説明

スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達の調節

本発明は概して、細胞活性の調節方法および本方法における使用のための薬剤に関する。より具体的には、本発明は、スフィンゴシンキナーゼの機能活性レベルの調節方法を提供する。関連する局面において、本発明は、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達を、その細胞内活性レベルの調節を通じて調節する方法を提供する。本発明はなおさらに、スフィンゴシンキナーゼ活性を誘導する能力を示す新規分子にも及ぶ。本発明の方法および分子は特に、異常な、望ましくない、もしくはそうでなければ不適当な細胞の機能活性、および/または異常な、望ましくない、もしくはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達により特徴付けられる状態の処置および/または予防に有用である。本発明はさらに、スフィンゴシンキナーゼ活性レベルを調節することのできる薬剤を同定および/または設計するための方法に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、細胞活性の調節方法および本方法における使用のための薬剤に関する。より具体的には、本発明は、スフィンゴシンキナーゼの機能活性レベルの調節方法を提供する。関連する局面において、本発明は、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達を、その細胞内活性レベルの調節を通じて調節する方法を提供する。本発明はなおさらに、スフィンゴシンキナーゼ活性を誘導する能力を示す新規分子にも及ぶ。本発明の方法および分子は特に、異常な、望ましくない、もしくはそうでなければ不適当な細胞の機能活性、および/または異常な、望ましくない、もしくはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達により特徴付けられる状態の処置および/または予防に有用である。本発明はさらに、スフィンゴシンキナーゼの活性レベルを調節することのできる薬剤を同定および/または設計するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明者らが本明細書において参照した刊行物の書誌情報は、詳細な説明の最後にアルファベット順にまとめた。
【0003】
本明細書中で任意の先行技術を参照することは、その先行技術がオーストラリアにおける一般的知識の一部を構成することを自認することでも何らかの形でそれを示唆することでもなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0004】
スフィンゴシンキナーゼ(SK)はスフィンゴシンのリン酸化を触媒し、生物学的に活性なリン脂質であるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)を生成する酵素である(Pyne & Pyne, 2002, Biochim. Biophys. Acta 1582:121-131; Spiegel & Milstien, 2003, Nat. Rev Mol. Cell Biol. 4:397-407)。S1Pは、カルシウム移動、有糸分裂誘発、アポトーシス、アテローム硬化、炎症反応、および細胞骨格の再配置を含む多くの生物学的プロセスに影響し得る(Spiegel & Milstien, 2000, FEBS Lett. 476:55-57)。SKは哺乳動物細胞におけるS1Pレベルの主要な制御因子(regulator)なので(Spiegel & Milstien, 2003, 前出)、この酵素の活性および活性化は、その細胞内でS1Pに起因して観察される作用を統制する上で中心的かつ重要な役割を果たす。
【0005】
今日、スフィンゴシンキナーゼおよびS1Pが細胞増殖および細胞生存の増進を通じて腫瘍形成に関与することを示す注目すべき証拠が存在する。Xiaら(2000)は、NIH3T3線維芽細胞におけるSK1の過剰発現が、病巣形成、軟寒天における細胞成長、およびNOD/SCIDマウスにおける腫瘍形成により測定される腫瘍性の細胞形質転換を誘導することを実証した。さらに、SKの阻害剤であるN,N-ジメチルスフィンゴシン(DMS)で細胞を処理することによるまたはドミナントネガティブなSK変異体の使用を通じたSK1の阻害が、発癌性のH-Rasにより媒介される形質転換をブロックした(Xia et al, 2000, 前出)。他の研究は、hSK1 mRNAレベルが、乳癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌、胃癌、子宮癌、腎臓癌、および直腸癌を含む特定のヒト腫瘍において上昇することを示した(French et al., 2003, Cancer Res. 63:5962-5969)。近年開発されたSK1阻害剤もまた、マウスにおける乳房腫瘍の成長をブロックすることを示した(French et al., 2003, 前出)。このことはさらに、SK1の活性化が乳癌細胞におけるエストロゲン依存的な腫瘍形成を促進するのに重要であることを同様に示す他の研究によって支持される(Nava et al., 2002, Expt. Cell Res. 281:115-127; Sukocheva et al., 2003, Mol. Endocrinol. 17:2002-2012)。
【0006】
しかし、SK1およびS1Pは、細胞の成長および生存における役割に加えて、細胞制御の他の局面にも関与するようである。S1Pは血管内皮細胞における接着分子の発現誘導を通じて炎症およびアテローム硬化に関与し得ることが示された(Xia et al., 1999, J. Biol. Chem. 274:34499-34505)。他の研究は、高レベルのSK1が血管狭窄を増進し得ることから高血圧への関与を示唆する(Bolz et al., 2003, Circulation 108, 342-347; Coussin et al., 2002, Circ. Res. 91:151-157)。また、SK1は、炎症促進性転写因子NF-κBのTNFα誘導性の活性化に関与することが示された(Xia et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:7996-8003)。同様に、S1Pは、気道平滑筋細胞の狭窄およびヒスタミン放出を増進することが見出されたことから、喘息に関連するようである(Jolly et al., 2001, Mol. Immunol. 38:1239-1245)。
【0007】
hSK1はタンパク質の翻訳後修飾によらない固有の触媒活性を有することが以前に示されている(Pitson et al. 2000a, Biochem. J. 350:429-441)。本発明者らはまた、化学的阻害、免疫共沈降およびインビトロリン酸化を含む技術を組み合わせて使用することで、ERK1/2がインビボでhSK1をリン酸化することを示した(Pitson et al., 2003, EMBO J. 22:1-10)。このhSK1のリン酸化はこの酵素のkcatを直接的に14倍増加させるが、スフィンゴシンまたはATPのいずれかに対するKM値に対しては有意な効果を有さない。一般論として、hSK1活性の活性化は、その細胞質ゾルから形質膜への転座と相関する(Rosenfeldt et al., 2001, FASEB J. 15:2649-2659; Young et al., 2003, Cell calcium 33:119-128)。Ser225におけるリン酸化はhSK1の触媒活性を直接的に増加させるだけでなく、このタンパク質の形質膜へのアゴニスト誘導性の転座に必須であることも示された(Pitson et al., 2003, 前出)。SK1の転座は、SK1をその潜在的な基質に接近させ、それによってS1Pまたはその分泌物が細胞表面のS1P受容体と咬合する限局的シグナル伝達を起こすのに重要であり得る(Pitson et al., 2003, 前出)。この研究は、SK1の活性化がERK1/2媒介性のリン酸化により起こることを示したが、このリン酸化の制御の多くの局面は、他のリン酸化に依存しないSK1活性化機構も存在し得る可能性を含めて未だ知られていない。
【0008】
それらの組織分布、発生過程での発現、触媒特性、および多少であるがそれらの基質特異的が異なる2つのヒトスフィンゴシンキナーゼアイソフォーム(1および2)が存在する(Pitson et al., 2000, 前出; Liu et al., 2000, J. Biol. Chem. 275:19513-19520)。多くの研究が、細胞増殖を増進しアポトーシスを抑制する上でのスフィンゴシンキナーゼ1の効果を示した(Olivera et al., 1999, J. Cell Biol. 147:545-558; Xia et al., 2000, Curr. Biol. 10:1527-1530; Edsall et al., 2001, J. Neurochem. 76:1573-1584)。さらに、NIH3T3線維芽細胞においてヒトスフィンゴシンキナーゼ1(hSK1)を過剰発現させることで、形質転換した表現型およびヌードマウスにおいて腫瘍を形成する能力が獲得されることが示され、これによりこの酵素の腫瘍形成性が実証された(Xia et al., 2000, 前出)。より最近の研究は、乳房腫瘍細胞の成長および生存のエストロゲン依存的な制御にhSK1が関与することを示し(Nava et al., 2002, Expt. Cell Res. 281:115-127; Sukocheva et al., 2003, Mol. Endocrinol. 17:2002-2012)、一方他の研究は、様々なヒト固形腫瘍においてhSK1 mRNAが増加することおよびスフィンゴシンキナーゼ阻害剤によってインビボで腫瘍の成長が阻害されることを示した(French et al., 2003, Cancer Res. 63:5962-5969)。従って、細胞の成長、生存および腫瘍形成へのhSK1の関与についてはすでに十分確認されている。
【0009】
SphK1に加えて、別のアイソフォームSphK2がクローニングされ、特徴付けがなされた(Liu et al., 2000, J Biol Chem, 275:19513-19520)。SphK1およびSphK2は両方とも総SphK活性に寄与するが、これら2つのアイソフォームは、別個の酵素動態および発現パターンを示す(Kohama et al., 1998, J Biol Chem, 273:23722-23728; Liu et al., 2000, 前出)。SphK1は細胞質酵素であることが示されているが、SphK2はその核局在化シグナル配列によって核に局在することが見出された(Igarashi et al., 2003, J Biol Chem, 278:46832-46839)。Sphk1とSphk2の間のさらなる機能的な違いもまた明らかにされている。例えば、Sphk1は細胞の生存および増殖を増進するが、Sphk2はDNA合成を阻害し(Liu et al., 2000, 前出)、おそらくBH3ドメインとBcl-xLの相互作用を通じてアポトーシスを誘導する(Liu et al., 2003, J Biol Chem, 278:40330-40336)。ショウジョウバエのSphKを用いた最近の研究は、SphK2がスフィンゴ脂質代謝に関与する2つの哺乳動物酵素のうちのより原始的な方であることを示唆する(Herr et al., 2004, J Biol Chem, 279:12685-12694)。SphK2の発現または活性が制御されるという証拠はないので、様々な生理学的刺激に応じて転写レベルおよび転写後レベルの両方で制御されるSphK1の能力が比較的最近の進化的段階であり、哺乳動物細胞におけるシグナル伝達の役割を手助けするものであり得る。
【0010】
従って上記のように、幅広い細胞活性の制御との関係でのスフィンゴシンキナーゼの中心的な役割は十分に確認されているが、それが起こる正確な機構は部分的に決定されたのみである。従って、スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達経路の制御を通じた細胞活性の制御方法を構築するためのより良い手段を提供するために、その機構の解明およびその機構を制御できる分子の同定の両方に対する要望が今も存在する。
【0011】
本発明に至る研究において、SKAM1分子とスフィンゴシンキナーゼの相互作用がスフィンゴシンキナーゼの固有の触媒活性を増加させることを決定した。なおさらに、SKAM1におけるスフィンゴシンキナーゼ結合領域を同定した。この細胞のシグナル伝達機構および結合モチーフの同定により、SKAM1分子とスフィンゴシンキナーゼの相互作用の調節に基づくスフィンゴシンキナーゼ媒介性の細胞機能の調節、特に上方制御の簡単かつ合理的な方法の構築が可能となった。従って、これにより、望ましくないまたは不適当な細胞機能により特徴付けられる状態の治療的処置または予防的処置のための非常に有効な方法の構築がなされた。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本明細書および添付の特許請求の範囲を通じて文脈上そうでないことが要求されない限り、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」等のバリエーションは、記載された整数もしくは段階または整数群もしくは段階群を包含する意味を含むが、任意のその他の整数もしくは段階または整数群もしくは段階群を排除する意味を含まないことが理解されるはずである。
【0013】
本明細書は、プログラムPatentInバージョン3.1を用いて作製されたヌクレオチドおよびアミノ酸の配列情報を含み、これらは本明細書中、書誌情報の後に配置されている。ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は各々、配列表において数値符号<201>およびそれに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2等)により特定される。各々のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列についての配列の長さ、類型(DNA、タンパク質等)および生物源は、それぞれ数値符号欄<211>、<212>および<213>に提供される情報より示される。本明細書中で言及されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、符号SEQ ID NO:およびそれに続く配列識別子により特定される(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2等)。本明細書中で言及される配列識別子は、配列表における数値符号欄<400>およびそれに続く配列識別子において提供される情報と相関する(例えば、<400>1、<400>2等)。すなわち、本明細書において詳述されるSEQ ID NO:1は、配列表において<400>1で示される配列と相関する。
【0014】
本発明の一つの局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、変種体(variant)、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の調節方法を提供する。
【0015】
本発明の別の局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼ1との相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼ1の触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ1媒介性のシグナル伝達の調節方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の局面は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の調節方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の局面は、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を誘導するのに十分な時間および条件下、有効量のSKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、それによってスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の上方制御方法を提供する。
【0018】
本発明のさらなる局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、細胞活性の調節方法に関する。
【0019】
本発明のさらなる局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼ1との相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、細胞活性の調節方法に関する。
【0020】
本発明の別のさらなる局面は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはヒト細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはヒト細胞活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のヒト細胞活性の調節方法に関する。
【0021】
本発明のさらに別のさらなる局面は、疾患状態の処置および/または予防に関連する本発明の使用に関する。本発明はいずれか一つの学説または作用様式にも制限されるものではないが、スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達経路を通じて制御される幅広い細胞の機能活性にとって、スフィンゴシンキナーゼ機能の制御は、健常状態および疾患状態の両方の生理学的プロセスのあらゆる局面に不可欠な要素である。従って、本発明の方法は、スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達経路を通じて制御される異常なまたはそうでなければ望ましくない細胞の機能活性を調節するための価値あるツールを提供する。
【0022】
本発明のなおさらに別のさらなる局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤を哺乳動物に投与する段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0023】
本発明のなおさらに別の局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤を哺乳動物に投与する段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼ活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼ活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0024】
本発明の別の局面は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤をヒトに投与する段階を含み、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられるヒトにおける状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0025】
本発明のさらに別の局面は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤をヒトに投与する段階を含み、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられるヒトにおける状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0026】
本発明のさらに別の局面は、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置のための医薬の製造における、本明細書の上記に定義された薬剤の使用であって、該薬剤はスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節し、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、使用を意図する。
【0027】
本発明のなおさらに別の局面は、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置のための医薬の製造における、本明細書の上記に定義された薬剤の使用であって、該薬剤はSKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節し、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を下方制御する、使用を意図する。
【0028】
さらに別のさらなる局面において、本発明は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に、本明細書の上記に定義された調節性薬剤を含む薬学的組成物を意図する。
【0029】
本発明のさらに別の局面は、本発明の方法において使用する場合の本明細書の上記に定義された薬剤に関する。
【0030】
本発明のなおさらなる局面は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応する領域またはそれに対して少なくとも40%の類似性を示す領域を含み、かつスフィンゴシンキナーゼと相互作用し、スフィンゴシンキナーゼの固有の触媒活性を上方制御することのできるSKAM1模倣物に関する。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的に、SKAM1分子がスフィンゴシンキナーゼの固有の触媒活性を上方制御することを決定したことおよびスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を担うSKAM1結合モチーフを同定したことの両方に基づく。これらの決定により、異常なもしくは望ましくない細胞活性および/またはスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる状態を処置するための治療的方法および/または予防的方法の合理的な設計が可能となる。さらに、スフィンゴシンキナーゼとSKAM1の相互作用を特異的に調節する薬剤の同定および/または設計が容易になる。
【0032】
従って、本発明の一つの局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、変種体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の調節方法を提供する。
【0033】
「スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達」に対する言及は、スフィンゴシンキナーゼ分子が機能的な構成要素を形成するシグナル伝達経路に対する言及と理解されるはずである。この点、スフィンゴシンキナーゼはこの経路の活性化の際、スフィンゴシン-1-リン酸生成の中心となると考えられる。スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の調節には、シグナル伝達現象の上方制御および下方制御の両方、例えば所定のシグナル伝達現象の誘導もしくは停止または任意の所定のシグナル伝達現象レベルもしくは程度への変化が含まれることが理解されるはずである。
【0034】
本発明によれば、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用のアンタゴナイズ(例えば、この相互作用は自然に起きるものであるかまたは非自然現象、例えば処置プロトコルの施行の結果起きるものである)はスフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達現象の完遂を妨げ、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用のアゴナイズまたはそうでなければ誘導はスフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達を促進する。スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達現象の程度またはレベルは相互作用分子の濃度を増減させることによって調節され得ることもまた理解されるはずである。従って、シグナル伝達の調節は必ずしもシグナル伝達の開始または阻害と一致する必要はなく、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達が起きるレベルを制御するよう設計され得る。
【0035】
「スフィンゴシンキナーゼ」に対する言及には、全ての形態のスフィンゴシンキナーゼタンパク質およびその誘導体、変種体、ホモログまたは模倣物に対する言及が含まれることが理解されるはずである。この点、「スフィンゴシンキナーゼ」は、特に、スフィンゴシンキナーゼシグナル伝達経路の活性化の際にスフィンゴシン-1-リン酸の生成に関与する分子であることが理解されるはずである。これには、例えば、スフィンゴシンキナーゼmRNAの選択的スプライシングまたはスフィンゴシンキナーゼの対立遺伝子変種体もしくは多型変種体から生じる任意のアイソフォームを含む、例えばスフィンゴシンキナーゼの全てのタンパク質形態およびその機能的誘導体、変種体、ホモログ、もしくは模倣物が含まれる。
【0036】
本発明はいずれか一つの学説または作用様式に限定されるものではないが、それらの組織分布、発生過程での発現、触媒特性、および多少であるがそれらの基質特異的が異なる2つのヒトスフィンゴシンキナーゼアイソフォーム(1および2)が存在する(Pitson et al., 2000, 前出; Liu et al., 2000, 前出)。多くの研究が、細胞増殖を増進しアポトーシスを抑制する上でのスフィンゴシンキナーゼ1の効果を示した(Olivera et al., 1999, 前出; Xia et al., 2000, 前出; Edsall et al., 2001, 前出)。さらに、NIH3T3線維芽細胞においてヒトスフィンゴシンキナーゼ1(hSK1)を過剰発現させることで、形質転換した表現型およびヌードマウスにおいて腫瘍を形成する能力が獲得されることが示され、これによりこの酵素の腫瘍形成性が実証された(Xia et al., 2000, 前出)。
【0037】
その「機能的」誘導体、変種体、ホモログまたは模倣物に対する言及は、スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1の機能活性の任意の一つまたは複数を示す分子に対する言及であることが理解されるはずである。
【0038】
好ましくは、本発明は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼ1との相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼ1の触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ1媒介性のシグナル伝達の調節方法を提供する。
【0039】
SKAM1に対する言及は、このタンパク質の全ての形態に対する言及であることが理解されるはずである。これには、例えば、SKAM1 mRNAの選択的スプライシングまたはこの分子の機能的変異体(mutant)もしくは多型変種体から生じる任意のアイソフォームが含まれる。本発明はいずれか一つの学説または作用様式に限定されるものではないが、SKAM1は、ヒトから扁虫に及ぶ多くの生物に存在するタンパク質である。現時点で、このタンパク質の構造および機能は未だ解明されていない。さらに、他の公知のタンパク質との比較により認定できるドメインはSKAM1において一つも見出すことができない。SMARTデータベースを用いた最初のドメイン調査の結果(Schultz et al., 1998)は、SKAM1AがAAAドメインを有し得ることを明らかにした。AAA(ATPases associated with diverse cellular activities)タンパク質は、ATP依存的なタンパク質のフォールディング、タンパク質複合体の形成、膜融合を通じたタンパク質の輸送およびタンパク質の分解に関与する(Ogura & Wilkinson, 2001)。しかし、より詳細な配列分析は、SKAM1AがAAAドメインに対して一定の配列類似性を示すものの、ATP結合およびAAAドメインファミリーへの分類に必須のWalker A(GXXXXGK(T/S))モチーフおよびWalker B((D/E)XX)モチーフを有さないことを明らかにした。さらに、SKAM1Aはまた、AAAファミリーに特徴的なその他の高度に保存されたアミノ酸配列、例えば第二相同性領域(second region of homology)(SRH)またはsensor-1モチーフおよびプロリンリッチ領域を有さない(Karata et al., 1999)。にもかからわず、4つの公知のSKAM1アイソフォーム、SKAM1A(SEQ ID NO:1)、SKAM1B(SEQ ID NO:2)、SKAM1C(SEQ ID NO:3)およびSKAM1D(SEQ ID NO:4)は各々、スフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御できる。なおさらに、SKAM1の機能的誘導体、例えば短縮型SKAM1Y(SEQ ID NO:6)も同様にスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御し、従ってこれも「SKAM1」の定義の範囲に含まれる。
【0040】
さらに、本発明はいかなる様式によっても限定されるものではないが、4つのSKAM1アイソフォームは各々hSK1と相互作用し、細胞内およびインビトロでその活性を直接的に2〜4倍増進することが示された。人工的に短縮したSKAM1YアイソフォームもまたhSK1と相互作用しその活性を増進し、これによってSKAM1のSK1相互作用領域および機能領域がSEQ ID NO:1〜4のアミノ酸51〜132の間にあることが実証されたことにも留意されたい。従って、SK活性の増進には82アミノ酸のSKAM1ポリペプチドで十分である。SKAM1/hSK1の相互作用をさらに試験するため、hSK1の基質親和性に対するSKAM1の効果を決定した。SKAM1はATPまたはスフィンゴシンに対するhSK1のKm値に対して効果を有さなかったがkcat値を増加させたという知見は、SKAM1が酵素反応速度を増進するがhSK1の基質に対する結合親和性を変更しないことを示す。SKAM1はまたhSK2とも相互作用し、この酵素に対する制御効果を示すことが報告された最初のタンパク質である。SKAM1はまた、hSK1およびhSK2の両方に結合することが示された最初のタンパク質である。異なるSKAM1アイソフォームによるhSK2の活性化レベルはhSK1と類似し、このことはSKAM1がhSK1に対するのと同じ様式でSK2に作用することを示唆する。SK2はSK1よりもずっと大きく(Spiegel & Milstien, 2003)、異なる組織分布、発生過程での発現(Kohama et al., 1998; Liu et al., 2000)および細胞内局在(Liu et al., 2000; Pitson et al., 2003; Igarashi et al., 2003; Inagaki et al., 2003)を示すようであるにもかかわらず、SKAM1は両方のSKアイソフォームを増進する。さらに、SK2はまた、SK1が増殖促進および生存における役割を有する(Payne et al., 2002; Olivera et al., 1999; Edsall et al., 2001; Osawa et al., 2001, J. Immunol. 167:173-180)のに対してSK2はアポトーシス促進の役割を有することが報告されている(Liu et al., 2003)ように、SK1とは異なる細胞機能を示すようである。
【0041】
従って本発明は、より具体的には、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の調節方法を提供する。
【0042】
好ましくは、上記スフィンゴシンキナーゼはスフィンゴシンキナーゼ1またはスフィンゴシンキナーゼ2であり、最も好ましくはスフィンゴシンキナーゼ1である。
【0043】
最も好ましくは、上記スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を誘導またはアゴナイズすることによって上方制御される。
【0044】
スフィンゴシンキナーゼの触媒活性の上方制御因子としてのSKAM1の役割およびこれら二つの分子間の相互作用部位の両方の解明により、スフィンゴシンキナーゼ媒介性の細胞活性を調節する手段が提供される。「調節」とは上方制御または下方制御を意味する。例えば、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズは、対象の細胞活性を効果的に誘導、上方制御または持続させる対象のシグナル伝達現象の誘導に対する言及を含むのに加えて、シグナル伝達現象が起きるレベル、程度または速度の増加という意味を提供する。逆に、SKAM1媒介性のスフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達現象が望ましくない限り(例えば、患者にSKAM1を投与する処置プロトコルを減らすもしくは終了することが模索される場合または自然発生的な相互作用を下方制御することが模索される場合)、本発明は、対象の細胞活性を効果的に除去または下方制御させる対象のシグナル伝達現象の除去に対する言及を含むのに加えて、シグナル伝達現象が起きるレベル、程度または速度の減少に及ぶ。従って、本発明の方法に従って使用される薬剤は、対象の現象を誘導する、既に開始された現象をアゴナイズする、既に存在する現象をアンタゴナイズする、またはそのような現象の開始を完全に妨げる薬剤であり得る。
【0045】
「誘導またはそうでなければアゴナイズ」に対する言及は、
(i)細胞活性をもたらすためのSKAM1、特にSEQ ID NO:1の残基51〜132により規定される領域とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用の誘導;または
(ii)その最初の誘導に続くスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1の相互作用の上方制御、増進またはそうでなければアゴナイズ
に対する言及であることが理解されるはずである。
【0046】
逆に、SKAM1、特にSEQ ID NO:1の残基51〜132により規定される領域とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用の「阻害またはそうでなければアンタゴナイズ」は、
(i)(例えば、内因性のSKAM1がスフィンゴシンキナーゼ活性を上方制御することが既知の場合の予防的性質の文脈での)SKAM1とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用の妨害;または
(ii)その効果をなくすまたはその効果を減らす、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼとの既存の相互作用のアンタゴナイズ
に対する言及である。
【0047】
スフィンゴシンキナーゼとSKAM1の間の相互作用の(上方制御または下方制御のいずれかの意味における)調節は部分的なものでも完全なものでもあり得ることが理解されるはずである。部分的調節は、所定の細胞において自然に生じるスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用の一部分のみが本発明の方法による影響を受ける場合に起こり(例えば、対象細胞と接触させる薬剤が細胞内のスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用を飽和させるのに不十分な濃度で提供される)、完全調節は、全てのスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用が調節される場合に起こる。
【0048】
スフィンゴシンキナーゼとSKAM1の間の相互作用の調節は、
(i)シグナル伝達の目的で利用されるSKAM1の細胞内濃度を調節するための、SKAM1、またはその誘導体、ホモログ、もしくは模倣物をコードする核酸分子の細胞への導入、あるいはタンパク質性形態のSKAM1、またはその誘導体、ホモログ、もしくは模倣物の導入、
(ii)SKAM1遺伝子の転写制御および/または翻訳制御を調節するタンパク質性分子または非タンパク質性分子の細胞への導入、
(iii)SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの間の相互作用をアンタゴナイズするタンパク質性分子または非タンパク質性分子、例えば競合的阻害剤または抗体の細胞への導入、
(iv)SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの間の相互作用をアゴナイズするタンパク質性分子または非タンパク質性分子の細胞への導入
を含むがこれらに限定されない多くの技術のうちのいずれか一つによって達成され得る。
【0049】
「薬剤」に対する言及は、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節する任意のタンパク質性分子または非タンパク質性分子に対する言及であることが理解されるはずであり、例えば、上記(i)〜(iv)で詳述した分子が含まれる。対象の薬剤は、任意のタンパク質性分子または非タンパク質性分子と連結、結合またはそうでなければ会合され得る。例えば、対象の薬剤は、限局的領域への標的化を可能にする分子と会合され得る。好ましい態様において、対象の薬剤は、スフィンゴシンキナーゼの活性化を上方制御するために導入されるSKAM1自体であるか、またはその誘導体、ホモログ、もしくは模倣物である。
【0050】
従ってこの好ましい態様によれば、SKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を誘導するのに十分な時間および条件下、有効量のSKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、それによってスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御する、スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の上方制御方法を提供する。
【0051】
上記タンパク質性分子は、天然源、組換え源、もしくは融合タンパク質を含む合成源由来であるか、または例えば天然産物のスクリーニングによるものであり得る。上記非タンパク質性分子は、天然源、例えば天然産物スクリーニングから得られたものであるかまたは化学的に合成され得る。例えば、本発明は、スフィンゴシンキナーゼの相互作用のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用できるSKAM1の化学的アナログを意図する。化学的アナログは、必ずしもスフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1に由来するとは限らないが、特定の立体配座的類似性を共有するものであり得る。あるいは、スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1の特定の生理化学的特性を模倣または上方制御する化学的アゴニストが特別に設計され得る。アンタゴニストは、スフィンゴシンキナーゼとSKAM1が相互作用するのを遮断、阻害またはそうでなければ妨害できる任意の化合物であり得る。アンタゴニストには、スフィンゴシンキナーゼもしくはSKAM1、またはスフィンゴシンキナーゼもしくはSKAM1の部分に特異的な抗体(例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)が含まれる。アンタゴニストに対する言及はまた、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用を競合的に阻害する抗原、siRNA、アンチセンス分子、リボザイム、DNAzyme、RNAアプタマー、または共抑制に使用するのに適した分子が含まれる。上記(i)〜(iv)で言及したタンパク質性分子および非タンパク質性分子は、本明細書中で、総括的に「調節性薬剤」として言及される。
【0052】
本明細書の上記で定義した調節性薬剤のスクリーニングは、スフィンゴシンキナーゼおよびSKAM1を含む細胞と薬剤の接触およびスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1の機能活性(例えば、特定の細胞活性)の調節またはスフィンゴシンキナーゼもしくはSKAM1の下流の細胞標的の活性もしくは発現の調節についてのスクリーニングを含むがこれらに限定されないいくつかの適当な方法のうちのいずれか一つによって達成され得る。このような調節の検出は、ウェスタンブロット、電気泳動移動度シフトアッセイおよび/またはスフィンゴシンキナーゼ活性またはSKAM1活性のレポーター、例えばルシフェラーゼ、CAT等の読み取り等の技術を用いて達成され得る。
【0053】
スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1タンパク質は試験対象の細胞に天然に存在するものであっても、試験目的でそれらをコードする遺伝子を宿主細胞にトランスフェクトしたものであってもよいことが理解されるはずである。さらに、天然に存在する遺伝子またはトランスフェクトした遺伝子は構成的に発現され、それによって、特にスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用を下方制御する薬剤のスクリーニングに有用なモデルを提供するものであり得るし、その遺伝子は活性化を必要とし、それによって、特に、特定の刺激条件下でスフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用を調節する薬剤のスクリーニング、例えばファージディスプレイおよび酵母ツーハイブリッドもしくはマルチハイブリッドスクリーニングに有用なモデルを提供するものであり得る。さらに、スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1の核酸分子が細胞にトランスフェクトされる限り、その分子は、スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1の遺伝子全体を含むものであってもよいし、スフィンゴシンキナーゼに結合するSKAM1領域等の遺伝子の一部分のみを含むものであってもよい。
【0054】
別の態様において、検出対象は、スフィンゴシンキナーゼ自体ではなく、スフィンゴシンキナーゼの下流の制御標的であり得る。さらに別の態様は、最小レポーターに連結されたスフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1結合部位を含む。例えば、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用の調節は、下流のシグナル伝達構成要素の調節をスクリーニングすることによって検出され得る。これは、スフィンゴシンキナーゼおよびSKAM1によって活性が制御される分子の調節を観察する系の一例である。これらの方法は、推定調節性薬剤、例えば合成ライブラリ、コンビナトリアルライブラリ、化学ライブラリまたは天然ライブラリを含むタンパク質性または非タンパク質性の薬剤のハイスループットスクリーニングを実施するための機構を提供する。
【0055】
本発明の方法に従って使用される薬剤は、任意の適当な形態をとり得る。例えば、タンパク質性の薬剤は、様々な程度にグリコシル化もしくは非グリコシル化、リン酸化もしくは脱リン酸化されてもよく、および/またはそのタンパク質に融合、連結、結合もしくはそうでなければ会合した一定範囲のその他の分子、例えばアミノ酸、脂質、糖類もしくはその他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を含んでもよい。同様に、対象の非タンパク質性分子もまた任意の適当な形態をとり得る。本明細書中に記載されるタンパク質性および非タンパク質性の両方の薬剤は、任意の他のタンパク質性分子または非タンパク質性分子に連結、結合またはそうでなければ会合され得る。例えば、本発明の一つの態様において、上記薬剤は、限局的領域、例えば特定組織への標的化を可能にする分子と会合される。
【0056】
「発現」という用語は、核酸分子の転写および翻訳を意味する。「発現産物」に対する言及は、核酸分子の転写および翻訳から生じた産物に対する言及である。「調節」に対する言及は、上方制御または下方制御に対する言及であることが理解されるはずである。
【0057】
本明細書中に記載される分子(例えば、スフィンゴシンキナーゼ、SKAM1またはその他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の薬剤)の「誘導体」には、天然源由来または非天然源由来のいずれかのフラグメント、部分(part)、区分(portion)、または変種体が含まれる。非天然源には、例えば、組換え源または合成源が含まれる。「組換え源」とは、対象分子を入手した細胞供給源が遺伝的に変更されていることを意味する。これは、例えば、その特定の細胞供給源による生産率および生産量を増加またはそうでなければ増進させるために行われ得る。部分またはフラグメントには、例えば、その分子の活性領域が含まれる。誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失または置換により獲得され得る。アミノ酸挿入誘導体には、単一アミノ酸または複数アミノ酸のアミノ末端融合物および/またはカルボキシ末端融合物ならびに配列内挿入物が含まれる。挿入アミノ酸配列変種体は、一つまたは複数のアミノ酸残基がタンパク質中の所定部位に導入されたものであるが、得られた産物を適当にスクリーニングすることで無作為な挿入もまた可能である。欠失変種体は、その配列からの一つまたは複数のアミノ酸の除去によって特徴付けられる。置換アミノ酸変種体は、配列中の少なくとも一つの残基が除去されその場所に異なる残基が挿入されたものである。アミノ酸配列への付加には、上記のような他のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質との融合が含まれる。
【0058】
誘導体には、ペプチド、ポリペプチドまたはその他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の分子に融合された全長タンパク質の特定のエピトープまたは部分を有するフラグメントも含まれる。例えば、スフィンゴシンキナーゼ、SKAM1、またはそれらの誘導体は、細胞膜への局在化を促進するための分子と融合され得る。本発明において意図される分子のアナログは、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成の際の非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の組み込み、ならびに架橋剤の使用およびそのタンパク質性分子またはそれらのアナログに対して立体配座的な制約を課すその他の方法の使用を含むがこれらに限定されない。
【0059】
本発明の方法に従って使用され得る核酸配列の誘導体も同様に、他の核酸分子との融合を含む、単一または複数のヌクレオチド置換、欠失および/または付加により獲得され得る。本発明において使用される核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、共抑制に使用するのに適した分子、および核酸分子の融合物が含まれる。核酸配列の誘導体には、縮重変種体も含まれる。
【0060】
スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1の「変種体」とは、スフィンゴシンキナーゼまたはSKAM1の形態の機能活性のすくなくとも一部を示す、変種体の分子を意味することが理解されるはずである。そのバリエーションは任意の形態をとることができ、天然物または非天然物であり得る。変異体分子は、修飾された機能活性を示す分子である。
【0061】
「ホモログ」とは、その分子が本発明の方法に従って処置される種とは異なる種から得られたものであることを意味する。
【0062】
「模倣物」は、対象分子の機能活性のうちの任意の一つまたは複数を示す分子であることが理解されるはずであり、その機能的等価物は任意の供給源由来であってよく、例えば化学合成されても、またはスクリーニングプロセス、例えば天然産物スクリーニングを通じて同定されてもよい。例えば、化学的または機能的な等価物は、コンビナトリアル化学または組換えライブラリのハイスループットスクリーニング等の周知技術を用いてもしくは天然産物スクリーニングによって設計および/または同定され得る。これらの分子はまた、本発明の方法において有用な任意の調節性薬剤をスクリーニングするのに使用され得る。
【0063】
例えば、有機低分子を含むライブラリがスクリーニングされ得る。そこで使用される有機分子は、多くの特定の親基が置換されている。一般的な合成スキームは公開された方法に従うものであり得る(例えば、Bunin et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:4708-4712; DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909-6913)。簡単に言うと、連続する合成工程の各々において、複数の異なる選択された置換基のうちの一つが、アレイ上の選択されたチューブの部分集団の各々に付加される。チューブの部分集団の選択は、そのライブラリを作製するのに使用した異なる置換基の全ての可能性のある順列が生成されるように行う。一つの適当な順列ストラテジーは米国特許第5,763,263号において概説されている。
【0064】
今日、生物学的に活性な化合物を検索するために無作為有機分子コンビナトリアルライブラリを用いることに、多くの関心がよせられている(例えば、米国特許第5,763,263号を参照のこと)。この類型のライブラリをスクリーニングすることによって発見されるリガンドは、天然リガンドを模倣もしくは遮断するのにまたは生物学的標的の天然に存在するリガンドと干渉させるのに有用であり得る。本発明の文脈で、例えば、それらはスフィンゴシンキナーゼSKAM1アゴニストまたはアンタゴニストを開発する出発点として使用され得る。スフィンゴシンキナーゼおよび/もしくはSKAM1またはそれらの関連する部分は、本発明によれば、様々な固相または溶液相合成方法により形成された組み合わせライブラリにおいて使用され得る(例えば、米国特許第5,763,263号およびその引用文献を参照のこと)。米国特許第5,753,187号に開示されるような技術を使用することによって、数週間以内に何百もの新規の化学的および/または生物学的化合物が流れ作業でスクリーニングされ得る。同定される多数の化合物のうち、適当な生物学的活性を示すもののみがさらに分析される。
【0065】
ハイスループットライブラリスクリーニング方法に関して、選択された生物学的因子、例えば、生分子、高分子錯体または細胞と特異的に相互作用できるオリゴマーまたは低分子ライブラリの化合物は、上記のような周知方法の中から当業者により容易に選択される組み合わせライブラリデバイスを用いてスクリーニングされる。このような方法において、ライブラリの各メンバーは、選択された因子と特異的に相互作用するその能力についてスクリーニングされる。この方法を実施する場合、生物学的因子を化合物含有チューブに投入し、各チューブの個々のライブラリ化合物と相互作用させる。相互作用は、所望の相互作用の存在を観察するのに使用され得る検出可能なシグナルを生じるよう設計される。好ましくは、生物学的因子は水溶液として調製され、所望の相互作用に応じてさらなる条件が用いられる。検出は、例えば、物質の検出のための任意の周知の機能ベースまたは非機能ベースの方法によって行われ得る。
【0066】
本発明において意図されるスフィンゴシンキナーゼ、SKAM1またはアゴニスト性もしくはアンタゴニスト性の薬剤の「アナログ」は、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成の際の非天然アミノ酸および/または誘導体の組み込み、ならびに架橋剤およびそのアナログに対して立体配座的な制約を課すその他の方法を含むがこれらに限定されない。そのような修飾により生じ得る特定の形態は、対象分子がタンパク質性であるか非タンパク質性であるかに依存すると考えられる。特定の修飾の性質および/または適合性は当業者により慣用的に決定され得る。
【0067】
例えば、本発明によって意図される側鎖の修飾の例には、アミノ基の修飾、例えばアルデヒドとの反応およびその後のNaBH4での還元による還元的アルキル化;メチルアセトイミデートによるアミド化;無水酢酸によるアシル化;シアナートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;ならびにピリドキサール-5-リン酸およびその後のNaBH4での還元によるリジンのピリドキシル化が含まれる。
【0068】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサールおよびグリオキサール等の試薬による複素環縮合産物の形成により修飾され得る。
【0069】
カルボキシル基は、O-アシルイソウレア形成を通じたカルボジイミドの活性化およびその後のそれに続く誘導体化、例えば対応するアミドへの誘導体化により修飾され得る。
【0070】
スルフィドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応;4-クロロ水銀ベンゾエート、4-クロロ水銀フェニルスフホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノールおよび他の水銀剤を用いた水銀誘導体の形成;アルカリpHでのシアナートによるカルバモイル化等の方法により修飾され得る。
【0071】
トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシニミドによる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドもしくはハロゲン化スルフェニルによるインドール環のアルキル化により修飾され得る。他方、チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化により3-ニトロチロシン誘導体を形成するよう変更され得る。
【0072】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカーボネートによるN-カルボエトキシ化により達成され得る。
【0073】
タンパク質合成の際に非天然アミノ酸および誘導体を組み込む例には、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD-異性体の使用が含まれるがこれらに限定されない。本発明において意図される非天然アミノ酸のリストを表1に示す。
【0074】
(表1)



【0075】
架橋剤は、例えば、ホモ二価性架橋剤、例えば(CH2)nスペーサー基(n=1〜n=6)を有する二価性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシニミドエステルならびに通常アミノ反応性部、例えばN-ヒドロキシスクシニミドおよび別の基特異的反応性部を含むヘテロ二価性試薬を用いて三次元立体配座を安定化させるのに使用され得る。
【0076】
本発明の方法は、インビトロまたはインビボのいずれかの状況の細胞供給源との関係で実施され得ることが理解されるはずである。
【0077】
スフィンゴシンキナーゼは細胞内シグナル伝達経路機能の中心となる分子であるため、本発明の方法はスフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達により制御または統制される細胞活性の調節手段を提供する。例えば、スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達経路は、細胞活性、例えば炎症、細胞の形質転換、アポトーシス、細胞増殖、炎症メディエーター、例えばサイトカイン、ケモカイン、eNOSの産生の上方制御、および接着分子の発現の上方制御をもたらす細胞活性を制御することが公知である。上記上方制御は、例えば、炎症サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子αおよびインターロイキン1、エンドトキシン、酸化脂質もしくは修飾脂質、放射線、または組織の損傷を含む多くの刺激により誘導され得る。これに関連して、「細胞活性の調節」に対する言及は、細胞がスフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達に従って発揮できる活性のうちの任意の一つまたは複数、例えば、ケモカインの産生、サイトカインの産生、一酸化窒素の合成、接着分子の発現、およびその他の炎症調節因子(modulator)の産生のうちの一つまたは複数(しかしこれらに限定されない)の上方制御、下方制御またはそうでなければ変更に対する言及である。好ましい方法はスフィンゴシンキナーゼの活性を下方制御することによって望ましくない細胞活性を下方制御することであるが、そうであるとしても本発明は特定の環境で望まれ得る細胞活性の上方制御を含むことが理解されるはずである。
【0078】
従って、本発明のさらに別の局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、細胞活性の調節方法に関する。
【0079】
好ましくは、本発明は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼ1との相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、細胞活性の調節方法に関する。
【0080】
最も好ましい態様において、本発明は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはヒト細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはヒト細胞活性を下方制御する、ヒト細胞活性の調節方法に関する。
【0081】
最も好ましくは、上記調節は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を誘導またはアゴナイズすることによって達成される細胞活性の上方制御である。
【0082】
最も好ましくは、上記薬剤はSKAM1またはSEQ ID NO:6の配列を含むペプチドそれ自体である。
【0083】
本発明のさらなる局面は、疾患状態の処置および/または予防に関連する本発明の使用に関する。本発明はいずれか一つの学説または作用様式に限定されるものではないが、スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達経路を通じて制御される幅広い細胞の機能活性にとって、スフィンゴシンキナーゼ機能の制御は、健常状態および疾患状態の両方の生理学的プロセスのあらゆる局面に不可欠な要素である。従って、本発明の方法は、スフィンゴシンキナーゼのシグナル伝達経路を通じて制御される、異常なまたはそうでなければ望ましくない細胞の機能活性の調節のための価値あるツールを提供する。
【0084】
従って、本発明のさらに別の局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤を哺乳動物に投与する段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0085】
本発明のさらに別の局面は、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤を哺乳動物に投与する段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼ活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼ活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0086】
好ましくは、上記相互作用は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域との間で起きる。
【0087】
最も好ましい態様において、本発明は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤をヒトに投与する段階を含み、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられるヒトにおける状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0088】
別の最も好ましい態様において、本発明は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤をヒトに投与する段階を含み、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を下方制御する、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられるヒトにおける状態の処置および/または予防のための方法に関する。
【0089】
最も好ましくは、上記調節は上方制御であり、上記薬剤はSKAM1もしくはSEQ ID NO:6の配列を含むペプチド、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物である。
【0090】
「異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な」細胞活性に対する言及は、過剰な細胞活性、生理学的には正常であるがそれが望ましくないという点で不適当な細胞活性または不十分な細胞活性に対する言及であることが理解されるはずである。この定義は、同様の様式で、「異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な」スフィンゴシンキナーゼ活性にも適用される。例えば、細胞が腫瘍性である限り、細胞増殖および抗アポトーシス性の促進が下方制御されることが望ましい。同様に、炎症によって特徴付けられる疾患、例えば関節リウマチ、アテローム硬化、喘息、自己免疫疾患、および炎症性腸疾患は、炎症メディエーター、例えば接着分子の合成および分泌をもたらす細胞活性を伴うことが公知である。このような状況においては、このような活性を下方制御することもまた望ましい。他の状況においては、細胞増殖を刺激するために、例えば脈管形成を促進するためにスフィンゴシンキナーゼの活性化をアゴナイズまたはそうでなければ誘導することが望ましい場合がある。
【0091】
本明細書中で使用する場合、「哺乳動物」という用語は、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、ペット動物(例えば、イヌ、ネコ)および捕獲野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)を含む。好ましくは、哺乳動物はヒトまたは実験動物である。さらにより好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0092】
「有効量」とは、少なくとも部分的に望ましい反応を得るためまたは処置される特定の状態の発症を遅らせるためもしくは進行を阻害するためもしくは発症もしくは進行の両方を停止させるために必要な量を意味する。この量は、処置される個体の健康状態および生理的状態、処置される個体の分類学上の分類、望まれる保護の程度、組成の処方、医学的状況の評価、およびその他の関連要因に依存して変化する。この量は比較的広範囲に及び、これらは慣用的な試験を通じて決定され得ると考えられる。
【0093】
本明細書における「処置」および「予防」に対する言及は、その最も広い意味で捉えるべきである。「処置」という用語は、被験体が完全に回復するまで処置されることを必ずしも意味するものではない。同様に、「予防」は被験体が最終的に疾患状態に罹らないことを必ずしも意味するものではない。従って、処置および予防には、特定の状態の症状の改善または特定の状態を発症する危険の抑止もしくはそうでなければ低減が含まれる。「予防」という用語は、特定の状態の重篤度または発症を減らすことであると捉えられ得る。「処置」もまた、既に存在する状態の重篤度を低減し得る。
【0094】
本発明はさらに、治療の併用、例えば対象の状態の処置との関係で有用であり得るその他の薬剤、薬物または処置、例えば癌の処置における細胞傷害性薬剤または放射線療法を哺乳動物に対して施すと共に薬剤を投与することを意図する。
【0095】
薬学的組成物の形態での調節性薬剤の投与は、任意の都合の良い手段によって実施され得る。薬学的組成物中の調節性薬剤は、その特定の症例に依存する量で投与された際に治療的活性を示すことが意図される。そのばらつきは、例えば、選択されるヒトまたは動物および調節性薬剤に依存する。幅広い用量が適用可能であり得る。患者にもよるが、例えば、1日につき、体重1kgあたり約0.1mg〜約1mgの調節性薬剤が投与され得る。用法は、最適な治療反応を提供するよう適合され得る。例えば、数回に分けられた用量が、毎日、毎週、毎月、またはその他の適当な時間間隔で投与されてもよいし、その用量は、その状況の緊急性に比例して減らしてもよい。
【0096】
調節性薬剤は、都合の良い様式で、例えば経口経路、静脈内経路(水溶性の場合)、腹腔内経路、筋内経路、皮下経路、皮内経路、もしくは坐剤経路(suppository route)、または移植によって(例えば、徐放性分子を用いて)投与され得る。調節性薬剤は、薬学的に許容される非毒性の塩、例えば酸付加塩または金属錯体、例えば亜鉛、鉄等との錯体(これらは本願の目的上、塩とみなされる)の形態で投与され得る。このような酸付加塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩等である。有効成分が錠剤の形態で投与される場合、錠剤は、結合剤、例えばトラガカント、トウモロコシデンプン、またはゼラチン;崩壊剤、例えばアルギン酸;および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含み得る。
【0097】
投与経路には、呼吸器、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋内、眼内、くも膜下腔内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、点滴静注経由、パッチ、および移植が含まれるがこれらに限定されない。
【0098】
これらの方法に従って、本発明に従い定義された薬剤は、一つまたは複数の他の化合物または分子と同時投与され得る。「同時投与」とは、同じ経路もしくは異なる経路を通じて同じ処方物としてもしくは二つの異なる処方物として同時に投与することまたは同じ経路もしくは異なる経路で連続して投与することを意味する。例えば、対象の薬剤は、その効果を増進するためにアゴニスト性薬剤と共に投与され得る。「連続」投与とは、二つの型の分子の投与の間に秒、分、時間または日単位の時間差があることを意味する。これらの分子は任意の順に投与され得る。
【0099】
本発明の別の局面は、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置のための医薬の製造における、本明細書の上記に定義された薬剤の使用であって、該薬剤はスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節し、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズは細胞活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは細胞活性を下方制御する、使用を意図する。
【0100】
本発明のさらに別の局面は、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置のための医薬の製造における、本明細書の上記に定義された薬剤の使用であって、該薬剤はSKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節し、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を下方制御する、使用を意図する。
【0101】
好ましくは、上記相互作用は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応するアミノ酸領域との相互作用である。
【0102】
さらにより好ましくは、上記哺乳動物はヒトであり、上記調節は上方制御である。
【0103】
さらに別のさらなる局面において、本発明は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に本明細書の上記に定義された調節性薬剤を含む薬学的組成物を意図する。これらの薬剤は有効成分と称される。
【0104】
注射用途に適した薬学的形態には、無菌水溶液(水溶性の場合)もしくは分散物および無菌注射溶液もしく分散物を素早く調製するための無菌粉末が含まれ、またはクリーム形態もしくは局所適用に適したその他の形態であり得る。これらは製造および保存条件下で安定でなければならず、かつ微生物、例えば細菌および真菌の混入から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物ならびに植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合は必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物作用の抑止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってなされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長期的な吸収は、その組成物において吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってなされ得る。
【0105】
無菌注射溶液は、必要に応じて上記の列挙した様々な他の成分を含む適当な溶媒に必要量の活性化合物を加え、これを濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散物は、基礎分散媒体および上記の列挙した中の必要な他の成分を含む無菌媒体に様々な無菌処理した有効成分を加えることによって調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分および任意の追加の所望の成分の粉末を予め濾過滅菌したそれらの溶液から生成する減圧乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0106】
有効成分が適当に保護される場合、それらは例えば不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体と共に経口投与されてもよいし、硬質殻もしくは軟質殻のゼラチンカプセルに内包されてもよいし、錠剤の中に圧縮されてもよいし、または食物に直接加えられてもよい。経口治療投与について、活性化合物は賦形剤と共に加えられ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハ剤等の形態で使用され得る。このような組成物および製剤は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。組成物および製剤の割合は当然変化し、約5〜約80重量%の単位が都合良い。このような治療的に有用な組成物における活性化合物の量は、適当な用量が獲得され得る量である。本発明に従う好ましい組成物または製剤は、経口投薬単位形態が約0.1μg〜2000mgの活性化合物を含むよう調製される。
【0107】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等はまた、以下に列挙する成分を含み得る:結合剤、例えばゴム、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチン;賦形剤、例えば第二リン酸カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等;滑沢剤、例えばステアリン酸ナトリウム;および甘味剤、例えばスクロース、ラクトース、もしくはサッカリン、または香味剤、例えばペパーミント、冬緑油、もしくはチェリー香。投薬単位形態がカプセル剤の場合、上記類型の材料に加えて液体担体を含み得る。様々な他の材料は、コーティングとしてまたはそうでなければその投薬単位の物理的形態を修飾するために加えられ得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、セラック、糖、またはその両方でコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、着色料および香味剤、例えばチェリーフレーバーまたはオレンジフレーバーを含み得る。当然、任意の投薬単位形態を調製するのに使用する任意の材料は、薬学的に純粋でありかつ用いられる量において実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、持続放出製剤および徐放処方物に加えられ得る。
【0108】
薬学的組成物はまた、遺伝的分子、例えば標的細胞をトランスフェクトでき、調製性薬剤をコードする核酸分子を保持するベクターを含み得る。ベクターは、例えば、ウイルスベクターであり得る。
【0109】
本発明のさらに別の局面は、本発明の方法において使用する場合の、本明細書の上記に定義した薬剤に関する。
【0110】
本発明のなおさらなる局面は、SEQ ID NO:1の残基51〜132に対応する領域またはそれに対して少なくとも40%の類似性を示す領域を含み、スフィンゴシンキナーゼと相互作用しスフィンゴシンキナーゼの固有の触媒活性を上方制御できるSKAM1模倣物に関する。
【0111】
好ましくは、上記のパーセント類似性は、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である。
【0112】
本発明は、上記模倣物をコードする核酸分子に及ぶことが理解されるはずである。
【0113】
以下の非限定的な実施例を参照することで本発明をさらに解説する。
【0114】
実施例1
SKAM1との相互作用を通じたスフィンゴシンキナーゼの活性化
材料および方法
材料
グルタチオンおよびアガロース粉末はSigma Chemical Co(St. Louis, MO, USA)から購入した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、HEPES緩衝液、ウシ胎仔血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンはCSL Biosciences(Parkville, Australia)から購入した。プロテアーゼ阻害剤(Complete(商標))はRoche Diagnostics GMbH(Mannheim, Germany)から購入し、Benchmark(商標)着色済みタンパク質ラダーはInvitrogen(San Diego, CA)から購入し、ニトロセルロースメンブレンはSchleicher and Schuell(Keene, USA)から、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)はPromega(USA)から購入した。LabtekチェンバースライドはNalge Nunc International(Naperville, IL)から購入した。FITC結合ヒツジ抗ウサギおよび抗マウスIgGはAMRAD(Melbourne, Australia)から購入した。Alexa(594)結合抗ウサギおよび抗マウスIgGはMolecular Probes(Eugene, Oregon USA)から購入した。蛍光染色用マウンティングメディウムはDAKO Corporation(CA, USA)から、プロテインアッセイ染色液はBio-Rad Laboratories(CA, USA)から購入した。D-エリスロ-スフィンゴシンはBiomol Research Laboratories Inc(Plymouth, PA)から、[γ-32P]ATPはPerkin Elmer(Melbourne, Australia)から購入した。
【0115】
酵母ツーハイブリッドスクリーニング
酵母ツーハイブリッドスクリーニングは、Matchmaker Gal4ツーハイブリッドシステム3(Clontech)を製造元の指示に従い用いて行った。全長hSK1 cDNA(Genbankアクセッション番号AF200328)をGal4 DNA結合ドメインとインフレームでpGBKT7(Clontech)にクローニングした。次いでヒト白血球cDNAライブラリを含むpACT2(Clontech)と共にこのベイト構築物で酵母AH107株を形質転換した。合計1×106個の独立したクローンをスクリーニングし、10個の確実に陽性のクローンを得た。
【0116】
SKAM1の哺乳動物発現構築物の作製
酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより単離したSKAM1の部分配列をNCBIデータベースを通じて分析し、様々なSKAM1アイソフォーム(Genbankアクセッション番号AK001534)のPCR増幅用プライマーを設計した。SKAM1AおよびSKAM1Bは胎盤cDNAからPCR増幅し、SKAM1Dは総単核細胞cDNAからPCR増幅した。プライマーは

であった。PCR産物をEcoRIで切断し、pCMV(HA)哺乳動物発現ベクター(Clontech)にインフレームでクローニングした。次いでSKAM1CおよびSKAM1Yを、プライマー

を用いてpCMV(HA)-SKAM1AからPCRにより生成した。次いでこれらの生成物をpCMV(HA)プラスミドにクローニングした。得られたSKAM1 cDNAは両方向から配列決定し、それらの完全性を確認した。
【0117】
細胞培養およびトランスフェクション
ヒト胎児腎細胞(HEK-293T)は、10cm培養皿にて、10% FCS、2mMグルタミン、0.2%(w/v)重炭酸ナトリウム、1.2mg/mlペニシリンおよび1.6mg/mlストレプトマイシンを補充したDMEMにプレーティングした。24時間後、Sambrook et al(1989)に従うリン酸カルシウム沈降法を用いて哺乳動物発現構築物で細胞をトランスフェクトした。次の日にHEK-293Tトランスフェクト細胞を10mlの冷PBS中にかき集めることによって収集し、次いで1500rpm、4℃で5分間遠心分離した。pCMV-(HA)-SKAM1および/またはpcDNA3.SK1(FLAG)(Pitson et al., 2000a, 前出)のいずれかでトランスフェクトした細胞を超音波処理(2ワット、4℃で30秒間)により50mM Tris/HCl(pH7.4)、10%グリセロール、0.05% Triton X-100、150mM NaCl、1mMジチオスレイトール、2mM Na3VO4、10mM NaF、1mM EDTAおよびComplete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する抽出緩衝液に溶解させた。pcDNA3.SK2(FLAG)(Roberts et al., 2004, Anal. Biochem. 331:122-129)でトランスフェクトした細胞は、Triton X-100がSK2の活性を阻害することが報告されている(Liu et al., 2000, 前出)ためTriton X-100を含まない抽出緩衝液を用いたことを除いて同様に収集した。免疫共沈降によるSKAM1-hSK2相互作用の分析のために、細胞を26ゲージ針に5回通すことによって0.5% Triton X-100を含有する上記抽出緩衝液1mlに溶解させた。溶解産物は通常液体窒素中で急速冷凍し、さらに分析するまで-80℃で保存した。
【0118】
免疫沈降およびウェスタンブロット分析
hSK1(FLAG)またはhSK2(FLAG)を単独でおよび/またはHA-SKAM1アイソフォームと共に発現する溶解産物を、13,000g、4℃で10分間遠心分離し、不溶物を除去した。この溶解産物に抗体を加え、撹拌しながら4℃で3時間インキュベートした。次いで50μlのプロテインAセファロース(Amersham Pharmacia Biotech)の50%スラリーと共に4℃で3時間インキュベートすることによって免疫複合体を捕捉し、冷抽出緩衝液で洗浄し、SDS-PAGEに供してタンパク質をニトロセルロースメンブレンに移した。hSK1は、モノクローナルM2抗FLAG抗体(Sigma)または大腸菌(E.coli)において産生された組換えhSK1に対して惹起されたポリクローナルニワトリまたはウサギ抗SK1抗体のいずれかを用いて定量した(Pitson et al., 2000a, 前出)。SKAM1は、抗HA抗体(12CA5;Sigma)または抗SKAM1抗体のいずれかを用いて決定した。免疫複合体は、エンハンスド・ケミルミネセンス・キット(ECL, Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、HRP結合抗マウス(Pierce)、抗ウサギ(Pierce)または抗ニワトリIgG(IMVS, Adelaide, Australia)により検出した。
【0119】
GST-SKAM1アイソフォームの作製
pCMV(HA)-SKAM1A、B、C、DおよびYをEcoRIで切断し、次いでpGEX4T2ベクターにインフレームでクローニングし、電気穿孔法によって大腸菌JM109を形質転換した。コロニーをかき取り、30mlのL-ブロスまたはスーパーブロス(35g/Lトリプトン、20g/L酵母エキス、5g/L NaCl、20g/Lグルコースおよび100μg/mlアンピシリン含有、pH7.5)のいずれかで一晩培養した。一晩培養したものを300mlのL-ブロスまたはスーパーブロスのいずれかで1:30希釈し、OD600が約0.8に達するまで37℃で振盪しながらインキュベートした。次いで、これらの培養物におけるGST-SKAM1タンパク質の発現を、37℃で1時間、1mM IPTGを用いて誘導した。その後、培養物を7500rpm、4℃で15分間遠心分離し、その上清を廃棄し、細菌細胞ペレットを液体窒素下で急速冷凍し、-80℃で保存した。凍結させた細菌ペレットを解凍し、Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する20mlのPBSに再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。次いでその細胞懸濁物に対して5ワットで30秒間の超音波処理を3回行い、次いで氷上、1% Triton X-100の存在下で15分間インキュベートした。次いで細胞溶解産物を20,000rpm、4℃で30分間遠心分離した。GST-SKAM1アイソフォームは、200μlのグルタチオンセファロース(Amersham Pharmacia Biotech)の50%スラリーを加え、4℃で3時間、撹拌しながらインキュベートすることによって洗浄した溶解産物から単離した。結合したGST-SKAM1を含むグルタチオンセファロースを遠心分離(3000rpm、4℃、5分)によって収集し、冷PBSで3回洗浄した。次いで、250μlの20mMグルタチオンを加え4℃で30分間撹拌することによってGST-SKAM1タンパク質を溶出させた。溶出したGST-SKAM1Dタンパク質を収集し、PBS中で透析し、SDS-PAGEおよびクマシー染色(Sigma Chemical Co)により分析した。タンパク質濃度は、クマシーブリリアントブルー試薬(BioRad)によって溶液中で決定するかまたはBSAスタンダードに対するバンドの強度に基づきクマシー染色したゲル上で決定した。
【0120】
SK酵素活性アッセイ
スフィンゴシンキナーゼの活性は、以前に記載されたように(Pitson et al., 2000a, 前出)、基質としてD-エリスロ-スフィンゴシンおよび[γ-32P]ATPを用いて決定した。hSK1についてのアッセイは、Triton X-100で可溶化させたスフィンゴシンを用いて行い、hSK2についてのアッセイ(Roberts et al., 2004, 前出)は、スフィンゴシンをBSAとの複合体として供給したことを除いて同じ様式で行った。1ユニット(U)の活性は、1mgのタンパク質で1分間あたり1pmolのS1Pを形成する活性と定義した。SKの基質動態分析は、ATPを1mMに固定しスフィンゴシン濃度を変化させる(1〜50μM)ことによって、およびスフィンゴシン(Sph)を100μMに固定しATP濃度を変化させる(5〜500μM)ことによって行った。動態データは、ミカエリスメンテン速度式を用いて非線形回帰プログラムHyper 1.1sにより分析した。
【0121】
内因性SKAM1の免疫除去(immunodepletion)
総単核細胞(TMNC)、HEK293-T細胞およびNIH3T3から溶解産物を調製し、13,000rpm、4℃で15分間遠心分離して不溶物を除去し、これを12%ポリアクリルアミドゲルを用いるSDS-PAGEに供した。そのメンブレンを、5% SMPおよび0.1% Tween-20を含有するPBS中、室温で30分間、ロッキングプラットホーム上でブロッキングした。メンブレンをブロッキングしている間、1:10000希釈の抗SKAM1抗体を、グルタチオン-セファロース結合GST-SKAM1Dまたはグルタチオン-セファロース結合GSTのいずれかと共に室温で1時間、ロッキングプラットホーム上でインキュベートした。グルタチオン-セファロースビーズを2000rpm、4℃で5分間遠心分離した。次いで、対照としての上清および免疫除去した抗血清SKAM1をウェスタンブロット分析に使用した。
【0122】
細胞成分分画
細胞成分分画のために、細胞を収集し、次の日にTriton X-100を含まない200μlの抽出緩衝液中で超音波処理することによって溶解させた。総細胞溶解産物を収集し、600rpm、4℃で10分間遠心分離して核を除去した。次いで、核除去後上清(post nuclear supernatant)を55,000rpm、4℃で1時間、超遠心分離を行った。細胞質ゾル画分(上清)を収集した。ペレットを、0.8% Triton X-100を含有する抽出緩衝液に再懸濁し、3Hzで30秒間超音波処理し、氷上で30分間インキュベートした。次いでTriton不溶物を、13,000rpm、4℃で10分間の遠心分離により分離した。Triton溶解性の膜画分を収集し、Trion不溶性の細胞骨格画分であるペレットを再度、0.8% Triton X-100を含有する抽出緩衝液に再懸濁し、3Hzで30秒間超音波処理した。全ての画分を15%および12%ポリアクリルアミドゲルに供した後、すでに記載したように抗HA抗体および抗FLAG抗体を用いるウェスタンブロットを行った。
【0123】
免疫蛍光検査
マウス胎仔線維芽細胞(NIH3T3)および乳癌細胞株(MFC-7)を6cm培養皿上のDMEMにプレーティングした。24時間後、pCMV(HA)-SKAM1A、1B、1Cおよび1Dを単独でまたはGFP-SK1をコードするpcDNA3ベクター(Pitson et al., 2003, 前出)と共に、リポフェクタミン2000を製造元の指示に従って用いてNIH3T3細胞をトランスフェクトした。次の日にLabtekスライドを200μlの50ng/mlフィブロネクチンでコーティングし、37℃で30分間インキュベートした。その間に、トランスフェクトしたNIH3T3およびトランスフェクトしていないMCF-7細胞をPBSで洗浄し、5ml DMEMに再懸濁し、計数し、次いで適当量のDMEMで希釈した。8ウェルのlabtekスライドからフィブロネクチンを除去し、各ウェルあたり12,500細胞を播種し、37℃で一晩インキュベートした。免疫蛍光分析のために、その培地を除去し、細胞を各ウェルあたり200μlのPBSで洗浄し、200μlの4%パラホルムアルデヒドによる固定を10分間行った。0.1% Triton X-100を含有する200μlのPBS(PBST)で細胞を二度洗浄した。別の200μlのPBSTを加え、10分間静置して細胞を透過処理した。PBSTを除去し、3% BSAを含有するPBSTに1:4000希釈した抗HA抗体および/または1:1000希釈もしくは1:4000希釈した抗SKAM1抗体100μlと共に室温で1時間インキュベートした。抗体を除去し、細胞を200μl PBSTで三回洗浄した。細胞を、3% BSAを含有するPBSTに1:500希釈した抗マウスAlexa594および1:1000希釈した抗ウサギFITC、100μlと共に室温で1時間、暗所でインキュベートした。二次抗体を除去し、細胞を200μl PBSTで三回洗浄した後、200μl PBSで洗浄した。スライドをドリップドライし、蛍光染色用マウンティングメディウム(Dako)およびカバースリップを適用した。
【0124】
結果
hSK1相互作用タンパク質としてのSKAM1の同定
hSK1と相互作用するタンパク質を同定するために、ベイトとして全長hSK1を有するヒト白血球cDNAライブラリを用いて酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行った。このスクリーニングによって10の推定hSK1相互作用タンパク質を同定し、その中にスフィンゴシンキナーゼ活性化分子1(SKAM1)と呼ばれるタンパク質が含まれていた。データベース検索は4つの異なる転写物を明らかにした。これらは選択的スプライシングによって生じるようであり、4つの異なる天然に存在するSKAM1タンパク質のアイソフォーム(A、B、CおよびD)をコードする(図1)。酵母ツーハイブリッドスクリーニングを通じて単離したSKAM1の部分cDNAは、SKAM1DアイソフォームのC末端領域と同一のタンパク質をコードした(図1A)。その理由はこのアイソフォームに特有のC側最末端の8アミノ酸を有しているからである。
【0125】
配列分析は、SKAM1が、ヒトから扁虫に及ぶ多くの生物に存在するタンパク質であることを示した。現時点で、このタンパク質の構造および機能は未だ解明されていない。さらに、他の公知のタンパク質との比較により認定できるドメインはSKAM1において一つも見出すことができない。SMARTデータベースを用いた最初のドメイン調査の結果(Schultz et al., 1998,. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864)は、SKAM1AがAAAドメインを有し得ることを明らかにした。AAA(ATPases associated with diverse cellular activities)タンパク質は、ATP依存的なタンパク質のフォールディング、タンパク質複合体の形成、膜融合を通じたタンパク質の輸送およびタンパク質の分解に関与する(Ogura & Wilkinson, 2001, Genes Cells 6:575-597)。しかし、より詳細な配列分析は、SKAM1AがAAAドメインに対して一定の配列類似性を示すものの、ATP結合およびAAAドメインファミリーへの分類に必須のWalker A(GXXXXGK(T/S))モチーフおよびWalker B((D/E)XX)モチーフを有さないことを明らかにした。さらに、SKAM1Aはまた、AAAファミリーに特徴的な他の高度に保存されたアミノ酸配列、例えば第二相同性領域(SRH)またはsensor-1モチーフおよびプロリンリッチ領域を有さない(Karata et al., 1999, J. Biol. Chem. 274:26225-26232)。
【0126】
SKAM1アイソフォームのクローニングおよび発現
hSK1に対する様々なSKAM1アイソフォームの相互作用および効果を確認するため、4つの天然に存在するSKAM1のアイソフォーム(A、B、CおよびD)について哺乳動物発現構築物を作製した。hSK1と相互作用するタンパク質についてのY2Hスクリーニングにより単離されたSKAM1の部分cDNAに基づき、人工短縮型SKAM1も作製した(SKAM1Y)。これは、TMNCおよび胎盤cDNAからSKAM1アイソフォームをPCR増幅し、得られた生成物をN末端血球凝集素(HA)タグと共に哺乳動物細胞中で発現させるためのベクターpCMV(HA)にクローニングすることによって行った。次いで、4つの天然に存在するSKAM1アイソフォーム(A〜D)および人工的に短縮したSKAM1Yを哺乳動物細胞において過剰発現させた。pCMV(HA)-SKAM1A、B、C、DおよびYを用いてHEK-293T細胞を一過的にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後に細胞を収集し、溶解させ、その細胞溶解産物を、過剰発現タンパク質の存在についてそれらのHAエピトープタグを通じて免疫ブロットした。全てのHAタグ付きSKAM1タンパク質は、抗HA抗体による免疫ブロットによって期待された分子量28kDa(SKAM1A)、24kDa(SKAM1B)、19kDa(SKAM1C)、15kDa(SKAM1D)および10kDa(SKAM1Y)で検出された(図1B)。
【0127】
SKAM1-hSK1の相互作用の確認
hSK1とSKAM1アイソフォームの相互作用は、免疫共沈降研究によって評価した。HAタグを付加したSKAM1A、B、C、DおよびYアイソフォームおよびFLAGエピトープタグを付加したhSK1を発現するHEK-293T細胞由来の溶解産物を抗HAモノクローナル抗体で免疫沈降させて、SKAM1タンパク質を免疫沈降させた。次いで、免疫複合体中のhSK1の存在を、ニワトリ抗SK1抗体を用いる免疫ブロット分析によって分析した(Pitson et al., 2003, 前出)。期待された45kDa hSK1は全てのSKAM1-hSK1コトランスフェクション溶解産物において検出された(図2)。このことは、hSK1と4つの天然に存在するSKAM1A、B、C、Dアイソフォームおよび人工的に短縮したSKAM1Yの間に相互作用が存在することを示した。
【0128】
SKAM1アイソフォームとhSK1の間の相互作用をさらに確認するため、抗FLAG抗体を用いて逆免疫沈降を行い、その免疫複合体を抗HA抗体または抗SKAM1抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した。4つの天然に存在するSKAM1アイソフォームは全て、効果的にhSK1と共に免疫共沈降した(図3)。人工的に短縮したSKAM1Yアイソフォームはこの様式でhSK1と共に免疫共沈降できず、これによりその結合能が低いことが示唆された(図3)。hSK1のみを過剰発現する細胞由来の溶解産物由来の内因性SKAM1も、抗SKAM1抗体を用いて免疫沈降させ、そしてニワトリ抗SK1抗体を用いてhSK1を検出することを試みた。45kDaのタンパク質が、hSK1過剰発現細胞の溶解産物の免疫沈降物から検出され(図4)、これにより過剰発現させたhSK1と内因性SKAM1の間の相互作用が示された。
【0129】
最近の研究(Pitson et al., 2003, 前出)は、hSK1の活性化の一つの機構がそのSer225におけるリン酸化を伴うことを示した。SKAM1-hSK1相互作用がこのリン酸化に依存するか否かを決定するため、SKAM1Dが非リン酸化型hSK1(hSK1S225A)と相互作用できるか否かの分析を行った。その結果(図5)は、SKAM1DおよびhSK1S225Aが実際に免疫共沈降することを実証し、これによりhSK1のSer225のリン酸化がこの相互作用に必要でないことが示された。
【0130】
内因性ヒトSK1の活性を増加させる、SKAM1アイソフォームの過剰発現
過剰発現させたSKAM1アイソフォームの内因性SK活性に対する効果を研究するため、HEK-293T細胞をpCMV(HA)-SKAM1A、B、C、DおよびY構築物でトランスフェクトした。24時間後、細胞を収集し、総細胞溶解産物をSK酵素活性について分析した。その結果(図6)は、天然に存在する全てのSKAM1アイソフォームの過剰発現が基準SK活性をおよそ2〜3倍増加させることを実証する。同様に、人工的に短縮したSKAM1Yアイソフォームの発現もまた、細胞のSK活性を2倍増進させた。
【0131】
細胞のSK活性の増加の媒介となる、細胞内でのヒトSK1とSKAM1の間の直接的な相互作用
SKAM1の過剰発現により増加したSK活性がSKAM1とhSK1の間の直接的な相互作用の結果であるか否かの分析を行った。従って、hSK1の活性化をブロックするドミナントネガティブとして作用することが以前に示された(Pitson et al., 2000b, 前出)触媒として不活性な形態のhSK1(hSK1G82D)も発現する細胞においてSKAM1AおよびDの過剰発現がSK活性を増進する能力を試験した。最初に、これらの溶解産物由来のSKAMを抗HA抗体を用いて免疫沈降させ、その後に抗hSK1抗体を用いるウェスタンブロットにより免疫複合体中のhSK1G82Dを検出することによって、SKAM1AおよびDとhSK1G82Dの間の相互作用を確認した(図7)。これらの細胞における内因性SK活性の試験は、SKAM1をhSK1G82Dと共発現させた場合、SKAM1AおよびDの内因性SK活性を増進する能力が消失することを示した(図7)。このことは、SKAM1が細胞中のhSK1活性に対して直接的な効果を有することを示唆する。
【0132】
GST-SKAM1タンパク質アイソフォームの作製
hSK1に対するSKAM1の直接的効果をインビトロで試験するため、およびポリクローナル抗SKAM1抗体を作製するため、精製した組換えGST融合タンパク質としてSKAM1アイソフォームを生成した。SKAM1A、B、C、DおよびYのDNAをpGEX4T2ベクターにクローニングし、組換えGST-SKAM1タンパク質を大腸菌中で産生させた。次いで生成されたタンパク質をSDS-PAGEおよびクマシー染色により分析した。分子量54kDa(GST-SKAM1A)、50kDa(GST-SKAM1B)、45kDa(GST-SKAM1C)、41kDa(GST-SKAM1D)および35kDa(GST-SKAM1Y)、26kDa(GST)のタンパク質を可視化した(図8)。GST-SKAM1A、DおよびYの抽出物中に存在する他のタンパク質は分解産物であると考えられる。この調製物からのGST-SKAM1タンパク質の収量は細菌培養物300mlあたり364μg(SKAM1A)、850μg(SKAM1B)、870μg(SKAM1C)、500μg(SKAM1D)および1500μg(SKAM1Y)であった。
【0133】
hSK1に対するSKAM1のインビトロでの効果
hSK1は不安定な酵素なので(Pitson et al., 2000a, 前出)、最初に、SKAM1の過剰発現が細胞または細胞抽出物におけるSKの安定性を増加させることにより細胞のSK活性を増進させるのではないかという仮説をたてた。従って、組換えhSK1(rec hSK1)およびGST-SKAM1Dを45℃で240分間一緒にインキュベートし、様々な時点で残存するSK活性を測定することにより、hSK1のインビトロでの安定性に対するSKAM1の効果を試験した。その結果(図9)は、SKAM1Dが実際に、rec-hSK1のインビトロでの安定性に対して一定の効果を有し、45℃におけるその半減期を7分から15分に増加させることを示した。しかし、SKAM1Dの存在はrec-hSK1の活性を顕著に、GST単独の対照と比較して2倍以上増進したことがより際立っている。さらに分析を繰り返すことでこの効果を確認し(図10)、これがSKAM1Dの想定外のSK活性に起因するものでも(図10)、本酵素アッセイにおけるrec-SK1の安定性の変化に対するSKAM1Dの効果に起因するものでもないことが実証された。というのも、本アッセイ条件下ではrec-hSK1は安定であり線形の反応速度を示していたからである(図11)。
【0134】
rec-hSK1に対するGST-SKAM1Dのこの効果が用量依存的であるか否かを試験するため、漸増濃度のGST-SKAM1Dを用いてrec-hSK1の活性を測定した。結果は、少なくとも10倍モル過剰のSKAM1Dまで、漸増濃度のGST-SKAM1Dと共にrec-hSK1活性が増加することを示した(図12)。rec-hSK1の最大活性は、20倍モル過剰のGST-SKAM1Dで観察された。
【0135】
ヒトSK1基質動態に対するGST-SKAM1Dの効果
SKAM1Dはrec-hSK1活性を直接的に増加させるので、hSK1基質動態に対するSKAM1Dの効果に関する評価を行った。漸増濃度のATP(図13)またはスフィンゴシン(図14)の存在下でのrec-hSK1活性に対するGST-SKAM1Dの効果を測定し、そのデータをミカエリスメンテン速度式を用いて分析した。その結果(表2)は、ATPおよびスフィンゴシンの両方に対するrec-hSK1のKm値がGST-SKAM1Dの存在によって変化しないことを示す。しかし、それとは対照的に、rec-hSK1のKcat値(触媒速度定数または回転数)はGST-SKAM1Dによっておよそ4倍増加した。このことは、SKAM1が酵素反応の速度を増進し、hSK1の基質に対する結合親和性を増進しないことを示唆する。
【0136】
組換えヒトSK1活性に対する他のSKAM1アイソフォームの効果
GST-SKAM1タンパク質を20倍モル過剰でrec-hSK1と共にインキュベートし、その混合物をインビトロSK活性アッセイに供した。これらのタンパク質の存在下で、rec-hSK1活性は、GST-SKAM1AおよびBによっておよそ4倍、GST-SKAM1C、DおよびYによって2〜3倍増加した(図15)。さらに、hSK1に対するGST-SKAM1アイソフォームの効果は、内因性hSK1活性に対してHEK-293T細胞におけるSKAM1アイソフォームの過剰発現から観察された効果と非常に類似するものであった(図6)。
【0137】
TNFα媒介性のSK活性化を変化させないSKAM1の発現
本研究におけるこれまでの知見は、SKAM1の過剰発現が細胞のSK活性を増進することを実証していたので、ERK1/2によるhSK1のSer225におけるリン酸化により媒介されるTNFαによる細胞内でのSKの活性化に対する効果(Pitson et al., 2003, 前出)を試験した。SKAM1AおよびSKAM1D(最大および最小の天然に存在するSKAMアイソフォーム)を過剰発現するHEK293T細胞を10分間TNFαで処理し、収集し、細胞のSK活性を測定した。以前に観察されたように、SKAM1の過剰発現は、対照細胞と比較して基準SK活性をおよそ2倍増加させた(図16)。これらSKAM1AまたはDを過剰発現する細胞のTNFα処理は、対照細胞において観察されたのと同じ様式でSK活性をさらに増加させ、これにより、リン酸化媒介性のSKの活性化にSKAM1が影響しないことが示された。
【0138】
SKAM1によるhSK2の相互作用および活性化
SKAM1はhSK1と相互作用しかつその活性に対して直接的な効果を有したので、もう一方のヒトSKアイソフォームであるhSK2に対するその潜在的な効果を試験した。SKAM1AおよびD(最大および最小の天然に存在するSKAM1アイソフォーム)とhSK2の相互作用を免疫共沈降により評価した。HA-SKAM1AまたはDのいずれかと共にFLAGタグ付きhSK2を共発現するHEK-293T細胞由来の溶解産物を抗FLAG抗体で免疫共沈降させた。次いで、免疫複合体中のSKAM1タンパク質の存在を抗HA抗体を用いる免疫ブロットにより分析した。免疫共沈降させた溶解産物において28kDa(SKAM1A)および15kDa(SKAM1D)のタンパク質が検出され(図17)、これによりhSK2とSKAM1AおよびDの間に相互作用が存在することが示された。
【0139】
SKAM1がhSK2と相互作用することが実証されたので、本発明者らは次に、GST-SKAM1もまたインビトロでhSK2活性に対する効果を有するか否かを調査した。GST-SKAM1A、B、C、DおよびYアイソフォームをインビトロでrec-hSK2と共にインキュベートし、得られたSK活性を測定した。rec-hSK1において観察された結果と同様、全てのSKAM1アイソフォームはrec-hSK2の活性を増進した。hSK2活性は、GST-SKAM1Aによっておよそ5倍、GST-SKAM1Bによって4倍、GST-SKAM1C、DおよびYによって約2〜3倍増加した(図18)。
【0140】
ポリクローナル抗SKAM1抗体の作製および特徴付け
抗SKAM1ポリクローナル抗体を作製するため、精製した組換えGST-SKAM1Dタンパク質を用いてニュージーランド白ウサギに接種した。SKAM1Dは最小の天然に存在するSKAM1アイソフォームであり、そのほぼ全てのポリペプチド配列が全ての他のSKAM1アイソフォームに存在するので、これを抗原として選択した。つまりSKAM1Dは全てのSKAM1タンパク質を検出する抗体を作製できる可能性が最も高いSKAM1アイソフォームであると考えた。抗SKAM1抗体の活性および特異性は、HEK293T細胞において過剰発現されたSKAM1Dを検出する最終的な粗抗血清を用いて試験した。推定15kDaの分子量を有するSKAM1Dは抗SKAM1抗血清の連続希釈物によって検出された(図19A)。抗血清は、高い希釈率においては非常に特異的であり、SKAM1Dに対応する一つのバンドのみを示した。しかし、低い希釈率においてはいくつかの非特異的なバンドがブロット上に見られたが、とりわけ内因性SKAM1AおよびBアイソフォームを表す約27kDaおよび23kDaのタンパク質もまた観察された(図19A)。
【0141】
抗SKAM1抗体は過剰発現されたSKAM1D(抗体を作製するのに使用したタンパク質)を効果的に検出できるので、この抗体がその他のSKAM1アイソフォームを検出できるか否かに関する調査を行った。HA-SKAM1A、B、C、DおよびYを発現するHEK293T細胞由来の溶解産物を抗SKAM1抗体および抗HA抗体の両方で免疫ブロットした(図19B、C)。全てのSKAM1アイソフォームは、抗SKAM1抗体によって28kDa(SKAM1A)、24kDa(SKAM1B)、19kDa(SKAM1C)、15kDa(SKAM1D)および10kDa(SKAM1Y)で特異的に検出された。抗SKAM1ブロットにおけるタンパク質強度の差は、抗HA抗体を用いた免疫ブロットによって示された溶解産物におけるタンパク質の発現レベルの差を表すものである(図19C)。
【0142】
抗SKAM1抗体が過剰発現されたSKAM1アイソフォームを免疫沈降させる能力を評価するため、HA-SKAM1A、B、C、DおよびYを発現するHEK293T細胞由来の溶解産物を抗SKAM1ポリクローナル抗体で免疫沈降させた。次いで免疫沈降したSKAM1タンパク質を抗SKAM1抗体を用いて免疫ブロットした。図19Dは、天然に存在する全てのSKAM1アイソフォームが効果的に免疫沈降され得ることを示す。人工的なSKAM1Yは低効率で免疫沈降した。
【0143】
ウェスタンブロットおよび免疫蛍光検査の両方を通じて抗SKAM1抗体が過剰発現されたSKAM1を検出できることが確認されたので、この抗体が異なる細胞株において内因性SKAM1を検出する能力を試験した。HEK-293T細胞において内因性SKAM1を正確に検出するのは不可能であった。このことは、これらの細胞が低レベルでしかSKAM1を発現しないことに起因する可能性が最も高い。従って、この抗SKAM1抗体を用いて様々な他の細胞株を、内因性SKAM1アイソフォームの存在について試験した。総単核細胞(TMNC)、HEK293T、NIH3T3、MCF-7、ヒトリンパ球、白血病細胞株(HL60)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト単球、マウス骨髄、ヒト好中球およびマウス胎仔肝細胞をSDS-PAGEに供し、1:5000希釈の抗SKAM1を用いて免疫ブロットした。マウス細胞株は、ヒトとマウスのSKAM1の間に高い配列保存性(99.6%のアミノ酸同一性)が認められるため採用した。TMNC、ヒトリンパ球およびMCF-7細胞ならびにマウス胎仔肝において約23kDaのタンパク質が検出された(図20)。内因性SKAM1BはHAエピトープが原因で過剰発現されたSKAM1Bよりも1kDa小さいので、これはこのタンパク質のようである。HEK293T細胞およびNIH3T3細胞の溶解産物においては、内因性SKAM1AおよびBを表すであろう約27kDaおよび23kDaの二つのタンパク質の弱い検出があった(図20A)。
【0144】
このタンパク質が内因性SKAM1であることを示すために、内因性SKAM1が存在すると推測される様々な溶解産物、すなわちTMNC、HEK-293およびNIH3T3を用いて免疫除去研究を行った。これらの細胞株由来の溶解産物を、グルタチオン-セファロースに結合させたGST-SKAM1DまたはGST単独のいずれかで前処理した抗血清を用いるウェスタンブロットに供した。その結果は、推定内因性SKAM1タンパク質の強度がGST-SKAM1Dによる抗SKAM1抗血清の免疫除去後に大きく減少することを示した(図20B)。このことは、抗SKAM1抗体が内因性SKAM1を検出できることを強く示唆する。
【0145】
これらの溶解産物、特にHEK-293TおよびNIH3T3の溶解産物における内因性SKAM1のシグナルは非常に小さかった。従って、これらのシグナルを増進するため、TMNC、HEK-293Tおよび3T3細胞の溶解産物を抗SKAM1抗体を用いて免疫沈降させ、次いで抗SKAM1抗体を用いて免疫ブロットした。内因性SKAM1AおよびBを表すであろうおよそ27kDaおよび23kDaの分子量の2つのタンパク質がこれら3つの細胞の溶解産物から免疫沈降した(図20C)。
【0146】
SKAM1の細胞内局在
SKAM1タンパク質の細胞内局在を試験するため、HAタグを付加したSKAM1A、B、CおよびDをNIH3T3細胞において過剰発現させ、抗HA抗体および抗SKAM1抗体を用いる免疫蛍光分析に供した。両方の抗体は類似の染色パターンを示し、全てのSKAM1アイソフォームは細胞全体に存在したが、このタンパク質の大部分は細胞質ゾルに存在し、核または核小体の一部には存在しなかった(図21)。しかし、SKAM1タンパク質をNIH3T3細胞において非常に高度に発現させた場合、エンドソーム様の核周囲構造においてこれらのタンパク質の一部の局在が観察された(図22)。
【0147】
SKAM1およびhSK1の細胞内共局在(co-localise)
SKAM1およびhSK1が細胞内に共局在するか否かを試験するため、免疫蛍光検査によって両方のタンパク質の局在を試験した。NIH3T3を、GFPタグ付きSK1単独でおよびHAタグ付きSKAM1アイソフォームと共にトランスフェクトし、次いで抗HA免疫蛍光染色に供した。hSK1を単独で発現させた場合、以前に報告された(Pitson et al., 2003, 前出)ように広汎な細胞質ゾル染色パターンが見られた(図23)。すでに記載したように、様々なSKAM1アイソフォームもまた主に細胞質ゾルへの拡散を示し、一部がそれとは異なるエンドソーム様の核周囲領域に局在する(図23)。GFP-hSK1を様々なSKAM1アイソフォームと共に共発現させた場合、hSK1の局在が若干シフトし、hSK1およびSKAM1の一部が未だ同定されていない核周囲構造に共局在した(図23)。
【0148】
当業者は、本明細書中に記載される発明が、本明細書中の具体的記述以外の変形および変更を許容し得ることを理解するはずである。本発明はこのような変形および変更の全てを包含することが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において言及されたまたは示された工程、特徴、組成および化合物の全てを個別にまたは総括的に、ならびにこれらの工程または特徴の任意の二つ以上の任意のおよび全ての組み合わせを包含する。
【0149】
(表2)SKAM1Dの存在下でのhSK1の基質動態の概要

【0150】
書誌情報




【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】SKAM1アイソフォームの配列アラインメントおよび発現についての概略図である。(A)天然に存在するSKAM1(A-SEQ ID NO:1、B-SEQ ID NO:2、C-SEQ ID NO:3、およびD-SEQ ID NO:4)アイソフォームの推定アミノ酸配列のアラインメント。Y2H(SEQ ID NO:5)は酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおいて単離されたSK1と相互作用する最初のタンパク質であった。SKAM1Y(SEQ ID NO:6)はSK1と相互作用すると推測される最小のSKAM1領域を表す。同一および保存されたアミノ酸置換部分を影付きにする。(B)SKAM1アイソフォームの保存領域の概略図、(C)HAエピトープタグを付加したSKAM1アイソフォームのHEK293Tにおける発現。SKAM1アイソフォーム、SKAM1A(28kDa)、SKAM1B(24kDa)、SKAM1C(19kDa)、SKAM1D(15kDa)およびSKAM1Y(10kDa)の発現は、抗HAモノクローナルを用いたウェスタンブロットによって検出した。
【図2】抗HA抗体を用いた免疫沈降によるSKAM1アイソフォームとhSK1の間の相互作用についての画像である。hSK1とSKAM1A、B、C、DおよびYの相互作用は免疫共沈降によって評価した。hSK1(FLAG)と共にHA-SKAM1A、B、C、DおよびYをコトランスフェクトした細胞由来の溶解産物を抗HA抗体によって免疫沈降させ、次いでニワトリ抗SK1抗体および抗HAモノクローナル抗体の両方を用いた免疫ブロットによって分析した。
【図3】抗FLAG抗体を用いた免疫沈降によるSKAM1アイソフォームとhSK1の間の相互作用についての画像である。hSK1とSKAM1A、B、C、DおよびYの相互作用は免疫共沈降によって評価した。hSK1(FLAG)と共にHA-SKAM1A、B、C、DおよびYをコトランスフェクトした細胞の溶解産物を抗FLAG抗体によって免疫沈降させ、次いで抗SKAM1抗体または抗HAモノクローナル抗体および抗FLAG抗体を用いた免疫ブロットによって分析した。SKAM1アイソフォームを表す28kDa、24kDa、19kDa、および15kDaのタンパク質を検出し、これによってSKAM1A、B、CおよびDがhSK1と相互作用することが示された。
【図4】内因性SKAM1と過剰発現させたhSK1の間の相互作用についての画像である。過剰発現させたhSK1と内因性SKAM1の相互作用は免疫沈降分析によって評価した。空のベクターまたはSKAM1A、SKAM1D、もしくはhSK1(FLAG)をコードするプラスミドのいずれかでトランスフェクトした細胞由来の溶解産物を抗SKAM1抗体を用いて免疫沈降させ、次いでニワトリ抗SK1抗体を用いて免疫ブロットした。
【図5】hSK1S225AとSKAM1Dの相互作用についての画像である。hSK1S225AとSKAM1Dの相互作用は免疫共沈降によって評価した。HA-SKAM1DおよびhSK1S225Aをコトランスフェクトした細胞由来の溶解産物を抗HA抗体を用いて免疫沈降させた。抗HA抗体および抗FLAG抗体を用いた免疫ブロットは、導入遺伝子の発現を示した。次いで免疫沈降した複合体をニワトリ抗SK1抗体および抗HAモノクローナル抗体を用いて免疫ブロットした。
【図6】内因性SK活性に対するSKAM1アイソフォームの効果についてのグラフである。HEK-293T細胞をSKAM1A、B、C、DおよびYアイソフォームまたは空のpCMV(HA)発現ベクター(対照)でトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後に総細胞溶解産物を調製し、SK活性を測定した。データは二連で行った5つの個別の実験の平均(±S.D.)である。
【図7】内因性SK活性のSKAM1媒介性の活性化に対する触媒として不活性なhSK1(hSK1G82D)の過剰発現の効果についての画像である。HEK293T細胞を空のpCMV(HA)発現ベクター(対照)、SKAM1AおよびDアイソフォームを単独でまたはhSK1G82Dと共に用いてトランスフェクトした。(A)hSK1G82Dと共にHA-SKAM1AおよびDを共発現するHEK293T細胞由来の溶解産物を抗HA抗体を用いて免疫沈降させた。次いでその免疫複合体をニワトリ抗SK1抗体および抗HAモノクローナル抗体を用いて免疫ブロットした。IgGは免疫沈降において使用した抗HA抗体の軽鎖である。(B)細胞質ゾル画分においてSK活性を測定した。データは2つの個別の実験の平均(±標準誤差)であり各実験は二連で行った。
【図8】GST-SKAM1タンパク質の作製についての画像である。クマシー染色したゲルは、GST-SKAM1A、B、C、D、YおよびGSTに対応する54kDa、50kDa、45kDa、41kDa、35kDaの発現を示す。
【図9】hSK1のインビトロでの安定性におけるSKAM1の効果についてのグラフである。GST-SKAM1DまたはGSTをrec-hSK1と共に45℃で4時間インキュベートした。(A)様々な指定時間においてSK活性アッセイを行った。(B)hSK1単独またはGST-SKAM1Dの存在下での半減期を対数スケールでデータをプロットすることによって決定した。
【図10】rec-hSK1活性に対するGST-SKAM1Dの効果についてのグラフである。GST-SKAM1DまたはGSTをrec-hSK1と共にインキュベートし、次いでインビトロSK活性アッセイに供した。
【図11】SKアッセイにおけるhSK1の安定性についてのグラフである。組換えhSK1をインビトロSK活性アッセイに供し、アリコートを経時的に取りだし、S1Pを決定した。
【図12】rec-hSK1活性に対するGST-SKAM1Dの滴定についてのグラフである。漸増濃度のGST-SKAM1DまたはGSTをrec-hSK1と共にインキュベートし、インビトロSK活性アッセイに供した。グラフは、SK1活性が用量応答様式で増加し、20倍モル過剰のGST-SKAM1Dで最大活性に達することを示す。
【図13】hSK1に対するATP濃度の酵素動態についてのグラフである。GST-SKAM1DおよびGSTを、hSK1/GST-SKAM1のモル比が20となる濃度でrec-hSK1に加え、漸増濃度のATPを用いてSK活性をアッセイした。(A)0〜500μMの濃度範囲のATPを用いたrec-hSK1の基質動態。(B)基質動態のラインウェーバー・バークプロット。
【図14】hSK1に対するスフィンゴシン濃度の酵素動態についてのグラフである。hSK1/GST-SKAM1のモル比が20となる濃度のGST-SKAM1DおよびGSTをrec-hSK1に加え、漸増濃度のスフィンゴシンを用いてSK活性をアッセイした。(A)0〜50μMの濃度のスフィンゴシンを用いたrec-hSK1の基質動態。(B)基質動態のラインウェーバー・バークプロット。
【図15】hSK1活性に対するGST-SKAM1アイソフォームの効果についてのグラフである。hSK1/GST-SKAM1のモル比が20となる濃度のGST-SKAM1A、B、C、DおよびYをrec-hSK1と共にインキュベートし、次いでインビトロSK活性アッセイに供した。グラフは、SK1活性が対照GSTと比較してGST-SKAM1AまたはBによっておよそ4倍、GST-SKAM1C、DまたはYによって約2倍増加したことを示す。
【図16】hSK1の活性化に対するSKAM1の過剰発現の効果についてのグラフである。HEK-293T細胞を空のベクターまたはSKAM1AおよびDをコードするプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に細胞を5時間の血清枯渇を行い、次いでTNFα(1μg/ml)で10分間処理し、総細胞溶解産物を調製し、SK活性を測定した。データは二連で行った2つの個別の実験の平均(±SEM)である。
【図17】SKAM1とhSK2の間の相互作用についての画像である。hSK2とSKAM1アイソフォームAおよびDの相互作用は免疫共沈降によって評価した。hSK2(FLAG)と共にHA-SKAM1AおよびDをコトランスフェクトした細胞の溶解産物を抗HA抗体で免疫沈降させた。免疫沈降した複合体を抗HAモノクローナル抗体および抗FLAG抗体の両方で免疫ブロットした。IgG-HおよびIgG-Lは、それぞれ、抗HA抗体の重鎖および軽鎖である。
【図18】rec-hSK2活性に対するGST-SKAM1アイソフォームの効果についてのグラフである。hSK2/GST-SKAM1のモル比が15となる濃度のGST-SKAM1A、B、C、DおよびYをrec-hSK2と共にインキュベートし、次いでインビトロSK活性アッセイに供した。
【図19】抗SKAM1抗体の特徴についての画像である。(A)SKAM1Dを過剰発現するHEK293T細胞を用いた抗SKAM1抗血清の滴定。典型的なウェスタンブロットは、1:1000および1:10000の抗SKAM1抗血清希釈物がHEK293T細胞の粗溶解産物において15kDaのSKAM1Dを検出したことを示す。(B)抗SKAM1抗体を用いたHA-SKAM1アイソフォームの検出。抗SKAM1抗体および抗HA抗体の両方を用いた典型的なウェスタンブロットは、推定分子量28kDa、24kDa、19kDa、15kDa、および10kDaのそれぞれA、B、C、DおよびYを含むHA-SKAM1アイソフォームの発現を示す。(C)抗SKAM1抗体を用いたHA-SKAM1アイソフォームの免疫沈降。SKAM1A、B、C、DおよびYをトランスフェクトした細胞由来の溶解産物を抗SKAM1抗体を用いて免疫沈降させ、次いで抗SKAM1抗体を用いて免疫ブロットした。
【図20】抗SKAM1抗体を用いた内因性SKAMの検出についての画像である。(A)様々なヒトおよびマウス細胞株由来の溶解産物を抗SKAM1抗体を用いて免疫ブロットした。内因性SKAM1AおよびBであると推測される約27kDaおよび23kDaのタンパク質が、TMNC、ヒトリンパ球、MCF-7、HEK-293T、およびNIH3T3細胞の溶解産物において検出された。SKAM1陽性対照レーンは、過剰発現されたHA-SKAM1A、B、CおよびDアイソフォーム由来の全ての溶解産物をプールしたレーンである。HUVECはヒト臍帯静脈内皮細胞である。(B)内因性SKAM1の免疫除去。典型的なブロットは、内因性SKAM1を表すタンパク質強度が、そのブロットをグルタチオン-セファロース結合GST-SKAM1Dにより免疫除去された抗SKAM1抗体と共にインキュベートした後に大きく減少するが、抗SKAM1抗体をグルタチオン-セファロース結合GSTのみによって免疫除去した対照の場合はそうならないことを示す。SKAM1陽性対照レーンは過剰発現されたHA-SKAM1A、B、CおよびDアイソフォーム由来の全ての溶解産物をまとめてプールしたレーンである。(C)抗SKAM1抗体を用いた内因性SKAM1の免疫沈降。TMNC、HEK-293TおよびNIH3T3由来の溶解産物を免疫沈降し、抗SKAM1抗体を用いた免疫ブロットにより内因性SKAM1AおよびBに対応するおよそ27kDaおよび23kDaの2つのタンパク質を得た。SKAM1陽性対照レーンは過剰発現されたHA-SKAM1A、B、CおよびDアイソフォームの全ての溶解産物をプールしたレーンである。IP対照レーンは抗SKAM1抗体を除いて同じ条件で溶解産物をインキュベートしたレーンである。
【図21】HA-SKAM1アイソフォームの免疫蛍光検査についての画像である。NIH3T3細胞をHA-SKAM1A、B、CおよびDを用いてトランスフェクトし、固定し、抗SKAM1抗体および抗HA抗体の両方を用いて染色した。
【図22】高レベルで発現されたHA-SKAM1アイソフォームの抗SKAM1抗体による免疫蛍光検査についての画像である。NIH3T3細胞においてHA-SKAM1A、B、CおよびDを過剰発現させ、固定し、抗SKAM1抗体を用いて染色した。
【図23】SKAM1アイソフォームとhSK1の共局在についての画像である。NIH3T3細胞においてGFP-hSK1を単独でまたはHAタグ付きSKAM1アイソフォームと共に一過的に発現させた。細胞をスライド上にプレーティングし、固定し、透過処理し、次いで抗HA抗体および続いてAlexa594標識二次抗体を用いて免疫染色した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴシンキナーゼ媒介性のシグナル伝達の調節方法であって、SKAM1、またはその機能的誘導体、変種体(variant)、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤にスフィンゴシンキナーゼを接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの触媒活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該触媒活性を下方制御する、方法。
【請求項2】
スフィンゴシンキナーゼ媒介性の細胞活性の調節方法であって、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤に細胞を接触させる段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは該細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該細胞活性を下方制御する、方法。
【請求項3】
SKAM1がSKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、または短縮型SKAM1Yである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
スフィンゴシンキナーゼがヒトスフィンゴシンキナーゼである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ヒトスフィンゴシンキナーゼがスフィンゴシンキナーゼ1である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヒトスフィンゴシンキナーゼがスフィンゴシンキナーゼ2である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ触媒活性レベルの上方制御であり、該上方制御が、SKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、もしくは短縮型SKAM1Y、またはその機能的等価物、誘導体、もしくはホモログをコードする核酸分子、あるいはSKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、もしくは短縮型SKAM1Yの発現産物、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を細胞に導入することにより達成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ活性レベルの上方制御であり、該上方制御が、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用のアゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子に細胞を接触させることにより達成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ活性レベルの下方制御であり、該下方制御が、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子に細胞を接触させることにより達成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
アンタゴニストがSKAM1競合物質である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
アンタゴニストが、SEQ ID NO:1〜4の残基51〜132により規定されるアミノ酸領域に対するものである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
アンタゴニストがSKAM1に対する抗体である、請求項9または11記載の方法。
【請求項13】
アンタゴニストがアンチセンス核酸分子、siRNA、または共抑制を誘導するのに適した核酸分子であり、該分子はSKAM1に対するものである、請求項9記載の方法。
【請求項14】
異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼ媒介性の細胞活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置および/または予防のための方法であって、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤を哺乳動物に投与する段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズは該細胞活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該細胞活性を下方制御する、方法。
【請求項15】
異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置および/または予防のための方法であって、SKAM1、またはその機能的誘導体、ホモログ、もしくは模倣物とスフィンゴシンキナーゼとの相互作用を調節するのに十分な時間および条件下、有効量の薬剤を哺乳動物に投与する段階を含み、該会合の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を上方制御し、該会合の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を下方制御する、方法。
【請求項16】
前記状態が腫瘍性状態またはその他の望ましくない細胞増殖であり、スフィンゴシンキナーゼ-SKAM1相互作用が下方制御される、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記状態が炎症性状態であり、スフィンゴシンキナーゼ-SKAM1相互作用が下方制御される、請求項14または15記載の方法。
【請求項18】
望ましくない細胞活性が炎症メディエーターの分泌または接着分子の発現であり、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM相互作用が下方制御される、請求項14記載の方法。
【請求項19】
炎症性状態が関節リウマチ、アテローム硬化、喘息、自己免疫疾患、または炎症性腸疾患に関連する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ触媒活性レベルの上方制御であり、該上方制御が、SKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、もしくは短縮型SKAM1Y、またはその機能的等価物、誘導体、もしくはホモログをコードする核酸分子、あるいはSKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、もしくは短縮型SKAM1Yの発現産物、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を細胞に導入することにより達成される、請求項14または15記載の方法。
【請求項21】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ活性レベルの上方制御であり、該上方制御が、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用のアゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子に細胞を接触させることにより達成される、請求項14または15記載の方法。
【請求項22】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ活性レベルの下方制御であり、該下方制御が、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子に細胞を接触させることにより達成される、請求項14〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
アンタゴニストがSKAM1競合物質である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
アンタゴニストが、SEQ ID NO:1〜4の残基51〜132により規定されるアミノ酸領域に対するものである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
アンタゴニストがSKAM1に対する抗体である、請求項22または24記載の方法。
【請求項26】
アンタゴニストがアンチセンス核酸分子、siRNA、または共抑制を誘導するのに適した核酸分子であり、該分子はSKAM1に対するものである、請求項22記載の方法。
【請求項27】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当な細胞活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置のための医薬の製造における薬剤の使用であって、該薬剤はSKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節し、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズは該細胞活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズは該細胞活性を下方制御する、使用。
【請求項29】
異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適当なスフィンゴシンキナーゼの機能活性により特徴付けられる哺乳動物における状態の処置のための医薬の製造における薬剤の使用であって、該薬剤はSKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節し、該相互作用の誘導またはそうでなければアゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を上方制御し、該相互作用の阻害またはそうでなければアンタゴナイズはスフィンゴシンキナーゼの機能活性を下方制御する、使用。
【請求項30】
前記状態が腫瘍性状態またはその他の望ましくない細胞増殖であり、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用が下方制御される、請求項28または29記載の使用。
【請求項31】
前記状態が炎症性状態であり、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用が下方制御される、請求項28または29記載の使用。
【請求項32】
望ましくない細胞活性が炎症メディエーターの分泌または接着分子の発現であり、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用が下方制御される、請求項28記載の使用。
【請求項33】
炎症性状態が関節リウマチ、アテローム硬化、喘息、自己免疫疾患、または炎症性腸疾患に関連する、請求項31記載の使用。
【請求項34】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ触媒活性レベルの上方制御であり、該上方制御が、SKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、もしくは短縮型SKAM1Y、またはその機能的等価物、誘導体、もしくはホモログをコードする核酸分子、あるいはSKAM1A、SKAM1B、SKAM1C、SKAM1D、もしくは短縮型SKAM1Yの発現産物、またはその機能的誘導体、ホモログ、アナログ、等価物、もしくは模倣物を細胞に導入することにより達成される、請求項28または29記載の使用。
【請求項35】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ活性レベルの上方制御であり、該上方制御が、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用のアゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子に細胞を接触させることにより達成される、請求項28または29記載の使用。
【請求項36】
前記調節がスフィンゴシンキナーゼ活性レベルの下方制御であり、該下方制御が、スフィンゴシンキナーゼ/SKAM1相互作用のアンタゴニストとして機能するタンパク質性または非タンパク質性分子に細胞を接触させることにより達成される、請求項28〜33のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
アンタゴニストがSKAM1競合物質である、請求項36記載の使用。
【請求項38】
アンタゴニストが、SEQ ID NO:1〜4の残基51〜132により規定されるアミノ酸領域に対するものである、請求項36記載の使用。
【請求項39】
アンタゴニストがSKAM1に対する抗体である、請求項36または38記載の使用。
【請求項40】
アンタゴニストがアンチセンス核酸分子、siRNA、または共抑制を誘導するのに適した核酸分子であり、該分子はSKAM1に対するものである、請求項36記載の使用。
【請求項41】
哺乳動物がヒトである、請求項28〜40のいずれか一項記載の使用。
【請求項42】
請求項1〜31のいずれか一項記載の方法に従って使用される場合にSKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節する薬剤を、一つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む、薬学的組成物。
【請求項43】
請求項1〜27のいずれか一項記載の方法に従って使用される場合にSKAM1とスフィンゴシンキナーゼの相互作用を調節する、薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2008−546393(P2008−546393A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517275(P2008−517275)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000867
【国際公開番号】WO2006/135969
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507244851)メドベット サイエンス ピーティーワイ. リミティッド (5)
【Fターム(参考)】