説明

スプリンクラ消火設備

【課題】火災時に、二次側配管を真空ポンプと接続することで、二次側配管内の空気の排出を行い、充水時間を短縮させることを可能にしたスプリンクラ消火設備を提供する。
【解決手段】予作動弁の二次側に設けられ、加圧空気が充填された二次側配管と、該二次側配管に取り付けられたスプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設けられた火災感知器とを備えた予作動式のスプリンクラ消火設備において、前記二次側配管に、常時は閉じた電動弁を介して接続される真空ポンプを設け、前記火災感知器が動作したときに、該真空ポンプを起動させると共に、前記電動弁を開放させ、前記二次側配管内の加圧空気を吸い出して負圧にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関し、特に、火災発生時における二次側配管内に充填されている加圧空気の排出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラ消火設備としては、火災感知器からの火災信号によって予作動弁を開放させる予作動式のスプリンクラ消火設備がある。このような予作動式の設備においては、二次側配管内を充水させる場合と、二次側配管内に加圧空気を充填させる場合とがある(例えば特許文献1参照)。加圧空気を充填させた乾式の場合には、ヘッドが暴発しても配管内に水がないことから水損が生じない、という利点がある。
【特許文献1】特開平6−86837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、加圧空気を充填させた乾式の場合には、火災時に放水遅れという問題が生じる。即ち、二次側配管内に加圧空気を充填させている場合には、火災感知器が動作して予作動弁が開放されても、二次側配管内に充水されず、ヘッドが火災で動作しても、まず空気がヘッドから排出された後に放水するため、放水が開始するまでに時間がかかり、放水に遅れを生じてしまう。このため、予作動式のスプリンクラ消火設備においては、配管径を太くしたり、ヘッドの同時開栓個数を多くするといった、放水遅れに対処した設計を行う必要がある、という問題点がある。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、火災時に、二次側配管を真空ポンプと接続することで、二次側配管内の空気の排出を行い、充水時間を短縮させることを可能にしたスプリンクラ消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、予作動弁の二次側に設けられ、加圧空気が充填された二次側配管と、該二次側配管に取り付けられたスプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設けられた火災感知器とを備えた予作動式のスプリンクラ消火設備において、前記二次側配管に、常時は閉じた電動弁を介して接続される真空ポンプを設け、前記火災感知器が動作したときに、該真空ポンプを起動させると共に、前記電動弁を開放させ、前記二次側配管内の加圧空気を吸い出すものである。
また、本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記予作動弁を開放して、前記二次側配管に水を供給した後に、前記真空ポンプを起動して前記二次側配管内を高真空状態にして、前記二次側配管内の立ち下がり管に残った水を蒸発させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、火災感知器が動作したときに、電動弁を開放させることで、加圧空気が充填された二次側配管は真空ポンプと接続される。そして、火災信号によって起動した真空ポンプにより、二次側配管内の加圧空気は真空ポンプ側へと吸引され、また開放した予作動弁の一次側の水も引き込まれるので、二次側配管内の充水時間を短縮することができる。
また、本発明においては、火災消火後は、スプリンクラヘッドを新しいものに交換すると共に、次の手順で、立ち下がり管部分の残水を除去する。電動弁を閉止するとともに予作動弁を閉止する。この状態で、真空ポンプを起動して二次側配管内を負圧状態にし、気圧を下げて立ち下がり管部分などの残水を蒸発させやすくして、残水を除去する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施形態1.
図1は本発明の実施形態1に係るスプリンクラ消火設備の配管説明図である。同図において、1は予作動式の流水検知装置である(以下、予作動弁という)。この予作動弁1を基準にして、一次側には一次側配管2が設けられ、その一次側配管の基端側には加圧送水装置3が設けられる。この加圧送水装置3は水槽3a及びポンプ3bから構成される。4は二次側配管であり、予作動弁1の二次側に設けられ、加圧空気が充填されている。二次側配管4への加圧空気の充填はコンプレッサ5により行われる。コンプレッサ5は、予作動弁の二次側近傍から電動弁A6(常開)を介して設けられたエア配管7の端部に接続されている。8は二次側配管4に取り付けられた閉鎖型のスプリンクラヘッドである。このスプリンクラヘッド8と同じ防護区域には、火災感知器9が設けられる。本実施形態のスプリンクラ消火設備は、火災感知器9の火災信号により予作動弁1が開放する予作動式のスプリンクラ消火設備である。10は、真空ポンプであり、二次側配管4の末端に常時は閉じた電動弁B11を介して接続される。この真空ポンプ10は、火災感知器9が動作したときに、制御盤12によって起動される。なお、この真空ポンプ10の起動と共に、制御盤12は、電動弁B11を開放させて、また電動弁A6を閉止することで、二次側配管4内に充填された加圧空気を吸い出す。
【0008】
次に、図1のスプリンクラ消火設備の動作を説明する。
火災が発生すると、その火災発生箇所の近傍に設置されている火災感知器9がその火災を感知して火災信号を制御盤12に出力する。制御盤12はその火災信号を取り込むと、その火災信号を発生した火災感知器9の設置区域の予作動弁1を開放する。そして、それと同時に、電動弁A6を閉止し、電動弁B11を開放し、真空ポンプ10を起動する。この真空ポンプ10の起動により二次側配管4内に充填されていた空気は吸気されて負圧になる。二次側配管4内が負圧になることによって、一次側配管2の水が開放された予作動弁1を介して二次側配管4側に流入する。このとき二次側配管4内は負圧になっているので、二次側配管4に充水するための時間が大幅に短縮化する。このため、例えばヘッドの設計同時開栓数を湿式スプリンクラー設備の1.2倍にすることができる。因みに、通常の予作動式スプリンクラー設備は湿式スプリンクラー設備の1.5倍である。
【0009】
以上のように本実施形態1によれば、火災感知器9が動作したときに加圧空気が充填された二次側配管4を真空ポンプ10と接続し、火災信号によって起動する真空ポンプ10により二次側配管4内の加圧空気を吸引するとともに、開放した予作動弁1の一次側の水を二次側配管4内に引き込むようにしたので、二次側配管4内の充水時間を短縮することができ、放水遅れが避けられている。
【0010】
また、火災感知器9の誤作動、火検査等で配管内に水が入り二次側配管4とスプリンクラヘッド8とを接続する立ち下がり管内に水が残った場合には、電動弁A6を閉止、電動弁B11を開放して、真空ポンプ10を起動することにより、二次側配管4内の気圧を下げて蒸発させることにより立ち下がり管内の残水を除去することができる。その詳細を実施形態2として次に説明する。
【0011】
実施形態2.
図2は本発明の実施形態2に係るスプリンクラ消火設備の配管説明図である。同図において、2階分の消火設備が図示されているが、その基本構成は図1と同一であり、同じものは同じ符号を付けて説明を省略する。ここでは2系統の二次側配管4が一台の真空ポンプ10に接続されている。また、二次側配管4の末端側に末端試験弁21が設けられている。この末端試験弁21と二次側配管4とを接続する立ち下がり管22cは例えば透明の管で構成されている。また、スプリンクラヘッド8と二次側配管4とについても立ち下がり管22を介して接続されている。
【0012】
本実施形態2のスプリンクラ消火設備は、立ち下がり管22内に残留する水を排除する際の処理に特徴がある。 例えば水圧検査などを行った後、二次側配管4の末端に接続された末端試験弁21を開放することにより水平方向に横引きされた二次側配管4内の水を排水する。その後、さらに、垂直方向に設けられた立ち下がり管22内に残留する水を排除するべき二次側配管4を外部から区切る配管系の全弁、すなわち予作動弁1、電動弁A6、及び末端試験弁21を閉じる。然る後領域内の電動弁B11を開き、真空ポンプ10を起動(運転)する。これにより二次側配管4及び立ち下がり管22内は高真空状態になる。
【0013】
水の沸点は気圧によって変化し、減圧により沸点は低くなる。すなわち、760Torrの気圧環境では、水の沸点は100℃であるが、真空ポンプ10により気圧を4.6Torr(613Pa)まで低下させると、沸点は0℃になる。このように配管内を高真空状態にすることで、立ち下がり管22内に残った水が蒸発し易くなり、配管内の残水を除去することが可能となる。なお、寒冷地においては、立ち下がり管22には、ヒータ線が設けられ、配管を加熱することができるので、このような場合には、真空の度合いを弱めることができ、数十Torrの真空で水を蒸発させることが可能となる。また、末端試験弁21が接続される立ち下がり管22cを透明の管で構成すれば、この立ち下がり管22cに残った水の状況を目視により確認できる。真空ポンプ10を動かしているときに、この立ち下がり管22c内を確認することにより、水がなくなった時点で真空ポンプ10を停止し、電動弁B11を閉じるようにすればよい。真空ポンプ10の要求性能は、当然水を排除するべき二次側配管4内の配管容量、処理許容時間等により設定される。なお、本実施形態2においては、電動弁B11を手動弁により構成してもよい。
【0014】
以上のように本実施形態2おいては、二次側配管4内を負圧状態にして気圧を下げ、立ち下がり管22部分などの残水を蒸発させ易くしたので、残水を効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係るスプリンクラ消火設備の配管説明図。
【図2】本発明の実施形態2に係るスプリンクラ消火設備の配管説明図。
【符号の説明】
【0016】
1 予作動弁、 2 一次側配管、 3 加圧送水装置、 4 二次側配管、 5 コンプレッサ、 6 電動弁A、7 エア配管、8 スプリンクラヘッド、9 火災感知器、10 真空ポンプ、11 電動弁B、12 制御盤、21 末端試験弁、22 立ち下がり管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予作動弁の二次側に設けられ、加圧空気が充填された二次側配管と、該二次側配管に取り付けられたスプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設けられた火災感知器とを備えた予作動式のスプリンクラ消火設備において、
前記二次側配管に、常時は閉じた電動弁を介して接続される真空ポンプを設け、
前記火災感知器が動作したときに、該真空ポンプを起動させると共に、前記電動弁を開放させ、前記二次側配管内の加圧空気を吸い出すことを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記予作動弁を開放して、前記二次側配管に水を供給した後、前記真空ポンプを起動して、前記二次側配管内を高真空状態にして、前記二次側配管内の立ち下がり管に残った水を蒸発させることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。

【図1】
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【図2】
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