説明

スリーブの挿入装置及びその方法

【課題】スリーブの軸方向中心位置と金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置を一致させるスリーブの挿入装置及びその方法を提供する。
【解決手段】スリーブの挿入装置10は、走行台車18の位置検出器19と、走行台車18に載置されたスリーブ17の先端、後端を検出するスリーブ通過検出器20と、スリーブ17の後端を検出してからスリーブ17の軸方向中心Oが搬送ラインの幅方向中心位置Tに一致して停止するまでの目標停止距離を演算する目標位置演算部22と、走行台車18の目標停止距離からの停止位置ずれ量B及びスリーブ17がマンドレル15に挿入された際のスリーブ17のサドル16に対するずれ量Aから軸方向中心位置Oと幅方向中心位置Tとの中心位置ずれ量A−Bを求めるずれ量調節部24と、マンドレル15を中心位置ずれ量A−Bだけ移動させて軸方向中心位置Oと幅方向中心位置Tとを一致させる操作部60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取る際に、鋼板巻取り装置のマンドレルに予め挿入するスリーブの挿入装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取って形成したコイルの搬送を容易にすると共に、コイル内側部分及びコイル端部の当て疵を防止するために、鋼製のスリーブを鋼板巻取り装置のマンドレルに予め装着しておき、このスリーブの周面に金属ストリップを巻き付けてコイル状に巻き取ることが行われている。このとき、スリーブの軸方向長さを金属ストリップの幅方向長さより長くして、スリーブの両端をコイルの端部から外側に突出させる必要がある。そこで、金属ストリップの鋼鈑巻取り装置において、鋼鈑巻取り装置のマンドレルに装着したスリーブの軸方向中心位置を算出し、このスリーブの軸方向中心位置を金属ストリップの幅方向中心位置と一致させて、スリーブに金属ストリップを巻き付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3982330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属ストリップをコイル状に巻き取る際に使用するスリーブは、繰返し使用するため変形して、断面形状は真円ではない。また、スリーブの外径のバラツキ等により、スリーブの内周面とマンドレルの外周面との隙間の距離が、想定されている距離より小さくなることがある。このため、鋼板巻取り装置のマンドレルに向けて、スリーブを載置した走行台車を移動する際に、スリーブ通過検出器と台車位置検出器によりスリーブの軸方向位置と、金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置(金属ストリップの幅方向中心位置ともなる)を一致させる特許文献1の方法では、スリーブの挿入途中でスリーブの内周面とマンドレルの外周面が接触した場合、スリーブが走行台車上でずれてしまい、スリーブのマンドレルへの挿入が完了した時点でスリーブの軸方向中心位置と搬送ラインの幅方向中心位置を一致させることができないという問題が生じる。更に、走行台車上でスリーブが大幅にずれると、スリーブが走行台車から落下する恐れもある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、スリーブが走行台車上でずれてもスリーブの軸方向中心位置と金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置を一致させることができ、スリーブが大幅にずれた場合は走行台車を停止させて落下を防止することが可能なスリーブの挿入装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るスリーブの挿入装置は、鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取る際に、前記金属ストリップの搬送ラインに平面視して直交させて設けた走行経路上の待機位置から、前記鋼板巻取り装置のマンドレルに向けて該走行経路上を走行し、サドルを介してその軸方向を前記走行経路に沿わせて載置した鉄製のスリーブを前記マンドレルに挿入する走行台車を備えたスリーブの挿入装置において、
前記走行台車に設けられ、前記待機位置に対する該走行台車の位置を測定する位置検出器と、
前記走行経路に対向させて設置され、前記スリーブの先端及び後端が前記搬送ラインの幅方向中心位置から前記待機位置側に一定距離L離れた前記走行経路上の基準位置をそれぞれ通過したことを検出するスリーブ通過検出器と、
前記スリーブの先端及び後端がそれぞれ前記基準位置を通過するときの前記位置検出器の出力に基づいて、前記スリーブの後端が前記基準位置を通過してから、前記スリーブの軸方向中心が前記搬送ラインの幅方向中心位置に一致して停止する際の前記走行台車の目標停止距離を演算する目標位置演算部と、
前記走行台車が停止した際の前記位置検出器の出力から該走行台車の前記待機位置に対する位置を算出して前記目標停止距離に対する該走行台車の停止位置ずれを求めると共に、前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了するまでに生じた該スリーブの前記サドルに対するずれ量を該サドルに内蔵したスリーブずれ検出手段により測定し、前記マンドレルに挿入された前記スリーブの軸方向中心位置と前記搬送ラインの幅方向中心位置との中心位置ずれ量を算出するずれ量調節部と、
前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了した後に前記サドルを前記スリーブから離脱させ、前記マンドレルを前記中心位置ずれ量に相当する距離だけ前記鋼板巻取り装置の巻取り軸方向に移動させて前記スリーブの軸方向中心位置と前記金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置とを一致させる操作部とを有している。
【0007】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置において、前記スリーブずれ検出手段は、前記サドルに載置された前記スリーブの側部に磁着する磁石と、前記磁石を保持するホルダと、前記ホルダを支持して前記スリーブの軸方向に沿って移動可能なハウジングと、前記ハウジングの前記待機位置側の端部に設けられた第1のワイヤと、前記第1のワイヤの巻取り長さの測定が可能なずれ量検出器と、前記ハウジングの前記マンドレル側の端部に設けられた第2のワイヤと、前記第2のワイヤの先部に接続され、前記ハウジングを前記サドル内で前記マンドレル側に付勢するカウンターウエイトと、前記サドルに取付けられ、付勢された前記ハウジングに当接して該サドル内での該ハウジングの位置決めを行うストッパー部材とを有することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置において、前記ハウジングは、前記走行経路の方向に沿って前記サドル内に設けられたスライドレール上を走行するスライドブロックに載置されていることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置において、前記スリーブを前記マンドレルに挿入中に、前記サドルに対する該スリーブのずれ量が予め設定された許容量を超えた際に前記走行台車を停止する台車停止部を有することが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係るスリーブの挿入方法は、鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取る際に、前記金属ストリップの搬送ラインに平面視して直交させて設けた走行経路上の待機位置にあって、サドルを介して鉄製のスリーブを該スリーブの軸方向を前記走行経路に沿わせて載置している走行台車を前記鋼板巻取り装置のマンドレルに向けて該走行経路上を走行させて、前記スリーブを該マンドレルに挿入するスリーブの挿入方法において、
前記走行経路に対向させて設置したスリーブ通過検出器で、前記スリーブの先端及び後端が前記搬送ラインの幅方向中心位置から前記待機位置側に一定距離L離れた前記走行経路上の基準位置をそれぞれ通過したことを検出して、前記スリーブの先端及び後端がそれぞれ該基準位置を通過するときの前記走行台車の前記待機位置に対する位置を求める第1の工程と、
前記スリーブの後端が前記基準位置を通過してから、前記スリーブの軸方向中心が前記搬送ラインの幅方向中心位置に一致するまでに移動する距離を求めて、前記走行台車の目標停止距離とする第2の工程と、
前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了して前記走行台車が停止したときの位置を測定して前記目標停止距離に対する該走行台車の停止位置ずれを求めると共に、前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了するまでに生じた前記サドルに対する該スリーブのずれ量を該サドルに内蔵したスリーブずれ検出手段により測定し、前記マンドレルに挿入された前記スリーブの軸方向中心位置と前記搬送ラインの幅方向中心位置との中心位置ずれ量を算出する第3の工程と、
前記サドルを前記スリーブから離脱させ、前記中心位置ずれ量に相当する距離だけ前記マンドレルを前記鋼板巻取り装置の巻取り軸方向に移動させて前記スリーブの軸方向中心位置と前記金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置とを一致させる第4の工程とを有する。
【0011】
第2の発明に係るスリーブの挿入方法において、前記第3の工程で、前記スリーブを前記マンドレルに挿入中に、前記サドルに対する該スリーブのずれ量が予め設定された許容量を超えた際に前記走行台車を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置及び第2の発明に係るスリーブの挿入方法においては、走行台車のサドル上に載置したスリーブをマンドレルに挿入する際に、スリーブが走行台車(サドル)上でずれた状態でマンドレルに挿入されても、スリーブが挿入されたマンドレルをずらせてスリーブの軸方向中心位置と金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置とを一致させるので、スリーブの軸方向長さを金属ストリップの幅方向長さより長くしておくと、鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取ってコイルを形成した場合、スリーブの両端をコイルの端部から外側に突出させることができる。これにより、コイルの搬送が容易になると共に、コイル内側部分及びコイル端部に発生する当て疵を防止することができる。
【0013】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置において、スリーブずれ検出手段が、サドルに載置されたスリーブの側部に磁着する磁石と、磁石を保持するホルダと、ホルダを支持してスリーブの軸方向に沿って移動可能なハウジングと、ハウジングの待機位置側の端部に設けられた第1のワイヤと、第1のワイヤの巻取り長さの測定が可能なずれ量検出器と、ハウジングのマンドレル側の端部に設けられた第2のワイヤと、第2のワイヤの先部に接続され、ハウジングをサドル内でマンドレル側に付勢するカウンターウエイトと、サドルに取付けられ、付勢されたハウジングに当接してサドル内でのハウジングの位置決めを行うストッパー部材とを有する場合、スリーブをサドルに載置する際のサドル内でのハウジングの初期位置を常に一定位置にすることができると共に、サドル上でのスリーブのずれ(移動)を妨げないでそのずれ量を容易に測定することができる。
【0014】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置において、ハウジングが、走行経路の方向に沿ってサドル内に設けられたスライドレール上を走行するスライドブロックに取付けられている場合、ハウジングをスリーブと共に容易に移動させることができる。
【0015】
第1の発明に係るスリーブの挿入装置において、スリーブをマンドレルに挿入中に、サドルに対するスリーブのずれ量が予め設定された許容量を超えた際に走行台車を停止する台車停止部が設けられている場合、第2の発明に係るスリーブの挿入方法において、第3の工程で、スリーブをマンドレルに挿入中に、サドルに対するスリーブのずれ量が予め設定された許容量を超えた際に走行台車を停止する場合、スリーブがサドルから落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスリーブの挿入装置の説明図である。
【図2】同スリーブの挿入装置の制御ブロック図である。
【図3】スリーブずれ検出手段の説明図である。
【図4】スリーブずれ検出手段の要部の平面図である。
【図5】スリーブずれ検出手段の要部の側面図である。
【図6】スリーブずれ検出手段の要部の正面図である。
【図7】(A)〜(D)は本発明の一実施の形態に係るスリーブの挿入方法を示す平面図である。
【図8】(A)、(B)は同スリーブの挿入方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係るスリーブの挿入装置(以下、スリーブ挿入装置ともいう)10は、鋼板巻取り装置11を用いて金属ストリップ(図示せず)をコイル状に巻き取る際に、金属ストリップの搬送ラインに平面視して直交させて設けた対となる走行レール12、13を備えた走行経路14上の待機位置から、鋼板巻取り装置11のマンドレル15に向けて走行経路14上を走行し、サドル16を介してその軸方向を走行経路14に沿わせて載置した鉄製のスリーブ17をマンドレル15に挿入する走行台車18を備えている。
【0018】
そして、スリーブ挿入装置10は、走行台車18に設けられ、走行中の走行台車18の待機位置に対する位置を測定する位置検出器19を有している。また、スリーブ挿入装置10は、走行経路14に対向させて設置され、スリーブ17の先端及び後端が搬送ラインの幅方向中心位置Tから待機位置側に一定距離L離れた走行経路14上の基準位置Rをそれぞれ通過したことを検出するスリーブ通過検出器20と、位置検出器19からの出力に基づいて、すなわち、スリーブ17の先端及び後端がそれぞれ基準位置Rを通過するときの走行台車18の待機位置に対する位置から、待機位置に対するスリーブ17の軸方向中心位置Oを求め、スリーブ17の後端が基準位置Rを通過してから、スリーブ17の軸方向中心位置Oが搬送ラインの幅方向中心位置Tに一致して停止する際の走行台車18の目標停止距離S(図7(C)参照)を演算する目標位置演算部22とを有している。
【0019】
更に、スリーブ挿入装置10は、走行台車18が停止した際の位置検出器19の出力から走行台車18の待機位置に対する位置を算出して目標停止距離Sに対する走行台車18の停止位置ずれB(図8(A)参照)を求めると共に、スリーブ17のマンドレル15への挿入が完了するまでに生じたスリーブ17のサドル16に対するずれ量A(図8(A)参照)をサドル16に内蔵したスリーブずれ検出手段23により測定し、マンドレル15に挿入されたスリーブ17の軸方向中心位置Oと搬送ラインの幅方向中心位置Tとの中心位置ずれ量A−Bを算出するずれ量調節部24と、スリーブ17のマンドレル15への挿入が完了した後にサドル16をスリーブ17から離脱させ、中心位置ずれ量A−Bに相当する距離だけマンドレル15を鋼板巻取り装置11の巻取り軸方向に移動させてスリーブ17の軸方向中心位置Oと金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置Tとを一致させる操作部26とを有している。以下、詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、走行台車18は、台車フレーム27と、台車フレーム27の前部(マンドレル側に進む方向を前方向とする)の両側に対となって設けられ、走行レール12、13上を回転しながら走行する車輪28、29と、台車フレーム27の後部の両側に対となって設けられ、走行レール12、13上を回転しながら走行する車輪30、31とを有している。そして、位置検出器19は、車輪28、29、30、31のいずれか一方の回転軸(図1では車輪30、31の回転軸)に取付けられた回転輪32と、回転輪32の回転数を回転伝達部材33(例えばベルト)を介して測定する回転数計測器34(例えば、エンコーダ)と、回転数計測器34からの出力値に基づいて走行台車18の待機位置に対する位置を求めるスリーブ位置演算部35とを有している。
【0021】
また、サドル16は、台車フレーム27に取付けられたシリンダ36を介して、台車フレーム27に昇降可能に設けられている。なお、符号37はシリンダロッド、符号38、39はシリンダロッド37の両側に台車フレーム27を貫通して設けられて、サドル16の昇降をガイドする対となるガイドロッドである。
【0022】
スリーブ通過検出器20は、例えば、搬送ラインの幅方向中心位置Tから待機位置側に一定距離Lだけ離れた走行経路14上の基準位置Rを、走行経路14の幅方向の外側から挟むように対向して配置された送光器40及び受光器41と、受光器41の出力変化を検知する検知器(図示せず)とを有している。このような構成とすることにより、受光器41の出力変化が生じることで(送光器40から受光器41に入射していた光が遮られたことで)、スリーブ17の先端が基準位置Rを通過することが分かり、受光器41の出力変化が再度生じることで(送光器40から受光器41に入射する光が遮られていた状態から再び入射する状態に復帰したことで)、スリーブ17の後端が基準位置Rを通過することが分かる。
【0023】
目標位置演算部22は、先ず、スリーブ17の先端が基準位置Rを通過するときに位置検出器19のスリーブ位置演算部35から出力される出力値D2と、スリーブ17の後端が基準位置Rを通過するときに位置検出器19のスリーブ位置演算部35から出力される出力値D3とを用いて、スリーブ17の軸方向長さD3−D2を求める第1の機能を有している。更に、目標位置演算部22は、スリーブ17の後端が基準位置Rを通過した際に、スリーブ17の軸方向中心位置Oは、基準位置Rよりマンドレル15側に(D3−D2)/2だけ進んでいることを用いて、スリーブ17の軸方向中心位置Oが搬送ラインの幅方向中心位置Tに一致して停止する際の走行台車17の目標停止距離Sを、L−(D3−D2)/2と演算する第2の機能を有している。なお、目標位置演算部22は、第1、第2の機能を発現するプログラムをマイクロコンピュータに搭載することにより形成できる。
【0024】
ずれ量調節部24は、走行台車18が停止した際の位置検出器19の出力から走行台車18の待機位置に対する位置D4を算出し、スリーブ17の後端が基準位置Rを通過したときから走行台車18が停止するまでの距離D4−D3と、目標停止距離Sとの差(D4−D3)−Sから、走行台車18の停止位置ずれBをD4−(D3+S)として求める機能と、スリーブ17のマンドレル15への挿入が完了するまでに生じたスリーブ17のサドル16に対するずれ量Aをサドル16に内蔵したスリーブずれ検出手段23により測定し、マンドレル15に挿入完了となったスリーブ17の軸方向中心位置Oと搬送ラインの幅方向中心位置Tとの中心位置ずれ量A−Bとして算出する機能を有している。なお、ずれ量調節部24は、上記の各機能を発現するプログラムをマイクロコンピュータに搭載することにより形成できる。
【0025】
ここで、図3に示すように、スリーブずれ検出手段23は、サドル16に載置されたスリーブ17の側部に磁着する磁石42と、磁石42を保持するホルダ43と、ホルダ43を支持してスリーブ17の軸方向に沿って移動可能なハウジング44と、ハウジング44の待機位置側の端部に設けられた第1のワイヤ45と、第1のワイヤ45の巻取り長さの測定が可能なずれ量検出器46と、ハウジング44のマンドレル15側の端部に設けられた第2のワイヤ47と、第2のワイヤ47の先部に接続され、ハウジング44をサドル16内でマンドレル15側に付勢するカウンターウエイト48と、サドル16に取付けられ、付勢されたハウジング44に当接してサドル16内でのハウジング44の初期位置の位置決めを行うストッパー部材49とを有している。なお、符号50、51は、サドル16の待機位置側及びマンドレル側にそれぞれ設けられて、第1、第2のワイヤ45、47の方向を変える滑車である。また、ハウジング44は、走行経路14の方向に沿ってサドル16内に設けられたスライドレール(例えばLMレール)52上を走行するスライドブロック53(例えばLMガイド)に取付けられている
【0026】
図4〜図6に示すように、磁石42はホルダ43の中央部に形成された凹部に先側を突出させた状態で挿入されている。そして、磁石42を貫通させてボルト54をホルダ43の一方側から他方側に向けて挿通させ、他方側から突出したボルト54の先部にナット55を締め込むことにより、磁石42をホルダ43に固定している。また、サドル16の上部は断面視してV字形となって、その底部(スライドレール52と対向する領域)には、スライドレール52に沿って、ホルダ43の幅よりも大きい幅を有する長孔56が形成されている。これによって、スライドブロック53に取付けられたハウジング44に支持されたホルダ43を長孔56内に挿入させて、スライドブロック53をスライドレール52上で走行させることで、ホルダ43を長孔56の長手方向に沿って移動させることができる。
【0027】
ここで、ホルダ43の下部には、断面積が縮小してハウジング44の中央部に形成された空間部57に挿入される挿入部58が設けられている。そして、空間部57内に挿入された挿入部58の先端部は、空間部57内に配置されたスプリング59と当接している。これにより、ホルダ43をハウジング44に対して上方に付勢することができ、長孔56からホルダ43に取付けた磁石42の先部を突出させることができる。その結果、図5に示すように、サドル16にスリーブ17を載置した際に、スリーブ17によってホルダ43から上方に突出している磁石42を押し下げて、スリーブ17の側部に磁石42を確実に磁着(吸着)させることができる。
【0028】
ストッパー部材49は、サドル16のマンドレル15側の側板61を外側から内側に向けて貫通し、先部をそれぞれハウジング44のマンドレル15側の端面の両側に当接させた対となるロッド62、63を有している。また、ロッド62、63の外周部には外ねじがそれぞれ形成され、側板61を貫通した際に、側板61を厚み方向の両側から挟んで押圧できるように、ロッド62、63にはそれぞれ対となるナット64、65が取付けられている。これによって、ロッド62、63をサドル16の内側に突出させた際に、それぞれ対となるナット64、65の位置をロッド62、63に沿って移動させることで、サドル16内のロッド62、63の突出長さを調整することができ、サドル16内でのハウジング44の初期位置を調整できる。
【0029】
操作部26は、スリーブ17のマンドレル15への挿入が完了した後に、マンドレル15をずれ量調節部24から出力される中心位置ずれ量A−Bに相当する距離だけ鋼板巻取り装置11の巻取り軸方向(マンドレル15の軸方向)に沿って移動させるもの(例えば、油圧シリンダ)である。
【0030】
更に、スリーブ挿入装置10は、スリーブ17をマンドレル15に挿入中に、サドル16に対するスリーブ17のずれ量Aが予め設定された許容量(例えば、100mm)を超えたことがずれ量検出器46で検知された場合に、走行台車18の図示しない運転制御器に走行台車18を停止させる指令信号を出力する走行台車停止機能を備えた台車停止部を有する。なお、台車停止部は、スリーブ位置演算部35に走行台車停止機能を発現するプログラムを組込むことにより形成できる。これによって、スリーブ17が大幅にずれた場合、スリーブ17がサドル16から落下することを防止できる。
【0031】
続いて、本発明の一実施の形態に係るスリーブの挿入方法(以下、スリーブ挿入方法ともいう)について説明する。
図7、図8に示すように、鋼板巻取り装置11を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取る際に、金属ストリップの搬送ラインに平面視して直交させて設けた走行経路14上の待機位置にあって、サドル16を介して鉄製のスリーブ17をスリーブ17の軸方向を走行経路14に沿わせて載置している走行台車18を鋼板巻取り装置11のマンドレル15に向けて走行経路14上を走行させて、スリーブ17をマンドレル15に挿入する方法である。以下、詳細に説明する。
【0032】
スリーブ挿入方法は、図7(A)に示すように、走行台車18を走行経路14で走行させて待機位置に対する走行台車18の位置を位置検出器19で測定しながら、走行経路14に対向させて設置したスリーブ通過検出器20で、図7(B)、(C)にそれぞれ示すように、スリーブ17の先端及び後端が搬送ラインの幅方向中心位置Tから待機位置側に一定距離L離れた走行経路14上の基準位置Rをそれぞれ通過したことを検出して、スリーブの先端及び後端がそれぞれ基準位置Rを通過するときの走行台車18の待機位置に対する位置D2、D3を求める第1の工程を有している。また、スリーブ挿入方法は、図7(C)に示すように、スリーブ17の後端が基準位置Rを通過してから、スリーブ17の軸方向中心Oが搬送ラインの幅方向中心位置Tに一致するまでに移動する距離L−(D3−D2)/2を求めて、走行台車18の目標停止距離Sとする第2の工程を有している。
【0033】
更に、スリーブ挿入方法は、図7(D)、図8(A)に示すように、スリーブ17のマンドレル15への挿入が完了して走行台車18が停止したときの位置D4を測定して、目標停止距離Sに対する走行台車18の停止位置ずれBをD4−(D3+S)から求めると共に、スリーブ17のマンドレル15への挿入が完了するまでに生じたサドル16に対するスリーブ17のずれ量Aをサドル16に内蔵したスリーブずれ検出手段23により測定し、マンドレル15に挿入されたスリーブ17の軸方向中心位置Oと搬送ラインの幅方向中心位置Tとの中心位置ずれ量A−Bを算出する第3の工程と、図8(B)に示すように、サドル16をスリーブ17から離脱させ、中心位置ずれ量A−Bに相当する距離だけマンドレル15を鋼板巻取り装置11の巻取り軸方向に移動させてスリーブ17の軸方向中心位置Oと金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置Tとを一致させる第4の工程とを有している。
【0034】
以上の工程により、走行台車18のサドル16上に載置したスリーブ17をマンドレル15に挿入する際に、スリーブ17がサドル16上でずれた状態でマンドレル15に挿入されても、スリーブ17が挿入されたマンドレル15をずらせることで、スリーブ17の軸方向中心位置Oと金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置Tとを一致させるので、スリーブ17の軸方向長さを金属ストリップの幅方向長さより長くしておくと、鋼板巻取り装置11を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取ってコイルを形成した場合、スリーブ17の両端をコイルの端部から外側に突出させることができる。そして、コイルの両端部からそれぞれ外側にスリーブ17の両側が突出しているので、コイルの搬送が容易になると共に、コイル内側部分及びコイル端部に当て疵が生じることを防止できる。
【0035】
そして、第3の工程で、スリーブ17をマンドレル15に挿入中に、サドル16に対するスリーブ17のずれ量が予め設定された許容量(例えば、100mm)を超えた場合、走行台車18を停止させて、スリーブ17のマンドレル15への挿入を停止する。このため、スリーブ17がサドル16上で更にずれることを防止して、スリーブ17がサドル16から脱落することを防止できる。なお、サドル16上で大きくずれたスリーブ17を別のスリーブに交換することでマンドレル15への挿入作業を再開することができる。
【0036】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【符号の説明】
【0037】
10:スリーブの挿入装置、11:鋼板巻取り装置、12、13:走行レール、14:走行経路、15:マンドレル、16:サドル、17:スリーブ、18:走行台車、19:位置検出器、20:スリーブ通過検出器、22:目標位置演算部、23:スリーブずれ検出手段、24:ずれ量調節部、26:操作部、27:台車フレーム、28、29、30、31:車輪、32:回転輪、33:回転伝達部材、34:回転数計測器、35:スリーブ位置演算部、36:シリンダ、37:シリンダロッド、38、39:ガイドロッド、40:送光器、41:受光器、42:磁石、43:ホルダ、44:ハウジング、45:第1のワイヤ、46:ずれ量検出器、47:第2のワイヤ、48:カウンターウエイト、49:ストッパー部材、50、51:滑車、52:スライドレール、53:スライドブロック、54:ボルト、55:ナット、56:長孔、57:空間部、58:挿入部、59:スプリング、61:側板、62、63:ロッド、64、65:ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取る際に、前記金属ストリップの搬送ラインに平面視して直交させて設けた走行経路上の待機位置から、前記鋼板巻取り装置のマンドレルに向けて該走行経路上を走行し、サドルを介してその軸方向を前記走行経路に沿わせて載置した鉄製のスリーブを前記マンドレルに挿入する走行台車を備えたスリーブの挿入装置において、
前記走行台車に設けられ、前記待機位置に対する該走行台車の位置を測定する位置検出器と、
前記走行経路に対向させて設置され、前記スリーブの先端及び後端が前記搬送ラインの幅方向中心位置から前記待機位置側に一定距離L離れた前記走行経路上の基準位置をそれぞれ通過したことを検出するスリーブ通過検出器と、
前記スリーブの先端及び後端がそれぞれ前記基準位置を通過するときの前記位置検出器の出力に基づいて、前記スリーブの後端が前記基準位置を通過してから、前記スリーブの軸方向中心が前記搬送ラインの幅方向中心位置に一致して停止する際の前記走行台車の目標停止距離を演算する目標位置演算部と、
前記走行台車が停止した際の前記位置検出器の出力から該走行台車の前記待機位置に対する位置を算出して前記目標停止距離に対する該走行台車の停止位置ずれを求めると共に、前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了するまでに生じた該スリーブの前記サドルに対するずれ量を該サドルに内蔵したスリーブずれ検出手段により測定し、前記マンドレルに挿入された前記スリーブの軸方向中心位置と前記搬送ラインの幅方向中心位置との中心位置ずれ量を算出するずれ量調節部と、
前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了した後に前記サドルを前記スリーブから離脱させ、前記マンドレルを前記中心位置ずれ量に相当する距離だけ前記鋼板巻取り装置の巻取り軸方向に移動させて前記スリーブの軸方向中心位置と前記金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置とを一致させる操作部とを有することを特徴とするスリーブの挿入装置。
【請求項2】
請求項1記載のスリーブの挿入装置において、前記スリーブずれ検出手段は、前記サドルに載置された前記スリーブの側部に磁着する磁石と、前記磁石を保持するホルダと、前記ホルダを支持して前記スリーブの軸方向に沿って移動可能なハウジングと、前記ハウジングの前記待機位置側の端部に設けられた第1のワイヤと、前記第1のワイヤの巻取り長さの測定が可能なずれ量検出器と、前記ハウジングの前記マンドレル側の端部に設けられた第2のワイヤと、前記第2のワイヤの先部に接続され、前記ハウジングを前記サドル内で前記マンドレル側に付勢するカウンターウエイトと、前記サドルに取付けられ、付勢された前記ハウジングに当接して該サドル内での該ハウジングの位置決めを行うストッパー部材とを有することを特徴とするスリーブの挿入装置。
【請求項3】
請求項2記載のスリーブの挿入装置において、前記ハウジングは、前記走行経路の方向に沿って前記サドル内に設けられたスライドレール上を走行するスライドブロックに載置されていることを特徴とするスリーブの挿入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスリーブの挿入装置において、前記スリーブを前記マンドレルに挿入中に、前記サドルに対する該スリーブのずれ量が予め設定された許容量を超えた際に前記走行台車を停止する台車停止部を有することを特徴とするスリーブの挿入装置。
【請求項5】
鋼板巻取り装置を用いて金属ストリップをコイル状に巻き取る際に、前記金属ストリップの搬送ラインに平面視して直交させて設けた走行経路上の待機位置にあって、サドルを介して鉄製のスリーブを該スリーブの軸方向を前記走行経路に沿わせて載置している走行台車を前記鋼板巻取り装置のマンドレルに向けて該走行経路上を走行させて、前記スリーブを該マンドレルに挿入するスリーブの挿入方法において、
前記走行経路に対向させて設置したスリーブ通過検出器で、前記スリーブの先端及び後端が前記搬送ラインの幅方向中心位置から前記待機位置側に一定距離L離れた前記走行経路上の基準位置をそれぞれ通過したことを検出して、前記スリーブの先端及び後端がそれぞれ該基準位置を通過するときの前記走行台車の前記待機位置に対する位置を求める第1の工程と、
前記スリーブの後端が前記基準位置を通過してから、前記スリーブの軸方向中心が前記搬送ラインの幅方向中心位置に一致するまでに移動する距離を求めて、前記走行台車の目標停止距離とする第2の工程と、
前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了して前記走行台車が停止したときの位置を測定して前記目標停止距離に対する該走行台車の停止位置ずれを求めると共に、前記スリーブの前記マンドレルへの挿入が完了するまでに生じた前記サドルに対する該スリーブのずれ量を該サドルに内蔵したスリーブずれ検出手段により測定し、前記マンドレルに挿入された前記スリーブの軸方向中心位置と前記搬送ラインの幅方向中心位置との中心位置ずれ量を算出する第3の工程と、
前記サドルを前記スリーブから離脱させ、前記中心位置ずれ量に相当する距離だけ前記マンドレルを前記鋼板巻取り装置の巻取り軸方向に移動させて前記スリーブの軸方向中心位置と前記金属ストリップの搬送ラインの幅方向中心位置とを一致させる第4の工程とを有することを特徴とするスリーブの挿入方法。
【請求項6】
請求項5記載のスリーブの挿入方法において、前記第3の工程で、前記スリーブを前記マンドレルに挿入中に、前記サドルに対する該スリーブのずれ量が予め設定された許容量を超えた際に前記走行台車を停止することを特徴とするスリーブの挿入方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−224596(P2011−224596A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95296(P2010−95296)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】