説明

スピーカ装置

【課題】比較的大きい音量の再生音を放射することができる薄型のスピーカ装置を提供する。
【解決手段】静止部10と、駆動部20と、振動体30を備え、駆動部20は、振動方向に交差する断面の形状が環状であるボイスコイル21と、ボイスコイル21が配置される磁気ギャップ23Gを有する磁気回路23とを備え、振動体30は、静止部10に振動自在に支持される複数の振動板31と、複数の振動板31のうち、対面する第1の振動板31−1と第2の振動板31−2との間に設けられ、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2を連結して互いに近接又は離間するように連動させてボイスコイル21の振動方向とは異なる方向に第1の振動板31−1と第2の振動板31−2を振動させる振動方向変換部40とを備え、振動方向変換部40は、剛性の連結部50を介してボイスコイル21に連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なスピーカ装置として、ダイナミック型スピーカ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このダイナミック型スピーカ装置は、例えば図1に示すように、フレーム3Jと、コーン形状の振動板21Jと、振動板21Jをフレーム3Jに支持するエッジ4Jと、振動板21Jの内周部に接合されたボイスコイルボビン610Jと、ボイスコイルボビン610Jをフレーム3Jに支持するダンパ7Jと、ボイスコイルボビン610Jに巻き回されたボイスコイル611Jと、ヨーク51J,磁石52J,プレート53Jを備えると共に、ボイスコイル611Jが配置される磁気ギャップが形成された磁気回路とを有する。このスピーカ装置では、音声信号がボイスコイル611Jに入力されると、磁気ギャップ内のボイスコイル611Jに生じたローレンツ力によりボイスコイルボビン610Jが振動し、その振動によって振動板21Jが駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−149596号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した一般的なダイナミック型スピーカ装置は、例えば図1に示すように、振動板21Jの音響放射側に対して反対側にボイスコイル611Jが配設され、ボイスコイル611J及びボイスコイルボビン610Jの振動方向と振動板21Jの振動方向が同じ方向になるように構成されている。そして、このようなスピーカ装置では、振動板21Jが振動するための領域、ボイスコイルボビン610Jが振動するための領域、磁気回路が配置される領域等が振動板21Jの振動方向(音響放射方向)に沿って形成されることになるので、スピーカ装置の全高が比較的大きく成らざるを得ない構造になっている。
【0005】
詳細には、図1に示すように、スピーカ装置の振動板21Jの振動方向に沿った大きさは、コーン形状の振動板21Jの振動方向に沿った大きさ及び振動板21Jをフレーム3Jに支持するエッジ4Jの全高(a)、振動板21Jとボイスコイルボビン610Jとの接合部からボイスコイル611Jの上端までのボイスコイルボビン高さ(b)、ボイスコイルの全高(c)、ボイスコイル611Jの下端部からヨーク51Jの上面までの高さに相当する、磁気回路の主に磁石高さ(d)、磁気回路の主にヨーク51Jの厚さ(e)等からなる。このようなスピーカ装置においては、充分な振動板21Jの振動ストロークを確保するためには、前述したa,b,c,dの高さを充分に確保する必要があり、また充分な電磁気力を得るためには前述したc,d,eの高さを充分に確保する必要があるので、特に、大音量対応型スピーカ装置では、スピーカ装置の全高が大きく成らざるを得ない。
【0006】
このように、従来のスピーカ装置では、ボイスコイルボビン610Jの振動方向と振動板21Jの振動方向とが同方向になっているので、振動板21Jの振幅を大きくして大音量を得ようとすると、ボイスコイルボビン610Jの振動ストロークを確保するためにスピーカ装置の全高が大きくなってしまい、装置の薄型化を達成し難い。すなわち、装置の薄型化と大音量化を両立し難い問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、比較的大きい音量の再生音を放射することができる薄型のスピーカ装置を提供すること、ボイスコイルの振動を方向変換して効率よく振動板に伝えることができること、薄型で且つ無指向性のスピーカ装置を得ること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
静止部と、駆動部と、振動体を備え、前記駆動部は、振動方向に交差する断面の形状が環状であるボイスコイルと、当該ボイスコイルが配置される磁気ギャップを有する磁気回路とを備え、前記振動体は、前記静止部に振動自在に支持される複数の振動板と、前記複数の振動板のうち、対面する第1の振動板と第2の振動板との間に設けられる振動方向変換部を備え、前記振動方向変換部は、前記第1の振動板と前記第2の振動板を連結して互いに近接又は離間するように連動させるとともに、前記ボイスコイルの振動方向とは異なる方向に前記第1の振動板と前記第2の振動板を振動させ、前記振動方向変換部は、剛性の連結部を介して前記ボイスコイルに連結していることを特徴とするスピーカ装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した説明図(断面図)である。
【図3】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の静止部の形態例を示した説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の組み立て例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態における駆動部を駆動部支持部に取り付けた状態を示した説明図(同図(a)が正面図、同図(b)がX−X断面図、同図(c)がY−Y断面図)である。
【図6】本発明の実施形態における駆動部支持部に取り付けられる駆動部の分解図である。
【図7】本発明の実施形態におけるボイスコイル又はボイスコイル支持部の変形例を示した説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の変形例を示した説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の他の変形例を示した説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の他の変形例を示した説明図である。
【図11】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の適用例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図2は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した説明図(断面図)である。スピーカ装置1は、静止部10と駆動部20と振動体30を備えている。静止部10は駆動部20や振動体30の振動に対して相対的に静止した部位であって、駆動部20や振動体30を支持する部位である。なお、静止部は、完全に静止している状態を意図するわけでなく、例えば、振動板30を支持できる程度に静止していれば良く、スピーカ装置1を駆動する際に生じる振動が伝搬して、その振動が静止部全体に伝播しても構わない。ここでいう静止部10には、後述するフレーム、磁気回路23の一部やスピーカ装置1が装着される被装着箇所等が該当する。駆動部20は振動体30を振動させる駆動力を発生させるスピーカ装置1の一部である。振動体30は駆動部20の駆動力によって振動するスピーカ装置1の一部である。
【0011】
駆動部20は、ボイスコイル21とボイスコイル21が配置される磁気ギャップ23Gを有する磁気回路23とを備えている。ボイスコイル21は、環状の形態である断面形状を有する。なお、ここでのボイスコイル21の断面は、ボイスコイル21自身の振動方向(図示X軸方向)に交差する方向に延在する面である。
【0012】
ボイスコイル21は、例えば、図示のX軸周りに巻き回された線状の導電部材で構成されている。図示の例では、導電部材が環状のボイスコイル支持部22に支持されているが、ボイスコイル21が実質的に導電部材のみで構成され、環状の剛性を有するものであってもよい。導電部材は、始点および終点を有する導線、筒状の形状を有する金属部材や金属フィルムであっても構わなく、公知の材料を用いることができる。
【0013】
ボイスコイル21は、1つの導電部材で構成しても構わなく、複数の導電部材で構成しても構わない。ボイスコイル21を複数の導電部材で構成する場合、例えば、巻き回された一方の導線上に、他方の導線を巻き回して、ボイスコイル21を構成しても構わない(デュアルボイスコイル)。ボイスコイル21は、ボイスコイル支持部22を備えていても構わない。このボイスコイル支持部22は、公知の樹脂材料で構成されて構わない。ボイスコイル21の軽量化を図るべく、ボイスコイル支持部22を筒状の樹脂部材で構成し、このボイスコイル支持部22の外周側面に導電部材としての導電層を形成しても構わない。ボイスコイル支持部22は、ボイスコイル21の振動方向にて、剛性を備えていても構わない。
【0014】
ボイスコイル21と外部とを電気的に接続すべく、スピーカ装置1は引出線(図示しない)を備えても構わない。この引出線は、線状の導電部材で構成しても構わない。また、後述するダンパの表面又は内部に導電部材を設け、この導電部材を引出線として用いても構わない。引出線を介して又は直接ボイスコイル21に音声信号が入力されると、ボイスコイル21を流れる音声電流が磁気ギャップ23Gの磁束を横切ることでローレンツ力が生じ、これが振動体30を振動させる駆動力になる。
【0015】
磁気回路23は、図示の例では、ヨーク23Aと磁石23Bとプレート23Cを備えており、ヨーク23Aは外周筒部23A1と底面部23A2と柱部23A3を備える。柱部23A3に磁石23Bが磁気的に接合し、プレート23Cの外周面とヨーク23Aの外周筒部23A1との間に磁気ギャップ23Gが形成される。ヨーク23Aと柱部23A3は別部材で構成されていても良く、一体に構成されていても構わない。また、柱部23A3を磁石にするか、又は磁石23B及び柱部23A3を一体にした磁石にしても構わない。磁気回路23を構成する構成部材としての、ヨーク23A、磁石23B、プレート23Cは磁性体で構成されている。磁石23Bは、希土類系磁石、フェライト系磁石であっても構わなく、公知の磁性材料を用いることができる。また、図示の例では単一の磁石が示されているが、磁気効率等を考慮して複数の磁石を用いても構わない。複数の磁石を用いる場合、希土類系磁石とフェライト系磁石とを組み合わせて用いても構わない。図示の例は、いわゆる内磁型の磁気回路であるが、外磁型磁気回路、内磁型及び外磁型磁気回路を併用した磁気回路、複数の磁石を用いた反発型磁気回路であってもよく、磁気回路の形態は特にこれに限定されるものではない。
【0016】
駆動部20は、図示の例では、X軸方向に沿って一対のボイスコイル21,21と一対の磁気回路23,23が対向配置されている。一対のボイスコイル21,21の振動は実質的に同一の音声信号の入力によって同期しており、X軸方向に沿って互いに逆向きに振動する。音声信号の入力方法の例として、一対のボイスコイルを外部に対して電気的に並列となるように接続することが挙げられる。
【0017】
振動体30は、振動板31と振動方向変換部40を備えている。振動板31はエッジ33を介して振動自在に静止部10に支持されている。振動方向変換部40は、一部が静止部10に支持されてボイスコイル21の振動を方向変換して振動板31に伝える機能を有する。
【0018】
図示の例ではスピーカ装置1は複数の振動板31を備えており、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2が対面した状態で配置されている。第1の振動板31−1と第2の振動板31−2は、実質的に同形態である。第1の振動板31−1と第2の振動板31−2は、互いに、実質的に面対称に配備されている。個々の振動板31は、平板状部31Aとこの平板状部31Aを囲む環状部31Bを備えており、環状部31Bは振動板31の振動方向(Z軸方向)に沿って突出する頂部32を備え、ボイスコイル21の振動方向(X軸方向)に対して交差する方向に剛性を備える。環状部31Bに設けられる頂部32は、第1の頂部32−1と第2の頂部32−2を備える。第1の頂部32−1は、振動方向変換部40側に突出する形状を備える。第2の頂部32−2は、第1の頂部32−1と平板状部31Aとの間に配置され、音響放射方向に向かって突出する形状を備える。
【0019】
振動方向変換部40は、対面する第1の振動板31−1と第2の振動板31−2との間に設けられている。また、振動方向変換部40は、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2を連結して互いに近接又は離間するように連動させて、ボイスコイル21の振動方向とは異なる方向(図示の例ではZ軸方向)に第1の振動板31−1と第2の振動板31−2を振動させる。
【0020】
振動方向変換部40は、リンク部分41と関節部42を有している。このリンク部分41には、その両端に関節部42が設けられている。また、振動方向変換部40は、ボイスコイル21と直接又は他の部材を介して連結するボイスコイル用連結部分43、振動板31と直接又は他の部材を介して連結する振動板用連結部分44、静止部10と直接又は他の部材を介して連結する静止部用連結部分45をそれぞれ備えている。他の部材とは、接着剤又は後述する剛性の連結部50等である。ここでのリンク部分41は、剛性を有する振動方向変換部40の一部分であり、関節部42はリンク部分を他の部分に対して角度変更自在に支持又は連結する振動方向変換部40の一部分である。また、ボイスコイル用連結部分43、振動板用連結部分44と静止部用連結部分45は剛性を備える。
【0021】
リンク部分41は、ボイスコイル21と振動板31とを連結する第1のリンク部分41−1と、この第1のリンク部分41−1を角度変更自在に静止部10に連結する第2のリンク部分41−2を備える。
【0022】
ボイスコイル用連結部分43は、関節部42を介して、第1のリンク部分41−1の一方の端部に連結している。振動板用連結部分44は、関節部42を介して、第1のリンク部分41−1の他方の端部に連結している。第2のリンク部分41−2の一方の端部は、関節部42を介して、第1のリンク部分41−1の中間部分に連結している。第2のリンク部分41−2の他方の端部は、関節部42を介して、静止部用連結部分45に連結している。
【0023】
第1のリンク部分41−1とボイスコイル用連結部分43との間に設けられる関節部42を第1の関節部42−1とする。第2のリンク部分41と静止部用連結部分45との間に設けられる関節部42を第2の関節部42−2とする。第1の関節部42−1と第2の関節部42−2の位置は、振動板31の振動方向(Z軸方向)において実質的に同じ高さになっている。
【0024】
振動方向変換部40のリンク部分41は、図示の例では、実質的に左右対称且つ上下対称に構成されている。リンク部分41Aとリンク部分41Bとによって平行リンクが形成されている。また、実質的に左右対称且つ上下対称に配置されたリンク部分41A又はリンク部分41Bはパンタグラフ状に配置されている。これによると、一対のボイスコイル21,21の同期振動によって一対のボイスコイル用連結部分43,43がX軸方向に沿って互いに逆向きに振動すると、リンク部分41Aとリンク部分41Bは実質的に平行状態を維持しながら角度変更することになる。更に、一対のボイスコイル用連結部分43,43のX軸方向に沿った互いに逆向きの振動が、一対の振動板用連結部分44,44のZ軸方向に沿った互いに逆向きの振動に変換される。
【0025】
振動方向変換部40は、剛性の連結部50を介してボイスコイル21に連結している。詳しくは、振動方向変換部40のボイスコイル用連結部分43が連結部50を介してボイスコイル21又はボイスコイル21を支持するボイスコイル支持部22と連結している。
【0026】
連結部50は、剛性の取付面部51と、第1の筒状連結部52と、第2の筒状連結部53とを備える。剛性の取付面部51は、ボイスコイル21の振動方向に対して交差する方向に沿った取付面51aを有する。第1の筒状連結部52は、ボイスコイル用連結部分43に連結する。詳細には、第1の筒状連結部52の内周面は、ボイスコイル用連結部分43の外周面に接している。これにより、第1の筒状連結部52は、ボイスコイル用連結部分43を、ボイスコイル21に対し規定の位置に配置する。第2の筒状連結部53は、ボイスコイル21に連結する。詳細には、第2の筒状連結部53の外周面は、ボイスコイル支持部22の内周面に接している。これにより、第2の筒状連結部53は、ボイスコイル支持部22を、ボイスコイル用連結部分43に対し規定の位置に配置する。
【0027】
振動板31の振動方向(Z軸方向)において、ボイスコイル21とボイスコイル用連結部分43の相対的な位置関係は、連結部50により規定される。また、ボイスコイル21の振動方向(X軸方向)における、ボイスコイル21とボイスコイル用連結部分43の相対的な位置関係は、連結部50、ボイスコイル支持部22、或いはボイスコイル用連結部分43の長さにより規定される。ボイスコイル21の振動方向に対するリンク部分41A,41B、41−2を含む)の角度は、ボイスコイル21の振動方向における、連結部50、ボイスコイル支持部22、或いはボイスコイル用連結部分43の長さにより規定される。ボイスコイル21の振動方向に対する、リンク部分41A,41B、41−2の角度は、振動板31の振幅の大きさに合わせて、適宜変更である。
【0028】
連結部50が有する第2の筒状連結部53の内側側面には、補強部53−1(図5参照)が設けられている。この補強部53−1を設けることで、第2の筒状連結部は、ボイスコイル21の振動方向にて、剛性を備えることができる。また、ボイスコイル21又はボイスコイル支持部22の外周側面と、第2の筒状連結部53の内側側面とを接合用部材(接着剤)で接合しても構わない。第2の筒状連結部53の内側側面には、凹状の接着剤溜め部(図示しない)を設けても構わない。凹状の接着剤溜め部を設けることで、接着剤がボイスコイル21、ボイスコイル支持部22、又は第2の筒状連結部53からはみ出すこと、スピーカ装置1を構成する部材(ダンパ、引出線など)に、はみ出した接着剤が付着し、役割を果たすことができなくなること、ボイスコイル21、ボイスコイル支持部22、第2の筒状連結部53に接合してしまうことなどを抑止できる。
【0029】
ボイスコイル21の振動方向(図示X軸方向)において、振動板31の外周部31Cは、図示の破線で示すように、連結部50に対して略同じ位置、又はスピーカ装置1の内側に配置されている。スピーカ装置1を薄型化すると、振動板31と連結部50やボイスコイル21(或いはボイスコイル支持部22)が接近して配置される。このため振動板31が下方に移動した場合には振動板31と連結部50等が接触しやすくなる。これを回避するために、これら連結部50等を振動板31の外周部に対して外側に配置し、或いは連結部50と略同じ位置に配置している。これによって、振動板31が大きく振動した場合の他部材との接触を回避できる。
【0030】
更には、振動板31の振動方向(図示Z軸方向)における振動板31の外周部31Cと第1の頂部32−1の距離(Z1)は、連結部50の外周部54とボイスコイル用連結部分43との距離(Z2)、又はボイスコイル21の外周側面とボイスコイル用連結部分43との距離(Z3)に対して大きい。これによって、振動板31が大きく下方に振動した場合であっても、振動板31と連結部50等が接触することを回避できる。
【0031】
静止部10は、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2と駆動部20を支持する外周支持部11と、振動方向変換部40を支持する内側支持部14を備えている。
【0032】
図3は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置の静止部の形態例を示した説明図である。静止部10は、第1の外周枠部13−1を有する第1の部品10Aと、第2の外周枠部13−2を有する第2の部品10Bと、橋渡し部15と駆動部支持部16とを有する第3の部品10Cを、振動板31の振動方向に沿って重ね、組み立てることによって構成される。第1の外周枠部13−1は第1の振動板31−1を支持し、第2の外周枠部13−2は第2の振動板31−2を支持する。同図(a)が第2の部品10B(第1の部品10Aもほぼ同形態)を示しており、同図(b)が第3の部品10Cを示しており、同図(c)が第1の部品10Aと第2の部品10B間に配置される駆動部支持部16を示している。第1の部品10A、第2の部品10B、第3の部品10Cは、振動板の振動方向にて、剛性を備えても構わない。
【0033】
第1,第2,第3の部品10A,10B,10Cはそれぞれ外周支持部11を備えている。内側支持部14は、図示の例では、第3の部品10Cにおける外周支持部11から振動方向変換部40に向かって突出しており、振動板31の振動方向に対して剛性を備える。内側支持部14は、対向配置される外周支持部11,11の2つの部分から突出し、この2つの部分間を橋渡す橋渡し部15になっている。この橋渡し部15は、一方の外周壁部12から他方の外周壁部12へ向かって延在する補強部15−1を備える。補強部15−1は、凸状の断面形状を備える。この補強部15−1を橋渡し部15が備えることで、橋渡し部15は、振動板31の振動方向において剛性を備える。内側支持部14は、振動方向変換部40の一部が取り付けられる、取付部14−1を備える。具体的には、振動方向変換部40の静止部用連結部分45に設けられる孔部(図示しない)に、取付部14−1が挿入される。この取付部14−1と静止部用連結部分45とが嵌合することで、振動方向変換部40は、橋渡し部15と連結する。
【0034】
図3(b)に示すように、外周支持部11は振動板31の振動方向に沿った壁面12hを有する外周壁部12を備えている。外周壁部12は、図示の例では、橋渡し部15の両端部に一対設けられている。静止部10は、外周壁部12を複数備えている。複数の外周壁部12は、振動方向変換部40を取り囲んで配置される。
【0035】
図3(a)に示すように、外周支持部11は、外周壁部12の上端部12a側に設けられる第1の外周枠部13−1と、外周壁部12の下端部12b側に設けられる第2の外周枠部13−2を備えている。第1の外周枠部13−1は、第1の振動板31−1を第1のエッジ33−1を介して支持しており、第2の外周枠部13−2は、第2の振動板31−2を第2のエッジ33−2を介して支持している。
【0036】
また、第1の外周枠部13−1、第2の外周枠部13−2は、振動板31とエッジ33を配置する開口部11−1を備える。図示の例では、平面形状が楕円形である開口部11−1が示されている。必要に応じて、この開口部11−1は、平面形状が矩形状、トラック形状(一対の直線部と一対の曲線部で規定される形状)などにしても構わない。この開口部の形状に対応させて、適宜、振動板31とエッジ33の平面形状を変えても構わない。
【0037】
なお、本願における矩形状とは、長円形状、楕円形状、トラック形状を含むものとする。
【0038】
図1に示すように、磁気回路23は、第1の外周枠部13−1と第2の外周枠部13−2との間に設けられる。図示の例では、第1の外周枠部13−1を有する第1の部品10Aと第2の外周枠部13−2を有する第2の部品10Bの間に、橋渡し部15と駆動部支持部16とを有する第3の部品10Cが挟持されている。更に、第3の部品10Cの駆動部支持部16に磁気回路23が支持される。また、駆動部支持部16はダンパを介してボイスコイル21も支持している。詳細には、図3(c)に示すように、駆動部支持部16は、開口部16−1を備える。この開口部16−1内にボイスコイル21の一部、ダンパの一部、磁気回路23の一部が配置される。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置の組み立て例を示す説明図である。第1の部品10Aは、第1の外周枠部13−1を有する部品である。第1の外周枠部13−1には、第1の振動板31−1が第1のエッジ33−1を介して取り付けられている。第2の部品10Bは、第2の外周枠部13−2を有する部品である。第2の外周枠部13−2には、第2の振動板31−2が第2のエッジ33−2を介して取り付けられている。また、第3の部品10Cには振動方向変換部40が取り付けられている。振動方向変換部40は静止部用連結部分45,45を一対備えている。その一対の静止部用連結部分45,45を内側支持部14の表裏両面に接合することで、振動方向変換部40が第3の部品10Cに取り付けられる。第3の部品10Cは駆動部支持部16を備え、駆動部支持部16に磁気回路20とボイスコイル21又はボイスコイル支持部22が支持されている。
【0040】
組み立てに際しては、振動方向変換部40のボイスコイル用連結部分43に連結部50を介してボイスコイル21又はボイスコイル支持部22を連結する。この際、連結部50の第1の筒状連結部52にボイスコイル用連結部分43が連結される。連結部50の第2の筒状連結部53にはボイスコイル21又はボイスコイル支持部22が連結されている。ボイスコイル21又はボイスコイル支持部22と第2の筒状連結部53の連結をするに際しては、ボイスコイル21又はボイスコイル支持部22の端部を連結部50の取付面51aに当接させることで位置決めを行い、第2の筒状連結部53をボイスコイル21又はボイスコイル支持部22の内側に取り付ける。また、第1の筒状連結部52とボイスコイル用連結部分43との連結をするに際しては、ボイスコイル用連結部分43の端部を第1の筒状連結部52の内側に取り付ける。
【0041】
第1の部品10Aと第2の部品10Bは、その間に第3の部品10Cを挟み込んだ状態で接合される。第1の振動板31−1の背面は振動方向変換部40の振動板用連結部分44に接合される。第3の部品10Cにおける駆動部支持部16の外縁部16aは、第1の部品10Aにおける凹状の嵌合部13aに取り付けられる。同様に、第2の振動板31−2の背面は、振動方向変換部40の振動板用連結部分44に接合される。第3の部品10Cにおける駆動部支持部16の外縁部16aは、第2の部品10Bにおける凹状の嵌合部13aに取り付けられる。
【0042】
図5は、駆動部を駆動部支持部に取り付けた状態を示した説明図(同図(a)が正面図、同図(b)がX−X断面図、同図(c)がY−Y断面図)である。ボイスコイル21は、長軸21a及び短軸21bで規定される矩形状である断面形状を有する。ボイスコイル21の断面は、ボイスコイル21の振動方向(図1のX軸方向)に交差する方向に延在する面である。ボイスコイル21の短軸21bの方向は、振動板31の振動方向に沿っている。また、磁気回路23は、長軸21a及び短軸21bで規定される矩形状の断面形状を備えている。この断面はボイスコイル21の振動方向(図1のX軸方向)に交差する方向に延在する面である。磁気回路23の短軸21bの方向は、振動板31の振動方向に沿っている。スピーカ装置1は、ボイスコイル21の長軸21aに沿って設けられる帯状のダンパ24を備える。ボイスコイル21又はボイスコイル支持部22は、ダンパ24によって、駆動部支持部16に振動自在に支持されている。駆動部20は、図示のように、駆動部支持部16に磁気回路23及びボイスコイル21(ボイスコイル支持部22)を取り付けた一体ユニットとして、スピーカ装置1を構成する。
【0043】
スピーカ装置1は、複数の磁気回路23を備えても構わない。図示の例では、長軸21aに沿って、一対の磁気回路23が配置されている。長軸21a方向に沿って、複数の磁気回路23を配置することで、例えば円筒状のボイスコイルを備えるスピーカ装置に対して、スピーカ装置1の薄型化を図るとともに、ボイスコイル21に作用する電磁気力を比較的大きくできる。このため、スピーカ装置1の駆動力を向上させることができる。スピーカ装置1が備える複数の磁気回路23に対応させて、複数のボイスコイル21又はボイスコイル支持部22をスピーカ装置1が備えても構わない。複数のボイスコイル21又は複数のボイスコイル支持部22は、スピーカ装置1の薄型化を図るべく、長軸21aの方向に沿って配置することができる。
【0044】
図6は、駆動部支持部に取り付けられる駆動部の分解図を示している。駆動部支持部16には、中央に開口部16bが設けられ、この開口部16bの外側に磁気回路保持部16cが突出している。磁気回路保持部16cの内側にヨーク23A(外周筒部23A1,底面部23A2,柱部23A3を含む)と磁石23Bとプレート23Cからなる磁気回路23が保持される。開口部16bにはボイスコイル21又はボイスコイル支持部22が挿入され、前述したダンパ24によって支持されたボイスコイル21が磁気回路23の磁気ギャップ内に保持される。ボイスコイル21又はボイスコイル支持部22の先端には前述したように連結部50が取り付けられる。
【0045】
図7は、ボイスコイル又はボイスコイル支持部の変形例を示している。この例では、ボイスコイル支持部22はその内側側面に環状の補強部22aを備えている。この補強部22aは図示のようなリブ状の凸部であってもよいし、その部分に剛性の高い枠材を取り付けたものであってもよい。また、ボイスコイル支持部22に換えてボイスコイル21自体を剛性の環状体にして、その内側に同様の補強部を設けたものであってもよい。また、スピーカ装置1が複数の磁気回路23を備える場合、複数の磁気回路23の配置位置に対応させて、枠材を配置しても構わない。具体的には、複数の磁気回路23が備える複数のプレート23Cの間であって、ボイスコイル21又はボイスコイル支持部22の内側に、枠材を配置しても構わない。このような補強部22aを設けることで、環状のボイスコイル21又はボイスコイル支持部22の変形を抑止することが可能になる。
【0046】
図8は本発明の実施形態に係るスピーカ装置の変形例を示している。このスピーカ装置1Aは、前述した実施形態と同様に磁気回路23を含む駆動部20によって振動板31を振動させるものであり、振動板31が第1の振動部34と、第1の振動部34を囲む第2の振動部35とを備えている。第1の振動部34はボイスコイル21の振動方向に対し交差する方向に並べて配置される複数の凹部34aを備え、第1の振動部34と第2の振動部35との間には、環状の凹部36が設けられている。この振動板31はエッジ33を介して静止部10に支持されている。エッジ33はエッジ連結部33aによって静止部10(フレーム)に連結される。振動板31が凹部34a、36を備えることで、振動板31の振動方向において、振動板31は剛性を備えることができる。また、振動板31は、凹部34a、36に代えて、凸部を設けても構わなく、振動板31に剛性を付与できる形状であれば、特に限定はしない。
【0047】
エッジ33は、径方向に延在する、凹状又は凸状の補強部37を備える。エッジ33の周方向における、補強部の断面形状は、エッジ33の断面形状に沿った、湾曲状であっても構わない。図示の例では、凹状の複数の補強部がエッジ33の周方向に沿って、並べて配置されている。この補強部37は、図示の例では、エッジ33の角部に設けられている。エッジ33に補強部37を設けることで、ボイスコイル21にローリング現象の発生を抑止することが可能になる。また、補強部37をエッジ33の径方向に沿って設けることで、エッジ33の径方向における剛性を向上させることができる。また、エッジ33の周方向における補強部37の断面形状を湾曲状にすることで、エッジ33が周方向に沿って伸縮することができる。エッジ33の周方向において、エッジ33は柔軟性を備える。これにより、エッジ33は、振動板31の振動方向において、柔軟性を備えるとともに、最低共振周波数(F0)を比較的小さくすることができる。
【0048】
図9は本発明の実施形態に係るスピーカ装置の他の変形例を示している。このスピーカ装置1Bは、振動板31(31−1,31−2)の形態がコーン形状である以外は図2に示した例と同様の構成を備える。図2の例との同一部位に同一符号を付して重複説明を省略する。振動板31をコーン形状にすることで、振動板31の振動方向において、振動板31は剛性を備えることができる。
なお、振動板31は、振動方向変換部40の振動板用連結部44と連結する平板状部31Aを備える。この平板状部31Aは、振動板31の振動方向において、剛性を向上させることができる。
【0049】
図10は本発明の実施形態に係るスピーカ装置の他の変形例を示している。このスピーカ装置1Cは、振動板31(31A,31B)を片側のみに備える以外は図2に示した例と同様の構成を備える。図2の例との同一部位に同一符号を付して重複説明を省略する。振動板31と対面する側には静止部10としての底面部17が設けられる。必要に応じて、底面部17は設けなくても構わない。底面部17を設けない場合、後述する電子機器、特にフラットディスプレイパネルの筐体にスピーカ装置1を取り付けることで、筐体の一部を底面部17としても構わない。
【0050】
本発明の実施形態に係るスピーカ装置1において、ボイスコイル21の振動方向と振動板31の振動方向が異なっている。ボイスコイル21の振動は、振動方向変換部40によって方向変換されて振動板31に伝えられる。これによって、ボイスコイル21の振幅を大きくしても、ボイスコイル21の振幅が直接スピーカ装置1における振動板31の振動方向の厚さに影響しない。よって、本発明の実施形態係るスピーカ装置1は、従来のスピーカ装置では実現し難かったスピーカ装置の大出力化と薄型化の両立が可能になる。
【0051】
スピーカ装置1において、ボイスコイル21の振動が剛性の連結部50を介して振動方向変換部40に伝わる。振動方向変換部40は、剛性のリンク部分41の角度変化により、ボイスコイルの振動方向を方向変換する。これによって、ボイスコイル21の振動を効率よく振動板31に伝えることができる。また、振動方向変換部40は、第1のリンク部分41−1と第2のリンク部分41−2とを備える。第2のリンク部分41−2の一端は、静止部10に支持される。第2のリンク部分41−2の他端は、第1のリンク部分41−1の中間部分と連結している。第1のリンク部分の一端は、ボイスコイル21と直接又は他の部材を介して連結している。第2のリンク部分の他端は、振動板31と直接又は他の部材を介して連結している。また、第2のリンク部分41−2の他端により、第1のリンク部分41−1が角度変更自在に支持される。このため、第1のリンク部分41−1の一端にボイスコイル21のX軸方向の振動を加えると、第1のリンク部分41−1の他端はZ軸方向に沿って振動する。これによって、ボイスコイル21のX軸方向の振動を効率よくZ軸方向に変換して振動板31に伝えることができる。
【0052】
スピーカ装置1は、環状のボイスコイル21を備えるが、この環状のボイスコイル21は振動方向変換部40が介在する第1の振動板31−1と第2の振動板31−2の間に配備されている。これによりボイスコイル21のZ軸方向(振動板31の振動方向)の厚さを振動方向変換部40のZ軸方向の幅内に収めることができればスピーカ装置1のZ軸方向の厚さに影響することなくボイスコイル21を配備することができる。ボイスコイル21の断面形状(ボイスコイル21自身の振動方向に交差して延在する断面の形状)は短軸21bがZ軸方向(振動板31の振動方向)に沿う、横長の矩形状に形成されている。そのため、スピーカ装置1の厚さを薄型化した場合にも、長軸21a方向の幅を比較的大きくしつつ、十分な駆動力を得ることができる。
【0053】
スピーカ装置1は、静止部10としての外周支持部11を備え、その外周支持部11の対向部位を橋渡す橋渡し部15を備えており、その橋渡し部15によって内側支持部14が形成されている。この内側支持部14は装置内部の静止部10となり振動方向変換部40を支持している。第1の振動板31−1と第2の振動板31−2を対向配置する形態であっても、スピーカ装置1の内部に形成される静止部10(内側支持部14)で振動方向変換部40を支持している。このため、前述したようにボイスコイル21の振動を、振動方向変換部40を介して、効率よく2つの振動板(第1の振動板31−1と第2の振動板31−2)に伝えることができる。
【0054】
またスピーカ装置1は、静止部10としての外周支持部11を備える。また、外周支持部11が振動板31の振動方向に沿った壁面を有する外周壁部12を備える。このため、静止部は、振動板31の振動に対して比較的高い剛性を得ることができる。また、外周壁部12が橋渡し部15の両端部に一対設けられているので、橋渡し部15の変形を抑止し、振動方向変換部40を高い剛性を有する静止部10で支持することができる。
【0055】
外周支持部11は、外周壁部12の上端部12a近傍に設けられる第1の外周枠部13−1と、外周壁部12の下端部12b近傍に設けられる第2の外周枠部13−2を備える。第1の外周枠部13−1は、第1の振動板31−1を第1のエッジ33−1を介して支持する。第2の外周枠部13−2は、第2の振動板31−2を第2のエッジ33−2を介して支持する。このため、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2は、剛性を有する外周壁部12により、所定の間隔(第1の振動板31−1と第2の振動板31−2との間の距離)を維持しつつ、振動自在に静止部10に支持される。
【0056】
静止部10は外周壁部12を複数備えている。外周壁部12は振動方向変換部40を取り囲んで配置されている。また、外周壁部12は、磁気回路23を支持している。このため、振動板31の振動方向において、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2との間に、振動方向変換部40と磁気回路23とを配置することができる。すなわち、振動板31の振動方向における、スピーカ装置1を比較的薄くすることができる。
【0057】
また、スピーカ装置1は、第1の振動板31−1と第2の振動板31−2を対向配置させて、両振動板を逆向きに同期振動させるので、薄型の構造でありながら無指向性の音響出力を実現することが可能になる。
【0058】
また、静止部10のうち、駆動部支持部16をフレームとし、外周枠部13と外周壁部12とをキャビネットの一部分としても構わない。この場合、キャビネットは気密である内部空間を備える。フレームはキャビネットに支持される。キャビネットの内部空間内には、前述した振動方向変換部40や振動板31の一部、磁気回路23の一部、ボイスコイル21、ボイスコイル支持部22、連結部50が配置される。なお、キャビネットの一部は、後述する電子機器、例えばテレビの筐体であっても構わない。
【0059】
振動板31は、必要に応じて、振動板31の振動方向において、剛性を有する平板形状に形成しても構わない。
【0060】
振動方向変換部40は、橋渡し部に静止部用連結部分45に支持されているが、これに限定されず、一対の振動方向変換部40が有する静止部用連結部分45同士を連結させても構わない。
【0061】
以上のように、本発明の実施形態に係るスピーカ装置は薄型化が可能であり、且つ大音量化の実現も可能である。このようなスピーカ装置は各種電子機器や車載用として効果的に用いることができる。図11は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置の適用例を示した説明図である。同図(a)に示したフラットパネルディスプレイのような電子機器2は、スピーカ装置1の設置に必要な厚さスペースを小さくできるので、電子機器全体の薄型化が可能になる。また、薄型化された電子機器においても充分な音声出力を得ることができる。また、スピーカ装置は、フラットパネルディスプレイの背面側に取り付けられても構わない。同図(b)は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置を備えた自動車3を示している。同図に示した自動車3は、スピーカ装置1の薄型化によって車内スペースの拡大が可能になる。特にドアパネルに本発明の実施形態に係るスピーカ装置1を内装したものでは、ドアパネルの出っ張りを無くし運転者の操作スペースの拡大が可能になる。また、充分な音声出力が得られるので、雑音が多い高速走行時等でも車内で快適に音楽やラジオ放送を楽しむことができる。
【0062】
また、スピーカ装置1を備える建築物として、人の居住を用途とする住宅(建築物)や会議、講演会、パーティー等、多数の人数を収容して催しを行うことができるホテル、旅館や研修施設等(建築物)にスピーカ装置1を設置した場合、スピーカ装置1の設置に必要な厚さスペースを小さくできるので、不要なスペースを削除でき、スペースを有効に活用することができる。また、近年、プロジェクターや大画面テレビ等の普及に伴い、音響・映像設備を備える居室を設ける例が見られるようになっており、一方で音響・映像設備を備える居室を設けずに、リビングルーム等をシアタールームとして使用するケースも見られる。このようなケースにおいても、スピーカ装置1を用いることで、簡易にリビングルーム等をシアタールーム化でき、さらにリビングルーム内の空間を有効に活用することが可能である。なお、スピーカ装置1の配置場所は、例えば、居室内の天井や壁等が挙げられる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B,1C:スピーカ装置,10:静止部,
11:外周支持部,12:外周壁部,13:外周枠部,
14:内側支持部,15:橋渡し部,16:駆動部支持部,17:底面部,
20:駆動部,21:ボイスコイル,22:ボイスコイル支持部,
23:磁気回路,23G:磁気ギャップ,23A:ヨーク,23B:磁石,
23C:プレート,24:ダンパ,
30:振動体,31:振動板,31A:平板状部,31B:環状部,
32:頂部,32−1:第1の頂部,32−2:第2の頂部,
31C:外周部,
31−1:第1の振動板,31−2:第2の振動板,
33:エッジ,33−1:第1のエッジ,33−2:第2のエッジ,
34:第1の振動部,35:第2の振動部,
36:凹部(環状の凹部),37:補強部,
40:振動方向変換部,41(41A,41B):リンク部分,42:関節部,
43:ボイスコイル用連結部分,44:振動板用連結部分,
45:静止部用連結部分
50:連結部,51:取付面部,
52:第1の筒状連結部,53:第2の筒状連結部,54:外周部,
2:電子機器,3:自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、駆動部と、振動体を備え、
前記駆動部は、振動方向に交差する断面の形状が環状であるボイスコイルと、当該ボイスコイルが配置される磁気ギャップを有する磁気回路とを備え、
前記振動体は、前記静止部に振動自在に支持される複数の振動板と、前記複数の振動板のうち、対面する第1の振動板と第2の振動板との間に設けられる振動方向変換部を備え、
前記振動方向変換部は、前記第1の振動板と前記第2の振動板を連結して互いに近接又は離間するように連動させるとともに、前記ボイスコイルの振動方向とは異なる方向に前記第1の振動板と前記第2の振動板を振動させ、
前記振動方向変換部は、剛性の連結部を介して前記ボイスコイルに連結していることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記静止部は、前記第1の振動板と前記第2の振動板と前記駆動部を支持する外周支持部と、前記振動方向変換部を支持する内側支持部を備え、
前記内側支持部は、前記外周支持部から前記振動方向変換部に向かって突出しており、前記振動板の振動方向に対して剛性を備えることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記外周支持部は、対向配置される第1の部分と第2の部分とを備え、
前記内側支持部は、前記第1の部分と前記第2の部分の間を橋渡す橋渡し部であることを特徴とする請求項2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記外周支持部は前記振動板の振動方向に沿った壁面を有する外周壁部を一対備え、
前記外周支持部の第1の部分が前記外周壁部の一方に設けられ、前記外周支持部の第2の部分が前記外周壁部の他方に設けられており、
前記一対の外周壁部は、前記橋渡し部の両端部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記外周支持部は、前記外周壁部の上端部近傍に設けられる第1の外周枠部と、前記外周壁部の下端部近傍に設けられる第2の外周枠部を備え、
前記第1の外周枠部は、前記第1の振動板を第1のエッジを介して支持し、
前記第2の外周枠部は、前記第2の振動板を第2のエッジを介して支持し、
前記磁気回路は、前記第1の外周枠部と前記第2の外周枠部との間に設けられることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記静止部は、前記外周壁部を複数備え、
複数の前記外周壁部は、前記振動方向変換部を取り囲んで配置されることを特徴とする請求項5に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記静止部は、前記第1の外周枠部を有する第1の部品と、前記第2の外周枠部を有する第2の部品と、前記橋渡し部を有する第3の部品で構成され、
前記第1の外周枠部、前記第2の外周枠部と前記外周壁部は、前記振動板の振動方向に沿って重ねて配置されることを特徴とする請求項6に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記振動板は、平板状部と、当該平板状部を囲む環状部を備え、
前記環状部は、前記振動板の振動方向に沿って突出する頂部を備え、
前記振動板は前記ボイスコイルの振動方向に対して交差する方向に剛性を備えることを特徴とする請求項7に記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記環状部に設けられる頂部は、第1の頂部と、当該第1の頂部の外側に配置される第2の頂部とを備え、
前記第1の頂部は、前記振動方向変換部側に突出し、
前記第2の頂部は、前記第1の頂部と前記平板状部との間に配置されるとともに、音響放射方向に向かって突出することを特徴とする請求項8に記載のスピーカ装置。
【請求項10】
前記振動方向変換部は、ボイスコイル用連結部分と、振動板用連結部分と、静止部用連結部分とを備え、
前記ボイスコイル用連結部分は、前記ボイスコイルに直接又は他の部材を介して連結し、
前記振動板用連結部分は、前記振動板に直接又は他の部材を介して連結し、
前記静止部用連結部分は、前記静止部に直接又は他の部材を介して連結しており、
前記ボイスコイル用連結部分、前記振動板用連結部分と前記静止部用連結部分は、剛性を備えることを特徴とする請求項9に記載のスピーカ装置。
【請求項11】
前記振動板の平板状部は、前記振動板用連結部分と直接又は他の部材を介して連結することを特徴とする請求項10に記載のスピーカ装置。
【請求項12】
前記振動方向変換部は、複数のリンク部分と複数の関節部とを備え、
前記複数のリンク部分は、前記ボイスコイルと前記振動板とを連結する第1のリンク部分と、当該第1のリンク部分を角度変更自在に前記静止部に連結する第2のリンク部分を備え、
前記ボイスコイル用連結部分は、前記関節部を介して前記第1のリンク部分の一方の端部に連結しており、
前記振動板用連結部分は、前記関節部を介して前記第1のリンク部分の他方の端部に連結しており、
前記第2のリンク部分の一方の端部は、前記関節部を介して前記第1のリンク部分の中間部分に連結しており、
前記第2のリンク部分の他方の端部は、前記関節部を介して前記静止部用連結部分に連結していることを特徴とする請求項11に記載のスピーカ装置。
【請求項13】
前記第1のリンク部分と前記ボイスコイル用連結部分との間に設けられる前記関節部を第1の関節部とし、
前記第2のリンク部分と前記静止部用連結部分との間に設けられる前記関節部を第2の関節部とし、
前記第1の関節部と前記第2の関節部の位置は、前記振動板の振動方向において実質的に同じ高さであることを特徴とする請求項12に記載のスピーカ装置。
【請求項14】
前記連結部は、剛性の取付面部と、第1の筒状連結部と、第2の筒状連結部とを備え、
前記取付面は、前記ボイスコイルの振動方向に対して交差する方向に沿った面を備え、
前記第1の筒状連結部は、前記ボイスコイル用連結部分に直接又は他の部材を介して連結し、
前記第2の筒状連結部は、前記ボイスコイルに直接又は他の部材を介して連結することを特徴とする請求項13に記載のスピーカ装置。
【請求項15】
前記ボイスコイルの振動方向に交差する方向に沿う前記ボイスコイルの断面の形状は長軸及び短軸で規定される矩形状であり、
前記短軸の方向が前記振動板の振動方向に沿っていることを特徴とする請求項14に記載のスピーカ装置。
【請求項16】
前記駆動部は、前記ボイスコイルを支持するボイスコイル支持部を備え、
前記ボイスコイル支持部は、前記第2の筒状連結部に取り付けられていることを特徴とする請求項15に記載のスピーカ装置。
【請求項17】
前記ボイスコイルの振動方向に交差する方向に沿う前記磁気回路の断面形状は長軸及び短軸で規定される矩形状であり、
前記短軸の方向は、前記振動板の振動方向に沿っていることを特徴とする請求項16に記載のスピーカ装置。
【請求項18】
前記磁気回路は、外周筒部と底面部を備えるヨーク、磁石、プレートとを備えることを特徴とする請求項17に記載のスピーカ装置。
【請求項19】
前記振動板の外周部は、前記連結部に対して内側に配置されていることを特徴とする請求項18に記載のスピーカ装置。
【請求項20】
前記振動板の振動方向における前記振動板の外周部と前記第1の頂部の長さは、前記連結部の外周部と前記ボイスコイル用連結部分との長さ、又はボイスコイルの外周側面と前記ボイスコイル用連結部分との長さに対して大きいことを特徴とする請求項19に記載のスピーカ装置。
【請求項21】
前記振動板は、第1の振動部と、当該第1の振動部を囲む第2の振動部とを備え、
前記第1の振動部は前記ボイスコイルの振動方向に対し交差する方向に並べて配置される複数の凹部を備え、
前記第1の振動部と前記第2の振動部との間には、環状の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項22】
環状の補強部が前記ボイスコイルの内側側面に設けられていることを特徴とする請求項17に記載のスピーカ装置。
【請求項23】
請求項1に記載するスピーカ装置を備える電子機器。
【請求項24】
請求項1に記載するスピーカ装置を備える自動車。
【請求項25】
請求項1に記載するスピーカ装置を備える建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−74776(P2012−74776A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216083(P2010−216083)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】