説明

スポットライト用ハロゲン電球およびスポットライト

【課題】 単レンズスポットライトによる演出照明を行う際に、光量の利用効率の低下を招くことなく、ガラスバルブやステムガラスなどの不所望な像が照射面に投影される虞れを低減し、ハレーションをできる限り防止することができる新規なハロゲン電球を提供する。
【解決手段】 ガラスバルブ2の頂部側と封止部側に遮光膜11,12を形成し、これら遮光膜11,12の形成条件を最適化して、口金部1、封止部3、排気チップ4、上下のステムガラス6a,6bの像、虚像が照射面に投影されることを防止する。さらに、ガラスバルブ2は円筒形状とし、発光部9の側端に位置するフィラメント5’と、ガラスバルブ周壁2aにおける該フィラメント5’に最も近接する箇所との離間寸法(g)を6mm以下として、バルブ周壁2aの像、虚像が照射面に投影されることを防止する。これにより、光量の利用効率の低下を招くことなく、ハレーションの発生が大幅に低減し、劇場舞台やTVスタジオなどの演出空間において好適な演出照明を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劇場舞台やTVスタジオなどの演出空間において演出照明を行う際に使用されるハロゲン電球に関し、詳しくは、前記演出照明を行うためのスポットライト用のハロゲン電球とそのスポットライトに関する。
【背景技術】
【0002】
劇場舞台やTVスタジオなどの演出空間において演出照明を行う場合、灯体内に光源、反射板、レンズを配設してなるスポットライトが用いられる。この種スポットライトの光源には、通常、例えば特許文献1(特開2001−155691号)、特許文献2(特開2005−251418号)に開示されるような、片口金型のハロゲン電球が用いられる。
【0003】
一般的な片口金型のハロゲン電球の一例を図7に示す。このハロゲン電球100’は、口金部1の上にガラスバルブ2を備え、ガラスバルブ2は口金部1に対し封止部3で固定して内部を遮蔽されると共に、頂部に排気チップ4を有している。排気チップ4は、ガラスバルブ2にフィラメント5を封装後、ガラスバルブ2の先端に予め形成した排気管(不図示)を経由してガラスバルブ2の内部を排気してから、ハロゲンと不活性ガスを封入して、排気管を封止切ることにより形成される。
ガラスバルブ2の内部には、発光部9を構成する複数本のフィラメント5を、バルブ軸2’と並行な適宜位置に保持するため、上下のステムガラス(支持部材)6a,6b、左右の内部端子7a,7bが配設され、各内部端子7a,7bは、口金部1を通って外部端子8a,8bに電気的に接続されている。
【0004】
処で、このような構成のハロゲン電球100’を、単レンズスポットライト、特に平凸レンズスポットライトに用いた場合、該ハロゲン電球100’が、レンズの焦点近傍に位置したとき、若しくは、レンズの焦点距離fから短くなる方向に対し約10%の範囲(焦点距離f×0.9)内に位置したときに、発光部9となる複数のフィラメント5が放つ光、或いは、ガラスバルブ2、封止部3、排気チップ4、ステムガラス6a,6bなどによる乱反射などの影響により、ガラスバルブ2の周壁2a、排気チップ4、ステムガラス6a,6bなどが、不所望な像若しくは虚像として照射面に投影されてしまう。尚、内部端子7a,7bは、フィラメント5からの照射方向に直交する位置にあるため、反射光として照射されず、不所望な像などとして現われないことは確認済みである。
【0005】
前記したような不所望な像若しくは虚像が照射面に投影される現象をハレーションと言い、このハレーションを目立たないようにするために、例えば、ガラスバルブに部分的に遮光膜を設けたり、ガラスバルブの形状を工夫するなどしたハロゲン電球も提案されているが、単レンズスポットライトにおいては、必ずしも満足な結果を得られていない。
【0006】
すなわち、舞台照明などに用いられる単レンズスポットライトは、灯体内に光源(ハロゲン電球)、反射板、単レンズを配設して構成され、光源を単レンズの焦点付近より内側に設置すると共にその位置を任意に調節することにより投光の集光度を変えるようになっており、光源及び反射板を、単レンズから遠ざける(単レンズの焦点に近づける又は一致させる)と狭い範囲の投光(スポット光)が得られ、近づける(単レンズの焦点から離れる方向に移動させる)と広い範囲の投光(フラッド光)を得ることができる。光源と単レンズの相対的位置関係において、最も狭い範囲の投光が得られる状態をスポットフォーカスポジション、最も広い範囲の投光が得られる状態をフラッドフォーカスポジションと言う。
このように、単レンズスポットライトにおいては、レンズに対する光源の位置が一定ではなく設定条件が変化するので、ガラスバルブに部分的に遮光膜を設けたり、ガラスバルブの形状を工夫するなどしても、前記したように、光源がレンズの焦点近傍に位置したときにステムガラスや排気チップ、ガラスバルブなどの像が投影されてしまい、レンズの焦点距離から短くなる方向に対し一定の範囲内に位置したときに前記像が虚像となって投影され、これら像や虚像がハレーションとして認識されてしまう。
【0007】
また、ガラスバルブに部分的に遮光膜を設けると、フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ径に対する有効入射角度が小さくなり、光源(発光部)からの光量の利用効率が低減する虞れがある。よって、従来においては、スポットライトにおける光量の利用効率を第一に考え、ハレーション防止は光量の利用効率が低減しない範囲に限っており、前記したように、光源がレンズの焦点近傍に位置したときや、レンズの焦点距離から短くなる方向に対し一定の範囲内に位置したときに、ハレーションが発生するという問題が生じていた。
【0008】
【特許文献1】特開2001−155691号公報
【特許文献2】特開2005−251418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような従来事情に鑑みて成されたもので、その目的とする処は、スポットライトによる演出照明を行う際に、ガラスバルブやステムガラスなどの不所望な像などが照射面に投影される虞れを低減して、ハレーションをできる限り防止することができ、光量の利用効率の低下も防止し得る新規なハロゲン電球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するために、本発明者等は鋭意研究を重ね、ガラスバルブに対し遮光膜を形成する範囲や、ガラスバルブの形状、フィラメントとの位置関係などを最適化することで、演出空間における照射面に対しハレーションを可能な限り低減し、且つ、光量の利用効率の低下も防止することができる新規なスポットライト用ハロゲン電球を提供し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、演出照明に用いられるハロゲン電球であり、特に、単レンズスポットライトの灯体内に装着され、レンズに対する位置調整により、投光の集光度を変化させて演出照明を行うために用いられるハロゲン電球であって、
少なくとも、外部端子を有する口金部と、該口金部に固定された密閉状のガラスバルブと、前記ガラスバルブ内に封入された複数のフィラメントからなる発光部と、前記ガラスバルブ内において前記発光部の上下に配設され前記複数のフィラメントを前記ガラスバルブのバルブ軸と並行になるよう並列状に固定する上下の支持部材と、を備え、
前記ガラスバルブにおける排気チップが設けられた頂部側に、前記排気チップと前記上側の支持部材の像若しくは虚像が照射面に投影されることを防止する上側の遮光手段が形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ガラスバルブにおける前記口金部への固定側となる封止部側に、少なくとも、前記下側の支持部材の像若しくは虚像が照射面に投影されることを防止する下側の遮光手段が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明において、遮光手段とは、ガラスバルブの頂部側、封止部側における周壁、排気チップ、封止部の外表面又は内表面に遮光膜を形成したり、これら部位に遮光処理を施したり、これらを遮光性と耐熱性を有する材料で形成するなどにより構成され、複数のフィラメントからなる発光部からの発光により、排気チップ、上下の支持部材、封止部、ガラスバルブ周壁などの像若しくは虚像が、照射面に投影されることを防止するものである。
遮光膜は、例えば、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの黒色系被膜からなる可視光吸収膜、若しくは、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの微粒子被膜からなる可視光反射膜により形成することができる。また、遮光性と所望の耐熱性を有するセラミックや金属などの材料を用いて、前記した部位に遮光処理を施したり、前記した部位をこれら材料で形成することができる。
【0013】
また本発明は、前記遮光手段が、下記式を満たすよう形成されていることを特徴とする(図1、図2など参照)。
【0014】
〔上側の遮光手段に係る条件式〕
【数1】

【0015】
但し、上記式中、
a:スポットライトAにおけるレンズ300の直径(レンズ径)
b:ハロゲン電球100における発光部9の中心pから上側のステムガラス6a(支持部材)の下端までの距離
c:レンズ300の焦点距離f×0.9の範囲
d:ガラスバルブ100の外径
e:上側のステムガラス6a(支持部材)の下端から上側の遮光膜11(遮光手段)の下縁11aまでの距離
f:スポットライトAにおけるレンズ300のバックフォーカス(fb)
g(θ):フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ(300a)径に対する有効入射角度
h:フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ(300a)の光源側の面から発光部9までの距離
i:発光部9の高さ
j:発光部9の上端から上側の遮光膜11の下縁11aまでの距離
θ:スポットフォーカスポジションにおけるレンズ(300b)に対し支持部材の像が入射しない角度
【0016】
〔下側の遮光手段に係る条件式〕
【数2】

【0017】
但し、上記式中、
a:スポットライトAにおけるレンズ300の直径(レンズ径)
b’:ハロゲン電球100における発光部9の中心pから下側のステムガラス6b(支持部材)の上端までの距離
c:レンズ300の焦点距離f×0.9の範囲
d:ガラスバルブ100の外径
e’:下側のステムガラス6b(支持部材)の上端から下側の遮光膜12(遮光手段)の上縁12aまでの距離
f:スポットライトにおけるレンズ300のバックフォーカス(fb)
g(θ):フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ(300a)径に対する有効入射角度
h:フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ(300a)の光源側の面から発光部9までの距離
i:発光部9の高さ
j’:発光部9の下端から下側の遮光膜12の上縁12aまでの距離
θ:スポットフォーカスポジションにおけるレンズ(300b)に対し支持部材の像が入射しない角度
【0018】
有効入射角度g(θ)は、フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ300aに対して有効に光が利用される範囲(レンズ300に入射する発光範囲)である。
【0019】
角度θは、スポットフォーカスポジションにおけるレンズ300bに対しステムガラス6a,6bの像が入射しない角度(遮光角度)である。
【0020】
cを前述の範囲に設定した理由は以下の通りである。
発光部9がレンズ300の焦点に位置した場合、像が形成される。さらに焦点が短くなる方向へ移動することにより虚像が形成される。ハレーションの原因となる部品(排気チップ4、上側のステムガラス6a、下側のステムガラス6b、封止部3など)の虚像が照射面に確認できる範囲が、レンズ300の焦点距離fから短くなる方向に10%まで、発光部9が移動した範囲である。よって、cを焦点距離f×0.9の範囲に設定した。
尚、この範囲cは、レンズの焦点距離やステムガラスの位置に影響されず、一定の数値になることを確認済みである。
【0021】
以上の条件を満たすことで、図2に示すように、複数のフィラメント5で構成された発光部9からの発光が、遮光角度θより外側にはみ出ることがない範囲で、且つ有効入射角度g(θ)を遮ることのない遮光領域の最適化を図って、光量の利用効率の低下も防止することができる。
遮光領域を形成するための遮光手段は、前記したように、ガラスバルブの頂部側,封止部側、封止部、排気チップに遮光膜を形成したり、遮光処理を施すことが通常行われる。これ以外にも、遮光性と所望の耐熱性を有するセラミック素材や金属などの材料で形成した被覆部材をガラスバルブに装着したり、これら材料でガラスバルブの遮光手段となる領域を成形するなど、各種の態様が考えられる。
【0022】
下側の遮光手段による遮光領域の範囲内に収まるように口金部を形成した場合、口金部に対する遮光がはたらき、口金部が像若しくは虚像として照射面に現われないため、より好ましい。
【0023】
また、下側の遮光手段は、口金部を兼用するよう形成することもできる。すなわち、ガラスバルブには前記した下側の遮光手段を形成せず、口金部を、下側の遮光手段として機能するよう(ガラスバルブの封止側を覆うよう)形成するなど、各種の態様が考えられる。その場合、口金部は、遮光性と所望の耐熱性を備えたセラミック素材や金属などで形成することができる。
【0024】
ところで、図1、図2ではスポットライトの単レンズとして平凸レンズを用いた場合を示したが、本発明はこれに限定されず、焦点距離が一定(固定)でハロゲン電球(光源)の像または虚像を利用する他の光学系レンズ、例えば、両凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、メニスカスレンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ、ハイベックスレンズ(ファインピッチレンズ)などを用いた場合でも、上記した本発明の条件は成り立つものである。
但し、レンズ裏面を荒らして像をぼかした効果を得ようとするレンズには必ずしも好適に用いられるものではない。すなわち、本発明は、平凸レンズ用スポットライトに用いた場合に最も効果的である。
尚、一般的な単レンズスポットライトに用いられる平凸レンズとして、外径3〜12インチのもの、フレネルレンズとして外径3〜16インチのものをあげることができる。
【0025】
次に、ガラスバルブの形状および発光部との関係を、バルブ周壁が像若しくは虚像として投影されない最適な条件に設定した点について説明する。
【0026】
スポットライト用のハロゲン電球において、ガラスバルブは、円筒形状(T型)、グローブチューブ形状(GST型)、楕円形状など、各種形状のものが存在するが、本発明においては、円筒形状のガラスバルブとすることが好ましい。
さらに、円筒形状のガラスバルブの周壁と、発光部の側端に位置するフィラメントとの離間寸法gを、3mm〜6mmの範囲とすることが好ましい。ここで、離間寸法gとは、発光部の側端に位置するフィラメントと、ガラスバルブ周壁における該フィラメントに最も近接する箇所との離間寸法を言う。
【0027】
ガラスバルブをグローブチューブ形状、楕円形状などにした場合、必然的にフィラメントとバルブ周壁との離間寸法gが大きくなり、フィラメントがバルブ周壁に映り込み照射面に不要な像若しくは虚像として投影され、ハレーションが生じる。
また、ガラスバルブの周壁と、発光部の側端に位置するフィラメントとの離間寸法gが6mmを超える場合、バルブ周壁の像若しくは虚像が照射面に投影され、ハレーションとなる。
【0028】
これに対し、前記離間寸法gが6mm以下である場合、バルブ周壁の像若しくは虚像が照射面に投影されず、ハレーションが低減される。
【0029】
このような現象に関する実測結果について以下説明する。図4、図5はハロゲン電球を用いたスポットライトで照射面に投影された像における、明暗の境界線の結像特性(edge spread function)に係る像強度分布を示すグラフであって、図3に示すように、ガラスバルブが円筒形状であるハロゲン電球の(X)−(X)線断面における線像強度分布を積分(集計)したものである。
【0030】
図4は、前記離間寸法gが6mm以下の場合の像強度分布である。フィラメントの像強度分布kとバルブ周壁の像強度分布mが、積分した値nの連続するカーブになっている。すなわち明暗の境界線がなくなっていることが分かる。
一方、図5は、前記離間寸法gが6mmを超える場合の像強度分布である。この場合、フィラメントとバルブ周壁の離間寸法が、図4の場合より大きいことにより、積分値nがもうひとつの山を形成している。これは、発光部を形成するフィラメントの像のほかに、ガラスバルブの像が別に照射面に投影され、ハレーションとして視認されることを示す。
【発明の効果】
【0031】
本発明は以上説明したように構成したので、光量の利用効率が低下することなく、好適な遮光領域を形成し得るハロゲン電球として提供することができ、スポットライト、特に単レンズスポットライトに具備することにより、焦点および焦点近傍に位置したときにおいて、フィラメント(発光部)による所望の像または虚像のみが照射面に投影されるので、高いハレーションレス効果が達成できるなど、多くの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るハロゲン電球を内装したスポットライトの一例を示す。このスポットライトAは、灯体10内に、光源としてのハロゲン電球100、反射板(リフレクタ)200、単レンズとしての平凸レンズ300を配設すると共に、反射板200と共にハロゲン電球100を光軸Lに沿って前後摺動させる位置調整機構400を備えた一般的な構成のもので、位置調整機構400の操作により、ハロゲン電球100を、フラッドフォーカスポジション(図中100aの位置)からスポットフォーカスポジション(図中100bの位置)まで任意に移動させ、照射面に照射される投光を、狭い範囲の投光(スポット光)から広い範囲の投光(フラッド光)まで、任意に調整できるようになっている。
図2に、本例のハロゲン電球100を拡大して示すと共に、フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ300a、スポットフォーカスポジションにおけるレンズ300bとの関係を示す。
【0033】
本例におけるハロゲン電球100は、ガラスバルブ2が円筒形状であること、該ガラスバルブ2の頂部側,封止部側に遮光膜11,12を備えたこと、口金部1の形状を後述のごとく変更すること以外は、図7で説明した一般的なハロゲン電球と基本的構成を同様とする。よって、図中に前記と同一の符号を付すなどして重複する説明を省略し、特徴点のみ、図1及び図2などを参照しながら以下に述べる。
【0034】
すなわち、本例のハロゲン電球100は、ガラスバルブ2における排気チップ4が設けられた頂部側に上側の遮光膜11が形成されており、この遮光膜11は、下記式1乃至式5の条件を満たすように形成されている。
【0035】
【数3】

【0036】
該式1乃至式5中において、aはスポットライトAにおけるレンズ300の直径(レンズ径)、bはハロゲン電球100における発光部9の中心pから上側のステムガラス6aの下端までの距離、cはレンズ300の焦点距離f×0.9の範囲、dはガラスバルブ100の外径、eは上側のステムガラス6aの下端から上側の遮光膜11の下縁11aまでの距離、fはスポットライトAにおけるレンズ300のバックフォーカス(fb)、g(θ)はフラッドフォーカスポジションにおけるレンズ(図中に仮想線300aで示す)に対する有効入射角度、hはフラッドフォーカスポジションにおけるレンズ(300a)の光源側の面から発光部までの距離、iは発光部9の高さ、jは発光部9の上端から上側の遮光膜11の下縁11aまでの距離、θはスポットフォーカスポジションにおけるレンズ(図中に実線300bで示す)に対してステムガラス6a,6bの像が入射しない角度(遮光角度)を表す。
【0037】
上側の遮光膜11をこのような条件で形成することで、光量の利用効率の低下を招くことなく、排気チップ4、上側のステムガラス6aの、像若しくは虚像が照射面に投影されること(ハレーション)を可及的に防止することができる。
【0038】
また、本例のハロゲン電球100は、ガラスバルブ2における口金部1への固定側となる封止部側に下側の遮光膜12が形成されており、この遮光膜12は、下記式6乃至式10の条件を満たすように形成されている。
【0039】
【数4】

【0040】
該式6乃至10中において、b’はハロゲン電球100における発光部9の中心pから下側のステムガラス6bの上端までの距離、e’は下側のステムガラス6bの上端から下側の遮光膜12の上縁12aまでの距離、j’は発光部9の下端から下側の遮光膜12の上縁12aまでの距離をそれぞれ表し、それ以外は前記式1乃至式5と同一である。
【0041】
下側の遮光膜12をこのような条件で形成することで、光量の利用効率の低下を招くことなく、少なくとも、下側のステムガラス6bの、像若しくは虚像が照射面に投影されること(ハレーション)を可及的に防止することができる。
【0042】
図示のように、下側の遮光膜12による遮光領域の範囲内に収まる形状に口金部1を形成することで、発光部9(フィラメント5)からの光が遮光膜12により遮られ、口金部1での乱反射を防いで、口金部1に係るハレーションを防止することができる。
【0043】
また、本例のハロゲン電球100は、ガラスバルブ2の周壁2aと、発光部9の側端に位置するフィラメント5’との離間寸法gを、6mm以下としている。離間寸法gは、発光部9の側端に位置するフィラメント5’と、ガラスバルブ周壁2aにおける該フィラメント5’に最も近接する箇所との間の寸法である。
このように、円筒形状(直管形状)のガラスバルブにおいて、前記離間寸法gが6mm以下である場合、前述した理由から、バルブ周壁2aの像若しくは虚像が照射面に投影されず、ハレーションが低減される。
【0044】
以下、口金部1について説明する。本例において口金部1は、遮光性と耐熱性を備えたセラミック素材又は金属からなり、その形状は前述したように、下側の遮光膜12による遮光領域の範囲内に収まるよう、ガラスバルブ2とは別体に形成されている。この口金部1の上面に、円筒形状のガラスバルブ2の下端を板状に成形した封止部3が固定されている。封止部3は、ガラスバルブ2の遮光膜11,12と同一材料(例えば、遮光性、耐熱性を有する材料からなる塗料など)からなる遮光膜で表面全域を覆われていて、これにより、封止部3の像若しくは虚像が照射面に投影されずハレーションが低減されるようになっている。
【0045】
図6に口金部を変更した例を示す。この例では、前述した上側の遮光膜11のみを備えた円筒形状のガラスバルブ2の封止部側に、該封止部側が入り込む凹部1aを備えた口金部1’を設け、前述した下側のステムガラス6bと封止部3をこの口金部1’で覆っている。この口金部1’は、前述したセラミック素材や金属などで形成され、発光部9(フィラメント5)に近接する上端面13に、低反射のための着色を施し、且つ、その上縁部分を上方に延長させたもので、該延長部分14を、前記式6乃至式10の条件を満たすよう形成することで、前述した下側の遮光膜12の機能を果たしている。
【0046】
以下、本発明に係るハロゲン電球のハレーション防止効果を確認した試験結果について説明する。
図1〜図3で説明したハロゲン電球において、上側の遮光膜11、下側の遮光膜12、ガラスバルブ2の形状、ガラスバルブ2の周壁2aと発光部9の側端に位置するフィラメント5’との離間寸法gの各条件を以下のように設定した試験品1〜7を用いた。
【0047】
【表1】

【0048】
表中記載の各条件は、上側又は下側の遮光膜11,12の有無、これら遮光膜が有る場合であって本発明で規定する条件を満たしている場合(最適条件内),満たしていない場合(最適条件外)、ガラスバルブの形状(円筒形状又は球形状)、前記離間寸法gが6mmを超える場合(最適範囲外),6mm以下の場合(最適範囲内)である。
【0049】
これら試験品を、図1に示すような、同一の単レンズスポットライトに装着し、同一の投射条件により、照射面に対するハレーションの有無を目視により確認した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
次に、本発明に係るハロゲン電球の光量の利用効率の低下防止効果を確認した試験結果について説明する。
図1〜図3で説明したハロゲン電球として、前述した試験品No.7を用い、発光部9から10000ルーメン(lm)の光束が出たときの、スポットフォーカスポジションおけるレンズ300aに入射する光束量(lm)を測定したところ、1656(lm)であることが確認できた。同様に、フラッドフォーカスポジションおけるレンズ300bに入射する光束量(lm)を測定したところ、4521(lm)であることが確認できた。
これに対し、前述した試験品No.7において上側の遮光膜と下側の遮光膜のない物を用いて同様の試験を行ったところ、スポットフォーカスポジションおけるレンズ300aに入射する光束量(lm)は1656(lm)であり、フラッドフォーカスポジションおけるレンズ300bに入射する光束量(lm)は4523(lm)であり、光量の利用効率がほぼ同じであることが確認できた。
【0052】
以上の結果から、本発明に係るハロゲン電球の前述した優位性を確認することができた。
以上、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明したが、本発明は図示例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態の一例を示すスポットライトの簡略断面図。
【図2】ガラスバルブに形成した遮光手段の形成条件を示す簡略側面図。
【図3】ガラスバルブとフィラメントの位置関係を示す簡略斜視図。
【図4】図3に係るガラスバルブ周壁とフィラメントの離間寸法gが6mm以下で、このガラスバルブによるハロゲン電球を用いたスポットライトで照射面に投影された像における、明暗の境界線の像強度分布を示し、図3の(X)−(X)線断面における線像強度分布を積分したグラフ。
【図5】図3に係るガラスバルブ周壁とフィラメントの離間寸法gが6mmを越え、このガラスバルブによるハロゲン電球を用いたスポットライトで照射面に投影された像における、明暗の境界線の像強度分布を示し、図3の(X)−(X)線断面における線像強度分布を積分したグラフ。
【図6】本発明の実施形態の他例を示すハロゲン電球の簡略斜視図。
【図7】一般的なハロゲン電球を示す正面図。
【符号の説明】
【0054】
A:スポットライト
100:ハロゲン電球
1:口金部
2:ガラスバルブ
3:封止部
4:排気チップ
5:フィラメント
6a,6b:ステムガラス(支持部材)
7a,7b:内部端子
8a,8b:外部端子
9:発光部
10:灯体
11,12:遮光膜(遮光手段)
200:リフレクタ(反射板)
300:レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、外部端子を有する口金部と、該口金部に固定された密閉状のガラスバルブと、前記ガラスバルブ内に封入された複数のフィラメントからなる発光部と、前記ガラスバルブ内において前記発光部の上下に配設され前記複数のフィラメントを前記ガラスバルブのバルブ軸と並行になるよう並列状に固定する上下の支持部材と、を備え、
前記ガラスバルブにおける排気チップが設けられた頂部側に、前記排気チップと前記上側の支持部材の像が照射面に投影されることを防止する上側の遮光手段が形成されたハロゲン電球であって、
前記上側の遮光手段が、下記式1乃至式5の条件を満たすよう形成されていることを特徴とするスポットライト用ハロゲン電球。
【数1】


但し、上記式中、
a:スポットライトにおけるレンズ径
b:発光部の中心から上側の支持部材の下端までの距離
c:スポットライトにおけるレンズの焦点距離f×0.9の範囲
d:ガラスバルブの外径
e:上側の支持部材の下端から上側の遮光手段の下縁までの距離
f:スポットライトにおけるレンズのバックフォーカス(fb)
g:フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ径に対する有効入射角度
h:フラッドフォーカスポジションにおけるレンズの光源側の面から発光部までの距離
i:発光部の高さ
j:発光部の上端から上側の遮光手段の下縁までの距離
θ:スポットフォーカスポジションにおけるレンズに対し支持部材の像が入射しない角度
【請求項2】
前記ガラスバルブにおける前記口金部への固定側となる封止部側に、少なくとも、前記下側の支持部材の像が照射面に投影されることを防止する下側の遮光手段がさらに形成されているハロゲン電球であって、
前記下側の遮光手段が、下記式6乃至式10の条件を満たすよう形成されていることを特徴とする請求項1記載のスポットライト用ハロゲン電球。
【数2】


但し、上記式中、
a:スポットライトにおけるレンズ径
b’:発光部の中心から下側の支持部材の上端までの距離
c:スポットライトにおけるレンズの焦点距離f×0.9の範囲
d:ガラスバルブの外径
e’:下側の支持部材の上端から下側の遮光手段の上縁までの距離
f:スポットライトにおけるレンズのバックフォーカス(fb)
g:フラッドフォーカスポジションにおけるレンズ径に対する有効入射角度
h:フラッドフォーカスポジションにおけるレンズの光源側の面から発光部までの距離
i:発光部の高さ
j’:発光部の下端から下側の遮光手段の上縁までの距離
θ:スポットフォーカスポジションにおけるレンズに対し支持部材の像が入射しない角度
【請求項3】
前記ガラスバルブが円筒形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のスポットライト用ハロゲン電球。
【請求項4】
前記発光部の側端に位置するフィラメントと、前記ガラスバルブの周壁における該フィラメントに最も近接する箇所との離間寸法(g)を、3mm〜6mmの範囲としたことを特徴とする請求項3に記載のスポットライト用ハロゲン電球。
【請求項5】
単レンズスポットライトの灯体内に装着され、単レンズに対する位置調整により、投光の集光度を、フラッドフォーカスポジションからスポットフォーカスポジションの間で変化させて演出照明を行うために用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスポットライト用ハロゲン電球。
【請求項6】
灯体内に、請求項1〜5のいずれかに記載のハロゲン電球を装着してなるスポットライト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−123746(P2008−123746A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304032(P2006−304032)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390032573)丸茂電機株式会社 (17)
【Fターム(参考)】