説明

スラッジの乾燥方法及び乾燥装置

【課題】スラッジの乾燥方法において、乾燥後のスラッジの処理費用削減を図りながら、該スラッジのハンドリングを容易に行うことができるようにする。
【解決手段】水分を含むスラッジを容器3内に投入するスラッジ投入工程と、容器3内において水分を蒸発させてスラッジを乾燥させる乾燥処理工程と、乾燥されたスラッジを容器3から排出するスラッジ排出工程とを備え、スラッジ投入工程の前後において、容器3の重量を計測して乾燥前のスラッジの重量を演算し、乾燥処理工程において、容器3の重量を連続的に計測して乾燥途中のスラッジの重量を演算すると共に、乾燥前及び乾燥途中のスラッジの重量に基づいてスラッジに含まれる水分を演算し、該水分の演算結果に基づいて前記乾燥処理工程を終了させるスラッジの乾燥方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水分を多く含む食品や薬品、産業廃棄物等のスラッジを乾燥させるスラッジの乾燥方法及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水分を多く含んだスラッジを乾燥させる装置として、例えば特許文献1,2に示されるような乾燥装置が提供されている。この種の乾燥装置においては、スラッジに含まれる水分を減らすことでスラッジの減量を図っている。
【特許文献1】特開2003−279250号公報
【特許文献2】特開2003−172580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の乾燥装置において、スラッジを過剰に乾燥させた場合には、スラッジに含まれる微粉末のものが粉塵となって舞い上がるため、乾燥処理を完了したスラッジの運搬作業や埋め立て作業等のハンドリングが面倒になるという問題がある。すなわち、例えば、スラッジがカルシウム系或いは金属粉末を含む無機系のものである場合には、水分が30〜40%WB程度以下となるようにスラッジを乾燥させると、上記微粉末が舞い上がることになる。
そして、従来の乾燥装置では、乾燥処理の途中でスラッジの水分を直接計測する方法が無いため、上記ハンドリングにちょうど良い水分とすることが困難となっている。
【0004】
以上のことから、従来では、上記微粉末が舞い上がらないように、水分を多く含んだ状態でスラッジの乾燥処理を終えている。例えば、スラッジがカルシウム系或いは金属粉末を含む無機系のものである場合には、スラッジの水分を60〜80%WB程度として乾燥処理を終了している。このため、乾燥処理を終えたスラッジの重量が重くなり、運搬費用等のスラッジの処理費用が高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑み、乾燥後のスラッジの処理費用削減を図りながら、該スラッジのハンドリングが容易となるスラッジの乾燥方法及び乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、水分を含むスラッジを容器内に投入するスラッジ投入工程と、前記容器内において前記水分を蒸発させて前記スラッジを乾燥させる乾燥処理工程と、乾燥された前記スラッジを前記容器から排出するスラッジ排出工程とを備えるスラッジの乾燥方法であって、前記スラッジ投入工程の前後において、前記容器の重量を計測して乾燥前の前記スラッジの重量を演算し、前記乾燥処理工程において、前記容器の重量を連続的に計測して乾燥途中の前記スラッジの重量を演算すると共に、前記乾燥前及び前記乾燥途中のスラッジの重量に基づいて前記スラッジに含まれる水分を演算し、該水分の演算結果に基づいて前記乾燥処理工程を終了させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスラッジの乾燥方法に使用する乾燥装置であって、前記容器に、前記乾燥処理工程において前記スラッジを乾燥させる乾燥手段が設けられ、前記容器が、その重量を計測する計量手段上に載置されていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係るスラッジの乾燥方法及び乾燥装置によれば、乾燥処理工程において乾燥途中のスラッジに含まれる水分を連続的に演算することで、演算された水分がスラッジに含まれる微粉末を粉塵として舞い上がらせない最小限の水分と同等になった際に、乾燥処理工程を終了させることができる。すなわち、上記微粉末を粉塵として舞い上がらせない程度の適正な水分を乾燥後のスラッジに含ませながら、このスラッジの重量を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乾燥されたスラッジには微粉末を粉塵として舞い上がらせない適正な水分を含ませることができるため、乾燥されたスラッジの運搬作業や埋め立て作業等のハンドリングが容易となる。また、乾燥されたスラッジの重量を最小限に抑えることが可能となるため、運搬費用等のスラッジの処理費用を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1を参照して本発明の一実施形態に係る乾燥装置及びスラッジの乾燥方法について説明する。図1に示すように、本実施形態の乾燥装置1は、略円筒状の容器3と、容器3に対して回転自在に配置された攪拌ロータ5と、攪拌ロータ5を駆動するモータ7と、容器3及びモータ7を載置するロードセル(計量手段)9とを備えている。
容器3は、その軸線L1方向が横向きとなるように配されている。この容器3の上部には、水分を含むスラッジを容器3内に投入するための投入口11、及び、真空装置(不図示)に接続されるバグフィルタ13が設けられている。また、容器3の下部には、乾燥されたスラッジを容器3から排出する排出口15が設けられている。
【0011】
バグフィルタ13は、スラッジから蒸発した水分を容器3から排出すると共に、スラッジから発生して舞い上がる微粉末を回収して容器3内に戻すように構成されている。
また、この容器3の外周全体にはジャケット(不図示)が設けられており、このジャケット内には高温水蒸気等の熱媒を循環させることができるようになっている。すなわち、ジャケット内に熱媒を循環させることで、容器3内を加熱できるようになっている。
攪拌ロータ5は、容器3の軸線L1方向に貫通して容器3の両端で軸支された回転軸17と、回転軸17からその径方向外方に突出する複数の攪拌羽根19とにより構成されている。
【0012】
回転軸17は、伝達機構21を介してモータ7に連結されている。なお、伝達機構21としては、従来公知のものでよく、例えば図示のように、回転軸17に取り付けたプーリ23とモータ7の駆動軸に取り付けたプーリ25との間にベルト27を巻回したものから構成されるとしてもよい。複数の攪拌羽根19は、回転軸17の回転に伴って容器3内に投入されたスラッジを攪拌するものである。
また、この攪拌ロータ5は、回転軸17や攪拌羽根19の内部に高温水蒸気等の熱媒を循環させるように構成されており、攪拌ロータ5内に熱媒を循環させることで容器3内を加熱させることができるようになっている。すなわち、ジャケット、攪拌ロータ5、及びこれらの内部に循環される熱媒によって、容器3内に投入されたスラッジを加熱する加熱手段が構成されることになる。
【0013】
さらに、上述したように、攪拌ロータ5の複数の攪拌羽根19によりスラッジを攪拌することで、上記加熱手段によるスラッジの加熱を均等に行うことができるため、上述した加熱手段及び攪拌ロータ5によりスラッジを均等に乾燥させる乾燥手段が構成されることになる。
ロードセル9は、攪拌ロータ5を含む容器3やモータ7等、上述した全ての構成の総重量を計測するように構成されている。
また、この乾燥装置1には、上記ロードセル9によって計測された上記総重量に応じて、攪拌ロータ5の回転及びジャケット内や攪拌ロータ5内の熱媒の循環を停止させる制御手段(不図示)が設けられている。この制御手段の具体的な役割は後述する乾燥装置1の動作において述べる。
【0014】
以上のように構成された乾燥装置1を使用したスラッジの乾燥方法について以下に説明する。
スラッジを乾燥させる際には、予めバグフィルタ13に接続された真空装置により容器3内を減圧すると共に攪拌ロータ5を回転させておく。そして、この状態において、水分を含むスラッジを投入口11から容器3内に投入するスラッジ投入工程を行う。
なお、このスラッジ投入工程の前後においては、ロードセル9により上記スラッジの投入前後における総重量が計測され、制御手段は、これら投入前後の総重量に基づいて上記スラッジの重量を演算する。
【0015】
次いで、水分を蒸発させてスラッジを乾燥させる乾燥処理工程を行う。この乾燥処理工程においては、ジャケット内及び攪拌ロータ5内に熱媒を循環させて容器3内のスラッジを加熱し、スラッジの水分を蒸発させる。蒸発した水分はバグフィルタ13を介して容器3から排出される。
また、この乾燥処理工程においては、ロードセル9により総重量が連続的に計測され、制御手段は、この総重量に基づいて乾燥途中のスラッジの重量を演算すると共に、乾燥前及び乾燥途中のスラッジの重量に基づいてスラッジに含まれる水分を演算する。なお、乾燥途中のスラッジの重量は、ジャケット内及び攪拌ロータ5内を循環する熱媒の重量を加味して演算される。
【0016】
そして、制御手段は、演算された水分が、スラッジに含まれる微粉末を粉塵として舞い上がらせない最小限の水分と同等であるか否かを判断する。ここで、演算された水分が最小限の水分よりも多い場合には、乾燥処理工程を継続すると共に、再び乾燥途中のスラッジに含まれる水分を演算する。そして、演算された水分が最小限の水分と同等となった場合には、制御手段が攪拌ロータ5の回転及びジャケット内や攪拌ロータ5内の熱媒の循環を停止させる、すなわち、乾燥処理工程を終了させる。
最後に、排出口15を介して乾燥されたスラッジを容器3から排出するスラッジ排出工程を行うことで、スラッジの乾燥が完了する。
【0017】
上述したように、この実施形態に係る乾燥装置1及びスラッジの乾燥方法によれば、乾燥処理工程において乾燥途中のスラッジに含まれる水分を演算することで、スラッジに含まれる微粉末を粉塵として舞い上がらせない程度の適正な水分を乾燥後のスラッジに含ませることができる。したがって、乾燥されたスラッジの運搬作業や埋め立て作業等のハンドリングが容易となる。
そして、乾燥されたスラッジに含まれる水分を最小限にすることで、乾燥されたスラッジの重量を最小限に抑えることが可能となるため、運搬費用等のスラッジの処理費用を大幅に削減することができる。例えば、スラッジに含まれる水分が30%WB未満となると微粉末が粉塵として舞い上がるスラッジの場合、従来では上記水分を80%WBの状態でスラッジを容器3から排出していたものを、上記水分を30%WBまで乾燥させることができる。この場合には、容器3から排出されるスラッジの重量を1.4/5に減量することができる。
【0018】
なお、上述した実施形態において、ロードセル9は、容器3やモータ7等の総重量を計測するように配置されるとしたが、これに限ることはなく、少なくともスラッジを投入する容器3の重量のみを計測するように配置されていればよい。
また、加熱手段は、ジャケット内や攪拌ロータ5内に高温水蒸気等の熱媒を循環させて構成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも容器3の内部を加熱できるように構成されていればよい。
【0019】
さらに、上記実施形態のスラッジの乾燥方法においては、乾燥途中のスラッジに含まれる水分が、微粉末を粉塵として舞い上がらせない最小限の水分となった際に乾燥処理工程を終了させるとしたが、これに限ることはなく、例えば、最小限の水分よりも多く、かつ、乾燥前のスラッジに含まれる水分よりも少ない範囲で乾燥処理工程を終了させても構わない。
また、乾燥装置1を構成する攪拌羽根19は、回転軸17の周面から直接突出して形成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも容器3内に投入されたスラッジを攪拌する役割を果たしていればよい。すなわち、攪拌羽根は、例えば、回転軸17の周面から径方向外方に突出する棒状のアームの先端に、羽根としての板状部材を取り付けてパドル状に構成されるとしてもよい。また、攪拌羽根は、例えば、回転軸17の周面に固定されて径方向外方に突出する円環状のディスクの先端部分に、羽根としての微小な板状部材を複数取り付けて構成されるとしても構わない。
【0020】
さらに、上記実施形態においては、攪拌機能及び減圧機能を備えた乾燥装置1について述べたが、これに限ることはなく、少なくともスラッジを乾燥させる乾燥手段を備えた乾燥装置に適用することができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る乾燥装置を示す一部切り欠き側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 乾燥装置
3 容器
9 ロードセル(計量手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含むスラッジを容器内に投入するスラッジ投入工程と、
前記容器内において前記水分を蒸発させて前記スラッジを乾燥させる乾燥処理工程と、
乾燥された前記スラッジを前記容器から排出するスラッジ排出工程とを備えるスラッジの乾燥方法であって、
前記スラッジ投入工程の前後において、前記容器の重量を計測して乾燥前の前記スラッジの重量を演算し、
前記乾燥処理工程において、前記容器の重量を連続的に計測して乾燥途中の前記スラッジの重量を演算すると共に、前記乾燥前及び前記乾燥途中のスラッジの重量に基づいて前記スラッジに含まれる水分を演算し、
該水分の演算結果に基づいて前記乾燥処理工程を終了させることを特徴とするスラッジの乾燥方法。
【請求項2】
請求項1に記載のスラッジの乾燥方法に使用する乾燥装置であって、
前記容器に、前記乾燥処理工程において前記スラッジを乾燥させる乾燥手段が設けられ、
前記容器が、その重量を計測する計量手段上に載置されていることを特徴とする乾燥装置。


【図1】
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【公開番号】特開2007−303712(P2007−303712A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131279(P2006−131279)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】