説明

スプレーコート装置及びこれを用いたスプレーコート方法

【課題】 基板等のワークの表面に均一な厚みの塗膜を形成する。
【解決手段】 塗布チャンバ1内にワーク支持台3を有し、ワーク支持台3上に載置されたワーク2に塗布液を噴霧してワーク2の表面に塗膜を成膜する装置であって、ワーク2に塗布液を噴霧する塗布用ノズル5と、塗布液のスプレー噴霧エリア外7に上記塗布液に含まれている溶剤を噴霧する溶剤供給用ノズル8、8とが塗布チャンバ1内に設けられ、さらに噴霧された霧状の溶剤9aをチャンバー外に排出する手段11と、チャンバ1内のスプレー噴霧エリア外7の上記溶剤の濃度を制御する手段14とが設けられたスプレーコート装置。このスプレーコート装置を用い、溶剤供給用ノズル8、8から噴霧される溶剤の上記スプレー噴霧エリア外7での濃度を制御しながら塗布用ノズル5から塗布液を噴霧してワーク支持台3に載置されたワーク2の表面に塗膜を形成する工程を備えるスプレーコート方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板などのワークに塗布液を噴霧して塗膜を形成するために用いられるスプレーコート装置及びこれを用いたスプレーコート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布装置としては、塗布チャンバ内に配置された回転台と、この回転台に着脱自在に固定されたワークの表面に塗布液を滴下する塗布ノズルと、塗布チャンバ内に濃度の濃い溶剤を噴霧する溶剤噴霧ノズルが備えられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この塗布装置を用いてワークに塗膜をスピンコートするには、上記回転台に固定されたワークに上記塗布ノズルから塗布液を滴下したのち、上記回転台を高速回転するとともに上記溶剤噴霧ノズルから濃度の濃い溶剤を塗布チャンバ内に噴霧して溶剤ガス雰囲気で充満させた後、回転台を停止することにより、ワークの表面に塗膜を形成している。
しかしこのような塗布装置を用いる場合には、塗布チャンバ内に溶剤ガスの気流が発生してしまうため、塗布液を塗布する際にこの気流に起因して塗布ムラが発生してしまう。また、溶剤ガスでは、塗布チャンバ内が加熱されていたり、内部圧力が低い場合には、ガスの溶剤濃度が急激に低下してしまい、チャンバ内部の溶剤濃度制御が困難であり、塗布ムラが発生してしまう。
【0003】
従来の塗布装置のその他の例としては、図6に示すような回転式塗布装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
図6の回転式塗布装置は、塗布チャンバ105内に配置された回転台102と、この回転台102上に吸引により保持されるワーク101の表面に溶剤蒸気とともに塗布液を噴霧する二流体ノズルからなるスプレーノズル104が備えられたものである。スプレーノズル104は、溶剤蒸気供給源108から溶剤蒸気が注入される注入口104aと、塗布液供給源109から塗布液が注入される注入口104bと、一つの噴射口104cを有している。
この回転式塗布装置を用いてワーク101の表面に塗膜をスプレーコートするには、上記吸引によりワーク101を保持した回転台102を回転させ、この回転するワーク101上に、スプレーノズル104の噴射口104cから溶剤蒸気とともに塗布液を霧状に噴射し、ワーク101の表面に塗布液を堆積することでワーク101の表面に塗膜を形成している。
【特許文献1】特開平5−259050号公報
【特許文献2】特開平9−029158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら図6の塗布装置を用いる場合には、ワーク101に塗布液を塗布する際、スプレー法を用い、しかも溶剤蒸気とともに塗布液を噴霧するようにしているのでチャンバ内部の溶剤濃度が時間の経過とともに変化するため(特に塗布前半と後半部では溶剤濃度の違いが大きくなる)、溶剤の乾燥スピードに差が生じ塗布ムラが発生してしまう。それは塗布開始直後では、溶剤の濃度が0に近いので、この状態でスプレーノズル104から塗布液を噴霧すると、塗膜が直ぐ乾燥してしまい、塗布の最後の方では、溶剤の濃度が大きくなっているので(塗布チャンバ内が溶剤で満たされているので)、塗膜の乾燥スピードが遅くなってしまうからである。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、基板等のワーク、特に凹凸を有するワークの表面に均一な厚みの塗膜を形成できるスプレーコート装置の提供を目的の一つとする。
また、基板等のワークの表面に均一な厚みの塗膜を形成できるスプレーコート方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプレーコート装置は、塗布チャンバ内にワーク支持台を有し、該ワーク支持台上に載置されたワークに塗布液を噴霧して上記ワークの表面に塗膜を成膜するスプレーコート装置であって、
上記ワークに上記塗布液をスプレー噴霧する塗布用ノズルと、上記塗布液のスプレー噴霧エリア外に塗布液の溶剤を噴霧する溶剤供給用ノズルとが上記塗布チャンバ内に設けられ、
さらに噴霧された霧状の上記溶剤を上記塗布チャンバー外に排出する手段と、上記塗布チャンバ内の上記スプレー噴霧エリア外の上記溶剤の濃度を制御する手段とが設けられたことを特徴とする。
【0007】
上記構成の本発明のスプレーコート装置において、溶剤供給用ノズルから噴霧する溶剤は、前記塗布用ノズルからスプレー噴霧する塗布液中に含まれる溶剤と同種のものであることが好ましく、さらに好ましくは同一のものであることが望ましい。ここで溶剤の種類が同種は、成分名が同じでも濃度が異なる場合が含まれる。
上記構成の本発明のスプレーコート装置において、上記溶剤供給用ノズルは、上記スプレー噴霧エリア内の気流に影響を及ぼさない超音波霧化ノズル又は滴下ノズルを用いることが好ましい。
また、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート装置において、上記溶剤供給用ノズルから噴霧される上記溶剤のミストの粒径が60μm以下であることが好ましい。
【0008】
本発明のスプレーコート方法は、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート装置を用い、上記溶剤供給用ノズルから噴霧される上記溶剤の上記スプレー噴霧エリア外での濃度を制御しながら上記塗布用ノズルから上記塗布液をスプレー噴霧して上記ワーク支持台に載置された上記ワークの表面に塗膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
また、上記構成の本発明のスプレーコート方法において、上記ワークの表面に塗膜を形成する工程の前に、上記溶剤供給用ノズルから上記溶剤を噴霧して上記ワークの表面に供給する工程を備えることが好ましい。
また、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート方法において、上記ワークの表面に塗膜を形成する工程の後に、上記溶剤供給用ノズルから上記溶剤を上記ワークの表面に噴霧して上記塗膜の表面を平滑化する工程を備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の立体回路基板の製造方法は、上記のいずれかの構成の本発明のプレーコート方法を用いる立体回路基板の製造方法であって、
上記塗布液としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、上記ワーク支持台に載置されたワークとして表面に凹凸を有するワークを用いることを特徴とする。
また、上記構成の立体回路基板の製造方法においては、上記ワークの表面に塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により回路パターンを形成する工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスプレーコート装置は、上記ワークに上記塗布液をスプレー噴霧する塗布用ノズルと、上記塗布液のスプレー噴霧エリア外に塗布液の溶剤を噴霧する溶剤供給用ノズルとが上記塗布チャンバ内に設けられ、さらに噴霧された霧状の上記溶剤を上記塗布チャンバー外に排出する手段(霧状の溶剤排出手段)と、上記塗布チャンバ内の上記塗布液のスプレー噴霧エリア外の上記溶剤の濃度を制御する手段(溶剤濃度制御手段)とが設けられたものであるので、上記塗布液のスプレー噴霧エリア外の溶剤濃度を有機溶剤センサで検出し、上記溶剤濃度の検出値が所望の範囲外である場合は上記溶剤濃度制御手段により溶剤供給用ノズルから噴霧する溶剤の噴霧量や霧状の溶剤排出手段から排出する霧状の溶剤の排出量をコントロールすることにより、塗布液を噴霧中、あるいは塗布液の噴霧前後の塗布チャンバ内の溶剤濃度が所望の濃度になるように制御できる。
また、上記溶剤は塗布液のスプレー噴霧エリア外に噴霧されるので、ワークに塗布液を噴霧中に溶剤を噴霧しても、塗布液のスプレー噴霧エリアは霧状の溶剤による気流の影響を受けにくい。
また、塗布液の噴霧前又は噴霧中又は噴霧後に、溶剤供給用ノズルから溶剤を噴霧することで、ワークに直接溶剤粒子を散布することができ、塗膜の均一化を向上させる作業を行うことができる。
従って、本発明のスプレーコート装置によれば、霧状の溶剤による気流の影響を塗布液のスプレー噴霧エリアに与えにくく、しかも塗布液を噴霧中、あるいは塗布液の噴霧前後の塗布チャンバ内の溶剤濃度が所望の濃度になるように制御できるので、塗布液の乾燥スピードを制御でき、基板等のワークの表面に均一な塗膜を形成できる。
【0011】
また、本発明のスプレーコート方法によれば、上記のいずれかの構成の本発明のスプレーコート装置を用い、上記溶剤供給用ノズルから噴霧される上記溶剤の上記スプレー噴霧エリア外での濃度を制御しながら上記塗布用ノズルから上記塗布液をスプレー噴霧して上記ワーク支持台に載置された上記ワークの表面に塗膜を形成する工程を備えたことにより、塗布液の乾燥スピードを制御でき、基板等のワークの表面に均一な塗膜を形成できる。
例えば、溶剤供給用ノズルから霧状の溶剤を噴霧して塗布チャンバ内をある程度目的とする溶剤濃度に調整してから塗布用ノズルから霧状の塗布液の噴霧を開始し、塗布後半においては霧状の溶剤排出手段から霧状の溶剤を強制的に排気するようにして塗膜の乾燥速度の均衡を取るようにすることができる。
また、ワークの表面に形成する塗膜を均一にするときには、溶剤供給用ノズルから噴霧する霧状の溶剤の量を増やして塗布チャンバ内の溶剤濃度を高くすることにより塗膜の乾燥を抑えることで塗料の結合を促すことができる。
また、塗布チャンバ内のワーク支持台に載置したワークに塗布用ノズルから塗布液を噴霧することによりワークの表面に形成した塗膜の乾燥を促進するときは、溶剤供給用ノズルからの霧状の溶剤の噴霧を止めて、霧状の溶剤排出手段により霧状の溶剤の強制排気をかけて塗布チャンバ内の溶剤濃度を低くすることにより塗膜の乾燥を促進することができる。
また、塗膜を形成するワークが表面に凹凸や斜面を有するものであるとき、天面に形成する塗膜の膜厚を厚くする場合は、塗布始めは溶剤供給用ノズルから噴霧する霧状の溶剤の量を増やして塗布チャンバ内の溶剤濃度を高くして、天面に付着した霧状の塗布液及び霧状の溶剤を斜面に流す。また、天面より斜面の塗膜を厚くする場合は、塗布チャンバ内の溶剤濃度をあまり高くしない。
本発明において、スプレー噴霧用の溶剤(塗布用ノズルからスプレー噴霧する塗布液中に含まれる溶剤)と、上記塗布液のスプレー噴霧エリア外に供給する溶剤は、塗布液の溶剤として用いられるものであれば同一である必要はない。しかし、スプレー噴霧用の溶剤と、スプレー噴霧エリア外に供給する溶剤が同種、好ましくは同一の溶剤であれば、装置構成は簡単となり、且つ制御が容易になることは勿論である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではないことは勿論であるとともに、以下の図面においては各構成部分の縮尺について図面に表記することが容易となるように構成部分毎に縮尺を変えて記載している。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図であり、図2は図1のスプレーコート装置に備えられた溶剤供給用ノズルを示す拡大断面図である。
【0013】
本実施形態のスプレーコート装置は、塗布チャンバ1内に、ワーク2を載置するワーク支持台3と、ワーク支持台3上に載置されたワーク2に塗布液をスプレー噴霧する塗布用ノズル5と、塗布液のスプレー噴霧エリア6の外に溶剤を噴霧する複数(図面では2本)の溶剤供給用ノズル8とが設けられ、さらに塗布チャンバ1には噴霧された霧状の上記溶剤(溶剤ミスト)9を塗布チャンバー1の外に排出する手段(霧状の溶剤排出手段)11と、上記塗布チャンバ1内の塗布液のスプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度を検出する手段(溶剤濃度検出手段)としての半導体方式の有機溶剤センサ13と、上記塗布チャンバ1内の塗布液のスプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度を制御する手段(溶剤濃度制御手段)としてのコントローラ14が設けられた概略構成のものである。
【0014】
ワーク支持台3の下面には、モータ(図示略)の回転軸3aが取り付けられており、上記モータを駆動すると回転軸3aによりワーク支持台3も回転駆動するようになっている。また、ワーク支持台3は、水平方向の回転以外にX軸、Y軸に関して移動、回転ができるような構成とされていることが好ましい。ワーク支持台3には、ワーク支持台3に載置されたワーク2を加熱するための加熱手段が備えられていてもよい。
このワーク支持台3の上面にワーク2が載置される。ワーク支持台3は、吸引によりワーク2を保持できるようになっている。
ワーク2としては、シリコン基板、プリント基板、プラスチック基板、Cu基板などの基板や、また、この種の基板で表面に凹凸を有するものあるいは形状自体が立体的なものが用いられる。
【0015】
ワーク支持台3の上方に塗布用ノズル5が配置されている。この塗布用ノズル5には塗布液供給源(図示略)から塗布液4が供給される塗布液供給管5aが接続され、また、この塗布液供給管5aには塗布液の流量をコントロールするバルブ5bが設けられている。このような塗布用ノズル5からワーク支持台3に向けて塗布液を噴霧したとき、霧状の塗布液(塗布液ミスト)4aの噴流が発生する領域が塗布液のスプレー噴霧エリア6である(図1の一点鎖線6の内側の領域)。塗布液4としては、ワーク支持台3上に載置するワーク2及びこのワーク2に施す処理によって異なるが、レジストとレジストシンナー(溶剤)を含んでおり、レジストとしてはネガレジスト、ポジレジスト、ソルダレジストなどが用いられる。
【0016】
この塗布用ノズル5の両側に溶剤供給用ノズル8、8が配置されている。各溶剤供給用ノズル8には溶剤供給源(図示略)から溶剤9が供給される溶剤供給管8aが接続され、また、各溶剤供給管8aには溶剤の流量をコントロールするバルブ8bが設けられている。これら溶剤供給用ノズル8、8から溶剤9を噴霧したとき、霧状の溶剤(溶剤ミスト)9aの噴流が発生する領域は、塗布液のスプレー噴霧エリア外7(図1の一点鎖線6の外側の領域)とされる。
なお、本実施形態のスプレーコート装置は、溶剤供給用ノズル8、溶剤供給源(図示略)、溶剤供給管8a、バルブ8bからなる霧状の溶剤噴霧手段が2組備えられたものである。
【0017】
溶剤9としては、塗布液の溶剤が用いられ、例えば、キシレン、乳酸エチル、3メチルメトキシプロピオネ―ト(MMP)、エチルエトキシプロピオネート(EEP)、アセトン、n−ブチルアセテート(NBA)、エチルセロソルブアセテート(ECA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などレジストシンナーとして使用される溶剤が用いられる。
【0018】
各溶剤供給用ノズル8は、スプレー噴霧エリア6内の気流に影響を及ぼさない図2に示すような超音波霧化ノズルから構成されている。この超音波霧化ノズル8内には、振動子8cが設けられており、超音波霧化ノズル8に液状の溶剤9を供給中に振動子8cを駆動して超音波を発振させると、溶剤9の粒子9cからなる溶剤ミスト9aが発生し、ノズル8の吐出口から溶剤ミスト9aが噴霧される。
振動子8cとしては、ソリッドタイプ振動子、ボルト締めランジュバン型振動子、圧電高分子膜、圧電ZnO薄膜等が用いられる。
図2に示すような超音波霧化ノズルからなる溶剤供給用ノズル8は、溶剤ミスト9aの噴霧速度を遅くするために液状の溶剤9の送圧が低くされている。溶剤ミスト9aの噴霧速度は、0.2m/秒以下程度とされている。溶剤ミスト9aの噴霧速度が速するぎると、スプレー噴霧エリア6内の気流に悪影響を与え、ワーク2に均一に塗布することができない。
【0019】
上記溶剤供給用ノズル8から噴霧される溶剤のミスト9aの粒径は、60μm以下であることが好ましい。溶剤のミスト9aの粒径が60μmを超えて大きいと、基板(ワーク)に当たった時クレーター状となって塗布ムラの原因となってしまう。
【0020】
ワーク支持台3の下方のスプレー噴霧エリア外7には、霧状の溶剤排出手段11としての排気管が配設され、この排気管の排気口がスプレー噴霧エリア外7に開口している。排気管に排気量をコントロールするバルブ(図示略)や負圧源(図示略)設けられている。なお、この霧状の溶剤排出手段11は、給気機能を兼ねるものであってもよい。
【0021】
また、塗布液のスプレー噴霧エリア外7には、半導体方式の有機溶剤センサ13が設けられており、スプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度を検出できるようになっている。さらに、この有機溶剤センサ13は塗布チャンバ1の外側に設けられたコントローラ14と接続されており、溶剤の濃度の検出値をコントローラ14に送るようになっている。
コントローラ14は、バルブ8b、8bや霧状の溶剤排出手段11と接続されており、溶剤濃度の検出値が所望の範囲外である場合は、バルブ8b、8bを制御して溶剤供給用ノズル8、8から噴霧する溶剤の噴霧量をコントロールしたり、排気管11に設けられたバルブや負圧源を制御して排気管11から排出する霧状の溶剤の排出量をコントロールすることにより、塗布液を噴霧中、あるいは塗布液の噴霧前後の塗布チャンバ1内の溶剤濃度が所望の濃度になるように制御することができるようになっている。
また、コントローラ14は、バルブ5bと接続されており、バルブ5bを制御して塗布用ノズル5からスプレー噴霧する塗布液量を調整することも可能な構成としている。
【0022】
スプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度は各々の溶剤を使用する場合の適当な範囲に制御されている必要がある。溶剤の濃度が低いと、粒子の結合が起こる前に乾燥してしまい、塗膜にピンホールが発生してしまう。溶剤の濃度が高過ぎると塗膜の乾燥が進まず、凹凸で液だれや、切れが発生する。
なお、溶剤濃度は、ワーク2の形状や、ワーク2の各部位に形成する塗膜厚みによって適宜変更される。
ここでのスプレー噴霧エリア外7の溶剤の好ましい濃度とは、塗布液のスプレー噴霧の前後、噴霧中でそれぞれ異なる値となることもある。
【0023】
次に、図1乃至図2に示すスプレーコート装置を用いてワークの表面に塗膜を形成するスプレーコート方法について説明する。
まず、塗布チャンバ1内のワーク支持台3の上面にワーク2を載置し、吸引によりワーク支持台3に保持する。
ついで、モータを駆動して回転軸3aを回転することによりワーク支持台3をワーク2とともに回転する。
ついで、スプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度が0ppm〜最大400ppmの範囲で、適切な所定の値になるように溶剤供給用ノズル8、8から溶剤ミスト9aを噴霧し、塗布チャンバ1内を溶剤ミスト雰囲気に満たすことにより、溶剤ミスト9aをワーク2の表面に供給する。なお、上記のスプレー噴霧エリア外7の溶剤濃度範囲0ppm〜400ppmは、スプレー噴霧エリア外7に噴霧する溶剤が、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のうちの一つ、スプレー噴霧する塗布液中に含まれる溶剤として同種のものを用いた場合である。ここで、上記所定の値は、溶剤の種類のみならず、ワークの形状等によっても異なるため、各々のケースにおいて個別に設定しなければならない。
【0024】
ついで、溶剤供給用ノズル8、8から噴霧される溶剤の上記のスプレー噴霧エリア外7での溶剤濃度を有機センサ13で検出し、この溶剤濃度の検出値に基づいてコントローラ14により溶剤供給用ノズル8、8から噴霧する溶剤の噴霧量をコントロールしたり、排気管11から排出する霧状の溶剤の排出量をコントロールすることにより、スプレー噴霧エリア外7の溶剤濃度が所定の濃度になるように制御しながら塗布用ノズル5から霧状の塗布液4aを回転するワーク2の表面にスプレー噴霧して塗膜15を形成する。ここで霧状の塗布液4aの噴霧直後のワーク2上に形成される塗膜15は、図3のAに示すように表面に凹凸15aを有している。
【0025】
ついで、塗布用ノズル5からの霧状の塗布液4aのスプレー噴霧を止めた後、溶剤供給用ノズル8、8から溶剤ミスト9aを噴霧して塗布チャンバ1内を溶剤ミスト雰囲気にすることにより、図3のBに示すように溶剤ミスト9aをワーク2の表面に形成された凹凸を有する塗膜15に散布すると、これら溶剤ミスト9aにより塗膜15の凹凸15aが平坦化され、図3のCに示すような表面が平滑化された塗膜15となる。
ついで、溶剤供給用ノズル8、8からの溶剤ミスト9aの噴霧を止めて、排気管11により溶剤ミスト9aの強制排気をかけて塗布チャンバ1内の溶剤濃度を小さくすることにより塗膜15の乾燥を促進すると、厚みが均一な塗膜15が形成されたワーク2が得られる。
【0026】
また、図1乃至図2に示すスプレーコート装置を用いてワークの表面に塗膜を形成する際には、溶剤供給用ノズル8、8から霧状の溶剤9aを噴霧して塗布チャンバ1内をある程度目的とする溶剤濃度に調整してから塗布用ノズル5から霧状の塗布液4aのスプレー噴霧を開始し、塗布後半においては排気管11から霧状の溶剤9aを強制的に排気するようにして塗膜の乾燥速度の均衡を取るようにしてもよい。
なお、上記実施形態のスプレーコート装置においては、溶剤供給用ノズル8が超音波霧化ノズルから構成されている場合について説明したが、噴霧エリア内の気流に影響を及ぼさない滴下ノズルであってもよい。
【0027】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図である。
第2の実施形態のスプレーコート装置が、図1に示した第1の実施形態のスプレーコート装置と異なるところは、塗布チャンバ1内の上部にシャッタ30が設けられたことと、霧状の溶剤噴霧手段の構成が異なる点である。
シャッタ30は水平方向(図4では左右)に移動させることにより、塗布チャンバ1内を上部の溶剤ミスト発生室32と下部のスプレーコート室33を区画したり、溶剤ミスト発生室32を開放してスプレーコート室33と連通させるものである。
なお、シャッタは水平移動するものに限らず、絞り機構により開口面積を変えるものであれば更に好ましい。
【0028】
本実施形態のスプレーコート装置に備えられた霧状の溶剤噴霧手段は、溶剤9が貯溜される溶剤ミスト発生室32内に設けられた溶剤貯留槽38と、溶剤貯留槽38内に配置された振動子38cと、溶剤貯留槽38に接続された溶剤供給管8aと、溶剤供給管8aに溶剤9を供給する溶剤供給源(図示略)と、溶剤供給管8aに設けられたバルブ8bから構成されており、この霧状の溶剤噴霧手段が2組備えられたものである。溶剤貯留槽38、38は、塗布用ノズル5の両側(左右)の上方になるように溶剤ミスト発生室32内に配置されている。
上記霧状の溶剤噴霧手段は、上記溶剤供給源から溶剤供給管8aに溶剤9を供給して溶剤貯留槽38内に溶剤9を貯溜した状態で、振動子38cを駆動して超音波を発振させると、溶剤ミスト9aが発生するようになっている。
シャッタ30を開放した状態で溶剤貯留槽38、38から溶剤ミスト9aを発生させて溶剤ミスト9aの流れが発生する領域は、主に塗布液のスプレー噴霧エリア外7(図4の一点鎖線6の外側の領域)とされる。
本実施形態においてもコントローラ14は、バルブ8b、8bや霧状の溶剤排出手段11と接続されている。
【0029】
次に、図4に示すスプレーコート装置を用いてワークの表面に塗膜を形成するスプレーコート方法について説明する。
まず、第1の実施形態と同様にしてワーク支持台3をワーク2とともに回転する。
まず、シャッタ30を開放した状態としておき、上記溶剤供給源から溶剤供給管8aに溶剤9を供給して溶剤貯留槽38内に溶剤9を貯溜した後、振動子38cを駆動して超音波を発振させて溶剤ミスト9aを発生させ、溶剤ミスト9aがスプレーコート室33側にゆっくり移動させて、溶剤ミスト9aをワーク2の表面に供給する。
【0030】
ついで、溶剤ミスト発生室32から移動してくる溶剤の上記スプレー噴霧エリア外7での濃度を有機センサ13で検出し、この溶剤濃度の検出値に基づいてコントローラ14により溶剤貯留槽38、38から発生させる溶剤ミストの量をコントロールしたり、排気管11から排出する溶剤ミストの排出量をコントロールすることにより、スプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度が所定の濃度になるように制御しながら塗布用ノズル5から霧状の塗布液4aを回転するワーク2の表面に噴霧して図3のAに示すように表面に凹凸15aを有する塗膜15を形成する。
【0031】
ついで、塗布用ノズル5からの霧状の塗布液4aの噴霧を止めた後、溶剤貯留槽38、38から溶剤ミスト9aを発生させ、スプレーコート室33内を溶剤ミスト雰囲気にすることにより、図3のBに示すように溶剤ミスト9aをワーク2の表面に形成された凹凸を有する塗膜15に散布すると、図3のCに示すような表面が平滑化された塗膜15となる。
ついで、シャッタ30を閉じた状態にするか、あるいは振動子38cの振動や溶剤貯留槽38への溶剤9の供給を止めて溶剤ミスト9aがスプレーコート室33に移動しないようにし、排気管11により溶剤ミスト9aの強制排気をかけてスプレーコート室33内の溶剤濃度を小さくすることにより塗膜15の乾燥を促進すると、厚みが均一な塗膜15が形成されたワーク2が得られる。
【0032】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図である。
第3の実施形態のスプレーコート装置が、図1に示した第1の実施形態のスプレーコート装置と異なるところは、塗布チャンバ1内の上部にシャッタ30が設けられたことと、霧状の溶剤噴霧手段の構成が異なる点である。
シャッタ30は第2の実施形態で設けられた同様に水平方向に移動させることにより、塗布チャンバ1内を上部の溶剤ミスト発生室32と下部のスプレーコート室33を区画したり、溶剤ミスト発生室32を開放してスプレーコート室33と連通させるものである。
【0033】
本実施形態のスプレーコート装置に備えられた霧状の溶剤噴霧手段は、一方の端部が溶剤ミスト発生室32内で開口する溶剤ミスト供給管38aと、溶剤ミスト供給管38aに溶剤ミスト9aを供給する溶剤ミスト供給源(図示略)と、溶剤ミスト供給管38aに設けられたバルブ38bから構成されており、溶剤ミスト供給管38aの一方の端部は、塗布用ノズル5の一方の側(図面では右側)の上方になるように溶剤ミスト発生室32内に配置されている。
上記霧状の溶剤噴霧手段は、上記溶剤ミスト供給源から溶剤ミスト供給管38aに溶剤ミスト9aを供給すると供給管38aの一端部から溶剤ミスト9aが溶剤ミスト発生室32内に供給されるようになっている。
シャッタ30を開放した状態で溶剤ミスト発生室32内に溶剤ミスト9aを供給すると溶剤ミスト9aはスプレーコート室33側に流れるようにして移動する。ここで溶剤ミスト9aの流れが発生する領域は、主に塗布液のスプレー噴霧エリア外7(図6の一点鎖線6の外側の領域)とされる。
本実施形態においてもコントローラ14は、バルブ38bや霧状の溶剤排出手段11と接続されている。
【0034】
次に、図5に示すスプレーコート装置を用いてワークの表面に塗膜を形成するスプレーコート方法について説明する。
まず、第1の実施形態と同様にしてワーク支持台3をワーク2とともに回転する。
まず、シャッタ30を開放した状態としておき、上記溶剤ミスト供給源から溶剤ミスト供給管38aに溶剤ミスト9aを供給し、供給管38aの一端部から溶剤ミスト9aを溶剤ミスト発生室22に供給し、溶剤ミスト9aをスプレーコート室33側にゆっくり移動させ、溶剤ミスト9aをワーク2の表面に供給する。
【0035】
ついで、溶剤ミスト発生室32から移動してくる溶剤の上記スプレー噴霧エリア外7での濃度を有機センサ13で検出し、この溶剤濃度の検出値に基づいてコントローラ14により溶剤ミスト供給管38aから供給する溶剤ミストの量をコントロールしたり、排気管11から排出する溶剤ミストの排出量をコントロールすることにより、スプレー噴霧エリア外7の溶剤の濃度が所定の濃度になるように制御しながら塗布用ノズル5から霧状の塗布液4aを回転するワーク2の表面に噴霧して図3のAに示すように表面に凹凸15aを有する塗膜15を形成する。
【0036】
ついで、塗布用ノズル5からの霧状の塗布液4aの噴霧を止めた後、溶剤ミスト供給管38aから溶剤ミスト9aを溶剤ミスト発生室32に供給し、この溶剤ミスト9aをスプレーコート室33に移動してスプレーコート室33内を溶剤ミスト雰囲気にすることにより、図3のBに示すように溶剤ミスト9aをワーク2の表面に形成された凹凸を有する塗膜15に散布すると、図3のCに示すような表面が平滑化された塗膜15となる。
ついで、シャッタ30を閉じた状態にするか、あるいは溶剤ミスト供給管38aへの溶剤ミスト9aの供給を止めて溶剤ミスト9aがスプレーコート室33に移動しないようにし、排気管11により溶剤ミスト9aの強制排気をかけてスプレーコート室33内の溶剤濃度を小さくすることにより塗膜15の乾燥を促進すると、厚みが均一な塗膜15が形成されたワーク2が得られる。
【0037】
また、上記実施形態のスプレーコート方法は立体回路基板の製造方法に適用することも可能で、その場合には、塗布液4としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、ワーク支持台3に載置するワーク2として表面に凹凸や斜面を有するワークが用いられる。
また、この立体回路基板の製造方法においては、ワークの表面に塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により回路パターンを形成する工程が備えられることで立体回路基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図。
【図2】図2は図1のスプレーコート装置に備えられた溶剤供給用ノズルを示す拡大断面図。
【図3】本発明の実施形態のスプレーコート方法を工程順に示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図。
【図5】本発明の第3の実施形態のスプレーコート装置の概略構成を示す図。
【図6】従来の塗布装置のその他の例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0039】
1・・・塗布チャンバ、2・・・ワーク、3・・・ワーク支持台、4・・・塗布液、4a・・・霧状の塗布液(塗布液ミスト)、5・・・塗布用ノズル、5a・・・塗布液供給管、5b・・・バルブ、6・・・塗布液のスプレー噴霧エリア、7・・・塗布液のスプレー噴霧エリア外、8・・・溶剤供給用ノズル、8c・・・振動子、9・・・液状の溶剤、9a・・・霧状の溶剤(溶剤ミスト)、9c・・・溶剤の粒子、11・・・排気管(霧状の溶剤排出手段)、13・・・有機溶剤センサ(溶剤濃度検出手段)、14・・・コントローラ(溶剤濃度制御手段)、15・・・塗膜、15a・・・凹凸、30・・・シャッタ、32・・・溶剤ミスト発生室、33・・・スプレーコート室、38・・・溶剤貯溜槽、38a・・・溶剤ミスト供給管、38b・・・バルブ、38c・・・振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布チャンバ内にワーク支持台を有し、該ワーク支持台上に載置されたワークに塗布液を噴霧して前記ワークの表面に塗膜を成膜するスプレーコート装置であって、
前記ワークに前記塗布液をスプレー噴霧する塗布用ノズルと、前記塗布液のスプレー噴霧エリア外に塗布液の溶剤を噴霧する溶剤供給用ノズルとが前記塗布チャンバ内に設けられ、
さらに噴霧された霧状の前記溶剤を前記塗布チャンバー外に排出する手段と、前記塗布チャンバ内の前記スプレー噴霧エリア外の前記溶剤の濃度を制御する手段とが設けられたことを特徴とするスプレーコート装置。
【請求項2】
前記溶剤供給用ノズルから噴霧する溶剤は、前記塗布用ノズルからスプレー噴霧する塗布液中に含まれる溶剤と同種のものであることを特徴とする請求項1記載のスプレーコート装置。
【請求項3】
前記溶剤供給用ノズルは、前記スプレー噴霧エリア内の気流に影響を及ぼさない超音波霧化ノズル又は滴下ノズルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプレーコート装置。
【請求項4】
前記溶剤供給用ノズルから噴霧される前記溶剤のミストの粒径が60μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスプレーコート装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスプレーコート装置を用い、前記溶剤供給用ノズルから噴霧される前記溶剤の前記スプレー噴霧エリア外での濃度を制御しながら前記塗布用ノズルから前記塗布液をスプレー噴霧して前記ワーク支持台に載置された前記ワークの表面に塗膜を形成する工程を備えることを特徴とするスプレーコート方法。
【請求項6】
前記ワークの表面に塗膜を形成する工程の前に、前記溶剤供給用ノズルから前記溶剤を噴霧して前記ワークの表面に供給する工程を備えることを特徴とする請求項5に記載のスプレーコート方法。
【請求項7】
前記ワークの表面に塗膜を形成する工程の後に、前記溶剤供給用ノズルから前記溶剤を前記ワークの表面に噴霧して前記塗膜の表面を平滑化する工程を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のスプレーコート方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載のスプレーコート方法を用いる立体回路基板の製造方法であって、
前記塗布液としてレジストとその溶剤からなる塗布液を用い、前記ワーク支持台に載置されたワークとして表面に凹凸を有するワークを用いることを特徴とする立体回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記ワークの表面に塗膜を形成する工程の後に、フォトリソグラフィー技術により回路パターンを形成する工程を備えることを特徴とする請求項8に記載の立体回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−7163(P2006−7163A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191164(P2004−191164)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】