説明

スピアバルブ用パッキンとその製造方法

【課題】 ガス透過性を改良できる安価なスピアバルブ用パッキンを提供する。
【解決手段】 樽の口金4に流通過程において内部の飲料が漏洩しないように取り付けられるスピアバルブ用パッキンにおいて、前記パッキン3は、前記口金4に螺合されるスピアバルブボディ1と該スピアバルブボディ1内にその上部が収納されると共に前記ボディと係合するチューブ2との間に取り付けられ、前記パッキン3を2種のゴム材からなる複合材で形成したことを特徴とするスピアバルブ用パッキン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、飲料容器に取り付けられるスピアバルブのパッキンに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、スピアバルブの口金のボディと、該ボディと係合するチューブとの間に取り付けられ、酸素等に対するガスバリア性を発揮することのできるスピアバルブ用パッキンとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸ガスを樽に導入し、その圧力によって樽内の飲料を抽出するためのディスペンスヘッドとこれを樽へ取り付けるスピアバルブの構造が知られている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開平09−112693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のスピアバルブは、図面によって説明すると図3に示すように樽の流通過程において内部のガス及び飲料が漏洩しないようにスピアバルブボディ1とチューブ2間にパッキン3が取り付けられており、該パッキン3には低価格なシリコーンゴムが一般的に用いられている。しかしこのシリコーンゴムは酸素等のガス透過性が良いという難点を有している。すなわち、パッキン3から透過した酸素は内部の飲料に対して酸化させ味を低下させるというきわめて悪い影響を与える。
そこでその対策として、合成樹脂あるいは金属からなる構造材と酸素等のガスを透過しない高価な合成ゴムとを一体化させた複合材(図示していない)が考えられたが、接着性においても、あるいは食品用途の安全性においても好ましいものとなり得ない。つまり接着剤の使用を嫌って嵌め込み形の一体化形状では二つの部位の間隙に液だまりができ微生物の発生を許す不具合を発生させる。また、合成樹脂あるいは金属の構造材を合成ゴムへインサートする場合(図示していない)には弾力性に不満が残り十分な密封力を得ることができない。また、ガスの透過性において食品用途をもクリヤするゴム材料はどうしても高価とならざるを得ない。
このような課題に対してガス透過性を改良できる安価なスピアバルブ用パッキンを提供するために本発明を開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この出願の発明は上記の課題を解決するため、第1には、樽の口金4に流通過程において内部の飲料が漏洩しないように取り付けられるスピアバルブ用パッキン3であって、前記パッキン3は前記口金4に螺合されるスピアバルブボディ1と、該スピアバルブボディ1内にその上部が収納されると共に前記スピアバルブボディ1と係合するチューブ2との間に取り付けられ、前記パッキン3を2種のゴム材からなる複合材で形成したスピアバルブ用パッキンを提供する。
第2には、前記パッキン3をフッ素ゴムとシリコーンゴムからなる2種のゴム材の複合材で形成したスピアバルブ用パッキンを提供する。
第3には、樽の口金4に流通過程において内部の飲料が漏洩しないように取り付けられるスピアバルブ用パッキン3の製造方法であって、2種のゴム材を同種架橋剤もしくは半減期が近い架橋剤とし、片方のゴム材を不完全に加硫成形せしめた後、前記形成されたゴム材と共にもう片方のゴム材を金型内へ投入して加硫成形せしめ両者を接着一体化したスピアバルブ用パッキンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
上記第1のスピアバルブ用パッキンによれば、ガスバリア性の高い高価な材料のゴム材と低価格なゴム材とを併用したことにより、密封するのに必要な十分な弾力性を得つつ強いガスバリア性を発揮させ、酸素透過による飲料への影響を極僅かとして味の低下を防ぐことができるものとなる。
上記第2のスピアバルブ用パッキンによれば、強いガスバリア性を得さしめるためにフッ素ゴムを要部に用い、弾性質量を確保するために他方へはシリコーンゴムを用いて複合材で形成したことにより、上記1の効果が得られると共に安価なパッキンを提供できる。
上記第3のスピアバルブ用パッキンの製造方法によれば、2種のゴム材を同種架橋剤もしくは半減期が近い架橋剤としたことで、片方のゴム材を不完全に加硫させて成形せしめた後、前記形成されたゴム材と共にもう片方のゴム材を加硫成形せしめて両者を接着せしめることができ、ここでは繋がり部の無い一体性が実現されるので、接着性においても、あるいは食品用途の安全性においても好ましいものとなり、弾力性に不満の無い十分な密封力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いられるゴム材質には、食品に対する安全性及びコスト、ガスバリア性などを考慮した場合シリコーンゴムとフッ素ゴムの組合せが薦められる。ただし、必要に応じて他のゴム種、例えばEPDM
、NBRなどの組合せ変更も自在に選択できる。
その成形方法としては、コンプレッション成形でもインジェクション成形でも良いが、ただ2回目の成形段階においてコンプレッション成形の場合材料の偏りにより製品に歪が発生する恐れがある。また、二種のゴム材料の接着力を得るために成形温度及び成形時の圧力のコントロールが必要であるのはもちろん、該二種の材料は架橋剤によって加硫接着させるためゴム中の架橋剤量のコントロールも重要である。
【実施例1】
【0007】
図1は、この発明のスピアバルブ用パッキンの一実施形態を示したものである。ここでは外気に露出する面部31へ部分的にガスバリア性に優れるフッ素ゴムを用いており、内容液側部32にはシリコーンゴムを配して一体化せしめた複合材で形成している。
【実施例2】
【0008】
図2は、この出願の発明の異なった実施形態を示したものであり、図1とは逆に外気に露出する面部31から内方の大部分までへシリコーンゴムを用いており、内容液側部32にガスバリア性に優れるフッ素ゴムを部分的に配して一体化せしめている。
【0009】
ここでシリコーンゴムとフッ素ゴムとを図1及び図2のように配置して一体化形成せしめたものと、従来のパッキン構造の低価格なシリコーンゴムと高価格のフッ素ゴムとをそれぞれ単体で整形したものの比較を示す。
図1及び図2に示したパッキンの成形は、第一段階としてシリコーンゴムを170℃で2分間不完全加硫させた後、未加硫フッ素ゴムと第一段階で成形したシリコーンゴムを金型に投入し180℃で3分間加硫させた。その後200℃で4時間の2次加硫を行った。
ここで得られた製品では、表1に示す実施結果のとおり、酸素バリア性を向上させることができ、また官能試験においても中身への影響が最小限のものとなったことが確認された。
【0010】
【表1】




【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明のパッキンの実施例を示す断面図である。
【図2】図2は本発明のパッキンの他の実施例を示す断面図である。
【図3】図3はスピアバルブの構造を示した断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1 スピアバルブボディ
2 チューブ
3 パッキン
31 外気に露出する面部
32 内容液側部
4 口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樽の口金に流通過程において内部の飲料が漏洩しないように取り付けられるスピアバルブ用パッキンにおいて、
前記パッキンは、前記口金に螺合されるスピアバルブボディと該スピアバルブボディ内にその上部が収納されると共に前記ボディと係合するチューブとの間に取り付けられ、
前記パッキンを2種のゴム材からなる複合材で形成したことを特徴とするスピアバルブ用パッキン。
【請求項2】
前記パッキンをフッ素ゴムとシリコーンゴムからなる複合材で形成したことを特徴とする請求項1記載のスピアバルブ用パッキン。
【請求項3】
樽の口金に流通過程において内部の飲料が漏洩しないように取り付けられるスピアバルブ用パッキンの製造方法において、
2種のゴム材を同種架橋剤もしくは半減期が近い架橋剤とし、片方のゴム材を不完全加硫せしめた後、前記で形成されたゴム材と共にもう片方のゴム材を金型内へ投入して加硫成形せしめ両者を接着一体化したことを特徴とするスピアバルブ用パッキンの製造方法。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−16057(P2006−16057A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197145(P2004−197145)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】