スペーサー付ハニカムセグメント、及びハニカム構造体
【課題】ハニカムセグメント間の接合層の厚さを所望の厚さとし、ハニカムセグメントの接合時のずれを防止し、寸法不良が少ないハニカム構造体を形成することのできるスペーサー付ハニカムセグメント、及びそのスペーサー付ハニカムセグメントによって構成されたハニカム構造体を提供する。
【解決手段】ハニカムセグメント10は、その外周壁7の外周面7sの軸方向の一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の所定の領域内に、それぞれスペーサー11が備えられている。そして、スペーサー11は、外周面の一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されている。つまり、スペーサーが短辺7yに沿った方向に並んで配置されているため、短辺7yの長さaに対して、スペーサー11の短辺方向の長さb1+b2がaの30〜80%となるように形成されている。
【解決手段】ハニカムセグメント10は、その外周壁7の外周面7sの軸方向の一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の所定の領域内に、それぞれスペーサー11が備えられている。そして、スペーサー11は、外周面の一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されている。つまり、スペーサーが短辺7yに沿った方向に並んで配置されているため、短辺7yの長さaに対して、スペーサー11の短辺方向の長さb1+b2がaの30〜80%となるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサー付ハニカムセグメント、及びハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
環境改善、公害防止等のため、排ガス用の捕集フィルタとしてハニカム構造体が多用されている。現在、例えば、SiC製DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)は熱衝撃による割れを防止するために分割した16個の基材(ハニカムセグメント)を接合材(セラミックスセメント)で接合し一体化して作製している(例えば、特許文献1参照)が、接合層の厚さ(接合幅)がばらつくために、その特性にもばらつきが生じ、耐熱試験時に特性の低い箇所に割れが生じる問題があった。
【0003】
そのため、接合層の厚さを安定させる為に「スペーサー」を用いてハニカムセグメントを接合する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−7455号公報
【特許文献2】特開2002−102627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法では、セグメントの形状が曲がっている場合などは、依然として端面の接合幅がばらつき、ハニカム構造体としての開口率がばらついていた。また、ハニカムセグメントの接合時に、スペーサーが潰れやすい、ハニカムセグメントどうしの位置ずれが発生しやすいという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、ハニカムセグメント間の接合層の厚さを所望の厚さとし、ハニカムセグメントの接合時のずれを防止し、寸法不良が少ないハニカム構造体を形成することのできるスペーサー付ハニカムセグメント、及びそのスペーサー付ハニカムセグメントによって構成されたハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ハニカムセグメントの外周壁の外周面に、外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるような長さを有するスペーサーを形成することにより、接合材のはみだしを抑えることができ、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のスペーサー付ハニカムセグメント、及びハニカム構造体が提供される。
【0008】
[1] 多孔質の隔壁によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセルを有し、外周壁の一つの外周面の、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、かつ、前記軸方向の他方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、それぞれスペーサーが備えられ、前記スペーサーは、前記外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されているスペーサー付ハニカムセグメント。
【0009】
[2] 前記スペーサーは、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に前記長辺の20%以内の前記領域内に、他方の端面から前記長辺の20%以内の前記領域内に形成されている前記[1]に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【0010】
[3] 前記スペーサーは、一つの前記領域内において短辺方向に沿って設けられており、前記短辺方向において、その短辺方向に占める長さが、前記短辺の長さの30〜80%である前記[1]または[2]に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【0011】
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載のスペーサー付ハニカムセグメントを積層して形成したハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
ハニカムセグメントの外周壁の一つの外周面の一方の端面側と他方の端面側のそれぞれに、スペーサーを、外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成することにより、接合材のはみだしを抑えることができ、一定の接合幅でハニカムセグメントを積層することができる。そして、接合層の均一なハニカム構造体を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0014】
図1に、スペーサー11が形成されたハニカムセグメント10を示す。ハニカムセグメント10は、セラミックによって形成され、外周壁7と、外周壁7の内側に形成された隔壁2と、隔壁2により仕切られた複数のセル3とを有する。ハニカムセグメント10の外周壁7の外周面7sにスペーサー11を形成し、複数のハニカムセグメント10を接合することにより、図8に示すハニカム構造体1とされる。
【0015】
図1に示す本発明のスペーサー付ハニカムセグメント10は、多孔質の隔壁2によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセル3を有する。本発明のハニカムセグメント10を接合したハニカム構造体1をフィルタとして用いる場合には、一部のセル3がハニカムセグメント10の端面8において目封じされていることが好ましい。特に、隣接するセル3が互いに反対側となる端面8において交互に目封じされており、端面8が市松模様状に目封じされていることが好ましい。この様に目封じすることにより、例えば一の端面8から流入した被処理流体は隔壁2を通って、他の端面8から流出し、被処理流体が隔壁2を通る際に多孔質の隔壁2がフィルタの役目をはたし、目的物を除去することができる。
【0016】
ハニカムセグメント10には、その外周壁7の一つの外周面7sの軸方向の一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の所定の領域内に、それぞれのスペーサー11が備えられている。そして、スペーサー11は、外周面7sの一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されている。スペーサー11は、一つの領域内に1個または複数個設けられており、図1の実施形態は2個形成された例である。図1の実施形態では、スペーサー11が短辺7yに沿った方向に並んで配置されているため、短辺7yの長さaに対して、スペーサー11の短辺方向の長さb1+b2がaの30〜80%となるように形成されている。またスペーサー11が形成される位置は、一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の所定の領域内であるが、具体的には、軸方向の一方の端面から軸方向に長辺の20%以内の領域内に、他方の端面から長辺の20%以内の領域内に形成されている。つまり、図1のSが長辺7xの長さLの20%であり、それよりも端面側にスペーサー11が形成されている。端面近傍にスペーサー11を配置すると、セグメントの曲がり等、形状の影響を受けにくくなるため接合幅を安定して形成することができる。
【0017】
なお、スペーサー11は、外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されれば、形状は問わない。図1のスペーサー11は、円柱状に形成されている(図7参照)。図2に、四角柱状のスペーサーが一つの領域内に3つ形成された例を示す。図2の場合は、3つのスペーサー11の短辺方向の長さb1+b2+b3が短辺の長さaの30〜80%であればよい。
【0018】
スペーサー11は、支えとして機能するとともに、生産が容易という点から、1〜3個程度形成されるのが好ましいが、1個の場合は、支えとして弱く平行が出しにくいため2個以上が好ましく、生産性の観点からは、2個以下が好ましいため、2個形成するのが最も好ましい。
【0019】
また、スペーサー11が短辺7yに沿った方向に並んで形成されていない場合の経路長の考え方を説明する。図9に示すように、経路長は、外周面7sの一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、スペーサー11の中心を経由し、長さが最短となる経路の長さとする。すなわち、スペーサー11の中心m2,m3,m4を経由し、m2から長辺7xへの垂線を引いてm1、m4から長辺7xへ垂線を引いてm5とし、m1〜m5を結んだ経路の長さを経路長と考える。そして、その経路上のスペーサー11の占める長さ(図の太線部分b1+b2+b3)が、経路長の30〜80%となるようにスペーサー11を形成する。また、図10に示すように、スペーサー11が長辺方向に沿って並んだ場合も、経路長は、外周面の一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、スペーサー11の中心を経由し、長さが最短となるよう考えればよい。このような経路長に対するスペーサー11の長さ(スペーサー比率)を考えるのは、このスペーサー比率が、接合材の流動性に影響するからである。すなわち、経路長に対するスペーサー11の割合が小さければ、接合材の流動する隙間が大きいことを意味し、経路長に対するスペーサー11の割合が大きければ、接合材の流動する隙間が小さいことを意味する。
【0020】
また、図11に示すように、長辺方向に並んでスペーサー11b,11dが形成された場合は、流動抵抗に対して支配的なスペーサー11を通過する経路を考えればよい。すなわち、スペーサー11の大きさが異なる場合には、一番面積が大きいスペーサー11のみを通る経路を考えればよい。図11においては、長辺方向に並んで配置されているスペーサー11bとスペーサー11dでは、スペーサー11dは、小さく流動抵抗に寄与しないため、スペーサー11a、スペーサー11b、スペーサー11cを通過する経路を考え、その経路上のスペーサー11a,11b,11cの占める長さ(図の太線部分b1+b2+b3)が、経路長の30〜80%となるようにスペーサー11を形成する。
【0021】
さらに、図12に示すように、長辺方向に並んで、同じ大きさのスペーサー11b,11d,11eが形成された場合は、経路が最も短くなる部分が律速となるため、その部分のみで考えればよい。つまり、図12においては、経路が最も短くなるスペーサー11a、スペーサー11b、スペーサー11cを通過する経路を考え、その経路上のスペーサー11a,11b,11cの占める長さ(図の太線部分b1+b2+b3)が、経路長の30〜80%となるようにスペーサー11を形成する。
【0022】
図3及び図4に、図1のハニカムセグメント10の軸方向に垂直な平面で切断した断面図を示す(セル3は省略して描かれている)。図1に示す実施形態のハニカムセグメント10には、外周壁7の1つの外周面7sにおいて、軸方向の両端側にそれぞれ2つのスペーサー11が形成されており、図3に示すように4つのスペーサー11が4つの外周面7s、または、図4に示すように、隣接する2つの外周面7sのそれぞれに形成されている(なお、スペーサー11の数は、本実施形態に限られない)。
【0023】
本発明において、ハニカムセグメント10は、セラミック材料によって形成することができるが、強度、耐熱性等の観点から、コーディエライト、SiC、アルミナ、ムライト、窒化珪素、燐酸ジルコニウム、アルミニウムチタネート、ジルコニア、チタニア及びこれらの組み合わせによりなる群から選ばれるセラミックスであることが好ましい。或いは、Fe−Cr−Al系金属、ニッケル系金属、金属珪素(Si)、炭化珪素(SiC)のいずれかを含んで形成することもできる。
【0024】
本発明のハニカムセグメント接合体1aをDPFに用いる場合には、耐熱性を高くするという点から、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合相を用いることが好ましく、また、熱膨張係数を低く、良好な耐熱衝撃性を示すようにする点からはコージェライトを用いることが好ましい。また、本発明において、ハニカムセグメント接合体1aが金属珪素(Si)と炭化珪素(SiC)とからなる場合、ハニカムセグメント接合体1aのSi/(Si+SiC)で規定されるSi含有量が少なすぎるとSi添加の効果が得られないため強度が弱く、50質量%を超えるとSiCの特徴である耐熱性、高熱伝導性の効果が得られない。Si含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましい。
【0025】
上記原料にメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース等のバインダー、有機造孔材、界面活性剤及び水等を添加して、可塑性の坏土を作製し、坏土を、例えば押出成形し、隔壁2により仕切られた軸方向に貫通する多数のセル3を有する四角柱形状のハニカム成形体を成形する。これを、例えばマイクロ波及び熱風などで乾燥した後、仮焼してバインダーや有機造孔材を除去し、その後焼成することにより、ハニカムセグメント10を製造することができる。
【0026】
また、セル3が端面8において目封じされている場合の目封じ部は、上述の隔壁2の主結晶相に好適なものとして挙げたものの中から選ばれる少なくとも1種の結晶相を主結晶相として含むことが好ましく、ハニカムセグメント10の主結晶相と同様の種類の結晶相を主結晶相として含むことが更に好ましい。
【0027】
次に、スペーサー付ハニカムセグメント10の製造方法、及びそれを接合した形成されたハニカム構造体1の製造方法を説明する。
【0028】
まず、スペーサー11が形成される前のハニカムセグメントを以下のように製造する。ハニカムセグメントの原料粉末として、前述の好適な材料、例えば炭化珪素粉末を使用し、これにバインダー、例えばメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを添加し、さらに界面活性剤及び水を添加し、可塑性の坏土を作製する。この坏土を押出成形により、例えば図1に示されるようなハニカムセグメント(スペーサー11のない状態)を成形する。すなわち、多孔質の隔壁2によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセル3を有するハニカムセグメント10を形成する。
【0029】
これら複数のハニカムセグメント10を、例えばマイクロ波及び熱風で乾燥後、その端面8に、接合材によるセル3の目詰まりを防止するための目詰まり防止用テープ(マスクテープ)を貼付し、外周面7sに、例えば坏土と同じ組成のスペーサー形成材を塗布し、図1〜4のようにスペーサー11を形成する。具体的には、ハニカムセグメント10の外周壁7の外周面7sの軸方向の一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の前述の領域内に、スペーサー11とされる非固化状態のスペーサー形成材を付着させ、スペーサー形成材を固化させ、経路長の30〜80%の長さを有するスペーサー11を形成する。
【0030】
このようにスペーサー11を形成することにより、ハニカムセグメント10の接合層5の厚さを一定にして、ハニカムセグメント10を接合しハニカム構造体を製造することができる。
【0031】
図5は、本発明の一実施形態としてのハニカムセグメント接合体1aの接合方法を示す。このハニカムセグメント接合体1aは、隔壁2により仕切られ軸方向に貫通する多数のセル3を有するセラミック多孔質体のハニカムセグメント10が、接合層5を介して複数個結束されて構成される。
【0032】
具体的には、図5に示すように、縦受板20と横受板21とにより、L字状断面に形成された収容エリアA内にハニカムセグメント10の各々が、各々の外周壁7を接合面として、その接合面間に接合層5を介在させて積層される。この積層は、2面を縦受板20および横受板21に沿わせて行われる。
【0033】
接合層5の接合材は、無機粒子、無機接着剤を主成分とし、副成分として、有機バインダー、界面活性剤、発泡樹脂、水等を含んで構成される。無機粒子としては、板状粒子、球状粒子、塊状粒子、繊維状粒子、針状粒子等を利用でき、無機接着剤としては、コロイダルシリカ(SiO2ゾル)、コロイダルアルミナ(アルミナゾル)、各種酸化物ゾル、エチルシリケート、水ガラス、シリカポリマー、りん酸アルミニウム等を利用できる。主成分としてはハニカムセグメント10の構成成分と共通のセラミックス粉を含むものが好ましく、また健康問題等からは、セラミックスファイバー等の繊維状粒子を含まないものが好ましく、板状粒子を含有する方が好ましい。板状粒子としては、例えば、マイカ、タルク、窒化ホウ素及びガラスフレーク等を利用することができる。この接合材をハニカムセグメント10の接合面に付着させることにより接合層5を形成することができる。この接合層5の形成は、積層前のハニカムセグメント10に対して行ってもよく、あるいは既に積層されているハニカムセグメント10の露出している接合面に対して行ってもよい。また積層は、ハニカムセグメント10を1個ずつ積み重ねることにより行われる。
【0034】
そして、図5に示すように、ハニカムセグメント10を所定の個数(本実施形態では、16個)積層後、最外層に位置するハニカムセグメント10を介して全体を同時に矢印F1およびF2方向に本加圧する。このときの本加圧は、積層体の2面が縦受板20および横受板21で覆われているので、他の2面の全体を同時に矢印F1およびF2方向に本加圧する。このときの加圧動力は、エアシリンダ、あるいは油圧シリンダ等が用いられる。このようにハニカムセグメント10を積層した場合でも、スペーサー11が形成されているため、接合層が加圧によって潰れない。
【0035】
また、従来は、図6に示すように、スペーサー11が小さく、加圧時に接合材がはみ出すことにより、接合幅が不均一になっていたが、前述のように、スペーサー塗布量を増やし経路長の30〜80%の長さを有するスペーサー11を形成することにより、図7に示すように、接合材のはみ出しを極力抑えることで接合幅を安定化することができる。つまり、一定量以上のスペーサーが存在することによって、端面方向への接合材の移動が遮蔽される効果により、接合幅を均一化することができる。一方、経路長の80%を超える長さを有するスペーサー11を形成すると、接合材の流動性が悪くなりすぎ、接合層が厚くなってしまう。
【0036】
以上のようにして、ハニカムセグメント10は、接合層5を介して複数個結束され、ハニカムセグメント接合体1aとされる。そしてハニカムセグメント接合体1aの外周の一部を除去して、コーティング材を塗布することにより、図8に示すように、ハニカム構造体1が製造される。なお、ハニカム構造体1を乾燥する際には、端面8の乾燥が遅くならないように、ハニカムセグメント10の接合時に端面8に貼付したマスクテープは、剥離する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
ハニカムセグメントを6列×6列積層し、平均細孔径25μm、気孔率58%のSiC−DPF(容量2.5L、隔壁の厚さ12mil、セル密度300cpsi)を製造した。なお、積層のために形成したスペーサーは、SiCを主材料(40質量%)とし、それに60質量%のセラミックファイバーを加え、さらに、外配で12質量%の造孔材、界面活性剤、水を加えたもので構成されるセラミックス製接着剤(スペーサー形成材)を使用した。スペーサー形成材は、180℃にて、45秒間加熱して固化させ、厚さ(接合幅)の設計値が1.0mmのスペーサーを外周壁のすべての外周面(4面)に形成した。
【0039】
一側面(一つの外周面)につき4個(片端面2個ずつ)のスペーサーを円形状に配置し(図1参照)、セグメント片面、および両面に配置した場合について実験を行った。なお、片面に配置する場合のスペーサー厚みは1.0mm、両面に配置する場合は片面0.5mm(両面あわせて1.0mm)とした。また、スペーサーは、端面からの距離を変えて作製した。表1に、各種スペーサー配置方法で接合実験を実施し、接合幅を測定した結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
スペーサー比率が経路長の30%以上では、片面・両面に関わらず所望の接合幅1.0mmが安定して得られることがわかった。20%以下(比較例1,2,4,5)では接合幅が1.0mmを下回っており、実際に端面からの接合材のはみ出し量が増加した。一方で、スペーサー比率を90%(比較例3,6)にすると、2つのスペーサーが重なってしまうため接合幅が10%以上厚くなる傾向が見られた。したがって、スペーサー比率として適正な範囲は30〜80%であると考えられる。また、端面から外周面の長辺の20%以内にスペーサーを形成した実施例では、接合幅を所望の接合幅に形成することができたのに対し、比較例7では、接合幅が大幅に減少してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
内燃機関、ボイラー、化学反応機器及び燃料電池改質器等の担体又は排ガス中の微粒子捕集フィルタ等に用いられ、複数のハニカムセグメントにより構成されるハニカム構造体の製造方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のスペーサー付ハニカムセグメントの一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のスペーサー付ハニカムセグメントの他の実施形態を示す模式図である。
【図3】ハニカムセグメントの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。
【図4】ハニカムセグメントの軸方向に垂直な断面を示す他の実施形態の断面図である。
【図5】スペーサー付ハニカムセグメントの積層を示す模式図である。
【図6】従来の接合材のはみ出しを説明する模式図である。
【図7】本発明の接合材のはみ出しを説明する模式図である。
【図8】本発明のスペーサー付ハニカムセグメントを積層して形成したハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図9】経路の考え方を説明するための説明図である。
【図10】経路の考え方を説明するための他の説明図である。
【図11】長辺方向にスペーサーが並んで設けられた場合の経路の考え方を説明するための説明図である。
【図12】長辺方向にスペーサーが並んで設けられた場合の経路の考え方を説明するための他の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1:ハニカム構造体、1a:ハニカムセグメント接合体、2:隔壁、3:セル、5:接合層、7:外周壁、7s:外周面、7x:(外周面の)長辺、7y:(外周面の)短辺、8:端面、10:ハニカムセグメント、11:スペーサー、20:縦受板、21:横受板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサー付ハニカムセグメント、及びハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
環境改善、公害防止等のため、排ガス用の捕集フィルタとしてハニカム構造体が多用されている。現在、例えば、SiC製DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)は熱衝撃による割れを防止するために分割した16個の基材(ハニカムセグメント)を接合材(セラミックスセメント)で接合し一体化して作製している(例えば、特許文献1参照)が、接合層の厚さ(接合幅)がばらつくために、その特性にもばらつきが生じ、耐熱試験時に特性の低い箇所に割れが生じる問題があった。
【0003】
そのため、接合層の厚さを安定させる為に「スペーサー」を用いてハニカムセグメントを接合する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−7455号公報
【特許文献2】特開2002−102627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法では、セグメントの形状が曲がっている場合などは、依然として端面の接合幅がばらつき、ハニカム構造体としての開口率がばらついていた。また、ハニカムセグメントの接合時に、スペーサーが潰れやすい、ハニカムセグメントどうしの位置ずれが発生しやすいという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、ハニカムセグメント間の接合層の厚さを所望の厚さとし、ハニカムセグメントの接合時のずれを防止し、寸法不良が少ないハニカム構造体を形成することのできるスペーサー付ハニカムセグメント、及びそのスペーサー付ハニカムセグメントによって構成されたハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ハニカムセグメントの外周壁の外周面に、外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるような長さを有するスペーサーを形成することにより、接合材のはみだしを抑えることができ、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のスペーサー付ハニカムセグメント、及びハニカム構造体が提供される。
【0008】
[1] 多孔質の隔壁によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセルを有し、外周壁の一つの外周面の、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、かつ、前記軸方向の他方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、それぞれスペーサーが備えられ、前記スペーサーは、前記外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されているスペーサー付ハニカムセグメント。
【0009】
[2] 前記スペーサーは、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に前記長辺の20%以内の前記領域内に、他方の端面から前記長辺の20%以内の前記領域内に形成されている前記[1]に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【0010】
[3] 前記スペーサーは、一つの前記領域内において短辺方向に沿って設けられており、前記短辺方向において、その短辺方向に占める長さが、前記短辺の長さの30〜80%である前記[1]または[2]に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【0011】
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載のスペーサー付ハニカムセグメントを積層して形成したハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
ハニカムセグメントの外周壁の一つの外周面の一方の端面側と他方の端面側のそれぞれに、スペーサーを、外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成することにより、接合材のはみだしを抑えることができ、一定の接合幅でハニカムセグメントを積層することができる。そして、接合層の均一なハニカム構造体を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0014】
図1に、スペーサー11が形成されたハニカムセグメント10を示す。ハニカムセグメント10は、セラミックによって形成され、外周壁7と、外周壁7の内側に形成された隔壁2と、隔壁2により仕切られた複数のセル3とを有する。ハニカムセグメント10の外周壁7の外周面7sにスペーサー11を形成し、複数のハニカムセグメント10を接合することにより、図8に示すハニカム構造体1とされる。
【0015】
図1に示す本発明のスペーサー付ハニカムセグメント10は、多孔質の隔壁2によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセル3を有する。本発明のハニカムセグメント10を接合したハニカム構造体1をフィルタとして用いる場合には、一部のセル3がハニカムセグメント10の端面8において目封じされていることが好ましい。特に、隣接するセル3が互いに反対側となる端面8において交互に目封じされており、端面8が市松模様状に目封じされていることが好ましい。この様に目封じすることにより、例えば一の端面8から流入した被処理流体は隔壁2を通って、他の端面8から流出し、被処理流体が隔壁2を通る際に多孔質の隔壁2がフィルタの役目をはたし、目的物を除去することができる。
【0016】
ハニカムセグメント10には、その外周壁7の一つの外周面7sの軸方向の一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の所定の領域内に、それぞれのスペーサー11が備えられている。そして、スペーサー11は、外周面7sの一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されている。スペーサー11は、一つの領域内に1個または複数個設けられており、図1の実施形態は2個形成された例である。図1の実施形態では、スペーサー11が短辺7yに沿った方向に並んで配置されているため、短辺7yの長さaに対して、スペーサー11の短辺方向の長さb1+b2がaの30〜80%となるように形成されている。またスペーサー11が形成される位置は、一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の所定の領域内であるが、具体的には、軸方向の一方の端面から軸方向に長辺の20%以内の領域内に、他方の端面から長辺の20%以内の領域内に形成されている。つまり、図1のSが長辺7xの長さLの20%であり、それよりも端面側にスペーサー11が形成されている。端面近傍にスペーサー11を配置すると、セグメントの曲がり等、形状の影響を受けにくくなるため接合幅を安定して形成することができる。
【0017】
なお、スペーサー11は、外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されれば、形状は問わない。図1のスペーサー11は、円柱状に形成されている(図7参照)。図2に、四角柱状のスペーサーが一つの領域内に3つ形成された例を示す。図2の場合は、3つのスペーサー11の短辺方向の長さb1+b2+b3が短辺の長さaの30〜80%であればよい。
【0018】
スペーサー11は、支えとして機能するとともに、生産が容易という点から、1〜3個程度形成されるのが好ましいが、1個の場合は、支えとして弱く平行が出しにくいため2個以上が好ましく、生産性の観点からは、2個以下が好ましいため、2個形成するのが最も好ましい。
【0019】
また、スペーサー11が短辺7yに沿った方向に並んで形成されていない場合の経路長の考え方を説明する。図9に示すように、経路長は、外周面7sの一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、スペーサー11の中心を経由し、長さが最短となる経路の長さとする。すなわち、スペーサー11の中心m2,m3,m4を経由し、m2から長辺7xへの垂線を引いてm1、m4から長辺7xへ垂線を引いてm5とし、m1〜m5を結んだ経路の長さを経路長と考える。そして、その経路上のスペーサー11の占める長さ(図の太線部分b1+b2+b3)が、経路長の30〜80%となるようにスペーサー11を形成する。また、図10に示すように、スペーサー11が長辺方向に沿って並んだ場合も、経路長は、外周面の一方の長辺7xから他方の長辺7xへ、スペーサー11の中心を経由し、長さが最短となるよう考えればよい。このような経路長に対するスペーサー11の長さ(スペーサー比率)を考えるのは、このスペーサー比率が、接合材の流動性に影響するからである。すなわち、経路長に対するスペーサー11の割合が小さければ、接合材の流動する隙間が大きいことを意味し、経路長に対するスペーサー11の割合が大きければ、接合材の流動する隙間が小さいことを意味する。
【0020】
また、図11に示すように、長辺方向に並んでスペーサー11b,11dが形成された場合は、流動抵抗に対して支配的なスペーサー11を通過する経路を考えればよい。すなわち、スペーサー11の大きさが異なる場合には、一番面積が大きいスペーサー11のみを通る経路を考えればよい。図11においては、長辺方向に並んで配置されているスペーサー11bとスペーサー11dでは、スペーサー11dは、小さく流動抵抗に寄与しないため、スペーサー11a、スペーサー11b、スペーサー11cを通過する経路を考え、その経路上のスペーサー11a,11b,11cの占める長さ(図の太線部分b1+b2+b3)が、経路長の30〜80%となるようにスペーサー11を形成する。
【0021】
さらに、図12に示すように、長辺方向に並んで、同じ大きさのスペーサー11b,11d,11eが形成された場合は、経路が最も短くなる部分が律速となるため、その部分のみで考えればよい。つまり、図12においては、経路が最も短くなるスペーサー11a、スペーサー11b、スペーサー11cを通過する経路を考え、その経路上のスペーサー11a,11b,11cの占める長さ(図の太線部分b1+b2+b3)が、経路長の30〜80%となるようにスペーサー11を形成する。
【0022】
図3及び図4に、図1のハニカムセグメント10の軸方向に垂直な平面で切断した断面図を示す(セル3は省略して描かれている)。図1に示す実施形態のハニカムセグメント10には、外周壁7の1つの外周面7sにおいて、軸方向の両端側にそれぞれ2つのスペーサー11が形成されており、図3に示すように4つのスペーサー11が4つの外周面7s、または、図4に示すように、隣接する2つの外周面7sのそれぞれに形成されている(なお、スペーサー11の数は、本実施形態に限られない)。
【0023】
本発明において、ハニカムセグメント10は、セラミック材料によって形成することができるが、強度、耐熱性等の観点から、コーディエライト、SiC、アルミナ、ムライト、窒化珪素、燐酸ジルコニウム、アルミニウムチタネート、ジルコニア、チタニア及びこれらの組み合わせによりなる群から選ばれるセラミックスであることが好ましい。或いは、Fe−Cr−Al系金属、ニッケル系金属、金属珪素(Si)、炭化珪素(SiC)のいずれかを含んで形成することもできる。
【0024】
本発明のハニカムセグメント接合体1aをDPFに用いる場合には、耐熱性を高くするという点から、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合相を用いることが好ましく、また、熱膨張係数を低く、良好な耐熱衝撃性を示すようにする点からはコージェライトを用いることが好ましい。また、本発明において、ハニカムセグメント接合体1aが金属珪素(Si)と炭化珪素(SiC)とからなる場合、ハニカムセグメント接合体1aのSi/(Si+SiC)で規定されるSi含有量が少なすぎるとSi添加の効果が得られないため強度が弱く、50質量%を超えるとSiCの特徴である耐熱性、高熱伝導性の効果が得られない。Si含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましい。
【0025】
上記原料にメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース等のバインダー、有機造孔材、界面活性剤及び水等を添加して、可塑性の坏土を作製し、坏土を、例えば押出成形し、隔壁2により仕切られた軸方向に貫通する多数のセル3を有する四角柱形状のハニカム成形体を成形する。これを、例えばマイクロ波及び熱風などで乾燥した後、仮焼してバインダーや有機造孔材を除去し、その後焼成することにより、ハニカムセグメント10を製造することができる。
【0026】
また、セル3が端面8において目封じされている場合の目封じ部は、上述の隔壁2の主結晶相に好適なものとして挙げたものの中から選ばれる少なくとも1種の結晶相を主結晶相として含むことが好ましく、ハニカムセグメント10の主結晶相と同様の種類の結晶相を主結晶相として含むことが更に好ましい。
【0027】
次に、スペーサー付ハニカムセグメント10の製造方法、及びそれを接合した形成されたハニカム構造体1の製造方法を説明する。
【0028】
まず、スペーサー11が形成される前のハニカムセグメントを以下のように製造する。ハニカムセグメントの原料粉末として、前述の好適な材料、例えば炭化珪素粉末を使用し、これにバインダー、例えばメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを添加し、さらに界面活性剤及び水を添加し、可塑性の坏土を作製する。この坏土を押出成形により、例えば図1に示されるようなハニカムセグメント(スペーサー11のない状態)を成形する。すなわち、多孔質の隔壁2によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセル3を有するハニカムセグメント10を形成する。
【0029】
これら複数のハニカムセグメント10を、例えばマイクロ波及び熱風で乾燥後、その端面8に、接合材によるセル3の目詰まりを防止するための目詰まり防止用テープ(マスクテープ)を貼付し、外周面7sに、例えば坏土と同じ組成のスペーサー形成材を塗布し、図1〜4のようにスペーサー11を形成する。具体的には、ハニカムセグメント10の外周壁7の外周面7sの軸方向の一端側と他端側の両端面位置より軸方向内側の前述の領域内に、スペーサー11とされる非固化状態のスペーサー形成材を付着させ、スペーサー形成材を固化させ、経路長の30〜80%の長さを有するスペーサー11を形成する。
【0030】
このようにスペーサー11を形成することにより、ハニカムセグメント10の接合層5の厚さを一定にして、ハニカムセグメント10を接合しハニカム構造体を製造することができる。
【0031】
図5は、本発明の一実施形態としてのハニカムセグメント接合体1aの接合方法を示す。このハニカムセグメント接合体1aは、隔壁2により仕切られ軸方向に貫通する多数のセル3を有するセラミック多孔質体のハニカムセグメント10が、接合層5を介して複数個結束されて構成される。
【0032】
具体的には、図5に示すように、縦受板20と横受板21とにより、L字状断面に形成された収容エリアA内にハニカムセグメント10の各々が、各々の外周壁7を接合面として、その接合面間に接合層5を介在させて積層される。この積層は、2面を縦受板20および横受板21に沿わせて行われる。
【0033】
接合層5の接合材は、無機粒子、無機接着剤を主成分とし、副成分として、有機バインダー、界面活性剤、発泡樹脂、水等を含んで構成される。無機粒子としては、板状粒子、球状粒子、塊状粒子、繊維状粒子、針状粒子等を利用でき、無機接着剤としては、コロイダルシリカ(SiO2ゾル)、コロイダルアルミナ(アルミナゾル)、各種酸化物ゾル、エチルシリケート、水ガラス、シリカポリマー、りん酸アルミニウム等を利用できる。主成分としてはハニカムセグメント10の構成成分と共通のセラミックス粉を含むものが好ましく、また健康問題等からは、セラミックスファイバー等の繊維状粒子を含まないものが好ましく、板状粒子を含有する方が好ましい。板状粒子としては、例えば、マイカ、タルク、窒化ホウ素及びガラスフレーク等を利用することができる。この接合材をハニカムセグメント10の接合面に付着させることにより接合層5を形成することができる。この接合層5の形成は、積層前のハニカムセグメント10に対して行ってもよく、あるいは既に積層されているハニカムセグメント10の露出している接合面に対して行ってもよい。また積層は、ハニカムセグメント10を1個ずつ積み重ねることにより行われる。
【0034】
そして、図5に示すように、ハニカムセグメント10を所定の個数(本実施形態では、16個)積層後、最外層に位置するハニカムセグメント10を介して全体を同時に矢印F1およびF2方向に本加圧する。このときの本加圧は、積層体の2面が縦受板20および横受板21で覆われているので、他の2面の全体を同時に矢印F1およびF2方向に本加圧する。このときの加圧動力は、エアシリンダ、あるいは油圧シリンダ等が用いられる。このようにハニカムセグメント10を積層した場合でも、スペーサー11が形成されているため、接合層が加圧によって潰れない。
【0035】
また、従来は、図6に示すように、スペーサー11が小さく、加圧時に接合材がはみ出すことにより、接合幅が不均一になっていたが、前述のように、スペーサー塗布量を増やし経路長の30〜80%の長さを有するスペーサー11を形成することにより、図7に示すように、接合材のはみ出しを極力抑えることで接合幅を安定化することができる。つまり、一定量以上のスペーサーが存在することによって、端面方向への接合材の移動が遮蔽される効果により、接合幅を均一化することができる。一方、経路長の80%を超える長さを有するスペーサー11を形成すると、接合材の流動性が悪くなりすぎ、接合層が厚くなってしまう。
【0036】
以上のようにして、ハニカムセグメント10は、接合層5を介して複数個結束され、ハニカムセグメント接合体1aとされる。そしてハニカムセグメント接合体1aの外周の一部を除去して、コーティング材を塗布することにより、図8に示すように、ハニカム構造体1が製造される。なお、ハニカム構造体1を乾燥する際には、端面8の乾燥が遅くならないように、ハニカムセグメント10の接合時に端面8に貼付したマスクテープは、剥離する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
ハニカムセグメントを6列×6列積層し、平均細孔径25μm、気孔率58%のSiC−DPF(容量2.5L、隔壁の厚さ12mil、セル密度300cpsi)を製造した。なお、積層のために形成したスペーサーは、SiCを主材料(40質量%)とし、それに60質量%のセラミックファイバーを加え、さらに、外配で12質量%の造孔材、界面活性剤、水を加えたもので構成されるセラミックス製接着剤(スペーサー形成材)を使用した。スペーサー形成材は、180℃にて、45秒間加熱して固化させ、厚さ(接合幅)の設計値が1.0mmのスペーサーを外周壁のすべての外周面(4面)に形成した。
【0039】
一側面(一つの外周面)につき4個(片端面2個ずつ)のスペーサーを円形状に配置し(図1参照)、セグメント片面、および両面に配置した場合について実験を行った。なお、片面に配置する場合のスペーサー厚みは1.0mm、両面に配置する場合は片面0.5mm(両面あわせて1.0mm)とした。また、スペーサーは、端面からの距離を変えて作製した。表1に、各種スペーサー配置方法で接合実験を実施し、接合幅を測定した結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
スペーサー比率が経路長の30%以上では、片面・両面に関わらず所望の接合幅1.0mmが安定して得られることがわかった。20%以下(比較例1,2,4,5)では接合幅が1.0mmを下回っており、実際に端面からの接合材のはみ出し量が増加した。一方で、スペーサー比率を90%(比較例3,6)にすると、2つのスペーサーが重なってしまうため接合幅が10%以上厚くなる傾向が見られた。したがって、スペーサー比率として適正な範囲は30〜80%であると考えられる。また、端面から外周面の長辺の20%以内にスペーサーを形成した実施例では、接合幅を所望の接合幅に形成することができたのに対し、比較例7では、接合幅が大幅に減少してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
内燃機関、ボイラー、化学反応機器及び燃料電池改質器等の担体又は排ガス中の微粒子捕集フィルタ等に用いられ、複数のハニカムセグメントにより構成されるハニカム構造体の製造方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のスペーサー付ハニカムセグメントの一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のスペーサー付ハニカムセグメントの他の実施形態を示す模式図である。
【図3】ハニカムセグメントの軸方向に垂直な断面を示す断面図である。
【図4】ハニカムセグメントの軸方向に垂直な断面を示す他の実施形態の断面図である。
【図5】スペーサー付ハニカムセグメントの積層を示す模式図である。
【図6】従来の接合材のはみ出しを説明する模式図である。
【図7】本発明の接合材のはみ出しを説明する模式図である。
【図8】本発明のスペーサー付ハニカムセグメントを積層して形成したハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【図9】経路の考え方を説明するための説明図である。
【図10】経路の考え方を説明するための他の説明図である。
【図11】長辺方向にスペーサーが並んで設けられた場合の経路の考え方を説明するための説明図である。
【図12】長辺方向にスペーサーが並んで設けられた場合の経路の考え方を説明するための他の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1:ハニカム構造体、1a:ハニカムセグメント接合体、2:隔壁、3:セル、5:接合層、7:外周壁、7s:外周面、7x:(外周面の)長辺、7y:(外周面の)短辺、8:端面、10:ハニカムセグメント、11:スペーサー、20:縦受板、21:横受板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセルを有し、
外周壁の一つの外周面の、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、かつ、前記軸方向の他方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、それぞれスペーサーが備えられ、
前記スペーサーは、前記外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されているスペーサー付ハニカムセグメント。
【請求項2】
前記スペーサーは、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に前記長辺の20%以内の前記領域内に、他方の端面から前記長辺の20%以内の前記領域内に形成されている請求項1に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【請求項3】
前記スペーサーは、一つの前記領域内において短辺方向に沿って設けられており、前記短辺方向において、その短辺方向に占める長さが、前記短辺の長さの30〜80%である請求項1または2に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスペーサー付ハニカムセグメントを積層して形成したハニカム構造体。
【請求項1】
多孔質の隔壁によって区画された軸方向に延びる流体の流路となる複数のセルを有し、
外周壁の一つの外周面の、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、かつ、前記軸方向の他方の端面から前記軸方向に所定の領域内に、それぞれスペーサーが備えられ、
前記スペーサーは、前記外周面の一方の長辺から他方の長辺へ、その中心を経由する経路長の30〜80%を占めるように形成されているスペーサー付ハニカムセグメント。
【請求項2】
前記スペーサーは、前記軸方向の一方の端面から前記軸方向に前記長辺の20%以内の前記領域内に、他方の端面から前記長辺の20%以内の前記領域内に形成されている請求項1に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【請求項3】
前記スペーサーは、一つの前記領域内において短辺方向に沿って設けられており、前記短辺方向において、その短辺方向に占める長さが、前記短辺の長さの30〜80%である請求項1または2に記載のスペーサー付ハニカムセグメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスペーサー付ハニカムセグメントを積層して形成したハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−167058(P2009−167058A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7939(P2008−7939)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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