磁石により形成される磁界が変化し、いわゆる電磁誘導によってコイル25に誘導電流が流れるようになっている。すなわち、羽根車21に取り付けられた磁石及びコイル25は、羽根車21の回転に基づいて発電を行う発電部26を構成している。
【0059】
図4は、図1のスパイラル型膜濾過装置50の電気的構成を示したブロック図である。この膜濾過装置50は、上記コイル25の他に、AC/DCコンバータ30、バッテリ31、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、圧力センサ39、通信部36及びRFIDタグ37などを備えている。
【0060】
膜濾過装置50に備えられた上記各部のうち、コイル25、AC/DCコンバータ30、バッテリ31、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、圧力センサ39及び通信部36は、インターコネクタ42に取り付けられている。インターコネクタ42に取り付けられた流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34及び汚染検知センサ35を用いて、インターコネクタ42内を通過する透過水の性状を検知することができる。このような構成によれば、センサの端子が汚れにくく、検知精度の安定を保つことができる。また、原水のように安定しにくい水質を検知する必要がないため、センサの感度を必要な範囲に限定することができる。また、膜を透過した直後における膜エレメント10毎の水質を検知することができるので、膜エレメント10毎の膜の異常や性能を確認することができる。また、センサのみに異常が生じた場合でも、高価な膜エレメント10ごと交換する必要がなく、取り替えが安価かつ容易である。一方、RFIDタグ37は、膜エレメント10の外周面を形成する膜部材16に取り付けられている。ただし、このような構成に限らず、AC/DCコンバータ30、バッテリ31及び通信部36などが、膜濾過装置50におけるインターコネクタ42以外の部分、例えば膜エレメント10の中心管20又は外筒40などに取り付けられた構成であってもよい。
【0061】
また、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35及び圧力センサ39などの各種センサのうちの少なくとも一つ又は発電部26が、膜濾過装置50におけるインターコネクタ42以外の部分、例えば膜エレメント10の中心管20又は外筒40などに取り付けられた構成であってもよい。さらに、RFIDタグ37が、膜エレメント10における膜部材16以外の部分、例えば中心管20などに取り付けられた構成であってもよい。
【0062】
コイル25に発生する誘導電流は、AC/DCコンバータ30により交流(AC)電流から直流(DC)電流に変換され、バッテリ31に供給される。バッテリ31は二次電池からなり、AC/DCコンバータ30を介して発電部26から供給される電力を蓄積する蓄電部を構成している。バッテリ31に蓄積された電力は、当該膜濾過装置50に備えられた流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34及び汚染検知センサ35といった各種センサの他、通信部36などの他の電気部品にも供給される。上記他の電気部品には、例えばGPS(Global Positioning System)などの位置検知部が含まれていてもよい。なお、バッテリ31に蓄積された電力は、電極などにより構成される電力出力部から、外部に出力することができるようになっていてもよい。
【0063】
流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34及び汚染検知センサ35は、それぞれインターコネクタ42内を流れる透過水の性状を検知するセンサであり、インターコネクタ42の内側に設けられている。より具体的には、流量センサ32は、上記羽根車21を含む構成であって、当該羽根車21の回転数に基づいて、インターコネクタ42内を流れる透過水の流量を検知する。言い換えれば、羽根車21に取り付けられた磁石及びコイル25により構成される発電部26は、流量センサ32の羽根車21を用いて発電を行うものである。
【0064】
このような構成によれば、インターコネクタ42内を透過水が流れているときに、流量センサ32に備えられた羽根車21が透過水の流圧で回転することにより、その回転数に基づいて当該流量センサ32で透過水の流量を検知することができるとともに、羽根車21の回転に基づいて発電部26で発電を行うことができる。したがって、流量センサ32に備えられた羽根車21を利用して、効率よく発電を行うことができる。
【0065】
電導度センサ33は、インターコネクタ42内を流れる透過水の電導度を検知するセンサである。温度センサ34は、インターコネクタ42内を流れる透過水の温度を検知するセンサであり、例えば熱電対により構成することができる。汚染検知センサ35は、インターコネクタ42内を流れる透過水の汚染状態を検知するセンサである。圧力センサ39は、インターコネクタ42の外側に設けられ、インターコネクタ42の外側(後述する空間27)を流れる原水の圧力を検知するセンサであり、例えば圧電素子や歪みゲージなどにより構成することができる。ただし、インターコネクタ42などの取付部材に取り付けられるセンサは、上記センサに限定されるものではなく、膜濾過装置50内を流れる液体の性状を検知するセンサであれば、その特性に応じて、公知の物理センサ、化学センサ、スマートセンサ(情報処理機能付きセンサ)などの区別なく用いることができる。なお、インターコネクタ42などの取付部材に取り付けられるセンサにより検知される液体の性状としては、例えば流量、圧力、電導度、温度、汚染状況(イオン濃度など)などを挙げることができる。
【0066】
通信部36は、アンテナ36aを有しており、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35及び圧力センサ39などの各種センサからの検知信号を通信装置38へ無線送信する無線送信部を構成している。通信部36のアンテナ36aは、例えばインターコネクタ42に金属線を巻回することにより形成することができる。
【0067】
RFIDタグ37は、データを記憶可能な記憶媒体を備え、電波を用いた非接触通信により、通信装置38との間でデータを送受信することができる無線タグである。このRFIDタグ37は、蓄電部を有するアクティブ型のものであってもよいし、蓄電部を有しておらず、通信装置38からの電波に基づいて電磁誘導を生じることにより電力を得るようなパッシブ型のものであってもよい。
【0068】
RFIDタグ37には、当該RFIDタグ37が取り付けられている膜エレメント10に関するデータを記憶することができる。このRFIDタグ37に記憶されるデータとしては、膜エレメント10の位置情報、膜エレメント10の製造履歴、膜エレメント10の性能データ、又は、膜エレメント10のロードマップデータなどが挙げられる。
【0069】
<第2実施形態>
第1実施形態では、インターコネクタ42内に設けられた回転体(羽根車21)の回転に基づいて発電が行われるような構成について説明した。これに対して、第2実施形態では、インターコネクタ42の外側に回転体が設けられている点が異なっている。
【0070】
図5は、本発明の第2実施形態に係るスパイラル型膜濾過装置50におけるスパイラル型膜エレメント10の内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。この例では、インターコネクタ42を挟んで両側に位置する膜エレメント10の端面間に空間27が形成されている。この空間27は、一方の膜エレメント10内における供給側流路材18により形成された原水流路28から、他方の膜エレメント10内の原水流路28へと流れる原水が流通する領域であり、上記原水流路28の一部を構成している。
【0071】
上記空間27内には、インターコネクタ42に対して回転可能に取り付けられた回転体としての羽根車121が配置されている。この羽根車121は、それぞれの先端部が膜エレメント10の外周面に近接する位置まで延びる複数枚の羽根121aを有している。したがって、一方の膜エレメント10内の原水流路28から他方の膜エレメント10内の原水流路28へと流れる原水が、羽根車121の羽根121aに接触しながら空間27内を流通することにより、羽根121aに作用する原水の流圧によって羽根車121が回転するようになっている。
【0072】
インターコネクタ42により連結された各膜エレメント10の一方又は両方における羽根車121の周囲には、金属線が巻回されることによりコイル125が形成されている。また、羽根車121の各羽根121aの先端部には、磁石(図示せず)が取り付けられている。このような構成により、羽根車121が回転すると、コイル125の周囲で上記磁石により形成される磁界が変化し、いわゆる電磁誘導によってコイル125に誘導電流が流れるようになっている。すなわち、羽根車121に取り付けられた磁石及びコイル125は、羽根車121の回転に基づいて発電を行う発電部126を構成している。
【0073】
このような構成によれば、原水流路28内を原水が流れているときに、羽根車121が原水の流圧で回転し、その回転に基づいて発電部126で発電がおこなわれる。したがって、インターコネクタ42の外側に羽根車121を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。ただし、上記回転体は、羽根車121に限らず、各種形状のものを採用することができる。
【0074】
なお、本実施形態における膜濾過装置50の電気的構成は、図4を用いて説明した第1実施形態に係る膜濾過装置50の電気的構成と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略することとする。
【0075】
以上の実施形態では、膜エレメント10に対して着脱可能なインターコネクタ42に、膜濾過装置50内を流れる原水や透過水などの液体の性状を検知するセンサ(例えば、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、圧力センサ39など)、又は、発電部26,126が設けられているので、膜エレメント10を交換する場合であっても、インターコネクタ42を新しい膜エレメント10に付け替えることにより、センサ又は発電部を再利用することができる。また、膜エレメント10には変更を加える必要がないので、従来の膜エレメント10をそのまま使用することができる。
【0076】
また、以上の実施形態では、発電部26,126で発電を行うことによって、より多くの電力を確保することができる。特に、発電部26,126から供給される電力をバッテリ31に蓄積しておくことができるので、さらに多くの電力を確保することができ、当該電力を用いて膜濾過装置50に備えられている各部を動作させることができる。なお、一般的に、原水流路28内を流れる原水は、中心管20内を流れる透過水よりも流圧が大きいため、第2実施形態のように原水流路28内に羽根車121を設けることによって、第1実施形態の場合よりも効率よく発電を行うことができる。
【0077】
さらに、以上の実施形態では、膜エレメント10にRFIDタグ37を取り付けることにより、当該RFIDタグ37にデータを予め格納しておき、当該データを外部から読み出すことにより、膜エレメント10の処理特性の管理を行うことができる。したがって、RFIDタグ37に格納されているデータと、上記センサなどの各部で得られるデータとに基づいて、より精度よく管理を行うことができる。
【0078】
以上の実施形態では、羽根車21,121などの流量センサ32に備えられた回転体を用いて発電を行うような構成について説明したが、このような構成に限らず、流量センサ32とは別個に設けられた回転体を用いて発電を行うような構成であってもよいし、回転体以外の他の機構を用いて発電を行うような構成であってもよい。上記他の機構としては、中心管20や原水流路28などの膜濾過装置50内を流れる液体から受ける流圧に応じた電圧を発生する圧電素子や歪みゲージなどを挙げることができる。
【0079】
また、中心管20内や原水流路28内を流れる液体の流圧を用いて発電を行うような構成に限らず、他の態様で発電を行うような構成を採用することも可能である。例えば、中心管20内を流れる透過水中に多数の気泡を発生させることにより、当該気泡のエネルギーを用いて発電を行うことも考えられる。この場合、透過水中に発生する多数の気泡の作用により、透過水の洗浄効果も期待することができる。
【0080】
また、センサ等の電気部品に供給される電力が発電されるような構成に限らず、膜濾過装置50の外部から無線電力供給によって電力が供給されるような構成であってもよい。この場合、例えば外筒40の内周壁に近接する位置に円環状の導電線からなる受電アンテナを設けるとともに、外筒40の外側における上記受電アンテナに対向する位置に円環状の導電線からなる給電アンテナを設けることにより、当該給電アンテナから上記受電アンテナへ所定の周波数帯で電力を無線供給するような構成を採用することができる。
【0081】
また、センサ(例えば、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、圧力センサ39など)や発電部26,126は、インターコネクタ42に取り付けられるような構成に限らず、膜エレメント10に対して着脱可能な他の取付部材に取り付けられるような構成であってもよい。膜エレメント10に対して着脱可能な取付部材としては、膜エレメント10の端部に設けられたシール保持部材、膜エレメント10の中心管20に取り付けられるインターコネクタ42、エレメント外装などを例示できるが、センサを設けた場合のデータ検知の安定性や、取り替えの容易性などの観点から、インターコネクタ42であることが好ましい。
【0082】
さらに、以上の実施形態では、膜濾過装置50を用いて排水や海水などの原水を濾過する場合について説明したが、このような構成に限らず、膜濾過装置50を用いて水以外の原液を濾過するような構成であってもよい。
【0083】
図6は、膜濾過装置50を管理するための膜濾過装置管理システムの一例を示したブロック図である。この膜濾過装置管理システムでは、多数本の膜濾過装置50が備えられた造水装置100により、排水や海水などの原水を濾過して、浄化された透過水を生成することができるとともに、中央監視センターに設けられた管理装置200により、当該造水装置100の管理を行うことができるようになっている。造水装置100には、トレーンと呼ばれるラックが複数設けられており、各トレーンに多数本の膜濾過装置50が保持され、トレーンごとに処理特性の管理が行われる。
【0084】
各センサから出力されるデータは、通信部36を介して通信装置38へ無線送信され、当該通信装置38を介して中央監視センターの管理装置200へ送信される。ただし、各センサからのデータは、通信装置38へ無線送信されるような構成に限らず、各センサが通信装置38に対して配線を介して接続されることにより、有線送信されるような構成であってもよい。
【0085】
造水装置100には、上記膜濾過装置50及び通信装置38の他に、各膜濾過装置50に対するメンテナンスを実行するためのメンテナンス実行部70や、当該造水装置100の状態等に関する各種表示を行うための表示装置80などが備えられている。メンテナンス実行部70には、例えば供給する原水の圧力を調整する圧力バルブ、原水の流量を調整する流量調整バルブ、薬品を投入して膜濾過装置50内を洗浄する薬品洗浄ユニットなどが備えられている。メンテナンス実行部70に備えられている上記各部は、作業者による直接の操作により動作するだけでなく、中央監視センターの管理装置200から通信装置60を介して受信した指示信号に基づいて動作することもできるようになっている。表示装置80は、例えば液晶表示器などにより構成することができる。
【0086】
中央監視センターの管理装置200は、例えばコンピュータからなり、通信部201、データ比較部202、指示信号出力部203及び比較データ記憶部204などが備えられている。通信部201は、造水装置100の通信装置38との間で通信を行う。当該通信は、有線又は無線のいずれであってもよい。当該通信部201は、膜濾過装置50に備えられている各センサからのデータを、通信装置38を介して取得するデータ取得手段を構成している。
【0087】
比較データ記憶部204は、取得した各センサからのデータと比較するための比較データを予め記憶している比較データ記憶手段である。当該比較データは、膜濾過装置50における膜エレメント10の軸線方向に沿った位置と、各センサからそれぞれ得られる基準値との相関関係のデータからなる。例えば、膜濾過装置50における軸線方向に沿って異なる位置に設けられた複数の膜エレメント10について、それらの各位置に、当該膜濾過装置50が正常に動作している状態(メンテナンスを行う必要がない状態)で各膜エレメント10に取り付けられたインターコネクタ42に備えられた各センサから得られるデータを基準値として対応付けることにより、上記比較データを得ることができる。なお、膜エレメント10の位置情報は、上述の通りRFIDタグ37に記憶しておくことができ、当該RFIDタグ37から通信装置38に無線送信することができる。
【0088】
データ比較部202は、膜濾過装置50に備えられている各センサから取得したデータを、比較データ記憶部204に記憶されている比較データと比較するデータ比較手段である。また、指示信号出力部203は、データ比較部202による比較結果に基づいて、膜濾過装置50の運転に関する指示信号を出力する指示信号出力手段である。ただし、上記データ比較部202による判断を作業者が行うような構成であってもよく、この場合、作業者の操作に基づいて上記指示信号が出力されるような構成であってもよい。以下、これらのデータ比較部202及び指示信号出力部203による処理について、より具体的に説明する。
【0089】
比較データとしては、例えば膜濾過装置50が正常に動作している状態で、流量センサ32、電導度センサ33及び圧力センサ39からそれぞれ得られるデータを基準値とした比較データを用いることができる。この場合、流量センサ32により検知される透過水の流量、電導度センサ33により検知される透過水の電導度、及び、圧力センサ39により検知される原水の圧力を比較データと比較することにより、その比較結果に基づいて適切なメンテナンスを行うことができる。
【0090】
なお、膜濾過装置50が正常に動作している状態では、流量センサ32により測定される透過水の流量は、膜濾過装置50内における軸線方向の位置に反比例しており、膜濾過装置50内の上流側から下流側に向かうにつれて減少している。また、電導度センサ33により測定される透過水の電導度は、膜濾過装置50内における軸線方向の位置に関わらずほぼ一定となっている。また、圧力センサ39により測定される原水の圧力は、膜濾過装置50内における軸線方向の位置に比例しており、膜濾過装置50内の上流側から下流側に向かうにつれて減少している。
【0091】
データ比較部202による処理は、各センサから取得されるデータが、比較データに対して所定の範囲内にあるか否かを比較することにより行われる。例えば、膜濾過装置50内において軸線方向のそれぞれ異なる位置に設けられた各流量センサ32により測定される透過水の流量は、それらの各位置に対応する流量の比較データを中心として、それぞれ所定の流量範囲内にあるか否かが比較される。膜濾過装置50内において軸線方向のそれぞれ異なる位置に設けられた各電導度センサ33により測定される透過水の電導度は、それらの各位置に対応する電導度の比較データを中心として、それぞれ所定の電導度範囲内にあるか否かが比較される。膜濾過装置50内において軸線方向のそれぞれ異なる位置に設けられた各圧力センサ39により測定される原水の圧力は、それらの各位置に対応する圧力の比較データを中心として、それぞれ所定の圧力範囲内にあるか否かが比較される。そして、各センサから得られる値が、上記各範囲内にあれば変化がないと判断される一方、上記各範囲よりも小さければ減少し、上記各範囲よりも大きければ増加していると判断される。
【0092】
例えば、軸線方向に並べて設けられた複数の膜エレメント10のうち、透過水の流通方向の上流側端部に配置された膜エレメント10(以下、「上流側膜エレメント10」という。)に対応する流量センサ32により検知される透過水の流量が減少している場合には、バイオファウリングが発生している可能性が高い。
また、上流膜エレメント10に対応する圧力センサ39により検知される原水の圧力が増加している場合にも、バイオファウリングが発生している可能性が高い。
特に、上流膜エレメント10に対応する流量センサ32、圧力センサ39及び電導度センサ33のうち少なくとも2つのセンサにおいて、流量センサ32により検知される透過水の流量が減少し、又は、圧力センサ39により検知される原水の圧力が増加し、又は、電導度センサ33により検知される透過水の電導度に変化がない場合には、バイオファウリングが発生している可能性が特に高い。
【0093】
バイオファウリングは、膜濾過装置50内で微生物が増殖する現象であり、微生物の増殖によって膜濾過装置50の入口付近にぬめりが生じるため、各センサの測定値に上記のような傾向が生じる。上記のようにバイオファウリングが発生している可能性が高い場合には、例えば膜濾過装置50内のアルカリ洗浄を行うべき旨の指示信号が、管理装置200の通信部201から造水装置100の通信装置38へ送信される。造水装置100では、受信した指示信号に基づいて、メンテナンス実行部70に備えられた薬品洗浄ユニットからアルカリ性の洗浄剤が投入されることにより、膜濾過装置50内が洗浄される。
【0094】
ただし、上記のような構成に限らず、受信した指示信号に基づいて、例えば膜濾過装置50内のアルカリ洗浄を行うべき旨が表示装置80に表示され、作業者が当該表示に基づいて作業を行うような構成であってもよい。また、受信した指示信号に基づいて、前処理や日常管理の方法を変更すべき旨が表示装置80に表示されるような構成であってもよい。
【0095】
軸線方向に並べて設けられた複数の膜エレメント10のうち、透過水の流通方向の下流側端部に配置された膜エレメント10(以下、「下流側膜エレメント10」という。)に対応する流量センサ32により検知される透過水の流量が増加している場合には、バイオファウリングが発生しているか、又は、全体的な膜の劣化が発生している可能性が高い。このような場合には、膜劣化物質が流入していないか検証を行い、検証の結果、膜劣化物質が流入していなければ、例えば膜濾過装置50内のアルカリ洗浄を行うべき旨の指示信号が、管理装置200の通信部201から造水装置100の通信装置38へ送信される。造水装置100では、受信した指示信号に基づいて、メンテナンス実行部70に備えられた薬品洗浄ユニットからアルカリ性の洗浄剤が投入されることにより、膜濾過装置50内が洗浄される。
【0096】
ただし、上記のような構成に限らず、受信した指示信号に基づいて、例えば膜濾過装置50内のアルカリ洗浄を行うべき旨が表示装置80に表示され、作業者が当該表示に基づいて作業を行うような構成であってもよい。また、受信した指示信号に基づいて、前処理や日常管理の方法を変更すべき旨が表示装置80に表示されるような構成であってもよい。
【0097】
各膜エレメント10に対応する電導度センサ33により検知される透過水の電導度、又は、各膜エレメント10に対応する流量センサ32により検知される透過水の流量が、軸線方向におけるいずれかの位置から急に増加している場合には、全体的な膜の劣化が発生しているか、又は、その位置よりも上流側における膜エレメント10あるいはインターコネクタ42に異常が発生している可能性が高い。このような場合には、膜劣化物質が流入していないか検証を行い、検証の結果、膜劣化物質が流入していなければ、上記の位置よりも上流側における膜エレメント10の交換、又は、上記の位置よりも上流側におけるインターコネクタ42の確認をすべき旨の信号が、管理装置200の通信部201から造水装置100の通信装置38へ送信される。造水装置100では、受信した指示信号に基づいて、膜エレメント10の交換又はインターコネクタ42の確認などを行うべき旨が位置情報とともに表示装置80に表示され、作業者が当該表示に基づいて作業を行う。
【0098】
ただし、上記のような構成に限らず、受信した指示信号に基づいて、メンテナンス実行部70により、膜エレメント10の交換又はインターコネクタ42の確認などが自動で行われるような構成であってもよい。また、交換用の膜エレメント10を造水装置100へ配送するよう指示する指示信号が、中央監視センターから部材センターへ送信されるような構成であってもよい。
【0099】
上流側膜エレメント10に対応する流量センサ32により検知される透過水の流量が増加している場合には、全体的な膜の劣化が発生しているか、又は、スケールが発生している可能性が高い。スケールは、膜濾過装置50の出口に近づくにつれて原液が濃縮され、原液に含まれる塩類が溶解度を超えた場合に析出するものであり、膜濾過装置50の出口付近に生じやすいことから、各センサの測定値に上記のような傾向が生じる。上記のような場合には、膜劣化物質が流入していないか検証を行い、検証の結果、膜劣化物質が流入していなければ、例えば膜濾過装置50内の酸洗浄を行うべき旨の指示信号が、管理装置200の通信部201から造水装置100の通信装置38へ送信される。造水装置100では、受信した指示信号に基づいて、メンテナンス実行部70に備えられた薬品洗浄ユニットから酸性の洗浄剤が投入されることにより、膜濾過装置50内が洗浄される。
【0100】
ただし、上記のような構成に限らず、受信した指示信号に基づいて、例えば膜濾過装置50内の酸洗浄を行うべき旨が表示装置80に表示され、作業者が当該表示に基づいて作業を行うような構成であってもよい。また、受信した指示信号に基づいて、前処理や日常管理の方法を変更すべき旨が表示装置80に表示されるような構成であってもよいし、回収率(透過水流量/原水流量)の設定値を自動的に低下させることにより当該回収率を最適化するような構成であってもよい。
【0101】
下流側膜エレメント10に対応する流量センサ32により検知される透過水の流量が減少している場合には、スケールが発生している可能性が高い。このような場合には、例えば膜濾過装置50内の酸洗浄を行うべき旨の指示信号が、管理装置200の通信部201から造水装置100の通信装置38へ送信される。造水装置100では、受信した指示信号に基づいて、メンテナンス実行部70に備えられた薬品洗浄ユニットから酸性の洗浄剤が投入されることにより、膜濾過装置50内が洗浄される。
【0102】
ただし、上記のような構成に限らず、受信した指示信号に基づいて、例えば膜濾過装置50内の酸洗浄を行うべき旨が表示装置80に表示され、作業者が当該表示に基づいて作業を行うような構成であってもよい。また、受信した指示信号に基づいて、前処理や日常管理の方法を変更すべき旨が表示装置80に表示されるような構成であってもよいし、回収率(透過水流量/原水流量)の設定値を自動的に低下させることにより当該回収率を最適化するような構成であってもよい。
【0103】
なお、上流側膜エレメント10は、軸線方向に並べて設けられた複数の膜エレメント10のうち、透過水の流通方向の上流側における最端部に配置された膜エレメント10であってもよいし、上流側の最端部から下流側に所定数の範囲内にある膜エレメント10であってもよい。同様に、下流側膜エレメント10は、軸線方向に並べて設けられた複数の膜エレメント10のうち、透過水の流通方向の下流側における最端部に配置された膜エレメント10であってもよいし、下流側の最端部から上流側に所定数の範囲内にある膜エレメント10であってもよい。
【0104】
本実施形態では、センサを備えたインターコネクタ42が、軸線方向に並べて設けられた複数の膜エレメント10にそれぞれ取り付けられるので、これらのセンサから取得したデータと、当該センサを備えたインターコネクタ42が取り付けられている膜エレメント10の膜濾過装置50内における軸線方向の各位置とが対応付けられたデータを得ることができる。このようにして得られるデータを比較データと比較することにより、膜濾過装置50内に生じる変化の原因をより明確に特定し、その原因に応じて適切なメンテナンスを行うことができるので、膜濾過装置50をより精度よく管理することができる。
【0105】
また、本実施形態では、膜濾過装置50内に生じる変化の原因をより明確に特定し、その原因に応じた指示信号を出力することができるので、より適切なメンテナンスを行うことができ、膜濾過装置50をより精度よく管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスパイラル型膜濾過装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】図1のスパイラル型膜エレメントの内部構成を示した斜視図である。
【図3】インターコネクタの内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。
【図4】図1のスパイラル型膜濾過装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るスパイラル型膜濾過装置におけるスパイラル型膜エレメントの内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。
【図6】膜濾過装置を管理するための膜濾過装置管理システムの一例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0107】
10 スパイラル型膜エレメント
12 分離膜
14 透過側流路材
16 膜部材
18 供給側流路材
20 中心管
21 羽根車
25 コイル
26 発電部
27 空間
28 原水流路
31 バッテリ
32 流量センサ
33 電導度センサ
34 温度センサ
35 汚染検知センサ
36 通信部
37 RFIDタグ
38 通信装置
40 外筒
42 インターコネクタ
44 濃縮水流出口
46 透過水流出口
48 原水流入口
50 スパイラル型膜濾過装置
121 羽根車
125 コイル
126 発電部
200 管理装置
202 データ比較部
203 指示信号出力部
204 比較データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントを備えたスパイラル型膜濾過装置であって、
上記スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材と、
上記取付部材に設けられ、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の性状を検知するセンサとを備えたことを特徴とするスパイラル型膜濾過装置。
【請求項2】
上記取付部材が、複数の上記スパイラル型膜エレメントの上記中心管同士を連結するインターコネクタであることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項3】
上記センサを用いて発電を行う発電部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項4】
上記センサが、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の流圧により回転する回転体を備え、
上記発電部が、上記回転体の回転に基づいて発電を行うことを特徴とする請求項3に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項5】
上記センサが、上記回転体の回転数に基づいて上記液体の流量を検知する流量センサであることを特徴とする請求項4に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項6】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントを複数備えたスパイラル型膜濾過装置であって、
上記スパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材と、
上記取付部材に設けられた発電部とを備えたことを特徴とするスパイラル型膜濾過装置。
【請求項7】
上記発電部が、上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の流圧により発電を行うことを特徴とする請求項6に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項8】
上記スパイラル型膜濾過装置内を流れる液体の流圧により回転する回転体を備え、
上記発電部が、上記回転体の回転に基づいて発電を行うことを特徴とする請求項7に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項9】
上記回転体の回転数に基づいて上記液体の流量を検知する流量センサを備えたことを特徴とする請求項8に記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項10】
上記発電部から供給される電力を蓄積する蓄電部を備えたことを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項11】
上記スパイラル型膜エレメントに取り付けられた無線タグを備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のスパイラル型膜濾過装置。
【請求項12】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントに対して着脱可能な取付部材であって、センサ又は発電部を備えたことを特徴とする取付部材。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載のスパイラル型膜濾過装置において軸線方向に複数並べて設けられた上記スパイラル型膜エレメントを管理するための膜濾過装置管理システムであって、
上記センサからデータを取得するデータ取得手段と、
上記スパイラル型膜エレメントの軸線方向に沿った位置と、上記センサから得られる基準値との相関関係を表す比較データを予め記憶している比較データ記憶手段と、
上記データ取得手段により取得したデータを上記比較データと比較するデータ比較手段とを備えたことを特徴とする膜濾過装置管理システム。
【請求項14】
上記データ比較手段による比較結果に基づいて、上記スパイラル型膜濾過装置の運転に関する指示信号を出力する指示信号出力手段を備えたことを特徴とする請求項13に記載の膜濾過装置管理システム。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載のスパイラル型膜濾過装置において軸線方向に複数並べて設けられた上記スパイラル型膜エレメントを管理するための膜濾過装置管理方法であって、
上記センサからデータを取得するデータ取得ステップと、
上記データ取得ステップにより取得したデータを、上記スパイラル型膜エレメントの軸線方向に沿った位置と、上記センサから得られる基準値との相関関係を表す比較データと比較するデータ比較ステップとを備えたことを特徴とする膜濾過装置管理方法。
【請求項16】
上記データ比較ステップによる比較結果に基づいて、上記スパイラル型膜濾過装置の運転に関する指示信号を出力する指示信号出力ステップを備えたことを特徴とする請求項15に記載の膜濾過装置管理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166034(P2009−166034A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319788(P2008−319788)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】