説明

スポットピン、およびこれを用いたスポット装置、ならびに液体の点着方法

【課題】スポットピンによって保持された液体が少ない場合や1回のスポットピンの吸引で複数回の点着を行う場合などには、周縁部に供給される液体の量が不十分となって、周縁部に液体が付いていない、擦れた領域を生じるという問題がある。
【解決手段】液体21を点着するための先端面13を有するとともに、液体21を保持するための液体保持空間12を内部に有する筒状部11を備えたスポットピン10であって、筒状部11の先端部は、前記先端面13に一部が開口する気孔14を有するとともに、筒状部11の先端部を除く部分全体の平均気孔率に比し、気孔率が大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点着対象面に対して液体を点着するためのスポット装置、このスポット装置に用いるスポットピン、このスポットピンを用いた液体の点着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DNAの塩基配列の解析を行う方法として、バイオチップなどの生化学解析用ユニットを用いる方法がある(たとえば特許文献1−3参照)。バイオチップは、基板に対して塩基配列が既知のプローブDNAをスポット状に固定化したものである。このようなバイオチップでは、蛍光物質で標識したサンプルDNAと接触させることにより、サンプルDNAに含まれるプローブDNAの相補鎖DNAがプローブDNAと結合する。そのため、プローブDNAに結合していないDNAを洗浄により除去し、相補鎖DNAに標識させた蛍光物質を光エネルギで励起させて、その励起光を検出することにより、目的とするDNAの検出を行うことができる。
【0003】
上述のように、バイオチップにおいては、基板に対してプローブDNAが固定化されているが、その固定化に際して、基板に対してプローブDNAを含む液体が点着される。液体の点着には、液体を保持するための複数のスポットピンをヘッドに保持させたスポット装置が使用されている。
【0004】
図5は、一般的なスポットピンを示す断面図である。スポットピン40は、毛細管力を作用させて液体保持空間42に液体を保持する円筒状の筒状部41を有するものである。このスポットピン40では、試薬等の液体51にスポットピン40の先端部を浸漬することにより、液体保持空間42に作用する毛細管力によって液体保持空間42に試薬が吸引・保持される。
【特許文献1】特開2002−355036号公報
【特許文献2】特開2004−4083号公報
【特許文献3】特開2004−354123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体51は、筒状部41の中心部に設けられた液体保持空間42に保持され、スポットピンの先端面を基板のような点着対象面と当接させることによって所望の位置に点着される。そのため、スポットピン40によって保持された液体51が少ない場合や1回のスポットピン40の液体吸引で複数回の点着を行う場合などには、スポットピンの先端面の外周側部分(周縁部)における点着量が不十分となって、周縁部に液体が付着しない領域ができ、点着量にばらつきが生じるという問題があった。一方、このような液体が付着しない領域を低減するために、液体保持空間42で保持する液体51の量を多くした場合、逆に点着量が過剰となって、点着対象面の吸収状態によっては、点着量の安定化が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスポットピンは、液体を点着するための先端面を有するとともに、前記液体を保持するための液体保持空間を内部に有する筒状部を備えたスポットピンであって、前記筒状部の先端部は、前記先端面に一部が開口する気孔を有するとともに、前記筒状部の前記先端部を除く部分全体の平均気孔率に比し、気孔率が大きいことを特徴とする。
【0007】
また、本発明において、前記筒状部の先端部の気孔率が30〜70%であることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明において、前記筒状部の先端部は、前記先端面に向かうにつれて気孔率が大きくなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記筒状部の先端部は、内周面に一部が開口する気孔を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記筒状部の先端部は、外周面に一部が開口する気孔を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記筒状部は、前記先端面に向かうにつれて断面積が大きくなることを特徴とする。
【0012】
本発明のスポットピンの製造方法は、液体を点着するための先端面を有するとともに、前記液体を保持するための液体保持空間を内部に有する筒状部を備えたスポットピンの製造方法であって、金型内に前記筒状部の一部を構成する第1セラミック材料を充填する工程と、前記金型内の前記第1セラミック材料が構成する前記筒状部の上面に、前記第1セラミック材料の焼成温度よりも低い温度で気化する有機物を含んでなり、前記筒状部の先端部を構成する第2セラミック材料を充填する工程と、前記第1セラミック材料および前記第2セラミック材料を押圧して成形体を成形する工程と前記成形体を焼成する工程と、を備えてなることを特徴とする。
【0013】
本発明のスポットピン装置は、本発明のスポットピンと、前記スポットピンを軸方向に移動させるための移動機構と、前記移動機構の動作を制御するための制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の液体の点着方法は、本発明のスポットピンにおける液体保持空間に液体を保持させる工程と、前記筒状部の先端面を点着対象面に接触させた後に、前記点着対象面から前記先端面を離間させ、前記液体保持空間の液体を前記点着対象面に点着する点着工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスポットピンによれば、筒状部の先端面に一部が開口する気孔を有することにより、スポットピンを液体に浸漬して筒状部の液体保持空間に液体を吸引する際に、先端面に開口する気孔にも液体が吸引されて保持されるようになる。その結果、本発明のスポットピンでは、点着対象面に点着を行う場合、液体保持空間から液体が点着されるだけでなく、気孔で保持された液体も先端面から点着されるため、点着量のばらつきを低減させることが可能となり、良好なスポット形状とすることができる。さらに、本発明のスポットピンによれば、筒状部の先端部を除く部分全体の平均気孔率に比し、筒状部の先端部の気孔率を大きくすることにより、筒状部の先端部の気孔で効率よく液体を吸引して保持するとともに、先端部を除く部分における筒状部の機械的強度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明のスポットピンにおいて、筒状部の先端部の気孔率を30〜70%の範囲とすれば、筒状部の先端部の機械的強度を維持しつつ、筒状部の気孔で十分に液体を保持することができる。このような気孔率は、筒状部の先端面に向かうにつれて大きくなるように設定すれば、液体の点着に直に作用する筒状部の先端面の気孔率が大きいことから、より効率よく点着量のばらつきを低減し、かつ筒状部の機械的強度を向上させることができる。
【0017】
さらに、筒状部の先端部において、筒状部の内周面に一部が開口する気孔を有する構造とすれば、液体を吸引した時に液体保持空間に保持された液体の一部が、内周面に開口した気孔に補充されるため、筒状部全体として、液体保持空間の体積以上の液体を保持することが可能になる。
【0018】
さらに、筒状部の先端部において、筒状部の外周面に一部が開口する気孔を有する構造とすれば、液体を吸引するために筒状部の先端部を液体に浸漬した時に、外周面に開口した気孔にも液体が補充されて保持することができる。その結果、このような構造によれば、筒状部の先端部の外周部にも液体が保持されているため、液体の点着時において、液体の点着量のばらつきが大きくなる筒状部の先端面の周縁部に液体を点着させることができるため、点着量のばらつきをより低減させることができる。
【0019】
また、本発明において、筒状部をその先端面に向かうにつれて断面積が大きくなる構造とすれば、筒状部の先端部における機械的強度を向上させることができる。スポットピンは、先端面を点着対象面に衝突(当接)させて液体を点着するため、先端部における機械的強度も重要となってくる。
【0020】
また、本発明において、筒状部をジルコニアセラミックスで構成すれば、適度な弾性変形力を有する筒状部とすることができるため、気孔率が変化する筒状部の先端部と、該先端部を除く部分との境界部における応力集中を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について、図面を参照しつつ説明する。まず、本発明のスポットピンの一実施形態について詳しく説明する。
【0022】
本発明の一実施形態にかかるスポットピン10は、図1に示すように、点着に用いる液体21を保持するための液体保持空間12を有するとともに、液体21を点着するための先端面13を有する筒状部11を備えている。
【0023】
筒状部11は、略中心部に液体21を吸引する液体保持空間12を規定する貫通孔を有している。さらに、筒状部11の先端部には、先端面13に一部が開口する気孔14が設けられている。なお、筒状部11の先端部とは、筒状部11の全長をLとしたとき、筒状部11の先端面から3/L以内の長さの部位を示す。
【0024】
液体保持空間12は、毛細管力を発現させて、液体21を保持する機能を有するものであり、たとえば円形の断面を有する貫通孔で構成されている。この液体保持空間12の内径は、毛細管作用が発現可能なように、たとえば0.01mm〜0.5mmの範囲に設定されている。もちろん、液体保持空間12の断面形状は、円形に限らず、楕円形、半円形、三角形、四角形、多角形、星形など形状を採用することができる。液体保持空間12の断面形状として半円形、三角形、四角形、多角形、あるいは星形を採用した場合には、角部における毛細管力が追加されるためにより適切に毛細管効果を得ることができ、液体保持空間12の断面形状として楕円形を採用した場合には角部を有する形態に比べて加工が容易である上に円形状の形態に比べて毛細管効果を得る上で有利となる。
【0025】
筒状部11の先端面13は、点着対象面の目的部位に液体21を点着する際に、点着対象面の目的部位に接触させるための部位であるとともに、目的部位との間に作用する毛細管力により点着される液体21の形状およびスポット径を規定するための部位である。この先端面12は、たとえば円環状に形成されており、その外径D2は、たとえば0.5mm〜5mmに設定されている。もちろん、先端面13の形状は、円環状に限定されず、他の形状を採用することもできる。
【0026】
筒状部11は、たとえばセラミック材料を用いて目的形状に成型した後、これを焼成することにより形成することができる。筒状部11の材質にセラミック材料を用いるのであれば、たとえばジルコニアセラミックおよびアルミナセラミックを挙げることができるが、強度や弾性変形特性の観点から、ジルコニアセラミックを使用するのが好ましい。もちろん、筒状部11は、セラミック以外の材料、たとえばステンレスやガラスを用いて形成することもできる。
【0027】
気孔14は、先端部の外周側(周縁部)も含むように分布しており、液体保持空間11と同様に、液体21を吸引して保持し、筒状部11の先端面13における液体21の点着に対して補助的に液体を供給する機能を有する。すなわち、気孔14は、筒状部11の先端面13に開口する開気孔を含んでいるため、該開気孔から液体が吸引され、同時に、前記開気孔と連通する他の気孔にも液体が保持されるようになる。具体的に、液体21の吸引・保持工程は、スポットピン10の先端部13を、液体トレイに保持された液体21に浸漬することにより行われ、図2に示すように、気孔14に液体21が保持される。そして、気孔14に保持された液体21は、点着対象面に点着する際に、筒状部11の先端面13において、液体保持空間12近傍以外の先端面部位から補助的に点着される。その結果、スポットピン10では、点着対象面に点着を行う場合、液体保持空間12から液体21が点着されるだけでなく、気孔14で保持された液体21も先端面13から点着されるため、点着量のばらつきを低減させることが可能となる。
【0028】
また、筒状部11は、筒状部11の先端部において、筒状部11の先端部を除く他の部分の平均気孔率に比し、気孔率が大きい。すなわち、気孔14は、筒状部11の先端部を除く部位に比べて、筒状部11の先端部に多く設けられている。このように、筒状部11の先端部の気孔率を高めることにより、上述した毛管力の補助効果を向上させ、筒状部11の先端部以外の部位における気孔率を小さくすることにより、スポットピン自体の機械的強度を向上させることが可能となる。特に、スポットピン10は、液体の吸引・保持・点着の工程を複数回繰り返すことから耐久性も重要であり、筒状部11の先端部を除く部位では強度を向上させるという観点から、平均気孔率が95%以上の緻密体とするほうが好ましい。
【0029】
また、この気孔14の気孔率は、筒状部の先端部において、30〜70%の範囲とすることが好ましい。これは気孔率が30%より小さいと気孔14の液体21を吸引する毛細管力が小さくなり、十分な量の液体を保持しにくくなり、一方で、70%より大きくなると、筒状部11の先端部の強度が弱くなり、過渡に点着作業を繰り返すと、先端面の形状が崩れて点着精度が低下する可能性があるためである。なお、この気孔率は、たとえばアルキメデス法で測定することができる。この方法では、測定対象となる部分を切り出して試料とし、その試料の乾燥質量(W1)、水中質量(W2)、及び飽水質量(W3)を測定して、(W3−W1)/(W3−W2)で算出する。または、該試料の体積(V)をピクノメーター等を用いて測定し、1−((W1/V)/ρs)で算出することもできる(ρsは真密度)。
【0030】
さらに、この気孔14は、筒状部11の先端面13に向かうにつれて気孔率が大きくなるように筒状部11の先端部に分布させることが好ましい。このように、液体の点着に直に作用する筒状部11の先端面13付近の気孔を大きくする構造とすれば、より効率よく点着量のばらつきを低減し、かつ筒状部の機械的強度を向上させることができる。
【0031】
さらに、筒状部11の先端部において、筒状部11の内周面に一部が開口する気孔14を有する構造とすれば、液体21を吸引した時に液体保持空間12に保持された液体21の一部が、内周面に開口した気孔14に補充されるため、筒状部11全体として、液体保持空間12の体積以上の液体21を保持することが可能になる。一方で、筒状部11の先端部において、筒状部11の外周面に一部が開口する気孔14を有する構造とすれば、液体21を吸引するために筒状部11の先端部を液体21に浸漬した時に、外周面に開口した気孔にも液体21が補充されて保持することができる。その結果、このような構造によれば、筒状部11の先端部の外周部にも液体21が保持されているため、液体21の点着時において、液体21の点着量のばらつきが大きくなる筒状部11の先端面13の周縁部に液体21を点着させることができるため、点着量のばらつきをより低減させることができる。
【0032】
また、スポットピン10は、筒状部11の先端面13に向かうにつれて断面積が大きくなる構造とするのが好ましい。これにより、筒状部11の先端面13の断面積を大きくすることで筒状部11の先端部における機械的強度を向上させることができる。より具体的に、スポットピン10は、図1に示すように、スポットピン10における付根部(筒状部の後端面)の外径をD1、先端面13の外径をD2、筒状部の長さをLとした時に、テーパ比(D2−D1)/Lを0.05〜0.3の範囲とする。このような構造とすることで、先端部ほど気孔率が大きくなった場合でも、強度の劣化を抑え、先端部の欠けや割れを防止することができる。なお、このテーパ比が0.05より小さいと、先端部の強度劣化が懸念され、また、テーパ比が0.3より大きいと、先端面13の外径、すなわち点着面積を維持するために、付根部の外径が小さくなって付根部の強度が低下するためである。
【0033】
次に本発明のスポットピン10の製造方法について詳しく説明する。
【0034】
まず、ジルコニア原料と所定のバインダーを混合して成る第1のセラミック材料を、筒状部11の外周部と内周部を形成するための筒状の金型に充填する。次に、前記第1のセラミック材料に、第1のセラミック材料の焼成温度よりも低い温度で気化する有機物を混合して成る第2のセラミック材料を、第1のセラミック材料の上に充填し、上パンチで押圧してプレス成形する。このようにして得た成形体を所定の温度(約1400°)で焼成することで、第1のセラミック材料から成るスポットピン10の付根部は緻密な状態となり、また、第2のセラミック材料から成るスポットピン10の先端部は、予め混合してある有機物が気化、焼失することで気孔を生じせしめることができる。
【0035】
ここで、前記有機物の混合比率を段階的に変えた第3、第4のセラミック材料を多段階的に充填することにより、筒状部11の先端部に向かうにつれて気孔率が大きくなるような構造とすることができる。なお、前記有機物としては、炭素系充填材、黒鉛系充填材、セルロース系充填材、各種熱硬化性樹脂、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0036】
次に、スポットピン10を備えたスポット装置31について図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図3に示したスポット装置31は、プローブDNAを含む液体21を点着対象面となる基板32における目的部位に点着するためのものであり、複数のスポットピン10(図面上は6つ)、ヘッド37、Z軸駆動機構33、XY軸駆動機構34、制御部35、及び液体トレイ36を備えている。
【0038】
ヘッド37は、複数のスポットピン10を保持するためのものであり、さらにZ軸駆動機構33に固定されている。このZ軸駆動機構33は、公知の機構により構築することができる。
【0039】
XY軸駆動機構34は、ヘッド37ひいてはヘッド37に保持された複数のスポットピン10をXY方向に移動させるためものであり、Z軸駆動機構33に連結されている。このXY軸駆動機構34もまた、公知の機構により構築することができる。
【0040】
制御部35は、Z軸駆動機構33及び、XY軸駆動機構34の駆動を制御するものである。この制御部35は、たとえばCPU、ROMおよびRAMを備えた回路を含むものとして構成されている。
【0041】
液体トレイ36は、基板32に点着すべき液体21を保持するためのものであり、複数のスポットピン10の配置に対応させた複数の液体トレイ36を有している。各液体トレイ36に保持させる液体21は、たとえばプローブDNAおよび溶媒を含むものである。プローブDNAは、ターゲットに対して特異的結合が可能物質である。ターゲットとしては、たとえば生体由来物質であるホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、mRNAなどを生体から抽出、単離して採取し、化学的処理、化学修飾などの処理を施したものを挙げることができる。溶媒としては、プローブDNAに対して悪影響を及ぼすものでなければ特段の制限はないが、たとえば純水あるいはジメチルスルホオキサイドが使用される。
【0042】
次に、スポット装置31を用いた基板32に対する液体21の点着動作について説明する。
【0043】
液体21の点着動作は、スポットピン10の筒状部11に対する液体21の吸引・保持工程、および液体21の点着工程を含んでいる。
【0044】
図2に示したように、液体21の吸引・保持工程は、スポットピン10の先端部13を、液体トレイ36の保持させた液体21に浸漬することにより行われる。
【0045】
より具体的には、まず、図3に示したXY軸駆動機構34を制御部35により制御し、各スポットピン10を対応する液体トレイ36の直上に位置させる。次いで、Z軸駆動機構33を制御部35により制御し、図2に示したように各スポットピン10を対応する液体トレイ36の液体21に一定時間浸漬させた後に引き上げる。このとき、液体トレイ36に作用する毛細管力により、液体保持空間12に液体21が吸引され、それが筒状部11に保持される。
【0046】
次に液体21の点着工程は、図4(a)〜図4(c)に示したように、基板32の目的部位に対して、液体21を保持させたスポットピン10を接触させた後に離間させることにより行われる。
【0047】
より具体的には、まず、XY軸駆動機構34を制御部35により制御し、各スポットピン10を基板32における対応する目的部位の直上に位置させる。次いで、Z軸駆動機構33を制御部35により制御し、各スポットピン10を対応する目的部位に一定時間接触させた後に引き上げる。このとき、図4(b)に示すように、スポットピン10の先端面13を基板32の目的部位に接触させると、筒状部11の液体21の一部が基板32における目的部位に接触し、先端面13と基板32の目的部位との間に生じる僅かな隙間による毛細管作用によって、液体21が先端面13の外径に相当する範囲まで広がる。この時、先端面13の中心部にある液体保持空間12から液体21が点着されるとともに、筒状部11の先端部において、先端面13の周縁部などにも存在する気孔14からも液体21が補充されて、十分な点着量とすることができ、点着対象面に所望量の液体が付着しない領域の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のスポットピンの断面図である。
【図2】スポットピンに対する液体の供給動作を説明するための断面図である。
【図3】本発明のスポット装置の全体斜視図である。
【図4】スポットピンを用いた点着動作を説明するための断面図である。
【図5】従来のスポットピンの断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10:スポットピン
11:筒状部
12:液体保持空間
13:先端面
14:気孔
21:液体
31:スポット装置
32:基板
33:Z軸駆動機構
34:XY軸駆動機構
35:制御部
36:液体トレイ
37:ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を点着するための先端面を有するとともに、前記液体を保持するための液体保持空間を内部に有する筒状部を備えたスポットピンであって、
前記筒状部の先端部は、前記先端面に一部が開口する気孔を有するとともに、前記先端部を除く部分全体の平均気孔率に比し、気孔率が大きいことを特徴とするスポットピン。
【請求項2】
前記筒状部の先端部の気孔率が30〜70%であることを特徴とする請求項1に記載のスポットピン。
【請求項3】
前記筒状部の先端部は、前記先端面に向かうにつれて気孔率が大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載のスポットピン。
【請求項4】
前記筒状部の先端部は、内周面に一部が開口する気孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスポットピン。
【請求項5】
前記筒状部の先端部は、外周面に一部が開口する気孔を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスポットピン。
【請求項6】
前記筒状部は、前記先端面に向かうにつれて断面積が大きくなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスポットピン。
【請求項7】
前記筒状部は、ジルコニアセラミックスで構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスポットピン。
【請求項8】
液体を点着するための先端面を有するとともに、前記液体を保持するための液体保持空間を内部に有する筒状部を備えたスポットピンの製造方法であって、
金型内に前記筒状部の一部を構成する第1セラミック材料を充填する工程と、
前記金型内の前記第1セラミック材料が構成する前記筒状部の上面に、前記第1セラミック材料の焼成温度よりも低い温度で気化する有機物を含んでなり、前記筒状部の先端部を構成する第2セラミック材料を充填する工程と、
前記第1セラミック材料および前記第2セラミック材料を押圧して成形体を成形する工程と、
前記成形体を焼成する工程と、
を備えてなるスポットピンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のスポットピンと、
前記スポットピンを軸方向に移動させるための移動機構と、
前記移動機構の動作を制御するための制御部と、
を備えたスポット装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のスポットピンにおける液体保持空間に液体を保持させる工程と、
前記筒状部の先端面を点着対象面に接触させた後に、前記点着対象面から前記先端面を離間させ、前記液体保持空間の液体を前記点着対象面に点着する点着工程と、
を備えた液体の点着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−134166(P2008−134166A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321152(P2006−321152)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】