説明

スブチリシン変異体を含有する組成物と使用法

本発明は洗浄用途に特に良く適合したスブチリシン変異体を与える。特に、本発明は、バシラス属の種のスブチリシンの変異体とこの変異体を含有する洗浄組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用途にとりわけ良く適したスブチリシン変異体を提供する。特に、本発明は、バシルス属の種のスブチリシン変異体とこの変異体を含有する洗浄組成物を提供する。
【0002】
本願は2008年11月11日に出願された米国仮特許出願第61/113,552号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
一般に、伝統的な家庭用及び産業用の食器洗浄用組成物は、食器の汚染除去と衛生のための強アルカリ性の洗剤による洗浄と塩素漂白剤に頼っている。そのような系は一般に漂白を受けえる汚れには良く働く。しかし、家庭、病院、カフェテリア、仕出し業の食器で良く見られるタンパク質を含む汚れの除去は問題である。加えて、非常に強いアルカリと塩素を含有する組成物は消費者や環境に優しいとはいえない。
【0004】
タンパク質の汚れの除去に効果的な食器洗浄用組成物を作るため色々な試みが行われてきた。これらの組成物は通常アルカリ性の条件下(例.pH9.5以上)で活性なプロテアーゼを含有する。しかし、そのような組成物は消費者が食器用洗剤に普通好む液体またはゲルの形態で処方することが困難である点で大きな欠点があった。加えて、アルカリ性の食器洗浄用組成物はしばしば刺激物とみなされる。
【0005】
低pH(例.9.5未満のpH)の食器洗浄用組成物を作るためにいくつか試みが行われた。これらの組成物は、より安全で、より環境に優しく、ゲルや液体状に処方できる。しかし、現在の低pH食器洗浄用組成物は、たとえ、高濃度の酵素(例.プロテアーゼ)が食器洗浄用組成物に配合されても、タンパク質の汚れを落とすことに非常に効果が低いことが分かっている。
【0006】
そのため、この技術分野では食器からタンパク質の汚れを効果的に落とす食器洗浄用組成物が依然求められている。さらに、もっと環境や消費者に優しく、かつ使いやすい形態であり、費用効率の良い食器洗浄用組成物も依然求められている。
【0007】
同様に、布地からタンパク質の汚れを効果的に落とす布地用の洗浄用組成物がまだ求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は洗浄用組成物での使用に特に適したバシルス属の種のスブチリシン変異体を提供する。また、本発明はこのスブチリシン変異体を含有する洗浄用組成物を提供する。
【0009】
本発明は配列番号第5に表されたアミノ酸配列を含むスブチリシン変異体を提供する。いくつかの好ましい実施態様では、本発明は配列番号第5(SEQID NO:5)に表されたアミノ酸配列を有するスブチリシン変異体を含有する組成物を提供する。いくつかの特に好ましい実施態様では本組成物は洗浄組成物である。いくつかの好ましい他の実施態様では、この洗浄組成物は洗濯用洗剤であり、いくつかの他の好ましい実施態様では、この洗浄組成物は、食器洗浄用洗剤である。いくつかの実施態様では、この食器洗浄用洗剤は自動食器用洗浄機用洗剤であり、他の実施態様では、それらは手洗いの食器洗浄用洗剤である。いくつかの好ましい実施態様では、この洗浄組成物は液体洗剤であり、他の実施態様では、この洗浄組成物はゲル、錠剤、粉末又は顆粒の洗剤である。いくつかの実施態様では、この洗浄組成物はリン酸塩を含まない、他の実施態様ではこの洗浄組成物はリン酸塩を含有する。いくつかの好ましい実施態様では、この洗浄組成物は、さらに少なくとも1個の漂白剤を含有する。いくつかのさらに好ましい実施態様では、この洗浄組成物はさらに少なくとも1個の追加の酵素を含有する。いくつかの実施態様では、この追加の酵素は、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、パーオキシダーゼ、プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクテートリアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ及びアミラーゼ又はそれらの混合物から選ばれる。
【0010】
本発明は、また洗浄を受ける物と配列番号第5に表されたスブチリシン変異体を含む組成物の提供、前記の物と前記組成物との接触を含む、洗浄の方法も提供する。いくつかの更なる実施態様では、この方法はさらに洗浄を受ける前記物を濯ぐ段階を含む。いくつかの追加の実施態様では、当該物は食器類又は布地である。
本発明の説明
【0011】
本発明は洗浄用途に特に良く適したスブチリシン変異体を提供する。特に、本発明はバシルス属の種のスブチリシンの変異体とこの変異体を含有する洗浄組成物を提供する。本発明はさらに、現在使用されているスブチリシンプロテアーゼと比較して、匹敵する又は改善された洗浄性能をもつ酵素組成物を提供する。
【0012】
別に記載されていない場合、本発明の実施は、分子生物学、微生物学、タンパク質精製、タンパク質工学、タンパク質とDNAの配列決定、組換DNAの分野及び産業用の酵素の使用と開発で普通使用される従来の技術を含み、これらの全ては、本技術分野の当業者に知られている。
【0013】
さらに、本明細書の見出しは、全体として明細書を見て把握しうる発明の様々な面や実施態様を限定するものではない。したがって、直ぐ後に定義する用語は、明細書を全体的に見ることによって、より十分に定義される。それにも拘らず、本発明の理解を容易にするため、多くの用語の定義を以下に記載する。
【0014】
本明細書で別途定義されている場合を除き、本明細書で使用されている全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野の普通の技術者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に述べられているものと類似又は同等の方法や物質は本発明の実施で使用されるが、好ましい方法と物質は本明細書に述べられている。従って、直ぐ後に定義される用語は全体として明細書を参照することによってより十分に記述される。また、本明細書で用いられる場合、単数の表記は、文脈から明らかに異なる場合を除き、複数も含む。別に記載されていない場合、核酸は5’から3’の向きへ左から右へ記載される。;アミノ酸配列はアミノ基からカルボン酸の向きへ左から右へ記載される。本発明は特定の記載された方法論、プロトコール、及び試薬に限定されないことが理解されるべきである。なぜなら、これらはこの分野の技術者により用いられる状況に応じて変わっても良いからである。
【0015】
本明細書全体で定められている全ての最大数の限度は、あたかも本明細書でそのより低い数による限度が明示して記載されているかのように、全てのより低い数による限度を含む。本明細書全体で定められている全ての最小の数的限度は、あたかもそのより大きい数的限度が本明細書で明示的に記載されているかのように、全てのより大きい数的限度を含む。本明細書全体で定められている全ての数的範囲は、あたかもそのより狭い範囲が、全て明細書に明示して記載されている場合のように、その広い範囲内に入る全てのより狭い数的範囲を含むであろう。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「適合性の」は、洗浄組成物の材料が、正常な状況で使用したときに、本明細書に記載されたプロテアーゼが望ましい程度よりも効果が低くなる程には、プロテアーゼの酵素活性を低下させないことをいう。特定の洗浄組成物の材料は後に詳細に例示される。
【0017】
本明細書で使用する場合、「有効量の酵素」は特定の用途で求められる酵素活性を達成するために必要な酵素量をいう。そのような有効量は本技術分野の普通の技術者により容易に確認でき、使用される特定の酵素変異体、洗浄用途、洗浄組成物の特定の組成、及び液体又は乾燥(例えば、顆粒)組成物が求められているか否か等のような、多くの因子に基づいている。
【0018】
本明細書で使用する場合、「プロテアーゼ変異体」と関連して使用される「改善された特性を有する」は、対応する野生型のプロテアーゼと比較して性能が改善された、および/又は性能を維持して安定性が改善されたプロテアーゼ変異体をいう。いくつかの特に好ましい実施態様では、この改善された性質は、改善された食器洗い及び/又は洗濯性能、改善された安定性、また改善された食器洗い及び/又は洗濯性能と改善された安定性の組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「洗剤の安定性」という語句は、洗剤の組成物の安定性をいう。いくつかの実施態様では、この安定性は洗剤を使用している間に評価されるが、他の実施態様ではこの用語は貯蔵時の洗剤組成物の安定性をいう。
【0020】
用語「改善された安定性」は貯蔵時の組成物におけるプロテアーゼ変異体のより良い安定性及び/または石鹸水におけるより良い安定性をさすために使用される。好ましい実施態様では、本プロテアーゼ変異体は貯蔵中、皿用及び/又は洗濯用洗剤において改善された安定性を示し、及び/又は石鹸水における改善された安定性をしめし、これは、対応する野生型酵素と比べたときの、酸化剤、封鎖剤、自己分解、界面活性剤と高アルカリ性に対する安定性を含む。
【0021】
本明細書で使用するとき、「タンパク質分解に対する安定性」という語句はタンパク質分解に耐えるタンパク質(例えば、酵素)の能力をいう。この用語は、タンパク質の安定性を評価するために何れかの特定のプロテアーゼの使用に限定することは意図されていない。
【0022】
本明細書で使用する場合、「酸化的安定性」は酸化的条件下でタンパク質が機能する能力をいう。特に、この用語は種々の濃度のH2O2、過酸及び他の酸化剤の存在下でタンパク質が機能する能力を言う。種々の酸化的条件下での安定性は本技術分野の者に知られている標準的手順及び/又は本明細書に述べられた方法の何れかによって測定できる。酸化的安定性の大きな変化は、酸化性化合物が存在しない場合の酵素活性と比べたとき、酵素活性の半減期の少なくとも約5%以上の増加又は低下(殆どの実施態様では、これは増加が好ましい)によって立証される。
【0023】
本明細書で使用する場合、「pH安定性」は、特定のpHでタンパク質が機能する能力をいう。一般的に、殆どの酵素はそれが機能する有限の範囲のpHを持っている。中間的な範囲のpH(7周辺)で機能する酵素に加えて、非常に高い又は非条に低いpHの条件で働きうる酵素がある。種々のpHでの安定性は本技術分野の者に知られた標準的手順及び/又は本明細書に記載された方法のいずれかにより測定できる。pH安定性の大きな変化は、酵素の最適のpHでの酵素活性と比較して、酵素活性の半減期が少なくとも約5%以上の増大又は減少(殆どの実施態様では、増大が好ましい)することにより立証される。しかし、本発明をいずれかのpH安定性水準あるいはpH範囲に限定することは意図していない。
【0024】
本明細書で使用する場合、「熱安定性」は、タンパク質が特定の温度で機能する能力をいう。一般的に、大抵の酵素はそれが機能する有限の温度範囲を持っている。中間的な範囲の温度(例えば、室温)で働く酵素に加え、非常に高い又は非条に低い温度で働くことができる酵素がある。熱安定性は既知の手順又は本明細書に述べられた方法の何れかにより測定できる。熱安定の大きな変化は、所定の温度に晒されたときに変異体の触媒活性の半減期の約5%以上の増大又は減少(殆どの実施態様では増大が好ましい)により立証される。しかし、本発明をいずれかの温度安定性水準又は温度範囲に限定する意図はない。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「化学的安定性」は、タンパク質の活性に悪い影響を及ぼす化学試薬に対するタンパク質(例えば、酵素)の安定性を言う。いくつかの実施態様ではこのような化学試薬は、過酸化水素、過酸、アニオン性洗剤、カチオン性洗剤、非イオン性洗剤、キレート剤等を含むが、これらに限定されない。しかし、本発明をいずれかの特定の化学的安定性水準又は化学的安定性の範囲に限定する意図はない。
【0026】
本明細書で使用する場合、「精製された」と「単離された」はサンプルから汚染物質を除くことを言う。例えば、目的の酵素は、溶液または調製品内の目的の酵素ではない、汚染するタンパク質と他の化合物を除去することにより精製される。いくつかの実施態様では、目的の組換酵素は、細菌または菌類の宿主細胞で発現され、そして目的物であるこれらの組換酵素は他の宿主細胞の構成成分の除去により精製される。そのようにして、サンプル中で目的とするポリペプチドである組換酵素のパーセントが高められる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「目的タンパク質」は、分析を受け、同定され及び/または修飾を受けるタンパク質(例えば、酵素または「目的酵素」)をいう。天然のタンパク質も組換(例.「変異体」)タンパク質と同様、本発明で使用される。本明細書で使用する場合、「タンパク質」はアミノ酸からなり、本技術分野の技術者によりタンパク質として識別される組成物である。用語、「タンパク質」、「ペプチド」と「ポリペプチド」は本明細書では相互に変換されて使用される。ペプチドがタンパク質の一部である場合、本技術分野の技術者は文脈からこの用語の意味を理解する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「発現ベクター」は、適した宿主にDNAを発現することができる適した調節配列と機能的に連結しているDNA配列を含むDNA構造体をいう。そのような調節配列は転写を行わせるプロモーター、その転写を調節する任意のオペレーター配列、適したmRNAリボゾーム結合部位をコードする配列及び転写及び翻訳の終了を調節する配列を含む。ベクターはプラスミド、ファージ粒子、または単にゲノムへの挿入体になりうるものでも良い。適した宿主が形質転換された後は、このベクターは複製し、宿主のゲノムと独立して機能しても良く、または、ある実施態様では、ゲノムに組みこまれても良い。本明細書では、「プラスミド」、「発現プラスミド」と「ベクター」は相互に変換されて使用されることが多い。なぜなら、プラスミドは現在、ベクターの最も良く使用されている形態であるからである。しかし、本発明は、同等に機能し、かつ本技術分野で知られているまたは、知られるに至った他の形態の発現ベクターを含むことを意図している。
【0029】
いくつかの好ましい実施態様では、プロテアーゼ遺伝子は適した発現プラスミドに連結される。その後このクローン化されたプロテアーゼ遺伝子はこのプロテアーゼ遺伝子を発現するために宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするために使用される。このプラスミドは、プラスミドの複製に必要な良く知られた因子を含むときは、複製し、またはプラスミドが宿主の染色体に組み込まれるようにデザインされても良い。効率的な遺伝子発現のために、必要な因子(例えば、目的の遺伝子に機能的に連結されているプロモーター)が与えられる。いくつかの実施態様では、これらの必要な因子は、もし認識されるなら(つまり、宿主により転写されるなら)、その遺伝子自らの相同なプロモーターとして、また、外来性の、またはプロテアーゼ遺伝子の固有の、ターミネーター領域により提供される転写ターミネーターとして与えられる。いくつかの実施態様では、抗生物質を含有する培地での増殖によりプラスミド-感染宿主の連続培養の継続を可能にする抗生物質耐性遺伝子のような選別遺伝子もまた含まれる。
【0030】
以下のカセット変異誘発法は、他の方法も使用されても良いが、本発明のプロテアーゼ変異体の構築を容易にするために使用されても良い。先ず、本明細書で述べられているとおり、このプロテアーゼをコードする天然の遺伝子を得、全体または一部の配列を決定される。次に、この配列は、その遺伝子がコードされたプロテアーゼにおいて一以上のアミノ酸について変異(例.欠失、挿入または置換)を形成することを望む位置について走査される。この点を挟む配列が、発現時には、種々の変異体をコードするオリゴヌクレオチドプールにより、短い遺伝子断片を置き換えるための制限部位の位置について評価を受ける。このような制限部位は、好ましくはこのタンパク質遺伝子内の特有の部位でありその結果、この遺伝子断片の置き換えは容易になる。しかし、制限部位の切断により生じるいくつかの遺伝子断片が、適した配列で再び構成されえるならば、このプロテアーゼ遺伝子内のそれほど過剰ではない、いずれかの都合の良い制限部位が用いられても良いかもしれない。もし、選択された部位から便宜な距離の範囲内(約10から約15ヌクレオチド)の位置に制限部位がない場合、そのような部位は、リーディングフレーム(reading frame)やコードされたアミノ酸のいずれも最終の構造体では変わらない方法で、この遺伝子中のヌクレオチドを置換することにより形成される。この目的とする配列に合うようにその配列を変えるための遺伝子の変異は、一般的に知られている方法に従うプライマー伸長により成し遂げられる。適したフランキング領域の決定と2個の便宜な制限部位の配列を得るため必要な変異を評価することは遺伝子コードの重複、この遺伝子の制限酵素マップ及び多くの異なる制限酵素により日常的な作業となっている。もし1つの便宜な、変異点を挟む制限部位が利用できるならば、上記方法は、そのような部位のないフランキング領域に関してのみ使う必要があることに留意されたい。天然のDNA及び/または合成DNAがクローンされた後は、変異を受けるべき位置を挟む制限部位は、同系の制限酵素により切断され、多数の末端が相補的であるオリゴヌクレオチドのカセットがこの遺伝子に連結される。この変異誘発は本法により単純化されている。なぜなら、全てのオリゴヌクレオチドが同一の制限部位をもつように合成でき、制限部位を形成するための合成リンカーは必要ないからである。
【0031】
本明細書で使用する場合、「相当する」は、タンパク質またはペプチドの記載された位置にある残基、またはタンパク質またはペプチド中の記載された残基と類似、相同または等価である残基をいう。本明細書で使用する場合、「相当する領域」は一般的に関連するタンパク質または対照タンパク質における類似の位置をいう。
【0032】
用語「核酸分子エンコーディング」、「核酸配列エンコーディング」、「DNA配列エンコーディング」及び「DNAエンコーディング」は、デオキシリボ核酸の分子鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列をいう。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序はポリペプチド(タンパク質)分子鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。従ってこのDNA配列は、アミノ酸配列をコードしている。
【0033】
本明細書で使用する場合、「野生型」と「固有」のタンパク質は、自然界に見出されるものである。この用語「野生型配列」と「野生型遺伝子」は、宿主細胞で固有なまたは自然に発生する配列を指すため、本明細書では相互に変換して使用される。いくつかの実施態様では、野生型配列は、タンパク質工学の計画の開始点である目的配列である。自然に生じるタンパク質をコードする遺伝子は、本技術分野の技術者に知られている一般的方法に従って得ても良い。この方法は一般的に、目的タンパク質の領域をコード化している推定した配列をもつ標識をつけたプローブを合成し、このタンパク質を発現する生物から遺伝子ライブラリーを合成し、目的の遺伝子を得るため、このプローブとのハイブリッド形成によりライブラリーをスクリーニングすることを含む。標識によりハイブリッド形成が確認されたクローンは次に地図が作成され、配列決定される。
【0034】
用語「組換えDNA分子」は、本明細書で使用される場合、分子生物学的技術によりDNAの断片を結合することからなるDNA分子をいう。用語「組換オリゴヌクレオチド」は、分子生物学的操作(ポリヌクレオチド配列を制限酵素により切断することにより作成された2以上のオリゴヌクレオチド配列を連結すること、オリゴヌクレオチド(例.プライマーまたはオリゴヌクレオチド)の合成等を含むが、これらに限定されない)を使用して作成されたオリゴヌクレオチドをいう。
【0035】
本明細書で使用する場合、「等価の残基」は特定のアミノ酸残基が共通するタンパク質をいう。例えば、等価の残基は三次構造がX-線結晶解析により決定されたタンパク質(例.プロテアーゼ)の三次構造の水準において相同性を決定することにより決定されても良い。等価の残基は、位置あわせの後、推定上等価の残基をもつタンパク質のアミノ酸残基中の2個以上の主鎖の原子座標と目的タンパク質のそれが約0.13nm以内、好ましくは約0.1nm以内にある残基と定義される。最良のモデルの向きが決められ、位置が決められた後、位置合わせは、分析を受けるタンパク質の水素以外のタンパク質の原子の原子座標の重なりが最大になるように行われる。この好ましいモデルは、得られる最高の分解能での実験の回折データについて最小のR因子を与える結晶学的モデルであり、結晶学とタンパク質の特性解析/分析の分野の技術者に知られている方法を用いて決定される。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「調節因子」は核酸配列の発現のいくつかの面を制御する遺伝子因子をいう。例えば、プロモーターは機能的に連結したコード領域の転写の開始を促す調節因子である。他の調節因子は、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル及び終止シグナルを含む。
【0037】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は一般的に本技術分野で知られている組換えDNA技術を用いて形成されたベクターにより形質転換またはトランスフェクションされた原核または真核宿主である。形質転換された宿主細胞は変異タンパク質をコードするベクターを複製でき、または望みの変異タンパク質を発現することができる。この変異タンパク質の前駆体またはプレプロ体をコードするベクターの場合、そのような変異体が、発現されたとき、宿主細胞から宿主の培地へ分泌されるのが一般的である。
【0038】
細胞へ核酸配列を挿入する場合に使用するとき、用語「導入された」は、形質転換、形質導入、またはトランスフェクションを意味する。形質転換の方法は、例えば、プロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈殿、電気穿孔法、裸のDNA等の本技術分野で知られているいずれかの適当な方法を含むが、これらには限定されない(例えば、Chang and Cohen, Mol Gen Genet, 168:111-115,1979; Smith ら., Appl Env Microbiol,51:634,1986; 及びFerrari ら, HarwoodのBacillus, Plenum Publishing Cooporation, pp.57-72,1989)。
【0039】
用語「プロモーター/エンハンサー」はプロモーターとエンハンサー機能の両者を与えることができる配列を含むDNA断片を言う。エンハンサー/プロモーターは「内因性」または「外来性」または「異種」でもよい。内因性エンハンサー/プロモーターはゲノム内のある遺伝子に天然に連結しているものである。外来性の(異種の)エンハンサー/プロモーターは、遺伝子操作(つまり、分子生物学的技術)により遺伝子の近傍に置かれたものである。
【0040】
発現ベクター上の「スプライシングシグナル」が存在すると、組換転写物のより高い水準の発現に至ることが多い。スプライシングシグナルは一次のRNA転写物からイントロンを除去することを媒介するもので、スプライスドナー(a splice donor)とアクセプター部位からなる(例えば、Sambrook ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, pp.16.7-16.8,1989参照)。
【0041】
用語「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」はトランスフェクションを受ける細胞のゲノムに外来のDNAを導入または組み入れることをいう。用語「安定なトランスフェクト体」はトランスフェクトを受けた細胞のゲノムDNAヘ他のまたは外来のDNAを安定的に組み入れた細胞を言う。
【0042】
用語「選択マーカー」または「選択遺伝子産生物」は、本明細書で使用される場合、選択マーカーが発現された細胞に抗生物質または医薬品への耐性を与える酵素活性をコードする遺伝子を使用することをいう。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「増幅」と「遺伝子増幅」は特定のDNA配列が不均一に複製されその結果、増幅された遺伝子がゲノム中に最初に存在した数よりも多くのコピー数で存在するようになることをいう。いくつかの実施態様では、医薬品(例.阻害され得る酵素の阻害剤)存在下での増殖による細胞の選別はこの医薬品の存在下での増殖に必要な遺伝子産生物をコードする内因性の遺伝子の増幅またはこの遺伝子産生物をコードする外来性(つまり、投入された)配列の増幅、又は両者に至る。
【0044】
「増幅」は鋳型の特異性を含む核酸の複製の特別な場合である。これは非特異的鋳型複製(つまり、鋳型に依存的するが、特定の鋳型には依存しない複製)と反対である。鋳型特異性は、本明細書では、複製の正確性(つまり、適当なポリヌクレオチド配列の合成)とヌクレオチド(リボ-、またはデオキシリボ-)特異性とは区別される。鋳型特異性は、「目標」特異性の点で、述べられることが多い。目標配列は、それらが他の核酸から選別されることが求められている意味で「目標」である。増幅技術は主にこの選別のためにデザインされてきた。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「増幅可能なマーカー」、「増幅可能な遺伝子」及び「増幅ベクター」は適当な増殖条件下で、その遺伝子が増幅するマーカー、遺伝子または遺伝子をコードするベクターをいう。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「増幅可能な核酸」はいずれかの増幅方法より増幅される核酸を言う。「増幅可能な核酸」には普通「サンプル鋳型」を含むことが意図されている。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「サンプル鋳型」は「目標」(下記に定義)の存在について分析を受けるサンプルから作った核酸をいう。反対に、「背景鋳型」はサンプルに有るかもしれない、または無いかもしれないサンプル鋳型以外の核酸をいうために使用される。背景鋳型は最も多くは不注意の結果である。それは持ち越しの結果で有るかも知れず、またはサンプルから精製除去されるべき核酸汚染物の残存によるかもしれない。例えば、検出されるべき以外の生物由来の核酸が試験サンプルに背景として存在したのかも知れない。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「プライマー」は、精製された制限酵素による切断生成物のような自然的に生成するもの或いは合成的に生成されたものでも良い、オリゴヌクレオチドをいい、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長生成物の合成が誘導される条件下(つまり、ヌクレオチド、DNAポリメラーゼのような誘導試薬の存在、適当な温度とpHの存在)に置かれたとき、合成の開始点として作用できるものである。このプライマーは増幅における最大の効率を得るために一本鎖が好ましく、しかし、そうではなく二重鎖でも良い。二重鎖ならば、プライマーは伸長生成物を合成するため使用される前にその分子鎖を分離するために先ず処理を受ける。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは誘導試薬の存在下、伸長生成物の合成を開始するために十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマー源、使用する方法等の多くの因子により決まる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「プローブ」は、精製された制限酵素による切断生成物のような自然的に生成するもの或いは合成的に、組換えにより、またはPCR増幅によりに調製されるものでも良いオリゴヌクレオチド(つまり、ヌクレオチドの配列)をいい、目的の別のオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成できるものである。プローブは一本鎖または二重鎖でも良い。プローブは特定の遺伝子配列の検出、同定及び単離に有用である。本発明で使用されたいずれのプローブも、いずれかの「レポーター分子」で標識されて、酵素(例.酵素に基づく組織化学的分析やELIZA)、蛍光、放射線及び発光系を含むがこれらに限定されない、いずれかの検出システムで検出できるようにすることが考えられている。本発明を何れかの特定の検出システムまたは標識に限定することは意図していない。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「目標」は、増幅方法(例.ポリメラーゼ連鎖反応)について使用される場合、ポリメーラーゼ連鎖反応に使用されるプライマーにより結合される核酸領域をいう。従って、この「目標」は他の核酸配列から選別されることが求められる。「断片」は目標配列内のある領域の核酸として定義される。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「ポリメラーゼ連鎖反応」と「PCR」は米国特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,965,188号の方法をいい、これはクローニングや精製せずにゲノムのDNAの混合物中にある目標である断片の濃度を高くする方法を含む。これらの方法は本技術分野の者に良く知られている。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「増幅試薬」はプライマー、核酸鋳型及び増幅酵素以外の増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド3リン酸、緩衝液など)をいう。典型的には他の反応成分とともに増幅試薬が加えられ、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入る。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」と「制限酵素」は細菌酵素をいい、それらのそれぞれは特定のヌクレオチド配列でまたは近傍で二重鎖のDNAを切断する。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「洗浄組成物」は、洗浄用途で使用されるいずれかの組成物をいう。この用語は、(別に記載が無い限り)顆粒または粉末の全用途用または「重質の」洗浄剤(例.洗濯洗剤)、液体、ゲル、またはペーストの全用途用洗浄剤(例.「重質液体」洗剤)、液体及び粉末の繊細な-布地用洗剤、錠剤、顆粒、液体洗剤等の手洗いの皿洗い用洗剤、軽質皿洗い洗剤(例.高発泡性洗剤)、皿洗い機用洗剤(つまり、「自動皿洗い洗剤」)、家庭用及び施設用の濯ぎ軽減洗剤、液体洗浄・消毒剤(例.抗菌性手洗い用石鹸)、洗濯バー、口腔洗浄剤、義歯洗浄剤、自動車用洗浄剤、カーペット用洗剤、浴室洗浄剤、ヒトや他の動物用の髪用洗剤、ヒトや他の動物用のヘヤーリンス、シャワーゲル、バスゲル、フォームバス(foam bath)及び金属洗浄剤、及び洗浄補助製品(例.漂白添加剤、洗濯用添加剤、「ステインスティック」と他の前処理用製品等の前処理用組成物)を含むことを意図している。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「洗剤組成物」と「洗剤調合品」は汚れたものの洗浄用洗浄媒体中での使用が意図されている混合物を指すために使用される。好ましい実施態様では、この用語は洗濯物、皿、刃物類等(例.「皿洗い用洗剤」)を洗浄するために使用される洗剤を指して使用される。本発明はいずれかの特定の洗剤調合物または組成物に限定することを意図してない。実際、本発明の少なくとも一個のプロテアーゼを含む洗剤に加えて、本用語は界面活性剤、トランスフェラーゼ、加水分解性酵素、酸化還元酵素、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、青み剤と蛍光性染料、ケーキング防止剤、遮蔽剤、酵素活性剤、抗酸化剤及び溶解剤を含む洗剤を含む。
【0056】
本明細書で使用する場合、「皿洗い組成物」は、粉末、錠剤、ゲル、顆粒及び液体形態を含むがこれらに限定されない、刃物類を含む食器類を洗浄するための全ての形態の組成物をいう。本発明をいずれか特定の種類の食器用組成物に限定する意図はない。実際、本発明は、陶器、プラスチック、金属、磁器、ガラス、アクリルなどを含みこれらに限定されない何れかの材料製の食器類(例. 皿であって、プレート、カップ、グラス、ボール等を含むがこれらに限定されない)及び刃物類(例.スプーン、ナイフ、フォーク、盛り付け用用具(serving utensils)など)の洗浄で使用される。用語「食器類」は本明細書では皿類と刃物類の両方をさす。
【0057】
用語「関連する洗浄条件」は皿または布地用洗剤市場において、実際に家庭で使用されている条件、特に洗浄温度、時間、洗濯機、石鹸水の濃度、洗剤の種類及び水の硬度を指すため使用される。
【0058】
用語「改善された皿洗浄性能」は、関連する洗浄条件下で食器類、刃物類または布地から汚れを除去する際により良い結果が得られること、または、対応する野生型酵素と比べて同一の最終結果を得るために重量ベースでより少量のプロテアーゼで間に合うことをいうために使用される。
【0059】
用語「維持された洗浄性能」は変異プロテアーゼ酵素の洗浄性能が、関連する洗浄条件下で対応する野生型プロテアーゼと比較して、重量ベースで少なくとも約80%であることをいうために使用される。
【0060】
プロテアーゼの洗浄性能は適した試験条件下である代表的な汚れを取るその能力により便宜良く測定される。これらの試験系では、他の関連する因子、例えば、洗剤の組成、石鹸の濃度、水の硬度、洗濯機、時間、pH、及び/または温度は、ある市場分野(例.食器洗い、布地洗浄等)において家庭での使用時の典型的な条件が模倣されるように調節できる。本明細書に述べられた実験的使用試験系は、DNA変異誘導により修飾されたタンパク質分解性酵素が使用されるときの家庭での使用を代表している。従って、本明細書に記載された方法は多くの異なる酵素の試験と特定のタイプの洗剤用途に特に適した酵素の選択を容易にする。このようにして、特定の使用条件用に「注文生産される」酵素が容易に選択される。
【0061】
用語「洗浄活性」はタンパク質分解性、加水分解性洗浄または本発明の他のプロセスの間に使用される条件下でプロテアーゼにより達成される洗浄性能をいう。いくつかの実施態様では、洗浄性能は、汚れ、例えば、草、血液、牛乳、または卵タンパク質に感受性のある酵素に関して、種々の洗浄分析の適用により決定されるが、これは、汚れを標準的洗浄条件に晒した後、種々のクロマトグラフィーによる、分光光度計による、または他の定量的方法論により決定されるようにされる。分析の例は、実施例に含まれる方法のほかWO99/34011、及び米国特許第6,605,458号(これらの両方は引用により本明細書に組み入れられる)に述べられているものを含むがこれらに限定されない。
【0062】
用語「洗浄有効量の」プロテアーゼは特定の洗浄組成物における酵素活性の希望する水準を達成する既に述べたプロテアーゼの量をいう。そのような有効量は本技術分野の普通の技術者により容易に確認され、使用するプロテアーゼ、洗浄用途、洗浄組成物の特定の組成、液体の、ゲルのまたは乾燥組成物(例.顆粒、バー)が必要か否か等のような多くの因子に基づく。
【0063】
用語「洗浄用添加材料」は、本明細書で使用する場合、希望する洗浄組成物の種類と製品の形態(例.液体、顆粒、粉末、バー、ペースト、スプレー、錠剤、ゲル;または、泡組成物)について選ばれたいずれかの液体、固体または気体材料をいい、これらの材料はまた、この組成物中で使用されるプロテアーゼ酵素に好ましくは適合する。いくつかの実施態様では、顆粒組成物は「コンパクト」な形態であり、他の実施態様では、液体組成物は「濃縮された」形態である。
【0064】
本明細書で使用する場合、「低洗剤濃度」系は洗浄水に約800ppm未満の洗剤組成物が含まれている洗剤を含む。日本の洗剤は、普通約667ppmの洗剤組成物を洗浄水に含むので典型的には低洗剤濃度系と考えられる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「中間的洗剤濃度」系は、約800ppmと約2000ppmの間の洗剤組成物が洗浄水に含まれる洗剤を含む。北アメリカの洗剤は、普通約975ppmの洗剤成分が洗浄水に含まれることから中間的洗剤濃度であると一般的に考えられている。ブラジルの洗剤は洗浄水に約1500ppmの洗剤組成物を含む。
【0066】
本明細書で使用する場合、「高洗剤濃度」系は約2000ppmより高い洗剤組成物が洗浄水に含まれる。ヨーロッパの洗剤は、洗浄水に約3000-8000ppmの洗剤組成物が含まれるので、一般的に高洗剤濃度系であるとみなされる。
【0067】
本明細書で使用する場合、「布地洗浄組成物」、「洗濯洗浄組成物」及び「洗濯洗剤」は汚れた衣類及び/または布地の洗浄用の組成物をいう。粉末、錠剤、ゲル、顆粒及び液体状等のいずれの形態も本発明に含まれる。本発明はいずれの種類の衣類及び/または布地に限定することを意図されていない。これらの用語は、洗濯用添加組成物と汚れた布地(例.衣類、リネン及び他の布地素材)の浸漬及び/または予備処理での使用に適した組成物を含む手洗い用及び洗濯機用洗剤組成物を含む。
【0068】
本明細書で使用する場合、「非布地洗浄組成物」は皿洗い洗剤組成物、口腔洗浄組成物、義歯洗浄組成物及び身体の洗浄用組成物を含むがこれらに限定されない非織物表面洗浄組成物を含む。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「消毒」は表面から汚染物を除去することと物品の表面の微生物の阻害または殺菌をいう。本発明をいずれかの表面、物品または除去されるべき汚染物または微生物に限定する意図はない。
【0070】
本明細書で使用する場合、用語「スブチリシン」はMEROPS-The Peptidase Data base (Rawlings ら、MEROPS: the peptidase database, Nucl Acids Res, 34 Database issue, D270-272,2006)で述べられているようなS8 セリンプロテアーゼファミリーのいずれのメンバーもさす。
【0071】
本明細書に記載されるプロテアーゼ変異体の作成のための適した宿主株はプロテアーゼの発現が達成され得る形質転換可能な微生物を含む。具体的には、プロテアーゼが生じる同一の種または属の宿主株が適している。例えば、バシラス種の株、好ましくは好アルカリ性のバシラス株及び最も好ましくはバシラス・ノブ種(Bacillus nov. spec.)PB92または、実質的に同一の性質をもつその変異種である。また、B・スブチリス、B・リケニフォルミス及びB・アミロリケファシエンス株は好ましい株に属する。他の適した好ましい宿主株は変異遺伝子による形質転換前には、菌体外のタンパク質分解酵素を実質的に産生できない株を含む。特に興味深い物は、プロテアーゼ欠損バスラス宿主株、例えば、バシラス・ノブ種PB92のプロテアーゼ欠損誘導体である。プロテアーゼの発現は選ばれた宿主生物で機能する発現シグナルを使用することにより得られる。発現シグナルはプロテアーゼ遺伝子の転写と翻訳を調節するDNAの配列を含む。適したベクターは選んだ宿主株に十分に多くのコピーを複製できる。または染色体への組み入れにより宿主株内でプロテアーゼ遺伝子を安定に維持できる。
【0072】
本発明によるタンパク質分解性酵素変異体(つまり、プロテアーゼ変異体)は、適当な発酵条件下で希望する変異タンパク質分解性遺伝子を含む形質転換された宿主株を培養し、そして産生された酵素を回収することにより調製される。好ましくは、発現されているプロテアーゼは培地に分泌され、その回収を容易にし、またはグラム陰性菌の宿主株の場合、細胞膜周辺腔に分泌される。分泌のため、適当なシグナルアミノ末端シグナル配列が使用され、好ましくは、もしこれが選んだ宿主株で働く場合には、元の遺伝子によりコードされたシグナル配列であることが好ましい。
【0073】
いくつかの実施態様では、洗剤組成物中のスブチリシンの安定性と/または性能を高めるため、いくつかの置換が組み合わされる。従って、本発明は改善された洗浄性能を与える以下のプロテアーゼ変異体を与える(例.N76D+N87R+G118R+S128L+P129Q+ S130A+S188D+N248Rを有するPB92変異体;BPN’の番号を使用;「PX3」)。この変異体は本明細書では「スブチリシンプロテアーゼ変異体」、「変異プロテアーゼ(“mutant protease”, “variant protease”)」、「プロテアーゼ変異体(“protease variant”)」、「バシラス属の種のプロテアーゼ」、「バシラス属の種のスブチリシン変異体」及び「変異プロテアーゼ変異体」と呼ばれる。この変異体のアミノ酸配列は配列番号第5(SEQ ID NO:5)に表わされている。
【0074】
従って、本発明は、洗剤組成物及び/または洗浄プロセスでの使用に適したこのスブチリシン変異体を提供する。PB92対照スブチリシンのアミノ酸の位置と相同な位置(及びBPN’を使った位置決定に従う位置番号)は、特許請求の範囲にあることは理解されるべきである。
洗浄剤組成物
【0075】
別に記載がある場合を除き、本明細書に記載された全ての成分または組成物の量は、その成分または組成物の実効量で調製され、市販品に含まれているかもしれない、不純物、例えば残留溶媒又は副生物は除いている。酵素成分の重量は、全活性タンパク質に基づく。別に記載されていない場合は、全てのパーセンテージと比率は、組成物全体に基づいて計算される。例示された洗剤組成物中では、酵素の量は組成物全体の重量に基づく、純粋な酵素量で表され、特に別の記載がない限り、洗剤成分は組成物全体の重量に基づいて表される。
【0076】
本明細書で記載の通り、いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物はさらに界面活性剤、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、漂白触媒、他の酵素、酵素安定化剤系、キレート剤、光学的増白剤、汚れ遊離ポリマー、染料移転剤、発泡抑制剤、染料、香料、色素、充填塩、ヒドロトロープ、光活性化剤、蛍光剤、布地柔軟剤、加水分解性界面活性剤、保存料、抗酸化剤、抗収縮剤、皺防止剤、殺菌剤、抗カビ剤、カラースペックル(color speckles)、シルバーケア(silvercare)、変色防止剤及び/または腐食防止剤、アルカリ源、溶解剤、担体、処理助剤、色素、及びpH調整剤(例えば、米国特許第6,610,642号、第6,605,458号、第5,705,464号、第5,710,115号、第5,698,679号、第5,686,014号及び第5,646,101号参照。これら全ては引用により本明細書に組み入れられる。)具体的な洗浄組成物材料の実施態様は下記に詳細に例示されている。洗浄組成物中で洗浄添加物が本発明のプロテアーゼ変異体と適合しない実施態様では、2つの成分の混合が適当になるまで、その洗浄添加物とプロテアーゼ分離しておく(つまり、互いに接触させない)適当な方法が使用される。そのような分離法は、いずれかの本技術分野で知られている適当な方法(例.ゲルキャップ、カプセル化、錠剤、物理的分離など)を含む。
【0077】
本発明のセリンプロテアーゼ変異体は、種々の洗剤組成物を調合する際に有用である。本発明の洗浄組成物は、例えば洗濯用、硬い表面の洗浄、自動皿洗い機用、また、義歯、歯、髪及び皮膚のような美容用に使用されると有利あろう。本発明のプロテアーゼ変異体は、顆粒、粉末、ゲル及び液体組成物で使用される。
【0078】
本発明のプロテアーゼ変異体は、洗浄添加製品でも使用される。本発明のプロテアーゼ変異体を含む洗浄添加物は、漂白効果を追加したいときの洗浄に使用することが理想的である。そのような例は、低温溶液による洗浄用途を含むがこれに限定されない。この添加製品は、その最も単純な形態では、本発明が与えるようなプロテアーゼ変異体である。いくつかの実施態様では、この添加剤は過酸化物源が使用され、漂白効果が増大することが望ましい洗浄プロセスへ加えるための使用単位で包装される。いくつかの実施態様では、単回投与形態は、丸薬、錠剤、ゲルキャップまたは予め秤量された粉末及び/又は液体を含む他の単回投与単位を含む。いくつかの実施態様では、充填剤及び/又は担体物質は、そのような組成物の容量を増やすために含有される。適した充填剤及び/又は担体物質は、硫酸塩、炭酸塩およびケイ酸塩からなる種々の塩、またタルク、粘土等を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、液体組成物用の充填剤及び/または担体物質は、水及び/又は、ポリオールとジオールを含む低分子量の一級及び二級アルコールを含む。そのようなアルコールの例はメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、本組成物は約5%から約90%のそのような材料を含む。追加の実施態様では、酸性充填剤は本組成物のpHを低下させるために使用される。いくつかの他の実施態様では、洗浄添加物は、下記のような少なくとも1個の活性化された過酸化物源及び/又は以下により十分に記載された添加成分を含む。
【0079】
本発明の洗浄組成物と洗浄添加物は本発明で与えられる有効量のセリンプロテアーゼ酵素を必要とする。いくつかの実施態様では、必要量の酵素は、本発明により提供されるセリンプロテアーゼを加えて達成される。典型的には、本発明の洗浄組成物は少なくとも0.0001重量パーセント、約0.0001から約10、約0.001から約1、さらに約0.01から約0.1重量パーセントの、本発明が提供する少なくとも1個のセリンプロテアーゼを含む。
【0080】
いくつかの好ましい実施態様では、本明細書で与えられる洗浄組成物は、通常、水での洗浄中に、洗浄水が約5.0から約11.5のpH、または他の実施態様では、さらに約6.0から約10.5のpHを有する。いくつかの好ましい実施態様では、液体製品の調合では通常約3.0から約9.0の原液のpHを有し、いくつかの他の実施態様では、この調合は約3から約5の原液のpHを有する。いくつかの好ましい実施態様では、顆粒洗濯用製品は通常、約8から約11のpHを有するように調合される。推奨される使用水準でpHを調整する技術は緩衝剤、アルカリ、酸などの使用を含み、本技術分野の技術者に良く知られている。
【0081】
いくつかの特に好ましい実施態様では、プロテアーゼ変異体が顆粒組成物又は液体で使用されるとき、プロテアーゼ変異体は保存中に顆粒組成物の他の成分から酵素を保護するためにカプセルに封入された粒子となっている。加えて、カプセル化は洗浄プロセスにおけるセリンプロテアーゼの利用度を調整する方法も与え、セリンプロテアーゼの性能を高める。本発明のカプセル化されたセリンプロテアーゼは種々の環境で使用することが考えられている。セリンプロテアーゼは、本技術分野で知られている適当なカプセル化材料と方法を用いてカプセル化されることも考えられている。
【0082】
いくつかの好ましい実施態様では、カプセル化材料は、典型的にはセリンプロテアーゼ触媒の少なくとも一部をカプセル化する。いくつかの実施態様では、このカプセル化材料は水溶性及び/又は水分散性である。いくつかの別の実施態様では、カプセル化材料は0℃以上のガラス転移温度を有する(ガラス転移温度について更に詳しくは、例えば、WO97/11151、特に6頁、第25行から7頁、第12行参照)。
【0083】
いくつかの実施態様では、カプセル化材料は炭水化物、天然又は合成ゴム、キチン及びキトサン、セルロース及びセルロース誘導体、ケイ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、パラフィンワックス及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。カプセル化材料が炭水化物であるいくつかの実施態様では、カプセル化材料は、単糖類、オリゴ糖類、多糖類及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの好ましい実施態様では、カプセル化材料はデンプンである(いくつかの適したデンプンの例についてはEP0922499及び米国特許第4,977,252号、
第5,354,559号、第5,935,826号参照)
【0084】
他の実施態様では、カプセル化材料はプラスチックから作られた微小球を含む(例.熱可塑性樹脂、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル及びそれらの混合物。使用できる市販の微小球は、以下を含むがこれらに限定されない。EXPANCEL(登録商標)(Casco Products, ストックホルム、スウェーデン)、PM6545、PM6550、PM7220、PM7228、EXTENDOSPHERES(登録商標)及びQ-CEL(登録商標)(PQ Corp., Valley Forge, PA)、LUXSIL(登録商標)及びSPHERICELI(登録商標)(Potters Industrial, Inc., Carlstadt, NJ and Valley Forge,PA)
【0085】
本明細書で述べられるように、いくつかの実施態様では本発明のプロテアーゼ変異体は洗濯洗剤で使用される。これらの用途は酵素を種々の環境による攻撃にさらす。本発明のプロテアーゼ変異体は種々の条件下でのその安定性のために多くの現在使用されている酵素よりも優位にある。
【0086】
実際、洗浄に関与するプロテアーゼが晒される種々の洗浄条件があり、これは、種々の洗剤調合物、洗浄水の容量、洗浄水の温度及び洗浄時間を含む。さらに、異なる地理的領域で使用される洗剤調合物は洗浄水に異なる濃度の関連成分を含む。例えば、ヨーロッパの洗剤は、洗浄水中に通常、約4500-5000ppmの洗剤成分を含み、一方、日本の洗剤は通常約667ppmの洗剤成分を洗浄水に含む。北アメリカ、特に合衆国では、洗剤は通常約975ppmの洗剤成分を洗浄水に含む。
【0087】
低洗剤濃度系は、約800ppm未満の洗剤成分が洗浄水に含まれる洗剤を含む。日本の洗剤は、洗浄水に約667ppmの洗剤成分を含むので、通常低洗剤濃度系と考えられている。
【0088】
中間的な洗剤濃度は約800ppmと約2000ppmの間の洗剤成分が洗浄水に含まれる洗剤を含む。北アメリカの洗剤は、一般的に、洗浄水に約975ppmの洗剤成分が含まれるので、中間的な洗剤濃度系であるとみなされている。ブラジルは通常約1500ppmの洗剤成分を洗浄水に含む。
【0089】
高洗剤濃度系は約2000ppmより高濃度の洗剤成分が洗浄水に含まれる洗剤を含む。ヨーロッパの洗剤は洗浄水に約4500-5000ppmの洗剤成分を含むので、一般的に、高洗剤濃度系であるとみなされる。
【0090】
ラテンアメリカの洗剤は一般的に、高石鹸水リン酸塩ビルダー洗剤であり、ラテンアメリカで使用される洗剤の範囲は、洗剤は洗浄水に1500ppmから6000ppmの洗剤成分の範囲で含まれるので、中間及び高い洗剤濃度の両者に該当しえる。上記のように、ブラジルは約1500ppmの洗剤成分を洗浄水に含む。しかしながら、他の高石鹸水リン酸塩ビルダー洗剤の領域は、他のラテンアメリカに限られず、洗浄水に約6000ppmまでの洗剤成分を含む高洗剤濃度系をもち得る。
【0091】
先の記載から、通常の洗浄液での洗剤組成物の濃度は世界で、約800ppm未満の洗剤組成物(「低洗剤濃度領域」)、例えば日本における約667ppm、から約800ppmから約2000ppm(「中間的洗剤濃度領域」)、例えば、米国の約975ppm、及びブラジルの約1500ppm、及び約2000ppmより高い(「高洗剤濃度能領域」)、例えば、ヨーロッパにおける約4500ppmから約5000ppm、高石鹸水リン酸塩ビルダー領域における約6000ppm、まで変わることが明らかである。
【0092】
通常の洗浄溶液の濃度は実験的に決定される。例えば、米国では、典型的な洗濯機は約64.4Lの洗浄溶液がはいる。従って、洗浄液に約975ppmの濃度を得るためには、約62.79gの洗剤組成物が64.4Lの洗浄液に加えられなければならない。この量は洗剤についている秤量カップを使って消費者が洗浄水に秤取する通常の量である。
【0093】
別の例として、異なる地理的領域は異なる洗浄温度を使用する。日本の洗浄水の温度は通常はヨーロッパで使用されているよりも低い。例えば、北アメリカと日本における洗浄水の温度は通常は、10℃と30℃の間(例.約20℃)であり、他方、ヨーロッパの洗浄水の温度は一般的に30と60℃(例.約40℃)の間である。加えて、いくつかの他の領域では、冷水は通常、皿洗浄のほか、洗濯用に使用される。いくつかの実施態様では、本発明の「冷水洗浄」は約10℃から約40℃、または約20℃から約30℃、または約15℃から約25℃、及び約15℃から約35℃の範囲内の全ての他の組み合わせ、及び10℃から40℃の範囲内の全範囲の温度で洗浄をおこなう。
【0094】
さらなる例として、異なる地理的領域は通常、異なる水の硬度を有する。水の硬度は普通、1ガロン当たりのCa2+/Mg2+混合量で記述される。硬度は水中のカルシウム(Ca2+)とマグネシウム(Mg2+)の量の尺度である。米国の殆どの水は硬水であり、その硬度は変化する。中程度の軟水(60-120ppm)から硬水(121-181ppm)は百万分当たり60-181部分(parts per million)(ppmの米国1ガロン当たりのグレインへの変換は、ppm #を17.1で割って1ガロン当たりのグレインとする)の硬度鉱物を含有する。
【表1】

【0095】
ヨーロッパの水の硬度は、1ガロン当たり、10.5(例えば、10.5-20.0)グレインのCa2+/Mg2+混合量(例.ガロン当たり約15グレインのCa2+/Mg2+混合量)である。北アメリカの水の硬度は通常、日本の水の硬度より大きいが、ヨーロッパの水の硬度より低い。例えば、北アメリカの水の硬度は3と10グレインの間であり、3 - 8グレインまたは約6グレインでありえる。日本の水の硬度は通常、北米の水の硬度より低く、普通、4未満であり、例えば、1ガロン当たり3グレインのCa2+/Mg2+混合量である。
【0096】
従って、いくつかの実施態様では、本発明は少なくとも一組の洗浄条件(例.水温、水の硬度、及び/又は洗剤濃度)で驚くべき洗浄性能を提供するプロテアーゼ変異体を提供する。いくつかの実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は、洗浄性能において他のスブチリシンプロテアーゼに匹敵する。いくつかの実施態様では、本発明のプロテアーゼ変異体は現在市販されているスブチリシンプロテアーゼと比べて増強された洗浄性能を示す。従って、本発明のいくつかの好ましい実施態様では、本明細書に記載されたプロテアーゼ変異体は増強された酸化安定性、増強された熱安定性、及び/又は増強されたキレート剤安定性を示す。加えて、本発明のプロテアーゼ変異体は洗剤成分を含まず、それのみを含有する、或いは、ビルダーと安定化剤と組合わせて含有する洗浄組成物中で使用される。
【0097】
本発明のいくつかの実施態様では、洗浄組成物は、組成物の重量の約0.00001%から約10%の水準で本発明のプロテアーゼ変異体を含有し、残量(例.約99.999%から約90.0%)は、洗浄添加剤を含有している。本発明の他の面では、本発明の洗浄組成物は、組成物の重量で、約0.0001%から約10%、約0.001%から約5%、約0.001%から約2%、約0.005%から約0.5%の水準でプロテアーゼ変異体を含有し、この洗浄組成物の残量(重量で、約99.9999%から約90.0%、約99.999%から約98%、約99.995%から約99.5%)は洗浄添加剤を含有する。
【0098】
本明細書でさらに述べられているように、いくつかの実施態様では、好ましい洗浄組成物は、本明細書に記載されているプロテアーゼ変異体に加えて、洗浄性能及び/又は布地保護効果を与える1以上の追加の酵素又は酵素誘導体を含有する。

洗浄組成物を製造、使用するプロセス
【0099】
いくつかの好ましい実施態様では、本発明の組成物はいずれかの適した形態に調合され、調合者が選ぶいずれかのプロセスで製造される。(いくつかの非限定的例について、例えば、米国特許第5,879,584号、第5,691,297号、第5,574,005号、第5,569,645号、第5,565,422号、第5,516,448号、第5,489,392号、第5,486,303号参照)低いpHの洗浄組成物が望ましい実施態様では、そのような組成物のpHはHClのような鉱酸を加えて調整される。

添加物質
【0100】
本発明の目的には必須ではないが、いくつかの実施態様では、本明細書に述べられた添加物質の非限定的リストが本発明の洗浄組成物での使用に適している。実際、いくつかの実施態様では、添加物質は本発明の洗浄組成物に組み入れられている。いくつかの実施態様では、添加物質は洗浄性能を補助し及び/または増強し、洗浄を受ける物を処理し、及び/又は洗浄組成物の美観を修飾する(例.香料、色素、染料等)。そのような添加物質は本発明のセリンプロテアーゼ変異体に加えられることが理解されるべきである。これらの添加成分の正確な性質とその含有水準は、この組成物の物理的形態と組成物が使用される予定の洗浄作業の性質に左右される。適した添加物質は、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、染料移動防止剤、沈殿助剤、分散剤、追加の酵素及び酵素安定化剤、触媒物質、漂白活性化剤、漂白増強剤、過酸化水素、過酸化水素源、過酸前駆体(preformed peracid)、重合性の分散剤、粘土・土除去/再付着防止剤、増白剤、発泡抑制剤、染料、香料、構造弾性化剤(structure elasticizing agents)、布地柔軟剤、担体、ヒドロトロープス、処理助剤及び/又は色素を含むが、これらに限定されない。本明細書に明示して記載されている例に加え、他の例が本技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,576,282号、第6,306,812号、第6,326,348号参照)。いくつかの実施態様では、先に述べた添加物質は、本発明の洗浄組成物の残部を構成する。

界面活性剤
【0101】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は少なくとも1個の界面活性剤又は界面活性剤系を含有し、この界面活性剤は非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性界面活性剤、半極性-非イオン性界面活性剤及びそれらの混合物から選ばれる。いくつかの低pHの洗浄組成物の実施態様(例.約3から約5の原液のpHを有する組成物)では、この組成物は通常アルキルエトキシル化された硫酸塩を含有しない。なぜならそのような界面活性剤は、酸性成分をもつそのような組成物により加水分解されるかもしれないからである。いくつかの実施態様では、界面活性剤は、約0.1%から約60%の水準で含有され、一方、別の実施態様では、この水準は約1%から約50%、さらに別の実施態様では、洗浄組成物の重量に対しこの水準は約5%から約40%である。

ビルダー
【0102】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は1以上の洗剤ビルダー又はビルダー系を含有する。少なくとも1個のビルダーを含有するいくつかの実施態様では、この洗浄組成物は、洗浄組成物の重量で、少なくとも約1%、約3%から約60%または、更に約5%から約40%のビルダーを含有する。ビルダーはアルカリ金属、ポリリン酸のアンモニウム及びアルカノールアンモニウム塩、ケイ酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類及びアルカリ金属塩、アルミノケイ酸塩、ポリカーボキシレート化合物、エーテルヒドロキシポリカルボキシレート、エチレン又はビニルメチルエーテルとマレイン酸無水物のコポリマー、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン-2,4,6-トリスルホン酸、カルボキシメチロキシコハク酸、エチレンジアミン4酢酸とニトリロ3酢酸のようなポリ酢酸の種々のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩、及びメリチック酸、コハク酸、酒石酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1,3,5-トリカルボン酸、カルボキシメチロキシコハク酸のようなポリカルボキシレート及びそれらの可溶性の塩を含むが、これらに限定されない。実際、どの適したビルダーも本発明の種々の実施態様で使用されることが意図されている。
【0103】
いくつかの実施態様では、ビルダーは、水溶性の硬度イオンとの錯体を形成し(例.封鎖ビルダー)する。例えば、酒石酸塩とポリリン酸塩(例えば、トリポリリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウム6水和物、トリポリリン酸カリウム及びトリポリリン酸ナトリムとカリウムの混合物等)である。本技術分野で知られているものを含め、いずれの適したビルダーも本発明で使用されることが意図されている(例えば、EP2100949参照)。
キレート剤
【0104】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は、少なくとも1個のキレート剤を含む。適したキレート剤は、銅、鉄及び/又はマンガンキレート剤及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。少なくとも1個のキレート剤が使用される実施態様では、本発明の洗浄組成物は、主体の洗浄組成物の重量で、約0.1%から約15%の、またはさらに約3.0%から約10%のキレート剤を含有する。
沈殿助剤
【0105】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は少なくとも1個の沈殿助剤を含む。適した沈殿助剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボキシレート、ポリテレフタル酸のような汚れ遊離ポリマー、カオリナイト、モンモリロナイト、アタプルガイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイトのような粘土及びそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
再付着防止剤
【0106】
本明細書で示すように、再付着防止剤は本発明のいくつかの実施態様で使用される。いくつかの好ましい実施態様では、非イオン性界面活性剤が使用される。例えば、自動皿洗い機の実施態様では、非イオン性界面活性剤は表面を修飾するため、特に保護皮膜形成に使用され、薄膜やしみの形成を防ぎ、輝きを改善する。これらの非イオン性界面活性剤はまた、汚れの再付着の防止に使用される。いくつかの好ましい実施態様では、再付着防止剤は本技術分野で知られているように、非イオン性界面活性剤である(例えば、EP2100949参照)。
染料移転阻害剤
【0107】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は1以上の染料移転素阻害剤を含有する。適したポリマー性染料移転阻害剤は、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン及びポリビニルイミダゾール又はそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。少なくとも1個の染料移転阻害剤が使用される実施態様では、本発明の洗浄組成物は、洗浄組成物の重量で、約0.0001%から約10%、約0.01%から約5%、またさらに約0.1%から約3%で含有する。
ケイ酸塩
【0108】
いくつかの実施態様では、ケイ酸塩が本発明の組成物に含有される。いくつかのそのような実施態様では、ケイ酸ナトリウム(例.ジケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び結晶性フィロケイ酸塩)が使用される。いくつかの実施態様では、ケイ酸塩は約1%から約20%の量で含有される。いくつかの好ましい実施態様では、本組成物の重量で、ケイ酸塩は約5%から約15%の量で含有される。
分散剤
【0109】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は少なくとも1個の分散剤を含有する。適した水溶性有機材料は、単独又は共重合性の酸又はその塩を含むが、これに限定されない。このポリカルボン酸は、2個以下の炭素原子で互いに離れている少なくとも2個のカルボキシル基を含む。
酵素
【0110】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は1以上の追加の洗剤酵素を含有し、これは洗浄性能及び/又は布地保護及び/又は皿洗いに利点を与える。適した酵素の例は、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、パーオキシダーゼ、プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスリパーゼ、エステラーゼ、パーヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクテートリアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ及びアミラーゼ又はそれらの混合物を含むが、それらに限定はされない。いくつかの実施態様では、酵素の組み合わせが使用され(つまり、「カクテル」)、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ及び/又はセルラーゼのような従来の適用できる酵素がアミラーゼと組み合わせて使用される。
【0111】
いずれかの他の適したプロテアーゼは本発明の組成物で使用される。適したプロテアーゼは動物、植物又は微生物由来のものである。いくつかの特に好ましい実施態様では、微生物のプロテアーゼが使用される。いくつかの実施態様では、化学的又は遺伝的に修飾された変異体が含まれる。いくつかの実施態様では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、好ましくはアルカリ微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼである。アルカリプロテアーゼの例は、スブチリシン、特にバシラス属由来のもの(例.スブチリシン、レンツス、アミロリケファシエンス、スブチリシンカールスベルク、スブチリシン309、スブチリシン147及びスブチリシン168)を含む。他の例は、米国特許RE34,606、第5,955,340号、第5,700,676号、第6,312,936号及び第6,482,628号に述べられたプロテアーゼ変異体を含み、これら全ては引用により本明細書に組み入れられる。他のプロテアーゼの例は、トリプシン(例.ブタ又はウシ由来)とWO89/06270に記載されたフサリウムプロテアーゼを含むが、これらに限定されない。好ましい市販のプロテアーゼ酵素は、MAXATASE(登録商標)、MAXACAL(商標)、MAXAPEM(商標)、OPTICLEAN(登録商標)、OPTIMASE(登録商標)、PROPERASE(登録商標)、PURAFECT(登録商標)OXP、PURAMAX(登録商標)、PURAFAST(商標)及びEXCELLASE(商標)(Genencor);ALCALASE(登録商標)、SAVINASE(登録商標)、PRIMASE(登録商標)、DURAZYM(商標)、KANNASE(登録商標)、POLARZYME(登録商標)、LIQUANASE(登録商標)、OVOZYME、NEUTRASE、RELASE(登録商標)及びESPERASE(登録商標)(Novozyme);及びBLAP(商標)(Henkel Kommanditgesellschaft auf Akiten, ジュッセルドルフ、ドイツ)を含むがこれらに限定されない。種々のプロテアーゼがWO95/23221、WO92/21760及び米国特許第5,801,039号、第5,340,735号、第5,500,364号、第5,855,625号、米国RE34,606、第5,955,340号、第5,700,676号、第6,312,936号及び第6,482,628号及び種々の他の特許に記載されている。)いくつかの別の実施態様では、メタロメタロプロテアーゼが本発明で使用され、WO07/044993に述べられた中性のメタロメタロプロテアーゼを含むがこれに限定されない。
【0112】
加えて、いずれの適したリパーゼも本発明で使用される。適したリパーゼは細菌または菌類のものを含むが、これに限定されない。化学的に又は遺伝的に修飾された変異体が本発明に含まれる。有用なリパーゼの例はフミコラ・ラヌギノサリパーゼ(Humicola lanuginosa)(例えば、EP258068、EP305216、及び米国特許第6,939,702号参照)、リゾムコル・ミイヘイリパーゼ(Rhizomucor miehei)(例えば、EP238023参照)、カンジダリパーゼ、例えばC.アンタークチカ(C.antarctica)リパーゼ(例.C.アンタークチカリパーゼA又はB;EP214761参照)、シュードモナスリパーゼ例えば、P.アルカリゲネス(P.alcaligenes)及びP.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)リパーゼ(例えば、EP218272参照)、P.セパシア(P.cepacia)リパーゼ(例えば、EP331376参照)、P.スツットゼリ(P.stutzeri)リパーゼ(例えば、GB1,372,034参照)、P.フルオレセンス(P.flurorescens)リパーゼ、バシラスリパーゼ(例.B.スブチリス(B.subtilis)リパーゼ[Dartoisら、Biochem.Biophys.Acta 1131:253-260[1993]]; B.ステアロテルモフィルス(B.stearothermophilus)リパーゼ[例えばJP 64/744992参照];及びB.プミルス(B.pumilus)リパーゼ[WO91/16422]参照)を含む。
【0113】
さらに、ペニシリナム・カメンベルチ (Penicillium camembertii) リパーゼ(YamaguchiらGene 103:61-67[1991]参照)、ゲオトリカム・カンジダム(Geotricum candidum )リパーゼ(Schimada ら、J.Biochem., 106:383-388[1989]参照)及び種々のリゾプス(Rhizopus )リパーゼ、例えばR・デレマール(R.delemar) リパーゼ(Hassら、Gene 109:117-113[1991]参照)、R.ニベウス(R.niveus)リパーゼ(Kugimiyaら、Biosci.Biotech. 56:716-719[1992])及びR・オリゼ(R.oryzae)リパーゼを含むがこれらに限定されない。
多くのクローンされたリパーゼが本発明のいくつかの実施態様で使用される。
【0114】
クチナーゼのような他のタイプの脂肪分解性酵素も本発明のいくつかの実施態様で使用される。これは、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)(WO88/09367参照)、及びフザリウム・ソランニ・ピシ(Fusarium solani pisi)(WO90/09446)由来のクチナーゼを含む。
【0115】
追加の適したリパーゼはM1 LIPASE(商標)、LUMA FAST(商標)、及びLIPOMAX(商標)(Genencor); LIPOLASE (登録商標)及びLIPOLASA(登録商標)ULTRA(Novozymes);及びLIPASE P (商標)「アマノ」(Amano Pharmaceutical Co.Ltd., 日本)のような市販のリパーゼを含む。
【0116】
本発明のいくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物はさらに、組成物の重量に対して約0.00001%から約10%の量の追加のリパーゼと残量の洗浄添加物を含有する。本発明の他の面では、本発明の洗浄組成物は、また本組成物の重量に対して約0.0001%から約10%、約0.001%から約5%、約0.001%から約2%、約0.005%から約0.5%のリパーゼも含有する。
【0117】
アルカリ溶液での使用に適したいずれのアミラーゼ(アルファ及び/又はベータ)も本発明のいくつかの実施態様で使用される。適したアミラーゼは、細菌又は菌類起源のものを含むが、これらに限定はされない。本発明で使用されるアミラーゼは、B.リケニフォルミス(例えば、GB1,296,839参照)から得られるα-アミラーゼを含むがこれに限定されない。本発明で使用される市販のアミラーゼは、DURAMYL(登録商標)、TERMAMYL(登録商標)、FUNGAMYL(登録商標)、STAINZYME(登録商標)、STAINZYME PLUS(登録商標)、STAINZYME ULTRA(登録商標)、NATALASE(登録商標)、及びBAN(商標)(Novozyme)、POWERASE(商標)、RAPIDASE(登録商標)、及びMAXAMYL(登録商標)P(Genencor)を含むがこれらに限定されない。
【0118】
本発明のいくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は、組成物の重量に対してさらに、約0.00001%から約10%の追加のアミラーゼと残量の洗浄添加物を含有する。本発明の別の面では、本発明の洗浄組成物はまた、本組成物の重量に対し約0.0001%から約10%、約0.001%から約5%、約0.001%から約2%、約0.005%から約0.5%のアミラーゼを含有する。
【0119】
さらにいくつかの実施態様では、いずれの適したセルラーゼも本発明の洗浄組成物で使用される。適したセルラーゼは、細菌または菌類起源のものであるがこれらに限定されない。化学的又は遺伝的に修飾された変異体はいくつかの実施態様に含まれる。適したセルラーゼは、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ(例えば、米国特許第4,435,307号参照)を含むがこれに限定されない。特に適したセルラーゼは色の保護の利点を持つセルラーゼである(例えばEP0495257参照)。本発明で使用される市販のセルラーゼは、CELLUZYME(登録商標)(Novozymes)、及びKAC-500(B)(商標)(Kao Coorporation)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、セルラーゼは成熟した野生型又はセルラーゼ変異体の部分又は断片で、N-末端が除去されて、組み入れられている(例えば、米国特許第5,874,276号)いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物はさらに、組成物の重量に対して約0.00001%から約10%の量で追加のセルラーゼを含有し、残部は洗浄添加物である。本発明の他の面では、本発明の洗浄組成物はまた、組成物の重量に対し、約0.001%から約10%、約0.001%から約5%、約0.001%から約2%、0.005%から約0.5%のセルラーゼを含有する。
【0120】
洗浄組成物での使用に適したいずれのマンナナーゼも本発明で使用される。適したマンナナーゼは、細菌又は菌類のものを含むが、これらに限定されない。化学的に、または遺伝的に修飾された変異体はいくつかの実施態様に含まれる。本発明で使用される種々のマンナナーゼが知られている(米国特許第6,566,114号、米国特許第6,602,842号及び米国特許第6,444,991号、これら全ては引用により本明細書に組み入れられる)。いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物はさらに、組成物の重量に対し0.00001%から約10%の量の追加のマンナナーゼと残量の洗浄添加物を含有している。本発明の他の面では、本発明の洗浄組成物は、また、組成物の重量に対して、約0.0001%から約10%まで、約0.001%から約5%まで、約0.001%から約2%まで、約0.005%から約0.5%のマンナナーゼも含有する。
【0121】
いくつかの実施態様では、ペルオキシダーゼは過酸化水素又はその発生源(例.過炭酸塩、過ホウ酸塩または過硫酸塩)と組合わせて使用される。いくつかの他の実施態様では、オキシダーゼは酸素と組合わせて使用される。両タイプの酵素は「溶液漂白」のために使用される(つまり、布地が洗浄水中で洗浄を受けるとき、染色された布地から織物用染料が別の布地へ移ることを予防するため)、好ましくは増強剤とともに使用される(例えば、WO94/12621及びWO95/01426参照)。適したパーオキダーゼ/オキシダーゼは、植物、細菌又は菌類由来のものを含むがこれらに限定されない。化学的に、遺伝的に修飾された変異体はいくつかの実施態様に含まれる。いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物はさらに組成物の重量に対して約0.00001%から約10%の量でパーオキシダーゼ及び/又はオキシダーゼ酵素及び/又はオキシダーゼと残量の洗浄添加物を含有する。本発明の他の面では、本発明の洗浄組成物はまた、組成物の重量に対して、約0.0001%から約10%、約0.001%から約5%、約0.001%から約”%、約0.005%から約0.5%のパーオキダーゼ及び/又はオキシダーゼ酵素を含有する。
【0122】
いくつかの実施態様では、追加の酵素は、パーヒドロラーゼ使用するが、しかしこれに限定されない(WO05/056782参照)。加えて、いくつかの特にこのましい実施態様では、先に述べた酵素の混合物は本明細書で含まれ、特に1以上の追加のプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ及び/または少なくとも1個のセルラーゼが含有される。実際、種々のこれらの酵素は本発明で使用されることが意図されている。種々の量のプロテアーゼ変異体と1以上の追加の酵素は共に独立して、約10%に達し、洗浄組成物の残量は洗浄添加物である。洗浄添加物の具体的な選択は表面、物品又は洗浄を受ける布地、及び使用時の洗浄条件(例.洗浄洗剤による)に適した組成物の希望する形態を考慮して容易に行われる。

酵素安定化剤
【0123】
本発明のいくつかの実施態様では、本発明の洗剤調合物で使用される酵素は安定化されている。いくつかの実施態様では、この酵素安定化剤はオリゴ糖、多糖および無機の2価金属イオン塩(カルシウム塩のようなアルカリ土類金属を含む)を含む。酵素安定化のための種々の技術は本発明で使用されることが意図されている。例えば、いくつかの実施態様では、本明細書で使用された酵素は、最終組成物中の亜鉛(II)、カルシウム(II)及び/又はマグネシウム(II)イオン及び他の金属イオン(例.バリウム(II)、スカンジウム(II)、鉄(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、スズ(II)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)及びオキソバナジウム(IV))の水溶性の発生源(これらは酵素にそのようなイオンを与える。)の存在により安定化される。塩化物及び硫酸塩もまた本発明のいくつかの実施態様で使用される。適したオリゴ糖と多糖(例.デキストリン)の例は本技術分野で知られている(例えば、WO07/145964)。いくつかの実施態様では、可逆性のプロテアーゼ阻害剤も使用され、例えば、ホウ素含有化合物(例.ホウ酸塩、4-ホルミルフェニルホウ酸)及び/又はトリペプチドアルデヒドはさらに安定性を向上させるために使用される。

漂白、漂白活性化剤及び漂白触媒
【0124】
いくつの実施態様では、漂白剤、漂白活性剤及び/又は漂白触媒は本発明の組成物に含有される。いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は無機及び/又は有機の漂白化合物を含有する。無機の漂白剤は、ペルヒドレート(perhydrate)塩(例.過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩および過ケイ酸塩)を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、無機ペルヒドレート塩は、アルカリ金属塩である。いくつかの実施態様では、無機ペルヒドレート塩は、保護のない結晶性固体として含有され、いくつかの実施態様では、この塩はコートされている。本技術分野で知られている何れかの適した塩は本発明で使用されている(EP2100949参照)。
【0125】
いくつかの実施態様では、漂白活性化剤は本発明の組成物中で使用される。漂白活性化剤は通常、60℃以下の温度で洗浄中に漂白活性を増強する有機過酸前駆体である。本明細書での使用に適した漂白活性化剤は、加過酸化水素分解(perhydrolysis)の条件下、好ましくは約1から約10個の炭素原子、特に、約2個から約4個の炭素原子、及び/又は任意に、置換過安息香酸をもつ脂肪族の過カルボン酸を与える。追加の漂白活性化剤は、本技術分野で知られ、本発明で使用される(例えば、EP2100949参照)。
【0126】
加えて、いくつかの実施態様においてさらに本明細書で述べられるように、本発明の洗浄組成物はさらに少なくとも1個の漂白触媒を含有する。いくつかの実施態様では、マンガン・トリアザシクロノナン及び関連する錯体は、コバルト、マンガン及び鉄イオン錯体と同様に使用される。追加の漂白触媒は本発明で使用される(米国特許第4,246,612号、米国特許第5,227,084号、米国特許第4,810,410号、WO99/06521、及びEP2100949)。

触媒金属錯体
【0127】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は1以上の触媒性金属錯体を含有する。いくつかの実施態様では、金属-含有漂白触媒が使用される。いくつかの好ましい実施態様では、明確な漂白触媒活性をもつ金属漂白錯体は、遷移金属カチオン(例.銅、鉄、チタン、ルテニウム、タングステン、モリブデン、マンガンカチオン)、漂白触媒活性を殆どまたは全く有しない補助的金属カチオン(例.亜鉛又はアルミニウムカチオン)及び触媒的及び補助的金属カチオンに対する明確な安定定数を有する封鎖剤(特にエチレンジアミン4酢酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンリン酸)及びそれらの水溶性の塩が使用される)を含有する触媒系を含む金属漂白触媒を含む(例えば、米国特許第4,430,243号参照)。いつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物はマンガン化合物により触媒される。そのような化合物と使用量は本技術分野(米国特許第5,576,282号参照)で良く知られている。その他の実施態様では、コバルト漂白触媒は本発明の洗浄組成物で使用されている。種々のコバルト漂白触媒は本技術分野で知られ(例.米国特許第5,597,936号及び第5,595,967号)、既知の手順により容易に合成できる。
【0128】
他の実施態様では、本発明の洗浄組成物は大環状の剛性配位子(MRL)の遷移金属錯体を含む。実用的な問題として、限定するのでなく、いくつかの実施態様では、本発明により与えられる組成物と洗浄法は、水性の洗浄媒体中に少なくとも一億分の一(part per hundred million)の単位で活性なMRL種を与えるように調整され、いくつかの好ましい実施態様では、約0.005ppmから約25ppm、さらに好ましくは、約0.05ppmから約10ppm、最も好ましくは約0.1ppmから約5ppmのMRLを洗浄水に含むように調整される。
【0129】
本遷移金属漂白触媒における好ましい遷移金属は、マンガン、鉄及びクロムを含有するがこれらに限定されない。好ましいMRLは、また交差架橋した特別な超剛性配位子(例.5,12-ジエチル-1,5,8,12-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン)も含むが、これに限定されない。適した遷移金属MRLは既知の方法により容易に合成される(例えばWO2000/32601、及び米国特許第6,225,464号参照)。
金属保護剤
【0130】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は金属保護剤を含む。金属保護剤は、アルミニウム、ステンレス鋼、及び非鉄金属(例.銀と銅)を含む、金属の変色、腐食、及び/又は酸化を防止するために使用される。適した金属保護剤はEP2100949、WO942860及びWO94/26859に記載されたものを含む。いくつかの実施態様では、金属保護剤は亜鉛塩である。いくつかのさらに別の実施態様では、本発明の洗浄組成物は、重量で約0.1%から約5%の1以上の金属保護剤を含有する。

洗浄組成物を合成、使用する方法
【0131】
本発明の洗浄組成物は、調合者により選ばれたいずれかの適した形態に調合、合成される(例えば、米国特許第5,879,584号、第5,691,297号、第5,574,005号、第5,569,645号、第5,565,422号、第5,516,448号、第5,489,392号、第5,486,303号、第4,515,705号、第4,537,706号、第4,515,707号、第4,550,862号、第4,561,998号、第4,597,898号、第4,968,451号、第5,565,145号、第5,929,022号、第6,294,514号及び第6,376,445号参照)。
【0132】
いくつかの実施態様では、本発明の洗浄組成物は、錠剤、カプセル、サチェット、ポーチ及び多分割ポーチを含む、投与単位で与えられる。いくつかの実施態様では、単位投与形態は多分割ポーチ(又は他の単位投与形態)内で成分を調整的に放出するように設計される。適した単位投与量と調整された放出形態は、本技術分野で知られている(例えば、単位投与と調整された放出法で使用する適した材料についてEP2100049、WO02/102955、米国特許第4,765,916号及び第4,972,017号及びWO04/111178参照)。
使用法
【0133】
好ましい実施態様では、本発明の洗浄組成物は、本発明の洗浄組成物は表面の洗浄(例.食器類)及び布地の洗浄で使用される。いくつかの実施態様では、表面及び/又は布地の少なくとも一部は本発明の洗浄組成物の少なくとも一つの実施態様と、原液で又は洗浄水中で稀釈されて接触し、表面及び/または布地は任意に洗浄され、及び/又は濯ぎを受ける。本発明について、「洗浄」はごしごし洗うことと機械的にかき混ぜることを含むが、これに限定されない。いくつかの実施態様では、布地は正常な消費者の使用条件で洗濯され得るいずれの布地も含む。好ましい実施態様では、本発明の洗浄組成物は、溶液中に約500ppmから約15,000ppmの濃度で使用される。洗浄溶媒が水であるいくつかの実施態様では、水温は通常、約5℃から約90℃に及ぶ。布地洗浄のいくつかの好ましい実施態様では、水対布地の質量比は通常、約1:1から約30:1である。

実施例
【0134】
以下の実施例はある好ましい実施態様と本発明の面を実証しさらに説明するため提供され、本発明の範囲を制限するものとして解釈されてはならない。
【0135】
以下の実験の開示においては、次の略号が使用される。ppm(百万分の部分);M(モル濃度);mM(ミリモル);μM(マイクロモル);nM(ナノモル);mol(モル数);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);gm(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);pg(ピコグラム);L(リットル);mlとmL(ミリリットル);μlとμL(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);U(単位);V(ボルト);MW(分子量);sec(秒);min(s)(分);h(s)とhr(s)(時間);℃(摂氏温度);QS(十分な量);ND(実施せず);NA(適用せず);rpm(毎分の回転数);w/v(重量対容量);v/v(容量対容量);g(重量);OD(吸光度);aa(アミノ酸);bp(塩基対);kb(キロ塩基対);kD(キロダルトン);suc-AAPF-pNA(サクシニル-L-アラニル-L-アラニル-L-プロリル-L-フェニル-アラニル-パラニトロアニリド);BPN’(バシラス アミロリケファシエンス スブチリシン);DMSO(ジメチルスルフォキシド);cDNA(コピー又は相補的DNA);DNA(デオキシリボ核酸);ssDNA(一本鎖DNA);dsDNA(二重鎖DNA);dNTP(デオキシリボヌクレオチド3リン酸);DTT(1,4-ジチオ-DL-スレイトール);H2O(水);dH2O(脱イオン水);HCl(塩酸);MgCl2(塩化マグネシウム);MOPS(3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸);NaCl(食塩);PAGE(ポリアクリルアミド ゲル 電気泳動);PB92(バシラス・クラウシ(Bacillus clausii)スブチリシン);PBS(リン酸塩緩衝液食塩水[150mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム緩衝液,pH7.2]);PEG(ポリエチレングリコール);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);PMSF(フェニルメチルスルホニルフッ化物);RNA(リボ核酸);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アンモニウムメタン);SOC(2%Bacto-Tryptone, 0.5%Bacto Yeast Extract、10mM NaCl、2.5mMKCl);Terrific Broth(TB;12g/l Bacto Tryptone, 24 g/l グリセロール、2.31 g/l KH2PO4、及び12.54g/l K2PO4);OD280(280nmにおける吸光度);OD600(600nmにおける吸光度);A405(405nmでの吸光度);Vmax(酵素触媒反応の最大初期速度);HEPES(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N-[2-エタンスルホン酸]);Trs-HCl(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン-塩酸);TCA(トリクロロ酢酸);HPLC(高圧液体クロマトグラフィー);RP-HPLC(逆相高圧液体クロマトグラフィー);TLC(薄層クロマトグラフィー);Taq(テルムス・アクアチクス(Thermus aquaticus)DNA ポリメラーゼ);Klenow(DNAポリメラーゼ Iラージ(Klenow)断片);EDTA(エチレンジアミン4酢酸);EtOH(エタノール);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アンモニウムメタン);TAED(N,N,N’,N’-テトラアセチルエチレンジアミン);PI(性能指数);SR(汚れ又はしみ除去);MS(質量分析);AATCC(米国繊維化学技術・染色技術協会);Arzberg(Arzberg-Porzellan GmbH, シルンディンク, ドイツ);BASF(BASF Corp., フローハムパーク、ニュージャージー州);BioRad(BioRad, リッチモンド、カリフォルニア州);Cognis(Cognis Corp,米国、シンシナチー、オハイオ州)、Finnzymes(Finnzymes Oy、エスプー、フィンランド);Henkel(Henkel, GmbH, ジュッセルドルフ、ドイツ);IKW(ドイツ化粧品トイレタリー香水洗剤協会、フランクフルト、ドイツ);Invitrogen(Invitrogen Corp.,カールスバード、カリフォルニア州);Kontron(Kontron Instruments,チューリッヒ、スイス);Macherey-Nagel(Machery-Nagel、ペンシルバニア州);Miele(Miele、プリンストン、ニュージャージー州);Merieux(Instirut Merieux, コーデックス, フランス);QIAGEN(登録商標)(QIAGEN(登録商標),Inc., バレンシア、カリフォルニア州);(Reckitt Benckiser、バークス、英国);Sigma(Sigma Chemical Co.,セントルイス、ミズーリー州);Sorvall Instruments, Dupont Co.,の子会社 Biotechnology systems, ウィルミントン、デラウェア州);wfk Testmaterials (Testgewebe GmbH, ブリュッゲン−ブラハト、ドイツ)
【発明を実施するための形態】
【0136】
実施例1

本明細書で述べる場合、スブチリシン変異体は本技術分野で知られているヒュージョンPCRにより合成された(米国特許出願公開番号第2006/0252155参照)。表1-1はフージョンPCRで使用されるプライマーの配列を提供する。

【表2】

*76番の位置の置換を生成するコドン、及び制限酵素部位は太字で示されている。
【0137】
B・クラウシ(B.clausii)変異種のDNA鋳型(以下の置換を含む N87R+G118R+S128L+P129Q+S130A+S188D+N248R;BPN’のナンバリングを使用、本明細書ではGCI-P039として命名)がさらにN76D置換を含むスブチリシン変異体(本明細書では「PX3」と命名)を生成するために使用された。PX3と同一のアミノ酸配列を有する変異体は、またB・レンツス(B.lentus )GG36変異種のDNA鋳型(以下の置換を含む S87R+G118R+S128L+ P129Q+S130A+S188D+N248R; BPN’のナンバリングを使用)からN76D置換を導入することにより調製できる。
【0138】
Bg1II-Fwプライマーは、第1断片を生成するために第1の反応でN76D-Rvと組み合わされた。第2の断片は第2の反応でN76D-FwプライマーとBg1II-Rvと組み合わされて調製された。PHUSION(商標)ポリメラーゼ(Finnzymes)がPCR反応で使用された。これらの実験では、2μlの10mMの順方向と逆方向のプライマー、1μlの10mM dNTP、10μl 5XHF Phusion緩衝液、1.5μlのDMSO、1単位のポリメラーゼ及び1μlの鋳型が50μlの容量へ加えられた。以下のPCRプログラムが使用された。3分間95℃で変性、65℃で1分間のアニーリング、72℃で15秒の伸長、30サイクル、その後72℃で7分間処理。終了時、反応生成物が室温で保存された。
【0139】
2つのPCR反応から得られた期待した大きさのDNA断片がPCR精製カラム(Macherey-Nagel)を用いてアガロースゲルから精製された。この2本の希望する断片が、以下のプログラムを使用してBg1II順方向と逆方向のプライマーとPHUSION(商標)ポリメラーゼを用い、PCRで増幅を受けた。95℃で3分の変性、65℃で1分のアニーリング、72℃で2分の伸長、25サイクル、続いて、72℃で7分間の処理。終了時、反応生成物は室温で保存された。
【0140】
フュージョンPCR反応から得られるDNAの断片はBg1II制限酵素で切断して得られ、アガロースゲルから精製された。このDNA断片は続いて、最終容量が40μl中の1μlのT4DNA リガーゼ、8μlの%XT4リゲーション緩衝液中で、一夜、14℃で、Bg1IIで切断されたpHPLTプラスミド配列と連結された。
【0141】
性能をもつB・スブチリス細胞(表現型:ΔaprE、ΔnprE、oopA、ΔspoIIE、ΔUHy32、ΔamyE::[xylR,pxylA-comK])が10μlの連結された生成物を使用して形質転換され、本技術分野で知られているようなプロテアーゼ陽性の形質転換体が得られた(例えば、WO02/14490参照)。この細菌は、キシロースで誘導されるプロモーターの調節下、comK遺伝子の誘導によって活性化された(HahnらMol Microbiol, 21:763-775,1996)。プロテアーゼ陽性のクローンはスキムミルク/寒天プレート上で選別され、単離され、配列が決定された。タンパク質は振とうフラスコ培養で製造され特性決定用の相当量が得られた。
【0142】
実施例2
バチルス・スブチリスにおけるスブチリシン変異体の生成
スブチリシン変異体は10mlのTSB培地(トリプトンと大豆ベースの液体培地)で37℃で一晩B・スブチリス(B.subtilis)形質転換体を培養して製造された。250μlの一夜培養液が100mlの振とうフラスコ中の25mlのMOPSベースの調製培地(defined medium)に加えられ、37℃で68時間培養された。この調製培地は、ほぼ本技術分野で知られている(Neidhartら、J.Bacteriol, 119:736-747,1974)ようにして調製されたが、NH4Cl、FeSO4及びCaCl2がこの基礎培地には加えられず、3mMKHPO4が使用され、この基礎培地には60mM尿素、75 g/Lグルコース、及び1%のソイトンが補われた。また、微量栄養素が、1リットル中に400mgのFeSO4・7H2O、100mg MnSO4・H2O、100mgZnSO4・7H2O、50mgCuCl2・2H2O、100mg CoCl2・6H2O、100mgNaMoO4・2H2O、100mgNa2B4O7・10H2O、10mlの1M CaCl2及び10mlの0.5M酒石酸ナトリウムを含有する原液X100として調製された。目的のプロテアーゼ(つまり、プロテアーゼ変異体)が培地から単離された。
【0143】
実施例3
スブチリシン変異体の純度を決定する分析方法
本実施例では、B・スブチリス培地から得られる組換えスブチリシンの純度を決定する方法が述べられる。このプロテアーゼは、ゲルクロマトグラフィーと高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のそれぞれによって単一のバンド又はピークが見られたときは純粋であるとみなされる。
【0144】
本技術分野で知られているように(Laemmli,Nature,227:608-685,1970)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)が行われた。しかしながら、タンパク質サンプルの変性の前(例.100℃でSDS-含有サンプル緩衝液で10分間)に、自己分解を防ぐためプロテアーゼ活性の不活性化が必要である。プロテアーゼの不活性化は、30分間1mMのPMSFとタンパク質サンプルを室温で保持することにより、又は氷冷で30分間、8%トリクロロ酢酸(TCA)でタンパク質を沈殿させることにより行われた。タンパク質サンプルはpH7.45で行われた未変性PAGE(native PAGE)に付した。このゲル緩衝液は20mMのヒスチジンと50mMの3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸(MOPS)からなり、5%ポリアクリルアミドゲルはアクリルアミド:ビスアクリルアミドの比率がが20:1である。タンパク質サンプルはスラブゲルの上端に添加され陽極に向けて電気泳動された。同一のヒスチジン/MOPS緩衝液が電気泳動(タンク)緩衝液として使用されたが、pHは6.3に調整された。電気泳動(350Vで〜1-2時間)の後、このゲルは8%の酢酸に浸漬されタンパク質をこのゲルに固定した。続いて、クマシーブリリアントブルーR250で染色し、本技術分野で知られているように脱色してゲル上のタンパク質のバンドを決定する。
【0145】
プロテアーゼのサンプルの純度はMonoSカチオン交換カラム続いてTSK2000ゲルろ過カラムを使ったHPLC分析によっても確認された。前者は10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH5.5で行われ、10-300mMのリン酸ナトリウム緩衝液pH5.5の直線的グラジエントを使って結合したプロテアーゼを溶出した。ゲルろ過カラムは0.25M酢酸ナトリウムpH5.5で行われた。タンパク質の溶出プロファイルは280nmでモニターされ、目的のプロテアーゼの位置を決定しサンプルのパーセント純度を決定した。
【0146】
実施例4
スブチリシン濃度の決定
本実施例では、スブチリシン濃度を決定するために使用される方法が述べられる。いくつかの実験では、測定は計算した消光係数(extinction coefficient)(□)を用いて280nmで行われ、下記のように、精製したプロテアーゼ溶液のタンパク質濃度を決定するため活性部位の滴定が使用された。
【0147】
280nmにおける消光係数が、酵素分子当たりのトリプトファン(Trp, ε[イプシロン]=5,600M-1cm-1)及びチロシン(Tyr, ε=1,330M-1cm-1)の数から計算された。
PB92プロテアーゼについては、モル消光係数は、26,100 M-1cm-1(3Trp+7Tyr残基)であり、280nmで測定したε1%=9.7(Mr=26,729Da)に相当する。トリプトファン及び/又はチロシンの数が変わっている変異体に関しては、それに応じて補正される。
【0148】
活性酵素分子の濃度の見積もりは活性部位の滴定によって得られた。N-トランスシンナモイルイミダゾールによるアシル化の広く使用されている方法(Benderら、J.Am.Chem.Soc.,88:5890-5931)は、PB92プロテアーゼについては十分に働かないので、非可逆的阻害剤PMSFを使用する方法がその替わりに開発された。この方法では、見積もられた酵素濃度(280nmでの吸収)をもつプロテアーゼ溶液は、それぞれ、0.25、0.50、0.75、1.00及び1.25等量のPMSFと混合され、10mMのリン酸ナトリウム、pH6.5中で室温で1時間反応した。残存するプロテアーゼ活性はスクシニル-L-アラニル-L-アラニル-L-プロリル-L-フェニル-L-アラニル-L-プロリル-L-フェニル-アラニル-パラ-ニトロアニリド(suc-AAPF-pNA)を基質として使用して分光光度学的に測定された。これらの研究に関して、PMSFの純度(及び従って濃度)がNMR-分光分析により決定され、PMSFの原液がイソプロパノール中で調製された。活性部位の滴定結果はHPLC法を使用した純度チェックによるタンパク質濃度結果と一致した。
【0149】
実施例5
洗浄性能試験
この実施例では、スブチリシン変異体PX3と市販の皿洗浄及び洗濯洗剤に使用されているGCI-P038対照スブチリシンの食器洗い及び布地洗浄性能の評価に適した方法が述べられる。
【0150】
本明細書でPX3と置換N76D+N87R+G118R+S128L+P129Q+S130A +S188D+N248R(BPN’による番号付け)といわれる成熟PB92プロテアーゼ変異体のアミノ酸配列は、
【配列表5】
【0151】

である。
【0152】
成熟GCI-P037(PB92)対照スブチリシンのアミノ酸配列は、
【配列表6】
【0153】


である。
【0154】
成熟GCI-P038対照スブチリシンのアミノ酸配列は
【配列表7】
【0155】


である。
【0156】
食器洗浄性能
本実施例では、スブチリシン変異体PX3と市販の食器洗浄洗剤中のGCI-P038の食器洗浄性能を測定するため使用される方法が述べられる。
【0157】
プロテアーゼ変異体の性能は種々の自動食器洗い機の条件で試験された。皿洗浄剤の組成が表5−1と5−2に示されている。これらの洗剤はwfk Testmaterialから購入でき、そのwfk Testmaterials の名称で呼ばれる。これらの洗剤は酵素を含有しない原料から得られたのでプロテアーゼ変異体の分析が可能である。

【表3】

【表4】

【0158】
各汚れのタイプ(卵の黄身、ひき肉と卵、ミルクと卵)を調製する方法が以下に記載されている。それぞれの汚れのタイプが試験用皿に付着される前に、この皿は徹底的に洗浄された。あるしつこい汚れの残りは前回の試験で使った皿にまだ残っているかもしれないので、これは特に必要である。新しい皿も、試験で最初に使用される前に3回徹底的に洗浄される。
【0159】
ステンレス鋼上の卵の黄身の汚れの調製
これらの実験で使用されるステンレス鋼のシート(10x15 cm;片側がブラシで磨かれている)が実験用食器洗い機中で、高アルカリ性の市販の洗剤(例. ECOLAB(登録商標)洗剤;Henkel)で95℃で徹底的に洗浄を受け、清浄で油のないシートが得られた。これらのシートは最初に使用する前には、まくれが除去された。このシートは卵の黄身で汚れが付着される前、加熱庫で80℃で30分間乾燥された。磨かれた表面は汚れが付着する前は何にも触れなかった。また、この表面に水による汚れ又はほこりも付けさせなかった。冷却されたシートは、汚れを付ける前に秤量された。
【0160】
卵の黄身は、白身から約10-11個(200gの卵の黄身)の卵の黄身を分離して調製された。この黄身はガラスのビーカーの中でフォークでかき混ぜ均一の黄身の懸濁液を調製した。この黄身は、次に篩にかけられ(約0.5mmメッシュ)、粗い粒子と卵の殻のかけらを除いた。
【0161】
フラットブラシ(2.5インチ)が各ステンレスのシートの磨かれた面の面積140cm2に出来るだけ均一に、2.0±0.1gの卵の黄身を広げるため使用され、約1cm幅の縁は汚れを付けずに残した。この汚れを付けたシートは水平にして(シートの縁の上で液滴ができることを防ぐため)室温で4時間乾燥された(最大24時間)。
【0162】
卵タンパク質を変性するため、このシートは沸騰した、塩分を除いた水の中に30秒浸けられた(必要なら保持具を使用)。次に、シートは、再び80℃で30分間乾燥された。乾燥、冷却後、シートを秤量した。秤量後、シートは、これらを洗浄試験に提出する前に少なくとも24時間(20℃、40-60%相対湿度)放置された。試験の要件に適合するため、1000±100mg/140cm2(変性後の卵の黄身)のシートだけが試験に使用された。洗浄試験が行われた後、このシートは加熱庫で30分間80℃で乾燥された、冷却後、再び秤量された。パーセントによる洗浄性能は、付着した変性の卵の黄身のmgで洗浄により遊離した卵の黄身のmgを割り100倍することにより決定された。

陶器のプレート上のひき肉と卵の汚れの調製
【0163】
これらの実験では、EN 50242、フォーム1495、第0219号に則って、デザート用の皿(Arzberg, 19cm直径、白色、上薬を塗った磁器)が使用された。総量225gの脂肪のない豚肉と牛肉(50:50比)が細かく切断され、保冷された。この混合物を二度ひき肉機を通した。35℃より高い温度は避けられた。225gのひき肉は75gの卵(白身と黄身が混合されている)と混ぜられた。この調製物は、次に使用前、-18℃で3月まで冷凍された。豚肉が入手できないときは、100%の牛肉が使用された。これらは、相互に交換可能であるからである。
【0164】
ひき肉と卵の混合物(300g)は室温に戻され、80mlの塩分を除いた水と混合された。この混合物は次に、台所用手動かき混ぜ機を使って2分間均一化された。白い磁器製の各皿の上に3gのひき肉/卵/水の混合物をフォークで広げたが、縁の周り約2cm幅は、汚さずに残した。付着量は11.8±0.5g/cm2であった。このプレートは、予熱された加熱庫で120℃で2時間乾燥された。皿が冷えたら直ぐに、これらは使用できた。
【0165】
食器洗浄試験後、皿は、ひき肉のタンパク質残分がより良く分かるようニンヒドリン溶液(エタノール中1%に調製)で噴霧された。発色反応を促進するため、皿は、加熱庫で80℃、10分間加熱された。洗浄性能の評価はIKW写真カタログ(IKW-ドイツ化粧品、トイレタリー、香料洗剤協会)と比較してひき肉の残分の発色反応を目視にて調べて行われた。

ステンレスの皿の卵/ミルク汚れの調製
【0166】
これらの実験で使用されるステンレス鋼のシート(10x15 cm;片側がブラシで磨かれている)が実験用食器洗い機中で、高アルカリ性の市販の洗剤で95℃で徹底的に洗浄を受け、油脂を除き皿を洗浄にした。これらの皿はセルロース製の布で磨いて乾燥された。磨かれた表面は汚れを付けるまでは、何も触れなかった。また、表面に水の汚れやほこりもつけなかった。汚れを付ける前に、このシートは80℃で30分間加熱庫に置かれた。冷却された皿は、汚れを付ける前に秤量された。
【0167】
生卵全体の卵の黄身と白身(3-4個の卵;約160g/卵)はボールに入れられて、卵泡立て器で混ぜられた。次に、50mlの、準脱脂乳(1.5%脂肪、超高温、均一化)がこの混合物に加えられた。このミルクと卵は泡を立てないように混合された。フラットブラシでステンレスの皿の磨かれた面に、1.0±0.1gのこの卵/牛乳混合物を均一に広げ、残りは汚れの分布を調べるため使用された。このシートの短い辺に沿って約1cmの幅で汚れの付けない部分を残した。汚れを執着したシートは水平にして(シートの端に液滴が出来ることを防ぐため)室温で4時間乾燥された(最大24時間)。
【0168】
このシートは、沸騰した、塩分を除いた水の中で30秒間浸漬された(必要な場合、保持具を使用する)。次にシートは80℃で30分再び乾燥された。このシートは、乾燥、冷却後、秤量された。秤量後、洗浄試験を受ける前にシートは少なくとも24時間、静置された(20℃、40-60%相対湿度)。試験の要件に適合させるため、190±10mgの卵黄身/牛乳を付けたシートのみが使用された。
【0169】
洗浄試験が行われた後、シートは加熱庫で30分間、80℃で乾燥され、冷却後再び秤量された。パーセンテージによる洗浄性能は、使用された卵/牛乳のmgで、洗浄後、遊離された卵/牛乳を割って決定された。

洗浄器具と条件
【0170】
洗浄試験が、先に述べたようにして調製された汚れた皿とステンレスのシートを入れた自動食器洗浄器 (Miele model G690SC) で行われた。所定量の洗剤が使用された。試験温度は50℃であった。水の硬度は21°GH(ドイツ硬度)だった。
【0171】
先に述べたように、皿の洗浄後、ひき肉で汚した皿は、0から10のフォトレーティングスケール(photo rating scale)を使って目視により評価を受けた。ここで、「0」は、完全に汚れた皿に使用され、「10」は清浄な皿に使用される。これらの値は酵素含有洗剤のしみ又は汚れ除去(SR)性能に相当する。
【0172】
卵の黄身又は卵の黄身/牛乳で汚れた洗浄を受けたステンレスのプレートが、洗浄後の残存汚れ量を決定するために重量により分析された。スブチリシン変異体PX3とGCI-P038対照スブチリシンは、1度の洗浄当たり0と30mg/活性タンパク質の水準で試験を受けた。
【0173】
種々の食器洗い試験の結果が以下の表5-3から5-6に示されている。これらの実験のそれぞれにおいて、1回の洗浄当たり異なる濃度の活性なプロテアーゼが使用された。GCI-P038対照スブチリシンの洗浄性能は「100」という値が割り当てられ、変異体の洗浄性能はこの値と比較された。例えば、GCI-P038対照スブチリシンが45%の汚れ除去の結果を有し、変異体が52%の汚れ除去の結果であるときは、性能指数(PI)で表されるスブチリシン変異体の結果は、52/45x100=116である。従って、試験を受けた両洗剤について、スブチリシン変異体PX3は食器洗浄用途において、タンパク質性の汚れの除去についてGCI-P038対照サンプルより高い又は同じほどの効果を有した。
【表5】

【表6】

※ これらの特定の条件下では、汚れ除去は100%であった。

【表7】

【表8】

【0174】
実施例6
スブチリシン変異体の安定性と洗浄性能
これらの実施例では、PX3の安定性と洗浄性能を評価する方法が述べられる。
【0175】
AAPF 加水分解分析法
セリンプロテアーゼ変異体の熱安定性はプロテアーゼ変異体を68℃で1時間保温後AAPF分析を用いてプロテアーゼ活性を評価することにより決定された。分析のこの条件下では、対照プロテアーゼの残存活性(例.野生型GG36 = GCI-P036)は、約50%であった。使用した装置は:F-bottom MTPs(Coaster No.9017)、Biomek FX 及び/又はBiomek FXp Robot(Beckman Coulter)、Spectramax Pus 384 MTP Reader (Molecular Devices), iEMS恒温器/振とう器(1mm 振幅)(Thermo/Labsystems)、密封テープ(Nunc No. 236366)、及びアイスバスである。グリシン緩衝液が、960mlの水に3.75gのグリシン(Merck No. 1.04201.1000)を溶解して調製された。1mlの5%TWEEN(登録商標)-80(Sigma No.P-8074)と10mlの1000mM CaCl(Merck No. 1.02382.1000)原液(200mlに29.4 gが溶解された)がこの溶液に加えられた。pHが4N NaOHで10.5に調整され、容量が1000mlとされた。グリシン、CaCl及びTWEEN(登録商標)-80の最終濃度は、それぞれ50mM、10mM及び0.005%である。恒温槽は68℃(恒温反応)と25℃(AAPF分析)に設定された。90μlと190μlのグリシン緩衝液が、空の希釈プレートと恒温反応用プレートのそれぞれに加えられた。10μlの上澄み液がこの希釈プレートへ加えられ、続いてこの希釈プレートから10μlが恒温反応用プレートへ加えられた。次いで恒温反応用プレートから10μlの混合物が、suc-AAPF-pNA基質を含む予熱されたプレートへ加えられた。このsuc-AAPF-pNAプレートが410nmでMTP Readerで測定された(t=0 測定)。恒温反応プレートはテープでカバーされ、68℃、400rpmで1時間恒温反応を受けた。この恒温反応の終了後、プレートは恒温器から取り出され、少なくとも5分間、氷上で冷却された。恒温反応用プレートからの10μlの混合物がsuc-AAPF-pNA基質を含むプレートに移され、プレートは410nm(t=60 測定)で測定された。パーセント残存活性は、
%残存活性:(t=60におけるmOD.min-1)/ (t=0におけるmOD.min-1)
で計算される。
【0176】
LAS/EDTA 安定性試験
LAS/EDTA安定性試験は、AAPF分析を用いて分析された残存活性の関数としてLAS/EDTAの存在下、試験用プロテアーゼを恒温反応した後に測定された。
【0177】
代表的なアニオン性界面活性剤(LAS=直鎖アルキルベンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム-DOBS)とEDTA2ナトリウム塩の存在下、所定の条件下で恒温反応の後のプロテアーゼ変異体と対照プロテアーゼの安定性が測定され、残存活性がAAPF分析を用いて決定された。使用された試薬はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(DOBS,Sigma No. D-2525)、TWEEN(登録商標)-80(Sigma No. P-8074)、EDTA-2ナトリウム塩(Siegfried Handel No. 164599-02)、HEPES(Sigma No.H-7523)、非攻撃性緩衝液:50mM HEPES(11.9 g/l)+0.005% TWEEN(登録商標)-80、pH8.0、攻撃性緩衝液:50mM HEPES (11.9 g/l)、0.1%(w/v)DOBS(1 g/l)、10mM EDTA(3.36 g/l)、pH8.0、200-400μg/ml タンパク質を含む、対照プロテアーゼ変異体培養上澄液であった。使用された装置は希釈プレートとして、V-またはU-底MTP(それぞれ、Greiner 651101及び650161)、非攻撃性及びLAS/EDTA 緩衝液用およびsuc-AAPF-pNA用のF-底MTP (Corning 9017)、Biomek FX(Beckman Coulter)、Spectramax Plus MTP リーダー(Molecular Devices)、Thermo Electron Corporation のiEMS恒温器/振とう器(1mm振幅)、密封テープ:Nunc(236366)であった。
【0178】
iEMS恒温器/振とう器(Thermo/Labsystems)は29℃に設定された。培養上澄 液が、非攻撃性緩衝液を含有するプレート(マスター希釈プレート)に移されて〜25ppmの濃度まで希釈された。マスター希釈プレートからの20μlのサンプルが180μlの非攻撃性緩衝液を含むプレートに加えられ2.5ppmの最終恒温反応濃度とされた。内容物が混合され、室温に保たれ、AAPF分析がこのプレートで行われた。またマスター希釈プレートからの20μlのサンプルが180μlの攻撃性緩衝液( 50mM HEPES(11.9 g/l)、0.1%(w/v)DOBS(1 g/l)、10mM EDTA(3.36 g/l)、pH8.0)を含むプレートに加えられた。この溶液は混合され、直ちに30分間、400rpmで29℃のiEMS振とう器中に置かれた。30分間の恒温反応に続き、AAPF分析が攻撃性プレートで行われた。サンプルの安定性は以下のようにして残存及び初期AAPF活性の比率を計算することにより決定された。
:残存活性(%)=[mOD.分−1攻撃性緩衝液]*100/[mOD. 分−1非攻撃性緩衝液]

焼いた卵黄身の微小布見本分析
【0179】
スブチリシン変異体の汚れ除去性能は、市販の洗剤(CALGONIT(登録商標)洗剤[Reckitt-Benckiser];及びCASCADE(登録商標)洗剤[P&G])中でのマイクロタイタープレート(MTP)上で決定された。スブチリシン変異体試験用のサンプルが、3日間、37℃/300rpm/90%相対湿度でMTPプレート中で培養された培養液のろ液から得られた。使用された装置は以下を含む。:Biomek FX ロボット(Beckman Coulter)、SpectraMAX MTPリーダー(340型;Molecular Devices)、iEMS 恒温器/振とう器(Thermol/Labsystems);恒温反応後の反応プレートの測定用のF-底MTP(Costar 型9017)、及び上澄液の予備的希釈のためのV-底MTP(Greiner 651101)。CFT Vaardingen から得られたCS-38微小布見本(加熱して染め、経時的変化をした卵-黄身)が基質として使用された。1個の孔に2枚の微小布見本が使用された。Calgonit 5のADW錠剤が洗剤溶液を調製するために使用された。錠剤に含まれるプロテアーゼ活性を不活化するために21gの錠剤が60℃の温度まで水浴で加熱されたMilli-Q水に溶解された。この溶液は室温まで冷却され、水の容量が700mlに調整された。この溶液はさらに水で希釈され3 g/lの最終濃度にされた。水の硬度は1.46mlのCa/Mg-混合物(Ca/Mg混合物[(3:1)、1.92M CaCl2=282.3 g/L CaCl2 2H2O;0.64M MgCl=130.1 g/L MgCl6H2O]、15000gpg)を加えることにより21°GHに調整された。酵素サンプルが10mM NaCl、0.1mM CaCl2、0.005%TWEEN(登録商標)-80溶液中で予備的に希釈され、適当な濃度で試験された。
【0180】
恒温器が40℃または50℃の希望温度で設定され、72μlの希釈緩衝液、続いて8μlの上澄液が空のV-底プレート(=希釈プレート)に加えられた。次に、希釈プレートからの9μlが171μlの洗剤溶液中の恒温反応を受ける微小布見本を含むプレートに加えられた。微小布見本プレート(洗剤及び酵素を含む)は、テープでカバーされ、30分間、1400rpmで恒温器/振とう器中に置かれた。恒温反応の後、75μlの反応混合物は空のF-底プレートに移され、吸光度が、ヘアードライヤーで気泡を除いた後、MTPリーダーで405nmで読まれた。空試験(1または2枚の微小布見本と、対照スブチリシンを含むサンプルを加えていない洗剤を含むもの)も試験に含めた。
【表9】

略号:Procter & Gamble(P&G); 及びReckitt Benckise(PB)
【0181】
血液牛乳インク(BMI)微小布見本分析
スブチリシン変異体の汚れ除去性能は、マイクロタイタープレート(MTP)で市販の洗剤中で決定された。対照スブチリシンのサンプルとスブチリシン変異体のサンプルが、37℃/300rpm/90% 相対湿度で3日間MTPプレート中で培養された液体培地のろ液から得られた。使用した装置は:96孔のポリスチレンプレート(Costar No. 9017 中間的結合性(medium binding)平底)、Biomek FX 及び/又はBiomek FXp(Beckman Coulter)、Spectramax Plus 384(Molecular Devices)、1mm の振幅のiEMS 恒温反応器/振とう器(Thermo Electron Corporation)及び密封テープ(Nunc No. 236366)を含む。使用した試薬は:5mM HEPES、pH8.0または5mM MOPS、pH7緩衝液、中間的な硬度で3:1 Ca:Mg(CaCl2:MgCl2・6H2O)の水(1ガロン当たり15000グレイン(gpg)の原液を6gpgに希釈)、1プレート当たり2枚のBMI(牛乳/血液/インク)微小布見本。CFTで処理されたEMPA-116BMI綿製微小布見本、1孔当たり予洗浄されパンチで打ち抜かれた2枚の微小布見本、及びプロテアーゼ活性がないことが確認されている、熱で不活性化された既製の洗剤TIDE(登録商標)2Xを含む。この分析ではこのプロテアーゼは基質を加水分解し、基質から色素と不溶な粒子を遊離する。
【表10】

【0182】
希望温度(16℃または32℃)に恒温器を設定した。最初に、〜10ppmの酵素のマスター希釈プレートからの10μLのサンプルが190μLの上記の使用洗剤溶液を入れたBMIを入れた 2枚の-微小布見本プレートに加えられた。容量は分析プレートの変異体が最終濃度0.5ppmになるように調整された。このプレートは次にiEMS恒温器に移され、所定の温度で1400rpmの振とうをしながら30分間保温された。保温の後、100μLの上澄液が新しい96-孔のプレートに移され、405nm及び/又は600nmでMTPリーダーで測定された。対照サンプルを入れた孔(1又は2枚の微小布見本とプロテアーゼサンプルが加えられていない洗剤を含む)も試験に含められた。405nmでの測定は比較的高い値を与え、色素の除去の程度を与えるが、600nmでの測定は濁度と洗浄の程度を与える。
【0183】
汚れ除去活性の計算
得られた吸光度は、白試験の値(酵素を含まない)に対して補正され、加水分解活性の尺度を与える。各サンプル(変異体)について性能指数(PI)が計算された。この性能指数は変異体の性能(実測値)と対照値(理論値)を同一のタンパク質濃度で比較する。加えて、理論値は、標準酵素のラングミュア式のパラメーターを用いて、計算できる。1より大きい性能指数(PI>1)は標準(例.野生型)と比べてより良い変異体を示し、PI、1(PI=1)は標準と同じ性能を示す変異体を示し、1より低いPI(PI<1)は標準より性能の劣った変異体を示す。従って、PIはある状況において使用に望ましくない変異体と、優れた変異体を示す。
【0184】
スブチリシン変異体の洗浄性能は微小布見本分析(C-38布見本)を用いて決定された。変異体のLAS/EDTA安定性及び熱安定性も先に述べた方法を使用して決定された。結果は、表6-3に示されている。

【表11】

CALGON(登録商標)洗剤;**CASCADE(登録商標)洗剤
【0185】
これらの実験に加え、このプロテアーゼ変異体の洗濯用途における洗浄性能を決定するための実験が提供される。この試験洗剤は、加熱不活化された市販で入手できる洗濯洗剤である(例. TIDE(登録商標)2X Free[P&G; “NA HDL”]TIDE(登録商標)Free[P&G;”NA HDD”])BMI汚れ付着微小布見本の洗浄性能は、容量200μLにおける1400rpm振とうで30分間、25℃で0.2ppmの変異体を使用して試験された。変異体の性能は性能指数(Pi)として定量化され、これは親GCI-P036タンパク質に対する変異体の性能の比率である。
【0186】
実施例7
液体洗濯洗剤組成物
この実施例では、種々の処方の液体洗濯洗剤組成物が提供される。本発明の以下の液体洗濯洗剤組成物は以下のようにして調製される。これらの各調合において、本明細書に記載された少なくとも1個のプロテアーゼ変異体は約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含まれる。いくつかの他の実施態様では、その必要性に基づき、調合者により決定される、他の濃度が使用される。

【表12】



【表13】

#1:調合品の原液のpHを約3から約5の範囲になるよう1Nの塩酸水溶液を加える。
先の7(I)-(II)の実施例のpHは約5から約7であり、7(III)-(V)のpHは約7.5から約8.5である。
【0187】
実施例8
手洗いによる皿用液体洗剤組成物
本実施例では、種々の手洗い用皿洗浄用液体洗剤が提供される。本発明の以下の手洗皿洗浄用洗剤組成物が下記に与えられている。これらの処方のそれぞれでは、本明細書に提供される少なくとも1個のプロテアーゼ変異体が約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含まれる。いくつかの別の実施態様では、その必要に基づき、調合者により決定される他の濃度が使用される。
【表14】

実施例8(I)-(VI)のpHは約8から約11である。
【0188】
実施例9
自動食器洗い機用液体洗剤組成物
本実施例では、種々の液体自動食器洗い機用洗浄洗剤の処方が提供される。本発明の以下の手洗いによる皿洗浄用洗剤組成物は以下に与えられている。これらの調合剤のそれぞれにおいて、本明細書に提供された少なくとも1個のプロテアーゼが約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含まれる。いくつかの別の実施態様では、その必要に応じ、調合者が決める他の濃度が使用される。
【表15】

【0189】
実施例10
顆粒及び/又は錠剤洗濯組成物
本実施例は、種々の処方の顆粒及び/又は錠剤の洗濯洗剤を提供する。本発明の以下の洗濯組成物は、顆粒又は錠剤の形態でも良いが、以下に与えられている。これらの処方のそれぞれにおいて、本明細書で提供される少なくとも1個のプロテアーゼ変異体が約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含有される。いくつかの別の実施態様では、その必要に応じ、調合者が決める他の濃度が使用される。

【表16】

* 香料、染料、増白剤/SRP1/カルボキシメチルセルロースナトリウム/光増白剤/MgSO4/PVPVI/発泡抑制剤/高分子PEG/粘土
【0190】
実施例11
液体洗濯洗剤
本実施例は液体洗濯洗剤用の種々の処方を提供する。本発明の以下の液体洗濯洗剤は以下の示されている。これらの各調合物において、本明細書に提供される少なくとも1個のプロテアーゼ変異体が約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含有される。いくつかの別の実施態様では、その必要に応じ、調合者が決める他の濃度が使用される。
【表17】


【0191】
実施例12
高密度皿洗い洗剤
本実施例は高密度食器洗浄洗剤の種々の処方を提供する。本発明の以下のコンパクト高密度食器洗浄洗剤が以下の提供されている。これらの処方のそれぞれにおいて、本明細書に提供された少なくとも1個プロテアーゼ変異体は、約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含有される。いくつかの他の実施態様では、その必要に応じ、調合者が決める他の濃度が使用される。


【表18】

* 増白剤/染料/カルボキシメチルセルロースナトリウム/光増白剤/MgSO4/PVPVI/発泡抑制剤/高分子PEG/粘土

実施例12(I)から(VI)のpHは約9.6から11.3である。
【0192】
実施例13
錠剤洗剤組成物
本実施例は錠剤洗剤処方を提供する。本発明の以下の錠剤洗剤組成物は顆粒食器洗浄洗剤組成物を、標準的な12ヘッド回転プレス機を使って13KN/cm2の圧力で圧縮して調製される。これらの処方のそれぞれにおいて、本明細書で提供される少なくとも1個のプロテアーゼ変異体が約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含有される。いくつかの他の実施態様では、その必要に応じ、調合者が決める他の濃度が使用される。
【表19】

増白剤/SRP1/カルボキシメチルセルロースNa/光増白剤/MgSO4/PVPVI/発泡抑制剤/高分子PEG/粘土
【0193】
実施例13(I)から13(VII)のpHは約10から約11.5であり;13(VIII)のpHは8-10である。実施例13(I)から13(VIII)の錠剤の重量は約20グラムから約30グラムである。
【0194】
実施例14
液体の硬い表面用洗浄洗剤
本実施例は液体の硬い表面洗浄洗剤用の種々の処方を与える。本発明の以下の液体の硬い表面用洗浄洗剤組成物が以下に提供されている。これらの処方それぞれでは、本明細書で提供されている少なくとも1個のプロテアーゼ変異体は約0.0001から約10重量パーセントの濃度で含有されている。いくつかの他の実施態様では、必要に応じて調合者が決めた
他の濃度が使用される。
【表20】

実施例14(I)から(VII)の実施例のpHは約7.4から約9.5である。
【0195】
明細書で述べられた全ての特許と刊行物は本発明が属する技術分野の技術者の水準を示す。本技術分野の技術者が、本発明が発明の対象を実施しその目的と述べられた利点及び発明に内在する固有の利点を得るため良く適合していることを理解するのは容易である。本明細書に述べられた本組成物と方法は好ましい実施態様の代表であって、例示であり、かつ本発明の範囲について限定することを意図していない。本技術分野の技術者には、本明細書に開示されている発明に発明の範囲と本質を逸脱することなく種々の置換と修飾を行いうることが明らかである。
【0196】
本明細書に説明のため述べられた発明は、本明細書に具体的に開示されていない発明の特定事項や限定がなくても実施できる。使用された用語と表現は記述のための用語として用いられるのであり、限定するものとして用いられているのではない。また、このような用語、表現の使用により、示されまた述べられた技術的特徴と等価であるもの、またはその一部を除く意図はない。しかし、請求に係る発明の範囲内で様々な修飾が可能であることが分かる。すなわち、本発明は、好ましい実施態様と任意の技術的特徴により具体的に開示されたが、明細書に開示された概念の修飾、変更は本技術分野の技術者により行うことができ、そのような修飾と変更は本明細書で定義された本発明の範囲内であるとみなされることは理解されるべきである。
【0197】
本発明は明細書において広く、属について述べてきた。開示された属の範囲にあるより下位の種や、属の下位の分類(subgeneric groupings)もまた本発明の一部である。これには、発明の属について、除くものが具体的に本明細書に述べられているか否かに拘らず、ある属からいずれかの物を除くという但し書き又は否定的限定を伴う記述が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号第5で表されたアミノ酸配列を含むスブツリシン変異体。
【請求項2】
請求項1のスブチリシン変異体を含む組成物。
【請求項3】
洗浄組成物である、請求項2の組成物。
【請求項4】
洗濯用洗剤である請求項3の洗浄組成物
【請求項5】
食器洗浄用洗剤である請求項3の洗浄組成物。
【請求項6】
自動食器洗浄機用洗剤である請求項5の食器洗浄用洗剤。
【請求項7】
液体洗剤である請求項3の洗浄組成物。
【請求項8】
ゲル、錠剤、粉末または顆粒洗剤である請求項3の洗浄組成物。
【請求項9】
リン酸塩を含有しない請求項3の洗浄組成物。
【請求項10】
さらに少なくとも1個の漂白剤を含有する請求項3−9のいずれかの請求項の洗浄組成物。
【請求項11】
請求項3-10のいずれかの請求項の洗浄組成物であり、さらに少なくとも1個の追加の酵素を含有する洗浄組成物。
【請求項12】
請求項11の洗浄組成物であって、前記の少なくとも1個の追加の酵素はヘミセルラーゼ、セルラーゼ、パーオキシダーゼ、プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エズテラーゼ、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクテートリアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ及びアミラーゼ又はそれらの混合物から選ばれるものである、洗浄組成物。
【請求項13】
洗浄を受ける物品と配列番号第5で表されたスブチリシン変異体を与えること及び前記組成物と前記物品を接触させることを含む組成物を含む洗浄方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、さらに前記洗浄を受ける物品を濯ぐ段階を含む方法。
【請求項15】
請求項13−14の何れかの方法であって、前記物品が食器又は布地である、方法。

【公表番号】特表2012−508032(P2012−508032A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536419(P2011−536419)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/063885
【国際公開番号】WO2010/056671
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】