説明

スピーカ

【課題】耐入力を向上できるとともに、低域再生帯域を確保でき、高域再生帯域の調整も可能で、かつ小型および薄型化が可能なスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1は、フレーム2の中央部に取付けられた磁気回路3と、磁気回路3の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5と、ボイスコイル5に接続される錦糸線6と、ボイスコイルボビン4の前端部に接合される振動板7と、振動板7よりも前方に配置される支持部材8とを備える。振動板7をボイスコイルボビン4の前端部に接合し、その前方に支持部材8を配置するため、低域再生能力と耐入力を向上できる。また、支持部材8の裏面中央部を振動板7の中央部に接合するため、高域再生帯域の調整が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錦糸線を備えたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な電子機器等では、高音質のマイクロスピーカを搭載する例が増えてきた。図10に示すように、マイクロスピーカ100では、振動板101と磁気回路のポットヨーク107との間にダンパ103を配置したときに、錦糸線を配置する十分なスペースがなくなることから、錦糸線を用いずに、ボイスコイル104から延びるリード線105を振動板101の裏面に接着した構造が多く見られる。ここで、リード線とは、ボイルコイルの先端部を指し、本明細書では、ボイルコイルボビンに巻回されていないボイスコイルの先端部分をリード線と呼ぶ。
【0003】
図10は波型ダンパ103を使用したマイクロスピーカ100の断面図である。また、図11はフラットダンパ103aを使用したマイクロスピーカ100aの断面図である。図10と図11のいずれも、ボイスコイル104のリード線105は錦糸線を配置する十分なスペースがないため、振動板101の裏面に固着している。
【0004】
しかしながら、ボイスコイル104からのリード線105を振動板101の裏面に接着した構造では、耐入力の向上に限界がある。
【0005】
図12は振動板101の裏面側にリード線105を配置する様子を示す図である。図13は図12の配線を行ったダンパを持たないマイクロスピーカ100bの断面図を示す。図示のように、リード線105は、ボイスコイルボビン106に巻回されたボイスコイル104の先端側からボイスコイルボビン106の外周面とを経てポットヨーク107の裏面側の端子111に半田固定される。図12では、接着された部分(接着部)を符号110で表している。より詳細には、図13に示すように、リード線105の先端部は振動板101の裏面を通ってフレーム102側のリング120の内周を経て、リード線引き出し部102aを通り、ポットヨーク107の裏面にある端子111にて半田固定される。振動板101が振動するとき、リード線105は、ボイスコイルボビン106と振動板101との接合部分と、振動板101の外周部とリング120との接合部分において、特に大きく屈曲を繰り返すため、これらの接合部分で断線するおそれがある。リード線105自体の太さが細く、強度も弱く、振動板101の振動時にリード線105が断線しやすいため、耐入力の向上には限界がある。
【0006】
耐入力向上のための他の手法として、ポットヨークに設けた開口部に制動材を取付けることも考えられる。例えば、図13のポットヨーク107の開口部108に不織布やフェルト等からなる制動材109を装着して、最低共振周波数を上げることなく、振動板101の振幅を抑制して耐入力を改善できる。ところが、低域の音圧出力が低下し、低域再生が犠牲となってしまう。
【0007】
また、従来の錦糸線はボイルコイルのリード線105に比べて径が大きくて、質量もあり、柔軟性がなく、引き回しが困難であることから、マイクロスピーカでは、従来の錦糸線の配置スペースを確保するのが容易ではなく、作業性も著しく悪い。
【0008】
さらに、振動板101は、振動機能だけでなく、ボイスコイルボビン106を支持する機能も持っている。ところが、振動板101だけでは、高入力時にローリングによる異音が発生するおそれがあり、場合によってはリード線105が断線する可能性もある。
【0009】
上述した問題を解決するために、平板状のダンパを設けたスピーカ(特許文献1)と、ダンパを振動板の前側に配置した逆コーン型スピーカ(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4237702号公報
【特許文献2】特許第3944848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の平板状ダンパは、導電性の板ばねであり、低域再生に限界がある上に、構造が複雑であるため、組立作業性が悪い。特許文献2のスピーカでは、逆コーン型の振動板がエッジを介してフレームに固着されており、小型および薄型のマイクロスピーカでは実現が困難な構造である。
【0012】
小型および薄型のマイクロスピーカにおいて、高域音圧周波数特性を減衰させるには例えば、振動板の形状を工夫することが考えられる。これにより、高域音圧周波数特性を減衰させることが可能だが、耐入力の向上には寄与しない。
【0013】
また、ボイスコイルを多層巻きにして、高域周波数でのインダクタンスを増大させることにより、高域音圧周波数特性を減衰させる手法も考えられるが、この手法は小型および薄型のマイクロスピーカでは現実的ではない。
【0014】
あるいは、コイルやコンデンサーと組み合わせたローパスフィルターを使用して高域減衰特性を得る手法も考えられるが、部品点数が増える上に、フィルターの設置スペースが必要になり、コストアップにつながる。
【0015】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐入力を向上できるとともに、低域再生帯域を確保でき、高域再生帯域の調整も可能で、かつ小型および薄型化が可能なスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、ボイルコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回されるボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続される錦糸線と、
前記ボイスコイルボビンの前端部に接合されるとともに、外周部がフレームに接合される振動板と、
前記振動板の前方に配置され、裏面中央部が前記振動板の中央部に接合され、外周部がフレームに接合される支持部材と、を備え、
前記錦糸線は、
化学繊維からなる芯線と、
前記芯線に隙間を持たせて巻回される、絶縁皮膜で覆われた1本以上の導線と、を有することを特徴とするスピーカが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐入力を向上できるとともに、低域再生帯域を確保でき、高域再生帯域の調整も可能で、かつ小型および薄型化が可能なスピーカを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスピーカ1の断面図。
【図2】図1のスピーカ1の分解斜視図。
【図3】(a)は支持部材8の詳細な形状を示す斜視図、(b)は外周部にリング8cが一体成形された支持部材8’を示す斜視図、(c)は複数の孔部8dが形成された支持部材8’’を示す斜視図。
【図4】本実施形態に係るスピーカ1をラップトップ型PC20に組み込んだ例を示す斜視図。
【図5】図1のスピーカ1の組立工程の一例を示すフローチャート。
【図6】図1のスピーカ1の組立工程順序を矢印で示した図。
【図7】本実施形態で用いる錦糸線6の外観図。
【図8】本実施形態の係る錦糸線6aの一変形例を示す外観図。
【図9】図1のスピーカ1と従来のスピーカ100bの比較音圧周波数特性を示す図。
【図10】マイクロスピーカ100の一例を示す断面図。
【図11】平坦なフラットダンパ103aを用いたマイクロスピーカ100aの一例を示す図。
【図12】振動板101の裏面側のリード線105の配置の一例を示す図。
【図13】ダンパを持たない従来のマイクロスピーカ100bの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るスピーカ1の断面図、図2は図1のスピーカ1の分解斜視図である。図1のスピーカ1は、フレーム2の中央部に取付けられた磁気回路3と、磁気回路3の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5と、ボイスコイル5に接続される錦糸線6と、ボイスコイルボビン4の前端部に接合される振動板7と、振動板7よりも前方に配置される支持部材8とを備えている。
【0021】
振動板7の外周部はフレーム2の内周部に設けられたリングAに接合されている。支持部材8の裏面中央部8aは振動板7の中央部7aに接合され、支持部材8の外周部はフレーム2の内周面に設けられたリングBに接合されている。ボイスコイル5は磁気回路3のギャップ中に位置決めされる。
【0022】
磁気回路3は、スピーカ1の底面側でフレーム2の内周部に接合されるポットヨーク11と、ポットヨーク11の前面に接合される永久磁石12と、永久磁石12の前面に接合されるポールピース13とを有する。ポットヨーク11の外周部には、所定間隔で開口部18が形成されている。この開口部18には、制動材を取り付けることも可能である。
【0023】
錦糸線6は、ボイスコイル5の先端部に接合されており、フレーム2に設けられた錦糸線引き出し部2aを経由して、ポットヨーク11の裏面側の端子16に半田付けされている。
【0024】
図3(a)は支持部材8の詳細な形状を示す斜視図である。図3(a)に示すように、支持部材8は、円盤状であり、支持部材8の材料は、織布、不織布または樹脂フィルム等である。織布を用いる場合は、織布に熱硬化性樹脂を含浸させたものを所定の形状に成形したものを用いる。
【0025】
支持部材8は、主に低域再生能力と耐入力を向上させるために設けられている。支持部材8を設けることで、振動板7を安定に支持することができ、ローリングを抑制できる。また、振動板7と支持部材8のスティフネスを調整することで最低共振周波数を調整でき、通常の低域再生帯域の音圧出力が可能となる。また、支持部材8の中央部8aを振動板7の中央部7aに接合することで、高域再生帯域の調整が可能となる。より詳細には、支持部材8の裏面中央部8aと振動板前面中央部7aを接合することにより、振動板中央近辺の高域の振幅を抑制でき、高域周波数の音圧が減衰する音圧周波数特性が得られる。したがって、本実施形態に係るスピーカ1は、ラップトップ型PCやデジタルオーディオプレイヤ等の携帯型電子機器あるいはドッキングステーションの低音用スピーカに用いることができる。
【0026】
支持部材8の形状は、図3(a)に示したものに限定されず、種々の変形例が考えられる。例えば図3(b)は外周部にリングBがリング8cとして一体成形された支持部材8’を示している。このような一体成形は、例えば樹脂材料を用いた射出成形により、比較的容易に実現可能である。図3(b)の支持部材8’は、一体成形されたリング8cがフレーム2の内周面に接合されることになる。リングBを別部材としていないため、図3(a)よりも組立が容易になる。また、部品点数も削減できるため、製造コスト削減が図れる。
【0027】
図3(c)の支持部材8’’はその他の変形例であり、支持部材8’’の表面の複数箇所に、孔部8dが形成されている。孔部8dの代わりに、切り欠き部を形成してもよい。これらの孔部8dと切り欠き部は、支持部材8’’の通気性とスティフネスを調整するためのものである。孔部8dや切り欠き部の数、サイズおよび形成箇所は、通気性とスティフネスの調整具合により決めればよく、特定の形態および個数に限定されない。例えば、図3(c)では、径の異なる複数の周に沿って一定間隔で孔部8dを形成しているが、ランダムに孔部8dを形成してもよいし、孔部8dのサイズも特に制限はない。
【0028】
図4は本実施形態に係るスピーカ1をラップトップ型PC20に組み込んだ例を示す斜視図である。音質を重視するPC20では、ステレオ音声を実現するためのRch用スピーカ20aとLch用スピーカ20bとは別個に、低音専用のスピーカ20cを設けており、この低音専用のスピーカ20cとして本実施形態に係るスピーカ1を用いることができる。上述したように、本実施形態に係るスピーカ1は、耐入力に優れるため、豊かな低音を再生でき、携帯電子機器であっても音質向上が図れる。
【0029】
図5は図1のスピーカ1の組立工程の一例を示すフローチャート、図6は図1のスピーカ1の組立工程の一例を模式的に示した図である。以下、図5と図6を用いて、図1のスピーカ1の組立工程を説明する。まず、磁気回路3のポールピース13と永久磁石12を接合する(工程A1)。次に、永久磁石12の裏面にポットヨーク11を接合する(工程A2)。以上により、磁気回路3が完成する。
【0030】
磁気回路3の組立に前後して、ボイスコイル5が巻回されたボイスコイルボビン4の前端部を、不図示の位置出し治具を用いて、外周部にリングAが取付けられた振動板7の裏面に接着する(工程B1)。
【0031】
次に、フレーム2の前方側から、工程B1でボイスコイルボビン4を接着した振動板7の外周部をフレーム2に接着する(工程B2)。
【0032】
次に、工程B2後のフレーム2の前方から、外周部にリングBが取付けられた支持部材8を挿入して、支持部材8の裏面中央部8aを振動板7の中央部7aに接着し、かつリングBを振動板7の外周部に接着する(工程B3)。
【0033】
次に、フレーム2の後方から、工程B3後のフレーム2に磁気回路3を接合する(工程B4)。次に、磁気回路3の裏面に端子16を固定する(工程B5)。
【0034】
次に、ボイスコイル5から伸びる錦糸線6をフレーム2の内周部に沿って磁気回路3の裏面側まで引き回して、端子16に半田付けする。(工程B6)
次に、磁気回路3を着磁する(工程B7)。
【0035】
図7は本実施形態で用いる錦糸線6の外観図である。図7の錦糸線6は、化学繊維からなる芯線21と、芯線21に隙間dを持たせて巻回される導線22とを備えている。導線22は、その外表面が絶縁被膜で覆われている。
【0036】
導線22は、芯線21の表面をすべて覆うわけではなく、導線22の間から芯線21の表面が露出されている。したがって、錦糸線6には柔軟性が確保され、錦糸線6の引き回しが容易になる。これにより、ボイスコイル5が大きく振動しても、錦糸線6は断線しにくくなる。
【0037】
本実施形態の錦糸線6は、口径が50mm以下のマイクロスピーカ1に用いることを想定しており、錦糸線6の芯線21の外径に対する導線22の外径の比率は、約0.5〜1.2が望ましい。芯線21の外径は約0.08〜0.12mm、導線22の外径は約0.04〜0.08mmが望ましい。
【0038】
導線22は、ボイスコイル5に電流を供給する役割を持つことから、できるだけ電気抵抗の低い材料(例えば、銅)で形成するのが望ましい。導線22を被覆する絶縁被膜は、例えばポリウレタン樹脂を主成分とした絶縁ワニスである。導線22を絶縁被膜で覆うことで、仮に錦糸線6がスピーカ1の金属部品に接触しても、短絡するおそれがなくなる。
【0039】
図8は一変形例の錦糸線6aを示す外観図である。図8の錦糸線6aは、絶縁被膜で覆われた導線22を二本密着配置した導線束を設け、この導線束を芯線21に隙間dを持たせて巻回させたものである。
【0040】
図8の錦糸線6aも、芯線21が部分的に露出しているため、柔軟性があり、耐入力を高くすることができる。また、導線束は、絶縁被膜で覆われているため、短絡するおそれがないのも図7と同じである。
【0041】
なお、導線束における密着配置される導線22の数は三本以上でも構わない。このように、複数の導線22を密着配置した導線束を設けることにより、錦糸線6aの導電性がよくなって断線も生じにくくなるため、信頼性が向上する。
【0042】
図9は図1のスピーカ1と図13に示す従来品のスピーカ100bの音圧周波数特性を比較した図(比較音圧周波数特性図)である。本実施形態に係る図1のスピーカ1と、従来品として比較に用いた図13のスピーカ100bはともに、サイズと種類を共通化しており、口径28mmの小型かつ薄型のマイクロスピーカである。ボイスコイルの径は13mm、インピーダンス8Ω、ボイスコイルの線材の径は0.06mmである。比較に用いた従来品のスピーカ100bにおいて、ボイスコイル104の先端側のリード線105は、振動板101の裏面に接着されて、その先端部は端子111に半田付けされている。振動板101は、厚さ38μmのPET(ポリエステル)を成形したものである。フレーム102の開口部108には制動材109を有する。
【0043】
その材料は厚さ1mmの不織布である。制動材109は、ポットヨーク11の外周部に形成された開口部108に取付けられる。
【0044】
図1のスピーカ1と従来品のスピーカ100bとの構造的な違いは、図1のスピーカ1は、錦糸線6と支持部材8を備えていることである。支持部材8は、綿布を成形したものであり、振動板7と支持部材8の両方でスピーカ1の最低共振周波数を調整している。錦糸線6は、外径が0.08mmの芯線を有し、この芯線の材料はポリアミド繊維である。芯線の周囲には、図7に示すように、外径が0.06mmの導線を隙間を隔てて巻回している。振動板7は形状および材質は振動板101と同じで厚さ25μmである。
【0045】
100時間のノイズ試験であるJIS C5532による定格入力試験を行ったところ、本実施形態のスピーカ1の定格入力は2Wであるのに対して、従来品のスピーカ100bの定格入力は0.6Wであった。
【0046】
本実施形態に係るスピーカ1の定格入力が従来のスピーカ100bよりも格段に優れている理由は、図7または図8に詳細構造を示した錦糸線6を用いたことによるものと考えられる。従来のスピーカ100bは、図7または図8に示した錦糸線6を使用するものではなく、また従来の径の太い錦糸線を配置するスペースもないことから、リード線105をボイスコイル104から端子111まで引き回しており、耐入力性能を上げるのには限界がある。これに対して、図7または図8に示した錦糸線6は、従来の錦糸線と比べ外径サイズも細く、質量も小さく、柔軟性があることから、リード線を用いる場合と比べて、耐入力性能の大幅アップを図ることができる。
【0047】
なお、従来品のスピーカ100bは制動材109を備えているが、仮に制動材を省略したとすると、定格入力は0.2W程度となり、本実施形態のスピーカ1と比べて約1/10の値になる。
【0048】
図9では、本実施形態のスピーカ1の音圧周波数特性は実線で、従来品のスピーカ100bの音圧周波数特性は破線で図示している。図9の測定条件は、本実施形態のスピーカは1W入力1mであり、従来品スピーカ100bは1W入力ができないため、1W入力1mの換算値を示している。
【0049】
図9のグラフからわかるように、低域音圧周波数特性に関しては、本実施形態のスピーカ1は200Hzから600Hzで従来品のスピーカ100bよりも高い音圧を示している。高域音圧周波数特性に関しては、従来品のスピーカ100bの高域音圧周波数特性は4kHx以上でも高い音圧特性を示しているが、本実施形態のスピーカ1の高域音圧周波数特性は4kHx以上で従来品と比較し大きく減衰している。このため、本実施形態によれば、耐入力に優れて、低域音圧周波数特性を確保可能で、かつ高域音圧を効率よく減衰させることが可能なスピーカを実現できることがわかる。
【0050】
このように、本実施形態では、振動板7をボイスコイルボビン4の前端部に接合し、その前方に支持部材8を配置して振動板7を支持するため、振動板7と支持部材8のスティフネスを調製することで、低域再生能力と耐入力性能を向上できる。また、支持部材8の裏面中央部8aを振動板7の中央部7aに接合するため、高域再生帯域の調整が可能である。本実施形態によれば、ダンパが不要であるため、ラップトップ型PC等の携帯電子機器に組込み可能な、特に低音の再生能力に優れた小型かつ薄型のマイクロスピーカを実現できる。
【0051】
さらに、本実施形態では、芯線21に隙間を持たせて導線22を巻回した細径の錦糸線6をボイスコイル5の先端に接合するため、錦糸線6の引き回しにそれほど広いスペースがいらなくなり、支持部材8を設けていながら、スピーカ1の奥行きを長くせずに錦糸線6を配置でき、より耐入力に優れた小型かつ薄型のマイクロスピーカを実現できる。
【0052】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1、1a スピーカ
2 フレーム
3 磁気回路
4 ボイスコイルボビン
5 ボイスコイル
6 錦糸線
7 振動板
8 支持部材
11 ポットヨーク
12 永久磁石
13 ポールピース
15 錦糸線引き出し部
16 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイルコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回されるボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続される錦糸線と、
前記ボイスコイルボビンの前端部に接合されるとともに、外周部がフレームに接合される振動板と、
前記振動板の前方に配置され、裏面中央部が前記振動板の中央部に接合され、外周部がフレームに接合される支持部材と、を備え、
前記錦糸線は、
化学繊維からなる芯線と、
前記芯線に隙間を持たせて巻回される、絶縁皮膜で覆われた1本以上の導線と、を有することを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記振動板は、その中央部が前方に張り出して、その径が前記ボイスコイルボビンの径に略等しいドーム部を有し、
前記ドーム部の前面側中央部が前記支持部材の裏面に接合され、前記ドーム部の裏面側端部が前記ボイスコイルボビンの前端部に接合されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記支持部材は、その中央部からずれた複数箇所に、孔部および切り欠き部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記支持部材は、織布、不織布または樹脂薄膜を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項5】
前記支持部材の外周部の裏面側と前記振動板の外周部の前面側との間に配置され、前記フレームの内周面に接合されるリング部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項6】
前記支持部材と前記リング部材とは一体成形されることを特徴とする請求項5に記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−109669(P2012−109669A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254953(P2010−254953)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】