説明

スパイラル鋼管の外面ビード切削方法、切削装置及びスパイラル鋼管の製造方法

【課題】鋼管の本体部分に損傷を与えず、少ない切削負荷で外面ビードを効率良く、安定、且つ円滑に切削可能なスパイラル鋼管の外面ビード切削方法、切削装置及びスパイラル鋼管の製造装置を提供する。
【解決手段】スパイラル鋼管13の外面位置で、スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードに縦回転切削刃12を押し当て、外面ビードを厚み方向に切削する方法である。また、切削装置は、スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードがスパイラル鋼管の最上外面になる位置に、スパイラル鋼管13を挟み、立設した門型フレーム21と、門型フレームの横梁上に載置され、造管進行方向に移動自在な支持部材16と、支持部材に昇降自在に取り付けられ、スパイラル鋼管の外面ビードを厚み方向に切削する縦回転切削刃12と、縦回転切削刃の高さ位置を決める倣いロール17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル鋼管の外面ビード切削方法、切削装置及びスパイラル鋼管の製造方法に係わり、詳しくは、鋼帯を長手方向にスパイラル状に巻いて円筒体を形成し、突き合わせた幅方向端部(継目部ともいう)を溶接して所謂「スパイラル鋼管」を製造するに際し、溶接時に前記継目部の外面に形成される肉の盛り上がり(以下、外面ビードと称する)を切削して、除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外径が400〜1600mmφにもなる大径の鋼管であるスパイラル鋼管は、一般に図5に示すような工程を利用して製造される。すなわち、コイル状に巻かれた広幅鋼帯1をアンコイラー2で巻き戻し、エッジミラー3で幅方向両端部を切削して幅寸法を整えてから、該鋼帯1をロール4で挟みながら、進行方向を変更してスパイラル状に巻くと共に、突き合わせた幅方向端部をサブマージドアーク溶接機5等で溶接して円筒体6とする。そして、該円筒体6は切断機7で所定の長さに切断した後、溶接部分を放射線透過試験等の各種検査を経て製品とされる。
【0003】
かかるスパイラル鋼管は、従来、鋼管杭、鋼管矢板等の土木用材料としての用途が多く、外観に対する要求は低かった。つまり、スパイラル鋼管は、その溶接部に形成されている外面ビードを切削、除去せずに利用されるのが一般的であった。しかしながら、最近、スパイラル鋼管は、別の方法で製造された所謂「UO鋼管」及び「電縫鋼管」の代替として、建築用材料(例えば、柱等)への用途拡大が進んでいる。その理由は、「UO鋼管」及び「電縫鋼管」に比べて、製造工程が簡単で、安価なためである。ところが、この建築用材料としての利用には、前記外面ビードを切削、除去して、外観を美しくする必要があり、スパイラル鋼管に適した外面ビード切削技術の開発ニーズが高まっている。
【0004】
その外面ビードの切削手段としては、図6に示すように、回転軸8を鉛直にして配置した円板状カッター9を用いて、外面ビード10を切削し、切削屑を吸引手段11で回収する装置が従来実施されていた。
【0005】
しかしながら、そのような円板状カッター9では、該カッターの下端部にて集中的に切削することになるので、熱負荷が過大になる傾向があり、刃の寿命が短く、その交換頻度が高いことが予想される。また、スパイラル鋼管の溶接部は、外面ビード10の形状が幅20〜25mm、高さ(厚み)3〜5mm程度になり、一般に幅方向が広い。従って、上記円板状カッター9の切削では、1回の切削長さが長くなり、厚みが薄くて、幅の狭い切削を行うことになる。そのため、実際に切削を行っている刃物部分への負荷(切削抵抗、摩擦発熱)が大きく、刃先の磨耗、温度上昇が避けられない。また、鋼管本体部分の切削を防止するために、刃物のブレ、振動を見越して、若干ビード部の凸形状を残した切削を行う必要があるが、円板状カッター9では、その点に問題が生じる。
【0006】
また、スパイラル鋼管の表面に防錆等の目的で塗装又は覆装を施す場合に、外面ビードが存在することによる不具合を是正するため、外面潜弧溶接余盛(つまり、外面ビード)を、その温度が500〜1000℃の間にバイト等の工具で切削除去する技術も開示されている(特許文献1参照)。さらに、鋼帯を連続的に螺旋状に巻きながら製造するスパイラル鋼管の製造方法において、同一ライン内又は別ラインにおいて、溶接すべき鋼帯のエッジを上下から近接して行う電気抵抗溶接に次いでガスメタルアーク溶接を行い、さらに内面又は内外面の溶接ビードを削除することを特徴とするスパイラル鋼管の製造方法も開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、外面ビードの切削手段としては、特許文献1にバイトの利用が記載され、特許文献2にフライス方式の利用が図面に示唆されているに過ぎない。従って、それらの切削手段から推察すると、上記円板状カッターと同じような問題を抱えていると思われる。
【特許文献1】特開昭58−187682号公報
【特許文献2】特開平6−39431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、鋼管の本体部分に損傷を与えず、少ない切削負荷で外面ビードを効率良く、安定、且つ円滑に切削可能なスパイラル鋼管の外面ビード切削方法及び切削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0010】
すなわち、本発明は、スパイラル鋼管の外面位置で、該スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードに縦回転切削刃を押し当て、該外面ビードを厚み方向に切削することを特徴とするスパイラル鋼管の外面ビード切削方法である。この場合、前記外面ビードの切削後、直ちに切削部の超音波探傷を行うのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、スパイラル鋼管の製造ラインで、且つ該スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードが該スパイラル鋼管の外面になる位置に、スパイラル鋼管を挟み、立設した門型フレームと、該門型フレームの横梁上に載置され、平面視でX−Y方向に移動自在な支持部材と、該支持部材に昇降自在に取り付けられ、スパイラル鋼管の外面ビードを厚み方向に切削する縦回転切削刃と、該縦回転切削刃の高さ位置を決める倣いロールとを備えたことを特徴とするスパイラル鋼管の外面ビード切削装置である。この場合、前記縦回転切削刃の切削方向角度を、平面視でスパイラル状の継目部に一致させる該縦回転切削刃の角度調整手段を備えたり、あるいは前記スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードが該スパイラル鋼管の上外面になる位置の後方に、前記スパイラル状の継目部に沿って超音波探傷器を配設するのが良い。なお、縦回転切削刃に代え、縦回転砥石を用いても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1回あたりの切削負荷が小さくなり、刃物に対する切削抵抗及び温度上昇を小さく抑えることができるので、刃物の寿命が延長し、その交換頻度が減少するようになる。また、管外径の変動、搬送時の振動等に起因したビード位置の高さ方向の変動に対して、刃物の高さを追従することが可能となり、管の本体部分に損傷を与えず、外面ビードだけ安定、且つ円滑に切削可能になる。その結果、管の外面が平滑になり、超音波探傷等による管の内部欠陥の検出も確実に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。
【0014】
まず、発明者は、刃物の単位幅あたりの切削負荷を小さく方法の発見に鋭意努力した。そして、スパイラル状に形成されるビードが、幅に対して厚み(高さ)がかなり薄い形状であることに着眼し、厚み方向に切削を行えば、刃物の単位幅あたりの切削負荷があまり大きくならないと考えた。つまり、図1に示すように、スパイラル鋼管の外面位置で、該スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビード10に上方より切削刃12を押し当て、該外面ビード10を厚み方向に切削するようにすれば、外面ビード10の幅方向(一般に20〜25mm)に対して、切削刃12の全幅が接触でき、且つ切削距離(ほぼ、ビード厚み)が短くなるので、刃物の単位幅当りの切削負荷が小さくできると考えたのである。そして、実際にオンラインで造管中のスパイラル鋼管13に縦回転方式の切削刃12を押し当て実行したところ、切削刃の単位幅あたりの抵抗が小さく、またその温度上昇も小さく抑え得ると確信し、上記考えを本発明としたのである。なお、スパイラル鋼管の継目部溶接には、通常フラックスを使用するサブマージドアーク方式のことが多いので、溶融したスラグをスラグ除去ローラ20等で予め除去してから外面ビードの切削を行うのが好ましい。
【0015】
次に、この本発明に係るスパイラル鋼管の外面切削方法を実施する切削装置についての検討を行い、図2〜図4に示すような切削装置を開発した。
【0016】
それは、図3に示すように、スパイラル鋼管13の製造ラインにおいて、該スパイラル鋼管13の継目部溶接で形成した外面ビード10が該スパイラル鋼管13の最上外面になる位置に設置される。そして、搬送ローラ14上を鋼管軸を中心に回転しながら移動しているスパイラル鋼管13を挟み、門型フレーム21を立設する。この門型フレーム21の横梁15上には、造管進行方向に移動自在な支持部材16を載置する。このように切削刃12の支持部材16を移動自在としたのは、スパイラル鋼管13の外径及び進行速度の変化に対応して、切削刃12の平面上の位置を変更する必要があるからである。なお、支持部材16の移動手段としては、周知の電動モータ及び摺動ガイドを備えた機構を利用すれば良い。
【0017】
本発明では、この支持部材16には、スパイラル鋼管13の外面ビード10に押し付けられ、該外面ビード10を厚み方向に切削する縦回転する切削刃12と、該縦回転する切削刃12の高さ位置を決める倣いロール17とを昇降自在に取り付けるようにした。ここで、昇降装置23は、周知のエアシリンダ及び摺動ガイド等を備えた機構を利用すれば良い。
【0018】
本発明の重要ポイントは、この切削刃12を縦回転としたことで、該切削刃12の幅方向全体を切削に利用できるようにし、且つ、管外径の変更、管の振動に対する切削刃の高さ方向位置の調整に倣いロール(ガイドロールともいう)17を設けたことである。これにより、管の本体を傷つけることなく、切削深さの調整が可能となるばかりでなく、切削位置の出側での監視により深削り、浅削りの調整が容易になり、良好な切削面が得られる。なお、この管外径に当接する倣いロール17及び切削刃12の最下面の位置を管外径に合わせる(調整する)機構(例えば、エアシリンダと装置自重による管への押付力調整等を備えた機構)が設けられており、管外径の変動、搬送時の振動等に起因した切削位置の高さ方向変動に対して追従するようになるので、切削深さを安定させるのである。
【0019】
また、本発明では、1回の切削を厚み方向だけにして切削効率の向上や切削負荷の低減を図るため、図7に示すように、縦回転方式の切削刃12の切削方向角度並びに、上記倣いロール17の回転方向角度を、平面視でスパイラル状の外面ビード10に一致させることができるようにしてある。つまり、図2及び図4から明らかなように、該縦回転切削刃12の角度調整手段19(例えば、ウオームギア機構等)を備えてある。
【0020】
このような本発明に係るスパイラル鋼管13の外面ビード切削装置には、図1に示したように、前記外面ビード10の切削後、直ちに切削部の超音波探傷を行うのが好ましい。鋼管に内在する欠陥の検出タイミングが早くなり、溶接不良の早期発見が可能となるからである。ビード切削後、切断位置までの間に外面ビード10に専用の超音波探傷装置を設置すると、溶接部品質の直接監視が可能となる。従来は、外面ビード10が切削されないまま存在していたので、該ビード形状の影響により、内部欠陥の検出がうまくできない場合があったが、本発明では、外面の平滑化を図った後であるため、内部欠陥の検出性能が向上するのである。
【実施例】
【0021】
幅1200mm×厚み18mmの広幅鋼帯を素材にして、図5に示した工程でスパイラル鋼管を製造した。その際、本発明に係るスパイラル鋼管の外面ビード切削方法及び切削装置を採用し、その実施結果を、外面ビードを切削、除去を行わない従来の操業と比較した。なお、スパイラル鋼管の進行速度は、5.0m/minであり、継目部の溶接は、サブマージドアーク溶接を採用している。なお、超音波探傷は、溶接位置から3.2mだけ下流の位置で行った。
【0022】
その結果、本発明による外面ビードの切削は、円滑且つ安定して行え、製造したスパイラル鋼管の外観は美麗であった。つまり、本発明は、スパイラル鋼管の商品価値向上に貢献することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るスパイラル鋼管の外面ビード切削方法を示す製造工程の平面図である。
【図2】本発明に係るスパイラル鋼管の外面ビード切削装置を説明する平面図である。
【図3】本発明に係るスパイラル鋼管の外面ビード切削装置を説明する正面図である。
【図4】本発明に係るスパイラル鋼管の外面ビード切削装置を説明する側面図である。
【図5】一般的なスパイラル鋼管の製造工程を示す斜視図である。
【図6】従来のスパイラル鋼管の外面ビード切削装置を示す模式的な横断面図である。
【図7】本発明に係る外面ビード切削装置の使用時における切削刃の姿勢を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 広幅鋼帯
2 アンコイラー
3 エッジミラー
4 ロール
5 サブマージドアーク溶接機
6 円筒体
7 切断機
8 回転軸
9 円板状カッター
10 外面ビード
11 切削屑の吸引手段
12 切削刃(縦回転方式)
13 スパイラル鋼管
14 搬送ローラ
15 横梁
16 支持部材
17 倣いロール
18 継目部(溶接部)
19 角度調整手段
20 スラグ除去ローラ
21 門型フレーム
22 超音波探傷器
23 昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル鋼管の外面位置で、該スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードに縦回転切削刃を押し当て、該外面ビードを厚み方向に切削することを特徴とするスパイラル鋼管の外面ビード切削方法。
【請求項2】
前記外面ビードの切削後、直ちに切削部の超音波探傷を行うことを特徴とする請求項1記載のスパイラル鋼管の外面ビード切削方法。
【請求項3】
スパイラル鋼管の製造ラインで、且つ該スパイラル鋼管の継目部溶接で形成した外面ビードが該スパイラル鋼管の外面になる位置に、スパイラル鋼管を挟み、立設した門型フレームと、該門型フレームの横梁上に載置され、造管進行方向に移動自在な支持部材と、該支持部材に昇降自在に取り付けられ、スパイラル鋼管の外面ビードを厚み方向に切削する縦回転切削刃と、該縦回転切削刃の高さ位置を決める倣いロールとを備えたことを特徴とするスパイラル鋼管の外面ビード切削装置。
【請求項4】
前記縦回転切削刃の切削方向角度を、平面視でスパイラル状の継目部に一致させる該縦回転切削刃の角度調整手段を備えたことを特徴とする請求項3記載のスパイラル鋼管の外面ビード切削装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の外面ビード切削装置の下流に、前記スパイラル状の継目部に沿って超音波探傷器を配設したことを特徴とするスパイラル鋼管の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−51519(P2006−51519A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234468(P2004−234468)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】