説明

スピンドルモータおよび該スピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置

【課題】安易な方法および構造にてFPCの接触不良を発生させない信頼性の高いスピンドルモータを提供すること。
【解決手段】ベース10の円環状の凹部10aの半径方向外側に、半径方向外側が高い段差部12とベース10の内部側から外部側に貫通した貫通孔12aとを有する延出部11を設け、ステータ20の上面に配置されたFPC80は、この貫通孔12aを通って、ベース10の下面に着接する。適切な高さの段差部12を設けることによってFPCの折り曲げ高さおよび折り曲げ角度を抑えて復元力を小さくし、外部衝撃付加時でも剥がれにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータ、特にインナーロータ型であり薄型化が求められるスピンドルモータおよび該スピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク駆動装置(以下、HDDと称する)に代表される信号記録再生装置の携帯電話等の携帯機器への搭載により、HDDの小型化および薄型化が年々促進されている。加えて、従前のパーソナルコンピュータの搭載と比較して、落下衝撃等の外部衝撃に対する耐性の大幅な向上が求められている。HDDのこれらの要求に対応して、このHDDに搭載されるスピンドルモータにおいても、小型化・薄型化および耐衝撃性の向上の要求が非常に高まっている。これらの要求を満たすためにスピンドルモータは、流体による動圧を利用した流体動圧軸受および回転体の周りを静止体が外囲するインナーロータ型への移行が進んでいる(このようなスピンドルモータの例として、例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−282880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、軸受周りの耐衝撃性の向上は図られつつあるが、他の部分、特にフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits: 以下、FPCと称する)の取り付け度合いに対する耐衝撃性向上については、まだ十分な対策が講じられていない。例えば、特許文献1の図1に示されるように、電力供給のためにベース7の内側からベース7の外側に配線する必要があるが、小さく狭い空間内で配線せねばならないために、ステータ6上に配置されているFPC10はベース7の貫通孔を通る際に、急角度で折り曲げられてベース7の下面側に固定されている。FPC10には強く折り曲げられることによって生じる、元に戻ろうとする大きな復元力が働き、ベース7の外部側の取り付け箇所であるベース7の下面側では常にベース7から離れようとする力が強く働いてしまう。そのため、携帯機器の落下等による外部衝撃が付加されると、FPC10はベース7から簡単に剥がれてしまい、FPC10のベース7下面側に形成される外部接続部と外部電源(不図示)との接触不良を起こしてしまう危険性高かった。また特許文献1の図4および図6のように、配線がしやすいように穴を傾斜して形成する構造もあるが、小さなベース7に対して傾斜した穴を形成することは加工上困難であり、その分だけ加工費が高くなってしまうという欠点があった。
【0005】
本発明は、上記のような衝撃付加時に発生する接触不良に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容易かつ安価な方法および構造を考案することによって、FPCの接触不良が発生しない信頼性の高いスピンドルモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1によれば、中心軸に対して同軸に配置され、外周部にロータマグネットを有する回転体と、該回転体を外囲し、前記ロータマグネットと半径方向に間隙を介して配置されるステータと、該回転体と向かい合う側を内部側、その反対側を外部側として、前記中心軸方向上側に開口して前記ステータを収容する凹部を前記内部側に有するベースと、前記ステータの上側に一端を着接配置される可撓性を有する回路基板と、を具備するスピンドルモータにおいて、前記回路基板は、外部電源等に接続される外部接続部を有し、前記ベースには、前記中心軸から見て前記凹部よりも半径方向外側の一部に、前記外部接続部を前記ベースの前記内部側から前記外部側へ通す貫通孔を有する延出部が設けられ、前記回路基板を着接する前記延出部の前記ベースの前記内部側の面は、前記中心軸から見て前記貫通孔の位置より半径方向外側の部分が、半径方向内側の部分よりも、前記中心軸方向の上部側に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項1に従えば、ベースの延出部に設けられた貫通孔において、貫通孔より半径方向外側が半径方向内側よりも高い位置にあるので、回路基板をほぼ水平の状態で貫通孔に挿入することができる。これにより、回路基板の折れ曲がりを防止することができ、回路基板の復元力を小さくすることができる。
【0008】
本発明の請求項2によれば、請求項1に係り、前記ステータは、前記ベースに形成された前記凹部の大径側壁の内周面に嵌合されたコアバック部と、該コアバック部から半径方向内向きに突設して放射状に配列されたティースと、前記ティースに巻回された巻線とで構成され、前記凹部の前記大径側壁の上部端面の軸方向高さ位置は、前記凹部に収容された際の前記コアバック部の上部端面の軸方向高さ位置以上で、前記巻線の上面の軸方向高さ位置以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に従えば、ベースの凹部の前記大径側壁の上部端面の軸方向高さ位置がコアバック部の上部端面の軸方向高さ位置以上、巻線上面の軸方向高さ位置以下であることから、延出部に設けられる貫通孔の位置は、ステータ上面に配置された回路基板と軸方向に略同一の高さとなる。したがって、回路基板は、殆ど軸方向に折れ曲がることなく、貫通孔に挿入されることとなる。よって、回路基板の折れ曲がりによる復元力をほぼゼロにすることができる。
【0010】
本発明の請求項3によれば、請求項1および請求項2に係り、前記延出部の上面には、前記中心軸から見て前記貫通孔よりも半径方向内側の部分に、前記回路基板の幅と略同一の幅を有する凹状ガイド溝が形成され、該凹状ガイド溝によって、前記中心軸から見て前記貫通孔よりも半径方向内側の部分と半径方向外側の部分との間に段差が構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に従えば、延出部の上面には、着接する回路基板の幅と略同一の幅を有する凹状ガイド溝が形成されることにより、回路基板の位置決めを容易に行なうことができる。さらに、この位置決めにより、回路基板は周方向にずれて配置されることがないので外部電源等と良好な接続が可能である。
【0012】
本発明の請求項4によれば、中心軸に対して同軸に配置され、外周部にロータマグネットを有する回転体と、該回転体を外囲し、前記ロータマグネットと半径方向に間隙を介して配置されるステータと、該回転体と向かい合う側を内部側、その反対側を外部側として、前記中心軸方向上側に開口して前記ステータを収容する凹部を前記内部側に有するベースと、前記ステータの上側に一端を着接配置される可撓性を有する回路基板と、を具備するスピンドルモータにおいて、前記回路基板は、外部電源等に接続される外部接続部を有し、前記ベースには、前記中心軸から見て前記凹部よりも半径方向外側の一部に、前記外部接続部を前記ベースの前記内部側から前記外部側へ通す貫通孔を有する延出部が設けられ、該貫通孔における少なくとも前記ベースの前記内部側であって前記中心軸から見て半径方向内側の開口端部には、該開口端部に向うに従い、前記貫通孔の径が大きくなる傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に従えば、貫通孔の開口端部に傾斜面が形成されることで、貫通孔に挿入される回路基板部分の折り曲げ角度を小さくすることができる。その結果、回路基板の復元力を小さくすることができる。
【0014】
本発明の請求項5によれば、請求項4に係り、前記回路基板を着接する前記延出部の前記ベース内部側の面は、前記中心軸から見て前記貫通孔の位置より半径方向外側の部分が、半径方向内側の部分よりも、前記中心軸方向の上部側に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に従えば、貫通孔の開口端部の傾斜面に加え、さらにベースの延出部に設けられた貫通孔において、貫通孔より半径方向外側が半径方向内側よりも高い位置にあるので、回路基板をほぼ水平の状態で貫通孔に挿入することができ、さらに回路基板の折り曲げ角度を小さくすることができる。その結果、一層、回路基板の復元力を低下させることができる。
【0016】
本発明の請求項6によれば、中心軸に対して同軸に配置され、外周部にロータマグネットを有する回転体と、該回転体を外囲し、前記ロータマグネットと半径方向に間隙を介して配置されるステータと、該回転体と向かい合う側を内部側、その反対側を外部側として、前記中心軸方向上側に開口して前記ステータを収容する凹部を前記内部側に有するベースと、前記ステータの上側に一端を着接配置される可撓性を有する回路基板と、を具備するスピンドルモータにおいて、前記回路基板は、外部電源等に接続される外部接続部を有し、前記ベースに形成された前記凹部の大径側壁に、前記外部接続部を前記ベースの前記内部側から前記外部側へ通す貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6に従えば、ベースに形成された凹部の大径側壁に貫通孔を設けることにより、回路基板を折り曲げることがなくなる。さらに延出部あるいは延出部に形成される段差を設けなくてもよいので、延出部を設けるスペースに余裕のない薄型スピンドルモータに対して好適である。
【0018】
本発明の請求項7によれば、記録ディスク駆動装置は、磁気記録層を有する記録ディスクと、前記磁気記録層に情報を記録するとともに前記磁気記録層に記録された情報を再生するための磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記記録ディスクに対して移動させるための移動手段と、前記磁気ディスクを回転駆動させるための請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のスピンドルモータとを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7に従えば、請求項1乃至請求項6のスピンドルモータを搭載することにより、外部衝撃等でも回路基板と外部電源等の接続を維持することのできる信頼性の高い記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従えば、容易な構造にて外部衝撃等に対してFPC等の回路基板と外部電源等の接続を維持することのできるスピンドルモータおよび、このスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<記録ディスク駆動装置>
本発明に係る記録ディスク駆動装置100の実施例の一形態に関して、図1を参照して説明する。図1は、記録ディスク駆動装置100の断面図である。
【0022】
記録ディスク駆動装置100は、箱状のハウジング110に収納される形で構成されている。ハウジング110の内部は、塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部には、情報を記録する磁気記録層を有する円板状のハードディスク120が装着され、回転中心軸周りに高速回転するスピンドルモータ130が配設されている。なお、このハウジング110と後述するベース10とは一体的に成形されていてもよい。
【0023】
ハウジング110の内部には、ハードディスク120と情報を授受するヘッド移動機構140が配置され、このヘッド移動機構140は、ハードディスク120上の情報を読み書きする磁気ヘッド141、この磁気ヘッド141を支えるアーム142および磁気ヘッド141およびアーム142をハードディスク120上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部143により構成される。
【0024】
このような記録ディスク駆動装置100のスピンドルモータ130として、本願発明のスピンドルモータを適用することで、十分な機能を確保した上で記録ディスク駆動装置100の小型且つ薄型化を実現できると共に、信頼性並びに耐久性の高い記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【0025】
<スピンドルモータの全体構造>
次に図2を参照して、本発明に係るスピンドルモータの全体構造について説明する。図2は、本発明に係るスピンドルモータの実施例の一形態を示した模式断面図である。なお、明細書中の上下方向は図1の上下方向を示す。
【0026】
図2のスピンドルモータにおいて、非磁性部材の鋼板をプレス等の塑性加工にて成形したベース10には、円環状の凹部10aが形成されている。凹部10aは、その周方向を同軸で半径が異なる小径側壁10bと大径側壁10cの2つの円筒状壁面で囲われ、回転軸方向の下側を底部10dで閉塞され、回転軸方向の上側を開口した円環状の溝形状をしている。
【0027】
大径側壁10cの内周面には、円環状のステータ20が円環状の凹部10aと回転中心軸に対して同軸となるように嵌合固定されている。また小径側壁10bの内周面には、略円筒形状の軸受保持部材30が同軸に嵌合固定され、さらに軸受保持部材30の内周面には、円筒形状の軸受スリーブ31が同軸に嵌合固定されている。
【0028】
さらに、軸体41が軸受スリーブ31の内側に微少間隙をもって回転中心軸に対して同軸に挿通され、この微少間隙に充填された潤滑流体を介して回転自在に支持されている。また、軸体41の上端部にはロータハブ40が構成されている。ロータハブ40は、強磁性材料で製作され、半径方向外側に円筒部42を有する略円筒形状をしており、軸受保持部材30と軸受スリーブ31の上方及び外周を外囲している。
【0029】
軸体41の下端部には、軸体41の外径より大きいスラストプレート50が固定されている。また軸受保持部材30の下部のプレート固定部32には、円盤状のプレート60が固定されて有底容器構造をなし、スラストプレート50は周囲を軸受保持部材30、軸受スリーブ31、プレート60で囲まれている。
【0030】
軸体41の外周面あるいは軸受スリーブ31の内周面の少なくとも一方には動圧発生溝が形成されており、この動圧発生溝による流体圧力によって、軸体41を半径方向に支持する。さらに、軸受スリーブ31の下面あるいはスラストプレート50の上面もしくは下面あるいはプレート60の上面のうち少なくとも一つ以上の面には動圧溝が形成されており、この動圧発生溝による流体圧力によって、軸体41を軸方向に支持する。
【0031】
ロータハブ40の円筒部42の外周面には、半径方向外側に突出するディスク載置面43が形成されている。そのディスク載置面43の外周面には、さらに半径方向外側に突出した磁気カバー44が形成されている。ロータマグネット70は、ディスク載置面43の下側に位置する円筒部42の外周面に固定取り付けされており、その上部を磁気カバー44で覆われ、その外周面は微小間隔を介してステータ20と対向している。
【0032】
ステータ20の上側には、FPC80が固定配置されており、FPC80の上側にはさらにシールド板90が配置されている。
【0033】
外部電源(図示せず)からFPC80を介してステータ20に通電されることにより、ステータ20に磁場を形成し、この磁場とロータマグネット70との相互作用により所定の回転トルクが得られ、回転駆動する。
【0034】
<主要部>
次に図3乃至図7を参照して、本発明の主要部であるベース10およびステータ20周りとの関係を説明する。図3はステータ20とFPC80との関係を示す。図4は図2の要所拡大図である。図5は図4で示した本発明の実施形態4と従来構造の例を比較して示した図であり、図5a)は従来例、図5b)は本発明を示す。図6乃至図7は本発明の主要部の他の実施形態を示した図である。
【0035】
図3に示すように、ステータ20は、円環状のコアバック部21から複数のティース部22が周方向等間隔に半径方向内側に突出してなる薄板を複数枚積層取り付けし、ティース部22の周囲を巻線23が巻回することにより形成される。本発明のスピンドルモータは3相駆動モータであって、各相はそれぞれU相、V相、W相であり、そしてこれらの結線としてコモン相を有する。したがって、この巻線23の端末は4つとなる。各ティース部22の周方向の中間位置には、半径方向内側に突出する突出部24が形成され、この突出部24には貫通した円形の孔25が形成されている。そしてこの孔25に嵌め合って、絶縁部材で略円環状に構成されたインシュレータ26が固定される。このインシュレータ26はコアバック部21の内側を上側から覆い、巻線の渡り線を係止する役目を果たす。ステータ20のコアバック部21の上側および隣り合うティース部22間を覆うように、フレキシブルプリント基板(FPC)80が巻線23の上側に接着剤等で固定されている。またこのFPC80は、ヘッド移動機構140の移動範囲外の位置に配置される。FPC80は略円弧状であり、半径方向内側に向いた4つの突部81が設けられている。これら突部81の中央には、各々ランド部81aが形成されている。そして、このランド部81aに巻線23を半田等の導電部材で接続固定することによって、巻線23とFPC80との通電を確保する。このような構成にしているのは、FPC80をステータ20の下側に配置すると、ランド部81aと巻線23との固定が困難となるからである。これに対し、FPC80をステータ20の上側に配置することによって、ランド部81aと巻線23との固定が容易となる。FPC80の本体部82は、4つの各ランド部81aが各々ランド線81bとなって、各々円弧状部82aと直線状部82bとを経て、直線状部82bより幅が広い本体部82の上側に設けられた外部接続部83に各々接続する配線構造になっている。そして、この外部接続部83と外部電源(図示せず)とを接続し、通電することにより、巻線23に通電される。
【0036】
図4に示すように、ベース10には、中心軸から見て環状の凹部10aよりも半径方向外側の部分に半径方向外側に延びる延出部11が設けられ、この延出部11には、段差部12が設けられている。さらに半径方向外側には、この延出部11およびステータ20を覆う円環形状のシールド板90を固定するために、段形状をしたシールド板固定部13が設けられている。
【0037】
段差部12には、外部接続部83の幅と同程度の幅を有する貫通孔12aが形成されており、この貫通孔12aにFPC80の直線状部82bおよび外部接続部83を挿通させ、ベース10の外側である延出部11の下面部に配置されるようにする。したがって、ステータ20の上面に配置されたFPC80は、まず延出部11の上面に着接し、次に貫通孔12aを通ってハウジング110の内部側から外部側に出て、最後にベース10の下面に固定される。FPC80とベース10の下面との固定には、予めFPC80に粘着剤を塗布しておくと安易に固定することができる。さらに延出部11とFPC80との固定には、接着剤をFPC80の上面および延出部11の貫通孔12aを埋めるように充填すると、確実な固定を行うことができる。これによって、FPC80は外部電源と直接接触できるので、外部電源から通電することができる。さらに、延出部11に段差部12を設けることで、FPC80の軸方向の曲げを抑えることができ、FPC80の折り曲げ角度も抑えることができるので、それに伴うFPC80に発生する復元力を小さくすることができる。これによって、外部衝撃が加わってもFPC80の外部接続部83が延出部11より外れることがなくなるので、信頼性の高いスピンドルモータを提供することができる。特にこの段差部12においては、FPC80の軸方向の折り曲げを少なくするために、回転中心軸から見て半径方向内側が低く、半径方向外側が高くなることが好適である。
【0038】
図5を参照して、従来例と実施例のFPC80の折り曲げ角度および折り曲げ高さを比較することによって、さらに本発明の主要部を、FPC80の折り曲げに係る構成の違いを中心に説明する。
【0039】
図5a)に示すように、従来例では、ベース10の延出部11に回転中心軸方向に貫通孔12bを設けていた。
【0040】
ここで折り曲げ高さを示すL1、L2は、ベース10の下面に取りつけられたFPC80の下面から、延出部11に着接しているFPC80の上面までの距離である。また、折り曲げ角度を示すΦ1、Φ2は、ベース10の下面に取りつけられたFPC80とそれぞれの貫通孔12a、12bを通る部分のFPC80とのなす角である。
【0041】
従来例では、延出部11の上面と下面との高低差が大きくなるので、それに伴いFPC80の折り曲げ高さL1は大きくなる。また、HDD外部からの塵埃等の侵入を防ぐために、貫通孔12bの回転中心軸から見た半径方向の開口長さを小さくする必要がある。したがって、折り曲げ角度Φ1は、必然的に大きくなる。これら折り曲げ高さL1および折り曲げ角度Φ1が大きくなることによりFPC80の曲げ復元力は大きくなるので、ベース10の下面に着接された外部接続部83に加わる力は大きくなり、FPC80は剥がれ易くなる。
【0042】
上記の図5a)における従来例に対し、図5b)に示す本発明では、折り曲げ高さL2および折り曲げ角度Φ2は、段差部12を設けること、すなわち貫通孔12aの近傍において延出部11の上部側の面を回転中心軸から見て半径方向外側の部分を半径方向内側の部分よりも高い位置になるように段差を形成することによって、延出部11の上面と下面との高低差は小さくなり、それによってこれら折り曲げ高さL2および折り曲げ角度Φ2を小さくすることができる。したがって、FPC80の曲げ復元力は小さくなり、延出部11の下面に着接された外部接続部83に加わる力は小さくなるので、FPC80は剥がれ難くなる。その結果、外部接続部83の接触不良は発生しにくくなり、信頼性の高いスピンドルモータを提供することができる。尚、段差部12は、延出部11の上面側高さを回転中心軸から見た半径方向内側の部分を半径方向外側の部分よりも低くすることにより形成してもよい。
【0043】
ベース10の円環状の凹部10aを構成している大径側壁10cの上部端面の軸方向高さ位置は、ステータ20のコアバック部21の上部端面の軸方向高さ位置以上であり、巻線23の上面の軸方向高さ位置以下であることが望ましい。大径側壁10cの上部端面の軸方向高さ位置がこの範囲内にあることにより、延出部11に設けられる貫通孔12aの軸方向高さ位置はFPC80と略同一の軸方向高さ位置となる。したがって、FPC80を殆ど折り曲げることなく、延出部11の下面側に外部接続部83を着接させることができる。
【0044】
図6に示すように、大径側壁10cの半径方向に貫通孔14を設けてもよい。これによりFPC80を殆ど折り曲げることなく、延出部11の下面側に外部接続部83を着接させることができる。これにより段差部12を形成する必要がないので、ベース10を薄型化することができる。この構造は、特にステータ20の上面とロータハブ40のディスク載置面43との軸方向高さに余裕があるとき、あるいは段差部12を設けるスペース余裕がないときに好適である。
【0045】
また段差部12に設けられる貫通孔12aあるいは大径側壁10cに設けられる貫通孔14は、ベース10の段差部12および円環状の凹部10aを成型加工後に追加工することは難しく、作業性が低下してしまうので、段差部12および円環状の凹部10aを成型加工する前に、予めこれら貫通孔12aあるいは14を形成しておくとよい。
【0046】
またこの段差部12を形成する延出部11の上面で、貫通孔12aよりも回転中心軸から見て半径方向内側の部分に、FPC80の幅と略同一の幅を有する凹状ガイド溝17を設けることにより、FPC80の直線状部82bの位置決めが容易となり、その結果、外部接続部83の位置決めも容易に行うことができる。FPC80に位置ずれがあると、FPC80に大きな力がかかりFPC80が剥がれてしまう危険性があるが、凹状ガイド溝17によってFPC80の位置決めを行うことで上記の不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0047】
また図7に示すように、貫通孔12aの回転中心軸から見た半径方向内側の上面側および半径方向外側の下面側に、それぞれ貫通孔12aの端面側の径を大きくする方向に傾斜した傾斜面12cを設けてあると、FPC80の折り曲げ角度をさらに減少させることができるので好適である。この傾斜面12cは、少なくとも段差部12の低い側(図中においては、貫通孔12aの回転中心軸から見た半径方向内側)に設けてあれば、上記効果を発揮することができる。
【0048】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、本発明の実施例では、ステータ20の巻線23の渡り線の係止としてインシュレータ26を使用しているが、これに限定されるものではなく、渡り線の係止を行うことができる構造であればよい。具体例を挙げれば、ステータ20を構成する複数枚の薄板のうち一番下に配置された1枚を、ティース部22の周方向の間の位置において、その内周縁を軸方向上側に折り曲げた構造にしてもよい。
【0050】
また例えば、本発明の実施例では、ベース10の延出部11には段差部12を設けているが、この形状に限定されるものではなく、貫通孔12aの回転中心軸から見た半径方向内側上面と半径方向外側上面の高さが異なればよい。すなわち、段差部12の代わりに傾斜面を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る記録ディスク駆動装置の一形態を示した模式断面図である。
【図2】本発明に係るスピンドルモータの一形態を示した模式断面図である。
【図3】本発明に係るスピンドルモータのベースおよびステータ周りを示した図である。
【図4】図1の要所拡大図である。
【図5】本発明と従来例を比較した図である。
【図6】本発明に係る要所部の他の実施形態を示した図である。
【図7】本発明に係る要所部の他の実施形態を示した図である。
【符号の説明】
【0052】
10 ベース
10a 凹部
10b 小径側壁
10c 大径側壁
10d 底部
11 延出部
12 段差部
12a、12b、14 貫通孔
13 シールド板固定部
17 凹状ガイド溝
20 ステータ
21 コアバック部
22 ティース部
23 巻線
25 孔
30 軸受保持部材
31 軸受スリーブ
32 プレート固定部
40 ロータハブ
44 磁気カバー
50 スラストプレート
60 プレート
70 ロータマグネット
80 フレキシブルプリント基板(FPC)
81 突部
81a ランド部
81b ランド線
82 本体部
83 外部接続部
90 シールド板
100 記録ディスク駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に対して同軸に配置され、外周部にロータマグネットを有する回転体と、
該回転体を外囲し、前記ロータマグネットと半径方向に間隙を介して配置されるステータと、
該回転体と向かい合う側を内部側、その反対側を外部側として、前記中心軸方向上側に開口して前記ステータを収容する凹部を前記内部側に有するベースと、
前記ステータの上側に一端を着接配置される可撓性を有する回路基板と、
を具備するスピンドルモータにおいて、
前記回路基板は、外部電源等に接続される外部接続部を有し、
前記ベースには、前記中心軸から見て前記凹部よりも半径方向外側の一部に、前記外部接続部を前記ベースの前記内部側から前記外部側へ通す貫通孔を有する延出部が設けられ、
前記回路基板を着接する前記延出部の前記ベースの前記内部側の面は、前記中心軸から見て前記貫通孔の位置より半径方向外側の部分が、半径方向内側の部分よりも、前記中心軸方向の上部側に形成されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
前記ステータは、前記ベースに形成された前記凹部の大径側壁の内周面に嵌合されたコアバック部と、
該コアバック部から半径方向内向きに突設して放射状に配列されたティースと、
前記ティースに巻回された巻線とで構成され、
前記凹部の前記大径側壁の上部端面の軸方向高さ位置は、前記凹部に収容された際の前記コアバック部の上部端面の軸方向高さ位置以上で、前記巻線の上面の軸方向高さ位置以下であることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記延出部の上面には、前記中心軸から見て前記貫通孔よりも半径方向内側の部分に、前記回路基板の幅と略同一の幅を有する凹状ガイド溝が形成され、
該凹状ガイド溝によって、前記中心軸から見て前記貫通孔よりも半径方向内側の部分と半径方向外側の部分との間に段差が構成されることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
中心軸に対して同軸に配置され、外周部にロータマグネットを有する回転体と、
該回転体を外囲し、前記ロータマグネットと半径方向に間隙を介して配置されるステータと、
該回転体と向かい合う側を内部側、その反対側を外部側として、前記中心軸方向上側に開口して前記ステータを収容する凹部を前記内部側に有するベースと、
前記ステータの上側に一端を着接配置される可撓性を有する回路基板と、
を具備するスピンドルモータにおいて、
前記回路基板は、外部電源等に接続される外部接続部を有し、
前記ベースには、前記中心軸から見て前記凹部よりも半径方向外側の一部に、前記外部接続部を前記ベースの前記内部側から前記外部側へ通す貫通孔を有する延出部が設けられ、
該貫通孔における少なくとも前記ベースの前記内部側であって前記中心軸から見て半径方向内側の開口端部には、該開口端部に向うに従い、前記貫通孔の径が大きくなる傾斜面が形成されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項5】
前記回路基板を着接する前記延出部の前記ベース内部側の面は、前記中心軸から見て前記貫通孔の位置より半径方向外側の部分が、半径方向内側の部分よりも、前記中心軸方向の上部側に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
中心軸に対して同軸に配置され、外周部にロータマグネットを有する回転体と、
該回転体を外囲し、前記ロータマグネットと半径方向に間隙を介して配置されるステータと、
該回転体と向かい合う側を内部側、その反対側を外部側として、前記中心軸方向上側に開口して前記ステータを収容する凹部を前記内部側に有するベースと、
前記ステータの上側に一端を着接配置される可撓性を有する回路基板と、
を具備するスピンドルモータにおいて、
前記回路基板は、外部電源等に接続される外部接続部を有し、
前記ベースに形成された前記凹部の大径側壁に、前記外部接続部を前記ベースの前記内部側から前記外部側へ通す貫通孔が設けられていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項7】
磁気記録層を有する記録ディスクと、
前記磁気記録層に情報を記録するとともに前記磁気記録層に記録された情報を再生するための磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記記録ディスクに対して移動させるための移動手段と、
前記磁気ディスクを回転駆動させるための請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のスピンドルモータとを備えたことを特徴とする記録ディスク駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−37393(P2007−37393A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116845(P2006−116845)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】