説明

スフィンゴシン=1−燐酸受容体活性を有するベンゾシクロヘプチルアナログ

一種類以上のS1P受容体に関するアゴニスト活性を有するベンゾシクロヘプチルアナログを提供する。この化合物はスフィンゴシンンアナログであり、燐酸化されたのちにはS1P受容体に関するアゴニストとして機能しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願へのクロスリファレンス〕
本出願は、Provisional Application No. 60/956,354(2007年08月16日出願)およびApplication Serial No. 60/860,781(2006年11月21日出願)の優先権を主張する。なおこれらの出願が開示するところのすべては、この参照によりその全体が本開示に含まれる。
【0002】
〔米国政府の権利〕
本発明は、the National Institutes of Healthにより認定された助成金番号RO1 GM 067958による米国政府の補助の下になされたものである。米国政府は、本発明に関しての一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
スフィンゴシン=1-燐酸(sphingosine 1-phosphate; S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーのうちの五種類を刺激することによって様々な細胞の応答を引き起こすリゾリン脂質メディエーターである。EDG受容体はGタンパク質共役受容体(G-protein coupled receptors (GPCRs))であって、刺激を受けると、セカンドメッセンジャー信号を、ヘテロ三量体Gタンパクアルファ(Gα)サブユニットおよびGタンパクベータ−ガンマ(Gβγ)二量体を活性化させることによって伝達する。こうしたS1Pが駆動する伝達の結果として、細胞の生存や、増殖した細胞の移動や、ときには有糸分裂誘発が最終的に起きる。S1P受容体を対象とするアゴニストについての最近の研究開発により、生理的恒常性でのこうしたシグナル伝達系の果たす役割に関して知見が得られている。例えば、燐酸化にともなう免疫調節物質であるFTY720(2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール)は、五種のS1P受容体のうちの四種についてのアゴニストである。FTY720が、S1Pトーン(S1P tone)を高めてリンパ球動態(リンパ球トラフィッキング; lymphocyte trafficking)に影響していることが明らかとなっている。さらには、S1Pタイプ1受容体(S1P1)アンタゴニストは、肺毛細血管内皮の漏出を引きおこす。このことから、何らかの組織床内の内皮壁の完全性の維持に、S1Pがかかわっている可能性が示唆される。
【0004】
スフィンゴシン=1-燐酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーのうちの五種類を刺激することによって様々な細胞の応答を引き起こすリゾリン脂質メディエーターである。
【0005】
スフィンゴシン=1-燐酸(S1P)は、数多の細胞過程を誘発することが知られており、例えば、血小板凝集、細胞増殖、細胞形態、腫瘍の細胞侵襲、内皮細胞走化性、および血管新生といった結果をもたらすような細胞過程を誘発する。こうした理由から、創傷治癒および腫瘍成長抑制などといった治療用途において、S1P受容体は良き標的となるのである。
【0006】
スフィンゴシン=1-燐酸(S1P)は、部分的に、S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5(旧来はEDG1、EDG5、EDG3、EDG6、およびEDG8)、と命名された一連のGタンパク質共役受容体を介して細胞にシグナルを送る。これらのEDG受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCRs)であって、刺激を受けると、セカンドメッセンジャーシグナルを、ヘテロ三量体Gタンパクアルファ(Gα)サブユニットおよびGタンパクベータ−ガンマ(Gβγ)二量体を活性化させることによって伝達する。これらの受容体は、構造的にリゾホスファチジン酸(LPA)に関する他の三種の受容体(LPA1、LPA2、およびLPA3; 旧来はEDG2、EDG4、およびEDG7)と50〜55%のアミノ酸が同一であって、それら三種の受容体とクラスターをつくる。
【0007】
配位子が受容体に結合すると、Gタンパク結合受容体(GPCR)は構造的シフトを起こす。すると、GDPが、会合したGタンパク質のα-サブユニット上のGTPに置き換わって、Gタンパクが細胞質内へ放出されることになる。その後、α-サブユニットはβγ-サブユニットから解離するため、各サブユニットがエフェクタータンパク質に会合できるようになる。こうしたエフェクタータンパク質は、細胞応答を起こす二次メッセンジャーを活性化する。そうしてついには、Gタンパク質上のGTPが水和されてGDPとなり、Gタンパク質のサブユニット同士が再会合し、やがてはサブユニットが受容体にも再会合する。こういった一般的なGPCR経路において、増幅は大きな役割を果たしている。或る配位子が或る受容体に結合すると、数多のGタンパク質の活性化をもたらす。そうしたGタンパク質の各々は、また多数のエフェクタータンパク質とも会合できるため、細胞応答が増幅されてゆくのである。
【0008】
S1P受容体は、優れた薬剤標的をつくりだす。個々の受容体が、組織特異的でありかつ反応特異的であるからである。或る受容体に対して選択的なアゴニストもしくはアンタゴニストを開発できれば、受容体を内包する組織への細胞応答を局在化できるので、望ましくない副作用が抑えられる。したがって、S1P受容体の組織特異性は望ましいものであるといえる。また、S1P受容体の応答特異性も重要なものである。なぜなら、他の応答へ影響することなく、特定の細胞応答を発動させたりもしくは抑制したりできるようなアゴニストまたはアンタゴニストを開発できるからである。例えば、S1P受容体の応答特異性をS1P模倣薬(S1P mimetic)に付与することで、細胞形態に影響することなく血小板凝集を起こすことができるようになると考えられる。
【0009】
スフィンゴシン=1-燐酸は、スフィンゴシンとスフィンゴシンキナーゼとの反応によって、スフィンゴシンの代謝物として生成される。また、スフィンゴシン=1-燐酸は、高濃度のスフィンゴシンキナーゼが存在し、スフィンゴシンリアーゼが存在しない血小板の凝集部分に大量に存在する。S1Pは血小板が凝集している間に放出され、また血清中に蓄積し、また悪性腹水(malignant ascites)中にも見られる。S1Pの可逆生分解は主に、ectophosphohydrolases(特にスフィンゴシン=1-燐酸ホスホハイドラーゼ)が関与する加水分解によって進行する。S1Pの不可逆分解は、S1Pリアーゼを触媒として起こり、燐酸エタノールアミンおよびヘキサデセナールを生ずる。
【0010】
現在、力価と選択性と経口生体利用性が高められたS1P受容体のアゴニストである、新規で力価のある選択的な薬剤が求められている。さらには、そうした化合物の同定法、ひいては合成法と使用法もまた求められている。本発明はそうした需要を満たさんとするものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の或る態様では、一種以上のS1P受容体に対するアゴニスト活性を有する化合物を提供する。こうした化合物はスフィンゴシンアナログであって、燐酸化された後にはS1P受容体に対するアゴニストとして機能できる。提供する化合物として下記の構造式IA、構造式IB、もしくは構造式ICの化合物がある。
【化1】

【0012】
ここで、W1、X1、Y1、およびZ1は独立に、O、CRa, CRaRb、N、NRc、もしくはSである。
【0013】
R1およびR2が独立に、水素原子、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であるか、あるいは、
【0014】
R2が、下記の構造式II, III, IV, V, VIのいずれかを有する基であってもよい。
【化2】

【0015】
ここで、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は各々独立に、O、S、C、CR15、CR16R17、C=O、N、もしくはNR18であって、また、
【0016】
R15、R16、およびR17は各々独立に、水素原子、ハロゲン、(C1-C10)アルキル基、(C6-C10)アリール基、ハロゲン置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、シアノ基、であって、かつ、R18は、水素原子もしくは(C1-C10)アルキル基であってよい。
【0017】
Z2は、水素原子、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、 -NRaRb 、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基である。なおZ2に関してのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、任意に全弗素置換したものであってもよいし、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換したものであってもよい。ここでいう置換基とは各々独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)である。またここでZ2でのアルキル基が持つ炭素原子のひとつ以上を、それぞれ独立に、過酸化物ではない酸素原子、硫黄原子、もしくはNRcで置換してもよい。
【0018】
【化3】

は、任意付加的な一個以上の二重結合を意味している。
【0019】
Y2は、結合である(つまり存在しない)か、O、S、C=O、もしくはNRc、CH2である。W2は、結合であるか、-CH2-であってm=1, 2, 3であるか、または、(C=O)(CH2)1-5であってm=1である。なお、W2には任意に、過酸化物ではないO、S、C=O、もしくはNRcがあいだに挟まっていてもよい。
【0020】
【化4】

の各々は、任意付加的な二重結合である。また、nは0、1、2、もしくは3であり、qは0、1、2、もしくは3である。
【0021】
R3は、水素原子、(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基である。R4は、ヒドロキシル基(-OH)、燐酸基(-OPO3H2)、ホスホン酸基(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸基である。Ra、Rb、Rc、およびRdは各々独立に、水素原子もしくは(C1-C10)アルキル基である。
【0022】
R1とR2に関してのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、それぞれ単独に、任意に全弗素置換したものであってもよいし、または、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換したものであってもよい。ここでいう置換基とは各々独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)である。またここでR1とR2でのアルキル基が持つ炭素原子のひとつ以上を、それぞれ独立に、過酸化物ではない酸素原子、硫黄原子、もしくはNRcで置換してもよい。R3でのアルキル基を、任意に1個か2個のヒドロキシル基で置換してもよい。本発明には、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物の薬学的に許容される塩もしくはエステルも含まれる。
【0023】
本発明は別の態様にて、下記構造式VIIIA、構造式VIIIB、もしくは構造式VIIICを持つ燐酸モノエステルを提供する。
【化5】

ここで、R1、R2、R3、W1、X1、Y1、Z1、およびqは、上記にて定義したものである。本発明は別の態様にて、構造式IA、IB、IC、VIIIA、VIIIB、もしくはVIIICを持つ化合物の、エナンチオマーおよび立体異性体も提供する。
【0024】
本発明は別の態様にて、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物のプロドラッグを提供する。本発明ではさらに、医療用の、構造式IAもしくは構造式IBを持つ化合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルも提供する。
【0025】
本発明は別の態様において、腫瘍での血管新生を阻害するための方法を提供する。この方法には、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物もしくはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの有効量を、癌細胞に接触させるステップが含まれる。
【0026】
本発明は別の態様において、自己免疫疾患の処置のためもしくは同種移植片生着を延ばすために、リンパ球動態を変化させることで免疫系を調節するための方法を提供する。この方法には、構造式IA、IB、もしくはICを持つ一種以上の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの有効量を、それを必要とする被験者に投与するステップが含まれる。
【0027】
本発明は別の態様にて、神経障害にかかる痛みを、予防、抑制、もしくは処置するための方法も提供する。この方法には、構造式IA、IB、もしくはICを持つ一種以上の化合物の有効量、あるいは、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物および薬学的に許容されるキャリアの有効量を含んだ、薬学的組成物を、それを必要とする被験者へ投与するステップが含まれる。本来、疼痛は侵害受容性もしくは神経因性である可能性がある。
【0028】
神経因性疼痛は、その慢性的な性質、明白な直接原因(例えば組織損傷)の欠如、痛覚過敏、もしくはアロディニア(異痛)を特徴とする。痛覚過敏とは、痛みをもたらす刺激に対する過度の反応のことをいう。アロディニアとは、正常刺激(例として衣類の接触、温風もしくは冷気などを含む)を疼痛と知覚することである。神経因性疼痛は、腕や、より多くは足などの四肢の神経損傷の結果となり得る。引き金となる事象は、例えば交通事故などの外傷や切断(例えば幻肢痛)を含み得る。神経因性疼痛は、例えばビンクリスチンやパクリタキセル(TAXOLTM)などの薬物治療の副作用によって起こる可能性があり、あるいは1型糖尿病や2型糖尿病、帯状疱疹、HIV-1感染などの疾病病変の一部として起こる可能性がある。通常は、神経因性疼痛はアスピリンなどの鎮静剤や非ステロイド性抗炎症薬には反応しない。
【0029】
本発明は別の態様にて、カテーテル挿入後の血管損傷を修復するための方法も提供する。この方法には、影響を蒙った血管の内腔に、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物の有効量を接触させるステップが含まれる。本発明は別の態様にて、留置ステントを、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物で蔽うステップも含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、血管損傷後の血管再狭窄を予防し抑制するために、S1Pアナログを使用するための組成物と方法を提供する。例えば、損傷はバルーン血管形成によるものであってもよい。別の態様では、本発明は血管再狭窄を防ぐために被験者を処置する方法を含む。
【0031】
別の態様では、本発明は喘息の発作を防ぐためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、喘息はシステイニルロイコトリエンの過剰生産によるものであることがある。別の態様では、本発明は喘息を処置することで被験者を処置する方法を含む。
【0032】
別の態様では、本発明は肥満を処置するために構造式IA、IB、もしくはICのスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は血中脂質組成を正常化するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、血中の低密度リポタンパク質(LDLもしくは"悪玉コレステロール")レベルが減少し得る。別の態様では、血中トリグリセリドレベルを下げることができる。
【0034】
別の態様では、本発明は動脈硬化の予防と処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は腫瘍性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、この処置は抗血管新生特性のために有効なS1P受容体アンタゴニストの適用によって行われる。別の態様では、この処置は、複数基質の(一種以上の)脂質キナーゼを阻害する、構造式IA、IB、もしくはICの構造を有するスフィンゴシンアナログの投与によって行われる。
【0036】
別の態様では、本発明は神経変性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、処置はアルツハイマー型老年性認知症のためのものである。
【0037】
別の態様では、本発明は、薬物療法(例えば腫瘍性疾患の処置、神経因性疼痛の処置、自己免疫疾患の処置、同種移植片生着の延長)における使用のために、構造式IA、IB、もしくはICの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、腫瘍成長、転移もしくは腫瘍血管新生を阻害するための薬剤を調製するために、構造式IA、IB、もしくはICの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを使用するための方法を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、自己免疫疾患の処置、もしくは同種移植片生着の延長のための薬剤を調製するための、構造式IA、IB、もしくはICの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの使用を提供する。
【0040】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、神経因性疼痛の処置のための薬剤を調製するための、構造式IA、IB、もしくはICの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、構造式IA、IB、もしくはICの化合物(例えばS1P受容体プロドラッグ)を、スフィンゴシンキナーゼタイプ1もしくはスフィンゴシンキナーゼタイプ2の基質として、in vitroおよびin vivoで評価する方法を提供する。別の態様では、本発明は、in vivoもしくはin vitroを含む指定の受容体部位に結合する構造式IA、IB、もしくはICの化合物を、前記受容体に結合するのに有効な構造式IA、IB、もしくはICの化合物の量で評価する方法を含む。指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを持つ組織を使って、特定の受容体サブタイプに対する試験化合物の選択性を測定することができる。あるいは、前記薬剤を前記リガンド‐受容体複合体に接触させて、リガンドの置換もしくは薬剤の結合の程度を測定することによって、疾病の処置のための有力な治療薬を特定するツールとして、指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを含む組織を使用することができる。
【0042】
別の態様では、本発明は、構造式IA、IBもしくは構造式ICの化合物の調製に有用な、本明細書で開示される新規の中間体とプロセスを提供し、本明細書で記載される合成プロセスだけでなく、一般的な中間体と特定の中間体を含む。
【0043】
別の態様では、本発明は、構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物とそのアナログもしくは誘導体の合成スキームと使用方法を提供する。別の態様では、本発明は、構造式IA、IB、もしくはICの化合物のアナログおよび誘導体を調製するための合成・修飾スキームと、そのようなアナログおよび誘導体を使用するための組成物と方法を提供する。
【0044】
上記の発明の開示は、本発明の開示された実施形態の各々、もしくはあらゆる実施例を説明することを意図するものではない。以下の記載は、例示的な実施形態をさらに詳細に例示する。本出願全体のいくつかの部分において、実施例のリストを通してガイダンスが提供され、この実施例は様々な組み合わせで使用することができる。各事例において、列挙されたリストは代表的なグループとなるに過ぎず、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0045】
本発明の一つ以上の実施形態の詳細は、添付の下記の記載において説明される。本発明のその他の特徴、目的、利点は、記載と図面、および請求項から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】三種のS1Pアゴニスト、すなわちFTY720、AAL151、および化合物XXIXを示してある。
【図2A】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2B】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2C】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2D】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2E】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2F】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2G】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図2H】構造式IA、IB、もしくはICを持つさらなる化合物を示す。
【図3】構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物の合成法を示す。
【図4】構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物の合成法を示す。
【図5】構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物の合成法を示す。
【図6】構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物の合成法を示す。
【0047】
本明細書中では以下の略語を用いる。 S1P スフィンゴシン=1-燐酸、S1P1-5 S1P受容体タイプ、GPCR Gタンパク質共役受容体、SAR 構造活性相関、EDG 内皮細胞分化遺伝子、EAE 実験的自己免疫性脳脊髄炎、NOD 非肥満性糖尿病、TNFα 腫瘍壊死因子α、HDL 高比重リポタンパク質、RT-PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
【0048】
本発明を説明し請求するにあたり、特に他に定義しないかぎり、本明細書中で用いられている全ての技術用語、および、科学的用語は、この発明が属する技術の分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似しているか、もしくは均等である全ての物質および方法は、本発明の実施もしくは試験に用いられる可能性があるが、好ましい物質および方法は本明細書に記載されたものである。個々の以下の用語は、この節と関連する意味を有している。下に挙げた、基、置換基、および範囲についての例示的かつ好ましい値はあくまで例である。これらの値は、他に定めた値を排除するものではないし、基および置換基について定めた範囲内の別の値を排除するものでもない。
【0049】
用いた「或る」("a", "an")、「その」("the")、「少なくともひとつ」("at least one")、そして「ひとつ以上」("one or more")という語は、互換可能である。つまり例えば、組成物が「或る」元素を含んでいるということは、一種類の元素を含んでいることを意味するか、または複数種類の元素を含んでいることを意味する。
【0050】
「受容体アゴニスト」("receptor agonists")という語は、一種以上のS1P受容体でのS1Pの作用を模倣する化合物のことであるが、その力価および/もしくは効果はS1Pとは異なっている場合がある。
【0051】
「受容体アンタゴニスト」("receptor antagonists")という語は、 [1] 内因性アゴニスト活性を欠く化合物、および [2] アゴニスト(S1Pなど)の(一種以上の)S1P受容体についての活性を阻害する化合物、であって、その阻害は、完全に克服可能かつ可逆的なやりかたで行われることもある("競合アンタゴニスト")。
【0052】
「冒された細胞(罹患細胞)」("affected cell")という語は、疾患もしくは障碍をわずらった被験者の細胞のことを指す。なおこうした罹患細胞の表現型は、疾患もしくは障碍をわずらっていない被験者にくらべて変化している。
【0053】
細胞または組織の表現型が、疾患もしくは障碍をわずらっていない被験者が持つ同じ細胞または組織にくらべて変化していたとき、その細胞または組織が疾患もしくは障碍により「冒された」ことになる。
【0054】
疾患もしくは障碍の症候の重篤度か、患者が蒙る症候の頻度か、またはその両方かが、軽減されたときに、そうした疾患もしくは障碍が「緩和された」ことになる。
【0055】
本明細書中では、化学物質の「類縁体(アナログ)」("analog")は、他の化合物に構造が類似している化合物であるが異性体である必要がないのようなものである(例えば、5-フルオロウラシルはチミンのアナログである)。
【0056】
「細胞」("cell")、「細胞株」("cell line")、および「細胞培地」("cell culture")という語は、同義のものとして使える。
【0057】
「対照」の細胞、組織、試料、もしくは被験者("control" cell, tissue, sample, or subject)は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者と同じタイプの細胞、組織、試料、もしくは被験者である。対照は例えば試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験を行うときと正確に同じか、ほとんど同じときに試験を行う。対照は、また、対照は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験を行ったときから時間を隔てて、試験されることもある。対照の試験結果は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験と比較できるように記録されることがある。試験用試料が試験を行おうとしている疾病もしくは疾患にかかっている疑いがある被験者から採取された場合には、対照は、試験群(test group)もしくは供試被験者(test subject)とは異なる出所もしくは類似した出所から採取されることもある。
【0058】
「試験用の」細胞、組織、試料、もしくは被験者("test" cell, tissue, sample, or subject)は、試験または処置ををされる対象である。
【0059】
「病状を示している」細胞、組織、もしくは試料("pathoindicative" cell, tissue, or sample)は、その細胞、組織、もしくは試料が存在していた動物が(または、組織を採取した動物が)疾患もしくは疾病に罹患しているものである。一例として、転移性乳がんに罹患している徴候を示す動物の、1つ以上の肺組織中の胸の細胞が挙げられる。
【0060】
疾患もしくは疾病に罹患していない動物の組織に1つ以上の細胞が存在すれば、組織は、細胞から、「正常に構成される」("normally comprises")。
【0061】
「検出する」("detect")という語およびその文法上の変異形を用いたときは、化学種を定量せずに測定することを指す。一方、「定量する」("determine")もしくは「測定する」("measure")という語およびそれらの文法上の変異形を用いたときは、化学種を定量しながら測定することを指す。「検出する」("detect")の語と「同定する」("identify")の語とは、本明細書中では同義である。
【0062】
本明細書中では、「検出可能なマーカー」("detectable marker")もしくは「レポーター分子」("reporter molecule")は、マーカーを有さない類似の化合物が存在する中で、マーカーを含む化合物の特異的な検出を可能にする原子もしくは分子である。検出可能なマーカーもしくはレポーター分子には例えば、放射性同位体、抗原決定基、酵素、ハイブリダイゼーションに用いることができる核酸、発色団、フルオロフォア、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、ならびに、蛍光偏光もしくは光散乱を変化させる分子が含まれる。
【0063】
「疾患」("disease")とは、恒常性を維持できなくなった動物の健康状態のことをいう。疾患が軽快しなければ、動物の健康は悪化しつづける。
【0064】
動物の「障碍」("disorder")とは、動物の恒常性は維持できているが、動物の健康状態がその障碍が無いとした場合よりも望ましくなくなっているような健康状態のことをいう。処置をしなくとも、障碍によって動物の健康状態をさらに損なわれるとはかぎらない。
【0065】
「有効量」("effective amount")は、選択された効果を示すのに充分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量とは、S1P受容体のシグナル伝達活性を下げる量のことである。
【0066】
「機能的な」("functional")分子とは、その分子を特徴づける属性を発揮する形態をとった分子のことをいう。一例として、機能的な酵素とは、酵素を特徴づける触媒活性を発揮する酵素のことである。
【0067】
「阻害」("inhibit")という語は、説明した機能を軽減もしくは妨害する開示した化合物の能力のことを指す。機能は、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、なおもより好ましくは50%以上、もっとも好ましくは75%以上阻害される。
【0068】
「説明書」("instructional material")には、キット中の開示した化合物の、本明細書で説明したさまざまな疾患もしくは障碍の軽快に影響する有用性を伝えるのに有用な、刊行物、記録物、図解、もしくは、その他の表現可能な媒体を含む。任意付加的にかもしくは別手法として、こうした説明書には、哺乳類の細胞または組織での疾患もしくは障碍を軽快させるための一種以上の方法を記載してもよい。キットの説明書は例えば、確認済の化合物発明を収めた容器に添付してもよいし、あるいは、確認済の化合物を収めた容器といっしょに出荷してもよい。あるいは別の手法として、この説明書を容器とは別に分けて、受領者がこの説明書と組成物を併せて使うことを意図して出荷することもできる。
【0069】
「非経口」("parenteral")という語は、消化管以外の何か別の経路(皮下、筋肉内、脊椎内、もしくは静脈内など)を通ることを意味する。
【0070】
「精製された」("purified")という語およびその類義語は、天然環境下で通常は付随してくるような他の成分を、実質的に含まない(75%以上が含まない、好ましくは90%以上が含まない、もっとも好ましくは95%以上が含まない)形態の、分子もしくは化合物の単離のことに関する。「精製された」という語が、特定の分子の完全な精製を工程中に達成することをつねに意味するわけではない。「非常に純粋」("very pure")な化合物とは、90%以上純粋な化合物のことを指す。「極度に純粋」("highly purified")な化合物とは、95%以上純粋な化合物のことを指す。
【0071】
「試料」("sample")とは、好ましくは被験者から採取した生物学的試料を指し、正常組織試料、患部組織試料、生検試料、血液、唾液、排泄物、精液、涙液、および、尿が含まれるが、これらに限られるわけではない。試料はまた、特定の細胞、組織、もしくは関連する体液を含む、被験者から得られる物質についての、任意の他の源である可能性もある。試料は、細胞培養もしくは組織培養からも得ることができる。
【0072】
「標準」("standard")とは、比較をするために用いるものを指す。例えば、標準は、投与され、もしくは対照試料に添加された既知の標準物質もしくは既知の標準化合物であって、その化合物を試験用試料中で測定したときの結果と比較するために用いるものである可能性もある。標準は、試料に既知量を加えて、試料の処理をするときまたは、精製過程もしくは抽出過程の前に目的物質のマーカーが測定されるときに、加えたものの純度もしくは回収率を決定する薬剤もしくは化合物などの、内部標準("internal standard")のことを指す可能性もある。
【0073】
分析、診断、もしくは処置の「被験者」("subject")は動物である。このような被験者には哺乳類が含まれ、好ましくはヒトである。
【0074】
「治療上の」("therapeutic")処置とは、疾病の症状を示している被験者にそれらの症状を軽減し、もしくは除去する目的で施す処置である。
【0075】
「治療上有効量」("therapeutically effective amount")の化合物は、その化合物が投与される被験者に対して有益な効果を示すのに十分な化合物の量である。
【0076】
本明細書中では、「処置」("treating")の語は、特定の疾患もしくは状態の予防、または特定の疾患もしくは状態に伴う症状の軽減、または症状を予防し、もしくは除去することを含む。
【0077】
開示した化合物は概して、IUPAC命名法体系もしくはCAS命名法体系に沿って命名している。当業者にとり周知である略語も使用することがあり、例えば、 "Ph" はフェニル基、 "Me" はメチル基、 "Et" はエチル基、 "h" は時間、 "rt" は室温、 "THF" はテトラヒドロフラン、 "rac" はラセミ混合物である。
【0078】
下に挙げた、基、置換基、および範囲についての値はあくまで例示のためのものである。これらの値は、他に定めた値を排除するものではないし、基および置換基について定めた範囲内の別の値を排除するものでもない。値、特定の値、より特定された値、および好ましい値の任意の組み合わせを持つ構造式IA、IB、もしくはICを持つ化合物を含んだ開示化合物を、本明細書に記載している。
【0079】
「ハロゲン」("halogen")もしくは「ハロ基」("halo")には、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基、およびヨード基が含まれる。「ハロアルキル基」("haloalkyl")という語は、少なくとも一箇所以上がハロゲンに置換されているアルキルラジカル、例えば、クロロメチル基、フルオロエチル基、もしくはトリフルオフロメチル基等を意味する。「C1-C20アルキル基」("C1-C20alkyl")は、1原子から20原子までの炭素原子を有する、枝分かれしたもしくは直鎖のアルキル基を表す。非限定的な例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが含まれるがそれらに限定されるわけではない。「C2-C20アルケニル基」("C2-C20alkenyl")という語は、2原子から20原子までの数の炭素原子、および少なくとも1箇所以上の二重結合を有する、枝分かれしたもしくは直鎖の、オレフィン状の不飽和の基を表す。このような基の例には、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ブテニル基、ヘキセニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などを含むがそれらに限定されるわけではない。「C2-C20アルキニル基」("C2-C20alkynyl")という語で表されるものとしては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、もしくは5-ヘキシニル基などがある。「(C1-C20)アルコキシ基」("(C1-C20)alkoxy")という語は、酸素原子を挟んで結合しているアルキル基のことを指す。(C1-C10)アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、ペントキシ基、3-ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基などがある。「(C2-C26)アルコキシアルキル基」("(C2-C26)alkoxyalkyl")という語が指すものとしては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、などがありえる。
【0080】
「C3-C12シクロアルキル基」("C3-C12cycloalkyl")という語が表すものは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などである。
【0081】
「任意に置換された」("optionally substituted")の語は、0、1、2、3、4箇所の、それぞれ独立に選ばれた置換基のことを表す。それぞれ独立に選ばれた置換基は、他の置換基と同じであっても、異なっていてもよい。
【0082】
「C6-C10アリール基」("C6-C10aryl")の語は、ひとつかふたつの芳香環を有する、単環式炭化水素系または二環式炭化水素系を表し、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基、などを含むがそれらに限定されない。
【0083】
「アリール(C1-C20)アルキル」("aryl(C1-C20)alkyl")または「アラルキル」("aralkyl")という語は、ひとつかふたつの芳香環を有する単環式もしくは二環式の炭化水素環系(フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基、など)で置換されたアルキル基のことを指す。アリールアルキル基の非限定的な例としては、ベンジル基、フェニルエチル基などがある。
【0084】
「任意に置換されたアリール基」("optionally substituted aryl")は、0、1、2、3、もしくは4箇所が置換されたアリール化合物を含む。また置換されたアリール基には1、2、3、もしくは4個の置換基を有するアリール化合物を含む。ここで、その置換基には、例えば、アルキル置換基、ハロ置換基、もしくはアミノ置換基などの基が含まれる。
【0085】
「(C2-C10)複素環基」("(C2-C10)heterocyclic group")という語は、1から3個のヘテロ原子を含んだ、任意に置換された単環式炭化水素基または二環式炭化水素基のことである。ヘテロ原子とは酸素、硫黄、および窒素であり、任意に各環について存在してもよい。
【0086】
「(C4-C10)ヘテロアリール基」("(C4-C10)heteroaryl")という用語は、1、2もしくは3個のヘテロ原子を(随意に各環に)含む、随意に置換された単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、ヘテロ原子は酸素、硫黄、および、窒素である。ヘテロアリール基の非制限的な例としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基などを含む。
【0087】
「二環式」("bicyclic")の語は、飽和かもしくは不飽和の、安定な、架橋したかもしくは縮合したような、二環式炭素環のことを表す。この二環は、安定した構造を作ることができる炭素原子であればそのいずれにも結合しうる。典型的には、二環系中には約7個から約12個の原子を有することができる。この語には、ナフチル基、ジシクロヘキシル基、ジシクロヘキセニル基などが含まれるがそれらに限定されない。
【0088】
「燐酸アナログ」("phosphate analog")および「ホスホン酸アナログ」("phosphonate analog")という語は、燐原子が+5の酸化数をとっていて、1箇所以上の酸素原子が、酸素ではない部分で置き換えられているような、燐酸もしくはホスホン酸のアナログを含む。この語には例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリダート(phosphoranilidate)、ホスホラミダート(phosphoramidate)、ボロノホスファートなどの燐酸アナログなどを含み、さらにH、NH4、Na、Kなどの会合する対イオンが存在する場合には、これらの対イオンをも含む。
【0089】
「α置換ホスホナート」("alpha-substituted phosphonate")という語には、α位炭素原子が置換されたホスホナート基(-CH2PO3H2)が含まれ、例えば-CHFPO3H2、-CF2PO3H2、-CHOHPO3H2、-C=OPO3H2などがある。
【0090】
化合物の「誘導体」("derivative")とは、構造が類似している他の化合物から1ステップ以上で生成されることがある化学物質のことを指す。そうしたステップとは例えば、水素原子をアルキル基、アシル基、もしくはアミノ基で置換することである。
【0091】
「薬学的に許容されるキャリア」("pharmaceutically acceptable carrier")という語には、燐酸緩衝生理食塩水、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(HO-プロピル-βシクロデキストリン)、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤などの、標準的な薬学的キャリアの任意のものを含む。この用語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された薬剤の任意のもの、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤の任意のものも含む。
【0092】
「薬学的に許容される塩」("pharmaceutically-acceptable salt")という語は、開示された化合物の生物学的有効性と特性を保持し、かつ生物学的にもしくはその他の点で好ましくないものではない塩をあらわす。多くの場合、開示された化合物は、アミノ基もしくはカルボキシル基あるいはそれらに類似する基があるおかげで、酸もしくは塩基の塩を形成することができる。
【0093】
「有効量」("effective amount")は、選択された効果を示すのに充分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量とは、S1P受容体のシグナル伝達活性を下げる量のことである。
【0094】
開示された化合物は、一つ以上の不斉中心を分子内に含むことができる。本発明の開示に従って、立体化学を指定しない任意の構造は、全ての様々な光学異性体、ならびにそれらのラセミ混合物を包含するものと理解される。
【0095】
開示された化合物は互変異性型で存在してもよく、本発明は個々の単一の互変異性体と混合物の両方を含む。例えば以下の構造
【0096】
【化6】

は、
【化7】

だけでなく
【化8】

の構造の混合物をあらわすものと理解される。
【0097】
16:0、18:0、18:1、20:4、もしくは22:6の炭化水素という語は、分鎖もしくは直鎖であるアルキル基またはアルケニル基のことを指すものであって、最初の整数はその基中の炭素の総数を表し、第二の整数はその基中の二重結合の数を表している。
【0098】
「S1P調節剤」とは、in vivoもしくはin vitroでS1P受容体活性の検出可能な変化(例えば、実施例で説明されたバイオアッセイなどの当該技術分野で既知の所定のアッセイによって測定される、S1P活性の少なくとも10%の増加もしくは減少)を引き起こすことができる化合物もしくは組成物をあらわす。"S1P受容体"とは、特定のサブタイプが示されない限り、全てのS1P受容体サブタイプをあらわす(例えば、S1P受容体S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5)。
【0099】
ここに開示する化合物の分子中には、不斉中心が一箇所以上含まれていてもよい。本開示では、そうした立体異性について特に指定がない構造についてはいずれも、種々の光学異性体のすべて、ひいてはそのラセミ混合物をも包摂している、と理解されたい。
【0100】
当業者には当然のことながら、不斉中心を持つ開示された化合物は、光学活性なラセミ体で存在し、分離されてもよい。当然のことながら、本発明にかかる化合物は、本明細書に記載された有用な特性を有するそうした化合物の、任意のラセミ体、光学活性体、もしくは立体異性体、またはそれらの混合物(S,R; S,S; R,R;もしくはR,Sジアステレオマーなど)を包含する。そのような光学活性体を調製する方法(例えば、再結晶技術によるラセミ体の光学分割、光学活性な出発物質からの合成、キラル合成、もしくはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によるもの)、ならびに、本明細書で記載される標準検査を用いて、もしくは当該技術分野で周知の他の同様の検査を用いて、S1Pアゴニスト活性を測定する方法は、当該技術分野で周知である。さらに、いくつかの化合物は多形性を示すこともある。
【0101】
S1P受容体アゴニストプロドラッグ(S1P1受容体型選択性のアゴニストが好ましい)の利用可能性は、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、また特に多発性硬化症などの自己免疫病変のための処置方法として、リンパ球動態の変化を含むが、限定はされない。多発性硬化症の"処置"は、再発寛解型、慢性進行型、などを含む様々な疾患の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に使用するだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0102】
さらに、開示された化合物は、同種移植片生着の延長(例えば固形臓器移植、移植片対宿主病の処置、骨髄移植など)のための方法として、リンパ球動態の変更に使用することができる。
【0103】
さらに、開示された化合物はオートタキシン(autotaxin)を抑制するのに使用することができる。オートタキシンは血漿ホスホジエステラーゼであり、最終生成物阻害を受けることがわかっている。オートタキシンはいくつかの基質を加水分解してリゾホスファチジン酸とスフィンゴシン=1-燐酸を生じ、癌の進行と血管新生に関係している。従って、開示された化合物のS1P受容体アゴニストプロドラッグはオートタキシンを阻害するために使用することができる。この活性は、S1P受容体に対する作動性(agonism)と組み合わされることもあるし、あるいはそのような作用とは独立していることもある。
【0104】
さらに、開示された化合物はS1Pリアーゼの阻害に有用となり得る。S1PリアーゼはS1Pを不可逆的に分解する細胞内酵素である。S1Pリアーゼの阻害は、リンパ球減少を併発してリンパ球動態を妨害する。従って、S1Pリアーゼ阻害剤は免疫系機能の調節に有用となり得る。そのため、開示された化合物はS1Pリアーゼを抑制するために使用することができる。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0105】
さらに、開示された化合物はカンナビノイドCB1受容体のアンタゴニストとして有用となり得る。CB1拮抗作用は、体重の減少と血中脂質プロファイルの改善に関係がある。CB1拮抗作用はS1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0106】
さらに、開示された化合物はグループIVA細胞質PLA2(cPLA2)の阻害に有用となり得る。cPLA2はエイコサン酸(例えばアラキドン酸)の放出を触媒する。エイコサン酸は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症促進性エイコサノイドに変化する。従って、開示された化合物は抗炎症薬として有用となり得る。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0107】
さらに、本発明にかかる開示された化合物は(一種以上の)複数基質脂質キナーゼ(MuLK)の抑制のために有用となり得る。MuLKは多くのヒト腫瘍細胞に高度に発現するので、その抑制は腫瘍の成長もしくは伝播を遅らせる可能性がある。
【0108】
多発性硬化症の"処置"は、再発寛解型、慢性進行型などを含む様々な疾病の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に用いるだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0109】
別の態様では、本発明は、本発明にかかるS1Pアナログを使って、S1P受容体に作用もしくは拮抗することで、神経因性疼痛の予防、抑制、もしくは処置をするための組成物ならびに方法を提供する。本来、疼痛は侵害受容性もしくは神経因性である可能性がある。神経因性疼痛は、その慢性的な性質、明白な直接原因(すなわち組織損傷)の欠如、もしくはアロディニア(異痛)を特徴とする。アロディニアとは、正常刺激(例として衣類の接触、温風もしくは冷気などを含む)を疼痛と知覚することである。神経因性疼痛は、腕や、より多くは足などの四肢の神経損傷の結果となり得る。通常は、神経因性疼痛はアスピリンなどの鎮静剤や非ステロイド性抗炎症薬には反応しない。
【0110】
別の態様では、本発明は、血管損傷後の血管再狭窄を予防し抑制するために、S1Pアナログを使用するための組成物と方法を提供する。或る態様では、損傷はバルーン血管形成によるものであってもよい。本発明はさらに、血管再狭窄を防ぐために被験者を処置する方法も提供する。
【0111】
別の態様では、本発明は喘息の発作を防ぐためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、喘息はシステイニルロイコトリエンの過剰生産によるものであることがある。本発明はさらに、被験者を処置して喘息の処置をするための方法も提供する。
【0112】
別の態様では、本発明は肥満を処置するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。
【0113】
別の態様では、本発明は血中脂質組成を正常化するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、血中の低密度リポタンパク質(LDLもしくは"悪玉コレステロール")レベルが減少し得る。別の態様では、血中トリグリセリド量を低減できると考えられる。
【0114】
別の態様では、本発明は動脈硬化の予防と処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。
【0115】
別の態様では、本発明は腫瘍性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、この処置は抗血管新生特性のために有効なS1P受容体アンタゴニストの適用によって行われる。別の態様では、この処置は、複数基質の脂質キナーゼを阻害するスフィンゴシンアナログの投与によって行われる。
【0116】
別の態様では、本発明は神経変性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、処置はアルツハイマー型老年性認知症のためのものである。
【0117】
本発明には、開示された化合物を含んだ薬学的組成物も含まれる。より詳細には、そのような化合物は、当業者に既知の標準的な薬学的に許容可能なキャリア、充填剤、可溶化剤、安定剤を用いて、薬学的組成物として処方され得る。例えば、開示された化合物またはそのアナログ、誘導体、もしくは改良体を有する薬学的組成物が、本明細書で記載されるように被験者に適切な化合物を投与するために使用される。
【0118】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物の治療的に許容可能な量、または、構造式IA、IB、もしくはICの化合物の治療有効量および薬学的に許容可能なキャリアを含んだ薬学的組成物を、それらを必要とする被験者に投与することを含む、疾患もしくは障碍の処置のうえで、構造式IA、IB、もしくはICの化合物は有用である。
【0119】
開示された化合物と方法は、一つ以上のS1P受容体(特にS1P1、S1P4、S1P5受容体型)に受容体アゴニストもしくはアンタゴニストとしての活性を持つスフィンゴシン=1-燐酸(S1P)アナログを対象とする。開示された化合物と方法は、燐酸部分を持つ化合物、ならびにホスホン酸、α置換ホスホン酸(特にα置換がハロゲンとチオ燐酸であるもの)などの耐加水分解性の燐酸サロゲート(surrogate)を持つ化合物の両方を含む。
【0120】
基、置換基、範囲に対して下記に例示的に列挙した値の例は、基および置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。
【0121】
W1、X1、Y1、およびZ1の例示的な値は独立に、O、CH、CH2、CHCF3、N、NH、もしくはSである。
【0122】
W1、X1、Y1、およびZ1のさらなる例示的な値は、CH2である。
【0123】
例示的な化合物は、以下の構造式を有する。
【化9】

【0124】
R1の例示的な値には、水素原子、弗素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、または、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基、が含まれる。
【0125】
R1のさらなる値としては、水素原子、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3 がある。
【0126】
R1のさらなる例示的な値としては、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基がある。
【0127】
R1のなおもさらなる例示的な値としては、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチル置換ベンジル基がある。
【0128】
R2の値の例には、下記の構造式が含まれる。
【化10】

【0129】
W2の例示的な値は、結合、 -CH2-CH2-CH2- 、もしくは -(C=O)(CH2)1-5 である。
【0130】
構造式VIを持つR2の追加値として以下の構造式がある。
【化11】

ここで、Z2は、 (CH3)3C- 、 CH3CH2(CH3)2C- 、 CH3CH2CH2- 、 CH3(CH2)2CH2- 、 CH3(CH2)4CH2- 、 (CH3)2CHCH2- 、 (CH3)3CCH2- 、 CH3CH2O- 、 (CH3)2CHO- もしくは CF3CH2CH2- 、または、下記の構造式を持つ基である。
【化12】

【0131】
構造式VI(パラ位置換の3,5-ジフェニル-(1,2,4)-オキサジアゾール)を持つR2基の付加的な値は、下記の構造式である。
【化13】

【0132】
構造式VIを持つR2基の別の値は、下記の構造式である。
【化14】

【0133】
構造式IIを持つR2基の別の値は、下記の構造式である。
【化15】

【0134】
構造式IIを持つR2基の別の例示的な値は、下記の構造式である。
【化16】

【0135】
構造式IIIを持つR2基のさらなる値は、下記の構造式である。
【化17】

【0136】
構造式Vを持つR2の別の値は、下記の構造式である。
【化18】

【0137】
R2のさらなる例示的な値としては、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、もしくは(C2-C26)アルコキシアルキル基がある。
【0138】
R2のなおも例示的な値としては、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、ならびに、カルボニル基(C=O)もしくはオキシム基(C=NRd)で任意に置換された(C2-C14)アルキニル基または(C1-C10)アルコキシ基、がある。
【0139】
R2のさらなる値としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基が含まれる。
【0140】
R3の値の例としては、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基、もしくはイソプロピル基がある。
【0141】
R3のさらなる値としては、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基が含まれる。
【0142】
R4の値の例としては、ヒドロキシル基、もしくは燐酸基(-OPO3H2)がある。
【0143】
{付加的な実施形態}
本発明にかかる付加的な実施形態として以下が含まれる。
〔実施形態1〕
構造式IA、IB、もしくはICの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、
【化19】

W1、X1、Y1、およびZ1が独立に、O、CRa, CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、
R1およびR2が独立に、水素原子、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であり、
R1およびR2に関するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基が独立に、任意に全弗素置換されているか、あるいは、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換したものであり、ここで前記置換基は各々独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでR1とR2に関するアルキル基が持つ炭素原子のひとつ以上がそれぞれ独立に、過酸化物ではない酸素原子、硫黄原子、もしくはNRcで置換されたものであってもよく、R3に関するアルキル基が、任意に1個か2個のヒドロキシル基で置換されているか、あるいは、
R2が、下記の構造式II、構造式III、構造式IV、構造式V、もしくは構造式VIを有する基であってもよく、
【化20】

ここでR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14が各々独立に、O、S、C、CR15、CR16R17、C=O、N、もしくはNR18であり、
R15、R16、およびR17が各々独立に、水素原子、ハロゲン、(C1-C10)アルキル基、(C6-C10)アリール基、ハロゲン置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基、であって、R18は、水素原子もしくは(C1-C10)アルキル基であってよく、
Z2が、水素原子、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、 -NRaRb 、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であって、
ここでZ2に関するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、任意に全弗素置換したものであるか、あるいは、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換したものであってもよく、ここで前記置換基は各々独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでZ2に関するアルキル基が持つ炭素原子のひとつ以上がそれぞれ独立に、過酸化物ではない酸素原子、硫黄原子、もしくはNRcで置換されてもよく、
【化21】

は、一個以上の任意付加的な二重結合を意味し、
Y2が、結合である(存在しない)か、O、S、C=O、もしくはNRc、CH2であって、W2が、結合であるか、-CH2-であってm=1, 2, 3であるか、または、(C=O)(CH2)1-5であってm=1であり、ここでW2には、過酸化物ではないO、S、C=O、もしくはNRcがあいだに任意に挟まり、
nが、0、1、2、もしくは3であり、
【化22】

の各々が、任意付加的な二重結合を表し、
qが、0、1、2、もしくは3であり、
R3が、水素原子、(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であり、
R4が、ヒドロキシル基(-OH)、燐酸基(-OPO3H2)、ホスホン酸基(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸基であり、
Ra、Rb、Rc、およびRdが各々独立に、水素原子もしくは(C1-C10)アルキル基である
ことを特徴とする、化合物。
【0144】
〔実施形態2〕
R1が、水素原子、弗素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、または、アリール置換アリールアルキル基、である、実施形態1記載の化合物。
【0145】
〔実施形態3〕
R1が、水素原子、トリフルオロメチル基、もしくは -CH2CF3である、実施形態2記載の化合物。
【0146】
〔実施形態4〕
R1が、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチル置換ベンジル基である、実施形態2記載の化合物。
【0147】
〔実施形態5〕
R2が下記の構造式を持つ、実施形態1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【化23】

【0148】
〔実施形態6〕
R2が下記の構造式を持つ、実施形態5記載の化合物。
【化24】

【0149】
〔実施形態7〕
R2が下記の構造式を持つ、実施形態6記載の化合物。
【化25】

【0150】
〔実施形態8〕
R2が下記の構造式を持ち、
【化26】

ここで、Z2が、 (CH3)3C- 、 CH3CH2(CH3)2C- 、 CH3CH2CH2- 、 CH3(CH2)2CH2- 、 CH3(CH2)4CH2- 、 (CH3)2CHCH2- 、 (CH3)3CCH2- 、 CH3CH2O- 、 (CH3)2CHO- もしくは CF3CH2CH2- 、または、下記の構造式を持つ基である
【化27】

ことを特徴とする、実施形態1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【0151】
〔実施形態9〕
R2が下記の構造式を持つ、実施形態8記載の化合物。
【化28】

【0152】
〔実施形態10〕
R2が下記の構造式を持つ、実施形態9記載の化合物。
【化29】

【0153】
〔実施形態11〕
R2が下記の構造式IIIを持つ、実施形態1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【化30】

【0154】
〔実施形態12〕
R2が下記の構造式を持つ、実施形態11記載の化合物。
【化31】

【0155】
〔実施形態13〕
R2が、(C1-C20)アルキル基もしくは(C1-C20)アルコキシ基である、実施形態1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【0156】
〔実施形態14〕
R2が、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、および(C2-C14)アルキニル基、あるいは、カルボニル基(C=O)もしくはオキシム基(C=NRd)で任意に置換した(C1-C10)アルコキシ基である、実施形態13記載の化合物。
【0157】
〔実施形態15〕
R2が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基である、実施形態14記載の化合物。
【0158】
〔実施形態16〕
X1、Y1、およびZ1の各々が、CH2である、実施形態1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【0159】
〔実施形態17〕
R3が、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、もしくはイソプロピル基である、実施形態1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【0160】
〔実施形態18〕
R3が、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である、実施形態17記載の化合物。
【0161】
〔実施形態19〕
下記の構造式を有する、実施形態1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【化32】


【0162】
〔実施形態20〕
スフィンゴシン=1-燐酸受容体の活性に関与しており前記活性の作動が望まれる、哺乳類の症状もしくは症候を抑止または処置するための方法であって、
前記哺乳類に、実施形態1-19のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与するステップ
を含む、方法。
【0163】
〔実施形態21〕
前記症状が、自己免疫疾患である、実施形態20記載の方法。
【0164】
〔実施形態22〕
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、もしくは多発性硬化症である、実施形態21記載の方法。
【0165】
〔実施形態23〕
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症である、実施形態22記載の方法。
【0166】
〔実施形態24〕
前記症状が、リンパ球動態を変化させる、実施形態23記載の方法。
【0167】
〔実施形態25〕
前記処置が、リンパ球動態を変化させる、実施形態24記載の方法。
【0168】
〔実施形態26〕
リンパ球動態により、同種移植片生着が延びる、実施形態25記載の方法。
【0169】
〔実施形態27〕
前記同種移植片が、移植術のためのものである、実施形態26記載の方法。
【0170】
〔実施形態28〕
S1Pリアーゼ活性が関与し前記S1Pリアーゼの阻害が望まれる、哺乳類の症状もしくは症候を抑止または処置するための方法であって、
前記哺乳類に、実施形態1-19のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与するステップ
を含む、方法。
【0171】
〔実施形態29〕
医療に用いるための、実施形態1-19のいずれか一項に記載の化合物。
【0172】
〔実施形態30〕
実施形態1-19のいずれか一項に記載の化合物を使って、スフィンゴシン=1-燐酸受容体の活性に関与する哺乳類の症状もしくは症候を抑止または処置するうえで有用な医薬を調製する、使用方法。
【0173】
〔実施形態31〕
前記医薬がキャリアを含む、実施形態30記載の使用方法。
【0174】
〔実施形態32〕
前記キャリアが液体である、実施形態31記載の使用方法。
【0175】
本発明にかかる例示的な化合物は、下記の構造式を有する。
【化33】



【0176】
さらなる化合物の例は図1に示した。
【0177】
構造式IA、IB、もしくはICを有するさらなる化合物を、下記の表1に示した。
【表1】

【0178】
構造式XXからXXVもしくは構造式XXXIを有する化合物には、それらのすべてのエナンチオマーも含まれ、例えば以下の構造式のものが含まれる。
【化34】


なお、これらの化合物は表1のRe基の各々を有している。
【0179】
別の態様では、構造式IA、IB、もしくはICの一般構造を持つS1P受容体プロドラッグ化合物を提供し、これは、構造式(VIII)を持つ一置換環系を持つ化合物によって提供される。構造式(I)のいくつかの実施形態では、化合物(例えばIX)はただ一つの不斉中心しか持たない可能性があるので、アミノ炭素はプロキラルであり、すなわち、酵素触媒燐酸化を受けてキラルとなる。
【0180】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載された化合物は、プロドラッグであり、例えば第一級アルコールの燐酸化によって活性化されてモノ燐酸化アナログを形成することが想定される。さらに、活性薬剤はS1Pタイプ1受容体のアゴニストであることが想定される。
【0181】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物が、安定な非毒性の酸もしくは塩基の塩を作るのに十分に塩基性もしくは酸性である場合、化合物を薬学的に許容される塩として調製および投与することが適切となり得る。薬学的に許容可能な塩の例は、生理学的に許容可能なアニオンを形成する酸で形成された有機酸付加塩(例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、枸櫞酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、琥珀酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、α-グリセロリン酸塩)である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩を含む無機塩も形成され得る。
【0182】
薬学的に許容可能な塩は当該技術分野で周知の標準的な手順を用いて得られる。例えばアミンなどの十分に塩基性の化合物と適切な酸との反応によって、生理学的に許容可能なアニオンを得ることができる。アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)のカルボン酸塩も作られ得る。
【0183】
薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製できる。無機塩基から誘導した塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が含まれるがこれらに限定はされない。有機塩基から誘導した塩には、あくまで例として、一級アミン、二級アミン、三級アミンの塩が含まれるがこれらに限定はされず、例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、ジ置換シクロアルキルアミン、トリ置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、ジ置換シクロアルケニルアミン、トリ置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジへテロアリールアミン、トリへテロアリールアミン、複素環アミン、ジ複素環アミン、トリ複素環アミン、アミン上の少なくとも二つの置換基が異なり、かつその置換基が、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、もしくは複素環基などであるような、混合ジ-アミンおよびトリ-アミンなどの、1級アミン、2級アミン、3級アミンの塩が含まれる。また、二つもしくは三つの置換基が、アミノ窒素と共に複素環もしくはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。アミンの非限定的な例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルフォリン、N-エチルピペリジンなどを含む。また当然のことながら、その他のカルボン酸誘導体も有用と考えられる(例えばカルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミドなどを含むカルボン酸アミド)。
【0184】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物は薬学的組成物として処方することができ、ヒトの患者などの哺乳類の宿主に、選択された投与経路に適した様々な形で投与することができる(例えば、経口もしくは非経口、静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下の経路)。
【0185】
従って、本発明の化合物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な可食性のキャリアなどの、薬学的に許容可能な溶媒と併用して、例えば経口で全身投与されてもよい。化合物は、ハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに入れてもよいし、タブレットに圧縮してもよいし、あるいは患者の食餌の食べ物に直接混ぜてもよい。治療用経口投与のために、活性化合物は一つ以上の賦形剤と合わせてもよいし、摂取可能なタブレット、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形で使用されてもよい。そのような組成物と製剤は、少なくとも約0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物と製剤のパーセンテージは勿論異なってもよく、好都合に所定の単位剤形の質量の約2%〜約60%の間であってもよい。そのような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、効果的な投与量レベルが得られるような量である。
【0186】
タブレット、トローチ、ピル、カプセルなどは、以下のものも含んでもよい。:トラガカント・ゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤、第二燐酸カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、スクロース、フルクトース、ラクトース、もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、冬緑油、もしくはチェリーフレーバーなどの香料が加えられてもよい。単位剤形がカプセルの際は、上述の種類の材料に加えて、植物油もしくはポリエチレングリコールなどの液体キャリアを含んでもよい。様々な他の材料がコーティングとして存在してもよく、あるいはそうでなければ固形単位剤形の物理的形状を修正するように存在してもよい。例えば、タブレット、ピル、もしくはカプセルは、ゼラチン、ワックス、セラック、もしくは糖などでコーティングされてもよい。シロップもしくはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロースもしくはフルクトース、保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、着色料、チェリーもしくはオレンジフレーバーなどの香料を含んでもよい。勿論、任意の単位剤形を調製するために使用される任意の材料は、使用される量において、薬学的に許容可能で、かつ実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性製剤および装置に組み込まれてもよい。
【0187】
また、活性化合物は、輸液もしくは注射によって、静脈内もしくは腹腔内に投与されてもよい。活性化合物もしくはその塩の溶液は、非毒性の界面活性剤と随意に混合して、水に調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物、ならびに油分に調製することもできる。通常の保存条件と使用条件において、これらの製剤は微生物の繁殖を防ぐために保存料を含む。
【0188】
注射もしくは輸液のための薬の剤形の例としては、滅菌した注射可能もしくは注入可能な溶液もしくは分散液の即時調製のために適した、随意にリポソームに封入された、有効成分を有する滅菌水溶液もしくは分散液もしくは滅菌粉末を含むことができる。全ての場合において、最終的な剤形は、製造条件および保存条件下において、滅菌、流体、かつ安定であるべきである。液体キャリアもしくは溶媒は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの混合物を含む溶媒もしくは液体分散媒質であることができる。適切な流動性は、例えばリポソームの形成、分散液について必要な粒子サイズの維持、もしくは界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の抑制は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌薬によってもたらすことができる。多くの場合、例えば糖、バッファーもしくは塩化ナトリウムといった等張剤を含むことが好ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムとゼラチンといった吸収遅延剤の組成で使用することによって、注射可能な組成物の吸収を延長することができる。
【0189】
滅菌注射剤は、必要な量の活性化合物を、上記に列挙された様々なその他の成分と共に適切な溶媒に合わせ、必要に応じてその後ろ過滅菌することによって調製される。滅菌注射剤の調製用の滅菌粉末の場合は、真空乾燥と凍結乾燥技術が調製方法として好ましい。これらの方法では、前もってろ過滅菌した溶液に存在する任意の所望の追加成分を含む有効成分の粉末を生じる。
【0190】
局所投与のために、本発明の化合物は、純粋な形(例えば、液体)で適用されてもよい。しかしながら、化合物は、個体もしくは液体であってもよい皮膚科学的に許容可能なキャリアと併用して、組成物もしくは剤形として皮膚に投与することが一般的に好ましい。
【0191】
固形キャリアの例としては、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体を含む。有用な液体キャリアは、水、アルコール、もしくはグリコール、もしくは水‐アルコール/グリコール混合物が含まれ、その中に本発明の化合物が、随意に非毒性の界面活性剤を用いて、効果的なレベルで溶解もしくは分散することができる。香料および追加の抗菌剤などのアジュバントを、所定の使用のために特性を最適化するために付加することができる。得られる液体組成物は、吸収パッドから適用することができ、包帯およびその他の包帯剤に浸透させるために使用することができ、あるいは、ポンプタイプもしくはエアロゾルスプレーを用いて患部上にスプレーすることができる。
【0192】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロース、もしくは変性無機材料などの増粘剤も、使用者の皮膚に直接適用するために、塗布可能な(spreadable)ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成するために、液体キャリアと共に利用することが出来る。
【0193】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物を皮膚に供給するために使用できる有用な外皮用組成物の例は、当該技術分野で既知である。例えば、Jacquet et al. (U.S.Pat. No. 4,608,392)、Geria (U.S. Pat. No. 4,992,478)、Smith et al. (U.S. Pat. No. 4,559,157)およびWortzman (U.S. Pat. No. 4,820,508)を参照のこと。
【0194】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性、および動物モデルにおけるin vivo活性の比較によって決定できる。マウスおよびその他の動物における有効投与量のヒトへの外挿法は当該技術分野で既知であり、例えばU.S. Pat. No. 4,938,949を参照のこと。
【0195】
一般的に、ローションなどの液組成における構造式IA、IB、もしくはICの化合物(群)の濃度は、約0.1から約25重量パーセントであり、約0.5〜10重量パーセントが好ましい。ゲルもしくは粉末などの半固体もしくは固体組成における濃度は、組成物の総重量を基準として約0.1〜5重量パーセントであり、約0.5〜2.5重量パーセントが好ましい。
【0196】
処置での使用のために必要な化合物、もしくはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩によって異なるだけでなく、投与経路、処置される疾病の状態、および患者の年齢と状態によっても異なり、最終的にはかかりつけの医師もしくは臨床医の判断による。
【0197】
しかしながら一般的には、適切な投与量は一日当たり体重の約0.5から約100 mg/kgの範囲であって、一例として一日あたりに約10から約75 mg/体重kg、例えば一日あたりに約3から約50 mg/受納者体重kg、好ましくは6から90 mg/kg/dayの範囲、もっとも好ましくは15から60 mgの範囲である。
【0198】
化合物は単位剤形で都合よく投与される。例えば、5〜1000 mg、好都合には10〜750 mg、最も好都合には50〜500 mgの有効成分を単位剤形あたりに含む。
【0199】
理想的には、有効成分は約0.5〜約75μMの活性化合物のピーク血漿濃度に達するように投与されるべきであり、約1〜50μMが好ましく、約2〜約30μMが最も好ましい。これは、例えば有効成分の0.05〜5%溶液の静脈内注射(随意に食塩水に入れて)によって、あるいは約1〜100 mgの有効成分を含むボーラス(bolus)として経口投与することによって実現されてもよい。好ましい血中レベルは、約0.01〜5.0 mg/kg/hrを供給する持続注入、もしくは有効成分(群)の約0.4〜15 mg/kgを含む間欠的注入によって維持されてもよい。
【0200】
所望の投与量は、好都合に単回投与で示されてもよいし、あるいは、例えば一日あたり2、3、4、もしくはそれ以上のsub-dosesとして、適切な間隔で投与される分割投与として示されてもよい。sub-dose自体も、例えば吸入器からの複数回吸入、もしくは眼への複数滴の点眼など、複数の個別の大まかに間隔をあけた投与にさらに分割されてもよい。
【0201】
開示した方法は、構造式IA、IB、もしくはICの阻害化合物と、その阻害化合物もしくはその阻害化合物を含む組成物の、細胞もしくは被験者への投与を説明する教材を含んだキットを含む。これは、その化合物もしくは組成物を細胞もしくは被験者に投与する前に、その阻害化合物もしくは組成物を溶解もしくは懸濁するうえでの(好ましくは滅菌の)溶媒を有するキットなど、当業者に既知のキットのその他の実施形態を含むと解釈されるべきである。被験者はヒトであることが好ましい。
【0202】
開示した化合物および方法では、上述したようにかまたは以下の実施例で説明するように、当業者に知られた従来の化学、細胞学、組織化学、生化学、分子生物学、細菌学、およびin vivoについての技術を使用可能である。これらの技術は文献にて完全に説明されているものである。
【0203】
さらなる説明無しに、当業者は前述の説明と以下の実施形態例を用いて、開示した化合物を作成し利用することができると考えられる。
【0204】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物の調製、もしくは構造式IA、IB、もしくはICの化合物の調製に有用な中間体の調製のためのプロセスは、さらなる実施形態として提供される。構造式IA、IB、もしくはICの化合物の調製に有用な中間体も、さらなる実施形態として提供される。そのプロセスはさらなる実施形態として提供され、本明細書においてスキームで図解される。他に限定されない限り、総称的な基の意味は上述した通りである。
【0205】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物を調製する工程、もしくは構造式IA、IB、もしくはICの化合物を調製するうえで有用な中間生成物を調製する工程も、本発明にかかる別の実施形態として提供される。また、構造式IA、IB、もしくはICの化合物を調製するうえで有用な中間生成物も、本発明にかかる別の実施形態として提供される。本発明にかかる化合物は、当該技術分野にて公知な出発物質および手法を用いて調製可能である。
【0206】
目標分子の合成法を、Scheme 1 、Scheme 2 、およびScheme 3 として示した(図3から図6を参照のこと)。
【0207】
これより、以下の実施例および実施形態を参照して本発明を説明してゆく。説明を追加するまでもなく、当業者は、前述の記載と後述する実施例を使って、開示した化合物をつくり利用できるであろう。つまり以下の機能する実施例は、例示目的に提供されたに過ぎず、特に好ましい実施形態を指摘し、本開示の残りを限定するものと解釈されるものではない。従って、実施例は、本明細書で提供される教示の結果として明らかとなる、いかなる全ての変更をも包含するものと解釈されるべきである。
【実施例】
【0208】
〔実施例1: トリフルオロ-メタンスルホン酸=6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-5-オン-2-イルエステル (2) 〕
【化35】

無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.7 mL, 10 mmol)を、1hかけてゆっくりと、0℃に冷やした7-ヒドロキシ-1-ベンゾスベロン(別名2-ヒドロキシ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-5-オン, 1.75 g, 10 mmol)および 2,6-ルチジン(1.28 mL, 10 mmol)の無水ジクロロメタン(10 mL)溶液へと加えた。1h後、溶液をジクロロメタン(10 mL)で希釈して、1M 塩酸(20 mL)で洗った。有機層をジクロロメタン(50 mL)で再抽出して、併せた有機層を1M 塩酸(10 mL)で洗った。有機層を硫酸マグネシウムで脱水して、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, CH2Cl2)で精製して、2.7 gの化合物 (2) を得た(90%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ2.13 (m, 4H, J= 6.22Hz), 2.63 (t, 2H, J = 6.95Hz), 2.98 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.15 (m, 2H), 8.07 (m, 1H).
【0209】
〔実施例2: 2-オクチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-5-オン(3) (別名7-オクチル-1-ベンゾスベロン)〕
【化36】

9-BBN(THFでの0.5M溶液, 20.2 mL, 10.1 mmol)を、rtで1-オクテン(1.6 mL, 10.1 mmol)へ加えた。そして溶液を室温で終夜攪拌した。そのあと、K3PO4(2.93 g, 13.8 mmol)と、Pd(Ph3P)4(191 mg, 0.17 mmol, 1.8 mol %)と、KBr(1.2 g, 10.1 mmol)と、脱気H2O(0.18 mL, 10 mmol)とを加えてから、化合物 (2) (2.7 g, 9.2 mmol)の無水脱気THF(10 mL)溶液を加えた。そうして反応混合液をアルゴン雰囲気下で65℃に加熱して2hおいた。溶液を冷却してから、pH1まで酸性化して、EtOAc(100 mL)中へ抽出した。水層をEtOAc(50 mL)で再抽出して、併せた有機層をH2O(20 mL)と塩水(40 mL)で洗った。有機層を硫酸マグネシウムで脱水して、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサン類に5%のEtOAc)で精製して、1.45 gの化合物 (3) を得た(72%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.85 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.24 (bs, 10H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 2.06 (m, 4H, J = 5.85Hz), 2.57 (t, 4H, J = 6.95Hz), 2.87 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.01 (s, 1H), 7.06 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 8.06Hz).
【0210】
〔実施例3: 6-ブロモ-2-オクチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-5-オン (4) (別名2-ブロモ-7-オクチル-1-ベンゾスベロン)〕
【化37】

臭化第二銅(3.34 g, 15.0 mmol)を酢酸エチル(10 mL)に入れて攪拌しながら加熱して還流した。これへ化合物 (3) (1.93 g, 7.5 mmol)のクロロホルム(10 mL)溶液を加えた。反応液をさらに6h、加熱して還流してから、冷却した。臭化銅と臭化第二銅の残渣を濾別して、濾液を活性炭で脱色し、Celite(セライト)床を通して濾過して、酢酸エチル(4 x 50 mL)で洗った。溶媒を減圧除去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサン類に2%のEtOAc)で精製して、2.02 gの化合物 (4) を得た(80%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.87 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.26 (bs, 10H), 1.61 (p, 2H, J = 6.96Hz), 2.46 (m, 2H), 2.62 (t, 2H, J = 7.69Hz), 2.86 (dt, 1H, J = 16.34Hz, 4.39Hz), 3.27 (dt, 1H, J = 16.83Hz, 4.39Hz), 4.69 (t, 1H, J = 4.02Hz), 7.07 (s, 1H), 7.14 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.99 (d, 1H, J = 8.05Hz); 13C NMR δ14.34, 22.88, 26.42, 29.44, 29.57, 29.64, 31.25, 32.08, 32.32, 36.39, 127.75, 128.00, 128.73, 129.00, 144.30, 150.39, 190.54.
【0211】
〔実施例4: 2-アセチルアミノ-2-(2-オクチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-5-オン-6-イル)-マロン酸=ジメチルエステル (5) 〕
【化38】

鉱油中の60% 水素化ナトリウム(720 mg, 18.0 mmol)を無水DMF(10 mL)に懸濁させてから、アセトアミドマロン酸ジメチル(3.00 g, 15 mmol)の無水DMF(10 mL)溶液を加えた。アニオンができるまで溶液を0℃で3h攪拌した。化合物 (4) (2.12 g, 6.0 mmol)の無水DMF(10 mL)溶液を加えてから、溶液を室温にして終夜攪拌した。混合液を蒸留水(50 mL)中に注ぎいれて、氷浴中で1M 塩酸を足してpH3まで酸性化し、酢酸エチル(3 x 50 mL)中へ抽出した。有機層を塩水(2 x 30 mL)で洗って、硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサン類に40%のEtOAc)で精製して、0.420 gの化合物 (5) を得た(15%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.85 (t, 3H, J = 6.22Hz), 1.24 (m, 10H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 1.97 (s, 3H), 2.45-2.60 (m, 4H), 2.83-3.21 (m, 4H), 3.88 (dd, 1H, J = 14.00Hz, 3.68Hz), 4.05 (s, 6H), 6.86 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 7.07 (d, 1H, J = 8.69 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 8.36Hz).
【0212】
〔実施例5: 2-アセチルアミノ-2-(2-オクチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテニル)-マロン酸=ジメチルエステル (5) 〕
【化39】

トリエチルシラン(1.3 ml, 8.2 mmol)の5 mlのCH2Cl2溶液へ、化合物 (5) (1 g, 2.1 mmol)の5 mlのCH2Cl2溶液を加えた。反応混合液を室温かつAr雰囲気下で攪拌して、TiCl4(0.09 ml, 8.2 mmol)を滴下して加えた。得られた溶液を12h攪拌して、0℃まで冷却し、10 mlの飽和NaHCO3をおもむろに加えてクエンチした。水層をCH2Cl2(3 x 30 mL)で抽出した。併せた有機層を塩水(2 x 30 mL)で洗って、硫酸マグネシウムで脱水して、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサン類に20%のEtOAc)で精製して、570 mgの化合物 (6) を得た(55%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.87 (t, 3H, J = 6.46Hz), 1.26 (m, 10H), 1.58 (p, 2H, J = 6.79Hz), 2.03 (s, 3H), 2.28 (b, 1H), 2.30-2.68 (m, 6H), 2.82-2.92 (m, 2H), 4.05 (s, 6H), 6.69 (s, 1H), 6.89-7.05 (m, 3H).
【0213】
〔実施例6: N-[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(2-オクチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-6-イル)-エチル]-アセトアミド (7) 〕
【化40】

水素化硼素リチウム(2MのTHF溶液, 0.88 ml, 1.76 mmol)を、化合物 (6) (200 mg, 0.44 mmol)の5 ml THF溶液へ0℃で加えた。反応混合液を室温で48h攪拌してから、40 mlの酢酸エチルで希釈した。溶液を塩水(2 x 20 mL)で洗って、硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, CH2Cl2に4%のMeOH)で精製して、59 mgの化合物(7) を得た(33%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.88 (t, 3H, J = 6.56Hz), 1.29 (m, 10H), 1.57 (p, 2H, J = 6.25Hz), 1.94-1.98 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 2.20-2.45 (m, 3H), 2.51 (t, 2H, J = 7.32), 2.60-2.85 (m, 4H), 3.69 (d, 2H, J = 11.61), 3.89 (dd, 2H, J = 11.61Hz, 7.25Hz), 6.22 (s, 1H), 6.88-6.99 (m, 3H).
【0214】
〔実施例7: 2-アミノ-2-(2-オクチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプテン-6-イル)-プロパン-1,3-ジオール (8) 〕
【化41】

化合物 (7) (55 mg, 0.14 mmol)およびLiOH.H2O(45 mg, 1.1 mmol)の、MeOH(3 ml)とTHF(1.5 ml)と水(3 ml)の溶液を、50℃で5h攪拌してから、酢酸エチル(20 ml)で希釈した。溶液を塩水(2 x 10 mL)で洗って、硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, CH2Cl2に50%のMeOH)で精製して、35 mgの化合物(8) を得た(75%)。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.88 (t, 3H, J = 6.17Hz), 1.29 (m, 10H), 1.56 (p, 2H, J = 6.17Hz), 1.82-2.05 (m, 4H), 2.51 (t, 2H, J = 6.95), 2.58-2.88 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.61 (d, 2H, J = 10.98), 3.73 (d, 2H, J = 10.61Hz), 6.87-6.98 (m, 3H).
【0215】
〔実施例8: 化合物 (9) 〕
s-ブチルリチウム(ヘキサン中の1.1M溶液で22.0 ml, 22.0 mmol)を-40℃で加えることで、臭化1-[5-(O-テトラヒドロピラニル)ブチルオキシ]トリフェニルホスホニウム(8.38 g, 20.0 mmol)のイリドをin situでTHF(150 mL)中につくる。反応液を0℃まで温めて、不活性雰囲気下で1時間攪拌してから、-40℃に戻し、3-ブロモベンズアルデヒド(3.68 g, 20.0 mmol)のTHF(50 mL)溶液を滴下して加える。反応液を-40℃で1時間おき、その後室温にしてさらに4時間おく。反応液をエーテル(200 mL)と水(100 mL)に分配して、有機層を分取して炭酸水素ナトリウム水溶液(5% w/w, 100 mL)で洗って硫酸ナトリウムで脱水する。有機層をin vacuoで蒸散させる。産生物を、ヘキサン類(85%)- 酢酸エチル(15%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製すると、E-アルケンとZ-アルケンのジアステレオマー混合物が得られる。
【0216】
〔実施例9: 化合物 (10) 〕
ボロン酸オクチル中間生成物を、1-オクテン(1.38 g, 14.1 mmol)を9-BBNのTHF溶液(0.5M溶液28.3 mL, 14.1 mmol)に加えることでin situでつくる。反応液を室温で終夜攪拌し、水酸化ナトリウム水溶液(3.0M溶液5.0 mL)を加えてから、化合物 (9) (3.25 g, 10.0 mmol)およびPd[P(Ph)3]4(0.310 g, 0.270 mmol)を加える。反応液を還流して、不活性雰囲気下で12時間おく。その後、反応液を冷却して濾過し、in vacuoで濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィーで溶媒としてヘキサン/酢酸エチル(85:15)を使い、残渣を精製する。精製した化合物 (10) は、E-アルケンとZ-アルケンのジアステレオマー混合物として得られる。
【0217】
〔実施例10: 化合物 (11) 〕
塩素(0.700 g, 1.0 mmol)を塩化メチレン(100 mL)中で-40℃で液化させ、化合物 (10) (3.22 g, 9.0 mmol)の塩化メチレン(25 mL)溶液を滴下して加える。反応液を0℃まで温めて1時間攪拌する。その後反応を炭酸水素ナトリウム水溶液(5% w/w, 100 mL)でクエンチして、有機層を分取し、水層をエーテル(100 mL)で抽出する。併せた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒をin vacuoで除く。残渣を、ヘキサン類(85%)- 酢酸エチル(15%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (11) を得る。
【0218】
〔実施例11: 化合物 (12) 〕
化合物 (11) (2.90 g, 6.75 mmol)をイソプロパノール(100 mL)に溶かし、硫酸水溶液(5.0 N溶液で10 mL)を加える。反応液を室温かつ不活性雰囲気下で終夜攪拌してから、エーテル(100 mL)と水(100 mL)を足して、有機層を分取する。水層をエーテル(2 X 50 mL)で抽出し、併せた有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液(5% w/w, 2 X 100 mL)で洗って硫酸ナトリウムで脱水する。有機層をin vacuoで蒸散させて、油状物質を得る。得られた物質はさらなる精製はせずに次の反応に用いる。
【0219】
〔実施例12: 化合物 (13) 〕
化合物 (12) (〜2.33 g, 〜6.75 mmol)をアセトン(100 mL)に0℃で溶かして、Jones試薬を、試薬の色がそのまま残るようになるまで、ゆっくりと滴下して加える。その後、エタノールを加えて余剰のJones試薬をクエンチし、混合液をエーテル(200 mL)と水(100 mL)に分配する。水層をエーテル(2 X 100 mL)で抽出し、併せた有機層を水(1 X 100 mL)で洗って硫酸ナトリウムで脱水する。溶媒をin vacuoで飛ばして、油状物質を得る。この油状物質を、酢酸エチル(30%)- ヘキサン類(70%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (13) を得ることができる。
【0220】
〔実施例13: 化合物 (14) 〕
化合物 (13) (1.93 g, 5.4 mmol)を燐酸(100 mL)へ加え、混合液を不活性雰囲気下で80℃に熱して2時間おく。混合液を冷却してから、氷水(200 mL)/塩化メチレン(100 mL)二相溶液中へ静かに注ぐ。有機層を分取して、水層を塩化メチレン(2 X 50 mL)で抽出する。併せた有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液(5% w/w, 2 X 100 mL)で洗い、MgSO4で脱水して、溶媒をin vacuoで飛ばす。残渣を、ヘキサン類(90%)- 酢酸エチル(10%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、ベンゾスベロン化合物 (14) を得る。
【0221】
〔実施例14: 化合物 (15) 〕
化合物 (14) (1.11 g, 3.25 mmol)のクロロホルム(5.0 mL)溶液を、還流させている臭化第二銅(1.5 g, 6.68 mmol)の酢酸エチル(5.0 mL)溶液に、滴下して加える。反応液をさらに6時間加熱してから、冷却してCeliteを通して濾過する。さらなる酢酸エチル(4 X 50 mL)でこのCeliteを洗い、併せた有機層をMgSO4で脱水して、溶媒をin vacuoで飛ばす。残渣を、ヘキサン類(95%)- 酢酸エチル(5%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (15) を得る。
【0222】
〔実施例15: 化合物 (16) 〕
鉱油中に60%で懸濁させた水素化ナトリウム(360 mg, 9.0 mmol)を、無水ジメチルホルムアミド(5 mL)に加えてから、アセトアミドマロン酸ジメチル(1.50 g, 7.5 mmol)の無水ジメチルホルムアミド(5 mL)溶液を加える。溶液を0℃で3時間攪拌してアニオンをつくらせて、化合物 (7) (1.10 g, 2.60 mmol)の無水DMF(5 mL)溶液を加え、溶液を室温にしてから終夜攪拌する。混合液を水(25 mL)中に注ぎいれ、氷浴中で1M 塩酸水溶液を使ってpH3まで酸性化して、酢酸エチル(4 X 25 mL)中へ抽出した。併せた有機層を塩水(25 mL)で洗い、MgSO4で脱水して、溶媒をin vacuoで除去した。残渣を、酢酸エチル(5%)- ヘキサン類(95%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (16) を得ることができる。
【0223】
〔実施例16: 化合物 (17) 〕
化合物 (16) (130mg, 0.25 mmol)を、トリエチルシラン(0.125 mL, 0.85 mmol)の塩化メチレン(2.0 mL)に室温で加える。四塩化チタン(0.01 mL, 0.85 mmol)を滴下して加え、得られた溶液を12時間攪拌する。反応液を0℃に冷却し、炭酸水素ナトリウム水溶液(5% w/w, 4 mL)をゆっくりと加えてクエンチする。有機層を取り除き、水層を塩化メチレン(2 X 5 mL)で抽出して、塩化マグネシウムで脱水し、in vacuoで濃縮する。残渣を、酢酸エチル(15%)- ヘキサン類(85%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (17) (88 mg, 0.18 mmol, 70%)を得ることができる。
【0224】
〔実施例17: 化合物 (18) 〕
小さなマグネシウム切片(〜5 mg)を、無水THF(5 mL)に0℃で入れ、二臭化エチレン(1滴)で活性化する。化合物 (17) (88 mg, 0.18 mmol)をTHF(2 mL)に溶かしたものを滴下して加え、反応液を室温にする。反応液を室温で2時間激しく攪拌し、エーテル(10 mL)と氷水(10 mL)に分配する。水層をエーテル(10 mL)で抽出して、併せた有機層をMgSO4で脱水し、溶媒をin vacuoで飛ばす。残渣はさらに精製せずに次の反応に用いる。
【0225】
〔実施例18: 化合物 (19) 〕
水素化硼素リチウム(THFでの2M溶液, 0.44 mL, 0.88 mmol)を、実施例16で調製した化合物 (18) (〜90 mg, 〜0.20 mmol)のTHF(5.0 mL)溶液に0℃で加える。反応混合液を室温で48時間攪拌したのち、酢酸エチル(10 mL)で希釈する。溶液を水(5 mL)で洗い、その後塩水(5 mL)で洗ってMgSO4で脱水してin vacuoで濃縮する。残渣を、メタノール(5%)- 塩化メチレン(95%)を使ったシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (19) を得ることができると考えられる。
【0226】
〔実施例19: 化合物 (20) 〕
化合物 (19) (28 mg, 0.075 mmol)を、メタノール(3.0 mL)とTHF(1 mL)と水酸化リチウム(45 mg, 1.1 mmol)を溶かした水(2 mL)との溶液に溶かす。反応液を50℃まで熱して5時間おき、酢酸エチル(10 mL)と水(5 mL)に分配する。水層を塩化メチレン(2 X 5 mL)で抽出し、併せた有機層を硫酸ナトリウムで脱水して、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物 (20) を得る。
【0227】
以下に挙げるアッセイは、当該技術分野で公知な標準的文献で報告されたアッセイであって、開示した化合物の活性を確認し定量するためのものである。
【0228】
〔実施例20: スフィンゴシンキナーゼアッセイ〕
組換え体スフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)は、関連プラスミドDNAをHEK293T細胞もしくはCHO K1細胞に導入することによって、マウスもしくはヒトの組み換え酵素の発現を強制することによって調製される。60時間後、細胞を採取し、破壊された非ミクロソーム(例えば溶解性の)画分が保持される。組み換え酵素を含む破壊細胞の上澄みを、試験化合物(FTY720、AA151、VIII、およびXVIIIなど)(5〜50μM)とγ-32P-ATPと混合し、37℃で0.5〜2.0時間インキュベートする。反応混合物中の脂質を有機溶媒に抽出し、順相薄層クロマトグラフィーで示す。放射性標識したバンドをオートラジオグラフィーで検出し、プレートから擦り取ってシンチレーション計数で定量化する。供試化合物は約50μMの濃度で用いる。インキュベーション時間は約20分である。
【0229】
〔実施例21: GTPγS-35バインディングアッセイ〕
このアッセイは、単独でのGタンパク質共役受容体(GPCR)のアゴニスト活性を説明する。このアッセイは、それぞれのタンパク質をコードする四つのプラスミドDNAを細胞に導入することによって、HEK293T細胞における、組み換えGPCR(例えばS1P1-5受容体)、およびヘテロ三量体Gタンパク質の三つのサブユニット(例えばα-i2、β-1、もしくはγ-2)の各々の発現を同時に強制する。導入から約60時間後、細胞を採取し、破壊して核を除去する。粗ミクロソームを残留物から精製する。ミクロソーム上の受容体-Gタンパク質複合体のアゴニスト(例えばS1P)刺激は、用量依存的なやり方でα-サブユニット上のGTPからGDPへの交換をもたらす。GTP結合α-サブユニットは、GDPに加水分解されない放射性核種(硫黄35)標識ホスホチオナートである、GTPアナログ(GTPγS-35)を用いて検出される。Gタンパク質が付着したミクロソームはろ過によって回収され、結合したGTPγS-35が液体シンチレーションカウンターで定量化される。アッセイは相対効力(relative potency:EC50値)と最大効価(maximum effect:有効性、Emax)を与える。アンタゴニスト活性は、一定量のアンタゴニストの存在下で、アゴニストの用量‐反応曲線の右方向のシフトとして検出される。アンタゴニストが競合的に作用する場合、受容体/アンタゴニストの対の親和性(Ki)を決定できる。このアッセイは、Davis, M. D., J. J. Clemens, T. L. Macdonald and K. R. Lynch (2005) "S1P Analogs as Receptor Antagonists", Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp. 9833-9841に記載されている。
【0230】
〔実施例22: リンパ球減少アッセイ〕
化合物(例えば一級アルコール)を2%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに溶解し、体重あたり0.01、1.0および10 mg/kgの投与量で強制経口投与によってマウス群に導入する。時間をおいた後(例えば24時間後、48時間後、もしくは96時間後)に、マウスを軽度麻酔して、ca. 0.1 mlの血液を眼窩静脈叢(orbital sinus)から採取する。リンパ球の数(マイクロリットルの血液あたり1000のオーダーで;通常は4-11)を、Hemavet blood analyzerを用いて測定した。
【0231】
〔実施例23: 心拍数アッセイ〕
マウスに、供試化合物(静注、3 mg/kg)もしくは媒体(2% ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)を投与し、投与1時間後に心拍数を測定した。心拍数は、ECGenieTMシステムを用いて、非拘束状態の意識のある動物で記録した。
【0232】
本発明は、上記のアッセイと方法のみに限定されるものと解釈されるべきではなく、その他の方法とアッセイも含むものと解釈されるべきである。これまでの記載に含まれていないが使用されたその他の方法は周知であり、化学、生化学、分子生物学、臨床医学の分野の当業者の権限内にある。当業者は、上記の手順を実施するのに、その他のアッセイと方法が利用可能であることがわかるだろう。
【0233】
上述した略語は、臨床、化学、および生物学の分野でのその従来の意味を有する。何らかの不整合があった場合には、本開示(そのうちのすべての定義を含む)が優先する。
【0234】
本明細書で参照したすべての特許、特許出願、および刊行物の各々が開示するところは、この参照によりその全体が本開示に正確に包摂される。本開示の例示的な実施形態について述べており、本開示の範囲内である可能な変形例が参照されている。本開示における、これら他の変形例および改変例は、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者にとって自明なものである。したがって、本開示および以下に述べる請求項は、本明細書に提示した例示的な実施形態には限定されない、ということを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式IA、IB、もしくはICの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、
【化42】

W1、X1、Y1、およびZ1が独立に、O、CRa, CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、
R1およびR2が独立に、水素原子、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、-NRaRb、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であり、
R1およびR2に関するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基が独立に、任意に全弗素置換されているか、あるいは、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換したものであり、ここで前記置換基は各々独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでR1とR2に関するアルキル基が持つ炭素原子のひとつ以上がそれぞれ独立に、過酸化物ではない酸素原子、硫黄原子、もしくはNRcで置換されたものであってもよく、R3に関するアルキル基が、任意に1個か2個のヒドロキシル基で置換されているか、あるいは、
R2が、下記の構造式II、構造式III、構造式IV、構造式V、もしくは構造式VIを有する基であってもよく、
【化43】


ここでR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14が各々独立に、O、S、C、CR15、CR16R17、C=O、N、もしくはNR18であり、
R15、R16、およびR17が各々独立に、水素原子、ハロゲン、(C1-C10)アルキル基、(C6-C10)アリール基、ハロゲン置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基、であって、R18は、水素原子もしくは(C1-C10)アルキル基であってよく、
Z2が、水素原子、ハロゲン、ハロ(C1-C10)アルキル基、シアノ基、 -NRaRb 、(C1-C20)アルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基、もしくは(C4-C10)ヘテロアリール(C1-C20)アルキル基であって、ここでZ2に関するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基は、任意に全弗素置換したものであるか、あるいは、1個、2個、3個、もしくは4個の置換基で任意に置換したものであってもよく、ここで前記置換基は各々独立に、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、(C1-C10)アルコキシ基、C6-アリール基、(C7-C24)アリールアルキル基、オキソ基(=O)、もしくはイミノ基(=NRd)であって、ここでZ2に関するアルキル基が持つ炭素原子のひとつ以上がそれぞれ独立に、過酸化物ではない酸素原子、硫黄原子、もしくはNRcで置換されてもよく、
【化44】

は、一個以上の任意付加的な二重結合を意味し、
Y2が、結合である(存在しない)か、O、S、C=O、もしくはNRc、CH2であって、W2が、結合であるか、-CH2-であってm=1, 2, 3であるか、または、(C=O)(CH2)1-5であってm=1であり、ここでW2には、過酸化物ではないO、S、C=O、もしくはNRcがあいだに任意に挟まり、
nが、0、1、2、もしくは3であり、
【化45】

の各々が、任意付加的な二重結合を表し、
qが、0、1、2、もしくは3であり、
R3が、水素原子、(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシル(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であり、
R4が、ヒドロキシル基(-OH)、燐酸基(-OPO3H2)、ホスホン酸基(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸基であり、
Ra、Rb、Rc、およびRdが各々独立に、水素原子もしくは(C1-C10)アルキル基である
ことを特徴とする、化合物。
【請求項2】
R1が、水素原子、弗素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、または、アリール置換アリールアルキル基、である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が、水素原子、トリフルオロメチル基、もしくは -CH2CF3である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R1が、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチル置換ベンジル基である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R2が下記の構造式を持つ、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【化46】

【請求項6】
R2が下記の構造式を持つ、請求項5記載の化合物。
【化47】

【請求項7】
R2が下記の構造式を持つ、請求項6記載の化合物。
【化48】

【請求項8】
R2が下記の構造式を持ち、
【化49】

ここで、Z2が、 (CH3)3C- 、 CH3CH2(CH3)2C- 、 CH3CH2CH2- 、 CH3(CH2)2CH2- 、 CH3(CH2)4CH2- 、 (CH3)2CHCH2- 、 (CH3)3CCH2- 、 CH3CH2O- 、 (CH3)2CHO- もしくは CF3CH2CH2- 、または、下記の構造式を持つ基である
【化50】

ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R2が下記の構造式を持つ、請求項8記載の化合物。
【化51】

【請求項10】
R2が下記の構造式を持つ、請求項9記載の化合物。
【化52】

【請求項11】
R2が下記の構造式IIIを持つ、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【化53】

【請求項12】
R2が下記の構造式を持つ、請求項11記載の化合物。
【化54】

【請求項13】
R2が、(C1-C20)アルキル基もしくは(C1-C20)アルコキシ基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
R2が、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、および(C2-C14)アルキニル基、あるいは、カルボニル基(C=O)もしくはオキシム基(C=NRd)で任意に置換した(C1-C10)アルコキシ基である、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
R2が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
X1、Y1、およびZ1の各々が、CH2である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R3が、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、もしくはイソプロピル基である、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
R3が、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
下記の構造式を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【化55】


【請求項20】
スフィンゴシン=1-燐酸受容体の活性に関与しており前記活性の作動が望まれる、哺乳類の症状もしくは症候を抑止または処置するための方法であって、
前記哺乳類に、請求項1-19のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与するステップ
を含む、方法。
【請求項21】
前記症状が、自己免疫疾患である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、もしくは多発性硬化症である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記症状が、リンパ球動態を変化させる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記処置が、リンパ球動態を変化させる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
リンパ球動態により、同種移植片生着が延びる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記同種移植片が、移植術のためのものである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
S1Pリアーゼ活性が関与し前記S1Pリアーゼの阻害が望まれる、哺乳類の症状もしくは症候を抑止または処置するための方法であって、
前記哺乳類に、請求項1-19のいずれか一項に記載の化合物の有効量を投与するステップ
を含む、方法。
【請求項29】
医療に用いるための、請求項1-19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
請求項1-19のいずれか一項に記載の化合物を使って、スフィンゴシン=1-燐酸受容体の活性に関与する哺乳類の症状もしくは症候を抑止または処置するうえで有用な医薬を調製する、使用方法。
【請求項31】
前記医薬がキャリアを含む、請求項30記載の使用方法。
【請求項32】
前記キャリアが液体である、請求項31記載の使用方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−510251(P2010−510251A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537422(P2009−537422)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/085433
【国際公開番号】WO2008/064337
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】