説明

スプリングの保持構造

【課題】スプリングを保持するための雌ねじ部の緩みを防止することができるようにすること。
【解決手段】保持構造15は、スプリング13の一端側に連結されるボルト部材20と、このボルト部材20を貫通する穴を21A有する支持体21と、ボルト部材20に螺合するとともに、穴21Aの軸線方向に沿って支持体21を挟み込むことによりボルト部材20の移動を規制する固定用ナット23とを備え、引っ張り力を発揮するスプリングSの一端側を保持する。支持体21には凸部26が設けられ、固定用ナット23には凸部26を受容する凹部27が設けられる。凸部26及び凹部27は、傾斜面26A,27Aをそれぞれ備えている。各傾斜面26A,27Aは、穴21Aの軸線方向に対して傾斜し、相互に接触可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングの保持構造に係り、更に詳しくは、スプリングの端部を保持することができるスプリングの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バスドラムを演奏するためにドラム用のフットペダルが広く利用されている。フットペダルは、フッドボードを踏み込むことでドラムビータを回転してバスドラムの打面を打撃できるようになっており、フットボード及びドラムビータは、回転軸を介して連結されている。この回転軸には、その径方向に引っ張り力を付与するスプリングが連結されており、このスプリングの引っ張り力により、フッドボードの踏み込みを解除したときに、当該フットボードとドラムビータとが設定位置に復帰される。
【0003】
ここで、スプリングの一端側、すなわち、回転軸と連結される反対側端部の保持構造として、特許文献1に開示されているものが知られている。同文献では、スプリングの一端側にボルトが連結されており、このボルトが支持フレームに形成された穴に挿通される。また、ボルトには一対のナットが螺合しており、これらナットにより穴の軸線方向両側から支持フレームを挟み込むことで、ボルトを固定してスプリングを保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5365824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、ナットと支持体との接触面がボルトの軸線に直交する平面にそれぞれ形成されるので、演奏中にナットが緩み易くなり、ボルトの保持力が弱くなるという不都合がある。この結果、演奏中にボルトにずれやがたつきが生じ、雑音発生の原因になったり、フットボードやドラムビータを復帰させる力が変化して演奏性を損なうという不都合を招来する。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に基づいて案出されたものであり、その目的は、演奏中にスプリングを保持するための雌ねじ部が緩むことを防止することができるスプリングの保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、所定方向に引っ張り力を発揮するスプリングの一端側を保持する構造において、
前記スプリングの一端側に連結される雄ねじ部と、この雄ねじ部を貫通する穴を有する支持体と、雄ねじ部に螺合するとともに、前記穴の軸線方向に沿って支持体を挟み込んで雄ねじ部の移動を規制可能な雌ねじ部とを備え、
前記支持体と雌ねじ部との何れか一方に凸部が設けられるとともに、何れか他方に凸部を受容可能な凹部が設けられ、
前記凸部及び凹部は、傾斜面をそれぞれ備え、各傾斜面は、前記軸線方向に対して傾斜するとともに、相互に接触可能に設けられる、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記凸部は、円錐台状に形成され、前記凹部は、前記円錐台の円錐面に沿う内周面を備える、という構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雌ねじ部をねじ込むことで、凸部及び凹部の各傾斜面が擦れ合いつつ、くさびのように凹部内に凸部を食い込ませることができ、演奏中における雌ねじ部の不用意な緩みを抑制することが可能となる。これにより、雄ねじ部の位置をしっかりと維持することができ、本発明をドラム用のフットペダルに利用した場合、フットボード等への付勢力を良好に保つことができ、雑音の発生を防止したり、演奏性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、凸部が円錐台状に形成され、凹部が円錐面に沿う内周面を有するので、雌ねじ部のねじ込みにより、凹部内に凸部をスムース且つ強固に食い込ませることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の保持構造が適用された実施形態に係るフットペダルの部分概略正面図。
【図2】図1の要部拡大正面断面図。
【図3】支持体及び凸部の概略斜視図。
【図4】図2の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書における方向若しくは位置的用語は、特に明示しない限り、図1及び図2を基準とする。
【0013】
図1には、本発明の保持構造が適用されたフットペダルの部分概略正面図が示されている。この図において、フットペダル10は、上下に延びるフレーム11と、このフレーム11に回転可能に支持される回転軸12と、この回転軸12に下向きの引っ張り力を付与するスプリング13と、このスプリングの13の一端側すなわち下端側を保持する保持構造15とを備えて構成されている。
【0014】
前記回転軸12には、図示しないフットボード及びドラムビータが連結されており、フットボードの踏み込み操作により回転軸12を回転し、当該回転により前記ドラムビータを回動させてドラムを打撃可能となっている。回転軸12の右端側には、カムプレート17が取り付けられており、このカムプレート17の下部にスペーサ部材18を介して前記スプリング13の上端側が引っ掛け保持されている。
【0015】
前記保持構造15は、図2ないし図4にも示されるように、上下に延びるとともに、スプリング13の一端側に連結された雄ねじ部としてのボルト部材20と、前記フレーム11から側方に突設された支持体21と、ボルト部材20に螺合する雌ねじ部としての固定用ナット23及び調整用ナット24とを備えている。調整用ナット24は、支持体11の下面側に位置するとともに、外周にくびれ部24Aを有する形状に設けられている。
【0016】
前記支持体21には、ボルト部材20を貫通する穴21Aが形成されている。また、支持体21の上面における穴21Aの形成位置には、上向きの凸部26が連設されている。この凸部26は、穴21Aと軸線位置が一致する円錐台状に形成されている。従って、凸部26は、穴21Aの軸線方向に対し、上方に向かうに従って接近するように傾斜する傾斜面26Aすなわち円錐面を外周に備えている。
【0017】
前記固定用ナット23は、支持体11の上面側に配置されている。固定用ナット23の下面側には、凹部27が形成されている。この凹部27は、凸部26の前記円錐面に沿う内周面を備えた皿もみ形状に設けられ、前記凸部26の傾斜面26Aと同様に傾斜する傾斜面27Aを備えている。凹部27は、凸部26の先端側を部分的に受容可能な内径寸法に設けられ、凹部27内に凸部26が受容されたときに、各傾斜面26A,27Aが相互に面接触可能に設けられている。
【0018】
以上の構成において、保持構造15を介してスプリング13の下端側を保持する場合、支持体21の穴21A内にボルト部材20を挿通するとともに、ボルト部材20に固定用ナット23及び調整用ナット24を螺合する。これと前後して、スプリング13の下端側をボルト部材20に連結し、上端側を前記スペーサ部材18に連結する。そして、調整用ナット24を回転してボルト部材20の軸線方向に進退させ、調整用ナット24の上面が支持体21の下面に当接した際のスプリング13下端の上下位置を調整する。この調整により、スプリング13が伸びた状態となって回転軸12を下方向に適度な大きさで引っ張る力を発揮するようになり、回転軸12の回転位置が所定位置に維持される。
【0019】
その後、固定用ナット23を回転して支持体21に接近させ、前記凹部27内に凸部26の先端を受容させて各傾斜面26A,27Aを接触させる。これにより、固定用ナット23及び調整用ナット24により支持体21が上下方向に沿って挟み込まれ、ボルト部材20の軸線方向の移動を規制する。そして、凹部27内に凸部26を受容させた状態から固定用ナット23を更に締め付けるように回転すると、凹部27の内径を拡大するように凸部26が凹部27内に食い込み、固定用ナット23の意図しない緩みを抑制することが可能となる。
【0020】
従って、このような実施形態によれば、固定用ナット23の回転により、固定用ナット23及び調整用ナット24により支持体21を挟み込んでボルト部材20の移動規制を行いつつ、凹部27内に凸部26をくさびのように食い込ませて固定用ナット23の緩み防止を図ることが可能となる。これにより、固定用ナット23の緩みに起因するボルト部材20のがたつきや、雑音の発生を回避することができ、回転軸12に付与する引っ張り力の安定化を通じて演奏性を高めることが可能となる。
【0021】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0022】
例えば、前記固定用ナット23に凸部を設け、当該凸部が食い込み可能に受容される凹部を支持体21の穴21A周りに設けることで、固定用ナット23の緩み防止を図るようにしてもよい。
【0023】
また、調整用ナット24にも、固定用ナット23と同様に凹部27或いは凸部を設け、これに対応して支持体21の下面に凸部26或いは凹部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0024】
13・・・スプリング、15・・・保持構造、20・・・ボルト部材(雄ねじ部)、21・・・支持体、21A・・・穴、23・・・固定用ボルト(雌ねじ部)、26・・・凸部、26A・・・傾斜面、27・・・凹部、27A・・・傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に引っ張り力を発揮するスプリングの一端側を保持する構造において、
前記スプリングの一端側に連結される雄ねじ部と、この雄ねじ部を貫通する穴を有する支持体と、雄ねじ部に螺合するとともに、前記穴の軸線方向に沿って支持体を挟み込んで雄ねじ部の移動を規制可能な雌ねじ部とを備え、
前記支持体と雌ねじ部との何れか一方に凸部が設けられるとともに、何れか他方に凸部を受容可能な凹部が設けられ、
前記凸部及び凹部は、傾斜面をそれぞれ備え、各傾斜面は、前記軸線方向に対して傾斜するとともに、相互に接触可能に設けられていることを特徴とするスプリングの保持構造。
【請求項2】
前記凸部は、円錐台状に形成され、前記凹部は、前記円錐台の円錐面に沿う内周面を備えていることを特徴とする請求項1記載のスプリングの保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−159797(P2010−159797A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1452(P2009−1452)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】