説明

スペクトラムモニタ付きレーダ装置

【課題】送信スプリアスレベルを簡単に測定することができるスペクトラムモニタ26付きレーダ装置を提供する
【解決手段】レーダ信号を出力する送信部と、レーダ信号を送信するレーダアンテナと、信号を受信し受信信号に基づいて物標の存在位置を求める物標位置解析部と、物標位置解析部によって求められた物標の位置を表示するレーダ表示部と、レーダアンテナとの間で所定の位置関係を維持するよう配置され、レーダ信号を受信するモニタアンテナと、モニタアンテナで受信された信号の周波数スペクトラムデータを求めるスペクトラム解析部とを備え、レーダ表示部は、スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータを表示すること特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号のスペクトラム解析を行う手段を備えるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載され海上の障害物等の位置を測定する船舶レーダ装置が広く用いられている。船舶レーダ装置は、レーダ信号を送信し、物標で反射したレーダ信号を受信する装置であり、レーダ信号を送信してから物標で反射したレーダ信号が受信されるまでに要した時間および信号伝搬速度に基づいて、船舶レーダ装置から物標までの距離を求める。船舶レーダ装置は、さらに、物標で反射したレーダ信号が到来した方位に基づいて物標の方位を求める。船舶レーダ装置は、このようにして船舶レーダ装置の位置を基準とした物標の位置を求める。
【0003】
船舶レーダ装置のレーダ信号については、他の無線システムの通信を妨害することのないよう、送信スプリアスレベルの規格が定められている。従来、送信スプリアスレベルの規格は、船舶レーダ装置の型式検定時に確認されるのみで、船舶に装備されたレーダ装置の保守管理者は送信スプリアスレベルの規格を満足しているかどうかについては、確認を行わないのが通常であった。しかし、近年送信スプリアスレベルの規制が、より挟帯域になりつつあり、マグネトロン等の能動素子を使用しているレーダ装置については、その性質上、累積発振時間が長くなるに伴い、スペクトラム特性が送信スプリアスレベルの規格に対して徐々に劣化する傾向がある。そのために、レーダ装置保守管理者は、簡単且つ定期的に送信スプリアスレベルを確認する手段を持つ必要がある。しかしながら、従来の送信スプリアスレベルの測定では、モニタ用アンテナ、スペクトラムアナライザ等を船舶に持ち込み、レーダアンテナから送信されたレーダ信号をモニタ用アンテナで受信し、スペクトラムアナライザで解析するという方法が行われており、測定値の再現性や測定そのものの難しさに問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−075529号公報
【特許文献2】特開2005−265535号公報
【特許文献3】特開2007−017274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダ信号の一部は、甲板、船舶操縦室の壁等で反射することがある。このような条件下において、船舶上でレーダ信号の送信スプリアスレベルを測定する場合、レーダアンテナから送信され直接モニタ用アンテナで受信されるレーダ信号に、反射した信号が干渉し、送信スプリアスレベルを正確に測定できないことがある。そのため、測定者は、反射した信号の干渉を受けにくい位置を選び測定を行う必要があった。さらに、モニタ用アンテナで受信される信号が取り得るレベルの範囲が測定位置によって異なり、スペクトラムアナライザの測定ダイナミックレンジを設定することに時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に対してなされたものである。すなわち、送信スプリアスレベルを簡単に測定することができるスペクトラムモニタ付きレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レーダ信号を出力する送信部と、前記レーダ信号を送信するレーダアンテナと、信号を受信し受信信号に基づいて物標の存在位置を求める物標位置解析部と、前記物標位置解析部によって求められた物標の位置を表示するレーダ表示部と、前記レーダアンテナとの間で所定の位置関係を維持するよう配置され、前記レーダ信号を受信するモニタアンテナと、前記モニタアンテナで受信された信号の周波数スペクトラムデータを求めるスペクトラム解析部と、を備え、前記レーダ表示部は、前記スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータを表示することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るスペクトラムモニタ付きレーダ装置においては、前記レーダ信号のスプリアス規格データを出力するスプリアス規格データ出力部を備え、前記レーダ表示部は、前記スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータと、前記スプリアス規格データと、を共に表示することが好適である。
【0009】
また、本発明に係るスペクトラムモニタ付きレーダ装置においては、前記レーダ信号のスプリアス規格データと、前記スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータと、を比較し、スプリアス規格を満たすか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定時と、前記判定部による判定結果と、を対応付けた判定履歴を記憶する判定履歴記憶部と、を備えることが好適である。
【0010】
また、本発明に係るスペクトラムモニタ付きレーダ装置においては、前記レーダアンテナを回転させるアンテナ駆動部を備え、前記モニタアンテナは、前記アンテナ駆動部の筐体に取り付けられることが好適である。
【0011】
また、本発明に係るスペクトラムモニタ付きレーダ装置においては、前記送信部は、パルス変調が施されたレーダ信号を出力し、前記スペクトラム解析部は、ローカル信号を出力するローカル信号発生部と、前記レーダ信号の送信タイミングに応じて前記ローカル信号の周波数を掃引するローカル周波数掃引部と、前記モニタアンテナで受信された信号の周波数変換を、周波数が掃引された前記ローカル信号に基づいて行う周波数変換部と、前記周波数変換部によって周波数変換された信号から、同調周波数信号を検波する検波部と、前記ローカル信号の掃引周波数に基づいて求められる受信周波数および前記検波部によって検波された検波信号を、周波数スペクトラムデータとして出力する解析結果出力部と、を備えることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送信スプリアスレベルを簡単に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に本発明の実施形態に係るスペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置の構成を示す。アンテナ駆動部12は、解析/制御部18の制御に基づいてレーダアンテナ10を回転させ、レーダアンテナ10の指向方向を回転させる。また、レーダアンテナ10の回転角度情報を解析/制御部18に出力する。
【0014】
送信部14はレーダアンテナ10を介してレーダ信号を送信する。レーダ信号には、例えば、正弦波を矩形パルスで変調したものを用いる。レーダ信号を送信するタイミングは、解析/制御部18によって制御される。
【0015】
受信部16は、レーダアンテナ10で受信された信号に増幅、周波数変換等の処理を施し、解析/制御部18に出力する。
【0016】
解析/制御部18は、レーダ信号を送信してから、物標で反射したレーダ信号が受信されるまでの時間を測定すると共に、測定時間とレーダ信号の伝搬速度とに基づいて物標までの距離を求める。また、解析/制御部18は、物標で反射したレーダ信号が受信されたときの回転角度情報に基づいて、物標で反射したレーダ信号の到来方向を物標の存在方位として求める。
【0017】
解析/制御部18は、スペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置から物標までの距離および物標の存在方位を示す情報をレーダ表示部20に出力する。レーダ表示部20は、スペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置の位置を基準とした物標の位置を表示する。
【0018】
一般に、パルス変調されたレーダ信号を用いるレーダ装置の測定距離分解能は、伝搬速度にレーダ信号のパルス時間長を乗じて求まる距離によって定まる。また、パルス時間長が長い程送信出力が上がるために、測定可能距離が長くなる。そこで、解析/制御部18は、パルス時間長の異なる複数種のレーダ信号を、所定のタイミングで送信するよう送信部14を制御する。このような長短複合パルスレーダ方式によって、測定距離分解能を向上させると共に、測定可能距離を長くすることができる。
【0019】
なお、ここでは、物標で反射したレーダ信号をレーダアンテナ10で受信する構成とした。このような構成の他、レーダアンテナ10とは別に設けられたアンテナによって、物標で反射したレーダ信号を受信する構成としてもよい。
【0020】
次に、スペクトラムモニタ26について説明する。モニタアンテナ28は、レーダアンテナ10から送信されるレーダ信号を受信することができ、かつ、甲板、船舶操縦室の壁等の障害物で反射したレーダ信号の干渉を受けない位置に固定する。モニタアンテナ28に特定の方向に指向性を持つものを用い、モニタアンテナ28の指向性方向にレーダアンテナ10が存在するようモニタアンテナ28を固定することで、干渉を受け難い配置条件を見いだすことが容易となる。また、モニタアンテナ28を含めたスペクトラムモニタ26全体の固定を容易にするため、ここでは、モニタアンテナ28とその他の構成部とを同一筐体内に収納し、障害物で反射したレーダ信号の干渉が無視できる程度となる位置にスペクトラムモニタ26を固定するものとする。
【0021】
図2にスペクトラムモニタ26を固定する位置の例を示す。図2の例では、レーダアンテナ10として導波管スロットアレイアンテナを用いている。レーダアンテナ10は、ロータリージョイント50を介してアンテナ駆動部12に取り付けられる。アンテナ駆動部12は、解析/制御部18の制御によってロータリージョイント50を回転させることにより、レーダアンテナ10を回転させる。スペクトラムモニタ26の筐体は、アンテナ駆動部12の筐体に固定される。
【0022】
モニタアンテナ28は、受信した信号をモニタ信号として無線周波数フィルタ30に出力する。無線周波数フィルタ30は、送信スプリアスレベルの規格が定められている周波数帯域外の信号を減衰させ、可変利得アンプ32に出力する。
【0023】
可変利得アンプ32は、モニタ信号を増幅し可変アッテネータ34に出力する。可変利得アンプ32の利得は、解析/制御部18によって制御される。可変アッテネータ34は、可変利得アンプ32から出力されたモニタ信号を減衰させ、ミキサ36に出力する。可変アッテネータ34の減衰量は、解析/制御部18によって制御される。
【0024】
ローカル信号発生器38はローカル信号を発生しミキサ36に出力する。ローカル信号の周波数は、解析/制御部18が出力する周波数制御電圧によって制御される。ここでは、ローカル信号の周波数を、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域よりも低域側の周波数とする。
【0025】
ローカル信号発生器38が出力するローカル信号の周波数は、周波数制御電圧の他、ローカル信号発生器38の温度にも依存する。解析/制御部18が、温度の影響を考慮した周波数制御を行うため、記憶部22は、ローカル信号発生器38の温度、ローカル信号制御電圧、およびローカル信号の周波数を対応付けたローカル周波数テーブルを記憶する。ローカル周波数テーブルは、ローカル信号発生器38の複数の温度条件について、周波数制御電圧とローカル信号の周波数との関係を予め測定することで取得することができる。
【0026】
ミキサ36は、モニタ信号とローカル信号との積成分を発生させることにより、モニタ信号の周波数とローカル信号の周波数との差の絶対値周波数へとモニタ信号の周波数を変換する。そして、周波数変換されたモニタ信号を同調フィルタ42に出力する。
【0027】
同調フィルタ42は、所定の同調周波数以外の周波数の信号を減衰させ、LOGアンプ44に出力する。LOGアンプ44は、信号値の対数をとり同調検波器46に出力する。同調検波器46は、LOGアンプ44が出力する信号の同調周波数成分を検波し、解析/制御部18に出力する。
【0028】
解析/制御部18は、ローカル信号発生器温度計40からローカル信号発生器38の温度を読み込む。そして、記憶部22に記憶されているローカル周波数テーブルを参照し、ローカル信号発生器38の温度およびローカル信号制御電圧に対応するローカル信号の周波数を求める。
【0029】
解析/制御部18は、求められた周波数に同調周波数を加えた受信周波数を求める。そして、受信周波数と同調検波器46から出力された検波信号の値とを対応付けたデータを、周波数スペクトラムデータとしてレーダ表示部20に出力する。レーダ表示部20は、周波数スペクトラムデータを表示する。
【0030】
このような処理によれば、ローカル信号の周波数に同調周波数を加えた受信周波数の信号が、周波数変換によって同調周波数の信号に変換される。そして、同調周波数の信号に変換された受信信号は、対数値変換された後検波される。これによって、受信周波数の信号を検波することができる。また、同調信号に対数値変換を施すことにより、受信可能な信号レベルの範囲を広げることができる。
【0031】
次に、レーダ表示部20にモニタ信号の周波数スペクトラムを表示する制御について説明する。解析/制御部18は、レーダ信号を送信するよう送信部14を制御すると共に、ローカル信号の周波数が掃引開始周波数fsから掃引終了周波数feまで掃引されるよう、周波数制御電圧を変化させる。例えば、2種のレーダ信号を用いる長短複合パルスレーダ方式については、短いパルス時間長のレーダ信号に対して送信スプリアスレベルの規格が定められている。この場合、解析/制御部18は、短いパルス時間長のレーダ信号を送信するタイミングで周波数制御電圧の制御を開始する。ここで、掃引開始周波数fsは、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の下限から同調周波数を減じた周波数とする。また、掃引終了周波数feは、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の上限から同調周波数を減じた周波数とする。
【0032】
このような制御によれば、ローカル信号の周波数が掃引開始周波数fsから掃引終了周波数feまで掃引されるよう周波数制御電圧を変化させると共に、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の下限から上限までの信号が受信周波数の信号として検波され、同調検波器46から出力される。
【0033】
また、解析/制御部18が周波数スペクトラムデータの要素として出力する受信周波数の値は、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の下限から上限まで変化する。
【0034】
したがって、解析/制御部18から出力される周波数スペクトラムデータは、ローカル信号周波数の掃引に同期して送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の下限から上限まで増加する受信周波数に、検波信号値を対応付けたものとなる。
【0035】
レーダ表示部20は、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の範囲内で出力される周波数スペクトラムデータに基づいて、横軸に受信周波数をとり、縦軸に検波信号値をとった周波数スペクトラムを表示する。また、記憶部22に記憶されているスプリアス規格データ(規格マスク)を読み込み、レーダ信号の周波数スペクトラムにスプリアス規格特性を重ねて表示する。
【0036】
図3にレーダ表示部20の画面表示の例を示す。図3は、送信信号の周波数スペクトラムSとスプリアス規格特性Lとを重ねて表示した場合を示している。送信スプリアスレベルの規格は、レーダ信号の占有周波数帯域の中心周波数におけるレベルを基準としたデシベル値で表される。図3の送信スプリアス規格特性Lは、送信スプリアス規格特性Lが示すレベル以下であれば規格を満たすことを意味する。図3では、3105MHz付近でレーダ信号の周波数スペクトラムSが送信スプリアス規格特性Lのレベルを超えており、規格を満たさない。
【0037】
操作部24は、ユーザの操作に応じて、レーダ表示部20に物標の位置を表示する旨の指令、またはレーダ信号の周波数スペクトラムを表示する旨の指令を、解析/制御部18に出力する。解析/制御部18は、操作部24から出力された指令に応じて、物標の位置またはレーダ信号の周波数スペクトラムをレーダ表示部20に出力する。
【0038】
本実施形態に係るスペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置では、モニタアンテナ28は、レーダアンテナ10から送信されるレーダ信号を受信することができ、かつ、甲板、船舶操縦室の壁等の障害物で反射したレーダ信号の干渉を受けない位置に固定される。これによって、船舶上の障害物で反射したレーダ信号が、レーダアンテナ10から送信されモニタアンテナ28で直接受信されるレーダ信号に干渉することを防ぎ、正確な周波数スペクトラムを取得することができる。
【0039】
また、レーダ表示部20は、操作部24の操作に応じて、物標の位置またはレーダ信号の周波数スペクトラムのいずれかを表示する。したがって、周波数スペクトラムを表示するための表示部を別途設ける必要がなく、構成を簡略化することができる。
【0040】
なお、ここでは、ローカル信号の周波数を、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域よりも低域側の周波数とした。本実施形態に係るスペクトラムモニタ26では、ローカル信号の周波数を、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域よりも高域側の周波数としてもよい。この場合、掃引開始周波数fsは、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の下限に同調周波数を加えた周波数とする。また、掃引終了周波数feは、送信スプリアスレベルの規格周波数帯域の上限に同調周波数を加えた周波数とする。
【0041】
次に、可変利得アンプ32の利得および可変アッテネータ34の減衰量の制御について説明する。モニタアンテナ28で受信された信号のレベルが大きいと、ミキサ36に入力される信号のレベルが大きくなる。これによって、ミキサ36、LOGアンプ44、または同調検波器46のうちいずれかが飽和すると、正確な周波数スペクトラムデータを取得することができない。そこで、解析/制御部18は、同調検波器46が出力する検波信号値が所定の閾値以下となるよう、可変利得アンプ32の利得および可変アッテネータ34の減衰量を決定する。
【0042】
また、検波信号の信号対白色雑音比が小さいと、周波数スペクトラムデータを求めることができるモニタ信号のレベル範囲(測定ダイナミックレンジ)が狭くなる。検波信号の信号対白色雑音比は、可変利得アンプ32の利得を大きくする程大きくすることができる。
【0043】
そこで、解析/制御部18は、検波信号値が所定の閾値以下となり、かつ、十分な測定ダイナミックレンジを確保できる程度に検波信号の信号対白色雑音比が大きくなるよう、可変利得アンプ32の利得および可変アッテネータ34の減衰量を決定する。
【0044】
本実施形態に係るスペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置では、モニタアンテナ28は、船舶における所定の位置に固定される。したがって、レーダ信号のレベルが一定であるという条件の下、可変利得アンプ32の利得および可変アッテネータ34の減衰量を一度設定することで、同一の設定条件をその後の周波数スペクトラム解析に用いることができる。これによって、測定レベル範囲の設定を簡単に行うことができる。
【0045】
本実施形態に係るスペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置は、物標の位置測定を行う通常の運用時に、定期的にレーダ信号の周波数スペクトラムデータを求め、周波数スペクトラムデータの取得結果を、測定履歴として記憶する機能を有する。
【0046】
解析/制御部18は、物標の位置測定を行う通常の運用時に、定期的にレーダ信号の周波数スペクトラムデータを求める。周波数スペクトラムデータは、例えば、送信積算時間100時間毎、というように測定時間間隔を設定し、送信積算時間をカウントしながら設定時間間隔毎に求めることが好適である。
【0047】
解析/制御部18は、求められた周波数スペクトラムデータと記憶部22に記憶されているスプリアス規格データとを比較し、送信スプリアスレベル規格を満たすか否かを判定する。そして、送信スプリアスレベル規格を満たさない場合には、規格を満たさない周波数を規格未達周波数として求める。また、規格未達周波数における規格値からのずれを規格未達値として求める。さらに、送信部温度計48から送信部14の温度を読み込む。
【0048】
解析/制御部18は、周波数スペクトラムデータ、送信部14の温度、測定年月日および測定時刻を対応付け、測定履歴として記憶部22に記憶させる。また、送信スプリアスレベル規格を満たさない場合には、さらに、規格未達周波数および規格未達値を測定履歴において対応付けて記憶部22に記憶させる。
【0049】
このような構成によれば、次のような効果を期待することができる。送信部14には、マグネトロン、トランジスタ等の能動素子が用いられる。このような能動素子は、使用環境条件の変化によって特性が変化する。そのため、使用環境条件の変化によって送信スプリアスレベルが変化することがある。また、このような能動素子は、使用時間の経過と共に特性が変化することがあり、使用時間の経過と共に送信スプリアスレベルが変化することがある。
【0050】
したがって、ある時間帯には送信スプリアスレベル規格を満たさない場合であっても、他の時間帯には送信スプリアスレベル規格を満たすこともある。そのため、従来の船舶レーダ装置では、送信スプリアスレベル規格を満たさない送信部14を修理するときに、送信スプリアスレベル規格を満たさない状態を再現することが困難となり、不具合解析に長時間を要し、修理に長い時間を要することがあった。
【0051】
本実施形態に係るスペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置では、周波数スペクトラムデータ、送信部14の温度、測定年月日、測定時刻、規格未達周波数、規格未達値等を対応付けて記憶することができる。したがって、記憶部22に記憶されている情報を取得することで、不具合が生じた条件を調査することができ、不具合解析に要する時間を短縮することができる。
【0052】
本発明に係るスペクトラムモニタ付きレーダ装置は、船舶レーダ装置の他、航空レーダ装置、気象レーダ装置等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るスペクトラムモニタ付き船舶レーダ装置の構成を示す図である。
【図2】スペクトラムモニタを固定する位置の例を示す図である。
【図3】レーダ表示部の画面表示の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 レーダアンテナ、12 アンテナ駆動部、14 送信部、16 受信部、18 解析/制御部、20 レーダ表示部、22 記憶部、24 操作部、26 スペクトラムモニタ、28 モニタアンテナ、30 無線周波数フィルタ、32 可変利得アンプ、34 可変アッテネータ、36 ミキサ、38 ローカル信号発生器、40 ローカル信号発生器温度計、42 同調フィルタ、44 LOGアンプ、46 同調検波器、48 送信部温度計、50 ロータリージョイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号を出力する送信部と、
前記レーダ信号を送信するレーダアンテナと、
信号を受信し受信信号に基づいて物標の存在位置を求める物標位置解析部と、
前記物標位置解析部によって求められた物標の位置を表示するレーダ表示部と、
前記レーダアンテナとの間で所定の位置関係を維持するよう配置され、前記レーダ信号を受信するモニタアンテナと、
前記モニタアンテナで受信された信号の周波数スペクトラムデータを求めるスペクトラム解析部と、
を備え、
前記レーダ表示部は、
前記スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータを表示することを特徴とするスペクトラムモニタ付きレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスペクトラムモニタ付きレーダ装置であって、
前記レーダ信号のスプリアス規格データを出力するスプリアス規格データ出力部を備え、
前記レーダ表示部は、
前記スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータと、前記スプリアス規格データと、を共に表示することを特徴とするスペクトラムモニタ付きレーダ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスペクトラムモニタ付きレーダ装置であって、
前記レーダ信号のスプリアス規格データと、前記スペクトラム解析部によって求められた周波数スペクトラムデータと、を比較し、スプリアス規格を満たすか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定時と、前記判定部による判定結果と、を対応付けた判定履歴を記憶する判定履歴記憶部と、
を備えることを特徴とするスペクトラムモニタ付きレーダ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスペクトラムモニタ付きレーダ装置であって、
前記レーダアンテナを回転させるアンテナ駆動部を備え、
前記モニタアンテナは、
前記アンテナ駆動部の筐体に取り付けられることを特徴とするスペクトラムモニタ付きレーダ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスペクトラムモニタ付きレーダ装置であって、
前記送信部は、
パルス変調が施されたレーダ信号を出力し、
前記スペクトラム解析部は、
ローカル信号を出力するローカル信号発生部と、
前記レーダ信号の送信タイミングに応じて前記ローカル信号の周波数を掃引するローカル周波数掃引部と、
前記モニタアンテナで受信された信号の周波数変換を、周波数が掃引された前記ローカル信号に基づいて行う周波数変換部と、
前記周波数変換部によって周波数変換された信号から、同調周波数信号を検波する検波部と、
前記ローカル信号の掃引周波数に基づいて求められる受信周波数および前記検波部によって検波された検波信号を、周波数スペクトラムデータとして出力する解析結果出力部と、
を備えることを特徴とするスペクトラムモニタ付きレーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate