説明

スプリンクラ消火設備及びこのスプリンクラ消火設備に使用されるスプリンクラヘッド

【課題】スプリンクラ消火設備の点検後に配管から水を除去することが可能で、配管の腐食を抑制することが可能なスプリンクラ消火設備及びこのスプリンクラ消火設備に使用されるスプリンクラヘッドを得る。
【解決手段】スプリンクラヘッド100が接続される配管に負圧ポンプ205が接続され、配管の内部が、負圧ポンプ205の動作によって負圧状態にされるスプリンクラ消火設備において、スプリンクラヘッド100は、円筒状の筒部の内部に放水口3が形成されたヘッド本体1と、ヘッド本体1の下方に設けられるフレーム6と、放水口3を塞ぐ弁体11と、弁体11を支持する感熱分解機構(グラスバルブ15)と、放水口3の側に向かって感熱分解機構の周囲の空気を流す逆止弁機構20とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプリンクラ消火設備及びこのスプリンクラ消火設備に使用されるスプリンクラヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドとしては、例えば、内部に放水口を有するヘッド本体、ヘッド本体の下方に接続された円筒状のフレーム、放水口を封止する弁体、及び弁体を支持する感熱分解機構等を備えたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。このようなスプリンクラヘッドは、例えば天井懐(天井裏の空間)に設置されている二次側配管に接続された立ち下がり配管の下部に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−231949号公報(段落0018〜0022、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプリンクラ消火設備には、配管内に充水しない乾式のスプリンクラ消火設備がある。このような乾式のスプリンクラ消火設備においても、設備の水漏れ等を点検する際には、配管内に充水を行う。スプリンクラ消火設備の点検後、乾式のスプリンクラ消火設備では配管内の水が除去されることとなる。
しかしながら、従来のスプリンクラヘッドを用いたスプリンクラ消火設備においては、スプリンクラ消火設備の点検時に配管へ充填した水が立ち下がり配管に残ってしまい、立ち下がり配管等の配管を腐食させてしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、スプリンクラ消火設備の点検後に立ち下がり配管から水を除去することが可能で、配管の腐食を抑制することが可能なスプリンクラ消火設備及びこのスプリンクラ消火設備に使用されるスプリンクラヘッドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッドが接続される配管に負圧ポンプが接続され、配管の内部が、負圧ポンプの動作によって負圧状態にされるスプリンクラ消火設備において、スプリンクラヘッドは、円筒状の筒部の内部に放水口が形成されたヘッド本体と、ヘッド本体の下方に設けられるフレームと、放水口を塞ぐ弁体と、弁体を支持する感熱分解機構と、放水口の側に向かって感熱分解機構の周囲の空気を流す逆止弁機構とを備えたものである。
【0007】
また、逆止弁機構は、弁体に設けられているものである。逆止弁機構とは、例えば、弁体の下部及び側部の少なくとも一方に形成された流入口と、弁体の上部に形成された流出口と、流出口と流入口とを連通する連通路内に設けられる逆止弁とを備えたものである。
【0008】
また、本発明に係るスプリンクラヘッドは、上記のスプリンクラ消火設備に使用されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、配管に接続された負圧ポンプを動かしてヘッド本体が接続される立ち下がり配管に残っている水を吸引すると、逆止弁機構から放水口へ、防護区域内の空気が吸引される。このため、立ち下がり配管内の水も吸引することが可能となる。したがって、配管の腐食を抑制することができる。
【0010】
また、逆止弁機構を弁体に用いた場合、火災時に、ヘッド本体が接続された配管内の空気を負圧ポンプで吸引すると逆止弁が開放して、防護区域内の熱気流は感熱分解機構の周囲を通過して放水口側へと流れる。したがって、感度の高いスプリンクラヘッド及びこのスプリンクラヘッドを用いたスプリンクラ消火設備を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの縦断面模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドを用いたスプリンクラ消火設備のシステム構成図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの縦断面模式図である。スプリンクラヘッド100は、ヘッド本体1、フレーム6、弁体11、及び感熱分解機構であるグラスバルブ15等から構成されている。
【0013】
ヘッド本体1は、略円筒状をしており、中心部に放水口3が貫設されている。このヘッド本体1の上部には配管(図2に示す立ち上がり配管301)に接続されるねじ部4が形成されており、ヘッド本体1の下部には例えば円筒状のフランジ5が設けられている。
【0014】
ヘッド本体1の下方には、柱状のフレーム6が設けられている。このフレーム6は、アーム部7及び支承部8等から構成されている。アーム部7は、フランジ5の下部から突設され、途中が内側に幾分傾斜してから下端が略水平方向に折曲されている。このアーム部7の下端には、略円筒状の支承部8が連結されている。この支承部8の中心部には、雌ねじ部9が貫設されている。この雌ねじ部9には押しネジ10が螺合されており、支承部8の下方にデフレクタ16が設けられている。
なお、本実施の形態1ではヘッド本体1とフレーム6を一体で形成しているが、ヘッド本体1とフレーム6を分離可能な構造としてもよい。
【0015】
放水口3の下方には弁体11が設けられている。弁体11は、基板12及び頭部13等から構成されている。略円筒状の基板12は、その外径が放水口3の直径よりもわずかに大きく形成されている。この基板12の下部の中心部には、グラスバルブ15の上部が挿入される凹部12aが形成されている。また、基板12の上部の中心部には、基板12よりも直径が小さな略円筒状の頭部13が形成されている。グラスバルブ15に支持されている状態においては、頭部13が放水口3に挿入され、基板12の上部が皿バネ14を介して放水口3の下部を閉塞している。
【0016】
この弁体11には、逆止弁機構20が設けられている。この逆止弁機構20は、流入口21、流出口22、連通路23、逆止弁となるボール24、渦巻バネ25及びバネ押さえ26等から構成されている。例えば2つの流入口21は弁体11の下部に形成されており、流出口22は弁体11の上部に形成されている。これら流入口21及び流入口は、連通路23によって連通している。この連通路23は上部側の内径が大きくなっており、内径が変わる位置にはテーパー部が形成されている。逆止弁となるボール24は、連通路23内に設けられている。このボール24は、ボール24とバネ押さえ26との間に設けられた渦巻バネ25により付勢されている。これにより、ボール24は連通路23のテーパー部に当接している。バネ押さえ26は、例えば弁体11の頭部13から突設されている。
なお、流入口21は弁体11の側部に設けられていてもよい。また、渦巻バネ25に換えて、例えば板バネ等によりボール24の上部を付勢してもよい。
【0017】
グラスバルブ15は、先端を尖らせた略円筒形状をしており、例えば硬質のガラス管で形成されている。また、グラスバルブ15の内部には、エーテル等の熱膨脹率の高い液体が小気泡を残して封入されている。硬質ガラス製のグラスバルブ15は、軸方向の強度が与えられている。そして、グラスバルブ15は、弁体11と押しネジ10の間に設けられ、上方に向く一定の押圧力が加えられている。このような構成により、上述の弁体11は放水口3を閉塞している。
【0018】
(スプリンクラ消火設備)
図2は、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドを用いたスプリンクラ消火設備のシステム構成図である。このスプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッド100を用いたスプリンクラ消火設備であり、以下のように構成されている。
【0019】
防護区域201には、複数のスプリンクラヘッド100が設けられている。また、この防護区域201には、防護区域201内で発生した火災を感知する火災感知器202が設けられている。
【0020】
各スプリンクラヘッド100は立ち下がり配管301に接続されている。また、立ち下がり配管301のそれぞれは、二次側配管302に接続されている。この二次側配管302の一方の端部は、開閉弁203の一方の端部に接続されている。この開閉弁203の他方の端部は配管303を介して真空チャンバー204に接続されており、この真空チャンバー204には負圧ポンプ(真空ポンプともいう)205が接続されている。また、開閉弁203と真空チャンバー204の間には、排水配管320が接続されている。また、二次側配管302の他方の端部は、末端試験弁206の一方の端部に接続されている。末端試験弁206の他方の端部には、排水配管321が接続されている。
【0021】
二次側配管302には、配管310を介して流水検知装置210も接続されている。この流水検知装置210は、配管311を介して消火ポンプ211の吐出口に接続されている。この消火ポンプ211は、吸水口に配管312が接続されており、消火水槽212から消火水を吸引することが可能となっている。
【0022】
火災感知器202、開閉弁203及び流水検知装置210は、信号線によって制御盤220と接続されている。この制御盤220は、火災感知器202からの火災信号の有無等によって、開閉弁203及び流水検知装置210の開閉弁210aの開閉を制御し、負圧ポンプ205及び消火ポンプ211の起動及び停止を制御する。
【0023】
(水漏れ点検動作)
次に、図1及び図2を用いて、このようなスプリンクラ消火設備の水漏れ点検動作について説明する。
開閉弁203及び末端試験弁206を閉じた状態で、流水検知装置210の開閉弁210aを開き、消火ポンプ211を起動させる。これにより立ち下がり配管301、二次側配管302及び配管310の内部に消火水が満たされる。この状態で、スプリンクラ消火設備から水漏れ等がないかを点検する。
【0024】
スプリンクラ消火設備の水漏れ点検終了後、水抜き作業のため、流水検知装置210の開閉弁210aを閉じて開閉弁203及び末端試験弁206を開く。そして、この状態で負圧ポンプ205を起動させる。これにより、二次側配管302、配管303及び配管310の内部は、負圧ポンプ205によって吸引され、排水配管320を介して消火水槽212へ戻される。このとき、従来のスプリンクラヘッドを用いたスプリンクラ消火設備では、立ち下がり配管301内の消火水を吸引(除去)できずにいた。このため、立ち下がり配管301内が腐食してしまうことがあった。
【0025】
しかしながら、本実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備では、負圧ポンプ205の吸引力により、逆止弁となるボール24が連通路23内を上方へ移動する。これにより、流入口21と流出口22とが連通し、防護区域201内の空気が放水口3を介して立ち下がり配管301に吸引される。このため、立ち下がり配管301内の消火水も吸引(除去)することができ、立ち下がり配管301内の腐食を抑制することができる。
【0026】
なお、水漏れ点検動作時においては、立ち下がり配管301、二次側配管302、配管303及び配管310の内部は負圧の状態となっている。また、配管311は、消火水槽212に貯留されていた消火水で満たされた状態となっている。この状態で開閉弁203を閉じ、負圧ポンプ205及び消火ポンプ211を停止させると、火災感知器202が火災を感知していない通常の監視状態となる。つまり、本実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備は、乾式のスプリンクラ消火設備である。
【0027】
(消火動作)
続いて、図1及び図2を用いて、スプリンクラヘッド100及びスプリンクラ消火設備の消火動作について説明する。
【0028】
火災感知器202が火災を感知すると、スプリンクラ消火設備では、火災感知器202が火災信号を制御盤220に送信する。そして、火災信号を受信した制御盤220は、開閉弁203を開放させて負圧ポンプ205を起動させる。なお、負圧ポンプ205は、常時作動させておくか、火災のプレアラーム信号で起動させることが、スプリンクラヘッド100の動作を早める点で好ましい。なお、火災信号で開放させる場合には、開閉弁210aを開放させるのに先立って、所定時間だけ開閉弁203を開放させるようにする。
一方、スプリンクラヘッド100では、火災によって発生した熱気流によってグラスバルブ15内に封入された液体が熱膨張する。そして、この熱膨張によってグラスバルブ15の硬質ガラスに係る圧力が耐圧を超えると、グラスバルブ15の硬質ガラスは破壊される。同時に、グラスバルブ15に支持されていた弁体11が落下する。これにより、放水口3が開放され、スプリンクラヘッド100は消火水を放水可能な状態になる。
【0029】
本実施の形態1では、火災が発生すると、負圧ポンプ205の吸引力により、逆止弁となるボール24が連通路23内を上方へ移動する。これにより、流入口21と流出口22とが連通し、防護区域201の熱気流が放水口3を介して立ち下がり配管301に吸引される。このため、熱気流はグラスバルブ15の周辺を通過することとなる。したがって、グラスバルブ15の加熱が促進され、グラスバルブ15内に封入された液体の熱膨張速度が増加し、スプリンクラヘッド100の開放までの動作時間が早まり、感度が向上する。
【0030】
なお、開閉弁210aを開放して火災時における立ち下がり配管301及び二次側配管302等に充水する時期は、弁体11が落下して放水口3が開放された後でもよいし、放水口3が開放される前でもよい。放水口3が開放される前に立ち下がり配管301及び二次側配管302等に充水した場合、ボール24が連通路23のテーパー部に当接することにより連通路23を閉塞しているので、消火水が漏れることを防止できる。
【0031】
また、本実施の形態1では逆止弁機構20を弁体11に設けたが、他の場所に設けてもよい。例えば、フランジ5の下方に流入口21を設け、放水口3の側面に流出口22を設けるように、逆止弁機構20を設けてもよい。また、逆止弁機構20には渦巻バネ25は必ずしも必要でない。流出口22からボールが出ないように、例えば弁体11の頭部13からバネ押さえ26の様な形状のカバー部等を突設することにより、本発明を実施することができる。
【0032】
また、本実施の形態1ではスプリンクラ消火設備に負圧ポンプ205を設けたが、負圧ポンプが設けられていない乾式のスプリンクラ消火設備にも本発明は実施可能である。例えば、水漏れ点検終了後の水抜き作業の際、図2に示す排水配管321に負圧ポンプを接続すればよい。負圧ポンプを起動させて末端試験弁206を開くことにより、立ち下がり配管301内の消火水を吸引(除去)することができる。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1では、感熱分解機構としてグラスバルブ15を用いたスプリンクラヘッド100について説明した。このスプリンクラヘッド100以外のスプリンクラヘッドを用いても、本発明を実施することが可能である。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの縦断面模式図である。
スプリンクラヘッド110は、ヘッド本体111、フレーム120、弁体130、デフレクタアッセンブリ140及び感熱分解機構150等から構成されている。
【0035】
ヘッド本体111は略円筒状をしており、中心部に放水口113が貫設されている。このヘッド本体111の上部には配管(図2に示す立ち上がり配管301)に接続されるねじ部114が形成されており、ヘッド本体111の下部には例えば円筒状のフランジ115が設けられている。このフランジ115の下部には、溝部116が形成されており、内周部には後述するフレーム120が螺合される雌ねじ部が形成されている。この溝部116には、放水口113の外周部に円筒状の筒部117が下方に突出して設けられている。
【0036】
円筒状のフレーム120は、上部外周面側に雄ねじ部が形成されている。この雄ねじ部とヘッド本体111の溝部116に形成された雌ねじ部とを螺合することにより、フレーム120はヘッド本体111の下方に接続されている。また、フレーム120の下部内周面側には、デフレクタアッセンブリ140のストッパリング144を係止するための段部121が設けられている。この段部121には、感熱分解機構150のロックボール155を係止するためテーパー部が設けられている。
【0037】
放水口3の下方には弁体130が設けられている。弁体130は、基板132及び頭部133等から構成されている。略円筒状の基板132は、その外径が放水口113の直径よりもわずかに大きく形成されている。この基板132の上部の中心部には、基板132よりも直径が小さな略円筒状の頭部133が形成されている。基板132の下部が感熱分解機構150のバランサー158に支持されている状態においては、頭部133が放水口113に挿入され、放水口113の下部を閉塞している。
【0038】
この弁体130には、逆止弁機構20が設けられている。この逆止弁機構20は、流入口21、流出口22、連通路23、逆止弁となるボール24、渦巻バネ25及びバネ押さえ26等から構成されている。例えば2つの流入口21は弁体130の下部に形成されており、流出口22は弁体130の上部に形成されている。これら流入口21及び流入口は、連通路23によって連通している。この連通路23は上部側の内径が大きくなっており、内径が変わる位置にはテーパー部が形成されている。逆止弁となるボール24は、連通路23内に設けられている。このボール24は、ボール24とバネ押さえ26との間に設けられた渦巻バネ25により付勢されている。これにより、ボール24は連通路23のテーパー部に当接している。バネ押さえ26は、例えば弁体130の頭部133から突設されている。
【0039】
デフレクタアッセンブリ140は、デフレクタ141、支柱142及びストッパリング144等から構成されている。
略円板状のデフレクタ141には、中心部に穴部が形成されている。弁体11の下部に突設されたかしめ片がこの穴部に挿入されてかしめられることにより、デフレクタアッセンブリ140は弁体11の下部に取り付けられている。デフレクタ141の上面部には、複数の支柱142が立設されている。この支柱142は、スプリンクラヘッド110が組み立てられた際、支柱142の上部がフレーム120の筒部117を囲むようにしてフレーム120の溝部116に配置される。これら支柱142の上端部にはドーナツ状のストッパリング144が設けられている。
【0040】
感熱分解機構150は弁体130の下方に設けられており、弁体130を支持している。この感熱分解機構150は、分解部支持筒151、シリンダ152、感熱板153、分解部押さえ154、ロックボール155、止めねじ156、可溶合金157及びバランサー158等から構成されている。ここで、シリンダ152、感熱板153及び可溶合金157が感熱部となる。
【0041】
分解部支持筒151は、有底円筒状をしている。分解部支持筒151の側面には、内径(小径側)がロックボール155の外径より小さく外周側が小径のテーパー穴をした複数個のボール挿入穴151aが設けられている。また、分解部支持筒151の底部には、感熱部を構成するシリンダ152が設けられており、分解部支持筒151の底部に開口している。シリンダ152の外壁には感熱板153が設けられている。
【0042】
略円板状の分解部押さえ154は、分解部支持筒151の内径より若干小さく形成されている。この分解部押さえ154の外周部には、テーパー部が形成されている。また、分解部押さえ154の中心部に形成された雌ねじ部には、止めねじ156が螺入されている。分解部押さえ154及び止めねじ156は、シリンダ152内に設けられた例えばコンプレッション半田等からなる可溶合金157上に載置されている。
【0043】
分解部支持筒151のボール挿入穴151aには、ロックボール155が挿入されている。スプリンクラヘッド110が組み立てられた状態においては、このロックボール155は、段部121、ボール挿入穴151aの内周部、及び分解部押さえ154のテーパー部によって保持される。これにより、感熱分解機構150は係止され、バランサー158を介して弁体130を支持する。なお、分解部支持筒151、分解部押さえ154、バランサー158には、それぞれ空気を通過させるための貫通穴159が一つ以上設けられている。
【0044】
火災が発生すると、熱気流は感熱板153を加熱する。その熱はシリンダ152に伝播し、シリンダ152の内部に収容された可溶合金157が溶融し始める。溶融した可溶合金157は、シリンダ152から流出し、体積が減少していく。
【0045】
可溶合金157の体積が減少すると、分解部押さえ154はその体積の減少に対応して降下する。これにより、移動が制限されていたロックボール155は、分解部支持筒151の内部へ移動を開始する。そして、ロックボール155が分解部支持筒151の内部へ移動すると、分解部支持筒151の係止状態は解除される。その結果、弁体130及び感熱分解機構150が落下して放水口113が開放され、消火水を放水可能な状態となる。
【0046】
このようなスプリンクラヘッド110においても、水漏れ点検終了後の水抜き作業の際、負圧ポンプ205の吸引力により、逆止弁となるボール24が連通路23内を上方へ移動する。これにより、流入口21と流出口22とが連通し、防護区域201内の空気が放水口3を介して立ち下がり配管301に吸引される。このため、立ち下がり配管301内の消火水も吸引(除去)することができ、立ち下がり配管301内の腐食を抑制することができる。
【0047】
また、火災が発生すると、負圧ポンプ205の吸引力により、逆止弁となるボール24が連通路23内を上方へ移動する。これにより、流入口21と流出口22とが連通し、熱気流が放水口113を介して立ち下がり配管301に吸引される。このため、熱気流は分解部支持筒151、分解部押さえ154、バランサー158にそれぞれ形成した貫通穴159を通って、連通路23を通過するように、感熱分解機構150の感熱部周辺を通過することとなる。したがって、可溶合金157の溶融速度が増加し、スプリンクラヘッド110の感度が向上する。
【符号の説明】
【0048】
1 ヘッド本体、3 放水口、4 ねじ部、5 フランジ、6 フレーム、7 アーム部、8 支承部、9 雌ねじ部、10 押しネジ、11 弁体、12 基板、13 頭部、14 皿バネ、15 グラスバルブ、16 デフレクタ、20 逆止弁機構、21 流入口、22 流出口、23 連通路、24 ボール、25 渦巻バネ、26 バネ押さえ、100 スプリンクラヘッド、110 スプリンクラヘッド、111 ヘッド本体、113 放水口、114 ねじ部、115 フランジ、116 溝部、117 筒部、120 フレーム、121 段部、130 弁体、132 基板、133 頭部、140 デフレクタアッセンブリ、141 デフレクタ、142 支柱、144 ストッパリング、150 感熱分解機構、151 分解部支持筒、151a ボール挿入穴、152 シリンダ、153 感熱板、154 分解部押さえ、155 ロックボール、156 止めねじ、157 可溶合金、158 バランサー、159 貫通穴、201 防護区域、202 火災感知器、203 開閉弁、204 真空チャンバー、205 負圧ポンプ、206 末端試験弁、210 流水検知装置、210a 開閉弁、211 消火ポンプ、212 消火水槽、220 制御盤、301 立ち下がり配管、302 二次側配管、303 配管、310 配管、311 配管、312 配管、320 排水配管、321 排水配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラヘッドが接続される配管に負圧ポンプが接続され、
前記配管の内部が、前記負圧ポンプの動作によって負圧状態にされるスプリンクラ消火設備において、
前記スプリンクラヘッドは、
円筒状の筒部の内部に放水口が形成されたヘッド本体と、
該ヘッド本体の下方に設けられるフレームと、
前記放水口を塞ぐ弁体と、
該弁体を支持する感熱分解機構と、
前記放水口の側に向かって前記感熱分解機構の周囲の空気を流す逆止弁機構とを備えたことを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記逆止弁機構は、前記弁体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記逆止弁機構は、
前記弁体の下部及び側部の少なくとも一方に形成された流入口と、
前記弁体の上部に形成された流出口と、
該流出口と前記流入口とを連通する連通路内に設けられる逆止弁と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のスプリンクラ消火設備に使用されることを特徴とするスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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