説明

スルビビンを調節する新規の抗加齢ペプチドおよびこれを含む組成物

本発明は、スルビビンタンパク質を調節する、一般式(I): R1-(AA)n-X1-X2-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-X3-(AA)P-R2のペプチド化合物に関する。さらに、本発明は、生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも1つの、一般式(I)のペプチドを含む化粧品組成物または医薬品組成物に関するほか、加齢および光加齢の皮膚徴候を予防および/または処置し、外的侵襲に対して皮膚を保護するためのこれらの使用にも関する。加えて、本発明による組成物を使用して、毛髪の喪失を防止および/もしくは制限することもでき、かつ/または毛髪成長を刺激することもできる。最後に、本発明は、加齢または光加齢の皮膚徴候を予防および/または制御する美容処置方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品分野および医薬品分野に関する。本発明は、スルビビンタンパク質の調節物質である、一般式(I) R1-(AA)n-X1-X2-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-X3-(AA)P-R2のペプチド化合物、ならびに(i)皮膚および角質性皮膚付属器における加齢および光加齢の徴候を予防および/または是正し、(ii)毛髪の喪失を防止および/もしくは制限し、かつ/または毛髪成長を刺激し、(iii) UV放射に起因する外的侵襲を含めた外的侵襲に対して皮膚を保護するための、化粧品および/または医薬品におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢とは、ある年齢以後において身体の構造および機能を変化させる、生理学的過程および心理学的過程のセットに対応する。加齢には2種類ある、すなわち、一方に内的加齢があり、他方に外的加齢がある。内的加齢は、遺伝子的要因、疲労状態、ストレス状態、妊娠時などのホルモン変化状態において生じる生化学的変化に起因する。一方、外的加齢は、汚染、日光、疾患など、身体が一生を通じて曝される環境的因子により引き起こされる。これは、多様な手段を介して、身体内のすべての細胞に影響を及ぼす緩徐かつ漸進的な過程であり、異なる形で顕在化する。例えば、皮膚の場合、その外見は、多様な種類の内的侵襲または外的侵襲により変化し、シワおよび小ジワ、色素沈着過度または色素沈着低下のシミ(hyper or hypo-pigmentation spots)、皮膚の乾燥またはさらには皮膚の脱水状態、皮膚の菲薄化、弾性線維症、斑点、加齢によるシミ(age spot)などの出現が観察されうる。毛髪の場合、加齢は、主に毛髪の白色化(灰色化)により顕在化するが、また、毛髪密度の低下、とりわけ、脱毛症として知られる、なおより広範にわたる抜け毛をもたらしうる、薄毛化によっても顕在化する。
【0003】
哺乳動物、とりわけ、ヒトにおいて、皮膚および眼は、持続的な再生下に置かれている器官である。例えば、皮膚表面における落屑現象は、表皮の再生により補完されなければならないが、これは、活発に分裂し、角質層の細胞へと分化する、基底層のケラチン生成細胞により確保されている。毛髪の再生周期もまた、成長期、退行期、および休止期として知られる、3つの異なる時期に分割することができる。新たな毛球が形成され、新たな毛周期を開始するのは、休止期においてである。これらの再生活性のほか、UV放射または創傷により引き起こされる損傷などの損傷の場合にはまた、皮膚または爪の修復活性も、皮膚における成体表皮幹細胞、および毛髪の場合には成体濾胞幹細胞として知られる体性幹細胞の存在に依拠する。これらの細胞には、著明な自己再生能および分化能を有する点で、独自な部分がある。これらの細胞は、β1-インテグリン、α6-インテグリン、ケラチンK15、ケラチンK19など、分子マーカーのセットにより、基底層内で同定されている。細胞の増殖および分化は、細胞周期に依存する過程である。適正な細胞周期の機能を制御する機構は、「染色体パッセンジャー複合体」(CPC)など、補完的なタンパク質構造のセットに本質的に基づく。CPCは、有糸分裂の進行および細胞質分裂段階のいずれにおいても重要な役割を果たす。CPCは、INCENP (内部セントロメアタンパク質)、ボレアリン、オーロラBキナーゼ、およびスルビビンという、4つのタンパク質のセットからなる。スルビビンは、細胞周期依存的な形で、G2/Mポイントで発現する。siRNAによりスルビビンまたはオーロラBキナーゼを不活化すると、とりわけ、有糸分裂に関する重大な欠損が誘導されることが示されている(Lens SMら、EMBO. J. 2003、22 (12): 2934〜47頁)。他の実験は、有糸分裂の制御における、スルビビン、そのCrm-1キャリア(またはエクスポルチン1)、およびそのCPCパートナーの重要な役割を裏付けている。最後に、他の研究は、スルビビンを、また、「アポトーシスタンパク質阻害剤」(IAP)としても知られる、アポトーシス阻害剤タンパク質ファミリーに属する分子として分類することを可能としている。実際、スルビビンは、カスパーゼ9によるシグナル伝達経路を阻害することにより、
細胞をアポトーシスから保護すると考えられている。しかし、スルビビンの有糸分裂活性は、その抗アポトーシス活性よりも優勢であると考えられる。老齢対象の表皮に存在する成体幹細胞と比較して、若齢対象の表皮の基底層に位置する成体幹細胞においては、より高いレベルのスルビビンが存在することが確立されている。加えて、胎児組織が大量のスルビビンを含有するのに対し、分化した組織ではスルビビンが実質的に存在しないことも分かっている(Adidaら、Am J Pathol. 1998、152: 43〜49頁)。このようにして、前記幹細胞におけるスルビビンの量と、皮膚の加齢との間の相関が確立された(Marconiら、Stem Cells 2007、25: 149〜55頁)。これらの知見に基づき、本出願人は、驚くべきことに、以下の一般式(I):
R1-(AA)n-X1-X2-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-X3-(AA)P-R2
のペプチド化合物が、スルビビンの極めて良好な調節物質であり、したがって、CPC複合体の極めて良好な調節物質であり、皮膚の加齢の徴候の処置および/または予防、UV放射などの外的侵襲に対する皮膚の保護、ならびに毛髪の喪失に対して著明な効果を及ぼすことを裏付けた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許EP1913947
【特許文献2】特許EP1931376
【特許文献3】特許EP1841401
【特許文献4】特許EP2119726
【特許文献5】特許出願FR2932086
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lens SMら、EMBO. J. 2003、22 (12): 2934〜47頁
【非特許文献2】Adidaら、Am J Pathol. 1998、152: 43〜49頁
【非特許文献3】Marconiら、Stem Cells 2007、25: 149〜55頁
【非特許文献4】Kullmanら、J. Biol. Chem.、1980、225、8234頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種類の作用を及ぼす化合物が、加齢または毛髪の喪失を処置するのに提起されたことはこれまでになかった。ある種類のペプチド化合物が、スルビビンの発現を調節することにより、抗腫瘍治療薬として提起されている(特許EP1913947、同EP1931376)。スルビビン阻害剤ペプチドを使用する他の処置が、例えば、毛髪成長を阻害する(特許EP1841401)か、または腫瘍を同定する一助となる(特許EP2119726)ことなども開示されている。特許出願FR2932086の場合は、皮膚の加齢の徴候の発生を防止するか、もしくは遅延させるか、または毛髪成長を促進する、スルビビン促進剤として、コレウス・フォルスコリー(Coleus forskohlii)、レペチニア・カウレセンス(Lepechinia caulescens)、リムノフィラ・コンフェルタ(Limnophila conferta)、ダニエリア・オリベリ(Daniellia oliveri)、イシクラゲ(Nostoc commune)、イカダモ(Scenedesmus dimorphus)、ウコン(Curcuma longa)、またはサフラン(Crocus sativus)の抽出物から選択される化粧剤について説明している。しかし、スルビビン(およびCPCタンパク質)を調節する化合物を使用して、(i)皮膚の加齢の徴候に効果的であり、(ii) UV放射に起因する外的侵襲を含めた外的侵襲に対して皮膚を保護し、(iii)毛髪の喪失を制限するか、または毛髪成長を活性化する処置は提起されていない。にもかかわらず、この分野では、革新的な処置法に対する必要が現実に存在する。したがって、本明細書で説明されるペプチド化合物は、成体表皮幹細胞を保護して、皮膚細胞を再生および保護する過程におけるそれらの役割を最良の形で確保することを可能とするために、成体表皮幹細胞の最近接環境に直接に作用することにより、加齢に効果的な、新たな種類の有効な処置を提供しうる。ペプチド化合物は、成体表皮幹細胞の環境を保護し、これらの細胞におけるスルビビンの量を調節する利点は有するが、この幹細胞のクローン形成能を増大させることはない。一般に、本発明によるペプチドは、幹細胞の近接環境を保護し、枯渇する可能性を制限することにより、幹細胞の「幹細胞性の潜在能」を保持することに寄与する。成体表皮幹細胞および成体濾胞幹細胞に対するその保護作用を介して、本発明による化合物はまた、毛髪の喪失も防止し、毛髪成長も刺激する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の目的は、以下の一般式(I):
R1-(AA)n-X1-X2-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-X3-(AA)P-R2
[式中、
X1は、ロイシン、アラニン、またはアミノ酸無しであり;
X2は、リシン、プロリン、またはアミノ酸無しであり;
X3は、ロイシン、アスパラギン酸、チロシン、フェニルアラニン、またはアミノ酸無しであり;
AAは、任意のアミノ酸であり、nおよびpは、0から2の間の整数であり;
R1は、遊離のN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であるか、あるいは、アセチル基、またはベンゾイル型の基、トシル型の基、もしくはベンジルオキシカルボニル型の基から選択されうる芳香族基から選択されうる、C1〜C30の飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖を有するアシル型の基で置換されたN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であり;
R2は、非置換のC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基であるか、あるいは、C1〜C30のアルキル鎖、またはNH2基、NHY基もしくはNYY基[式中、Yは、C1〜C4のアルキル鎖である]から選択されうる基で置換されたC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基である]
のペプチド化合物であって、一般式(I)の前記配列が、5〜12アミノ酸残基からなり、一般式(I)の前記配列が、AAアミノ酸、X1アミノ酸、X2アミノ酸、またはX3アミノ酸の誘導体、またはこれらのアミノ酸の、他の化学的に同等なアミノ酸による置換を包含しうるペプチド化合物を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、式(I)の前記ペプチド化合物を、有効成分として含む化粧品組成物を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の第3の目的は、(i)皮膚の加齢および光加齢の徴候を予防および/または処置し、かつ、組織再生を促進し、(ii)外的侵襲、特に、UV放射に起因する外的侵襲に対して皮膚を保護し、(iii)スルビビンの最適レベルを回復し、「染色体パッセンジャー複合体」のより良好な機能を確保し、(iv)毛髪の喪失を防止および/もしくは制限し、かつ/または毛髪成長を刺激するための、式(I)の前記ペプチド化合物を含む化粧品組成物の使用である。
【0010】
最後に、本発明の第4の目的は、式(I)の前記ペプチド化合物を含む組成物を使用する、処置される皮膚または角質性皮膚付属器の美容処置方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】成体表皮幹細胞に富む細胞画分に対して実施したコメット試験の結果を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の目的は、以下の一般式(I):
R1-(AA)n-X1-X2-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-X3-(AA)P-R2 (I)
[式中、
X1は、ロイシン、アラニン、またはアミノ酸無しであり;
X2は、リシン、プロリン、またはアミノ酸無しであり;
X3は、ロイシン、アスパラギン酸、チロシン、フェニルアラニン、またはアミノ酸無しであり;
AAは、任意のアミノ酸であり、nおよびpは、0から2の間の整数であり;
R1は、遊離のN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であるか、あるいは、アセチル基、またはベンゾイル型の基、トシル型の基、もしくはベンジルオキシカルボニル型の基から選択されうる芳香族基から選択されうる、C1〜C30の飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖を有するアシル型の基で置換されたN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であり;
R2は、遊離のC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基であるか、あるいは、C1〜C30のアルキル鎖、またはNH2基、NHY基もしくはNYY基[式中、Yは、C1〜C4のアルキル鎖である]から選択されうる基で置換されたC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基である]
のペプチド化合物であって、一般式(I)の前記配列が、5〜12アミノ酸残基からなり、一般式(I)の前記配列が、AAアミノ酸、X1アミノ酸、X2アミノ酸、またはX3アミノ酸の誘導体、またはこれらのアミノ酸の、他の化学的に同等なアミノ酸による置換を包含しうるペプチド化合物に関する。
【0013】
「ペプチド化合物」または「ペプチド」という用語は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合により一体に連結されている2つ以上のアミノ酸の鎖を指す。
【0014】
「ペプチド化合物」または「ペプチド」とは、上記で説明した通り、本発明による天然もしくは合成のペプチド、または、タンパク質分解により得られたものであれ、合成により得られたものであれ、その断片のうちの少なくとも1つ、あるいはまた、その配列の全体または部分が前出で説明したペプチド配列からなる、任意の天然ペプチドまたは合成ペプチドを意味する。
【0015】
本発明によるペプチド化合物を構成するアミノ酸は、左旋性の立体構造、すなわち、L体にある場合もあり、かつ/または右旋性の立体構造、すなわち、D体にある場合もある。したがって、本発明によるペプチドは、L体にある場合もあり、D体にある場合もあり、またはDL型にある場合もある。
【0016】
分解に対する耐性を改善するためには、本発明のペプチドの保護形態を使用することが必要でありうる。保護の形態は、当然、生体適合性の形態でなければならず、化粧品および薬学の分野における使用に適合性であるべきである。N末端アミノ酸の第一級アミノ官能基を保護するには、アセチル基または芳香族基から選択されうる、C1〜C30の飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖を伴うアシル型である、R1基による置換を使用することが好ましい。C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を保護するには、C1〜C30のアルキル鎖型、またはNH2基、NHY基もしくはNYY基[式中、Yは、C1〜C4のアルキル鎖である]である、R2基による置換を使用することが好ましい。
【0017】
本発明によるペプチドは、N末端で保護することもでき、C末端で保護することもでき、または両方の末端で保護することもできる。
【0018】
第1の好ましい実施形態では、一般式(I)において、
X1が、ロイシン、またはアミノ酸無しであり;
X2が、リシン、またはアミノ酸無しであり;
X3が、チロシン、またはアミノ酸無しであり;
AAにおいては、整数nおよびpが0に等しく;
R1が、遊離のN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であるか、あるいは、アセチル基、またはベンゾイル型の基、トシル型の基、もしくはベンジルオキシカルボニル型の基から選択されうる芳香族基から選択されうる、C1〜C30の飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖を有するアシル型の基で置換されたN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であり;
R2が、遊離のC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基であるか、あるいは、C1〜C30のアルキル鎖、またはNH2基、NHY基もしくはNYY基[式中、Yは、C1〜C4のアルキル鎖である]から選択されうる基で置換されたC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基である。
【0019】
第2の好ましい実施形態では、ペプチド化合物が、以下の式:
(配列番号1) Ile-Leu-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Gly-NH2
(配列番号2) Arg-Glu-Met-Asn-Trp-NH2
(配列番号3) Asp-Ala-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Asp-Thr
(配列番号4) Leu-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Tyr-NH2
(配列番号5) Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Phe-Met-Val-NH2
(配列番号6) Leu-Lys-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Tyr-NH2
のうちの1つに対応する。
【0020】
本発明はまた、これらの配列の相同形態にも関する。本発明による「相同的」とは、配列番号1〜配列番号6の配列から選択される前記ペプチド配列のうちの少なくとも50%、または好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%と同一である任意のペプチド配列を意味する。「少なくともX%と同一であるペプチド配列」とは、2つの配列に対する最適なアライメントの後に得られた、比較される2つの配列のアミノ酸残基間の類似性の百分率を意味する。最適なアライメントは、NCBIのウェブサイトから入手可能なBLAST Pコンピュータソフトウェアにおいて使用されるアルゴリズムなど、局所的相同性のアルゴリズムを使用して得られる。
【0021】
「相同的」という用語はまた、化学的に同等なアミノ酸を置換することによる、すなわち、ある残基を、特徴が同じ別の残基で置換することによる、配列番号1〜配列番号6の配列のペプチドの配列とは異なるペプチドも指す場合がある。したがって、従来の置換は、Ala、Val、Leu、およびIleの間; SerおよびThrの間;酸性残基であるAspおよびGluの間; AsnおよびGlnの間;ならびに塩基性残基であるLysおよびArgの間;または芳香族残基であるPheおよびTyrの間で実施される。
【0022】
本発明による一般式(I)のペプチドは、構成要素であるアミノ酸またはこれらの誘導体から、従来の化学合成(固相または均一液相における)により得ることもでき、または酵素的合成(Kullmanら、J. Biol. Chem.、1980、225、8234頁)により得ることもできる。
【0023】
本発明によるペプチドは、天然の場合もあり、または合成の場合もある。本発明によるペプチドは、化学合成により得ることが好ましい。
【0024】
最後に、有効成分は、単一のペプチドの場合もあり、ペプチドの混合物の場合もあり、もしくはペプチド誘導体の場合もあり、かつ/またはアミノ酸の誘導体からなる場合もある。
【0025】
本発明によるペプチド化合物は、医薬として使用することができる。
【0026】
本発明の有利な一実施形態によれば、本発明によるペプチド化合物は、水、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化ジグリコールもしくはプロポキシル化ジグリコール、環状ポリオール、またはこのような溶媒の任意の混合物など、従来から当業者により使用される、1つまたは複数の生理学的に適切な溶媒中で可溶化されている。
【0027】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、本発明によるペプチド化合物は、リポソームなどの化粧品用ベクター内もしくは医薬品用ベクター内で可溶化されているか、または粉末性の有機ポリマー、滑石およびベントナイトなどの鉱物支持体に吸着し、より一般的には、生理学的に適切な任意のベクター内で溶解しているか、またはこれに固定されている。
【0028】
本発明によるペプチド化合物は、スルビビンタンパク質の量および/またはCPC活性の調節を可能とすることを特徴とする。
【0029】
「スルビビンタンパク質の量の調節を可能とする」ペプチド化合物とは、CPCおよび/もしくはスルビビンタンパク質の合成を増大もしくは減少させることにより(遺伝子発現の直接的または間接的な調節により)、または、メッセンジャーRNA転写物の安定化もしくは非安定化など、他の生物学的過程を介して、CPC複合体および/またはスルビビンの活性を増大または減少させることが可能な任意のペプチドまたは生物学的に活性な誘導体を意味する。
【0030】
本発明の第2の目的は、一般式(I)の前記ペプチド化合物を有効成分として含む化粧品組成物に関する。
【0031】
本発明による組成物は、化粧品として許容可能な媒体を含む、局所適用に適する形態にあることが好ましい。「化粧品として許容可能な」とは、毒性、不適合性、不安定性、アレルギー応答などのいかなる危険性をも伴わずに、皮膚またはヒトの角質性皮膚付属器と接触させて使用するのに適する媒体を意味する。皮膚への適用を意図する組成物は、クリーム、水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンまたは多重エマルジョン、溶液、懸濁液、マイクロエマルジョン、水性ゲルまたは無水ゲル、血清の形態にある場合もあり、あるいはまた、小胞の懸濁液、パッチ、スプレー、軟膏、ポマード、エマルジョン、コロイド、ミルク、ローション、スティックの形態にある場合もあり、あるいはまた、粉末の形態にある場合もあり、これらのすべては、皮膚、口唇、および/または角質性皮膚付属器への適用に適する。
【0032】
前記ペプチド化合物は、組成物中に、約0.0005から500ppmの間の濃度で、好ましくは0.01から5ppmの間の濃度で存在することが好ましい。
【0033】
本発明による組成物は、前記ペプチド化合物の作用を促進する、少なくとも1つの他の有効成分をさらに含有することがさらにより好ましい。例には、限定無しに述べると、以下の成分のクラス:他の活性ペプチド剤、植物抽出物、治癒剤、抗加齢剤、抗シワ剤、無痛化剤、フリーラジカルスカベンジャー、および抗UV剤、皮膚高分子の合成またはエネルギー代謝を刺激する薬剤、水和剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、皮膚の分化、色素沈着、または色素脱失を調節する薬剤、爪または毛髪の成長を刺激する薬剤などが含まれる。フリーラジカルスカベンジャーもしくは抗酸化剤、または皮膚高分子の合成を刺激する薬剤、あるいはまた、エネルギー代謝を刺激する薬剤など、抗シワ活性を有する薬剤を使用することが好ましい。特に、有効成分は、ビタミン、フィトステロール、フラボノイド、DHEA、および/またはこれらの前駆体、またはこれらの化学的誘導体もしくは生物学的誘導体、メタロプロテイナーゼ阻害剤、あるいはレチノイドから選択される。
【0034】
より具体的な実施形態では、本発明による組成物が、式(I)のペプチド化合物以外に、
・1つ(または複数)のチトクロームcプロモーター化合物、および/または
・1つ(または複数)のアクアポリンプロモーター化合物、および/または
・1つ(または複数)のサーチュインプロモーター化合物、および/または
・細胞接着を刺激する1つ(または複数)の化合物、および/または
・コラーゲン型、ラミニンなど、マトリックスタンパク質の産生を増大させる1つ(または複数)の化合物、
・プロテアソーム活性を調節する1つ(または複数)の化合物、
・概日リズムを調節する1つ(または複数)の化合物、
・熱ショックタンパク質(hsp)を調節する1つ(または複数)の化合物、
・細胞エネルギーを増大させる1つ(または複数)の化合物、
・色素沈着を調節する1つ(または複数)の化合物、
・コエンザイムQ10を誘導する1つ(または複数)の化合物、
・皮膚の防御機能を改善する1つ(または複数)の化合物、
・ミトコンドリアを保護する1つ(または複数)の化合物
を含みうる。上記の化合物は、植物性ペプチドの加水分解物など、天然の場合もあり、またはペプチド化合物など、合成起源の場合もある。
【0035】
加えて、溶媒、溶剤、染料、日焼け防止剤、セルフタンニング剤、色素、充填剤、防腐剤、消臭剤、増粘剤、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、芳香剤、抗酸化剤、薄膜形成剤、キレート化剤、封鎖剤、コンディショナーなどの添加剤も、組成物に添加することができる。
【0036】
いずれの場合も、当業者は、これらのアジュバントならびにそれらの比率が、本発明による組成物について求められる有利な特性を損なわないように選択されることを確認するであろう。例えば、これらのアジュバントは、組成物の全重量の0.01から20%の間の量で存在しうる。本発明による組成物がエマルジョンである場合は、脂肪相が、組成物の全重量の5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%を占める可能性がある。組成物中で使用される乳化剤および共乳化剤は、該分野で従来から使用されている乳化剤から選択される。これらは例えば、組成物の全重量に対して、0.3から30重量%の間の範囲の量で使用することができる。
【0037】
本発明の第3の目的は、皮膚細胞、毛髪細胞、および角質性皮膚付属器細胞におけるスルビビンの最適レベルを回復し、「染色体パッセンジャー複合体」のより良好な機能を確保するための、本発明によるペプチド化合物を含む組成物の使用に関する。「スルビビンの最適レベルを回復する」とは、皮膚細胞、特に、成体表皮幹細胞および成体濾胞幹細胞が、それらの有糸分裂を最良の形で制御し、したがって、最良の形で表皮細胞を再生する必要を満たしうるように、本発明の化合物が、皮膚細胞内、特に、成体表皮幹細胞内および成体濾胞幹細胞内に存在するスルビビンタンパク質の量を増大または減少させる能力を意味する。
【0038】
本発明の別の目的は、皮膚の加齢および光加齢の徴候を予防および/または処置し、かつ、組織再生を促進するための、前記ペプチド化合物と、化粧品として許容可能な媒体とを含む化粧品組成物の使用に関する。「皮膚の加齢の徴候」には、皮膚の加齢により引き起こされる、すべての顕在的な症状が含まれるがこれらに限定されない。特に、これは、シワ、深くて粗いシワ(deep and coarse wrinkle)、小ジワ、ひび、皮膚組織および皮下組織のたるみ、皮膚弾力性の喪失(loss of skin elasticity)、および活力の無さ(sluggishness)、張り(firmness)およびトーン(tone)の喪失、ならびに皮膚萎縮を指す。さらに「皮膚の加齢の徴候」とはまた、毛穴の拡張、斑点、褪色、加齢によるシミ、角化症、コラーゲンの喪失、ならびに真皮および表皮における他の変化のほか、例えば、角質層の表面の荒れなど、加齢に起因する皮膚、毛髪、および爪の外見における任意の変化だけでなく、また、例えば、真皮の菲薄化など、外見の変化を全身的にもたらすわけではない、皮膚の任意の内部変化も意味する。「光加齢」とは、日光に対する長時間にわたる累積的な曝露により引き起こされる、若年における皮膚の加齢を意味する。
【0039】
「組織再生」とは、1つまたは複数の細胞からの組織の再構築を意味する。組織再生過程は、特に、創傷および治癒に関与する。本発明によるペプチド化合物は、特に、成体表皮幹細胞および成体濾胞幹細胞の環境を保護することにより、この再生過程を促進しうる。in vitroにおいて実施された試験は、このような幹細胞に特異的な近接環境を形成するタンパク質の発現が増大することを示している。その発現が増大したタンパク質は、β1-インテグリン、α6-インテグリン、ケラチンK15のほか、ケラチンK19であり、ケラチンK19は、毛球に位置する成体幹細胞に高度に特異的なケラチンである。
【0040】
本発明の別の目的は、外的侵襲、特に、UV放射に起因する外的侵襲に対して皮膚を保護するための、本発明による組成物の使用に関する。「外的侵襲」とは、環境により引き起こされうる侵襲を意味する。例には、汚染、UV放射などの侵襲、または界面活性剤、防腐剤、もしくは芳香剤などの刺激性化学物質、擦り傷、剃毛、もしくは脱毛などの機械的侵襲などでもある侵襲が含まれる。大気の乾燥もまた、皮膚に対する侵襲の主要な原因である。これらの現象のすべては、基底層の厚さを低減する。基底層が薄くなり、含有する成体表皮幹細胞が少なくなると、皮膚の再生の生じ方があまり適切でなくなり、加齢が加速化する。in vitroにおいて実施された試験は、本発明によるペプチド化合物を含む組成物を適用することにより、基底層を構成する細胞に対する、UV放射に起因する侵襲の影響を制限することが可能となり、これにより、このような化合物の保護作用が可能となったことを示している。
【0041】
特に好ましい実施形態では、本発明が、毛髪の喪失を防止および/もしくは制限し、かつ/または毛髪成長を刺激するための、前記ペプチド化合物を含む組成物の使用に関する。皮膚および毛包の生検に対して実施した試験は、本発明による有効成分が、特に、UVA放射およびUVB放射に曝露した際の毛包に対して保護作用を及ぼすことを示した。したがって、本発明による化合物は、外的侵襲、特に、UV放射に対する保護作用を毛包細胞に及ぼす。
【0042】
最後に、本発明の最後の目的は、皮膚の加齢および光加齢の徴候を予防および/または処置し、かつ、組織再生を促進するために、有効量の、本発明によるペプチド化合物を含む組成物を、処置される皮膚または角質性皮膚付属器へと局所適用することを特徴とする美容処置方法に関する。
【0043】
以下の実施例は、本発明により説明されるペプチド化合物などのペプチド化合物の有効性について説明し、これを裏付けるものであるが、本発明を限定するものとして理解すべきものではない。
【実施例1】
【0044】
細胞画分の調製およびスルビビンタンパク質の定量化
多様な種類のストレス下において、成体表皮幹細胞を維持および保護する際のCPCタンパク質の役割を調査するために、ヒト表皮の初代細胞の画分をいくつか調製した。コラーゲンIVに対する細胞の接着時間に基づいて、画分化を実施した: 20分間未満が迅速な接着に対応し(RA画分)、5時間未満が緩徐な接着1 (SA1画分)に対応し、16時間未満が緩徐な接着2 (SA2画分)に対応し、最後に、接着しないケラチン生成細胞(NA画分)である。RA細胞画分は、最も迅速に接着する細胞、したがって分化の程度が低い細胞を含有し、結果として、RAとは、成体表皮幹細胞に富む画分である。これに対し、SA1画分、SA2画分、およびNA画分は、それぞれ、幹細胞を含有する程度がより低下する画分である。その後、ウェスタンブロット法を使用して、スルビビンのタンパク質レベルを特徴づけた。
【0045】
結果
この特徴づけに従うと、スルビビンが過剰発現するのはRA細胞においてであり、SA1細胞、SA2細胞において発現レベルは徐々に低下し、NA細胞ではゼロ近くの値まで低下することが認められる。
【実施例2】
【0046】
RA細胞画分およびSA1細胞画分におけるスルビビンタンパク質の発現に対する、配列番号2のペプチドの促進効果の裏付け
培養によるRA細胞画分およびSA1細胞画分についてのウェスタンブロット法を介して、スルビビンタンパク質の発現を評価することにより、配列番号2のペプチドの調節物質効果を調査した。ウェスタンブロット法とは、細胞におけるタンパク質の比率を評価するための、従来の半定量的方法である。
【0047】
プロトコール
RA画分およびSA1画分は、3%まで希釈した(10-4Mの溶液から)化合物を伴うか、または伴わずに、5%のCO2を含有する加湿雰囲気中、37℃で48時間にわたり、直径100mmの箱の中で増殖させた。細胞をすすぎ、次いで、プロテアーゼ阻害剤(Haltプロテアーゼ阻害剤; PIERCE)の組合せの存在下で抽出緩衝液(25mMトリスHCl、pH7.6、150mMのNaCl、1%のNP-40、1%のデオキシコール酸ナトリウム、および0.1%のSDS)を使用して、担体から解離させた。このようにして抽出したタンパク質を、4℃、10,000rpmで10分間にわたり遠心分離してから、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用してアッセイした。細胞溶解物を変性緩衝液と混合し、SDS-PAGEによる電気泳動にかけた。使用したゲルは、4〜12%のNupage (Invitrogen)である。次いで、Iblotトランスファーマシン(Invitrogen)を使用して、タンパク質を、膜上に移した。膜を、5%のTBS-ミルク/0.1%のTween 20により、室温で2時間にわたり飽和させ、次いで、1/1000まで希釈した抗スルビビン一次抗体(Cell Signaling;型番2808のウサギ抗体)と共に、4℃で一晩にわたりインキュベートし、その後、TBS、0.1%のTween中で3回にわたり洗浄し、その後、1/5000まで希釈した、ペルオキシダーゼと連結した抗ウサギ二次抗体(Immunotech)と共にインキュベートした。化学発光基質を使用して、発色を実施した。Chemiimagerソフトウェア(Alpha Innotech Corporation; USA)を使用して、細胞中のタンパク質についての定量的評価を実施する。タンパク質の量は、処理を施していない対照条件による光強度と比較した光強度の百分率として表わす。
【0048】
結果
配列番号2のペプチドは、スルビビンタンパク質の発現が、成体表皮幹細胞に極めて富む画分(RA)において増大することを可能とするほか、成体表皮幹細胞にあまり富まない画分(SA1)においても増大することを可能とする。
【実施例3】
【0049】
RA細胞画分についてのコメット試験
コメット試験とは、DNAに対して引き起こされた損傷を、細胞レベルで定量化することを可能とする試験である。
【0050】
この目的で、本発明によるペプチド化合物の保護効果を確認するため、RA型の細胞を、濃度1%の配列番号2のペプチド化合物と共に24時間にわたり培養し、次いで、60mJ/cm2のUVB放射により照射した。対照条件は、ペプチド有効成分を存在させずに達成した。次いで、トリプシン処理により細胞をそれらの担体から剥がし、次いで、900rpmで5分間にわたり遠心分離してから、濃縮およびカウントした。
【0051】
次いで、特定カウントの細胞(25,000個)を、0.75%の低融点アガロースゲル内に組み込み、次いで、1%のアガロースであらかじめコーティングしたスライドガラス上に沈着させた。次いで、スライドを、4℃で1.5時間にわたり、溶解液中に浸漬し、次いで、4℃で20分間にわたり、アルカリ溶液中に浸漬した。次いで、細胞を溶解させ、DNAを変性させた。スライドを、電気泳動溶液中に浸漬してから、電場(20V; -250mA)を適用した。このようにして変性させたDNAを、4℃のアガロースゲル中の泳動にかけた。スライド上にDNA蛍光色素(2μg/mlのヨウ化プロピジウム)を適用することにより、それが損傷した場合には、DNAを、コメットの形態で観察することが可能となった。
【0052】
定量化ソフトウェアを使用して、各被験条件に適用される平均テールモーメントを決定する。このパラメータは、DNA損傷のレベルについての情報をもたらす。
【0053】
結果
結果を図1に示す。ペプチドを適用すると、テールモーメントが44.7%減少する、すなわち、UVB放射を適用する対照条件の場合より、細胞が被る損傷の程度が低い。実際、この結果により、成体表皮幹細胞に富む画分(RA)に由来する細胞に対する、配列番号2のペプチド化合物の保護効果が確認される。
【実施例4】
【0054】
MITOSOX試験
Mitosoxとは、Invitrogenにより市販されている反応剤(分子プローブM36008)である。Mitosoxは、UVおよびH2O2による酸化ストレスにおいて使用される。Mitosoxでは、細胞内のミトコンドリアによるフリーラジカル(ROS)の産生を測定するのに、顕微鏡イメージングを使用する。より具体的に述べると、Mitosoxは、ROSの主要な形態である、過酸化物アニオンに特異的である。
【0055】
Mitosoxは、生細胞に適用する: Mitosoxは、膜を透過し、細胞内に入ると、迅速に拡散し、とりわけ、ミトコンドリア内では迅速に拡散する。ミトコンドリア内に入ると、Mitosoxが、過酸化物アニオンにより、赤色の蛍光をもたらす化合物へと酸化される。この反応物は、過酸化物アニオンによる酸化は容易であるが、他のフリーラジカルによる酸化は容易でなく、窒素の反応種(NOS)による酸化も容易でない。
【0056】
プロトコール
毎日3回、濃度1%および3%の配列番号3のペプチド化合物により、48時間にわたり、ケラチン生成細胞のRAおよびTOTAL(ここで、TOTALとは、細胞画分の全体を指す)を処理した。
【0057】
第2の工程では、細胞を、
・30分間にわたり、5mMのH2O2溶液に曝露することにより;
・または100mJ/cm2のUVB放射により
引き起こされるストレス下に置いた。
【0058】
ストレスの適用後、細胞をすすぎ、次いで、培養インキュベータ内、37℃で1時間にわたり、適切な培地中に戻した。次いで、ハンクス培地を使用して2回にわたる洗浄を実施し、5分間にわたりMitosox溶液を適用し、最後に、同じ培地を使用して、新たな洗浄を実施した。ホルムアルデヒドを使用して10分間にわたり細胞を固定し、5分間にわたりDAPIを適用してから、PBSにより2回にわたりすすいだ。蛍光顕微鏡法を使用して、結果を読み取った。
【0059】
結果
蛍光顕微鏡法を使用したところ、対照条件下では、UV放射およびH2O2の両方により損傷した細胞の数は、極めて多数であることが認められた。実際に、これらの条件下の蛍光は極めて強く、これは、高量のフリーラジカルの産生を示す。これに対し、ペプチドを細胞に添加してから、細胞をストレスに曝露したところ、蛍光細胞の数は極めて少数であることが認められた。これにより、ペプチドは、過剰なフリーラジカルの産生に対して細胞を保護したことが示唆される。
【実施例5】
【0060】
培養物中で維持され、ケラチンK19でマークした毛包に対する、配列番号2のペプチド化合物の作用
毛包および内包物の培養
外科用メスおよび細型プライアーを使用して、毛包を生検から採取し、次いで、抗生剤(0.2%のPrimocin)、10μg/mlのインスリン、10ng/mlのハイドロコルチゾン、および2ミリモル/LのL-グルタミンの存在下でウィリアムE培地を使用する24ウェルプレート内でこれらを培養した。
【0061】
毛包を、ウィリアムの培地中に1%の、配列番号2のペプチド化合物により処理するかまたは処理せずにおき、次いで、24時間にわたりインキュベートした。次いで、UV照射(UVA: 5J/cm; UVB: 200mJ/cm2)を適用し、次いで、毛包を24時間にわたり再培養した。実験の終了時に、毛包をOCTに包埋し、-196℃(液体窒素)で凍結させた。次いで、温度-23℃で6μmの切片を調製するために、毛包を、クリオスタット内に入れた。切片を含有するスライドを、10分間にわたりアセトン浴内に入れ(固定)、次いで、すすいだ。
【0062】
ケラチンK19による免疫標識
固定した切片を、1回、PBSで5分間にわたりすすぎ、次いで、PAP Penにより囲んだ。各切片を、5%のBSA 5μlと共に30分間にわたりインキュベートした。次いで、1/50まで希釈した抗サイトケラチンK19一次抗体(Progen;マウスモノクローナル抗体) 50μlを添加し、加湿チャンバー内で撹拌しながら、1時間にわたりインキュベートした。PBSで30分間にわたりすすいだ後、蛍光標識した二次抗体50μlを添加し、加湿チャンバー内で撹拌しながら1時間にわたり暗所に放置した。次いで、スライドをPBS中ですすぎ、Fluoromount Gによりスライドとカバースリップとの間にマウントし、落射蛍光顕微鏡を使用して観察した。
【0063】
結果
毛包をUV照射したところ、前記毛包におけるケラチンK19の蛍光強度は、-48%に低下する結果が得られた(画像解析により定量化を実施した)。配列番号2のペプチド化合物で処理してから照射した毛包は、ケラチンK19の蛍光値が+102.7%であった。これは、本発明によるペプチド化合物が、特に、ケラチンK19の産生に関して、細胞における損傷の出現の防止および回避を可能としたことを意味する。
【実施例6】
【0064】
組成物
1.日焼け防止剤の組成
【0065】
【表1】

【0066】
2.育毛セラム
Natrosol 250HHRおよびEDTA二ナトリウムを、撹拌しながら水中に分散させる。50〜60℃まで加熱し、一様な外見が達成されるまで撹拌する。Styleze (登録商標) CC-10を添加し、一様な外見が達成されるまで撹拌する。室温まで冷まし、成分を、一覧に示される順序で、それらの各々の間に一様な外見が得られるまで、撹拌しながら添加する。
【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
R1-(AA)n-X1-X2-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-X3-(AA)P-R2
[式中、
X1は、ロイシン、アラニン、またはアミノ酸無しであり;
X2は、リシン、プロリン、またはアミノ酸無しであり;
X3は、ロイシン、アスパラギン酸、チロシン、フェニルアラニン、またはアミノ酸無しであり;
AAは、任意のアミノ酸であり、nおよびpは、0から2の間の整数であり;
R1は、非置換のN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であるか、あるいは、アセチル基、またはベンゾイル型の基、トシル型の基、もしくはベンジルオキシカルボニル型の基から選択されうる芳香族基から選択されうる、C1〜C30の飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖を有するアシル型の基で置換されたN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であり;
R2は、非置換のC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基であるか、あるいは、C1〜C30のアルキル鎖、またはNH2基、NHY基もしくはNYY基[式中、Yは、C1〜C4のアルキル鎖である]から選択されうる基で置換されたC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基である]
のペプチド化合物であって、一般式(I)の前記配列が、5〜12アミノ酸残基からなり、一般式(I)の前記配列が、AAアミノ酸、X1アミノ酸、X2アミノ酸、またはX3アミノ酸の誘導体、またはこれらのアミノ酸の、他の化学的に同等なアミノ酸による置換を包含しうるペプチド化合物。
【請求項2】
一般式(I)において、
X1が、ロイシン、またはアミノ酸無しであり;
X2が、リシン、またはアミノ酸無しであり;
X3が、チロシン、またはアミノ酸無しであり;
AAでは、整数nおよびpが0に等しく;
R1が、非置換のN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であるか、あるいは、アセチル基、またはベンゾイル型の基、トシル型の基、もしくはベンジルオキシカルボニル型の基から選択されうる芳香族基から選択されうる、C1〜C30の飽和アルキル鎖または不飽和アルキル鎖を有するアシル型の基で置換されたN末端アミノ酸の第一級アミン官能基であり;
R2が、非置換のC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基であるか、あるいは、C1〜C30のアルキル鎖、またはNH2基、NHY基もしくはNYY基[式中、Yは、C1〜C4のアルキル鎖である]から選択されうる基で置換されたC末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基である
ことを特徴とする、請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項3】
以下の式:
(配列番号1) Ile-Leu-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Gly-NH2
(配列番号2) Arg-Glu-Met-Asn-Trp-NH2
(配列番号3) Asp-Ala-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Asp-Thr
(配列番号4) Leu-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Tyr-NH2
(配列番号5) Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Phe-Met-Val-NH2
(配列番号6) Leu-Lys-Arg-Glu-Met-Asn-Trp-Tyr-NH2
のうちの1つに対応することを特徴とする、請求項1または2に記載のペプチド化合物。
【請求項4】
水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化ジグリコールもしくはプロポキシル化ジグリコール、環状ポリオール、またはこのような溶媒の任意の混合物など、1つまたは複数の生理学的に適切な溶媒中で可溶化されていることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のペプチド化合物。
【請求項5】
医薬として使用される、請求項1から4の一項に記載のペプチド化合物。
【請求項6】
請求項1から4の一項に記載のペプチド化合物を有効成分として含む化粧品組成物。
【請求項7】
化粧品として許容可能な媒体を含む、局所適用に適する形態にあることを特徴とする、請求項6に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
前記ペプチド化合物が、組成物中に、約0.0005から500ppmの間の濃度で、好ましくは0.01から5ppmの間の濃度で存在することを特徴とする、請求項6または7の一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチド化合物の作用を促進する、少なくとも1つの他の有効成分をさらに含有することを特徴とする、請求項6から8の一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有効成分が、フリーラジカルスカベンジャーもしくは抗酸化剤、または皮膚高分子合成を刺激する薬剤、あるいはまた、エネルギー代謝を刺激する薬剤など、抗シワ活性を有する薬剤であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
皮膚細胞、毛髪細胞、および角質性皮膚付属器細胞におけるスルビビンの最適レベルを回復し、「染色体パッセンジャー複合体」のより良好な機能を確保するための、請求項1から4の一項に記載のペプチド化合物と、化粧品として許容可能な媒体とを含む化粧品組成物の使用。
【請求項12】
皮膚の加齢および光加齢の徴候を予防および/または処置し、かつ組織再生を促進するための、請求項11に記載の化粧品組成物の使用。
【請求項13】
皮膚の加齢の徴候が、シワ、深くて粗いシワ、小ジワ、ひび、皮膚組織および皮下組織のたるみ、皮膚弾力性の喪失、および活力の無さ、皮膚の張りおよびトーンの喪失、ならびに皮膚萎縮を意味することを特徴とする、請求項12に記載の化粧品組成物の使用。
【請求項14】
外的侵襲、特に、UV放射に起因する外的侵襲に対して皮膚を保護するための、請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項15】
毛髪の喪失を防止および/もしくは制限し、かつ/または毛髪成長を刺激するための、請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項16】
眉毛の成長を刺激するための、請求項15に記載の組成物の使用。
【請求項17】
皮膚の加齢および光加齢の徴候を予防および/もしくは処置し、組織再生を促進し、毛髪の喪失を防止および/もしくは制限し、かつ/または毛髪成長を促進するために、有効量の、請求項1から4の一項に記載のペプチド化合物を含む組成物を、朝および/または夕方に、処置される皮膚または角質性皮膚付属器へと局所適用することを特徴とする美容処置方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517260(P2013−517260A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548465(P2012−548465)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/FR2011/000017
【国際公開番号】WO2011/086296
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(511239100)アイエスピー・インヴェストメンツ・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】