説明

スプリンクラー用巻き出し配管の施工方法

【課題】長尺のスプリンクラー用巻き出し配管も現場へ運びやすく、現場では施工性の向上を図れるスプリンクラー巻き出し用配管の施工方法を提供する。
【解決手段】可撓性のフレキシブル管4の先端部に配管された枝管15側の分岐継手17に接続するための接続金具5を、後端部にスプリンクラーヘッド取付管6をそれぞれ取り付けたスプリンクラー用巻き出し配管1を、工場出荷時点でスプリンクラーヘッド取付管6が外径側に配置するように螺旋状に巻いてなり、この螺旋状に巻いたスプリンクラー用巻き出し配管1を、そのまま現場へ運搬して分岐継手17に接続金具5を接続するとともに、天井裏に吊り下げておく。しかる後スプリンクラー用巻き出し配管1のスプリンクラーヘッド取付管6を天井の表側に取り付けられたスプリンクラーヘッドに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプリンクラー用巻き出し配管の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー用巻き出し配管は、天井裏に配管されて飲料水を配る枝管(給水用枝管)と天井の表側に取り付けられるスプリンクラーヘッドとの間を連結する。この種のスプリンクラー用巻き出し配管は、所要長さの可撓性の巻き出し管の一端部(上流側端)に枝管側の分岐継手に接続するためのユニオン式の袋ナットを装着するとともに、該袋ナットに特殊ニップルを螺合させ、他端部(下流側端)にスプリンクラーヘッド取付管を接続したものがある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
また、近年では、前記特殊ニップルを不要にすべく回転型ニップルを可撓性の巻き出し管(フレキシブル管)の枝管接続側端に装着したものが多く見られるようになった(例えば、特許文献3,4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−235484号公報
【特許文献2】特開平7−213640号公報
【特許文献3】特開2005−279200号公報
【特許文献4】特開平9−294822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらスプリンクラー用巻き出し配管は、予め工場で組み立て、真直ぐに伸ばした状態のまま出荷し、現場で天井裏の枝管と天井の表側に取り付けられるスプリンクラーヘッドとの間を接続しているが、とくに1.5〜4mのような長尺のスプリンクラー用巻き出し配管は長尺のままでは運搬しにくい。しかも、現場施工において天井裏で枝管とスプリンクラーヘッドとの間を接続する前の段階でその複数本の長尺スプリンクラー用巻き出し配管を天井裏に仮置きするには設置スペースを広くとり、作業の困難性を招く原因になるいう問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、長尺のスプリンクラー用巻き出し配管も現場へ運びやすく、現場では施工性の向上を図れるスプリンクラー巻き出し用配管の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に記載のように、所定長さの可撓性のフレキシブル管の先端部に、天井裏に配管された枝管側の分岐継手に接続するためのユニオン式の袋ナットや回転ニップル等の接続金具を、後端部にレジューサ管等からなるスプリンクラーヘッド取付管をそれぞれ取り付けたスプリンクラー用巻き出し配管を、工場出荷時点で前記スプリンクラーヘッド取付管が外径側に配置するように螺旋状に巻いてなり、この螺旋状に巻いたスプリンクラー用巻き出し配管を、そのまま現場へ運搬して前記枝管側の分岐継手に前記接続金具を接続するとともに、天井裏に吊り下げておき、しかる後前記天井裏から前記スプリンクラー用巻き出し配管を外して前記スプリンクラーヘッド取付管を天井の表側に取り付けられたスプリンクラーヘッドに接続することに特徴を有するものである。
【0008】
上記構成によると、工場からの出荷時点でスプリンクラー用巻き出し配管を螺旋状に巻く方策を採用するため、そのスプリンクラー用巻き出し配管が長尺である場合も現場へ運搬しやすい。現場ではスプリンクラー用巻き出し配管を螺旋状に巻いた状態のまま天井裏に吊り下げるため、設置スペースを広く取ることなく、狭い天井裏での施工作業に邪魔になることも無くなる。工場出荷時点でスプリンクラー用巻き出し配管はスプリンクラーヘッド取付管が外径側に配置するように螺旋状に巻いてあるので、現場ではスプリンクラーヘッド取付管をスプリンクラーヘッドに接続しやすい。また、現場でスプリンクラー用巻き出し配管を天井裏に吊り下げるときは既に螺旋状に巻かれているので、現場でそれをわざわざ巻く作業は省略することができ、この点でも現場施工性が向上する。
【0009】
請求項1記載のスプリンクラー用巻き出し配管の施工方法は、請求項2に記載のように、前記螺旋状に巻いたスプリンクラー用巻き出し配管を紐、帯、あるいは金属線等の結束部材で縛り、この結束部材を利用して前記天井裏のスプリンクラーヘッド接続作業に支障のない場所への吊り下げを行うという構成を採用することができる。
【0010】
このような構成によると、結束部材を利用することで螺旋状に巻いたスプリンクラー用巻き出し配管も天井裏に容易に吊り下げることができ、現場での施工性をより一層向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長尺のスプリンクラー用巻き出し配管も現場へ運びやすく、現場では施工性の向上を図れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示すスプリンクラー用巻き出し配管の半欠截断面図である。
【図2】図1におけるA部の拡大図である。
【図3】スプリンクラー用巻き出し配管を螺旋状に巻いて紐等結束部材で縛った状態の斜視図である。
【図4】スプリンクラー用巻き出し配管を螺旋状に巻いた状態のまま天井裏に吊り下げた状態の一例を示す説明図である。
【図5】スプリンクラー用巻き出し配管を施工した例を示す説明図である。
【図6】他の実施例のスプリンクラー用巻き出し配管の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るスプリンクラー用巻き出し配管の施工方法について、図1〜図5を参照にして工程順に説明する。
【0014】
まず、予め工場で、図1、図2に示すように、スプリンクラー用巻き出し配管1を後述する要領で組み立てる。次いで、図3に示すように、このスプリンクラー用巻き出し配管1を螺旋状に巻いて紐、帯、あるいは金属線等の結束部材Bで縛る。
【0015】
上記スプリンクラー用巻き出し配管1の組み立てに際しては、図1、図2に示すように、円周方向全周に延びる山部2と谷部3とを管軸方向へ交互に並設したステンレス等金属製の所定長さのフレキシブル管4と、このフレキシブル管4の先端部(上流側端)に外嵌され図4、図5に示す給水用の枝管15側の分岐継手17の雌ねじ部にねじ込み接続されるステンレス等金属製の回転ニップル5と、フレキシブル管4の後端部(下流側端)に溶接wにより一体結合され図5に示すスプリンクラーヘッド23の雄ねじ部にねじ込み接続されるステンレス等金属製の直線形あるいはベンド形状のレジューサ管等からなるスプリンクラーヘッド取付管6とを備えた状態に組み立てる。
図1、図2に示すように、回転ニップル5は先端部の外周に先窄まり状のテーパ雄ねじ7を設けており、回転ニップル5の内径部8の後端口は内径部8よりもさらに大きくくり広げて拡大後端口8aに形成し、内径部8と拡大後端口8aとの間に段部9を形成している。
【0016】
フレキシブル管4の先端側には内面にシリコングリス等の潤滑材を塗付した回転ニップル5を挿入した後、最先端の第1山部2aとこの第1山部2aに隣接する第2山部2bを拡径する。第1,2山部2a,2bの拡径加工は図外の拡径装置で第1,2山部2a,2bの内径を所定量だけ拡大して押しつぶすことで行なわれる。このように拡径された第1,2拡径山部2a,2bのうち第2拡径山部2bの後面側は回転ニップル5の先端面5aに当接させることで、抜止めリング等を用いることなく、回転ニップル5の抜止めを図る。この場合、第1,2拡径山部2a,2bの拡径量が小さ過ぎるとフレキシブル管4の内封水圧(例えば、最大5.6MPa=引張力約280Kgf)に対して回転ニップル5が抜け出るし、大き過ぎると回転ニップル5のテーパ雄ねじ7の先端谷径(最小外径)に達して回転ニップル5のテーパ雄ねじ7を図4、図5に示す枝管15側の分岐継手17の雌ねじにねじ込み接続するのに障害となる。したがって、第1,2拡径山部2a,2bの最大外径は回転ニップル5の内径部8の内径よりも十分に大きくかつ回転ニップル5のテーパ雄ねじ7の先端谷径(最小外径)よりも小さく形成する。
【0017】
図2に示すように、回転ニップル5で覆われるフレキシブル管4の先端側領域における或る一つの谷部である第1谷部3aと、この第1谷部3aに隣接するもう一つの第2谷部3bにはそれぞれそれら第1,2谷部3a,3bと回転ニップル5内周との間で圧縮変形してその間の隙間を密封シールするためのゴム製のOリング10,11を嵌め込む。さらに、第1谷部3aの巻き出し管先端側に隣接する第3谷部3c及び第2谷部3bの巻き出し管後方側に隣接する第4谷部3dにそれぞれ樹脂製又は金属製の調心リング12,13を嵌め込む。調心リング12,13は各円周一部を切断した欠円形状に形成している。なお、Oリング10,11および調心リング12,13が上記のようにフレキシブル管4に装着された後はそれらOリング10,11および調心リング12,13の各外周面にはシリコングリス等の潤滑材を塗付することで、回転ニップル5を回転し易くしている。
【0018】
調心リング12,13の自由状態(調心リング12,13が拡縮径するように変形されておらず圧縮応力又は引張応力が作用していない状態)における外径は回転ニップル5の内径部8の内径よりも僅かに小さく、かつ、自由状態における内径はフレキシブル管4の第3谷部3c及び第4谷部3dの谷外径より僅かに小さくして、調心リング12,13をフレキシブル管4の第3,4谷部3c,3dに装着したとき調心リング12,13の内径部が第3,4谷部3c,3dの谷外径部に確実に圧接するようにしている。これは、回転ニップル5をフレキシブル管4の先端側部に容易に押し込めるようにするためである。
【0019】
このように調心リング12,13をOリング10,11の前後に配置しておくと、図5に示す枝管15側の分岐継手17とスプリンクラーヘッド23との間を本スプリンクラー巻き出し配管1で接続した状態下で、調心リング12,13による自動調心作用によりフレキシブル管4のがたつきを有効に防止できるため、回転ニップル5の内部でフレキシブル管4が内封水圧で斜めになる等して径方向にがたついてOリング10,11が第1,2谷部3a,3bからはみ出して内封水が漏れるのを有効確実に防止できる。
【0020】
回転ニップル5がフレキシブル管4の管軸方向後方へ移動してフレキシブル管4の先端側領域から管軸方向後方へ外れ出ることのないようにその後方移動を規制するために、回転ニップル5の拡大後端口部8aの内部に対応する位置にあるフレキシブル管4の一つもしくは二つの第3山部2cを押しつぶして回転ニップル5の内径部8の内径よりも大きい外径の第3拡径山部2cを形成したうえで、この第3拡径山部2cを拡大後端口部8a内に突出させる。その際、第2拡径山部2bの後面側が回転ニップル5の先端面5aに当接した状態の下で、回転ニップル5の段部9とフレキシブル管4の第3拡径山部2cとの間に僅かな隙間sが形成されるようにして、フレキシブル管4が内封水圧により管軸方向に僅かに伸び移動するのを許容している。
【0021】
次いで、上記のように組み立てたスプリンクラー用巻き出し配管1は工場から現場へ向けて出荷されるが、この出荷時点では、スプリンクラー用巻き出し配管1は、図3に示すように、スプリンクラーヘッド取付管6が必ず外径側に配置するように、せいぜい4mでも2巻き程度で内側へ巻いて行く。この2巻き程度に巻いて結束した1本のスプリンクラー用巻き出し配管1は5本程度を積み重ね別の紐等結束部材(図示せず)で再度結束してビニール袋(図示せず)等へ入れて現場へ運搬する。このようにスプリンクラー用巻き出し配管1の出荷時点で予め巻いて紐等結束部材Bで縛っていると、そのスプリンクラー用巻き出し配管1が4m程の長尺である場合も現場へ楽に運搬することができる。
【0022】
現場施工では、図4に示すように、先ず、天井裏に給水管の主管(図示せず)と、この主管から分岐した枝管15を設置し、枝管15にチーズ16を接続する。一方、現場に運搬された、螺旋状に巻いて紐等結束部材Bで縛られたスプリンクラー用巻き出し配管1(図3参照)は、天井裏でのスプリンクラーヘッド接続作業に邪魔にならないように、巻き状態のまま主管や枝管15、または階上スラブVから垂下した吊りボルト(図示せず)等に後述するスプリンクラーヘッド23の位置が決まるまで一時的に吊り下げておく。このとき、結束部材Bを利用することでスプリンクラー用巻き出し配管1を枝管15等に容易にくくり付けて吊り下げることができる。また、スプリンクラー用巻き出し配管1は出荷時点で螺旋状に巻いた状態のまま吊り下げられるため、設置スペースを広く取るようなこともなく、また現場でそれをわざわざ巻く作業を省略することができ、それだけ現場施工性を向上できる。
【0023】
次いで、チーズ16に所定数の接続口を持つ分岐継手17を接続する。枝管15等に吊り下げられているスプリンクラー用巻き出し配管1の回転ニップル5は分岐継手17の接続口にねじ込み接続する。次いで、C型チャンネル等からなる野縁受け18を設置し、この野縁受け18にはMバー等からなる野縁19を直交状に取り付ける。野縁受け18には角バー等からなる固定バー21をバー固定金具20で固定する。
次いで、図5に示すように、スプリンクラーヘッド23の位置決めを行い、固定バー21にスプリンクラーヘッド取付管6をロック金具22で取り付け、スプリンクラーヘッド取付管6の雌ねじにスプリンクラーヘッド23の雄ねじ部をねじ込み接続する。その際、スプリンクラー用巻き出し配管1はスプリンクラーヘッド取付管6が外径側に配置するように巻いているので、スプリンクラーヘッド取付管6をスプリンクラーヘッド23に容易に接続することができる。最後に、天井ボード24をこれの表側にスプリンクラーヘッド23が突出するように張設する。
【0024】
スプリンクラー用巻き出し配管1の先端部に取り付ける接続金具としては、上記回転ニップル5に代えて、図6のようにユニオン式の袋ナット25を装着するもの(この場合、袋ナット25に螺合する特殊ニップル26を用いる)等であってもよい。なお、図6において、31はフレキシブル管4の端部寄りに形成した鍔部、32は特殊ニップル26と鍔部31との間に介在させたOリング、33および34は袋ナット25と鍔部31との間に介在させた絶縁リングおよび補強リングを示す。
【符号の説明】
【0025】
1 スプリンクラー巻き出し配管
B 結束部材
4 フレキシブル管
5,30 回転ニップル(接続金具)
6 スプリンクラーヘッド取付管
15 枝管
17 分岐継手
23 スプリンクラーヘッド
24 天井ボード
25 袋ナット(接続金具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの可撓性のフレキシブル管の先端部に、天井裏に配管された枝管側の分岐継手に接続するための接続金具を、後端部にスプリンクラーヘッド取付管をそれぞれ取り付けたスプリンクラー用巻き出し配管を、工場出荷時点で前記スプリンクラーヘッド取付管が外径側に配置するように螺旋状に巻いてなり、この螺旋状に巻いたスプリンクラー用巻き出し配管を、そのまま現場へ運搬して前記枝管側の分岐継手に前記接続金具を接続するとともに、天井裏に吊り下げておき、しかる後前記天井裏から前記スプリンクラー用巻き出し配管を外して前記スプリンクラーヘッド取付管を天井の表側に取り付けられたスプリンクラーヘッドに接続することを特徴とする、スプリンクラー用巻き出し配管の施工方法。
【請求項2】
前記螺旋状に巻いたスプリンクラー用巻き出し配管を結束部材で縛り、この結束部材を利用して前記天井裏への吊り下げを行う、請求項1記載のスプリンクラー用巻き出し配管の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112169(P2011−112169A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269643(P2009−269643)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000110996)ニッコーメタル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】