説明

スルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法

【課題】分子内両末端にオルガノオキシシリル基を、分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、それらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結された有機珪素化合物の安全で安価な製造方法を提供する。
【解決手段】式:X−R4−(Sm−R4q−Xで表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物と、式:(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−Xで表されるハロゲン基含有有機珪素化合物と、式:M2Sで表される硫化アルカリ金属とを反応させる、式:


(R1,R2は1価炭化水素基、R3は2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nで、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数、Mはアルカリ金属。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内両末端にオルガノオキシシリル基を持ち、分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、更にそれらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結された有機珪素化合物を安全に安価に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルコキシシリル基とポリスルフィド基を分子内に含む化合物は知られている。これらの化合物は、シリカ、水酸化アルミニウム、タルク、クレー等の無機材料と熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等の有機材料との界面結合剤や無機基材へのゴムの接着改良剤、プライマー組成物等に応用されている。
【0003】
また、各種ゴムにシリカを配合したゴム組成物も知られており、例えば低発熱性で耐摩耗性などに優れたタイヤトレッド用ゴム組成物として使用されている。従来より、このような組成物に対しては、アルコキシシリル基とポリスルフィド基を分子内に含む化合物、例えば、bis−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやbis−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が有効であることは知られている。しかし、これらの化合物を使用しても、まだ加工性等のゴム物性や低発熱性を更に改良したいという要求特性に対しては十分でなかった。
【0004】
このような要求特性を改良するため、例えば特許文献1:特開2004−018511号公報には、下記平均組成式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の一価炭化水素基、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜15の二価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で2〜4の正数、pは0,1又は2、qは1,2又は3を示す。)
で表される化合物が提案されている。
【0005】
その際、この化合物の製造方法として、下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−Sm−R4−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の一価炭化水素基、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜15の二価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、pは0,1又は2、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される末端ハロゲン基含有有機珪素化合物と、下記一般式(3)
2r (3)
(式中、Mはアルカリ金属、rは平均で1〜4の正数を示す。)
で表される無水硫化アルカリ金属又は無水多硫化アルカリ金属と、必要により下記一般式(4)
X−R4−X (4)
(式中、R4、Xは上記と同様の意味を示す。)
で表されるハロゲン含有化合物及び/又は硫黄と反応させ、上記平均組成式(1)の有機珪素化合物を製造するという方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、この方法においては、高価な下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−Sm−R4−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の一価炭化水素基、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜15の二価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、pは0,1又は2、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される末端ハロゲン基含有有機珪素化合物を使用しているため、これに替わる同等の性能を有する有機珪素化合物の安価な製造方法が求められていた。
【0007】
また、特許文献2:特開2007−091677号公報、特許文献3:特開2007−091678号公報においては、下記一般式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−S−R4−X (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3及びR4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲノアルキルチオアルキル基含有有機珪素化合物と硫黄と、必要により下記一般式(2)
X−R4−X (2)
(式中、R4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子)
で表されるハロゲン含有化合物との混合物を相間移動触媒の存在下、M2S(式中、Mはアンモニウム又はアルカリ金属を示す)で表される硫化物又はその水和物の水溶液又は水分散液と反応させることにより、下記平均組成式(3)
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3及びR4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、mは平均値として2≦m≦6、pは0,1又は2を示し、qは、1または、平均値として1から3を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得る方法や、下記一般式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−S−R4−X (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3及びR4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲノアルキルチオアルキル基含有有機珪素化合物と、必要により硫黄或いは下記一般式(2)
X−R4−X (2)
(式中、R4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子)
で表されるハロゲン含有化合物との混合物を相間移動触媒の存在下、M2n(式中、Mはアンモニウム又はアルカリ金属、nは平均値として2≦n≦6を示す)で表される多硫化物又はその水和物の水溶液又は水分散液と反応させることにより、下記平均組成式(3)
【化3】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3及びR4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、mは平均値として2≦m≦6、pは0,1又は2を示し、qは、1または、平均値として1から3を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得る方法など、相関移動触媒を用いた水系による製造方法が開示されているが、これらの方法においても、下記一般式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−S−R4−X (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3及びR4は炭素数1〜10の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表される高価なハロゲノアルキルチオアルキル基含有有機珪素化合物が使用されているため、低コスト化が困難であった。
【0008】
更に、特許文献4:特公昭63−58837号公報においては、下記式
(R1O)3Si−R2−Sx−R3−Sx−R2−Si(OR13
(式中R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2
−CH2−,−CH2CH2−,−CH2CH2CH2−,−CH2CH2CH2CH2−,−CH2CH(CH3)CH2−,−C64−,−CH2CH264−CH2
から選ばれる2価の炭化水素基、R3
−CH2CH2−,−CH2CH2CH2−,−CH2CH2CH2CH2−,−CH2CH=CHCH2−,−(CH25−,−CH2CH2OCH2CH2−,−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−,−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−,−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2OCH2CH2CH2−,−CH2C(=O)OCH2CH2OC(=O)CH2−,−CH2CH2C(=O)OCH2CH2−OC(=O)CH2CH2−,−CH2CH2C(=O)OCH2CH2CH2CH2OC(=O)CH2CH2
から選ばれる−O−,−C(=O)O−基を含有し得る2価の有機基、xは2〜6の整数)
で示されるポリスルフィド基含有オルガノシリコーン化合物が開示されており、更に特許文献5:特開平7−258474号公報においては、下記一般式(1)
123Si−X1−(−Sx−Y−)m−(−Sx−X2−SiR123n (1)
(式中、R1、R2及びR3は、同一もしくは異なり、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル又はフェノキシを表すが、但しこれらの基R1からR3の少なくとも1つがアルコキシ又はフェノキシ基であることを条件とし、X1及びX2は、同一もしくは異なり、任意に不飽和の、線状もしくは分枝している二価のC1−C12アルキル基を表し、Yは、酸素、硫黄もしくは窒素原子又は芳香族C6−C12アリール基が割り込んでいてもよい、C6−C12アリール、C1−C8アルコキシ又はヒドロキシ基で任意に置換されていてもよい、任意に不飽和の、線状、分枝もしくは環状の二価、三価又は四価のC1−C8アルキル基を表し、そしてまたC6−C12アリール基又はヘテロアリール基を表し、mは、1から20の整数を表し、nは、1から6の数を表し、そしてxは、1から6の数を表す。)
で表される補強用添加剤が開示されているが、これらの化合物は、分子内両末端にオルガノオキシシリル基を持ち、分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、更にそれらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結された有機珪素化合物ではないため、ゴム用配合剤として用いた場合に、優れたゴム物性改良効果を示さず、また、本発明の特徴である分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、更にそれらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結された構造を製造する方法については何ら開示していない。
【0009】
【特許文献1】特開2004−018511号公報
【特許文献2】特開2007−091677号公報
【特許文献3】特開2007−091678号公報
【特許文献4】特公昭63−58837号公報
【特許文献5】特開平7−258474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリカ配合加硫性ゴム組成物の特性、例えば低発熱性や反発弾性などの特性を改良するための分子内両末端にオルガノオキシシリル基を持ち、分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、更にそれらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結された有機珪素化合物を安全で安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記平均組成式(1)で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物と、下記一般式(2)で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物と、下記式(3)で表される硫化アルカリ金属とを反応させることにより、下記平均組成式(4)で表される分子内両末端にオルガノオキシシリル基を持ち、分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、更にそれらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結されたスルフィド鎖含有有機珪素化合物を、高価なハロゲノアルキルチオアルキル基含有有機珪素化合物を使用することなく安価に、安全に高収率で製造できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記のスルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法を提供する。
〔1〕 下記平均組成式(1)
X−R4−(Sm−R4q−X (1)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは平均で1〜3の正数であり、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物と、下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物と、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属とを反応させることにより、下記平均組成式(4)
【化4】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nであり、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得ることを特徴とするスルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法。
〔2〕 下記式(5)
X−R4−X (5)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有有機化合物と、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属と、硫黄とを反応させ、下記平均組成式(1)
X−R4−(Sm−R4q−X (1)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは平均で1〜3の正数であり、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物を得た後、取り出すことなく、下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物を添加し、次いで、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属を添加し、反応させることにより、下記平均組成式(4)
【化5】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nであり、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得ることを特徴とするスルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分子内両末端にオルガノオキシシリル基を持ち、分子内中央部にポリスルフィド基を持ち、更にそれらがモノスルフィド基或いは分子内中央部のポリスルフィド鎖よりも短いポリスルフィド基を含んだ2価炭化水素鎖で連結された有機珪素化合物の製造において、原料として高価なハロゲノアルキルチオアルキル基含有有機珪素化合物を使用することなく、従来より知られている安価なハロゲノ基含有有機珪素化合物を用いて合成することができ、更に得られたスルフィド鎖含有有機珪素化合物は、シリカ配合ゴムに配合した場合、従来知られているスルフィド鎖含有有機珪素化合物、例えばトリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやトリエトキシシリルプロピルジスルフィドなどを用いた場合よりも、ムーニー粘度や反発弾性等のゴム物性や低発熱性を更に改良することができることから、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明は、上述したように、下記平均組成式(4)
【化6】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nであり、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得る方法として、下記平均組成式(1)
X−R4−(Sm−R4q−X (1)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは平均で1〜3の正数であり、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物と、下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物と、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属とを反応させるものである。
【0015】
ここで、原料として使用される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物は、下記平均組成式(1)で表されるものである。
X−R4−(Sm−R4q−X (1)
【0016】
上記式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基を示し、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、フェニレン基、メチルフェニルエチレン基等のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基やこれらの基が結合した基などが例示され、プロピレン基、ヘキシレン基、デシレン基が好ましく、特にヘキシレン基が好ましい。また、酸素原子を含んだ2価炭化水素基としては、エチレンオキシエチレン基、ジ(エチレンオキシ)エチレン基、トリ(エチレンオキシ)エチレン基、プロピレンオキシプロピレン基、ジ(プロピレンオキシ)プロピレン基、イソプロピレンオキシイソプロピレン基、ジ(イソプロピレンオキシ)イソプロピレン基、ブチレンオキシブチレン基、ジ(ブチレンオキシ)ブチレン基等が例示され、エチレンオキシエチレン基、ジ(エチレンオキシ)エチレン基が好ましい。
Xはハロゲン原子を示し、具体的にはCl、Br、Iなどが例示され、好ましくはCl、Brである。
mは平均で1〜3の正数であり、qは平均値として1〜3の正数であり、好ましくは平均値として2である。
【0017】
このような平均組成式(1)で表される化合物として、下記のものを代表例として例示する。
Cl−(CH26−S2−(CH26−Cl、
Cl−(CH26−S3−(CH26−Cl、
Cl−(CH26−S4−(CH26−Cl、
Cl−(CH23−S2−(CH23−Cl、
Cl−(CH24−S2−(CH24−Cl、
Cl−(CH25−S2−(CH25−Cl、
Cl−(CH28−S2−(CH28−Cl、
Cl−(CH210−S2−(CH210−Cl、
Br−(CH26−S2−(CH26−Br、
Br−(CH26−S3−(CH26−Br、
Br−(CH26−S4−(CH26−Br、
Br−(CH23−S2−(CH23−Br、
I−(CH24−S2−(CH24−I、
Cl−CH2CH2OCH2CH2−S2−CH2CH2OCH2CH2−Cl、
Cl−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−S2−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−Cl、
Cl−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−S3−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−Cl、
Cl−[(CH26−S22−(CH26−Cl、
Cl−[(CH26−S32−(CH26−Cl、
Cl−[(CH26−S42−(CH26−Cl、
Cl−[(CH23−S22−(CH23−Cl、
Cl−[(CH24−S22−(CH24−Cl、
Cl−[(CH25−S22−(CH25−Cl、
Cl−[(CH28−S22−(CH28−Cl、
Cl−[(CH210−S22−(CH210−Cl、
Br−[(CH26−S22−(CH26−Br、
Br−[(CH26−S32−(CH26−Br、
Br−[(CH26−S42−(CH26−Br、
Br−[(CH23−S22−(CH23−Br、
I−[(CH24−S22−(CH24−I、
Cl−[(CH26−S23−(CH26−Cl、
Cl−[(CH26−S33−(CH26−Cl、
Cl−[(CH26−S43−(CH26−Cl、
Cl−[(CH23−S23−(CH23−Cl、
Cl−[(CH24−S23−(CH24−Cl、
Cl−[(CH25−S23−(CH25−Cl、
Cl−[(CH28−S23−(CH28−Cl、
Cl−[(CH210−S23−(CH210−Cl、
Br−[(CH26−S23−(CH26−Br、
Br−[(CH26−S33−(CH26−Br、
Br−[(CH26−S43−(CH26−Br、
Br−[(CH23−S23−(CH23−Br、
I−[(CH24−S23−(CH24−I、
Cl−[CH2CH2OCH2CH2−S22−CH2CH2OCH2CH2−Cl、
Cl−[CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−S22−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−Cl、
Cl−[CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−S32−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−Cl
【0018】
このような両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物は、下記式(5)
X−R4−X (5)
(式中、R4及びXは前述したとおりである。)
で表される両末端ハロゲン基含有有機化合物と、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属と、硫黄とを反応させることで得ることができる。
【0019】
この式(5)で表される両末端ハロゲン基含有有機化合物としては、以下のものが例示される。
Cl−(CH26−Cl、
Cl−(CH23−Cl、
Cl−(CH24−Cl、
Cl−(CH25−Cl、
Cl−(CH28−Cl、
Cl−(CH210−Cl、
Br−(CH26−Br、
I−(CH24−I、
Cl−CH2CH2OCH2CH2−Cl、
Cl−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−Cl
【0020】
式(3)で表される硫化アルカリ金属としては、硫化ソーダ、硫化カリウム、硫化カルシウム等が例示され、特に硫化ソーダを乾燥した無水硫化ソーダが好ましい。
【0021】
この反応の際、溶媒の使用は任意であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられ、特にメタノール、エタノール等のアルコール類の使用が好ましい。
【0022】
その際の反応温度は0〜150℃程度であり、好ましくは50〜100℃程度である。反応時間は、硫化アルカリ金属又は多硫化アルカリ金属が消失するまで行えばよいが、通常30分〜20時間程度である。
【0023】
式(5)で表される両末端ハロゲン基含有有機化合物と、式(3)で表される硫化アルカリ金属との反応のモル比は、得られる式(1)の化合物のqの値に対応する比率で行えばよく、例えばqの値を平均値として1とする場合には、式(5)の化合物2モルに対して式(3)の化合物を1モル反応させればよく、qの値を平均値として2とする場合には、式(5)の化合物3モルに対して式(3)の化合物2モルを反応させればよい。また、硫黄の添加量は、任意であるが、添加量によってmの値を調整することが可能であり、例えば、mの値を平均値として2にする場合には、式(3)の化合物1モルに対して硫黄を1モル添加すればよい。
【0024】
また、平均組成式(1)で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物は、あくまで平均組成で表される化合物であり、Sは不均化反応等が生じるため、一般的には分布を持っており、あくまで平均値として表記されるものである。前述した平均組成式(1)におけるmは、平均値として1〜3の正数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2であり、更に式(5)の化合物と式(3)の化合物との反応においても平均組成で製造されるものであり、qについても平均値を表しており、qは平均値として1〜3の正数であり、好ましくは平均値として2である。
【0025】
更に、本発明においては、得られた式(1)の化合物は取り出すことなく、式(2)の化合物を添加し、式(3)の化合物と反応させ、平均組成式(4)で表される化合物を製造することが好ましい。
【0026】
本発明で用いるハロゲン基含有有機珪素化合物は、下記一般式(2)で表されるものである。
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−X (2)
【0027】
上記式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、メタリル基等のアルキル基、アルケニル基などが例示され、メチル基、エチル基が好ましい。R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基を示し、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、フェニレン基、メチルフェニルエチレン基等のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基やこれらの基が結合した基などが例示され、エチレン基、プロピレン基、i−ブチレン基が好ましく、特にプロピレン基が好ましい。Xはハロゲン原子を示し、具体的にはCl、Br、Iなどが例示され、好ましくはClである。
【0028】
このような一般式(2)で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物としては、以下のものが例示される。
(CH3CH2O)3Si−(CH23−Cl、
(CH3O)3Si−(CH23−Cl、
(CH3CH2O)3Si−CH2CH(CH3)CH2−Cl、
(CH3CH2O)3Si−(CH26−Cl、
(CH3O)3Si−(CH210−Cl、
(CH3CH2O)2CH3Si−(CH23−Cl、
(CH3CH2O)(CH32Si−(CH23−Cl、
(CH3CH2O)3Si−(CH23−Br、
(CH3O)3Si−(CH23−Br、
(CH3CH2O)3Si−CH2CH(CH3)CH2−Br、
(CH3CH2O)3Si−(CH26−Br、
(CH3O)3Si−(CH210−Br、
(CH3CH2O)2CH3Si−(CH23−Br
【0029】
下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される化合物は、硫化アルカリ金属であり、式(1)の化合物製造の際に使用した化合物と同じであり、硫化ソーダ、硫化カリウム、硫化カルシウム等が例示され、特に硫化ソーダを乾燥した無水硫化ソーダが好ましい。
【0030】
この式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物との反応の際の溶媒の使用は任意であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類などが挙げられ、特にメタノール、エタノール等のアルコール類の使用が好ましい。更に、式(1)の化合物製造の際に使用した溶媒をそのまま使用することが好ましい。
【0031】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との反応のモル比は、任意であるが、反応原料を消失させるためには、式(1)の化合物1モルに対し、式(2)の化合物を1.8〜2.2モル、好ましくは1.9〜2.1モル、より好ましくは2モルとすればよい。式(2)の化合物量が少なすぎると分子内中央部分の平均ポリスルフィド鎖が短くなる場合があり、多すぎると分子内中央部分にポリスルフィド鎖を持たない化合物が多く生成する場合がある。
また、式(1)の化合物と式(3)の化合物との反応のモル比も任意であるが、原料を消失させるためには、式(1)の化合物1モルに対し、式(3)の化合物を1.8〜2.2モル、好ましくは1.9〜2.1モル、より好ましくは2モルとすればよい。これらのモル比よりも式(3)の化合物の添加量を少なくするとハロゲン含有量が多くなる場合があり、添加量を多くすると式(3)の化合物の残存量が多くなる場合がある。
【0032】
その際の反応温度は0〜150℃程度であり、好ましくは50〜100℃程度である。反応時間は、硫化アルカリ金属が消失するまで行えばよいが、通常30分〜20時間程度である。
【0033】
本発明の製造方法により得られるスルフィド鎖含有有機珪素化合物は、下記平均組成式(4)で表されるものである。
【化7】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nであり、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数を示す。)
上記式中のR1〜R4、m、n、p、qは前述したとおりである。
【0034】
上記平均組成式(4)で示される化合物として具体的には、下記のものを代表例として例示することができる。
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S3−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S4−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH23−S−(CH26−S3−(CH26−S−(CH23−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH23−S−(CH26−S4−(CH26−S−(CH23−Si(OCH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−[S2−(CH262−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−[S3−(CH262−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−[S4−(CH262−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−[S2−(CH263−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−[S3−(CH263−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−[S4−(CH263−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)2(CH3)Si−(CH23−S−(CH26−[S2−(CH262−S−(CH23−Si(CH3)(OCH2CH32
(CH3CH2O)2(CH3)Si−(CH23−S−(CH26−[S3−(CH262−S−(CH23−Si(CH3)(OCH2CH32
(CH3CH2O)2(CH3)Si−(CH23−S−(CH26−[S4−(CH262−S−(CH23−Si(CH3)(OCH2CH32
(CH3CH2O)(CH32Si−(CH23−S−(CH26−[S2−(CH262−S−(CH23−Si(CH32(OCH2CH3)、
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH24−S2−(CH24−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH28−S3−(CH28−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH210−S4−(CH210−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3O)3Si−(CH23−S−(CH210−S2−(CH210−S−(CH23−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH23−S−(CH24−S3−(CH24−S−(CH23−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH23−S−(CH28−S4−(CH28−S−(CH23−Si(OCH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH24−[S2−(CH242−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH210−[S3−(CH2102−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH28−[S4−(CH282−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH28−[S2−(CH283−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH210−[S3−(CH2103−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH24−[S4−(CH243−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)2(CH3)Si−(CH23−S−(CH24−[S2−(CH242−S−(CH23−Si(CH3)(OCH2CH32
(CH3CH2O)2(CH3)Si−(CH28−S−(CH28−[S3−(CH282−S−(CH28−Si(CH3)(OCH2CH32
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH22O(CH22−S2−(CH22O(CH22−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH24O(CH24−S3−(CH24O(CH24−S−(CH23−Si(OCH2CH33
(CH3CH2O)3Si−(CH26−S−(CH22O(CH22−S4−(CH22O(CH22−S−(CH26−Si(OCH2CH33
(CH3O)3Si−(CH210−S−(CH26−S2−(CH26−S−(CH210−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH24−S−(CH26−S3−(CH26−S−(CH24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−(CH28−S−(CH26−S4−(CH26−S−(CH28−Si(OCH33
【実施例】
【0035】
以下、合成例及び実施例に従って本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、本発明において、粘度はJIS Z 8803に規定された方法により測定した値を示し、比重はJIS Z 8804に規定された方法により測定した値を示し、屈折率はJIS K 0062に規定された方法により測定した値を示す。
【0036】
[合成例1]
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、無水硫化ソーダ156g(2.0mol)、硫黄96g(3.0mol)、溶剤としてエタノール400gを仕込み、80℃に昇温した。そこにジクロロヘキサン465g(3.0mol)をゆっくり滴下した。ジクロロヘキサンの滴下は60分を要した。滴下終了後、そのまま80℃にて5時間撹拌を続けた。その後、冷却し、得られた溶液中から塩を濾別し、更に溶媒のエタノールを減圧留去した。得られた液を濾過したところ、438gの赤褐色透明の液体が得られた。このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミュレーションスペクトル分析、1H核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、下記平均組成式
Cl−(CH262.5(CH262.5(CH26−Cl
で表される化合物であることを確認した。このものの収率は90.6%であった。
【0037】
[実施例1]
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、合成例1で得た化合物241.5g(0.5mol)、3−クロロプロピルトリエトキシシラン240.5g(1.0mol)、溶剤としてエタノール200gを仕込み、60℃に昇温した。そこに無水硫化ソーダ78g(1.0mol)を分割しながらゆっくり投入した。無水硫化ソーダの添加は30分を要した。無水硫化ソーダの添加によって温度は83℃まで上昇した。添加終了後、80℃にて5時間撹拌を続けた。その後、冷却し、得られた溶液中から塩を濾別し、更に溶媒のエタノールを減圧留去した。得られた液を濾過したところ、386gの赤褐色透明の液体が得られた。このものの粘度は25℃にて220mm2/s、比重は25℃にて1.078、屈折率は25℃にて1.5105であった。このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミュレーションスペクトル分析、1H核磁気共鳴スペクトル分析、13C核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、下記平均組成式
【化8】

で表される化合物であることを確認した。このものの収率は87.1%であった。
【0038】
[実施例2]
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、無水硫化ソーダ78g(1.0mol)、硫黄48g(1.5mol)、溶剤としてエタノール200gを仕込み、80℃に昇温した。そこにジクロロヘキサン232.5g(1.5mol)をゆっくり滴下した。ジクロロヘキサンの滴下は30分を要した。滴下終了後、そのまま80℃にて、3時間撹拌を続けた。次いで60℃まで冷却し、ここに3−クロロプロピルトリエトキシシラン240.5g(1.0mol)を添加した。更に60℃にて、無水硫化ソーダ78g(1.0mol)を分割しながらゆっくり投入した。無水硫化ソーダの添加は30分を要した。無水硫化ソーダの添加によって温度は80℃まで上昇した。添加終了後、80℃にて5時間撹拌を続けた。その後、冷却し、得られた溶液中から塩を濾別し、更に溶媒のエタノールを減圧留去した。得られた液を濾過したところ、378gの赤褐色透明の液体が得られた。このものの粘度は25℃にて209mm2/s、比重は25℃にて1.076、屈折率は25℃にて1.5101であった。このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミュレーションスペクトル分析、1H核磁気共鳴スペクトル分析、13C核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、下記平均組成式
【化9】

で表される化合物であることを確認した。このものの収率は85.3%であった。
【0039】
[実施例3]
実施例2における硫黄の仕込み量を32g(1.0mol)とした他は実施例2と同様な操作を行ったところ、368gの赤褐色透明の液体が得られた。このものの粘度は25℃にて138mm2/s、比重は25℃にて1.057、屈折率は25℃にて1.5006であった。このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミュレーションスペクトル分析、1H核磁気共鳴スペクトル分析、13C核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、下記平均組成式
【化10】

で表される化合物であることを確認した。このものの収率は86.3%であった。
【0040】
[実施例4]
実施例2におけるジクロロヘキサン232.5g(1.5mol)のかわりにトリエチレングリコールジクロライド280.5g(1.5mol)とした他は実施例2と同様な操作を行ったところ、435gの赤褐色透明の液体が得られた。このものの粘度は25℃にて121mm2/s、比重は25℃にて1.142、屈折率は25℃にて1.5041であった。このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミュレーションスペクトル分析、1H核磁気共鳴スペクトル分析、13C核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、下記平均組成式
【化11】

で表される化合物であることを確認した。このものの収率は88.6%であった。
【0041】
[実施例5]
実施例4における硫黄の仕込み量を32g(1.0mol)とした他は実施例4と同様な操作を行ったところ、368gの赤褐色透明の液体が得られた。このものの粘度は25℃にて138mm2/s、比重は25℃にて1.057、屈折率は25℃にて1.5006であった。このものの元素分析、赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミュレーションスペクトル分析、1H核磁気共鳴スペクトル分析、13C核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、下記平均組成式
【化12】

で表される化合物であることを確認した。このものの収率は85.2%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)
X−R4−(Sm−R4q−X (1)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは平均で1〜3の正数であり、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物と、下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物と、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属とを反応させることにより、下記平均組成式(4)
【化1】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nであり、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得ることを特徴とするスルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法。
【請求項2】
下記式(5)
X−R4−X (5)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有有機化合物と、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属と、硫黄とを反応させ、下記平均組成式(1)
X−R4−(Sm−R4q−X (1)
(式中、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは平均で1〜3の正数であり、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表される両末端ハロゲン基含有ポリスルフィド化合物を得た後、取り出すことなく、下記一般式(2)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−X (2)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、Xはハロゲン原子、pは0,1又は2を示す。)
で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物を添加し、次いで、下記式(3)
2S (3)
(式中、Mはアルカリ金属を示す。)
で表される硫化アルカリ金属を添加し、反応させることにより、下記平均組成式(4)
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜15の2価炭化水素基、R4は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15の2価炭化水素基、mは平均で1〜3の正数、nは平均で1〜3の正数、但しm>nであり、pは0,1又は2、qは平均で1〜3の正数を示す。)
で表されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物を得ることを特徴とするスルフィド鎖含有有機珪素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−126836(P2009−126836A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305398(P2007−305398)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】