説明

スピンコーティングを用いるPDLCベースの電気光学光変調器の製造方法

電気光学構造体は、水性エマルション又は溶剤型のセンサ材料、好ましくは溶剤型のポリマー分散液晶(PDLC)を、制御された溶剤蒸発の条件下で基板上にスピンコーティングすることによって構成される。特定のプロセスにおいて、PDLCコーティングの均一性は、(1)半密閉チャンバ内でのスピンコーティング、(2)取付具を用いることによる矩形基板の円形基板への「変換」、(3)基板とスピンコーター上部カバーとの間の制御可能な間隔の形成、(4)制御可能な蒸発速度によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ(TFT)アレイの試験に使用するポリマー分散液晶(PLDC)材料の特性に基づく、電気光学光変調器の製造プロセスに関する。より詳細には、本発明は、溶剤型のポリマー分散液晶(PLDC)に関連する製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間、カリフォルニア州サンノゼ所在のPhoton Dynamics, Inc.,は、NCAPと呼ばれる種類の原材料に特に適合された、多段積層プロセスを伴うアセンブリプロセスによって電気光学光変調器を製造してきた。種々の複雑な問題に起因して、結果として最終的な変調器の歩留まりが比較的低かった。問題点として、表面の平坦性と平滑性の欠如やエッジ/コーナー欠陥があった。既存の歩留まりの問題は以下に関するものである。
【0003】
出発材料。NCAP自体は、スロット−ダイのコーティングプロセスによって作製され、仕様に従って最大±1ミクロンまでの厚み変動を有する。NCAPは、2つの7ミル(175ミクロン)ポリマー薄膜(Mylar(登録商標))の間に挟まれる。仕様によれば、Mylarは10%の厚み変動を有する。小面積内の変動は非常に小さいが、73mm平方では最大±1ミクロンまでの厚み変動がある。
【0004】
プロセス。光学UV接着剤を用いるNCAP積層プロセスでは、付加的な厚み変動が生じた。最上層Mylarの剥離プロセスは更に、厚み変動、表面粗さ、エッジ/コーナー欠陥、電気光学的な非均一性が生じた。
【特許文献1】米国特許第6,151,153号
【特許文献2】米国特許出願シリアル番号10/685,552
【特許文献3】米国特許出願シリアル番号10/685,687
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転写コーティングプロセスが、Photon Dynamics, Inc.,に譲渡された米国特許第6,151,153号「Modulator Transfer Process and Assembly」で開示されている。しかしながら、この転写コーティングプロセスには限界があることが分かっており、これは、このプロセスがNCAP材料の厚みの非均一性を解消できず、NCAP材料とガラス基板との間にUV硬化性接着剤を必要とするからである。この接着剤は、プロセス中にNCAP薄膜を損なうことが分かっている。従って、転写コーティングは、全ての望ましいアセンブリプロセスに好適であるわけではない。
【0006】
関連する開発において、発明者らは、センサ材料を施工する機構に関係する直接コーティングプロセスを開発した。当該研究は、同時出願の米国特許出願シリアル番号10/685,552及び10/685,687に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、電気光学構造体は、水性エマルション又は溶剤型のセンサ材料、好ましくは溶剤型ポリマー分散液晶(PDLC)を管理された溶剤蒸発の条件下で基板上にスピンコーティングすることによって構成される。特定のプロセスにおいて、PDLCコーティングの均一性は、(1)半密閉チャンバ内でスピンコーティングすること、(2)取付具を用いることによる矩形基板を円形基板へ「変換」すること、(3)基板とスピンコーター上部カバーとの間の制御可能な間隔を形成すること、(4)溶剤蒸発速度を制御可能とすることによって達成される。
【0008】
半導体工業において既知のプロセスであるスピンコーティングは、PLDCなどのセンサ材料の堆積に関連する本発明による製造プロセスで用いられており、ここでは制御されたスピンコーティングは、PDLCにおける厚み変動と電気光学的変動を大幅に低減又は排除することができる。
【0009】
本発明は、幾つかの利点を有する。本発明は、制御されたポリマー/液晶の相分離と均一な液晶液滴直径をもたらす。本発明は、変調器を優れた表面平坦性と平滑性を備えたものに改善することができる。TFTアレイ試験に関連するノイズを有意に低減することができる。他のNCAP積層プロセスと比較して、本発明のスピンコーティングプロセスは半自動式であり、簡略化されている。プロセスステップが少なく、一貫性に優れ、高品質であることによって、製造歩留まりが有意に改良される。
【0010】
本発明の特定の応用は、矩形基板上への均一な溶剤ベースのPDLCコーティングを作製することである。PDLCコーティングの均一性は、(1)半密閉スピンコーティング・システム、(2)取付具を用いることによる矩形基板の円形基板への「変換」、(3)基板とスピンコーター上部カバーとの間の制御可能な間隔の形成、(4)溶剤蒸発速度を制御可能とすることによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、添付図面と共に以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0012】
図1を参照すると、本発明によるプロセスが示されている。コーティングされない底面には反射防止(AR)コーティングが、4つの側面には金コーティングが、更に上面には酸化インジウム錫(ITO)/SiO2コーティングが施された、BK−7ガラスの矩形ブロックのようなガラス基板が用意される(ステップ1)。ITOコーティングは両側壁間全体を覆う。
【0013】
図1と共に図2A及び図2Bを参照すると、典型的には矩形ガラスブロックである基板が変換用取付具すなわちカラー2内に配置され、スピンコーティングプロセスに適合するするように、円形基板又はエンクロージャ同形基板と同等の形状に矩形表面を変換させる(ステップB)。図2A及び図2Bに示されるように、アルミニウム又は他の材料製の2部品の半円形カラー取付具2が矩形BK−7基板1の周りに置かれる。取付具2は、その表面がBK−7基板1の上面と同じレベルであるように設定される。矩形基板1を円形にする主要目的は、スピンコーティング中に基板1と取付具2の上面で均一なガス流を促進することであり、これにより均一なコーティング薄膜が得られる。
【0014】
その後、基板1とそれと一緒にされた取付具の表面が、制御された蒸発条件下でPDLCでスピンコーティングされる(ステップC)。その組成物がスピンコーティングプロセスに整合するものであれば、このプロセスでどのようなPDLC溶液又はエマルションを使用してもよい。溶剤型のポリマー/液晶混合物が好ましい。ポリマーの例としては、Paraloid(登録商標)AU1033(ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のRohm and Hass)、Doresco(登録商標)TA45−8、Doresco(登録商標)TA65−1熱硬化性アクリル樹脂(オハイオ州ウィクリフ所在のLubrizol Corporationの1部門であるDock Resins Corporation)、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。液晶の例としては、TL203、TL−205、TL215、TL216、E7等が挙げられる。PDLC配合物は、典型的には60−70%が液晶であり、残部は大部分が上述のようなポリマーである。
【0015】
溶剤型のポリマー/液晶系では、溶剤蒸発の間にポリマーと液晶との間の相分離が発生する。コーティングプロセス中の溶剤蒸発制御は、適正な堆積のために重要である。この目的のため、図3に示されたような特別に設計されたスピンコーター100を用いて、溶剤蒸発速度を制御可能とする。矩形ガラス基板1がエンクロージャ内に置かれる。基板は、真空チャック10の上に置かれる反射防止(AR)コーティング12を備えた面と、その反対側のSiO2層4に覆われているITO層3を有する面とを有する。変換用取付具2はカラーとして機能する。カバー高さ調節具6がエンクロージャ100のフラットカバー7に取付けられ、該フラットカバーがスピナー回転軸上に装着されたスピナーボウル8と嵌合する。周囲の圧力と温度と共に溶剤蒸発速度を制御する、基板表面(層4)とフラットカバー7との間の間隔を、カバー高さ調節具6によって調整することができる。理想的には、基板とフラットカバーとの間の間隔は、0.5cm〜5cmであろう。従って、溶剤蒸発速度は、(1)基板とフラットカバー間の距離、(2)スピナーボウル8とフラットカバー7間のギャップ、(3)回転速度の関数であるスピン生成空気流によって制御される。また、溶剤蒸発速度は、スピナーボウル8の周りに部分的なシールを形成することによっても影響を受ける。約50%の溶剤含量である標準的な5ml堆積の場合、加速蒸発は好ましくは2分〜8分、最も好ましくはほぼ8分間のスピンに設定され、全体のエビセレーション(evisceration)なしにほぼ完全な蒸発が達成される。加速蒸発が、この蒸発速度で10分間延長されたときには、材料は完全に乾燥する。加速蒸発がない場合、又は加速蒸発が1分未満の間である場合には、表面に欠陥が見られることがある。
【0016】
スピンコーティング後、表面張力作用によってエッジビードが取付具2と基板1上に残る。5ミクロンを超えるエッジバンプは直接式EO変調器製造では許容されない。このことは、凹凸又はバンプを全く許容しないペリクル(pellicle:薄い膜)積層プロセスよりは厳密ではない。従って、ペリクル積層プロセスに進む前に、基板を取付具から取外し、エッジビードを除去する(ステップD)。好ましいエッジビード除去法は、プラスチック「ナイフ」(Mylar(登録商標)シートのような)を使用してITOコーティングを損なうことなくエッジを除去するものである。
【0017】
次いで、PDLC15を覆うように水性接着剤16を被覆させる(ステップE)。これは、PDLC15を損なうことなく実行することができる。このような材料には、Neorez(登録商標)R−967(マサチューセッツ州ウィルミントン所在のNeoresins)のようなポリウレタン分散物、アクリレート分散物、水性エポキシなどが挙げられる。接着層6の厚みは、0.5〜1.5ミクロンの範囲内に制御される。この薄い接着層16は、PDLC15材料とペリクル17との間の接着を有意に向上させることができる。
【0018】
次いで、図4を参照すると、可撓性基板上の誘電体ミラー(ペリクル17)が接着剤16を支持している層に真空積層される(ステップF)。薄いポリマー膜(7ミクロン厚みのMylar(登録商標)のような)上の誘電体スタックをミラーとして使用でき、これが真空アシスト積層システムの使用によって接着層16の上面に積層される。図4には、好適な取付具200が示されている。Oリング支持ペリクル17を位置決め取付具18の上面に載置した後、ペリクル17は、接着剤被覆16の表面から僅かに間隔を置いて配置される。エンクロージャ壁19にシールされた上部カバー窓20が、完全な封入と内部の可視性を提供する。出口ポート12で、約3/4気圧などに真空引きされる。真空調整ウォームスクリュー11を用いて、1つの端部がペリクル17に丁度接触するまでBK−7基板1を僅かな角度で引き上げる。強力な接着力により、ペリクル17は漸次的に接着層16に付着する。このプロセスは、表面全体が接着されるまで継続して行われる。この漸次的オフアングル手法は、接着剤−ペリクル境界面内に気泡が生成される可能性を最小限にする。次いで、ペリクル17の側部が下方に曲げられ、基板1の側部にテープ付けすることができる。
【0019】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきた。当業者であれば他の実施形態も想起されるであろう。従って、本実施形態は、添付の請求項によって示されるものを除き、本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による電気光学光変調器の製造プロセスのフローチャートである。
【図2】本発明によるカラーの平面図(A)と側面図(B)である。
【図3】本発明に従って使用されるスピンコーティング・チャンバの側面の断面図である。
【図4】本発明に従って使用される積層チャンバの側面の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学光変調器構造体を製造する方法であって、
正規化された表面を有するガラス基板を準備する段階と、
コーティングされた基板を得るために、蒸発を制御し、且つ接着剤が無い状態で前記正規化された表面上にセンサ材料をスピンコーティングする段階と、
接着剤が被覆された基板を得るために、前記コーティングされた基板のセンサ材料上に接着層として水性エマルションをスピンコーティングする段階と、
前記接着剤が被覆された基板上にペリクルを積層する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記センサ材料が、ポリマー分散液晶(PDLC)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサ材料が、溶剤型のPDLCであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スピナーボウルが、少なくとも部分的に密閉されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸発が、回転速度、周囲圧力、基板とフラットスピンコーターカバー間の間隔によって制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加速蒸発時間が、5ml堆積につき約2分〜8分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記準備する段階が、前記ガラス基板の周りにカラー取付具を配置して前記ガラス基板の表面を正規化する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングされた基板のエッジの過剰なセンサ材料を取除く段階を更に含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−508600(P2007−508600A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535669(P2006−535669)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/033961
【国際公開番号】WO2005/037450
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(503298922)フォトン・ダイナミクス・インコーポレーテッド (19)
【Fターム(参考)】