説明

スプリンクラ消火設備及びスプリンクラ消火設備の制御方法

【課題】スプリンクラヘッドが破損しても漏水せず、散水時に真空ポンプへ消火用水が流れ込まないスプリンクラ消火設備を提供する。
【解決手段】真空配管7にオリフィス12と並列になるように接続された常閉の急速吸引弁13と、予作動弁2の開放により流水信号が入力されたときに急速吸引弁13を開放して、予作動弁2から二次側配管5内に流入する加圧水の圧力により流水遮断弁9が閉止するように真空配管7内を所定の負圧に保つように制御する消火システム制御盤23とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に係わり、特に、予作動弁の二次側にある二次側配管を負圧状態にしたスプリンクラ消火設備及びスプリンクラ消火設備の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災時に開放される予作動弁の二次側に接続された二次側配管、二次側配管に立ち下がり配管を介して接続されたスプリンクラヘッド、二次側配管に真空配管を介して接続され、平常状態に二次側配管内を負圧とする真空ポンプ、真空配管に設けられた流水遮断弁、流水遮断弁と真空ポンプの間の真空配管に設けられたオリフィス等により構成されるスプリンクラ消火設備がある。
火災発生時に予作動弁を開放したときは消火用水が二次側配管に流れ込むが、真空ポンプは、水を吸引すると過負荷で停止したり故障を起こしたりする虞がある。そこで、予作動弁の開放に連動して閉止する電動弁または逆止弁である流水遮断弁を真空配管に設け、真空配管に水が流入しないようにしている。また、スプリンクラヘッドが開栓したときに、二次側配管の所定の圧力上昇によってスプリンクラヘッドの作動を検出するようにしているが、開栓したスプリンクラヘッドから流入する空気量は多くないので、真空ポンプが運転中であってもスプリンクラヘッド開栓時に二次側配管の圧力が十分に上昇するよう真空配管にオリフィスを設け、スプリンクラヘッドの作動を確実に検出できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
このような真空式のスプリンクラ消火設備では、スプリンクラヘッドが接続される立ち下がり管部分に水が残っていても、二次側配管内は負圧空気となるので、何らかの原因でスプリンクラヘッドが破損しても漏水を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−233598号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のスプリンクラ消火設備では、何らかの要因でスプリンクラヘッドが破損した場合、真空ポンプを駆動していてもオリフィスで圧損が生じるので、立ち下がり配管内の残水の量によってはこれを吸引しきれず、漏水する場合がある。また、火災発生時に予作動弁を開放して二次側配管内に消火用水を流入させたとき、オリフィスでの圧損によって流水遮断弁の一次側と二次側の圧力差が生じにくくなり、予作動弁の開放と連動して機械的に閉止する流水遮断弁、例えば逆止弁構造の流水遮断弁を用いていた場合は、弁体が開閉を繰り返すチャタリングを起こし、真空ポンプに水が流入することがあるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、火災発生時に予作動弁を開放したとき、流水遮断弁の弁体を確実に閉止し、真空ポンプに水が流入しないスプリンクラ消火設備及びスプリンクラ消火設備の制御方法を得るものである。
第2の目的は、スプリンクラヘッドが破損しても立ち下がり配管内の残水を確実に吸引し、漏水を起こさないスプリンクラ消火設備及びスプリンクラ消火設備の制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、予作動弁と、該予作動弁の一次側に接続され、基端側に加圧送水装置が接続され、水源からの加圧水が充満された一次側配管と、前記予作動弁の二次側に接続され、スプリンクラヘッドが接続された、平常時は充水されない二次側配管と、該二次側配管に真空配管を介して接続され、前記二次側配管内を負圧にする真空ポンプと、前記真空配管に介在するように設けられたオリフィスと、前記オリフィスと前記二次側配管との間の真空配管に介在するように設けられ、前記予作動弁を開弁するとき、あるいは、開弁したときに閉弁する常開の流水遮断弁と、を有するスプリンクラ消火設備において、前記真空配管に前記オリフィスと並列になるように接続された常閉の開放弁と、前記予作動弁が開放されたとき又は開放されるときに、前記開放弁を開放する弁制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災発生によって予作動弁が開放されたときに開放弁を開放して、真空配管の負圧を十分に確保するので、予作動弁から二次側配管内に流入する加圧水の圧力により流水遮断弁がチャタリングを起こすことなく、予作動弁の開放に連動して確実に閉止することができる。また、二次側配管の圧力上昇によって開放弁を開放して、真空配管の負圧を十分に確保するので、スプリンクラヘッドが破損しても、立ち下がり配管内の残水が漏出することはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係るスプリンクラ消火設備を示すシステム構成図である。
【図2】実施の形態に係るスプリンクラ消火設備の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るスプリンクラ消火設備及び制御方法の実施の形態について、図1に示すシステム構成図を用いて説明する。
本実施の形態のスプリンクラ消火設備は、水源である消火用水槽WT、消火用水槽WTの近くに設置された加圧送水装置1、予作動弁2、予作動弁2の一次側に接続され、加圧送水装置1からの消火用水(加圧水)が充満された一次側配管4、予作動弁2の二次側に接続され、平常時に予作動弁2により通水が遮断され、平常時は充水されない二次側配管5、二次側配管5に接続され、防護区画Aに配置された複数のスプリンクラヘッド3、二次側配管5に真空配管7を介して接続され、二次側配管5内を負圧にする真空ポンプ8、真空配管7に設けられ、放水時に二次側配管5へ圧送される消火用水の圧力によって閉弁する常開の流水遮断弁9、流水遮断弁9と真空ポンプ8の間の真空配管7に介在するように設けられたオリフィス12、等から構成されている。なお、スプリンクラヘッド3が設置された防護区画Aには火災感知器21が配設され、火災感知器21は火災受信機22とで自動火災報知設備を構成している。
【0010】
前述の予作動弁2には、予作動弁2を駆動(開放)する電動式パイロット弁である遠隔起動弁2bと、予作動弁2の開放によって二次側配管5へ送出される消火用水を検出する流水検知スイッチとしての流水信号用圧力スイッチ2aが設けられている。複数のスプリンクラヘッド3は、二次側配管5より下方に延びる複数の立ち下がり配管6にそれぞれ装着されている。二次側配管5の末端部に接続された末端試験弁15には、排水配管16が接続されている。スプリンクラ消火設備の耐圧試験等によって二次側配管5内に満たされた消火用水は、末端試験弁15及び予作動弁2に設けられた図示しない排水弁を開くことにより、外部に排出される。なお、末端試験弁15は、平常時には閉じられている。
【0011】
真空配管7に設けられた流水遮断弁9は、平常時は開弁しており、予作動弁2が開放したときに二次側配管5内に圧送される消火用水によって上昇する二次側配管5内の圧力で閉止する、例えば機械式の遮断弁である。その流水遮断弁9によって、真空配管7内への消火用水の流入を防止している。真空配管7には、二次側配管5との接続部側から真空ポンプ8側に向けて、圧力検出手段である真空スイッチ10及びヘッド作動検出装置11、真空スイッチ14が順に設けられている。また、真空配管7には、オリフィス12と並列になるように接続された開放弁としての急速吸引弁13が接続されている。なお、急速開放弁13は、開放時の圧損がオリフィス12よりも十分に小さくなるものが用いられ、スプリンクラヘッド3が破損した場合であっても二次側配管5内の負圧が維持され、スプリンクラヘッド3が接続された立ち下がり配管6内に滞留した残水が漏出することがないものが適宜選択される。
【0012】
流水遮断弁9側の真空スイッチ10は、真空配管7内の圧力を通して二次側配管5内の圧力を検出し、その圧力が予め定めた所定値を超えたときに、後述する消火システム制御盤23に二次圧上昇信号を送出する。ヘッド作動検出装置11は、真空配管7内の圧力を通して二次側配管5内の圧力を検出し、所定の圧力上昇率としての所定時間当たりの圧力変化量(絶対値)が予め定めた所定値を超えたときに、前記と同様に消火システム制御盤23に二次圧上昇信号を送出する。
【0013】
真空ポンプ8側の真空スイッチ14は、スプリンクラヘッド3と立ち下がり配管6との接続部等から徐々に流入する外気により上昇する二次側配管5内の圧力を真空配管7内の圧力を通して検出し、その圧力が所定の圧力以上のときに、後述する真空ポンプ制御盤26に信号を送出して真空ポンプ8を駆動させ、二次側配管5内の負圧を一定の圧力に保っている。急速吸引弁13は、例えば、弁体が常閉の電動式開放弁であり、オリフィス12を迂回する流路を開放することによって、オリフィス12による吸引圧力の損失を無くし、スプリンクラヘッド3の破損による立ち下がり配管6内の残水(消火用水)が漏出しないように吸引したり、放水時に流水遮断弁9を確実に閉止させるために、二次側配管5内と真空配管7内との間で流水遮断弁9を閉止するのに十分な差圧が生じるように設けられている。
【0014】
また、スプリンクラ消火設備には、火災感知器21と電気的に接続され自動火災報知設備を構成する火災受信機22と電気的に接続され、弁制御手段を有する消火システム制御盤23、消火システム制御盤23と電気的に接続された真空ポンプ制御盤26、加圧送水装置1のポンプモーターを駆動制御する消火ポンプ制御盤25等が設けられている。火災受信機22は、火災感知器21の火災発報を検知したときに、消火システム制御盤23に火災信号を送出する。消火システム制御盤23は、中継器24を介して、流水信号用圧力スイッチ2a、遠隔起動弁2b、真空スイッチ10、ヘッド作動検出装置11及び急速吸引弁13と電気的に接続されている。なお、中継器24は消火システム制御盤23との間を多重通信するものであるが、消火システム制御盤23に図示しない個別の入出力部を設け、流水信号用圧力スイッチ2a、遠隔起動弁2b、真空スイッチ10、ヘッド作動検出装置11及び急速吸引弁13との間を、中継器24を介さずに、それぞれ直接電気的に接続しても良い。
【0015】
次に、本実施の形態に係るスプリンクラ消火設備の動作を、ケース別に説明する。
(1)二次圧上昇の場合
消火システム制御盤23は、予作動弁2が開放していない場合(即ち、流水信号用圧力スイッチ2aからの流水信号が入力されていない場合、あるいは、遠隔起動弁2bを介して予作動弁2を開弁する制御信号を送出していない場合)に、真空スイッチ10あるいはヘッド作動検出装置11からの二次圧上昇信号の入力を検知すると、急速吸引弁13を開放する。これは、防護区画A内での火災発生でスプリンクラヘッド3の放水口が開栓したことにより、あるいはスプリンクラヘッド3の破損により、外気が二次側配管5内に流入して圧力が上昇したときである。火災発生時は問題ないが、スプリンクラヘッド3を破損した場合には、立ち下がり配管6に溜まっている消火用水をオリフィス12での圧損によって十分に吸引できずに漏水してしまうことがある。この水漏れを防止するために、急速吸引弁13を開放してオリフィス12における圧損を無くし、二次側配管5に至る真空配管7内を強力に吸引する。これにより、二次側配管5内が所定の負圧を維持できるので、立ち下がり配管6内の残水が二次側配管5側に吸引され、破損したスプリンクラヘッド3から漏出することはない。
【0016】
二次側配管5内の真空度が低いときには、真空スイッチ10がヘッド作動検出装置11より先に作動して二次圧上昇信号を送出する。これは、二次側配管5内の圧力変化が緩やかであるため、ヘッド作動検出装置11による所定値を超える圧力変化量を検出することができないからである。また、二次側配管5内の真空度が高いときには、ヘッド作動検出装置11が真空スイッチ10より先に作動して二次圧上昇信号を送出する。この場合、二次側配管5内の真空度が高く、真空スイッチ10による所定値を超える圧力を検出するまでの時間が長いからである。
【0017】
(1−1)二次圧上昇、かつ、火災信号受信の場合
消火システム制御盤23は、ヘッド作動検知スイッチ11または真空スイッチ10からの二次圧上昇信号を受信するとともに火災受信機22からの火災信号を受信すると、遠隔起動弁2bに開弁信号を送出し、予作動弁2を開放する。この時、一次側配管4内の消火用水が二次側配管5内に流入する。一方、消火ポンプ制御盤25は、加圧送水装置1を通して一次側配管4内の圧力が低下したことを検知したときに、加圧送水装置1を駆動して消火用水槽WTから消火用水を吸引させ、消火用水を一次側配管4へ圧送し、二次側配管5及び立ち下がり配管6を介して開栓したスプリンクラヘッド3から散水させる。
【0018】
(1−2)二次圧上昇の場合で、火災信号が無い場合
また、消火システム制御盤23は、急速吸引弁13を開放してから火災受信機22からの火災信号が入力されないときには、前述の二次圧上昇信号が無い状態での復旧操作が行われたかどうかを判定し、二次圧上昇信号が出力されたままの場合、あるいは、二次圧上昇信号の出力が停止しても復旧操作が無い場合は、スプリンクラ消火設備の動作に変化は無い。二次圧上昇信号が停止(例えば、破損したスプリンクラヘッド3が交換されて二次側配管5への外気流入が停止)し、復旧操作が行われたときには急速吸引弁13を閉止し、平常状態に復する。ここに、復旧操作とは、消火システム制御盤23の操作部に設けられた復旧スイッチを操作することである。
【0019】
(2)予作動弁開放の場合
また、消火システム制御盤23は、前記操作部の手動操作により遠隔起動弁2bに開弁信号を送出し、予作動弁2を開放し、前記開弁信号を送出したこと、あるいは、流水信号用圧力スイッチ2aからの流水信号を受信したことにより、急速吸引弁13を開放する。これにより、オリフィス12を迂回する流路が開放され、オリフィス12による吸引圧力の損失を無くすので、流水遮断弁9に逆止弁構造を用いた場合はこれを予作動弁2の開放に連動して確実に閉止させる。即ち、急速吸引弁13を開放することによって、オリフィス12による圧損を受けることなく真空配管7内を真空ポンプ8が強力に吸引するので、二次側配管5内に流入する消火用水の圧力により、流水遮断弁9の一次側と二次側との間の差圧が流水遮断弁9を確実に閉止させる圧力となるので、流水遮断弁9の弁体が真空配管7側に移動して確実に閉止され、消火用水が真空配管へ流入することはない。なお、流水遮断弁9に電動弁を用い、消火システム制御盤23が遠隔起動弁2bに開弁信号を送出したとき、または、予作動弁2の開放に伴って流水信号用圧力スイッチ2aからの流水信号を消火システム制御盤23が受信したときに、流水遮断弁9を閉止するように制御してもよい。そして、消火システム制御盤23は、急速吸引弁13を開放した後に、火災信号の入力が無い状態での復旧操作が行われたかどうかを判定し、火災鎮火が確認されて操作員が自動火災報知設備の復旧操作を行ない、火災受信機22からの火災信号が消火システム制御盤23に入力されない状態で、消火システム制御盤23の盤面で復旧操作が行われたときには、急速吸引弁13を閉止すると共に、遠隔起動弁2bを閉止して予作動弁2を閉止、さらに消火ポンプ制御盤25を操作して加圧送水装置1を停止し、消火作業を終了する。
【0020】
以上、ケース別に制御方法を説明したように、本実施の形態における急速吸引弁13の制御における優先順位は、流水信号(または遠隔起動弁2bの開弁信号)、二次圧上昇信号、火災信号の順としている。流水信号(または遠隔起動弁2bの開弁信号)を最優先としているのは、予作動弁2の開放による二次側配管5内に流入する消火用水が真空配管7内に流れ込まないようにするためである。二次圧上昇信号を2番目としているのは、特にスプリンクラヘッド3の破損による水漏れを防止するためである。
【0021】
次に、本実施の形態のスプリンクラ消火設備の動作を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
本実施の形態に係るスプリンクラ消火設備は、平常状態では、二次側配管5内には消火用水が無く、真空ポンプ8の運転により二次側配管5内と真空配管7内が外気より低い負圧となっている、真空式の予作動式スプリンクラ消火設備である。
【0022】
平常状態では、前述したように二次側配管5内と真空配管7内は負圧となっており、遠隔起動弁2b及び急速吸引弁13が閉止状態となっている(S1)。この状態においては、二次側配管5内と真空配管7内は、スプリンクラヘッド3と立ち下がり配管6との接続部等から徐々に外気が流入し、負圧である管内圧力が上がってくる(大気圧に近づいてくる)。負圧である二次側配管5内と真空配管7内の圧力が所定の圧力以上になったことを真空スイッチ14が検出すると、真空ポンプ制御盤26は、真空ポンプ8を駆動して、二次側配管5内と真空配管7内の圧力が所定の圧力未満の負圧になるように制御する。この動作は、二次側配管5内と真空配管7内の圧力が所定の圧力以上になる度に繰り返し行われ、二次側配管5内と真空配管7内の圧力は常に所定の圧力以下の負圧に保たれる。
【0023】
一方、消火システム制御盤23は、流水信号用圧力スイッチ2aからの流水信号が入力されたかどうかを判定しており(S2)、流水信号の入力が無いときには、真空スイッチ10あるいはヘッド作動検出装置11の何れかからの二次圧上昇信号が入力されたかどうかを判定する(S3)。消火システム制御盤23は、二次圧上昇信号の入力が無いときには、S2に戻って、何れか一方の信号の入力を検知するまで繰り返し行う。なお、上記の流水信号の有無を判定するステップ(S2)においては、予作動弁2、すなわち遠隔起動弁2bへの開弁信号の有無と置き換えることができる。
【0024】
消火システム制御盤23は、流水信号を受信したときには、急速吸引弁13を開放する(S9)。この時の流水信号は、本制御盤23の操作部から手動操作で遠隔起動弁2bを起動させたときの予作動弁2の開放による流水信号用圧力スイッチ2aからの信号である。つまり、火災発生時に火災感知器21の火災発報を待たずに、手動で予作動弁2を開放させて、開栓したスプリンクラヘッド3から消火用水を散水させるときである。急速吸引弁13の開放により、オリフィス12を迂回する流路が開放され、オリフィス12による吸引圧力の損失を無くすので、予作動弁2から二次側配管5内に流入する消火用水の圧力で流水遮断弁9の弁体が真空配管7側に移動して閉止し、二次側配管5と真空配管7との連通を遮断し、二次側配管5から真空配管7への消火用水の流入を防止する。
【0025】
その後、消火システム制御盤23は、火災受信機22からの火災信号の入力が無い状態での復旧操作の有無を判定する(S7)。消火システム制御盤23は、復旧操作が行われないときには、予作動弁2の開放状態を保持して、スプリンクラヘッド3から消火用水を散水させるが、火災信号の入力が停止して復旧操作が行われたときには、急速吸引弁13を閉止すると共に、遠隔起動弁2bを閉止して予作動弁2を閉止し(S8)、散水を停止し、消火作業を終了する。
【0026】
また、消火システム制御盤23は、流水信号を受信することなく(S2)、二次圧上昇信号を受信したときには(S3)、急速吸引弁13を開放する(S4)。この場合は、火災発生でスプリンクラヘッド3の放水口の開栓により外気が二次側配管5内に流入したとき、あるいはスプリンクラヘッド3の破損により外気が二次側配管5内に流入したときである。スプリンクラヘッド3が破損した場合は、立ち下がり配管6内に溜まった消火用水を二次側配管5内に吸引するので漏水しない。
【0027】
その後、消火システム制御盤23は、火災受信機22からの火災信号入力の有無を判定する(S5)。消火システム制御盤23は、火災信号入力が有るときには、遠隔起動弁2bを起動(開放)して予作動弁2を開放し、スプリンクラヘッド3から消火用水を散水させる(S6)。そして、消火システム制御盤23は、火災信号が無い状態での復旧操作があるかどうかを判定し(S7)、復旧操作が無いときには、予作動弁2の開放状態を保持してスプリンクラヘッド3からの散水を継続させる。また、消火システム制御盤23は、火災信号が無い状態で復旧操作が行われたときには、前述したように、急速吸引弁13を閉止すると共に、遠隔起動弁2bを閉止して予作動弁2を閉止にし(S8)、散水を停止して消火作業を終了する。
【0028】
消火システム制御盤23は、S5において、火災信号の入力が無いと判定したときには、二次圧上昇信号が無い状態での復旧操作が行われたかどうかを判定する(S10)。これは、例えば、損傷したスプリンクラヘッド3の交換が終了した後の操作部の手動操作による復旧操作である。消火システム制御盤23は、復旧操作が行われていないと判定したときには、復旧操作が行われるまでS2、S3、S4、S5、S10の各ステップを順に進んで繰り返す。また、消火システム制御盤23は、二次圧上昇信号が無い状態での復旧操作が行われたと判定したときには、急速吸引弁13を閉止し(S11)、S2に戻って流水信号が入力されたかどうかの判定に入る。なお、二次圧上昇信号が入力されている状態で急速吸引弁13自体を手動操作で閉止しても、S3において再び二次圧上昇信号を認識し、S4において急速吸引弁13を開放するので、破損したスプリンクラヘッド3からの漏水は防止される。また、消火システム制御盤23の盤面に急速吸引弁13の動作状況を表示させるようにしておくと、損傷したスプリンクラヘッド3の交換を忘れるということがない。
【0029】
以上のように本実施の形態においては、予作動弁2が開放されたときに急速吸引弁13を開放して、予作動弁2から二次側配管5内に流入する消火用水の圧力により流水遮断弁9が確実に閉止するようにオリフィス12を迂回する流路が開放され、オリフィス12による吸引圧力の損失を無くすようにしている。これにより、流水遮断弁9がチャタリングを起こすことなく、スムーズに予作動弁2の開放に連動して閉止することができる。また、予作動弁2が開放することなく二次圧上昇信号が入力されると、急速吸引弁13を開放し、二次側配管5内を所定の負圧にするようにしている。これにより、スプリンクラヘッド3が破損しても立ち下がり配管6内の残水を吸引でき、スプリンクラヘッド3からの漏水を防ぐことが可能になる。
【0030】
なお、本実施の形態では、機械式の流水遮断弁9を用いたことを述べたが、消火システム制御盤23からの制御信号で弁体が開閉する流水遮断弁でもよい。そのタイプの流水遮断弁を用いた場合、消火システム制御盤23は、その弁体を常開とし、予作動弁2の開弁信号を送出したとき、または、予作動弁2の開放による流水信号を受信したとき、または、二次圧上昇信号を受信したときに前記流水遮断弁の弁体を閉止するように制御する。
【符号の説明】
【0031】
1 加圧送水装置、2 予作動弁、2a 流水信号用圧力スイッチ、2b 遠隔起動弁、3 スプリンクラヘッド、4 一次側配管、5 二次側配管、6 立ち下がり配管、7 真空配管、8 真空ポンプ、9 流水遮断弁、10 真空スイッチ、11 ヘッド作動検出装置、12 オリフィス、13 急速吸引弁、14 真空スイッチ、15 末端試験弁、16 排水配管、21 火災感知器、22 火災受信機、23 消火システム制御盤、24 中継器、25 消火ポンプ制御盤、26 真空ポンプ制御盤、A 防護区画、WT 消火用水槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予作動弁と、該予作動弁の一次側に接続され、基端側に加圧送水装置が接続され、水源からの加圧水が充満された一次側配管と、前記予作動弁の二次側に接続され、スプリンクラヘッドが接続された、平常時は充水されない二次側配管と、該二次側配管に真空配管を介して接続され、前記二次側配管内を負圧にする真空ポンプと、前記真空配管に介在するように設けられたオリフィスと、前記オリフィスと前記二次側配管との間の真空配管に介在するように設けられ、前記予作動弁を開弁するとき、あるいは、開弁したときに閉弁する常開の流水遮断弁と、を有するスプリンクラ消火設備において、
前記真空配管に前記オリフィスと並列になるように接続された常閉の開放弁と、
前記予作動弁が開放されたとき又は開放されるときに、前記開放弁を開放する弁制御手段と、
を備えたことを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記オリフィスより前記二次側配管側の真空配管に接続され、前記真空配管内の圧力を通して前記二次側配管内の圧力を検出し、該圧力が所定値または所定の上昇率を超えたときに信号を送出する圧力検出手段を備え、
前記弁制御手段は、前記予作動弁が開放することなく前記圧力検出手段からの信号が入力されると、前記開放弁を開放することを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記弁制御手段は、前記開放弁を開放するとともに、防護区画内に配設された火災感知器からの火災信号を受信したときに、前記予作動弁を開放することを特徴とする請求項2記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項4】
予作動弁と、該予作動弁の一次側に接続され、基端側に加圧送水装置が接続され、水源からの加圧水が充満された一次側配管と、前記予作動弁の二次側に接続され、スプリンクラヘッドが接続された、平常時は充水されない二次側配管と、該二次側配管に真空配管を介して接続され、前記二次側配管内を負圧にする真空ポンプと、前記真空配管に介在するように設けられたオリフィスと、前記オリフィスと前記二次側配管との間の真空配管に介在するように設けられ、前記予作動弁を開弁するとき、あるいは、開弁したときに閉弁する常開の流水遮断弁と、を有するスプリンクラ消火設備の制御方法において、
前記真空配管に前記オリフィスと並列になるように常閉の開放弁を接続し、
前記予作動弁が開放されたとき又は開放されるときに前記開放弁を開放し、
前記予作動弁が開放されることなく、前記二次側配管内の圧力または圧力上昇率のいずれかがそれぞれ予め定めた所定値を超えたときに、前記開放弁を開放し、
さらに、前記開放弁を開放するとともに防護区画内に配設された火災感知器が火災を感知したときには、前記予作動弁を開放して開栓した前記スプリンクラヘッドから散水することを特徴とするスプリンクラ消火設備の制御方法。

【図1】
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【図2】
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