説明

スペースアップシート

【課題】リクライニング機構6を解除することによりシートバックをシートクッション上に重なるように前倒しさせ、前倒しされたシートの車両フロアに対するロックを解除して車両側壁に沿うように格納するスペースアップシートであって、シートとフロアとのロックを解除するための解除リンク2を操作レバー1とは独立して動作させることにより、操作レバー1の操作角度を大きくしても解除リンク2を関連動作可能として操作レバー1の操作力を抑制可能とする。
【解決手段】リクライニング機構6の解除と車両フロアに対するロック解除とを行うための操作レバー1の操作を受けて作動され、車両フロアに対するロックを解除させる解除リンク2を、シートバックが前倒しされていないときは操作レバー1の操作に伴うフロアロック解除部12の動作範囲外に置き、シートバックが前倒しされたときは前記動作範囲内に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックをシートクッション上に重なるように折り畳んだシートを車両側壁に沿うように格納するスペースアップシートに関する。
【背景技術】
【0002】
係るスペースアップシートが下記特許文献1に開示されている。係るスペースアップシートは、シートを格納させるための操作レバーが操作され、且つシートバックが畳まれたとき、シートと車両フロアとのロックを解除してシートを格納するように構成されている。
【0003】
図6〜9は操作レバーが操作され、シートバックが畳まれたことを受けて動作する検知リンクと、シート及びフロア間のロックを解除する解除リンクとを示している。
図6のように、操作レバーAが操作される前に、シートバックが畳まれると、シートバックが畳まれる前は実線の位置にあった検知リンクCが二点鎖線のように移動し、それに伴って操作レバーAと解除リンクBのスリットA1、B1内に嵌められた検知リンクCのピンC1が上方に移動する。その結果、ピンC1を介して操作レバーAと解除リンクBとが係合され、操作レバーAの操作に応じて解除リンクBが移動可能な状態となり、操作レバーAが操作されると解除リンクBに連結されているケーブル(不図示)を介してロック(不図示)が解除される。このとき、検知リンクCの移動に伴いピンC1が引張られる方向(斜線付き矢印方向)と操作レバーA及び解除リンクBの各スリットA1、B1の形成方向との成す角度は比較的小さいため、ピンC1は各スリットA1、B1内を白抜き矢印の方向に移動することができ、操作レバーAと解除リンクBとを同期して動く状態とすることができる。
【0004】
図7は操作レバーAが操作された後にシートバックが前倒しされて検知リンクCが上方に移動する場合を示している。検知リンクCが二点鎖線で示すように上方へ移動すると、それに伴ってピンC1も操作レバーA及び解除リンクBのスリットA1、B1内を上方へ移動する。この場合も、図6の場合と同様に、検知リンクCの移動に伴いピンC1が引張られる方向(斜線付き矢印方向)と操作レバーA及び解除リンクBの各スリットA1、B1の形成方向との成す角度は比較的小さいため、ピンC1は各スリットA1、B1内を白抜き矢印の方向に移動して、解除リンクBのスリットB1と操作レバーAのスリットA1が重なるように解除リンクBを回動して、ケーブル(不図示)を介してロック(不図示)を解除させる。この場合の操作レバーAの操作角度は、例えば54度程度に設定されている。
【0005】
これに対し、操作レバーAの操作力を小さくすることを目的として、操作レバーAの操作角度を大きくした場合を図8、9に示している。この場合の操作角度は例えば、100度程度とされている。
図8は、上述の図6と同様に操作レバーAが操作される前にシートバックが前倒しされた場合を示し、係るシートバックの前倒しに伴って、検知リンクCは実線で示す状態から二点鎖線で示す状態へ変化しようとする。しかし、この場合は検知リンクCと共に移動されるピンC1の引張られる方向(斜線付き矢印方向)と操作レバーA及び解除リンクBのスリットA1、B1の形成方向との成す角度が図6の場合に比べて大きく、ピンC1はスリットA1、B1内を白抜き矢印の方向にスムーズに移動することが困難となる。
【0006】
図9は、上述の図7と同様に操作レバーAが操作されて後にシートバックが前倒しされる場合を示し、操作レバーAが操作された状態で、シートバックが前倒しされて検知リンクCが実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に移動し、それに伴ってピンC1も操作レバーA及び解除リンクBのスリットA1、B1内を移動しようとするが、この場合もピンC1の引張られる方向とスリットA1、B1の形成方向との成す角度が図7の場合に比べて大きいため、ピンC1はスリットA1、B1内をスムーズに移動することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−102506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、上記特許文献1のものでは、操作レバーの操作荷重を小さくしたいとの要求に対し、操作レバーの操作角度を大きくして対応することはできない。
本発明は、このような問題に鑑み、シートとフロアとのロックを解除するための解除リンクを操作レバーとは独立して動作させることにより、操作レバーの操作角度を大きくしても解除リンクを関連動作可能として操作レバーの操作力を抑制可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1発明は、リクライニング機構を解除することによりシートバックをシートクッション上に重なるように前倒しさせ、前倒しされたシートの車両フロアに対するロックを解除して車両側壁に沿うように格納するスペースアップシートであって、リクライニング機構の解除と車両フロアに対するロック解除とを行うための操作レバーの操作を受けて作動され、車両フロアに対するロックを解除させる解除リンクを、シートバックが前倒しされていないときは操作レバーの操作に伴う動作範囲外に置き、シートバックが前倒しされたときは前記動作範囲内に移動させることを特徴とする。
第1発明によれば、シートバックが前倒しされていないときは、解除リンクは操作レバーの操作に伴う動作範囲外にあり、操作レバーが操作されても解除リンクは操作されず、シートの車両フロアとのロックは解除されない。一方、シートバックが前倒しされると、解除リンクは操作レバーの操作に伴う動作範囲内に移動するため、操作レバーの操作により解除リンクを操作して車両フロアとのロックを解除することができる。このとき、操作レバーと解除リンクとの関係は、解除リンクが操作レバーの操作に伴う動作範囲内に入っているか否かのみであり、操作レバーの操作角度を大きくしても解除リンクが関連動作されるか否かには影響しないため、操作レバーの操作角度を大きくして操作レバーの操作力を小さくすることができる。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、操作レバーはシートクッションに固定されたベース部材に回動自在に固定され、操作レバーの先端部には、リクライニング機構の解除レバーを操作するためのリクライニング解除部と、前記解除リンクを操作するためのフロアロック解除部とを備え、前記解除リンクは前記ベース部材に対して摺動自在に結合され、シートバックの前倒し動作を受けて前記解除リンクをベース部材に対して移動させる検知リンクを備え、シートバックが前倒しされていないときは検知リンクが解除リンクを操作レバーの操作に伴う前記フロアロック解除部の動作範囲外に置き、シートバックが前倒しされたときは検知リンクが解除リンクを操作レバーの操作に伴う前記フロアロック解除部の動作範囲内に移動させることを特徴とする。
第2発明によれば、シートバックが前倒しされていないときは、解除リンクは操作レバーの操作に伴うフロアロック解除部の動作範囲外にあり、操作レバーが操作されたとき、リクライニング解除部によりリクライニング機構の解除アームは操作されるが、フロアロック解除部により解除リンクは操作されず、シートの車両フロアとのロックは解除されない。一方、シートバックが前倒しされると、リクライニング解除部によりリクライニング機構の解除アームは操作されると共に、検知リンクにより解除リンクはベース部材上を摺動して、解除リンクは操作レバーの操作に伴うフロアロック解除部の動作範囲内に移動するため、操作レバーの操作によりフロアロック解除部は解除リンクを操作して車両フロアとのロックを解除することができる。このとき、操作レバーと解除リンクとの関係は、解除リンクが操作レバーの操作に伴うフロアロック解除部の動作範囲内に入っているか否かのみであり、操作レバーの操作角度を大きくしても解除リンクが関連動作されるか否かには影響しないため、操作レバーの操作角度を大きくして操作レバーの操作力を小さくすることができる。
【0011】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明のいずれかにおいて、操作レバーのフロアロック解除部は、操作レバーの操作に伴って一方向に移動する第1当接部を有し、解除リンクは、シートバックの前倒しに伴って他方向へ移動する第2当接部を有し、第1当接部が一方向への移動完了状態で第2当接部が他方向へ移動して第1当接部に当接すると、第2当接部は第1当接部からの反力を受けて解除リンクを回動操作し、第2当接部が他方向への移動完了状態で第1当接部が一方向へ移動して第2当接部に当接すると、第2当接部は第1当接部からの押圧力を受けて解除リンクを回動操作することを特徴とする。
第3発明によれば、操作レバーの第1当接部と解除リンクの第2当接部とは互いに当接して、操作レバーが操作状態でシートバックが前倒しされれば、その前倒しに伴って第2当接部が第1当接部へ押圧されるため、解除リンクは反力により回動操作されて、シートの車両フロアとのロックが解除される。また、シートバックが前倒しされている状態で操作レバーが操作されれば、操作レバーの操作に伴って操作レバーの第1当接部が解除リンクの第2当接部を押圧するため、解除リンクは回動操作されシートの車両フロアとのロックが解除される。
このように、操作レバーとシートバックの前倒しの操作順序に係らず、操作レバーが操作され、且つシートバックが前倒しされているときにシートの車両フロアとのロックが解除される。
しかも、解除リンクは、シートバックの前倒しに伴って第2当接部が他方向へ移動するもので、その動作は、操作レバーの操作角度を大きくすることとは直接関係しなため、何らの制約もなく操作レバーの操作角度を大きくして操作レバーの操作力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るスペースアップシートの一実施形態におけるシート骨格と操作レバー周辺部品の分解斜視図である。
【図2】上記実施形態の操作レバー付近の拡大側面図である。
【図3】図2と同様の図であり、操作レバーの操作された状態を示す。
【図4】図2と同様の図であり、操作レバーが操作され、シートバックが前倒しされた状態を示す。
【図5】図2と同様の図であり、操作レバーが操作されず、シートバックが前倒しされた状態を示す。
【図6】従来のスペースアップシートの操作レバー及びシートバックの揺動軸付近のリンク機構を抽出して示す側面説明図である。
【図7】図6と同様の図であり、操作レバーの操作状態を示す。
【図8】図6と同様の図であり、別の従来例を示す。
【図9】図7と同様の図であり、別の従来例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車両幅方向に2分割され、分割された左右のシートがそれぞれ車両側壁部に設けられた回動軸を中心に跳ね上げて格納されるスペースアップシートを示し、ここでは車両進行方向右側のスペースアップシートの骨格を示している。
係るスペースアップシートは、シートクッションフレーム7が車両進行方向右側部分で車両側壁に車両進行方向に沿って設けられた回動軸(図示省略)を中心に回動自在に支持され、同左側で図示しないフロアロック装置により車両フロアに着脱自在に固定されている。
シートクッションフレーム7には、その後端部にシートバックフレーム8がリクライニング機構6を介して回動自在に固定され、周知のようにリクライニング機構6のロックを解除することによりシートバックフレーム8はばね72の付勢力により前方に回動され、シートクッションフレーム7上に畳まれるように構成されている。
【0014】
シートクッションの左側後方部にはフロア側に向けてブラケット73が固定されており、ブラケット73には、リクライニング機構6及びフロアロック装置のロックを解除操作するための操作レバー1がベース部材5を介して固定されている。ベース部材5とブラケット73との固定は、ベース部材本体51の貫通孔55、56に図示しないボルトを貫通し、そのボルトをブラケット73の取付孔731、732に螺合することにより行われている。
また、操作レバー1とベース部材5とは、操作レバー本体11の貫通孔16とベース部材本体51の貫通孔54に図示しないヒンジピンを挿入することにより、ベース部材本体51に対して操作レバー本体11が回動自在に固定されている。更に、ベース部材本体51はその上方部に設けた貫通孔53に図示しないボルトを貫通し、そのボルトをシートクッションフレーム7のリクライニング機構6とブラケット73との間に設けられた取付孔に一点鎖線で案内されるように螺合することによっても、シートクッションフレーム7に固定されている。
【0015】
操作レバー1は、操作レバー本体11が全体としてU字形状に形成され、その下辺14は図示しない操作ノブ(図2〜5に「17」で示す)が取り付けられて操作部とされ、上辺の先端はリクライニング機構6の解除アーム61を解除操作するためのリクライニング解除部13とされている。また、操作レバー本体11の貫通孔16の下方には、リクライニング解除部13に対して操作レバー本体11の板厚方向に偏倚してフロアロック解除部(本発明における第1当接部に相当)12が形成されている。更に、操作レバー本体11には、その側部の大部分に補強板15が溶接固定されている。
【0016】
ベース部材本体51には、上記貫通孔54に隣接して概ね上下方向にスリット52を形成されたブラケット57が溶接にて固定され、スリット52には検知リンク3及び解除リンク2が摺動自在に結合されている。具体的には、検知リンク本体31の貫通孔32と解除リンク本体21の貫通孔23とに貫通した図示しないスライドピンがスリット52に摺動自在に嵌合されている。検知リンク3はその上部で摺動リンク4に回動自在に結合され、この結合は、検知リンク本体31の貫通孔33と揺動リンク本体41の貫通孔44に図示しないヒンジピンを挿入することにより行われている。
【0017】
揺動リンク4はシートバックフレーム8の回動軸と同軸のピン74に揺動自在に固定されており、2枚の板が重合されて成る揺動リンク本体41の後端部に形成された貫通孔42にピン74が貫通するように組付けられている。また、揺動リンク4はシートバックフレーム8のリクライニング機構6の上部に固定された押し部材71に当接するように配置されている。それにより、シートバックフレーム8が前倒しされ、シートクッションフレーム7上に畳まれた状態で、押し部材71が揺動リンク本体41の前方端部44を押し、揺動リンク4をピン74を中心に揺動するようにされている。
【0018】
また、解除リンク2は全体として鉤型に形成され、その解除リンク本体21の一方の下端部24に図示しないケーブル(図2〜5に「9」で示す)が接続され、他方の下端部には当接ピン(本発明における第2当接部に相当)22が固定されている。上記ケーブルはインナーケーブルとアウタケーシングとから成る芯鞘構造を成し、解除リンク本体21の一方の下端部24には、インナーケーブルの一端が接続されている。インナーケーブルの他端は図示しないフロアロック装置のロックを解除するためのポールに接続され、アウタケーシングはベース部材本体51の前端部の切欠部58に固定されている。一方、当接ピン22は操作レバー1のフロアロック解除部12と当接可能に配置されている。
【0019】
次に操作レバー1、解除リンク2、検知リンク3及び揺動リンク4の各動作を、スペースアップシート全体の動作と関連させて図2〜5に基づいて説明する。
図2は、操作レバー1が操作されておらず、シートバックも前倒しされていない状態を示している。
図から明らかなように、操作レバー1は操作部14が図示しないばねの付勢力により車両フロアに近い位置にあり、揺動リンク4の前方端部44は押し部材71から離間していて、図示しないばねの付勢力により揺動リンク4はピン74を中心として時計方向に回動された位置に停止している。
このとき、検知リンク3及び解除リンク2は揺動リンク4に引き上げられて、ベース部材5のスリット52の上端部にあり、解除リンク2の当接ピン22は操作レバー1の操作に伴うフロアロック解除部12の動作範囲外に置かれている。
【0020】
次に図2の状態から操作レバー1が操作されると、図3の状態となる。操作レバー1の操作は、図2のように車両フロア側にある操作レバー1の下側から手を入れて操作ノブ17の前端部を指先で後方に引くことにより行われ、そのとき操作レバー1は貫通孔16を中心に回動される。
操作レバー1が回動されると、操作レバー1のリクライニング解除部13が解除アーム61のピン62を前方へ押し、解除アーム61を回動させる。このように解除アーム61が回動されると、周知のようにリクライニング機構6のロックが解除され、シートバックはばね72の付勢力により前倒しされる。図3は、リクライニング機構6のロックが解除された瞬間を示し、まだシートバックが前倒しされていない状態を示している。このとき、解除リンク2の当接ピン22は、回動操作された操作レバー1のフロアロック解除部12の円弧形状の表面に当接しているが、当接しているのみでフロアロック解除部12から操作力は受けていない。つまり、解除リンク2の当接ピン22は操作レバー1のフロアロック解除部12の動作範囲内に入っていない。そのため、解除リンク2は回動操作されない。
【0021】
その後、上述のようにリクライニング機構6のロックが解除されたことによりシートバックが前倒しされると、図4に示すように、押し部材71により揺動リンク4の前方端部44が前下方に押圧され、揺動リンク4がピン74を中心に反時計方向に揺動される。これを受けて、検知リンク3及び解除リンク2はベース部材5のスリット52に沿って下方へ移動される。その結果、解除リンク2の当接ピン22は操作レバー1のフロアロック解除部12の動作範囲内に入ることになる。
このとき、操作レバー1が既に操作されているため、当接ピン22はフロアロック解除部12に当接しており、解除リンク2が下方に移動されることにより、その当接ピン22が、操作レバー1のフロアロック解除部12からの反力を受けて、解除リンク2は貫通孔23を中心に反時計方向に回動され、解除リンク2の一方の下端部24に結合されたケーブル9を引張り操作する。上述のようにケーブル9の先にはフロアロック装置のポールが接続されているため、ケーブル9が引張り操作されることによりフロアロック装置のロックが解除される。
従って、シートバックが前倒しされ、シートバックがシートクッション上に畳まれた状態となったシートは、車両側壁の回動ヒンジを中心に車両側壁に沿うように跳ね上げられて格納されることになる。
【0022】
以上の動作は、操作レバー1を操作してシートバックを前倒しさせ、さらにフロアロック装置のロックが解除されるまで操作レバー1を操作し続けた場合である。これに対し、シートバックを前倒しさせたのみで操作レバー1の操作を止め、フロアロック装置のロック解除をしないで、シートを車両フロア上に位置させたままとすることもある。この状態からシートを車両側壁に沿って格納させたい場合は、再度操作レバー1を操作してフロアロック装置のロックを解除することになる。
図5は、シートバックが前倒しされ、操作レバー1が操作されていない状態を示している。このとき、シートバックが前倒しされているため、上述したように揺動リンク4は前下方に揺動され、それに伴って検知リンク3及び解除リンク2も下方に移動されている。そのため、解除リンク2の当接ピン22は操作されていない操作レバー1のフロアロック解除部12の表面に当接する位置に移動している。つまり、解除リンク2は操作レバー1のフロアロック解除部12の動作範囲内に移動している。このとき、解除リンク2は下方に移動しているのみで回動操作はされていないため、一方の下端部24に結合されているケーブル9を引張り操作していない。
【0023】
その後、操作レバー1が操作され、フロアロック解除部12が貫通孔16を中心に回動されると、フロアロック解除部12に当接していた解除リンク2の当接ピン22が上方に押圧され、解除リンク2は貫通孔23を中心に反時計方向に回動されることになり、それに伴って、ケーブル9が引張り操作されることになる。その状態は、上述した図4と同様の状態であり、ケーブル9の引張り操作によりフロアロック装置のロックが解除され、シートは車両側壁に跳ね上げられて格納されることになる。
【0024】
以上述べたとおり、シートバックが前倒しされていないときは、解除リンク2は操作レバー1の操作に伴うフロアロック解除部12の動作範囲外にあり、操作レバー1が操作されたとき、リクライニング解除部13によりリクライニング機構6の解除アーム61は操作されるが、フロアロック解除部12により解除リンク2は操作されず、フロアロック装置のロックは解除されない。一方、シートバックが前倒しされると、リクライニング解除部13によりリクライニング機構6の解除アーム61は操作されると共に、検知リンク3により解除リンク2はベース部材5上を摺動して、解除リンク2は操作レバー1の操作に伴うフロアロック解除部12の動作範囲内に移動するため、操作レバー1の操作によりフロアロック解除部12は解除リンク2を操作して車両フロアとのロックを解除することができる。このとき、操作レバー1と解除リンク2との関係は、解除リンク2が操作レバー1の操作に伴うフロアロック解除部12の動作範囲内に入っているか否かのみであり、操作レバー1の操作角度を大きくしても解除リンク2が関連動作されるか否かには影響しないため、操作レバー1の操作角度を大きくして操作レバー1の操作力を小さくすることができる。
【0025】
また、操作レバー1のフロアロック解除部12と解除リンク2の当接ピン22とは互いに当接して、操作レバー1が操作後にシートバックが前倒しされれば、その前倒しに伴って当接ピン22がフロアロック解除部12へ押圧されるため、解除リンク2は反力により回動操作されて、フロアロック装置のロックが解除される。また、シートバックが前倒しされている状態で操作レバー1が操作されれば、操作レバー1の操作に伴って操作レバー1のフロアロック解除部12が解除リンク2の当接ピン22を押圧するため、解除リンク2は回動操作されフロアロック装置のロックが解除される。
このように、操作レバー1とシートバックの前倒しの操作順序に係らず、操作レバー1が操作され、且つシートバックが前倒しされているときにフロアロック装置のロックが解除される。しかも、解除リンク2は、シートバックの前倒しに伴って当接ピン22が下方向へ移動するもので、その動作は、操作レバー1の操作角度を大きくすることとは直接関係しなため、何らの制約もなく操作レバー1の操作角度を大きくして操作レバー1の操作力を小さくすることができる。
【0026】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.上記実施形態ではシートバックの前倒しに伴って解除リンク2の当接ピン22(第2当接部)を下方に移動し、操作レバー1の操作に伴ってフロアロック解除部12(第1当接部)を上方に移動するようにしたが、それぞれの移動方向を上下逆方向で互いに当接するように各リンクを構成しても良い。また、それぞれの移動方向を上下方向以外の方向、例えば左右方向で互いに当接するようにしても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 操作レバー
12 フロアロック解除部
13 リクライニング解除部
2 解除リンク
22 当接ピン(他方の下端部)
24 一方の下端部
3 検知リンク
4 揺動リンク
5 ベース部材
52 スリット
6 リクライニング機構
61 解除アーム
7 シートクッションフレーム
8 シートバックフレーム
9 ケーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニング機構を解除することによりシートバックをシートクッション上に重なるように前倒しさせ、前倒しされたシートの車両フロアに対するロックを解除して車両側壁に沿うように格納するスペースアップシートであって、
前記リクライニング機構の解除と車両フロアに対するロック解除とを行うための操作レバーの操作を受けて作動され、車両フロアに対するロックを解除させる解除リンクを、シートバックが前倒しされていないときは操作レバーの操作に伴う動作範囲外に置き、シートバックが前倒しされたときは前記動作範囲内に移動させることを特徴とするスペースアップシート。
【請求項2】
請求項1において、前記操作レバーはシートクッションに固定されたベース部材に回動自在に固定され、操作レバーの先端部には、前記リクライニング機構の解除レバーを操作するためのリクライニング解除部と、前記解除リンクを操作するためのフロアロック解除部とを備え、
前記解除リンクは前記ベース部材に対して摺動自在に結合され、
シートバックの前倒し動作を受けて前記解除リンクを前記ベース部材に対して移動させる検知リンクを備え、シートバックが前倒しされていないときは前記検知リンクが前記解除リンクを操作レバーの操作に伴う前記フロアロック解除部の動作範囲外に置き、シートバックが前倒しされたときは前記検知リンクが前記解除リンクを操作レバーの操作に伴う前記フロアロック解除部の動作範囲内に移動させることを特徴とするスペースアップシート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、前記操作レバーのフロアロック解除部は、操作レバーの操作に伴って一方向に移動する第1当接部を有し、
前記解除リンクは、シートバックの前倒しに伴って他方向へ移動する第2当接部を有し、
前記第1当接部が一方向への移動完了状態で前記第2当接部が他方向へ移動して第1当接部に当接すると、第2当接部は第1当接部からの反力を受けて前記解除リンクを回動操作し、
前記第2当接部が他方向への移動完了状態で前記第1当接部が一方向へ移動して第2当接部に当接すると、第2当接部は第1当接部からの押圧力を受けて前記解除リンクを回動操作することを特徴とするスペースアップシート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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